特許第6247073号(P6247073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247073
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】乾燥かまぼこ
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20171204BHJP
【FI】
   A23L17/00 101A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-223515(P2013-223515)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-84668(P2015-84668A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313014273
【氏名又は名称】イビデン物産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100111279
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】大杉 素靖
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 宣人
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−010895(JP,B1)
【文献】 特開昭51−041470(JP,A)
【文献】 特開昭51−019163(JP,A)
【文献】 特開昭52−154556(JP,A)
【文献】 特開2003−259840(JP,A)
【文献】 特開平06−169731(JP,A)
【文献】 米国特許第05028444(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉のすり身、糖アルコール、膨張剤および乳化剤を含む原材料を用いて製造された乾燥かまぼこであって、
その水分量が、5.0〜15.0質量%であり、および
複数の細孔を有し、水銀ポロシメーターによる水銀圧入法で測定した細孔分布において、65〜150μmの範囲にピーク細孔径を有する乾燥かまぼこ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉のすり身、膨張剤および乳化剤を含む原材料を用いて製造された乾燥かまぼこに関する。
【背景技術】
【0002】
カップ麺などに用いられる乾燥具材には、かき卵、肉そぼろ、なると、かまぼこ、メンマなどがあり、これらの乾燥具材は、麺、スープとともにお湯をかけ、乾燥前の状態に湯戻りさせることで喫食することができる。このような特性を湯戻り性といい、湯戻り性を有する乾燥具材は、具材を凍結乾燥させて製造することが現在の主流となっている。
【0003】
凍結乾燥とは、具材を−30℃前後で一昼夜以上、凍結させて氷の結晶を具材中に形成させ、その後の乾燥工程により氷の結晶を昇華させることで具材を乾燥させる方法である。当該方法により製造された乾燥かまぼこは、昇華前に氷の結晶が存在した空間を微細な気泡として有し、この気泡を有することで優れた湯戻り性を示すことが知られている。
【0004】
非特許文献1には凍結乾燥により製造された乾燥かまぼこは長さ40μm以下の多くの空洞を有し、さらに気泡により生じたと思われる長径280〜430μmの大きな空洞も散在していることが記載されている。
【0005】
また、特許文献1には、乾燥かまぼことその製造方法が記載されており、原材料として気泡剤を用いることで微細な気泡を乾燥工程前のかまぼこ内に生成させた後、熱風乾燥することで微細な気泡を有する乾燥かまぼこが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52−99258号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】三森一司、「かまぼこ組織に及ぼす凍結・解凍の影響について」、聖霊女子短期大学紀要第26号(1998)、78〜83頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
凍結乾燥により製造された乾燥かまぼこは、湯戻り性、安全性に優れるが、水分含有量が1.0質量%以下と低いために非常に脆く、振動による衝撃などにより割れが生じやすいという問題がある。この問題は乾燥かまぼこの大きさが大きくなるほど顕著に表れる。具体的には乾燥具材を具備するカップ麺などを輸送する際の振動で、乾燥かまぼこに割れが生じ、湯戻り後に喫食する際の見栄え、食感、呈味性が悪化するという問題がある。また、凍結乾燥は生産に時間がかかるという問題もある。
【0009】
