特許第6247077号(P6247077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247077電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247077
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   H01G9/02 311
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-230517(P2013-230517)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-90934(P2015-90934A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竝木 和彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 直人
(72)【発明者】
【氏名】金本 和之
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−108675(JP,A)
【文献】 特開2013−219298(JP,A)
【文献】 特開2006−205422(JP,A)
【文献】 特開2013−080530(JP,A)
【文献】 特開2013−220976(JP,A)
【文献】 特表2003−535804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、コロイダルシリカ、電解質塩及び有機溶媒を含有する電解コンデンサ用電解液において、電解コンデンサ用電解液中のコロイダルシリカの体積平均径が10〜30nmであり、かつ粒子径の標準偏差が0.1〜30であることを特徴とする電解コンデンサ用電解液。
【請求項2】
電解コンデンサ用電解液におけるコロイダルシリカの含有量が、0.1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項3】
電解コンデンサ用電解液における含水量が、0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項4】
電解質塩が、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物よるなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項1〜3のいずれかの項記載の電解コンデンサ用電解液。
【化1】
(式(1)〜(5)中、基R〜R25は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素
数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は水酸基であり、R〜R25のうち隣接する基同士は連結して炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。Xは、カルボン酸アニオン又はホウ素化合物アニオンである。)
【請求項5】
有機溶媒が、エチレングリコールまたはγ−ブチロラクトンを主溶媒とするものである請求項1〜4のいずれかの項記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項記載の電解コンデンサ用電解液を用いてなる電解コンデンサ。
【請求項7】
電解質塩及び有機溶媒を含有する電解コンデンサ用電解液において、体積平均径が10〜30nmであり、かつ粒子径の標準偏差が0.1〜30であるコロイダルシリカを含有せしめることを特徴とする電解コンデンサ用電解液の火花電圧向上方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の電解コンデンサ用電解液を用いて電解コンデンサを構成することを特徴とする電解コンデンサの耐電圧向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い火花電圧を有し、耐熱性に優れた電解コンデンサ用電解液とそれを用いた耐電圧の高い電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解コンデンサ用電解液としては、有機溶媒に有機酸や無機酸又はそれらの塩を電解質として溶解させたものが用いられており、例えば、アルミ電解コンデンサの場合、アルミ箔の表面に陽極酸化処理によって酸化皮膜を誘電体として形成させた化成箔を陽極側電極に用い、当該陽極側電極に対向させて陰極側電極を配置し、両極間にセパレータを介在させ、そこにこの電解液を保持させて電解コンデンサが形成される。
【0003】
このような電解コンデンサに対しては、安全性に対する要求が高まっており、定格電圧を超える電圧が印加されるような過酷な条件化においてもショートや発火を起こさない高い耐電圧性能を備えた電解コンデンサが求められている。
【0004】
電解コンデンサの耐電圧は、電解コンデンサ用電解液の性能に起因していることが知られており、例えば、105℃のような高温においても高い火花電圧を長期間維持することのできる電解コンデンサ用電解液を得ることができれば、上記のような耐電圧性能に対する要求を満足し得る電解コンデンサが得られると考えられる。
【0005】
このため電解コンデンサ用電解液の火花電圧を向上させる添加剤が種々検討されており、例えば、二酸化ケイ素(特許文献1)、リン酸エステル(特許文献2)、多孔性ポリイミド微粒子(特許文献3)等が知られている。しかしながら、これらの添加剤を用いても、なお火花電圧は十分なものではなく、105℃以上の高温で高い火花電圧を長期間維持することは困難であった。
【0006】
また、火花電圧を向上させる添加剤として、上記以外にもコロイダルシリカが知られており、例えば、シリカヒドロゾルを溶媒置換して得られた特定粒子径のオルガノシリカゾルを添加した電解コンデンサ用電解液が開示されている(特許文献4)。しかし、この電解液は、高温条件下ではコロイダルシリカ同士がゲル化してしまい、高い火花電圧を長期間維持することができなかった。
