(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247069
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ポリマー厚膜導体組成物のラミネーション
(51)【国際特許分類】
H05K 3/12 20060101AFI20171204BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20171204BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20171204BHJP
H01B 1/22 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
H05K3/12 610D
H01B13/00 503D
H05K3/12 610B
H05K1/09 A
H05K1/09 D
!H01B1/22 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-212872(P2013-212872)
(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-78716(P2014-78716A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2016年10月11日
(31)【優先権主張番号】13/648,710
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラリー アラン ビッドウェル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ.チャンプ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン シー.クランプトン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ロバート ドーフマン
【審査官】
小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−083286(JP,A)
【文献】
特開2007−250619(JP,A)
【文献】
特許第4954885(JP,B2)
【文献】
特開2011−076899(JP,A)
【文献】
特表2012−509965(JP,A)
【文献】
特開2009−065008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
H05K 3/12
H01B 1/22
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路に電導体を形成する方法が、
a)基板を提供する工程と、
b)ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物、ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマー厚膜導体組成物を提供する工程と、
c)前記基板上へ前記厚膜導体組成物を塗布する工程と、
d)任意選択で前記厚膜導体組成物を乾燥させる工程と、
e)前記厚膜導体組成物にラミネーションを行い、前記電導体を形成する工程と
を含み、
前記ポリマー厚膜導体組成物が、ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物であり、前記ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物が、
(a)スズ、銀および銅からなり、かつ、2〜18μmの平均粒径および0.2〜1.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する、65〜95重量%のはんだ合金粉末であって、(b)の有機媒体に分散される、65〜95重量%のはんだ合金粉末と、
(b)5〜35重量%の有機媒体であって、
(1)(2)の有機溶媒に溶解される、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂と、
(2)二塩基性エステルを含む有機溶媒と、
を含む、5〜35重量%の有機媒体とを含み、
前記重量%が、前記ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物の全重量に基づいており、
前記スズが前記はんだ合金粉末の90重量%より多い、方法。
【請求項2】
電気回路に電導体を形成する方法が、
a)基板を提供する工程と、
b)ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物、ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマー厚膜導体組成物を提供する工程と、
c)前記基板上へ前記厚膜導体組成物を塗布する工程と、
d)任意選択で前記厚膜導体組成物を乾燥させる工程と、
e)前記厚膜導体組成物にラミネーションを行い、前記電導体を形成する工程と
を含み、