特許文献1に記載された気泡剤による微細な気泡を有する乾燥かまぼこは耐振動性においては不充分である。
【0010】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、耐振動性に優れた乾燥かまぼこを提供することを目的とする。
【0011】
凍結乾燥により製造された乾燥かまぼこが耐振動性および強度に劣るという問題の原因として、(1)水分量が1.0質量%未満と非常に低くカリカリの状態であり衝撃に対する緩衝力が低いこと、(2)前記大きな空洞は、かまぼこ中の水分と原材料中のガス成分などが原因であると考えられるが、この大きな空洞の数や大きさを調整することが困難であり、凝集してしまうことで割れの起点となること、(3)凍結工程における温度異常や凍結時間の不足などにより凍結状態が不充分な部分が存在すると、この部分の乾燥状態が、不均一となり、耐振動性および強度の低下の原因となること、などが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが鋭意検討した結果、魚肉のすり身、膨張剤および乳化剤を含有する原材料を用いて製造した乾燥かまぼこであって、所定の範囲にピーク細孔径を有する乾燥かまぼことすることにより前述の問題が解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、魚肉のすり身、膨張剤および乳化剤を含む原材料を用いて製造された乾燥かまぼこであって、複数の細孔を有し、水銀ポロシメーターによる水銀圧入法で測定した細孔分布において、65〜150μmの範囲にピーク細孔径を有する乾燥かまぼこに関する。
【0014】
前記原材料が、糖アルコールを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、魚肉のすり身、膨張剤および乳化剤を含む原材料を用いて製造された乾燥かまぼこであって、複数の細孔を有し、所定の範囲にピーク細孔径を有する乾燥かまぼことすることにより、耐振動性に優れた乾燥かまぼこを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の乾燥かまぼこの細孔分布を示したグラフである。
図2】比較例1の乾燥かまぼこの細孔分布を示したグラフである。
図3】比較例2の乾燥かまぼこの細孔分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の乾燥かまぼこは、魚肉のすり身、膨張剤および乳化剤を含む原材料を用いて製造された乾燥かまぼこであって、複数の細孔を有し、所定の範囲にピーク細孔径を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の乾燥かまぼこは、原材料として、魚肉のすり身、膨張剤および乳化剤を含有する。
【0019】
前記魚肉のすり身としては、スケトウダラ、イワシ、ホッケ、イトヨリ、イサキ、エソ、オオギス、サメ類、イシモチ、ニベ、ハモ、ムツ、ヒラメ、タイ、アジ、グチ、キンメダイ、タチウオ、ホキ、ヒラメ、カジキなどのすり身が挙げられる。これらの魚肉のすり身は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
魚肉のすり身の全原材料中の含有量は、10〜40質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましい。魚肉のすり身の含有量が10質量%未満の場合は、かまぼこがボロボロになる傾向がある。また、40質量%を超える場合は、湯戻りができなくなることがある。
【0021】
前記膨張剤を含有することで、蒸し工程および乾燥工程における熱により膨張剤が膨張し、かまぼこ内部等に細孔を形成させることができる。
【0022】
膨張剤としては、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸アンモニウムなどを含んだものを用いることが好ましく、例えば、ベーキングパウダーなどが挙げられる。
【0023】
膨張剤の全原材料中の含有量は、0.5〜5.0質量%が好ましく、1.0〜3.0質量%がより好ましい。膨張剤の含有量が0.5質量%未満の場合は、乾燥かまぼこに細孔が形成され難くなり、湯戻り性が悪化する傾向がある。また、5.0質量%を超える場合は、乾燥かまぼこの外観が悪化する傾向、湯戻りさせても元の形状にならなくなる傾向がある。
【0024】
前記乳化剤は、乾燥かまぼこの変色の防止という従来の目的に加え、膨張剤の分散性の向上、ならびに、膨張剤により形成される細孔が大きくなり過ぎること、および凝集することの抑制を目的として含有する。
【0025】
