特許第6247084号(P6247084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247084
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ロウ付け穴あけ工具
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   B28D1/14
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-250908(P2013-250908)
(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公開番号】特開2015-107573(P2015-107573A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116781
【氏名又は名称】旭ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】和田 篤
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−239919(JP,A)
【文献】 特開2010−076021(JP,A)
【文献】 特開平1−135602(JP,A)
【文献】 特開2009−269095(JP,A)
【文献】 特開平10−128668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B23B 51/00 − 51/08
B24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転される台金の先端部分に超砥粒がロウ付けされたロウ付け穴あけ工具であって、
前記超砥粒は、前記台金の先端部分に分散配置される主砥粒と、前記主砥粒よりも大径である1又は複数の大径砥粒とを含み、
前記大径砥粒の少なくとも1つは、前記台金の先端面の回転中心点に配置されており、
前記主砥粒のうちの少なくとも1つが、前記回転中心点に位置する前記大径砥粒を覆っている、ロウ付け穴あけ工具。
【請求項2】
前記台金の先端面の回転中心点には、凹部が形成されている、
請求項1に記載のロウ付け穴あけ工具。
【請求項3】
複数の前記大径砥粒が、列状又は島状に配置されている、
請求項1又は2に記載のロウ付け穴あけ工具。
【請求項4】
複数の前記大径砥粒が、多層に配置されている、
請求項1〜3に記載の何れか一項に記載のロウ付け穴あけ工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロウ付け穴あけ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート又は石材等の硬脆材の穿孔加工には、ダイヤモンド砥粒をロウ付けした工具が使用されている。このような工具として、例えば特許文献1では、金属ボディの外周面と、金属ボディの先端面とに、ロウ付用合金を溶融してダイヤモンド砥粒を固着したドリルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−108117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、ロウ付用合金粉末とペースト用バインダとで形成したペーストが、金属ボディの先端面から2〜20mm程度に相当する金属ボディの外周面と、凹面状に掘削された先端とに塗布され、当該塗布面にダイヤモンド砥粒が散布固定されている。このようなダイヤモンド砥粒の固定方法は、いわゆるバラマキ法と呼ばれており、ダイヤモンド砥粒を略均一に散布固定できる。しかしながら、発明者等が磁器タイルの穿孔加工実験を行った結果、ロウ付けする砥粒域全体にダイヤモンド砥粒がバラマキ法により固定された工具では、工具寿命にばらつきが生じることを見出した。
【0005】
そこで、本発明は、工具寿命を安定化することができるロウ付け穴あけ工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、発明者等が工具寿命のばらつきについて研究したところ、回転中心点にダイヤモンド砥粒がロウ付けされていない工具の寿命が短くなるとの知見を得た。更に、バラマキ法は個々のダイヤモンド砥粒の位置を制御できないことから、工具寿命にばらつきが生じるとの知見に至った。そして、主砥粒よりも大きな大径砥粒の少なくとも1つを回転中心点に配置することで、上記課題を解決できることを見出した。本発明に係るロウ付け穴あけ工具は、回転される台金の先端部分に超砥粒がロウ付けされたロウ付け穴あけ工具であって、超砥粒は、台金の先端部分に分散配置される主砥粒と、主砥粒よりも大径である1又は複数の大径砥粒とを含み、大径砥粒の少なくとも1つは、台金の先端面の回転中心点に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るロウ付け穴あけ工具では、主砥粒よりも大径である大径砥粒が、台金の先端面の回転中心点に少なくとも1つ配置されている。大径砥粒の径は主砥粒の径よりも大きいので、主砥粒に比して、台金の先端面の回転中心点に配置し易く、且つ、先端面から外れ難い。そして、中央砥粒がこのように回転中心点に配置されていることにより、従来のバラマキ法によりロウ付けされた工具に比して、工具寿命を安定化することができる。
