(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247058
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】焼成パンの焼成補助調理器具
(51)【国際特許分類】
A47J 37/08 20060101AFI20171204BHJP
A21D 13/00 20170101ALN20171204BHJP
【FI】
A47J37/08 103
!A21D13/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-184428(P2013-184428)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-51074(P2015-51074A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】516258988
【氏名又は名称】F.テクノ有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514329008
【氏名又は名称】株式会社ミツケ商会
(73)【特許権者】
【識別番号】514329019
【氏名又は名称】成宮 正興
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】成宮 正興
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昇
(72)【発明者】
【氏名】畠岡 勲
(72)【発明者】
【氏名】村田 正明
(72)【発明者】
【氏名】秋本 清治
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−130411(JP,A)
【文献】
特開2007−192519(JP,A)
【文献】
特開2004−195149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/08
A21D 2/00 − 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在する基体と、
該基体の両端側に立設される一対の端板と、
前記基体の軸方向に前記端板に対して移動可能に支持されて、対象の焼成パンを、塊毎にそれぞれ立位状態で支持する複数の可動板と、
該複数の可動板における各可動板間の間隔を調節する可動板間隔調節部と、を具備し、
前記基体は、一端が前記一対の端板の一方に固定され、他端が前記一対の端板の他方を貫通し、前記複数の可動板を貫通し前記複数の可動板を支持して、軸方向に伸縮調節可能な調節軸であって、軸方向に伸縮することで前記一対の端板同士の距離を変更する調整軸と、該調節軸に平行に配置され、前記可動板を軸方向に案内移動する案内軸部と、を有することを特徴とする焼成パンの焼成補助調理器具。
【請求項2】
調整軸及び前記案内軸部は、前記複数の可動板の間に配置された対象の焼成パンを前記焼成補助調理器具から脱落しないように支持することを特徴とする請求項1記載の焼成パンの焼成補助調理器具。
【請求項3】
前記可動板間隔調節部は、前記調節軸を軸方向に調節することで前記複数の可動板をそれぞれ軸方向に移動調節する回動操作部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼成パンの焼成補助調理器具。
【請求項4】
軸方向に延在する基体と、
該基体の両端側に立設される一対の端板と、
前記基体の軸方向に前記端板に対して移動可能に支持されて、対象の焼成パンを、塊毎にそれぞれ立位状態で支持する複数の可動板と、
該複数の可動板における各可動板間の間隔を調節する可動板間隔調節部と、を具備し、
前記基体は、両端部で前記一対の端板をそれぞれ固定し、前記複数の可動板を貫通し前記複数の可動板を支持する軸状のガイドパイプであって、所定長の複数のガイドパイプを有し、
前記可動板間隔調節部は、前記一対の端板のうち少なくとも一方の端板と隣接する可動板間に設けられ、それぞれの前記可動板間に、焼成対象の焼成パンの塊を、それぞれ立位状態で挟持するように付勢する付勢手段を具備する、ことを特徴とする焼成パンの焼成補助調理器具。
【請求項5】
前記可動板間隔調節部は、前記可動板間に介在されたスペーサ部材を具備する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の焼成パンの焼成補助調理器具。
【請求項6】
