(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カチオン性ポリマーが、カチオン変性ポリビニルアルコール及びカチオン変性ヒドロキシルエチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
前記キレート剤が、クエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸及びトリポリリン酸、又はそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物]
本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、下記カチオン性ポリマー(a)、下記アニオン性ポリマー(b)、キレート剤(c)、ノニオン性界面活性剤(d)、及び水(e)を含有し、前記(a)成分の含有量が0.1質量%以上、20質量%以下であり、前記(a)成分に対する前記(b)成分の質量比((b)/(a))が0.01以上、60以下であり、前記(a)成分に対する前記(c)成分の質量比((c)/(a))が0.4以上、30以下であり、20℃におけるpHが6以上、9以下である。
(a)成分:下記一般式(a−1)〜(a−5)から選ばれる1種又は2種以上のカチオン性基を有し、カチオン化度が0.25mol%以上、5mol%以下であるカチオン性ポリマー
(b)成分:アクリル酸塩、メタクリル酸塩、及びマレイン酸塩から選ばれるアニオン性基含有モノマーに由来する構成単位を1種又は2種以上有するアニオン性ポリマー(但し(a)成分を除く)
【0012】
<(a)成分>
前記(a)成分は、下記一般式(a−1)〜(a−5)から選ばれる1種又は2種以上のカチオン性基を有し、カチオン化度が0.25mol%以上、5mol%以下であるカチオン性ポリマーである。
【0013】
【化3】
(式中、R
1〜R
14はそれぞれ独立に炭素数1以上、6以下のアルキル基を示し、Z
-はそれぞれ独立に陰イオンを示し、mはそれぞれ独立に1以上、10以下の整数を示し、nはそれぞれ独立に0以上、10以下の整数を示す。)
【0014】
R
1〜R
14は、炭素数1以上、6以下のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は、汚れの再付着を抑制する観点から、好ましくは1以上であり、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。なお、前記「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
【0015】
Z
-は、陰イオンであり、陰イオンとしては、ヒドロキシイオン;塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;酢酸イオン、プロピオン酸イオン、又は酪酸イオン等の炭素数2以上、4以下の低級脂肪酸イオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等の炭素数1以上、3以下の低級アルキル硫酸イオン等が挙げられる。これらの中でも、汚れの再付着を抑制する観点から、ヒドロキシイオン及びハロゲン化物イオンが好ましく、ヒドロキシイオン、塩化物イオン及び臭化物イオンがより好ましく、塩化物イオンが更に好ましい。
【0016】
mは、1以上10以下の整数を示す。mが1以上10以下であれば、洗浄性能が向上する。mは、洗浄性能の観点から、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3以下である。
nは、0以上10以下の整数を示す。nが0以上10以下であれば、洗浄性能が向上する。nは、洗浄性能の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、そして、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3以下である。
【0017】
前記一般式(a−1)〜(a−5)で表されるカチオン性基を有するカチオン性ポリマーは、例えば、前記カチオン性基を有するモノマーと重合性モノマーとを重合させることにより得ることができる。
前記重合性モノマーとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等のオレフィン類、スチレン、p−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル誘導体類、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。
また、ヒドロキシエチルセルロース、及び可溶性澱粉等の半合成水溶性高分子に対して前記カチオン性基を有する化合物を反応させることにより製造することもできる。
本発明においては、汚れの再付着性能を向上させる観点、及び入手容易性の観点から、酢酸ビニルと前記カチオン性基を有するモノマーとを重合して製造したカチオン変性ポリビニルアルコール、及びヒドロキシエチルセルロースと前記カチオン性基を有する化合物とを反応させたカチオン変性ヒドロキシルエチルセルロースが好ましい。
【0018】
(カチオン変性ポリビニルアルコール)
カチオン変性ポリビニルアルコールは、前記カチオン性基を主鎖あるいは側鎖に有するポリビニルアルコールのことである。前記カチオン変性ポリビニルアルコールは、原料の酢酸ビニルを重合する際に、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド等と酢酸ビニルとを共重合し、得られたコポリマーを常法によりケン化することにより得られる。
また、酢酸ビニルと他の反応性基を有するモノマーとを共重合しておき、ケン化後前記反応性基を利用して、前記カチオン性基を含有する化合物を反応させてポリビニルアルコールをカチオン化してもよい。
【0019】
(カチオン変性ヒドロキシエチルセルロース)
カチオン変性ヒドロキシルエチルセルロースは、例えば、原料セルロースとエチレンオキシドとを反応させてヒドロキシエチルセルロースを得た後、このヒドロキシエチルセルロースをカチオン化剤と反応させてカチオン化する方法により得ることができる。
【0020】
原料セルロースとして用いられるセルロースとしては、化学的に純粋なセルロースの他、各種木材チップ等の木材類;木材から製造される木材パルプ等のパルプ類;新聞紙、段ボール等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等、種々のセルロース含有原料を用いることができる。
【0021】