乳化剤は天然添加物と合成添加物に分けられる。天然添加物としては、ダイズや卵黄から採られるレシチン、キラヤから採られるサポニン、牛乳を原料とするカゼインナトリウム、などを含有するものが挙げられる。また、合成添加物としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチンなどを含有するものが挙げられる。食品に使用される乳化剤であれば特に限定なく使用することができる。
【0026】
乳化剤の全原材料中の含有量は、0.5〜5.0質量%が好ましく、1.0〜3.0質量%がより好ましい。乳化剤の含有量が0.5質量%未満の場合は、気泡径の調整がしにくくなり、欠けが発生する傾向がある。また、5.0質量%を超える場合は、含有量に見合った効果が得られなくなる傾向がある。
【0027】
さらに、本発明の乾燥かまぼこの原材料は、魚肉のすり身、膨張剤および乳化剤に加えて糖アルコールを含有することが好ましい。糖アルコールを含有することで、乾燥かまぼこの味付けだけでなく、乾燥かまぼこの保湿性がより確保され、乾燥後の水分量が8.0〜15.0質量%の範囲となり、細孔を有する乾燥かまぼこの膜がしっとりと、適度な弾力を有する状態に仕上がり、振動による衝撃などに対する緩衝力が向上し、耐振動性により優れた乾燥かまぼことすることができる。また、膨張剤、乳化剤および糖アルコールを併用することで、膨張剤をより分散させることができる。
【0028】
一方、凍結乾燥を経て製造された乾燥かまぼこは、水分量が1.0質量%未満となる。このようなカリカリの乾燥かまぼこは、振動による衝撃に対する緩衝力が低いため、細孔の凝集を起点とする割れなどが非常に起こりやすく、耐振動性および強度に劣る。
【0029】
糖アルコールとしては、アルドースやケトースのカルボニル基が還元されて生成する糖の一種などが挙げられる。例えば、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、パラチニットなどが挙げられる。具体的な商品としては、三菱商事フードテック株式会社製のアマミール(登録商標)などが挙げられる。
【0030】
糖アルコールを含有する場合の全原材料中の含有量は、1.0〜15質量%が好ましく、3.0〜10質量%がより好ましい。糖アルコールの含有量が1.0質量%未満の場合は、膜の緩衝力が低下する傾向がある。また、15質量%を超える場合は、含有量に見合った効果が得られなくなる傾向がある。
【0031】
本発明の乾燥かまぼこの原材料は、前記原材料以外にも一般的な乾燥かまぼこに用いる原材料、例えば、卵白粉末、澱粉、小麦粉および調味料などを適宜含有することができる。
【0032】
前記卵白粉末は、主に鶏卵の白身を乾燥粉末化したものである。この卵白粉末は原材料のつなぎとしての役目、魚肉のすり身と膨張剤とを馴染ませ膨張剤を分散させるという役目を有する。
【0033】
卵白粉末を含有する場合の全原材料中の含有量は、0.5〜15.0質量%が好ましい。卵白粉末の含有量が0.5質量%未満の場合は、つなぎの役目が充分に果たせず、原材料が不均一化する傾向がある。また、15.0質量%を超える場合は、含有量に見合った効果が得られなくなる傾向がある。
【0034】
前記澱粉としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘薯澱粉などが挙げられる。澱粉はかまぼこを固定化するためなどに含有する。
【0035】
澱粉を含有する場合の全原材料中の含有量は、1.0〜15.0質量%が好ましい。澱粉の含有量が1.0質量%未満の場合は、かまぼこを固める効果が不充分となり、成形し難くなる傾向がある。また、15.0質量%を超える場合は、製造されるかまぼこが固くなり、特に食感が低下する傾向がある。
【0036】
前記小麦粉としては、強力粉、薄力粉などを用いることができる。これらの小麦粉はかまぼこの膨張を補助する目的などで含有する。
【0037】
小麦粉を含有する場合の全原材料中の含有量は、2.0〜15.0質量%が好ましい。小麦粉の含有量が2.0質量%未満の場合は、膨張の補助効果が不充分となり、細孔が形成され難くなる傾向がある。また、15.0質量%を超える場合は、膨張し過ぎとなり、細孔が相殺されて湯戻り性が悪化する傾向がある。
【0038】
前記調味料としては、食品に一般的に使用されている調味料を用いることができる。例えば、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、各種フレーバーなどが挙げられ、乾燥かまぼこの使用用途等に応じて適宜含有することができる。
【0039】
本発明の乾燥かまぼこの製造方法について説明する。当該製造方法は、ずり工程、成形工程、蒸し工程、切断工程および乾燥工程を含む。
【0040】
前記ずり工程は、魚肉のすり身、膨張剤、乳化剤を含む原材料を配合、混合および混練し、ずり材料を得る工程である。魚肉のすり身として、冷凍された魚肉のすり身を使用する場合は、ずり工程を行うために適宜、解凍する必要がある。
【0041】