【0007】
以上のように、例えば105℃以上の高温条件下においても、高い火花電圧を長期間にわたって維持することのできる電解コンデンサ用電解液及びそれを用いた電解コンデンサが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−6839号公報
【特許文献2】特開2001−155968号公報
【特許文献3】特開2009−283581号公報
【特許文献4】特開平06−151250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、高い火花電圧を有し、耐熱性に優れた電解コンデンサ用電解液及びそれを用いた高い耐電圧性能を備えた電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、コロイダルシリカの体積平均径及び粒子径の標準偏差を特定の範囲に調整することにより、高温条件下でも高い火花電圧を長時間維持することができ、この電解液を用いることにより耐電圧性能に優れる電解コンデンサが得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、少なくとも、コロイダルシリカ、電解質塩及び有機溶媒を含有する電解コンデンサ用電解液において、電解コンデンサ用電解液中のコロイダルシリカの体積平均径が10〜30nmであり、かつ粒子径の標準偏差が0.1〜30であることを特徴とする電解コンデンサ用電解液である。
【0012】
また本発明は、上記電解液を用いてなる電解コンデンサである。
【0013】
また本発明は、電解質塩及び有機溶媒を含有する電解コンデンサ用電解液において、体積平均径が10〜30nmであり、かつ粒子径の標準偏差が0.1〜30であるコロイダルシリカを含有せしめることを特徴とする電解コンデンサ用電解液の火花電圧向上方法である。
【0014】
また本発明は上記電解液を用いて電解コンデンサを構成することを特徴とする電解コンデンサの耐電圧向上方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、高い火花電圧を有し、かつ耐熱性に優れ、高温条件下でも高い火花電圧を長期間にわたって維持することができ、これを用いることにより、優れた耐電圧性能を備えた電解コンデンサを得ることが可能なものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電解コンデンサ用電解液について説明する。
【0017】
<コロイダルシリカ>
本発明に用いるコロイダルシリカとは、SiO又はその水和物のコロイドであるが、その電解液における体積平均径及び粒子径の標準偏差が特定の範囲にあることを特徴とする。すなわち、電解コンデンサ用電解液におけるコロイダルシリカの体積平均径は10〜30nmであり、好ましくは10〜25nmである。また粒子径の標準偏差は0.1〜30であり、好ましくは0.1〜20であり、特に好ましくは0.1〜15である。体積平均径及び粒子径の標準偏差がこの範囲であると、電解液の火花電圧が高くなるとともに耐熱性が向上し、例えば、105℃以上の高温条件下でも高い火花電圧を長期間維持することが可能となり、この電解液を用いた電解コンデンサは優れた耐電圧性能を示すものとなる。
【0018】
本発明において、コロイダルシリカの体積平均径(MV;Mean Volume Diameter)は動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置よって測定される体積で重みづけされた平均径であり、例えば、大塚電子社製ELSZ−1000Sを用いて測定することができる。この体積平均径は、以下のように定義される。
【0019】
一つの粉体の集団を仮定し、この中には、粒子径の小さい順から、d1,d2,・・・,di,・・・,dkの粒子径を持つ粒子がそれぞれn1,n2,・・・,ni,・・・,nk個あるとし、また、粒子1個当りの体積をv1,v2,・・・,vi,・・・,vkとしたときに、体積平均径(MV)は下記式により求められる。
MV=(v1・d1+v2・d2+・・・+vi・di+・・・+vk・dk)/(v 1+v2+・・・+vi+・・・+vk)
=Σ(vi・di)/Σ(vi)
【0020】
一方、粒子径の標準偏差(STD.DEV.;Standard Deviation)は、下記式で算出されるものである。
STD.DEV.=(d84%−d16%)/2
上記式中のd84%は、粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが84%となるときの粒子径を表し、d16%は累積カーブが16%となるときの粒子径を表す。
【0021】
コロイダルシリカの体積平均径が10〜30nmであり、かつ粒子径の標準偏差が0.1〜30である電解液は、従来公知の方法では得ることができず、例えば、市販のコロイダルシリカ水分散液を使用した場合には、電解液中のコロイダルシリカ粒子径の標準偏差が大きくなって、火花電圧や耐熱性に劣るものとなる。これに対し本発明の電解液は、例えば、
珪酸ソーダと硫酸を混合し、pH8.0〜9.0、400〜600℃で、10〜25時間反応させてコロイダルシリカ粒子を得る工程(1)、
該コロイダルシリカ粒子を水に添加してコロイダルシリカ水分散液を得る工程(2)、
該コロイダルシリカ水分散液に有機溶媒を添加した後、加熱して水を留去させてコロイダルシリカ有機溶媒分散液を得る工程(3)、
該コロイダルシリカ有機溶媒分散液を電解質塩及び有機溶媒と混合する工程(4)、
を含む製造方法により得ることができる。
【0022】