【0008】
また、台金の先端面の回転中心点には、凹部が形成されていてもよい。この場合、凹部が形成されていることによって、回転中心点における大径砥粒の配置を、より簡易且つ安定して行うことができる。
【0009】
また、複数の大径砥粒が、列状又は島状に配置されていてもよい。この場合、大径砥粒が列状又は島状に配置されていることにより、ロウ付けによる大径砥粒の保持力を高めることができる。その結果、ロウ付け穴あけ工具の切れ味が安定し、工具寿命を延ばすことが可能となる。
【0010】
また、複数の大径砥粒が、多層に配置されていてもよい。この場合、大径砥粒が多層に配置されていることにより、例えば回転中心点に配置される大径砥粒を内側層に配置することができる。その結果、外側層の大径砥粒が台金の先端面から外れても、内側層において回転中心点に配置される大径砥粒を先端面に保持でき、工具寿命を延ばすことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、工具寿命を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の概略構成を示す側面図である。
図2図1のロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略側断面図である。
図3図1のロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略平面図である。
図4】各製造工程におけるロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略側断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略側断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略平面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略側断面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略平面図である。
図9】実施例に係るロウ付け穴あけ工具によるタイル穿孔試験結果を示す表である。
図10】比較例に係るロウ付け穴あけ工具によるタイル穿孔試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の構成について、図1図3を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るロウ付け穴あけ工具1(以下、単に「工具1」という。)は、例えば外壁用の磁器タイルの落下防止のため、磁器タイルに6mm程度の固定用の穴を開ける回転工具であり、丸棒状に細長く延びる台金4と、この台金4の先端部分5に形成された超砥粒層7とを備えている。超砥粒層7は、例えばダイヤモンド砥粒又はCBN砥粒といった超砥粒が、ロウ付け法により台金4の先端部分5の表面上に固着されることで形成されている。工具1の基端側は、シャンク14を構成しており、工具1は、シャンク14が工作機械のチャックに保持された状態で、回転軸線Aを中心にして回転する。シャンク14から先端側に延びたボデー17には、ねじれ溝が形成されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、台金4の先端部分5には、工具1の回転軸線Aに平行な直線に交差する先端面5aと、回転軸線Aの方向に略平行に沿う外周面5bとが含まれる。先端面5aは、突出した半球状に形成され、回転軸線Aと交わる工具1の回転中心点5cを有している。この回転中心点5cは、例えば、工具1が穴あけを行う際に、穴をあける対象と最も早く接触する部分であり、工具1の回転によらず略一定の位置を保っている。すなわち、回転中心点5cは、略回転しない位置である。ただし、回転中心点5cは、先端面5aの凹んでいる部分に位置していてもよく、穴をあける対象と最も早く接触しなくてもよい。本実施形態においては、先端面5aの回転中心点5cに、凹部6が形成されている。凹部6は、例えば半球状の窪みである。
【0017】
超砥粒層7を形成する超砥粒には、主砥粒9と、大径砥粒11とが含まれる。主砥粒9は、台金4の先端部分5の全体に分散配置されている。主砥粒9は、先端面5aと外周面5bとに亘り、略均一に分布している。主砥粒9の粒径は、例えば#25〜#80である。
【0018】
大径砥粒11は、台金4の先端面5aの少なくとも回転中心点5cに配置されている。大径砥粒11は、例えば、凹部6に入り込んでいる。凹部6の大きさは、大径砥粒11が入る程度の大きさである。大径砥粒11の粒径は、主砥粒9の粒径よりも大きく、例えば主砥粒9の粒径の1.1〜2倍程度で、より好ましくは1.5〜1.8倍である。なお、大径砥粒11は、少なくとも一部が回転中心点5cに配置されていればよく、大径砥粒11の中心が回転中心点5cに配置されていなくてもよい。
【0019】