ずり工程としては、一般的なかまぼこの製造方法におけるずり工程とすることができ、例えば、粗ずり工程と本ずり工程とからなるずり工程とすることができる。
【0042】
前記粗ずり工程は、魚肉のすり身に塩などを配合し、ブレンダー、カッター、真空カッターなどの裁断設備によって、魚肉のすり身を細砕させる工程である。このとき、魚肉のすり身の温度が上昇しないように裁断設備などの温度調整や工程条件の調整を行うことが好ましい。
【0043】
前記本ずり工程は、粗ずりにより細砕した魚肉のすり身に、膨張剤、乳化剤、卵白粉末、澱粉、小麦粉、糖アルコールおよび調味料などの原材料を配合して、ブレンダー、カッター、真空カッターなどの裁断設備によって、各原材料を混合および混練し、ずり材料を得る工程である。このとき、魚肉のすり身の温度が上昇しないように裁断設備などの温度調整や工程条件の調整を行うことが好ましい。本発明の乾燥かまぼこにおける細孔は、熱による膨張剤の膨張により形成されるところ、膨張剤を含む各原材料を充分に分散させる必要があり、前記乳化剤を含有することで各原材料の分散性を向上させることができ、糖アルコールを含有することでさらに向上させることができる。
【0044】
前記成形工程は、ずり工程で得られたずり材料を成形ノズルから吐出するなどして、かまぼこの形状に成形する工程であり、一般的なかまぼこの製造方法における成形工程とすることができる。
【0045】
成形ノズルから吐出して成形する場合、吐出速度は一定で行うことが望ましい。その速度は設備や製法により適宜調整をすることができる。吐出物を一定の長さ(例えば、50cm)ごとに切断してもよい。成形ノズルの形状としては、円形、半円形、楕円形、四角形、疑似四角形、多角形、星形などが挙げられる。また、成形ノズルは1本とすることも、複数本とすることもできる。これらの成形条件は製造される乾燥かまぼこの形状や使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0046】
前記蒸し工程は、成形工程で得られた成形かまぼこ原料を蒸して加熱し、ペースト状の成形かまぼこ原料を熱変性により固定化させる工程であり、一般的なかまぼこの製造方法における蒸し工程とすることができる。蒸し温度は70〜95℃が好ましく、80〜90℃がより好ましい。70℃未満の場合は、殺菌効果が薄れてしまう傾向、膨張剤のふくらみが不十分となる傾向がある。また、95℃を超える場合は、蒸しダレと称される鬆が形成されてしまう傾向がある。なお、蒸し時間は蒸し温度、成形かまぼこ原料の大きさなどに応じて適宜調整することができ、3〜20分間が好ましい。
【0047】
前記切断工程は、蒸し工程を経たかまぼこを乾燥かまぼことして求められる一定の大きさ(厚さ)に切断する工程であり、一般的なかまぼこの製造方法における切断工程とすることができる。
【0048】
前記乾燥工程は、一定の大きさに切断されたかまぼこを乾燥させて、乾燥かまぼこを得る工程である。乾燥方法としては、熱風乾燥、ドラム式感熱乾燥、マイクロ波乾燥などが挙げられ、安価に乾燥ができ、汎用性が高いという理由から熱風乾燥が好ましい。乾燥温度は、60〜90℃が好ましく、70〜80℃がより好ましい。60℃未満の場合は、乾燥不足が発生する傾向がある。また、90℃を超える場合は、焦げの発生頻度が増えるため、外観上での問題を引き起こす。乾燥時間は乾燥温度、かまぼこの大きさ、所望の水分量などに応じて適宜調整することができ、60〜180分間が好ましい。
【0049】
なお、前記蒸し工程と切断工程の間に、着色工程および/または凍結工程を必要に応じて行うことが好ましい。着色工程は食品用の着色剤を用いて着色機により、かまぼこ表面に所望の色彩を付与する工程であり、乾燥かまぼこの外観を良くすることができる。また、凍結工程は後の切断工程を容易にするためにかまぼこを凍結させる工程であり、例えば−20℃の冷凍庫中に約6時間以上静置して凍結させる工程とすることができる。
【0050】
前述のかまぼこ原材料および製造方法により製造された本願発明の乾燥かまぼこは、複数の細孔を有し、所定の範囲にピーク細孔径を有することを特徴とする。この細孔は、原材料として含有する膨張剤が蒸し工程および乾燥工程での熱により膨張し、その状態でかまぼこ原料が固定化されることで形成される。
【0051】
本発明の乾燥かまぼこは、水銀ポロシメーターによる水銀圧入法で測定した細孔分布において、65〜150μmの範囲にピーク細孔径を有する乾燥かまぼこであり、このような細孔を有することで、湯戻り性に優れるだけでなく耐振動性および強度にも優れる乾燥かまぼことすることができる。なお、当該ピーク細孔径の範囲は90〜135μmが好ましい。なお、本発明におけるピーク細孔径とは、水銀ポロシメーターによる水銀圧入法で測定したLog微分細孔容積分布において極大値を示した細孔径をいう。
【0052】