上記工程(1)において、例えば珪酸ソーダ128〜134質量部と硫酸80〜120質量部とを混合し、pHを8.0〜9.0に調整する。この範囲内において、pHを低くすると体積平均径が小さくなる傾向にある。反応温度は400〜600℃、好ましくは480〜550℃であり、反応時間は10〜25時間、好ましくは10〜20時間である。この範囲において、反応時間が短いほど粒子径の標準偏差が小さくなる傾向にある。硫酸の濃度は、10質量%程度が好ましい。反応後生成したコロイダルシリカ粒子をろ過し、必要に応じエタノール等で洗浄した後、80〜120℃で乾燥することによりコロイダルシリカ粒子が得られる。このコロイダルシリカ粒子を水に添加してコロイダルシリカ水分散液を得る。コロイダルシリカの濃度は0.1〜30質量%程度とすればよい(工程(2))。工程(3)で用いられる有機溶媒としては、後述する有機溶媒と同じものが使用できるが、例えば、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン、スルホラン等が好適に用いられる。有機溶媒の添加量は、コロイダルシリカ1質量部に対し、1〜500質量部程度が好ましい。有機溶媒を添加した後、加熱することにより水を留去する。加熱温度は40〜100℃程度であり、好ましくは水分量5質量%以下、より好ましくは3質量%以下となるまで水を留去する。このようにして得られたコロイダルシリカの有機溶媒分散液を、常法にしたがって、電解質塩及び有機溶媒と混合することによって、本発明の電解液を調製することができる(工程(4))。
【0023】
本発明の電解コンデンサ用電解液中のコロイダルシリカの含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜15質量%であり、特に好ましくは0.3〜10質量%である。0.1質量%未満では電解コンデンサの電気特性向上効果が小さい場合があり、20質量%を超えると粘度が大きくなり扱い難くなる場合がある。
【0024】
<電解質塩>
本発明で用いる電解質塩は、含窒素カチオンを含有するものが好適に用いられ、具体的には、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が用いられる。
【0025】
【化1】
【0026】
式(1)〜(5)中、基R〜R25は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は水酸基であり、R〜R25のうち隣接する基同士は連結して炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。Xは、カルボン酸アニオン又はホウ素化合物アニオンである。
【0027】
一般式(1)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、アンモニウムカチオン;テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトライソプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリメチルエチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、ジメチルジエチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルメトキシメチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルエトキシエチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムカチオン、ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウムカチオン等の4級アンモニウムカチオン;トリメチルアミンカチオン、トリエチルアミンカチオン、トリプロピルアミンカチオン、トリイソプロピルアミンカチオン、トリブチルアミンカチオン、ジエチルメチルアミンカチオン、ジメチルエチルアミンカチオン、ジエチルメトキシアミンカチオン、ジメチルメトキシアミンカチオン、ジメチルエトキシアミンカチオン、ジエチルエトキシアミンカチオン、メチルエチルメトキシアミンカチオン、N−メチルピロリジンカチオン、N−エチルピロリジンカチオン、N−プロピルピロリジンカチオン、N−イソプロピルピロリジンカチオン、N−ブチルピロリジンカチオン、N−メチルピペリジンカチオン、N−エチルピペリジンカチオン、N−プロピルピペリジンカチオン、N−イソプロピルピペリジンカチオン、N−ブチルピペリジンカチオン等の3級アンモニウムカチオン;ジメチルアミンカチオン、ジエチルアミンカチオン、ジイソプロピルアミンカチオン、ジプロピルアミンカチオン、ジブチルアミンカチオン、メチルエチルアミンカチオン、メチルプロピルアミンカチオン、メチルイソプロピルアミンカチオン、メチルブチルアミンカチオン、エチルイソプロピルアミンカチオン、エチルプロピルアミンカチオン、エチルブチルアミンカチオン、イソプロピルブチルアミンカチオン、ピロリジンカチオン等の2級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、火花電圧及び耐熱性の向上効果に優れることから、アンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムカチオン、N−メチルピロリジンカチオン、ジメチルエチルアミンカチオン、ジエチルメチルアミンカチオン、トリメチルアミンカチオン、トリエチルアミンカチオン、ジエチルアミンカチオン等が好適に用いられる。
【0029】
一般式(2)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、テトラメチルイミダゾリウムカチオン、テトラエチルイミダゾリウムカチオン、テトラプロピルイミダゾリウムカチオン、テトライソプロピルイミダゾリウムカチオン、テトラブチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジイソプロピルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジブチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリエチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリプロピルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリイソプロピルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリブチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、火花電圧及び耐熱性向上効果に優れるため、テトラメチルイミダゾリウムカチオン、テトラエチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン等が好ましく用いられる。