複数の主砥粒9のうちの少なくとも1つが、先端面5aの回転中心点5cに略等しい位置に配置され、回転中心点5cに位置する大径砥粒11を覆っていてもよい。このような配置の状態で台金4の先端部分5に主砥粒9及び大径砥粒11がロウ付けされることにより、主砥粒9の形状が先端部分5の外観に顕著に現れる一方、大径砥粒11は主砥粒9に覆われることで、その形状が外観にあまり現れない(図1参照)。なお、主砥粒9は、回転中心点5cに配置されていなくてもよく、大径砥粒11を覆っていなくてもよい。
【0020】
次に、工具1の製造方法を、図4を参照して説明する。図4は、各製造工程におけるロウ付け穴あけ工具1の先端部分5を示す概略断面図である。まず、台金4の先端部分5における凹部6に接着剤を塗布すると共に、当該凹部6に大径砥粒11を付着させる(図4の(a)参照)。続いて、台金4の先端部分5の全体にロウ材Rを貼り付ける(図4の(b)参照)。続いて、台金4の先端部分5の全体に接着剤を塗布すると共に、当該全体に主砥粒9を分散配置する(図4の(c)参照)。そして、真空ロウ付けを行い、大径砥粒11及び主砥粒9を台金4の先端部分5に固着する。
【0021】
以上、本実施形態に係る工具1によれば、主砥粒9の径よりも大きな径の大径砥粒11が、台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置されている。大径砥粒11の径は主砥粒9の径よりも大きいので、主砥粒9に比して、台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置し易く、且つ、先端面5aから外れ難い。そして、大径砥粒11がこのように回転中心点5cに配置されていることにより、従来のバラマキ法によりロウ付けされた工具に比して、工具寿命を安定化することができる。
【0022】
また、工具1によれば、台金4の先端面5aの回転中心点5cには、半球状の窪みである凹部6が形成されている。よって、この凹部6により、回転中心点5cにおける大径砥粒11の配置を、より簡易且つ安定して行うことができる。
【0023】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の構成について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略側断面図である。図6は、本発明の第2実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略平面図である。ただし、図5及び図6においては、ロウ付け法により貼り付けられるロウ材Rの図示を省略すると共に、図6においては、主砥粒9の図示を省略している。
【0024】
図5及び図6に示すように、本実施形態に係るロウ付け穴あけ工具2(以下、単に「工具2」という。)も、第1実施形態に係る工具1同様、台金4の先端部分5に、工具1の回転軸線Aに平行な直線に交差する先端面5aと、回転軸線Aの方向に略平行に沿う外周面5bとが含まれる。先端面5aは、突出した半球状に形成され、回転軸線Aと交わる工具1の回転中心点5cを有している。また、主砥粒9が、台金4の先端部分5の全体に分散配置され、先端面5aと外周面5bとに亘り、略均一に分布している。
【0025】
本実施形態に係る工具2は、第1実施形態に係る工具1と異なり、半球状の窪みである凹部6の代わりに、溝状の凹部13が形成されている。また、当該凹部13には、3つの大径砥粒15〜17が列状に配置されている。
【0026】
凹部13は、先端面5aにおける回転中心点5cを通る直線状に形成されている。3つの大径砥粒15〜17は、凹部13に入り込むことにより、列状に配置されている。3つの大径砥粒15〜17のうち、少なくとも1つは回転中心点5cに配置されている。例えば、3つの大径砥粒15〜17のうち、真ん中に位置する大径砥粒16が、回転中心点5cに配置されている。なお、大径砥粒16は、少なくとも一部が回転中心点5cに配置されていればよく、大径砥粒16の中心が回転中心点5cに配置されていなくてもよい。大径砥粒15〜17の粒径は、第1実施形態に係る大径砥粒11の粒径と同様である。大径砥粒15〜17は、一直線状に並んでいなくてもよく、任意の一直線上から互いにずれた位置に配置されていてもよい。また、大径砥粒15〜17は、回転軸線Aの方向に積み上げられることで、全てが回転軸線A上に並ぶように配置されていてもよい。
【0027】
なお、本実施形態に係る工具2の製造方法は、第1実施形態に係る工具1の製造方法と同様である。まず、台金4の先端部分5における凹部13に接着剤を塗布すると共に、当該凹部13に大径砥粒15〜17を付着させる。続いて、台金4の先端部分5の全体にロウ材Rを貼り付ける。続いて、台金4の先端部分5の全体に接着剤を塗布すると共に、当該全体に主砥粒9を分散配置する。そして、真空ロウ付けを行い、大径砥粒15〜17及び主砥粒9を台金4の先端部分5に固着する。
【0028】
以上、本実施形態に係る工具2によれば、主砥粒9の径よりも大きな径の大径砥粒15〜17の少なくとも1つが、台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置されている。大径砥粒15〜17の径は主砥粒9の径よりも大きいので、主砥粒9に比して、台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置し易く、且つ、先端面5aから外れ難い。そして、大径砥粒15〜17の少なくとも1つがこのように回転中心点5cに配置されていることにより、従来のバラマキ法によりロウ付けされた工具に比して、工具寿命を安定化することができる。