前記基体の両端に立設された一対の端板間に取出し/持上げ用レバーが設けられている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の焼成パンの焼成補助調理器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼成パンの焼成補助調理器具に係り、特にハードクラスト系ブレッドを、適切に再焼成することで、本来の食感・食味を取り戻すことができるようにした、焼成パンの焼成補助調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
古来、米を主食とする我が国では、近年、いわゆる食の欧米化からパンを主食とする食スタイルを採る人が増加している。それでもハードクラスト系ブレッドでは欧米と異なり、裸で店頭に陳列、持ち帰るとき包装されるか製造工場で包装され店頭に陳列販売するようにしてきた。
ハードクラスト系ブレッドは、裸で店頭に陳列されると欧米に比べ、我が国は降雨量が多く高湿度のため、クラスト(表層部分)は湿気を含んで軟弱化する。
また包装したものにあっては、クラム(内層部分)の水分がクラストに吸収されてしまい、クラストは軟弱化する。
そのため、消費者がハードクラスト系ブレッドを手に入れて、パンを焼き、口に入れる頃には、クラストは柔らかく柔軟になり、本来のハードクラスト系ブレッドの食味食感は失われている。
【0003】
欧米ではハードクラスト系ブレッドをそのまま食事に提供されるか、出来立て時の食味・食感を取り戻すために、大きなブロックに切断してオーブン式加熱器(オーブントースター)で加熱して食卓に提供するようにしている。
ここで、食卓に提供されたブロックは、この場合クラストはクリスピーになるまで加熱してもクラムは垂直に置かれているため熱の吸収がクラストより少ないためクラムの乾燥は少ない。
また、ブロックであるがため、スライスされたブレッドに比較し体積が大きく、クラムの乾燥した部分が少ないため、好適な食感維持の大きな妨げとはならない。
さらに、再加熱されない場合でも、湿度が低くまた包装されないなどのためにクラストは柔軟化しにくく、乾燥したクリスピーな状態に保たれる。
【0004】
これに対して、我が国では、食文化、すなわち食の様式の違いから、ハードクラスト系ブレッドに関しては、通常2〜4センチ厚さにスライスしたブレッドとして提供されることが多い。
すなわち、我が国では、高湿度の気候と製品を包装しているため、再加熱しないハードクラスト系ブレッドのクラストは軟化して、クラストのクリスピー感、クラムのフンワリ感はなくなり、全体として噛み切りにくい、弾力が有る団子のような食感となり、しかも小麦粉の香ばしい香りは消失してしまうことが多い。
【0005】
また、ハードクラスト系ブレッドを0.5〜4cmにスライスする際、クリスピーな状態でスライスするとクラストが剥離、クラスト片が飛散するという厄介な事態が起こる。
かかる事態を避けるために、パン用スライスナイフを用い軽減することもできるが、用具の準備、専用ナイフを用いても完全に剥離・飛散を止めることはできない。
このような取り扱いの困難性と食べ物の破片が机・床等に飛散することは本来、日本人の感覚にはなじまない違和感のあるものであり、消費意欲と食欲増進の妨げの要因ともなっている。
【0006】
ところで、ハードクラスト系ブレッドの本来の食感を取り戻すために、スライスしてオーブン式トースターで再焼成、すなわちトースト(再加熱)することになると、器具類の構造、機能から、スライスされたブレッドは、水平に置かざるを得なくなり、クラムに多くの熱量が吸収され、クラムは乾燥してしまう。
クラストは水平に置かれているため、熱源からの輻射熱を受ける熱量がクラムより少なく、クラストがクリスピーで香ばしい食味食感になるまで、再焼成すると、クラムは乾燥し、いわゆるラスクのようになり本来の食味食感を再現することは困難である。
【0007】
ここで、従来、特許文献1にフランスパンを焼き上げる方法として自動製パン機が開示されている。
この自動製パン機のフランスパンコースの調理シーケンスは、塩を含む食材を調理開始時にセットする通常フランスパンコースと、調理工程実施中に前記食材の塩を投入する後塩投入フランスパンコースを備えたもので、塩を調理工程実施中に投入することで、パン生地のグルテンを引き締めて、パン生地に弾力を持たせ、ボリューム感のある風味良いフランスパンの調理をすることができるとしている。
【0008】
一方、特許文献2では、いわゆるパンのトーストについてではないが、ピザ用クラストを得るために、冷凍、解凍後もクリスピー性の食感を有し、また、電子レンジ加熱でもクリスピー性が損なわれないとしている。
そのために、発酵を終えたドウを180〜350℃の温度で焼成させて水分量減少させた後、180〜350℃の温度で油ちょうすることによって、さらに水分量を減少させることによって製造する。得られたピザ用クラストは、水分量が0.5〜15重量%及び油脂含量が5〜40重量%で、冷凍、解凍後に加熱調理すると、好ましいクリスピー性を有し、風味が良好なピザが得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−45017号公報