前記ポリマー厚膜導体組成物が、ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物であり、前記ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物が、
(a)スズ、銀および銅合金粉末からなる35〜94重量%のはんだ合金粉末であって、前記合金粉末が、2〜18μmの平均粒径および0.2〜1.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する粒子からなる、35〜94重量%のはんだ合金粉末と、
(b)銀、銅、金、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される1〜30重量%の金属であって、前記金属が、2〜18μmの平均粒径および0.1〜2.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する粒子からなる、1〜30重量%の金属と、
(c)5〜35重量%の有機媒体であって、
(1)(2)の有機溶媒に溶解される、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂またはフェノキシ樹脂と、
(2)二塩基性エステルまたはグリコールエーテルを含む有機溶媒と、
を含む、5〜35重量%の有機媒体と
を含むが、ただし、前記樹脂がフェノキシ樹脂である場合、前記金属は銀であり、前記はんだ合金粉末および前記金属が前記有機媒体に分散され、前記重量%が前記ポリマー厚膜導体組成物の全重量に基づいており、
前記スズが前記はんだ合金粉末の90重量%より多い、方法。
【請求項3】
ポリマー厚膜導体組成物から形成された電導体の抵抗を低下させる方法であって、前記方法が前記電導体にラミネーションを行う工程を含み、
前記ポリマー厚膜導体組成物が、ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物であり、前記ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物が、
(a)スズ、銀および銅からなり、かつ、2〜18μmの平均粒径および0.2〜1.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する、65〜95重量%のはんだ合金粉末であって、(b)の有機媒体に分散される、65〜95重量%のはんだ合金粉末と、
(b)5〜35重量%の有機媒体であって、
(1)(2)の有機溶媒に溶解される、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂と、
(2)二塩基性エステルを含む有機溶媒と、
を含む、5〜35重量%の有機媒体と
を含み、前記重量%が、前記ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物の全重量に基づく重量%に基づいており、
前記スズが前記はんだ合金粉末の90重量%より多い、方法。
【請求項4】
ポリマー厚膜導体組成物から形成された電導体の抵抗を低下させる方法であって、前記方法が前記電導体にラミネーションを行う工程を含み、
前記ポリマー厚膜導体組成物が、ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物であり、前記ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物が、
(a)スズ、銀および銅合金粉末からなる35〜94重量%のはんだ合金粉末であって、前記合金粉末が、2〜18μmの平均粒径および0.2〜1.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する粒子からなる、35〜94重量%のはんだ合金粉末と、
(b)銀、銅、金、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、1〜30重量%の金属であって、前記金属が、2〜18μmの平均粒径および0.1〜2.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する粒子からなる、1〜30重量%の金属と、
(c)5〜35重量%の有機媒体であって、
(1)(2)の有機溶媒に溶解される、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂またはフェノキシ樹脂と、
(2)二塩基性エステルまたはグリコールエーテルを含む有機溶媒と、
を含む、5〜35重量%の有機媒体と
を含むが、ただし、前記樹脂がフェノキシ樹脂である場合、前記金属は銀であり、前記はんだ合金粉末および前記金属が前記有機媒体に分散され、前記重量%が、前記ポリマー厚膜導体組成物の全重量に基づいており、
前記スズが前記はんだ合金粉末の90重量%より多い、方法。
【請求項5】
ポリマー厚膜導体組成物から形成された電導体を含む電気デバイスであって、前記電導体がラミネーションが行われたものであり、
前記ポリマー厚膜導体組成物が、ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物であり、前記ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物が、