カチオン化剤としては、入手性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウム又はグリシジルトリエチルアンモニウムの塩化物又は臭化物、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム等の塩化物、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム等の臭化物が好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物がより好ましく、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物が更に好ましい。これらのカチオン化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
カチオン性ポリマーのカチオン化度は、汚れの再付着を抑制する観点から、0.25mol%以上、好ましくは0.35mol%以上、より好ましくは0.45mol%以上、更に好ましくは0.6mol%以上、より更に好ましくは0.8mol%以上、より更に好ましくは1.0mol%以上であり、そして、食器に対してポリマーを均一に吸着させ、汚れの再付着を抑制する観点から、5mol%以下、好ましくは4mol%以下、より好ましくは3mol%以下、更に好ましくは2mol%以下である。
なお、カチオン化度は、ポリビニル硫酸カリウム(PVSK)を用いたコロイド滴定により求めることができる。
【0023】
カチオン性ポリマーの平均分子量は、洗浄性を向上させる観点から、好ましくは10,000Da以上、より好ましくは30,000Da以上、更に好ましくは50,000Da以上、より更に好ましくは70,000Da以上であり、そして、汚れの再付着を抑制する観点から、好ましくは2,000,000Da以下、より好ましくは1,500,000Da以下、更に好ましくは1,000,000Da以下、より更に好ましくは800,000Da以下である。
なお、カチオン性ポリマーの平均分子量は、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0024】
自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物中の前記(a)成分の含有量は、汚れの再付着を抑制する観点から、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、洗浄性能の観点から、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下である。
【0025】
<(b)成分>
(b)成分は、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、及びマレイン酸塩から選ばれるアニオン性基含有モノマーに由来する構成単位を有するアニオン性ポリマーである。なお、本発明において、前記カチオン性基と前記アニオン性基との両方を含有するポリマーは(a)成分とする。
前記アクリル酸、メタクリル酸、又はマレイン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩が挙げられる。
前記アニオン性ポリマーは、前記アニオン性基含有モノマーのみで構成されるポリマーであってもよく、アニオン性基含有モノマーと、アニオン性基含有モノマー以外のモノマーとの共重合体であってもよい。
アニオン性基含有モノマー以外のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、スチレン等、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系炭化水素類が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0026】
アニオン性ポリマーが、アニオン性基含有モノマーと、アニオン性基含有モノマー以外のモノマーとの共重合体である場合、アニオン性ポリマー中のアニオン性基含有モノマーの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
なお、アニオン性ポリマー中のアニオン性基含有モノマーの含有量は、重合時の配合量から算出することができる。
【0027】
アニオン性ポリマーは、アニオン性基含有モノマーを単独重合する方法、又はアニオン性基含有モノマーと、それ以外のモノマーとを共重合する方法で製造することができる。具体的には、前記モノマーをラジカル開始剤の存在下、ラジカル重合することにより得られる。
【0028】
アニオン性ポリマーの重量平均分子量は、洗浄性能の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは35,000以下である。
なお、本明細書におけるアニオン性ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値である。
【0029】
前記(a)成分に対する前記(b)成分の質量比((b)/(a))は、0.01以上、60以下である。質量比((b)/(a))が前記範囲内であると、乾燥半熟卵黄汚れ等に対する洗浄性能が向上すると共に、汚れの再付着を抑制することができる。
質量比((b)/(a))は、洗浄性能の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは3以上であり、そして、汚れの再付着を抑制する観点から、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは10以下である。
【0030】
<(c)成分>
キレート剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、ニトリロ三酢酸、1,3−プロパンジアミン三酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、及びヒドロキシエチルエチレンジアミンジカルボキシメチルグルタミン酸等のポリカルボン酸又はその塩、トリポリリン酸又はその塩を用いることができる。
これらの中でも、クエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸及びトリポリリン酸、又はそれらの塩が好ましい。
これらのキレート剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもクエン酸、リンゴ酸又はそれらの塩から選ばれる1種と、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸又はそれらの塩から選ばれる1種を併用することが洗浄性能の観点から好ましい。
【0031】
前記(a)成分に対する前記(c)成分の質量比((c)/(a))が0.4以上、30以下である。質量比((c)/(a))が前記範囲内であれば、洗浄性能が向上すると共に、汚れの再付着を抑制することができる。