【特許文献2】特開平10−276666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、自動製パン機によるフランスパンの製法であり、焼成後のフランスパンをトーストすることについて記載されているわけではなく、ハードクラスト系のスライスする際のクラストの剥離・飛散・スライス又はブロック状のパンの両端のクラムの乾燥等々の問題点を解決するものではない。
また、特許文献2はいわゆるパンをトーストすることについてではなく、ピザ用クラストを得るために、冷凍、解凍後もクリスピー性の食感を有し、また、電子レンジ加熱でもクリスピー性が損なわれないとしたもので、スライスハードクラスト系ブレッドを対象にしたものでなく、ハードクラスト系のスライスする際のクラストの剥離・飛散・スライス又はブロック状のパンの両端のクラムの乾燥等々の問題点を解決するものではない。
本発明は以上のような背景から提案されたものであって、ハードクラスト系ブレッドを適切にトーストできるように、ブレッドの支持の仕方を工夫し、本来の食感・食味を損なうことなく適切に再焼成できるようにした、焼成パンの焼成補助調理器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明では、軸方向に延在する基体と、基体の少なくとも一端側に立設される端板と、基体の軸方向に端板に対して移動可能に支持されて、対象の焼成パンを、塊毎にそれぞれ立位状態で支持する複数の可動板と、複数の可動板における各可動板間の間隔を調節する可動板間隔調節部と、を具備することを特徴とする。
【0012】
これにより、焼成対象の複数の塊毎に切り分けられた焼成パンの各塊をそれぞれ可動板間に立位状態で挟むことで、各塊を可動板に沿った形で支持され、各塊を好適に焼成することができる。
【0013】
また、請求項2記載の本発明では、基体は、複数の可動板を支持して、軸方向に伸縮調節可能な調節軸と、調節軸に平行に配置され、可動板を軸方向に案内移動する案内軸部と、を有し、可動板間隔調節部は、調節軸を軸方向に調節することで複数の可動板をそれぞれ軸方向に移動調節する回動操作部を備えたことを特徴とする。
【0014】
これにより、焼成対象の複数の塊毎に切り分けられた焼成パンの各塊を、脱落することなく、支持することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の本発明では、可動板間隔調節部は、少なくとも端板と隣接する可動板間に設けられ、それぞれの可動板間に、焼成対象の焼成パンの塊を、それぞれ立位状態で挟持するように付勢する付勢手段を具備する、ことを特徴とする。
【0016】
これにより、厚さの異なる塊を可動板間に保持して、好適に焼成することができる。また、ハードクラスト系ブレッドの全体量、すなわち容積に合わせて任意の厚さに切り分けられた各塊で適切に焼成することができる。
【0017】
また、請求項4に記載の本発明では、可動板間隔調節部は、可動板間に介在されたスペーサ部材を具備する、ことを特徴とする。
【0018】
これにより、各可動板は、焼成パンの切り分けられた各塊を、各可動板間に装入する際に、各可動板同士が密接して隙間が無くなることにより、装入しづらくなるのを防止することができる。
【0019】
さらに、請求項5に記載の本発明では、基体の両端に立設された一対の端板間に取出し/持上げ用レバーが設けられている、ことを特徴とする。
【0020】
これにより、焼成後の取出しが容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、焼成または購入後、時間が経過したハードクラスト系ブレッドを、家庭または食堂等でスライスして食卓に提供するに際し、既存のオーブンタイプの加熱器を用い、立てた状態で焼くことができるので、本来の焼きたての食味・食感・風味を良好に再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る焼成パンの焼成補助調理器具の第1実施形態を示す、外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す焼成補助調理器具の平面図である。
【
図3】
図1に示す焼成補助調理器具をトースターに配置して焼成する際の斜視図である。
【
図4】本発明に係る焼成パンの焼成補助調理器具の第2実施形態を示す、外観斜視図である。
【
図5】
図4に示す焼成補助調理器具の平面図である。
【
図6】本発明に係る焼成パンの焼成補助調理器具の第3実施形態を示す、外観斜視図である。
【
図7】
図6に示す焼成補助調理器具の平面図である。