【0030】
一般式(3)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、テトラメチルイミダゾリニウムカチオン、テトラエチルイミダゾリニウムカチオン、テトラプロピルイミダゾリニウムカチオン、テトライソプロピルイミダゾリニウムカチオン、テトラブチルイミダゾリニウムカチオン、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウムカチオン、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウムカチオン、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリプロピルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリイソプロピルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリブチルイミダゾリニウムカチオン、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2−シアノメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、火花電圧及び耐熱性向上効果に優れることからテトラメチルイミダゾリニウムカチオン、テトラエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0031】
一般式(4)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、テトラメチルピラゾリウムカチオン、テトラエチルピラゾリウムカチオン、テトラプロピルピラゾリウムカチオン、テトライソプロピルピラゾリウムカチオン、テトラブチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジメチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−エチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジエチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジプロピルピラゾリウムカチオン、1,2−ジブチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−プロピルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−ブチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−ヘキシルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−オクチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−ドデシルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリメチルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリエチルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリプロピルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリイソプロピルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリブチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−3−メトキシ−2,5−ジメチルピラゾリウムカチオン、3−フェニル−1,2,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、3−メトキシ−5−フェニル−1−エチル−2−エチルピラゾリウムカチオン、1,2−テトラメチレン−3,5−ジメチルピラゾリウムカチオン、1,2−テトラメチレン−3−フェニル−5−メチルピラゾリウムカチオン、1,2−テトラメチレン−3−メトキシ−5−メチルピラゾリウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、火花電圧及び耐熱性向上効果に優れることから、テトラメチルピラゾリウムカチオン、テトラエチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジメチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジエチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−エチルピラゾリウムカチオン等が好ましく用いられる。
【0032】