(a)スズ、銀および銅からなり、かつ、2〜18μmの平均粒径および0.2〜1.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する、65〜95重量%のはんだ合金粉末であって、(b)の有機媒体に分散される、65〜95重量%のはんだ合金粉末と、
(b)5〜35重量%の有機媒体であって、
(1)(2)の有機溶媒に溶解される、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂と、
(2)二塩基性エステルを含む有機溶媒と、
を含む、5〜35重量%の有機媒体と
を含み、前記重量%がポリマー厚膜はんだ合金導体組成物の全重量に基づいており、
前記スズが前記はんだ合金粉末の90重量%より多い、電気デバイス。
【請求項6】
ポリマー厚膜導体組成物から形成された電導体を含む電気デバイスであって、前記電導体がラミネーションが行われたものであり、
前記ポリマー厚膜導体組成物が、ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物であり、前記ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物が、
(a)スズ、銀および銅合金粉末からなる35〜94重量%のはんだ合金粉末であって、前記合金粉末が、2〜18μmの平均粒径および0.2〜1.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する粒子からなる、35〜94重量%のはんだ合金粉末と、
(b)銀、銅、金、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、1〜30重量%の金属であって、前記金属が、2〜18μmの平均粒径および0.1〜2.3m2/gの範囲の表面積/質量比を有する粒子からなる、1〜30重量%の金属と、
(c)5〜35重量%の有機媒体であって、
(1)(2)の有機溶媒に溶解される、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂またはフェノキシ樹脂である樹脂と、
(2)二塩基性エステルまたはグリコールエーテルを含む有機溶媒と、
を含む、5〜35重量%の有機媒体と
を含むが、ただし、前記樹脂がフェノキシ樹脂である場合、前記金属は銀であり、前記はんだ合金粉末および前記金属が前記有機媒体に分散され、前記重量%が、前記ポリマー厚膜導体組成物の全重量に基づいており、
前記スズが前記はんだ合金粉末の90重量%より多い、電気デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な用途のためのポリマー厚膜(PTF)導体組成物のラミネーション(lamination)に関する。一実施形態において、PTF導体組成物は、ポリエステルなどの基板上にスクリーン印刷された導体として使用される。PTF導体は電極として機能する。さらにこの組成物は、伝導率(低抵抗率)が必要とされる他のいずれかの用途のために使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電子デバイスで使用するためのポリマー厚膜導体組成物に関する。PTF銀導体は、銀の低抵抗率(<50ミリオーム/スクエア)および信頼性のため、電子回路において適切な導体として非常に一般的である。しかしながら、近年では銀の価格は3倍になり30ドル/トロイオンスを超える程度となり、したがって、回路で使用には高価となっている。電気特性をほとんど妥協せず、費用が低い銀の代替物が求められている。そのような代替物を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、
a)基板を提供する工程と、
b)ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物、ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマー厚膜導体組成物を提供する工程と、
c)基板上へ厚膜導体組成物を塗布する工程と、
d)厚膜導体組成物に温度および/または圧力の下でラミネーションを行う工程と
を含む、電気回路において電導体を形成する方法を提供する。
【0004】
一実施形態において、この方法は、工程(c)の後、工程(d)の前に実行される厚膜導体組成物を乾燥させる工程をさらに含む。組成物は、全溶媒を除去するために必要とされる時間および温度で処理されてもよい。さらに、乾燥工程後のラミネーションによって、50〜70%抵抗が低下する。
【0005】
一実施形態において、ポリマー厚膜導体組成物は、ポリマー厚膜はんだ合金導体組成物の全重量に基づく重量%で、
(a)(b)の有機媒体に分散される、スズ、銀および銅からなり、そして2〜18μmの平均粒径および0.2〜1.3m
2/gの範囲の表面積/質量比を有する65〜95重量%のはんだ合金粉末と、
(b)
(i)塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂であって、
(2)二塩基性エステルを含む有機溶媒に溶解される塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂
を含む、5〜35重量%の有機媒体と