【
図8】本発明に係るハードクラスト系ブレッドの本発明に係る焼成パンの焼成補助調理器具の第4実施形態を示す平面図である。
【
図9】
図8に示す焼成補助調理器具の要部を拡大して示した斜視図である。
【
図10】本発明に係る焼成パンの焼成補助調理器具の第5実施形態を示す、外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳細に説明する。但しこの実施形態例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨でなく、単なる説明例に過ぎない。
【0024】
(第1実施形態)
図1に第1実施形態に係る焼成パンの焼成補助調理器具1を示す。なお、ここでの焼成パンは、特には、ハードクラスト系ブレッドを挙げて説明する。
この焼成補助調理器具1は、基体2の両端に固定され、対向するように配置した一対の端板3a、3bと、基体2に移動可能に設けられて、対象の焼成パンを、塊毎にそれぞれ立位状態で指示する複数の可動板4と、複数の可動板4における各可動板4間の間隔を調節する可動板間隔調節部5と、を具備する。
なお、焼成補助調理器具1に使用する素材、すなわち端板3a、3bや可動板4は、金属板でアルミ、ステンレス等を用い、金属板は厚さ1〜2mm(0.5〜2mm)とするのが好ましい。
【0025】
基体2は、複数の可動板4の下部側中心部に挿通して可動板4を、それぞれ軸方向に移動可能とする調節軸6と、調節軸6に平行に可動板4に挿通され、可動板4を軸方向に案内移動する3つの案内軸部7とを有する。
調節軸6は、固定パイプ6aと固定パイプ6aに螺入進退可能なネジシャフト6bとを具備する。
3つの案内軸部7は、それぞれ、ガイドパイプ7aとガイドパイプ7aに進退可能な可動軸7bとを具備する。これら調節軸6の固定パイプ6aの端部は、一対の端板3a、3bのうちの一つの端板3aの下部中央部位に固定され、3つの案内軸部7のうち、2つの案内軸部7におけるガイドパイプ7aの端部は、端板3aの下部両側部位に固定される。そして残りの案内軸部7は、ガイドパイプ7aの端部が端板3aの中央側部寄りの位置に固定され、対向する端板3bに向かってガイドパイプ7aおよび可動軸7bを中央側部寄りの位置を貫いて、可動軸7b先端が対向する端板3bに固定されている。
端板3a、3bの下部中央部位を貫く調節軸6を挟んで下部両側部位に位置する2つの案内軸部7間の距離は、対象の焼成パンの塊の底部寸法に対応し、焼成パンの塊の底部を調節軸6と2つの案内軸部7とで脱落しないように支持するようになっている。
そして、調節軸6の固定パイプ6aとネジシャフト6bとにおいて、一対の端板3a、3bのうちの他の端板3bの下部中央部位に、ネジシャフト6bの端部が貫通し、ネジシャフト6bを回動させて、ネジシャフト6bを固定パイプ6aに進退させる回動操作部8を備えている。回動操作部8は、ネジシャフト6bの端部が固定された端板3bの下部外側面に突出している。
なお、調節軸6の固定パイプ6aとネジシャフト6bとは、ほぼ同程度の長さとして再焼成対象のブレッドの量により1〜1/2の器具長に調整可能としている。
【0026】
そして、焼成補助調理器具1には、基体2の両端に固定された一対の端板3a、3b間に取出し/持上げ用レバー9が設けられている。
取出し/持上げ用レバー9は、軸部材を用いて加工され、端板3a、3bにそれぞれ回動可能に軸着された回動軸9a、9aと、これら回動軸9a、9a先端に連結した操作軸9bとで構成される。回動軸9a、9aと操作軸9bとは、それぞれリング状に湾曲加工した先端リング部9al、9blを介して連結している。また、操作軸9bは中間部を中心として、くの字状に屈曲され、中間部に中央リング部9brが形成されている。そして、かかる操作軸9bの中央リング部9brに、取出し/持上げ操作用の操作棒10の先端フック10fを引っ掛けて、焼成補助調理器具1をトースター(後述)から取出して持ち上げ可能としている。なお、取出し/持上げ用レバー9の端板3a、3bにおける軸着箇所近傍には、取出し/持上げ用レバー9を持ち上げた際に回動軸9a、9aが必要以上(例えば軸着箇所中心に略100度)に回動しないように阻止する突起部9tが設けられている。
【0027】
次に、以上のような焼成補助調理器具1を用いて、ハードクラスト系ブレッドBの調理手順を説明する。
ハードクラスト系ブレッドBを適当な厚さに切り分ける。切り分けられた各塊、すなわち各ブロックBpは、調理者が目分量で切り分けたもので、厚さにばらつきがある。
【0028】
次に調理者は、回動操作部8を回動操作し、基体2の固定パイプ6aにネジシャフト6bを螺入進退させ、基体2の長さ、すなわち、一対の端板3a、3b間の距離を調節することができる。
これにより、基体2上の複数の可動板4間を調節することができる。