一般式(5)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、N−メチルピリジニウムカチオン、N−エチルピリジニウムカチオン、N−プロピルピリジニウムカチオン、N−イソプロピルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン、N−ヘキシルピリジニウムカチオン、N−オクチルピリジニウムカチオン、N−ドデシルピリジニウムカチオン、N−メチル−3−メチルピリジニウムカチオン、N−エチル−3−メチルピリジニウムカチオン、N−プロピル−3−メチルピリジニウムカチオン、N−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、N−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、N−ブチル−4−エチルピリジニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、火花電圧及び耐熱性向上効果に優れることから、N−メチルピリジニウムカチオン、N−エチルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン、N−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン等が好ましく用いられる。
【0033】
上記カチオンと組み合わせるアニオンXは、カルボン酸アニオン又はホウ素化合物アニオンである。カルボン酸アニオンは、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸等の有機カルボン酸のアニオンであり、有機カルボン酸は置換基を有していてもよい。具体的には、フタル酸アニオン、サリチル酸アニオン、イソフタル酸アニオン、テレフタル酸アニオン、トリメリット酸アニオン、ピロメリット酸アニオン、安息香酸アニオン、レゾルシン酸アニオン、ケイ皮酸アニオン、ナフトエ酸アニオン、マンデル酸アニオンなどの芳香族カルボン酸アニオン;シュウ酸アニオン、マロン酸アニオン、コハク酸アニオン、グルタル酸アニオン、アジピン酸アニオン、ピメリン酸アニオン、スベリン酸アニオン、アゼライン酸アニオン、セバシン酸アニオン、ウンデカン二酸アニオン、ドデカン二酸アニオン、トリデカン二酸アニオン、テトラデカン二酸アニオン、ペンタデカン二酸アニオン、ヘキサデカン二酸アニオン、3−tert−ブチルアジピン酸アニオン、メチルマロン酸アニオン、エチルマロン酸アニオン、プロピルマロン酸アニオン、ブチルマロン酸アニオン、ペンチルマロン酸アニオン、ヘキシルマロン酸アニオン、ジメチルマロン酸アニオン、ジエチルマロン酸アニオン、メチルプロピルマロン酸アニオン、メチルブチルマロン酸アニオン、エチルプロピルマロン酸アニオン、ジプロピルマロン酸アニオン、メチルコハク酸アニオン、エチルコハク酸アニオン、2,2−ジメチルコハク酸アニオン、2,3−ジメチルコハク酸アニオン、2−メチルグルタル酸アニオン、3−メチルグルタル酸アニオン、3−メチル−3−エチルグルタル酸アニオン、3,3−ジエチルグルタル酸アニオン、メチルコハク酸アニオン、2−メチルグルタル酸アニオン、3−メチルグルタル酸アニオン、3,3−ジメチルグルタル酸アニオン、3−メチルアジピン酸アニオン、1,6−デカンジカルボン酸アニオン、5,6−デカンジカルボン酸アニオン、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、イソ酪酸アニオン、吉草酸アニオン、カプロン酸アニオン、エナント酸アニオン、カプリル酸アニオン、ペラルゴン酸アニオン、ラウリル酸アニオン、ミリスチン酸アニオン、ステアリン酸アニオン、ベヘン酸アニオン、ウンデカン酸アニオン、ホウ酸アニオン、ボロジグリコール酸アニオン、ボロジシュウ酸アニオン、ボロジサリチル酸アニオン、ボロジアゼライン酸アニオン、ボロジ乳酸アニオン、イタコン酸アニオン、酒石酸アニオン、グリコール酸アニオン、乳酸アニオン、ピルビン酸アニオンなどの飽和カルボン酸アニオン及びマレイン酸アニオン、フマル酸アニオン、アクリル酸アニオン、メタクリル酸アニオン、オレイン酸アニオンなどの不飽和カルボン酸を含む脂肪族カルボン酸アニオン等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中でも、火花電圧が向上し熱的にも安定な点から、フタル酸アニオン、マレイン酸アニオン、サリチル酸アニオン、安息香酸アニオン、アジピン酸アニオン、アゼライン酸アニオン、1,6−デカンジカルボン酸アニオン、3−tert−ブチルアジピン酸アニオン等が好ましく挙げられる。
【0034】
ホウ素化合物アニオンとしては、ホウ酸アニオン、ボロジアゼライン酸アニオン、ボロジサリチル酸アニオン、ボロジグリコール酸アニオン、ボロジ乳酸アニオン、ボロジシュウ酸アニオン等が挙げられる。これらの中でも、火花電圧に優れる点より、ホウ酸アニオン、ボロジサリチル酸アニオン、ボロジグリコール酸アニオン等が好ましく用いられる。
【0035】
上記アニオンのうち、低中圧用の電解コンデンサに用いる場合には、フタル酸アニオン、マレイン酸アニオン、サリチル酸アニオン、安息香酸アニオン、アジピン酸アニオン、ボロジサリチル酸アニオン、ボロジグリコール酸アニオン等が好ましく用いられ、高い電導度と優れた耐熱性が得られる。一方、高圧用電解コンデンサに用いる場合には、アゼライン酸アニオン、1,6−デカンジカルボン酸アニオン、3−tert−ブチルアジピン酸アニオン、ホウ酸アニオン、ボロジサリチル酸アニオン、ボロジグリコール酸アニオン等が好適に用いられ、火花電圧と耐熱性において優れた効果が得られる。
【0036】
上記一般式(1)〜(5)で表される化合物の中でも、一般式(1)で表される化合物が、長期にわたり安定しており、高い火花電圧を得ることができ、耐熱性にも優れるため好ましく用いられる。具体的には、低中圧用の電解コンデンサに用いる電解質塩として、フタル酸ジメチルエチルアミン、マレイン酸テトラエチルアンモニウム、フタル酸ジエチルアミン、マレイン酸スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム、フタル酸1−エチル−3−メチルイミダゾリニウム、フタル酸1−メチル−2−エチルピラゾリウム、フタル酸N−ブチルピリジニウム、フタル酸テトラメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。一方、高圧用電解コンデンサに用いる電解質塩としては、アゼライン酸ジエチルアミン、アゼライン酸トリメチルアミン、アゼライン酸アンモニウム、1,6−デカンジカルボン酸アンモニウム、1,6−デカンジカルボン酸ジエチルアミン、1,6−デカンジカルボン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸N−メチルピロリジンなどが好適に使用される。