【0029】
また、工具2によれば、台金4の先端面5aの回転中心点5cには、溝状の凹部13が形成されている。よって、この凹部13により、回転中心点5cにおける大径砥粒11の配置を、より簡易且つ安定して行うことができる。
【0030】
また、工具2によれば、複数の大径砥粒15〜17が、列状に配置されているので、ロウ付けによる大径砥粒15〜17の保持力を高めることができる。その結果、工具2の切れ味が安定し、工具寿命を延ばすことが可能となる。
【0031】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の構成について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係るロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略側断面図である。図8は、図7のロウ付け穴あけ工具の先端部分を示す概略平面図である。ただし、図7及び図8においては、ロウ付け法により貼り付けられるロウ材の図示を省略すると共に、図8においては、主砥粒9の図示を省略している。
【0032】
図7及び図8に示すように、本実施形態に係るロウ付け穴あけ工具3(以下、単に「工具3」という。)も、第1実施形態に係る工具1同様、台金4の先端部分5に、工具1の回転軸線Aに平行な直線に交差する先端面5aと、回転軸線Aの方向に略平行に沿う外周面5bとが含まれる。先端面5aは、突出した半球状に形成され、回転軸線Aと交わる工具1の回転中心点5cを有している。また、主砥粒9が、台金4の先端部分5の全体に分散配置され、先端面5aと外周面5bとに亘り、略均一に分布している。
【0033】
本実施形態に係る工具3は、第1実施形態に係る工具1と異なり、半球状の窪みである凹部6の代わりに、当該凹部6の径よりも大きい径を有する半球状の凹部18が形成されている。また、当該凹部18には、5つの大径砥粒19〜23が島状かつ多層に配置されている。ここで、島状に配置されているとは、複数の大径砥粒が、1つの塊のように密集して配置されていることをいい、多層に配置されているとは、複数の大径砥粒が、回転軸線A方向に沿って積み上げられるように配置されていることをいう。
【0034】
凹部18は、先端面5aにおける回転中心点5cに配置されている。5つの大径砥粒19〜23は、凹部18に入り込むことにより、多層且つ島状に配置されている。5つの大径砥粒19〜23のうち、少なくとも1つの大径砥粒が回転中心点5cに配置されている。例えば、大径砥粒19が回転中心点5cに配置されている。その他の4つの大径砥粒20〜23は、回転中心点5cの付近で、当該大径砥粒19を覆うように並置されている。大径砥粒19は、大径砥粒20〜23に覆われることにより、大径砥粒20〜23よりも内側層に配置され、大径砥粒20〜23は、大径砥粒19よりも外側層に配置されている。すなわち、大径砥粒19と大径砥粒20〜23とは多層に配置されている。また、大径砥粒20〜23は、輪を描くように島状に配置されている。大径砥粒19〜23の粒径は、第1実施形態に係る大径砥粒11の粒径と同様である。なお、大径砥粒19は、少なくとも一部が回転中心点5cに配置されていればよく、大径砥粒19の中心が回転中心点5cに配置されていなくてもよい。また、回転中心点5cに配置されるのは、1つの大径砥粒19に限られず、大径砥粒19〜23のうちのいずれか1つ以上であればよい。
【0035】
なお、本実施形態に係る工具3の製造方法は、第1実施形態に係る工具1の製造方法と同様である。まず、台金4の先端部分5における凹部18に接着剤を塗布すると共に、当該凹部18に大径砥粒19〜23を付着させる。続いて、台金4の先端部分5の全体にロウ材Rを貼り付ける。続いて、台金4の先端部分5の全体に接着剤を塗布すると共に、当該全体に主砥粒9を分散配置する。そして、真空ロウ付けを行い、大径砥粒19〜23及び主砥粒9を台金4の先端部分5に固着する。
【0036】
以上、本実施形態に係る工具3においても、主砥粒9の径よりも大きな径の大径砥粒19が、台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置されている。大径砥粒19の径は主砥粒9の径よりも大きいので、主砥粒9に比して、台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置し易く、且つ、先端面5aから外れ難い。そして、大径砥粒19がこのように回転中心点5cに配置されていることにより、従来のバラマキ法によりロウ付けされた工具に比して、工具寿命を安定化することができる。
【0037】
また、工具3によれば、複数の大径砥粒19〜23が、島状に配置されているので、ロウ付けによる大径砥粒19〜23の保持力を高めることができる。その結果、工具3の切れ味が安定し、工具寿命を延ばすことが可能となる。
【0038】