を含むポリマー厚膜はんだ合金導体組成物である。
【0006】
別の実施形態において、ポリマー厚膜導体組成物は、ポリマー厚膜導体組成物の全重量に基づく重量%で、
(a)(i)スズ、銀および銅合金粉末、(ii)スズおよびビスマス合金粉末、ならびに(iii)それらの混合物からなる群から選択され、2〜18μmの平均粒径および0.2〜1.3m
2/gの範囲の表面積/質量比を有する粒子からなる35〜94重量%のはんだ合金粉末と、
(b)銀、銅、金、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、2〜18μmの平均粒径および0.1〜2.3m
2/gの範囲の表面積/質量比を有する粒子からなる1〜30重量%の金属と、
(c)
(1)塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルのビニルコポリマー樹脂またはフェノキシ樹脂である樹脂であって、
(2)二塩基性エステルまたはグリコールエーテルを含む有機溶媒が溶解される樹脂、
を含む、5〜35重量%の有機媒体と
を含むが、ただし、上記樹脂がフェノキシ樹脂である場合、上記金属は銀であり、上記はんだ合金粉末および上記金属は上記有機媒体に分散される、ポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物である。
【0007】
また本発明は、上記方法の実施形態のいずれかによって形成された電導体を含む電気デバイスを提供する。
【0008】
本発明は、電導体にラミネーションを行う工程を含む、ポリマー厚膜導体組成物から形成された電導体の抵抗を低下させる方法をさらに提供する。そのような電導体を含む電気デバイスも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般に、厚膜組成物は、組成物に適切な電気的機能特性を与える機能相を含む。機能相は、機能相の担体として作用する有機媒体に分散された電気的機能性粉末を含む。一般に、厚膜技術において、組成物は焼成されて、有機物を燃焼し、そして電気的機能特性がもたらされる。しかしながら、ポリマー厚膜の場合、有機物は、乾燥後の組成物の必要不可欠な部分として残存する。本明細書で使用される「有機物」は、厚膜組成物のポリマー、樹脂または結合剤成分を含む。これらの用語は交換可能に使用されてもよく、そしてそれらの全ては同一のものを意味する。
【0010】
一実施形態において、ポリマー厚膜導体組成物は、ポリマー樹脂および溶媒を含む有機媒体に分散されるSAC(スズ、銀、銅)合金粉末を含むポリマー厚膜はんだ合金導体組成物である。
【0011】
別の実施形態において、ポリマー厚膜導体組成物は、SAC合金粉末、Sn/Bi合金粉末または両方の混合物、ならびに銀、銅、金、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属を含み、はんだ合金粉末および金属が、ポリマー樹脂および溶媒を含む有機媒体に分散されるポリマー厚膜はんだ合金/金属導体組成物である。
【0012】
要約すると、ポリマー厚膜導体組成物の主成分は、ポリマー樹脂および溶媒を含む有機媒体に分散される導体粉末である。2つの実施形態において使用されるポリマー厚膜導体組成物を以下に記載する。
【0013】
厚膜はんだ合金導体組成物の実施形態
A.導体粉末
厚膜はんだ合金導体組成物の電気的機能性粉末は、SAC合金として既知のスズ、銀および銅を含有するはんだ合金導体粉末である。ここではスズが最大成分であり、すなわち、90重量%より多い。
【0014】
はんだ合金粉末で使用される粒子直径および形状は特に重要であり、適用方法に適切でなければならない。一実施形態において、粒子は球状である。別の実施形態において、粒子はフレークの形状である。はんだ合金粒子の粒径分布も、本発明の有効性に関して重要である。実際には、粒径は1〜100μmの範囲にある。一実施形態において、平均粒径は2〜18μmである。加えて、はんだ合金粒子の表面積/重量比率は0.2〜1.3m
2/gの範囲にある。
【0015】
さらに、導体の特性を改善するために、少量の1種またはそれ以上の他の金属をはんだ合金導体組成物に添加してもよいことが知られている。そのような金属のいくつかの例には、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、白金、パラジウム、モリブデン、タングステン、タンタル、スズ、インジウム、ランタン、ガドリニウム、ホウ素、ルテニウム、コバルト、チタン、イットリウム、ユウロピウム、ガリウム、硫黄、亜鉛、ケイ素、マグネシウム、バリウム、セリウム、ストロンチウム、鉛、アンチモン、伝導性炭素、およびそれらの組み合わせ、ならびに厚膜組成物の技術において一般的な他が含まれる。追加的な金属は、全組成物約1.0重量%まで含んでもよい。
【0016】
はんだ合金表面のあらゆる酸化を還元させるため、有機酸をはんだ合金のための還元剤として使用してもよい。
【0017】
B.有機媒体