【0037】
本発明の電解コンデンサ用電解液における一般式(1)〜(5)で表される化合物よりなる群から選ばれる電解質塩の含有量は、1〜70質量%が好ましく、3〜60質量%がより好ましく、5〜50質量%が特に好ましい。1質量%未満だと十分な電導度が得られない場合があり、70質量%を超えると電解液の粘度が高くなるため十分な電導度が得られない場合がある。
【0038】
<有機溶媒>
電解コンデンサ用電解液に用いる有機溶媒としては、プロトン性極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を用いることができ、単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。
【0039】
プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)等が挙げられる。
【0040】
非プロトン性の極性溶媒としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アミド系(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、スルホラン系(スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等)、鎖状スルホン系(ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン)、環状アミド系(N−メチル−2−ピロリドン等)、カーボネイト類(エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、イソブチレンカーボネイト等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシド等)、2−イミダゾリジノン系〔1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(n−プロピル)−2−イミダゾリジノン等)、1,3,4−トリアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン等)〕等が挙げられる。
【0041】
低中圧用の電解コンデンサに用いる場合には、γ−ブチロラクトンを主溶媒とする溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒中のγ−ブチロラクトンの含有量は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。また、低中圧用の場合の水分量は、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が特に好ましい。一方、高圧用電解コンデンサに用いる溶媒としては、エチレングリコールを主溶媒とするものが好ましく、有機溶媒中50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。また高圧用の場合、水分を含有していてもよく、具体的には10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましい。このような水分量にすることにより、電極箔への化成性が高まり、優れた耐電圧性能を有する電解コンデンサを得ることができる。
【0042】
<添加剤>
本発明の電解コンデンサ用電解液には、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ジブチルリン酸又は亜リン酸のリン酸化合物、ホウ酸、マンニット、ホウ酸とマンニット、ソルビット等の錯化合物やホウ酸とエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールとの錯化合物等のホウ素化合物、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール等のニトロ化合物が挙げられる。
【0043】
上記添加剤の添加量は0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましい。0.1質量%未満では十分な火花電圧が得られない場合があり、10質量%を超えると電導度が低下する場合がある。
【0044】
本発明の電解液は、上記必須成分及び必要に応じ添加される任意成分を常法に従って混合することにより製造することができる。
【0045】
低中圧用の電解コンデンサ用電解液に求められる性能としては、火花電圧(初期)は、200〜250Vが好ましく、210〜250Vがより好ましく、220〜250Vが特に好ましい。火花電圧は、例えば実施例に記載の測定方法により求められる。
【0046】
高圧用の電解コンデンサ用電解液に求められている性能としては、火花電圧(初期)は500〜600Vが好ましく、530〜600Vがより好ましく、550〜600Vが特に好ましい。
【0047】
<電解コンデンサ>
本発明の電解コンデンサは、上述した電解コンデンサ用電解液を用いてなることを特徴とする。以下にアルミ電解コンデンサを例にとり説明する。
【0048】
アルミ電解コンデンサは、アルミ箔の表面に陽極酸化処理によって酸化皮膜を誘電体として形成させた化成箔を陽極側電極に用い、当該陽極側電極に対向させて陰極側電極を配置し、両極間にセパレータを介在させ、そこに電解液を保持させて電解コンデンサを形成させたものである。
【0049】
低中圧用の電解コンデンサに求められる性能としては、耐電圧は、150〜250Vが好ましく、160〜250Vがより好ましく、180〜250Vが特に好ましい。耐電圧は、例えば実施例に記載の測定方法により求められる。
【0050】
高圧用の電解コンデンサに求められている性能としては、耐電圧は510〜600Vが好ましく、530〜600Vがより好ましく、550〜600Vが特に好ましい。