また、工具3によれば、複数の大径砥粒19〜23が、多層に配置されているので、例えば複数の大径砥粒19〜23のうち回転中心点5cに配置される大径砥粒19を内側層に配置することができる。その結果、外側層に配置される大径砥粒20〜23のいずれかが台金4の先端面5aから外れても、内側層において回転中心点5cに配置される大径砥粒19を先端面5aに保持でき、工具寿命を延ばすことが可能となる。
【0039】
以上、本実施形態の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0040】
複数の大径砥粒15〜17,19〜23の配置は、少なくとも1つの大径砥粒が台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置されている限り、上記に挙げた配置以外の種々の配置を取り得る。例えば、先端面5aの回転中心点5cを中心とする十字状に配置してもよいし、配置に合わせて凹部13,18の形状を変形してもよい。また、島状且つ多層に限られず、列状且つ多層に配置してもよく、単に島状又は多層に配置してもよい。また、凹部6,13,18は必ずしも形成されていなくてもよい。
【0041】
また、回転中心点5cに配置される大径砥粒11,15〜17,19〜23は、砥粒を外向けに切れ刃が立つように固着してもよい。大径砥粒11,15〜17,19〜23の形状は特に限られず、円柱又は角柱等の柱状であってもよい。
【0042】
また、大径砥粒11、複数の大径砥粒15〜17の少なくとも1つ、及び、複数の大径砥粒19〜23の少なくとも1つは、凹部6,13,18が形成されていない台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置されていてもよい。
【0043】
[実施例]
以下、少なくとも1つの大径砥粒が台金4の先端面5aの回転中心点5cに配置されていることによる効果を説明すべく、本発明者が実施した実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
実施例1では、上記第1実施形態のように、大径砥粒11を回転中心点5cに配置したロウ付け穴あけ工具1を用いて(図2及び図3参照)、タイル穿孔試験を行った。試験条件は、防水パンに水を張り、タイルを水没させた状態で下向き穿孔を行ういわゆる湿式条件であった。工具が継続してタイルに穿つことができる孔の数(以降、単に「穿孔数」という。)を測定した。実施例1では、穿孔数が50になった場合に目標性能達成として穿孔を中止し、測定結果を50とした。
(実施例2〜5)
実施例2〜5では、上記第2実施形態のように、少なくとも1つの大径砥粒16が回転中心点5cに配置されるように、3つの大径砥粒15〜17を列状に配置したロウ付け穴あけ工具2を用いて(図5及び図6参照)、タイル穿孔試験を行い、穿孔数を測定した。試験条件は、実施例1と同様、いわゆる湿式条件であった。実施例1と同様、穿孔数が50になった場合に目標性能達成として穿孔を中止し、測定結果を50とした。
【0045】
(比較例1〜6)
比較例1〜6では、台金の先端面の回転中心点に大径砥粒が配置されておらず、いわゆるバラマキ法により主砥粒(ダイヤモンド砥粒)のみが分散配置された従来のロウ付け穴あけ工具を用いて、タイル穿孔試験を行い、穿孔数を測定した。試験条件は、実施例1〜5と同様、いわゆる湿式条件であった。比較例1〜6では、穿孔が不能となった場合に不能となる前までの穿孔数を測定結果とした。
【0046】
(実験結果)
実施例1〜5及び比較例1〜6のロウ付け穴あけ工具を用いてタイル穿孔試験を行った結果を図9及び図10に示す。図9は、実施例に係るロウ付け穴あけ工具によるタイル穿孔試験結果を示す表である。図9の表に示す穿孔数は、実施例1〜5のタイル穿孔試験による穿孔数の測定結果を示している。図10は比較例に係るロウ付け穴あけ工具によるタイル穿孔試験結果を示す表である。図10の表に示す穿孔数は、比較例1〜6のタイル穿孔試験による穿孔数の測定結果を示している。
【0047】
図9に示すように、実施例1〜5のいずれの場合も、穿孔数の測定結果は50であった。すなわち、穿孔数を50とする目標性能をいずれも達成していた。したがって、バラマキ法によりロウ付けされた工具に比して、工具寿命がばらつきのない安定したものとなった。
【0048】
これに対し、図10に示すように、比較例1〜6に係るロウ付け穴あけ工具の場合、穿孔数がいずれも50未満であった。すなわち、比較例1〜6では、目標性能を達成することができなかった。また、比較例1〜6に係るロウ付け穴あけ工具の場合、穿孔が不能となるまでの穿孔数にばらつきがあった。このように、従来のバラマキ法では個々の主砥粒の位置を制御できないことから、工具寿命にばらつきが生じた。
【0049】
以上、実施例1〜5及び比較例1〜6のロウ付け穴あけ工具を用いてタイル穿孔試験を行った結果、少なくとも1つの大径砥粒が回転中心点5cに配置されるロウ付け穴あけ工具を用いることにとり、従来のバラマキ法によりロウ付けされた工具に比して、工具寿命を安定化することができるという効果が確認された。
【符号の説明】
【0050】
1,2,3…ロウ付け穴あけ工具、4…台金、5…先端部分、9…主砥粒、11,15〜17,19〜23…大径砥粒、5a…先端面、5c…回転中心点、6,13,18…凹部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10