はんだ合金粉末は、典型的に、印刷に適切な粘稠性およびレオロジーを有する「ペースト」と呼ばれるペースト状組成物を形成するために機械的混合によって有機媒体(媒剤)と混合される。有機媒体は、固体が適度な安定性によって分散可能であるものでなければならない。有機媒体の流動学的特性は、それらが組成物に良好な塗布特性を与えるようなものでなければならない。そのような特性には、適度な安定性を有する固体の分散、組成物の良好な塗布、適切な粘度、チキソトロピー、基板および固体の適切な湿潤性、良好な乾燥速度、および乱暴な取り扱いに耐えるのに十分な乾燥膜強度が含まれる。
【0018】
有機媒体は、有機溶媒中のポリマーの溶液を含む。有機媒体は当該技術では慣習的ではなく、組成物にユニークな特性を与える。
【0019】
本実施形態で使用される樹脂は、塩化ビニリデンとアクリロニトリルとのビニルコポリマーであり、これは、はんだ合金粉末の高重量装填を可能にし、したがって、そして、基板に対する良好な接着力および低抵抗率(高い伝導率)の両方を達成するために役立つ。これら2つは、電子回路における導体に関して重要な特性である。追加的に、このポリマーは、ペースト中で自己流動成分として作用するようであり、外部還元剤は必要とされない。
【0020】
広範囲の種々の不活性液体を、有機媒体中の溶媒として使用することができる。厚膜組成物で見られる最も広く使われる溶媒は、酢酸エチル、およびアルファまたはベータテルピネオールなどのテルペン、あるいはケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールならびに高沸点アルコールおよびアルコールエステルなどの他の溶媒とのそれらの混合物である。加えて、基板上に塗布後の急速硬化を促進するための揮発性の液体が溶剤に含まれることが可能である。本発明の多くの実施形態において、グリコールエーテル、ケトン、エステルおよび同様の沸点(180℃〜250℃の範囲)を有する他の溶媒などの溶媒、ならびにそれらの混合物が使用されてもよい。一実施形態において、有機媒体は、二塩基性エステルおよびC−11ケトン溶媒に基づく。これらおよび他の溶媒の様々な組み合わせは、所望の粘度および揮発性の必要条件を得るために調製される。
【0021】
厚膜はんだ合金/金属導体組成物の実施形態
A.導体粉末
厚膜はんだ合金/金属導体組成物の電気的機能性粉末は、(1)SAC合金として既知の、スズが最大パーセント、すなわち90重量%より多いスズ、銀および銅合金粉末、少なくとも40重量%スズを有するSn/Bi合金粉末、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるはんだ合金導体粉末、ならびに(2)銀、銅、金、アルミニウムまたはそれらの混合物からなる群から選択される金属粉末/フレークである。
【0022】
はんだ合金粉末および純粋金属の両方において使用される粒子直径および形状は特に重要であり、塗布方法に適切でなければならない。はんだ合金粒子および純粋金属の粒径分布も、本発明の有効性に関して重要である。実際には、粒径は1〜100μmの範囲にある。一実施形態において、はんだ合金および金属の両方の平均粒径は2〜18μmである。加えて、はんだ合金粒子の表面積/重量比率は0.2〜1.3m
2/gの範囲にあり、一方、金属の場合は0.1〜2.3m
2/gである。銀および銅が2つの好ましい金属粒子であるが、この実施形態はそれらの2つの金属に限定されず、そして金およびアルミニウムなどの他の金属も使用することができる。
【0023】
はんだ合金表面のあらゆる酸化を還元させるため、有機酸をはんだ合金のための還元剤として使用してもよいが、ここでは必要とされない。
【0024】
B.有機媒体
粉末は、典型的に、印刷に適切な粘稠性およびレオロジーを有する「ペースト」と呼ばれるペースト状組成物を形成するために機械的混合によって有機媒体(媒剤)と混合される。有機媒体は、固体が適度な安定性によって分散可能であるものでなければならない。有機媒体の流動学的特性は、それらが組成物に良好な塗布特性を与えるようなものでなければならない。そのような特性には、適度な安定性を有する固体の分散、組成物の良好な塗布、適切な粘度、チキソトロピー、基板および固体の適切な湿潤性、良好な乾燥速度、および乱暴な取り扱いに耐えるのに十分な乾燥膜強度が含まれる。
【0025】
有機媒体は、有機溶媒中のポリマーの溶液を含む。有機媒体は当該技術では慣習的ではなく、組成物にユニークな特性を与える。
【0026】
本実施形態のポリマー樹脂は、特に重要である。本発明で使用される適切な樹脂は、塩化ビニリデンとアクリロニトリルとのビニルコポリマーであり、これは、はんだ合金粉末の高重量装填を可能にし、したがって、そして、基板に対する良好な接着力および低抵抗率(高い伝導率)の両方を達成するために役立つ。これら2つは、電子回路における導体に関して重要な特性である。追加的に、このポリマーは、ペースト中で自己流動成分として作用するようであり、外部還元剤は必要とされない。あるいは、銀が添加された金属である場合のみ、フェノキシ樹脂をいくつかの調製物において使用してもよい。
【0027】