【0051】
従来のコロイダルシリカを含有する電解液を用いた電解コンデンサは、高温条件下等で使用中にコロイダルシリカが凝集、重合してゲル化し、火花電圧が低下してしまう欠点があった。本発明の電解液は、例えば105℃以上の高温条件下でも、コロイダルシリカ同士の凝集が抑制されるため、電解液がゲル化しにくい。そのため、この電解液は、高温条件下でも高い火花電圧を長期間維持することができ、これを用いた電解コンデンサは、優れた耐電圧性能を示すものと考えられる。
【実施例】
【0052】
以下、発明を実施例等に基づき説明する。なお、本発明は、実施例等により、なんら限定されるものではない。実施例等中の「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0053】
(コロイダルシリカ水分散液1の製造方法)
珪酸ソーダ128部と10%硫酸1020部を混合してpH8に調整した後、500℃で10時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液1を得た。
【0054】
(コロイダルシリカ水分散液2の製造方法)
珪酸ソーダ128部と10%硫酸1020部を混合してpH8に調整した後、500℃で15時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液2を得た。
【0055】
(コロイダルシリカ水分散液3の製造方法)
珪酸ソーダ128部と10%硫酸1020部を混合してpH8に調整した後、500℃で20時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液3を得た。
【0056】
(コロイダルシリカ水分散液4の製造方法)
珪酸ソーダ128部と10%硫酸1020部を混合してpH8に調整した後、500℃で25時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液4を得た。
【0057】
(コロイダルシリカ水分散液5の製造方法)
珪酸ソーダ134部と10%硫酸1020部を混合してpH9に調整した後、500℃で10時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液5を得た。
【0058】
(コロイダルシリカ水分散液6の製造方法)
珪酸ソーダ134部と10%硫酸1020部を混合してpH9に調整した後、500℃で15時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液6を得た。
【0059】
(コロイダルシリカ水分散液7の製造方法)
珪酸ソーダ134部と10%硫酸1020部を混合してpH9に調整した後、500℃で20時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液7を得た。
【0060】
(コロイダルシリカ水分散液8の製造方法)
珪酸ソーダ134部と10%硫酸1020部を混合してpH9に調整した後、500℃で25時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液8を得た。
【0061】
(コロイダルシリカ水分散液Iの製造方法)
珪酸ソーダ128部と10%硫酸1020部を混合してpH8に調整した後、500℃で30時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液Iを得た。
【0062】
(コロイダルシリカ水分散液IIの製造方法)
珪酸ソーダ134部と10%硫酸1020部を混合してpH9に調整した後、500℃で30時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液IIを得た。
【0063】
(コロイダルシリカ水分散液IIIの製造方法)
珪酸ソーダ122部と10%硫酸1020部を混合してpH7に調整した後、500℃で15時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液IIIを得た。
【0064】
(コロイダルシリカ水分散液IVの製造方法)
珪酸ソーダ140部と10%硫酸1020部を混合してpH10に調整した後、500℃で15時間加熱して反応させる。ろ過して硫酸ナトリウムを除去しエタノールで洗浄した後、100℃で5時間乾燥してコロイダルシリカ粉末を得た。水80部に得られたシリカ粉末20部を撹拌しながら添加して20%コロイダルシリカ水分散液IVを得た。
【0065】
(コロイダルシリカのγ−ブチロラクトン分散液の製造方法)
コロイダルシリカ水分散液(1〜8、I〜IV)に、溶媒としてγ−ブチロラクトンをコロイダルシリカの終濃度が20%となるように加え、65℃、30Torrで4時間加熱して水を除去し、コロイダルシリカのγ−ブチロラクトン分散液1〜8、I〜IVを得た。
【0066】
(コロイダルシリカのエチレングリコール分散液の製造方法)
コロイダルシリカ水分散液(1〜8、I〜IV)に、溶媒としてエチレングリコールをコロイダルシリカの終濃度が20%となるように加え、65℃、30Torrで4時間加熱して水を除去し、コロイダルシリカのエチレングリコール分散液1〜8、I〜IVを得た。
【0067】
実施例1
(電解コンデンサ用電解液1の製造方法)
フタル酸166部と、溶媒としてγ−ブチロラクトン397部とを混合させて撹拌しながら、N,N−ジメチルエチルアミン73.1部を滴下してフタル酸ジメチルエチルアミン溶液を得た後、上記方法により得られたコロイダルシリカのγ−ブチロラクトン分散液1(固形分20%)158部を加えて混合し、コロイダルシリカを4%含有した電解コンデンサ用電解液1を得た。
【0068】
実施例2〜8
(電解コンデンサ用電解液2〜8の製造方法)
コロイダルシリカのγ−ブチロラクトン分散液1を、コロイダルシリカのγ−ブチロラクトン分散液2〜8に代えた以外は実施例1と同様にして電解コンデンサ用電解液2〜8を調製した。
【0069】
比較例1
(電解コンデンサ用電解液aの製造方法)