【0029】
次いで調理者は、各可動板4間に切り分けられた各ブロックBpを載置して、回動操作部8を回動操作して各可動板4間の間隔を調節し、各ブロックBpは可動板に接触する。(
図2参照)。
【0030】
そして、焼成補助調理器具1の上下に配置されるオーブントースターOtの熱源を起動させ、可動板4に沿った状態で支持されたハードクラスト系ブレッドBの各ブロックBpに対し、加熱を行う(
図3参照)。
【0031】
これにより、ハードクラスト系ブレッドBの各ブロックBpは、クラストに上下熱源の輻射熱がクラムに対し多く輻射される。
一方、熱風循環式の場合にあっては、クラストが直接熱風に接触するためクラムに対し、多くの熱量がクラストに吸収される。
【0032】
切り分けられたハードクラスト系ブレッドBの各ブロックBpは、隣接する可動板4に接触して立てた状態に保持され、上下の熱源からの輻射熱はクラストにより遮断されているため、クラストに比較しクラムに吸収される熱量は少ない。
一方、熱風循環式の加熱器にあっては、クラムは可動板4に挟まれているためクラムに比較し吸収される熱量は少ない。
【0033】
さらに、上下熱源方式、熱風循環方式または併用されているオーブンでは、クラストの水分は蒸散し、クラムはクラストより温度が低いからクラストの水分の1部はクラムに吸収されクラムの乾燥防止に寄与することができる。
また、クラムは隣接する可動板4に挟まれているため、可動板4からの伝熱と、クラストからの伝熱により加温されスポンジ小組織は柔軟になる。
【0034】
可動板4に挟まれたクラムは加熱され品温は高くなり、水分の蒸散が発生するが可動板4に接触しているため密封された状態となり可動板4とクラムの極微小な空間の空気の水分は飽和に達し、クラムからの水分の蒸散は少なくなる。
可動板4がほぼ密着状態でクラムに接しているためクラムからオーブン内に蒸発する水分は微小である。
これらのことよりハードクラス系のスライスブレッドBを本実施形態の焼成補助調理器具1で再焼成すると本来のクラストはパリッとクリスピーで香ばしく、クラムはフンワリとして小麦と醗酵のかぐわしい香りを再現することができる。
【0035】
なお、再焼成調理に要する加熱時間は通常家庭で食パンをトーストするオーブン内温度150〜250℃、5〜2分程度と同程度で特別な操作、時間は必要としない。
【0036】
トーストが終わったら、調理者は、取出し/持上げ用レバー9を操作して、焼成補助調理器具1をオーブントースターOtから取り出す。調理者は、取出し/持上げ操作用の操作棒10の先端フック10fを操作軸9bの中央リング部9brに引っ掛けて、焼成補助調理器具1を取り出すことができる。
このとき、焼成補助調理器具1が調節軸6の軸周りに傾くようなことがあっても、ハードクラスト系ブレッドBの各ブロックBpは、底部を調節軸6と2つの案内軸部7とで支え、側部を端板3a、3b中央側部寄りの位置を貫いて設けられる案内軸部7で支えられているので、各ブロックBpは、焼成補助調理器具1から脱落することはない。
焼成補助調理器具1をオーブントースターOtから取出して、焼成補助調理器具1を持ち上げると、端板3a、3bに軸着された回動軸9a、9aが、先端リング部9al、9blを焼成補助調理器具1の上方に向かって回転するが、取出し/持上げ用レバー9の端板3a、3bにおける軸着箇所近傍に設けた突起部9tにより、回動軸9a、9aが、例えば軸着箇所中心に略100度以上に回動しないように阻止することで、可動板4間に挟んだ状態のハードクラスト系ブレッドBの各ブロックBpを可動板4間から脱落しないように保持することができる(
図3参照)。
【0037】
(第2実施形態)
焼成補助調理器具1は、以下のように構成することもできる。
すなわち、
図4、
図5に示すように、焼成補助調理器具1には、一対の端板3a、3b間の複数の可動板4間に、可動板間隔調節部5として、再焼成対象の複数ブロックに切り分けられたハードクラスト系ブレッドBの各ブロックBpを、それぞれ立位状態で挟持するように付勢する付勢手段20を設けることができる。
この場合の焼成補助調理器具1では、基体2は中央軸方向と、中央軸の両側方向と、側面に平行に配置した4本の所定長のガイドパイプ21からなる。
かかる4つのガイドパイプ21は、それぞれのガイドパイプ21の両端部は1対の端板3a、3bの端板の下部中央、端板3bの下部両側部位、側面縦位置に固定される。
【0038】
そして、ガイドパイプ21の端部側に固定される端板3bと可動板4間に配設される付勢手段20は、コイルスプリングであり、かかるコイルスプリングの付勢力によって、ハードクラスト系ブレッドBの切り分けられたブロックBpを可動板4間に保持されるようになっている。
【0039】