質量比((c)/(a))は、汚れの再付着を抑制する観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であり、そして、好ましくは28以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下である。
【0032】
<ノニオン性界面活性剤(d)>
ノニオン性界面活性剤(d)としては、洗浄性能の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が好ましい。
これらの中でも、洗浄性能の観点から、EOの平均付加モル数が好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、泡立ち抑制の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは6以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは4以下であり、アルキル基の炭素数が好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは18以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、より好ましくはEOの平均付加モル数が3以上、18以下、アルキル基の炭素数が12以上、18以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。
具体的には、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。これらのノニオン性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0033】
<水(e)>
自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を構成する水としては、水道水、蒸留水、又は脱イオン水を用いることができ、これらの中でも、自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の保存安定性の観点から、蒸留水又は脱イオン水が好ましい。
【0034】
<酵素(f)>
本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、洗浄性能を向上させる観点から、酵素を含有していることが好ましい。酵素としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、エステラーゼ、及びペルオキシダーゼから選ばれる1種又は2種以上を用いることができ、市販品として粒状化されたものを用いることができる。いずれの酵素も他成分との保存安定性等を考慮して適宜選択すればよい。これらの中でも、他の界面活性剤では除去が難しい糊化したデンプンへの作用が期待されるアミラーゼが好ましい。また、界面活性剤等では除去が困難な変性タンパク質等に対して著しい効果を示すことからプロテアーゼも好ましい。本発明においては、アミラーゼとプロテアーゼを併用することが最も好ましい。
自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が酵素を含有する場合、酵素の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上、より更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0035】
<pH>
自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の20℃におけるpHは、洗浄力及び安全性の観点から、6以上、9以下である。pHがこの範囲内であると、乾燥半熟卵黄汚れ等に対する洗浄力が向上し、また保存安定性にも優れる。本発明において、pHは、好ましくは6.5以上、より好ましくは7以上であり、そして、洗浄剤組成物の保存安定性の観点から、好ましくは8.6以下、より好ましくは8.2以下、更に好ましくは7.8以下である。なお、前記pHは、自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の原液、つまり、自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物そのものを測定した値である。
【0036】
<任意成分>
自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物においては、通常の洗浄剤に用いることができるその他の成分を配合することができる。例えば、pH調整剤、アルカリ剤、前記(d)成分以外の界面活性剤、溶媒、カルシウム塩や蟻酸等の酵素安定化剤、香料、防菌剤、防黴剤、及び色素等を挙げることができる。
【0037】
(pH調整剤)
pH調整剤としては、塩酸や硫酸等の無機酸や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、及びモノエタノールアミンから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、塩酸、硫酸、及びモノエタノールアミンが好ましい。なお、後述のアルカリ剤をpH調整剤として用いてもよい。
【0038】
(アルカリ剤)
アルカリ剤としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩、アミン化合物等を用いることができる。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。また、ソーダ灰として知られている炭酸ナトリウムの無水塩を用いてもよい。
アルカリ金属珪酸塩としては、結晶性層状珪酸ナトリウム(株式会社トクヤマシルテック製、商品名「プリフィード」)等を用いることができる。また、非晶質のものを用いてもよい。なおアルカリ金属珪酸塩は食器の酸化防止剤としても有効である。
アミン化合物としては、アルカノールアミンを挙げることができる。本発明では特に1級のアルカノールアミンが好ましく、具体的にはモノエタノールアミンを挙げることができる。これらアルカリ剤の中では、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。
自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物がアルカリ剤を含む場合、アルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。
【0039】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、前記(d)成分以外のノニオン性界面活性剤や、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。