広範囲の種々の不活性液体を、有機媒体中の溶媒として使用することができる。厚膜組成物で見られる最も広く使われる溶媒は、酢酸エチル、およびアルファまたはベータテルピネオールなどのテルペン、あるいはケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールならびに高沸点アルコールおよびアルコールエステルなどの他の溶媒とのそれらの混合物である。加えて、基板上に塗布後の急速硬化を促進するための揮発性の液体が溶剤に含まれることが可能である。本発明の多くの実施形態において、グリコールエーテル、ケトン、エステルおよび同様の沸点(180℃〜250℃の範囲)を有する他の溶媒などの溶媒、ならびにそれらの混合物が使用されてもよい。一実施形態において、有機媒体は、二塩基性エステルおよびC−11ケトンに基づく。これらおよび他の溶媒の様々な組み合わせは、所望の粘度および揮発性の必要条件を得るために調製される。
【0028】
厚膜の塗布
「ペースト」としても知られるポリマー厚膜導体組成物は、典型的に、本質的に気体および水分に不浸透性であるポリエステルなどの基板上で析出される。基板は、可撓性材料のシートであることもできる。一例は、その上に析出された任意の金属または誘電層を有するプラスチックシートの組み合わせから構成される複合材料などの不浸透性プラスチックである。基板は、140℃の処理温度に耐えるようなものでなければならない。一実施形態において、基板は金属化はんだ合金ペーストによる層の蓄積であることができる。
【0029】
ポリマー厚膜はんだ合金/金属組成物の析出は、好ましくは、スクリーン印刷によって実行されるが、ステンシル印刷、シリンジ分配またはコーティング技術などの他の析出技術を使用することもできる。スクリーン印刷の場合、スクリーンメッシュサイズによって、析出する厚膜の厚さが制御される。
【0030】
ラミネーション
ラミネーションは、様々な材料を使用することから、複合材料が、改善された強度、安定性、外観または他の特性を達成するように、材料を多層に製造する技術である。ラミネートは、通常、熱、圧力、溶接または接着剤によって永久的に組み立てられる。一実施形態において、熱と圧力との組み合わせが使用される。ロールラミネーターは、ラミネーションプロセスを完了するために典型的には2本のロールを使用し、1本のロールは上部にあり、もう1本のロールは底部にある。これらのロールは、マンドレルとして知られる金属バー上をスライドし、次いで機械に配置され、機械を通して供給する。様々な温度、圧力設定が使用されてもよい。析出された厚膜導体組成物のラミネーションによって、低抵抗率、すなわち、15ミリオーム/スクエア程度の低さの導体が提供される。
【0031】
一実施形態において、ラミネーションの前に、析出された厚膜導体組成物を、典型的に140℃で10〜15分間の低温加熱に曝露することによって乾燥させる。これは、はんだ合金(SAC305)の1種の液相線温度217℃より約80℃低い初期乾燥温度で達成される。
【0032】
実際的な実施例によって本発明をより詳細に検討する。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実際的な実施例によって制限さるものでは決してない。
【実施例】
【0033】
実施例および比較実験
比較実験A
10μmの平均球状粒径(範囲は5〜15μmであった)を有するはんだ合金粉末SAC305(AMTECH,SMT International LLC,Deep River,CN)および5ミクロンの平均粒径を有する銀フレークを、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリル樹脂(Saran(商標)F−310 resin,Dow Chemical Co.,Midland,MI)のコポリマーから構成される有機媒体と混合することによって、PTFはんだ合金/金属導体組成物を調製した。樹脂の分子量は約25,000であった。はんだ合金粉末を添加する前に樹脂を完全に溶解するために溶媒を使用した。溶媒は、二塩基性エステル(DuPont,Wilmington,DE)とEastman(商標)C−11ケトン溶媒Eastman Chemical,Kingsport,TN)との50/50混合物であった。
【0034】
PTFはんだ合金/金属導体組成物の組成を以下に示す。
58.25% SAC305はんだ合金粉末−(96.5%Sn、3%Ag、0.5%Cu)
9.71 有機媒体(19.5%樹脂/80.5%溶媒)
29.12 銀フレーク(平均径5ミクロン)
0.92 カルビトールアセテート
2.00 二塩基性エステル
【0035】
この組成物をThinky型攪拌器で10分間混合した。組成物を使用して、ガラス上にパターンをスクリーン印刷した。280メッシュステンレス鋼スクリーンを使用し、一連の線を印刷し、そしてはんだ合金ペーストを強制空気オーブン中で10分間140℃で乾燥した。次いで、抵抗は、30ミクロンの厚さで35ミリオーム/スクエアとして測定された。
【0036】
実施例1
乾燥後に組成物にフォトニック焼結を行ったことを除き、同様のPTFはんだ合金/金属組成物を、本質的に比較実験Aに記載されるように調製および印刷した。調製物の他の全ての特性、はんだ合金粉末分布およびその後の処理は、比較実験Aと同一だった。
【0037】
ラミネーションは、一軸型ラミネーター上で実行した。温度を70℃で保持し、圧力は1000〜30000ポンドまで様々であった。この組成物の抵抗率は15〜20ミリオーム/スクエアまで様々であったが、これは比較例Aにおいてのみオーブン乾燥で得られた35ミリオーム/スクエアから実質的に低下した。ラミネーションがポリマー厚膜導体組成物の抵抗率に有利な影響を及ぼすことは明らかである。