かかる第2実施形態によれば、厚さの異なるブロックBpを可動板4間に保持して、好適に焼成することができる。また、ハードクラスト系ブレッドBの全体量、すなわち容積に合わせて任意の厚さに切り分けられた各ブロックBpで適切に焼成することができる。
【0040】
本発明は、以下の第3実施形態によっても実施することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態にかかる焼成補助調理器具1では、4本のガイドパイプ21に、複数の可動板4が可動板間隔調節部5としてスペーサ部材30を介して挿通されている(
図6、
図7参照)。
かかるそれぞれ4本のガイドパイプ21の端部が一対の端板3a、3bのうちの一つの端板3aの下部中央部位、端板3aの下部両側部位、それぞれのガイドパイプ21の両端部は1対の端板3a、3bの端板の下部中央、端板3a、3bの下部両側部位、側面縦位置に固定される。
【0041】
スペーサ部材30が存在することで各可動板4は、ハードクラスト系ブレッドBの切り分けられたブロックBpを各可動板4間に装入する際に、各可動板4同士が密接して隙間が無くなることにより、装入しづらくなるのを防止することができる。
切り分けたブレッドBpを2枚の可動板4に差し込みやすく間隔を広げるために可動板4の間に3〜5mm程度のアルミ又はステンレスのパイプを焼成補助調理器具1も下部水平移動する可動軸に差し込み可動板4同士の間隔を保つことができる。
【0042】
以上、本発明に係る焼成補助調理器具1についての実施形態を挙げ、説明した。
本発明に係る焼成補助調理器具1は、
図8、
図9に示すように構成することもできる。
例えば、第2実施形態の変形例として、付勢手段20であるコイルスプリングの各ピッチを構成する各コイル部20cpが、それぞれ、複数の可動板4に差し込まれ、全ての可動板4を、付勢手段20における各コイル部20cpの付勢下に、伸縮軸部21におけるガイドパイプ21上を可動板4間の間隔が狭まる方向に付勢されるようになっている。
【0043】
かかる焼成補助調理器具1によれば、付勢手段20を構成する各コイル部20cpによって及ぼされる、各可動板4間の間隔が狭まる方向の付勢力により、一層、好適に厚さの異なるブロックBpを可動板4間に保持することができ、ハードクラスト系ブレッドBの容積に合わせて任意の厚さに切り分けられた各ブロックBpで適切に焼成することができる。
【0044】
さらに、本発明に係る焼成補助調理器具1は、
図10に示すように構成することもできる。
すなわち、可動板間隔調節部5として、基体2が例えばステンレス等の金属棒で形成され、図中、互いにa方向に、スライド可能に配置した2つの枠体2a、2bからなる。これら枠体2a、2bは、それぞれ横枠2ahと横枠2ahに一体的に立設した縦枠2av、2bvとを有する。縦枠2av、2bvは、高さが2av>2bvとなっており、縦枠2avには可動板4hが、縦枠2bvには可動板4lが差し込まれて、支持されるようになっている。
【0045】
このような焼成補助調理器具1によれば、高さの異なる可動板4h、4lを交互に並べて配列スライスブレッドを挿入するときに間隙を作りやすくした構造とすることができる。
なお、かかる焼成補助調理器具1の構造は、上述のように基体2における各枠体2a、2bの横枠2ahと横枠2ahにそれぞれ一体的に立設した縦枠2av、2bvに可動板4h、4lが差し込まれるようになっているため、全体ががたつくことのない構造的な強度がもたらされる。
このため、ハードクラスト系ブレッドBを再焼成後、オーブントースターOtから取出された後、食卓にハードクラスト系ブレッドBの各ブロックBpを可動板4h、4l間に挟んだ状態で、置いておくことができる。この際、焼成補助調理器具1は基体2を卓上に、あるいは基体2の端に差し込まれた可動板4h、4lを下にして基体2を卓上に対して鉛直状に立てた状態で置くことができる。
したがって、食事の直前まで、ハードクラスト系ブレッドBを再現された本来の食感を損なうことなく維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の焼成補助調理器具1は、ハードクラスト系ブレッドに限らず、さまざまな生地の食パンに適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 焼成補助調理器具
2 基体
2a、2b枠体
2ah、2bh横枠
2av、2bv縦枠
3a、3b端板
4、4h、4l 可動板
5 可動板間隔調節部
6 調節軸
6a固定パイプ
6bネジシャフト
7 案内軸部
7aガイドパイプ
7b可動軸
8 回動操作部
9 取出し/持上げ用レバー
9a回動軸
9b操作軸
9al、9bl先端リング部
9br中央リング部
9t突起部
10操作棒
10f先端フック
20付勢手段
20cpコイル部
21ガイドパイプ
30スペーサ部材
B ハードクラスト系ブレッド
Bpブロック