このような細孔分布を示す細孔は、原材料として膨張剤および乳化剤を併用することにより形成される。つまり、膨張剤と乳化剤とを併用して乾燥かまぼこを製造することで、膨張剤の分散性が向上し、さらに膨張剤の膨張が過膨張または膨張不足にならない適正な膨張が促され、本発明の細孔分布を有する乾燥かまぼこが得られる。一方、膨張剤を含有するが、乳化剤を含有せずに製造された乾燥かまぼこは、細孔が小さくなり、湯戻り性が低下してしまう。
【0053】
本発明の乾燥かまぼこの水分量は5.0〜15.0質量%が好ましい。水分量が5.0質量%未満の場合は水分量が少なく、カリカリの乾燥かまぼことなり、凍結乾燥により製造された乾燥かまぼこと同様に、耐振動性および強度が悪化する傾向がある。また、15.0質量%を超える場合はカップ麺などの乾燥具材としての安全性の規格を外れる恐れがある。
【0054】
本発明の乾燥かまぼこは、耐振動性に優れた乾燥かまぼこであるところ、各種用途の乾燥かまぼことして用いることができ、なかでもカップ麺などに用いる乾燥具材としてより好適に用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
粗ずり工程
冷凍された魚肉のすり身(スケトウダラ等のすり身)を冷蔵解凍したもの100kgに塩1.0kg、氷60kgを配合し、ブレンダーにより細砕した。
本ずり工程
粗ずり工程で得た魚肉のすり身および各原材料を表1に示す処方で配合し、ブレンダーにより本ずりを行った。なお、本ずりは20℃以下で行い、原材料の粘度が20〜70Paとなるようにブレンダーの回転数および時間を調整してずり材料を調整した。なお、卵白粉末、澱粉、小麦粉および乳化剤は一般的に食品に用いられているものを使用した。
成形工程
本ずり工程で得たずり材料を成形ノズルより吐出することで、かまぼこ形状に成形した。成形ノズルは、高さ5.5mm、幅10.5mmの半円形のものを使用した。
蒸し工程
蒸し器により85℃で5分間蒸した。
着色工程
蒸し工程で得たかまぼこに、紅麹由来の着色剤を用いて、かまぼこの表面に着色した。
凍結工程
着色したかまぼこを常温程度になるまで冷却し、その後、−20℃の冷凍庫中に6時間以上静置して凍結させた。
切断工程
凍結したかまぼこを、高速切断機を用いて厚さ7mmに切断した。
乾燥工程
切断したかまぼこを箱型乾燥機(熱風乾燥機タイプ)により、80℃で120分間乾燥させた。その後、篩および目視での選別を経て実施例1の試験用乾燥かまぼこを製造した。
【0057】
比較例1
凍結乾燥により製造された乾燥かまぼことして、市販のカップ麺に乾燥具材として具備された乾燥かまぼこを比較例1の試験用乾燥かまぼことした。
【0058】
比較例2
原材料として乳化剤および糖アルコールを含有しないこと以外は実施例1と同様に、比較例2の試験用乾燥かまぼこを製造した。本ずり工程における処方を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
各試験用乾燥かまぼこを用いて以下に示す方法により評価を行った。
【0061】
<細孔分布測定>
各試験用乾燥かまぼこについて、細孔径を水銀圧入法(JIS R 1655:2003に準拠)によって測定した。水銀ポロシメーター(マイクロメリティックス社製の自動ポロシメーター オートポアIV 型番:9505)を用い、細孔直径0.15〜700μmの範囲で測定を行った。ピーク細孔径の極大値は、Log微分細孔容積分布(dV/d(logD))、つまり横軸に細孔直径、縦軸にLog微分細孔容積をプロットした図から読み取った。Log微分細孔容積のプロット図を、図1(実施例1)、図2(比較例1)および図3(比較例2)に示す。また、各ピーク細孔径の極大値を表2に示す。
【0062】
<耐振動性測定>
各試験用かまぼこ10片ずつを1つの袋に詰め、全ての袋を1つのプラスチック密封容器に封入し、少なくとも150km程度離れた場所へ郵送し、到着後、発送した場所へ再度、郵送した。発送した場所に戻ってきた乾燥かまぼこの状態について、欠けもしくは割れの有無を確認した。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2および図1〜3の結果より、魚肉のすり身に、膨張剤および乳化剤を含有する原材料を用いて製造した乾燥かまぼこであって、所定の範囲にピーク細孔径を有する乾燥かまぼこは、耐振動性に優れることがわかる。また、湯戻り性についても評価したところ、実施例1の乾燥かまぼこは比較例1の凍結乾燥を経て製造された乾燥かまぼこと比べて遜色のない湯戻り性を示した。
【0065】
一方、比較例1では、細孔径280μm付近に、細孔径ピーク(サブピーク)が確認できる。この細孔径280μm付近の細孔が凝集してしまうために割れが発生したと推定される。また、比較例2では、細孔径400μm付近に、細孔径ピーク(サブピーク)が確認できる。この細孔径400μm付近の細孔の存在により欠けが発生したと推定される。
図1
図2
図3