コロイダルシリカのγ−ブチロラクトン分散液1を加えなかった以外は実施例1と同様にして電解コンデンサ用電解液aを調製した。
【0070】
比較例2〜5
(電解コンデンサ用電解液b〜eの製造方法)
コロイダルシリカのγ−ブチロラクトン分散液1をコロイダルシリカのγ−ブチロラクトン分散液I〜IVに代えた以外は実施例1と同様にして電解コンデンサ用電解液b〜eを調製した。
【0071】
実施例9
(電解コンデンサ用電解液9の製造方法)
1,6-デカンジカルボン酸230部と、溶媒としてエチレングリコール2376部とを混合させて撹拌しながら、アンモニアガス34.1部を吹き込み、酸とアンモニアで中和して1,6-デカンジカルボン酸アンモニウムエチレングリコール溶液を得た。その後、上記方法により得られたコロイダルシリカのエチレングリコール分散液1(固形分20%)132部を加えて混合し、コロイダルシリカを4%含有した電解コンデンサ用電解液9を得た。
【0072】
実施例10〜16
(電解コンデンサ用電解液10〜16の製造方法)
コロイダルシリカのエチレングリコール分散液1を、コロイダルシリカのエチレングリコール分散液2〜8に代えた以外は実施例9と同様にして、電解コンデンサ用電解液10〜16を調製した。
【0073】
比較例6
(電解コンデンサ用電解液fの製造方法)
コロイダルシリカのエチレングリコール分散液1を加えなかった以外は実施例9と同様にして電解コンデンサ用電解液fを調製した。
【0074】
比較例7〜10
(電解コンデンサ用電解液g〜jの製造方法)
コロイダルシリカのエチレングリコール分散液1をコロイダルシリカのエチレングリコール分散液I〜IVに代えた以外は実施例9と同様にして電解コンデンサ用電解液g〜jを調製した。
【0075】
試験例1
実施例1〜16及び比較例1〜10で得られた各電解液について、下記測定方法により、コロイダルシリカの体積平均径及び粒子径標準偏差を測定した。また下記測定方法により、初期及び耐熱試験後(105℃2000時間後)の火花電圧を測定し、その変化率を求めた。結果を表1及び2に示す。
【0076】
<コロイダルシリカの体積平均径及び粒子径標準偏差の測定方法>
電解コンデンサ用電解液中のコロイダルシリカの体積平均径及び粒子径の標準偏差を、粒子径測定システム(大塚電子社製、ELSZ−1000S、動的光散乱法)を用いて下記条件により測定した。
[測定条件]
〔電解コンデンサ用電解液1〜8及びb〜e〕
溶媒:γ-ブチロラクトン(屈折率(25℃) 1.436)
溶媒の粘度:1.7cP
測定温度:25.0℃
形状:非球状
〔電解コンデンサ用電解液9〜16及びg〜j〕
溶媒:エチレングリコール(屈折率(25℃) 1.433)
溶媒の粘度:28.9cp
測定温度:25.0℃
形状:非球状
【0077】
<火花電圧の測定方法>
火花電圧は、電解液に、25℃で5mA/cmの定電流を印加し、電圧−時間カーブを調べることで行った。電圧の上昇カーブを始めにスパーク又はシンチレーションが観測された電圧を火花電圧(V)とした。火花電圧の変化率は下記式より求めた。
変化率(%)={(初期の火花電圧−耐熱試験後の火花電圧)/(初期の火花電圧)} ×100
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表1、2より、比較例1〜10より、実施例1〜16の方が初期の火花電圧が高く、かつ、耐熱試験後の変化率が小さいので、高温条件下でも長期間火花電圧を維持できることがわかる。コロイダルシリカの粒子径の標準偏差が小さければ小さいほど火花電圧の変化率が小さく、高温条件下で火花電圧を長期間維持することができることがわかる。
【0081】
試験例2
実施例1〜16及び比較例1〜10で得られた各電解液を用いて下記方法により電解コンデンサを作製した(製造例1〜16及び製造比較例1〜10)。得られた各電解コンデンサについて、下記測定方法により耐電圧を測定した。結果を表3及び4に示す。
【0082】
<電解コンデンサの作製>
まず、コンデンサ素子は陽極箔と、陰極箔をセパレータを介して巻回して形成した。陽極箔、陰極箔には陽極タブ、陰極タブがそれぞれ接続されている。これらの陽極タブ、陰極タブは高純度のアルミニウムよりなり、それぞれの箔と接続する平坦部と平坦部と連続した丸棒部より構成され、丸棒部にはそれぞれ陽極リード線、陰極リード線が接続されている。なお、それぞれの箔と電極タブはステッチ法や超音波溶接等により機械的に接続されている。
このように構成したコンデンサ素子に、各電解コンデンサ用電解液を含浸した。この電解液を含浸したコンデンサ素子を、有底筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部に、リード線を導出する貫通孔を有するブチルゴム製の封口体を挿入し、さらに外装ケースの端部を加締めることにより電解コンデンサの封口を行い、アルミ電解コンデンサを得た。
実施例1〜8及び比較例1〜5の電解液を使用したアルミ電解コンデンサ素子の仕様は定格電圧200V、定格静電容量47μFであり、実施例9〜16及び比較例6〜10の電解液を使用したアルミ電解コンデンサ素子の仕様は定格電圧450V、定格静電容量15μFである。
【0083】
(耐電圧の測定方法)
製造例1〜8及び製造比較例1〜5の電解コンデンサについては、電流5mA/cm、電圧300Vを、製造例9〜16及び製造比較例6〜10の電解コンデンサについては、電流20mA/cm、電圧600Vを、それぞれ105℃の条件下で印加して電圧−時間の上昇カーブではじめにスパイクあるいはシンチレーションが観測された値を耐電圧とした。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
表3、4より、製造比較例1〜10よりも、製造例1〜16の方が、耐電圧が高いことがわかる。火花電圧が大きく、かつ、火花電圧の変化率の小さい電解液を用いた電解コンデンサでは、高い耐電圧が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の電解液は、高い火花電圧を有し、かつ、耐熱性に優れるため、電解コンデンサ用の電解液として極めて有用なものである。