本発明においては、洗浄力を更に向上させる洗浄補助成分として、一般的に自動食器洗浄機用洗浄剤として配合される漂白剤、漂白活性化剤等を配合してもよい。
【0040】
(溶媒)
本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、水溶液であることが好ましいが水以外の溶媒を用いてもよい。水以外の溶媒としては、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、フェノキシエタノール、フェニルグリコール、フェノキシイソプロパノール、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジブチレンジグリコール、及びベンジルアルコールから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
水以外の溶媒を用いる場合、自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物中の溶媒の量は、組成物の安定性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、安価に製造する観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0041】
本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、従来のものに比べて洗浄性能が高いため使用量を低減することができる。また、使用量を低減することができるため、容器のコンパクト化を図ることが可能であり、包装材料の使用量を低減することができる。
【0042】
本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、各成分を混合することにより得ることができるが、前記(c)成分の水溶液に対して、前記(a)成分の水溶液を加えて混合した後、前記(b)成分の水溶液を加えて混合することにより調製することが好ましい。この順序で調製することにより、各成分が溶液中で安定に存在するため好ましい。その他の成分については、前記(a)〜(c)成分を混合した後で加えることが好ましい。
混合する際の前記(a)成分の水溶液、及び前記(c)成分の濃度は、各成分の溶液中での安定性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下である。
【0043】
[食器の洗浄方法]
本発明の食器の洗浄方法は、下記カチオン性ポリマー(a)、下記アニオン性ポリマー(b)、キレート剤(c)、ノニオン性界面活性剤(d)、及び水(e)を含有し、前記(a)成分の濃度が1ppm以上、1,000ppm以下であり、前記(a)成分に対する前記(b)成分の質量比((b)/(a))が0.01以上、60以下であり、前記(a)成分に対する前記(c)成分の質量比((c)/(a))が0.4以上、30以下である洗浄水を食器表面に接触させる、食器の洗浄方法である。
(a)成分:下記一般式(a−1)〜(a−5)から選ばれる1種又は2種以上のカチオン性基を有し、カチオン化度が0.25mol%以上、5mol%以下であるカチオン性ポリマー
(b)成分:アクリル酸塩、メタクリル酸塩、及びマレイン酸塩から選ばれるアニオン性基含有モノマーに由来する構成単位を1種又は2種以上有するアニオン性ポリマー(但し(a)成分を除く)
【0044】
【化4】
(式中、R
1〜R
14はそれぞれ独立に炭素数1以上、6以下のアルキル基を示し、Z
-はそれぞれ独立に陰イオンを示し、mはそれぞれ独立に1以上、10以下の整数を示し、nはそれぞれ独立に0以上、10以下の整数を示す。)
【0045】
前記洗浄水中の前記(a)成分の濃度は、洗浄性能を向上させる観点から、1ppm以上、好ましくは10ppm以上、より好ましくは50ppm以上、更に好ましくは100ppm以上であり、そして、洗浄性能とコスト増加とのバランスの観点から、1,000ppm以下、より好ましくは900ppm以下、更に好ましくは850ppm以下である。
【0046】
本発明の食器洗浄方法における前記(a)成分に対する前記(b)成分の質量比((b)/(a))は0.01以上、60以下であり、前記(a)成分に対する前記(c)成分の質量比((c)/(a))は0.4以上、30以下である。これらの質量比の好ましい範囲、及び効果に関しては前述の好ましい範囲、及び効果と同様である。
【実施例】
【0047】
<実施例1〜7、比較例1〜6>
実施例1の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を表1に記載の割合になるように下記の手順にしたがって100g調製した。
20質量%のキレート剤水溶液に対して、20質量%のカチオン性ポリマー水溶液を加え5分撹拌した後、これに40質量%のアニオン性ポリマー水溶液を加え5分撹拌した。次いで、ノニオン性界面活性剤、及びpH調整剤等を加えて5分撹拌することにより自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を調製した。
【0048】
実施例及び比較例において調製した自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を以下の評価に供した。
<pH測定>
pHメーター(株式会社堀場製作所製、「F−52」、pH電極6367−10D)を用いて、JIS Z−8802:2011にしたがって20℃におけるpH値を測定した。なお、測定溶液としては、前記実施例及び比較例で調製した自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を希釈せずに原液のままを用いた。結果を表1に示す。
【0049】
<油汚れの洗浄性評価>
・試験皿の作成
(1)牛脂(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を湯浴にて均一に溶解させた。
(2)ポリプロピレン皿(PP給食用食器「C−39ミート皿(直径230mm×17mm)」、木本キッチンウェアー株式会社製)にスポイトにて上記(1)に記載の牛脂を一滴ずつ1.0g滴下し、そのまま25℃で30分以上放冷、固化させて試験皿とした。
・洗浄試験
(1)食洗機内の下かご(大皿置き場)に、汚れの付いたポリプロピレン皿(PP皿)を、汚れを塗布した面が内側になるようにして、皿立て溝の1つおきに2枚立てた。
(2)汚れの付いたポリプロピレン皿2枚と汚れの付いていない清浄なポリプロピレン皿2枚とが交互になるように設置した。
(3)前記実施例及び比較例で調製した自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を洗浄時の洗浄液中の濃度が0.67質量%となるように投入後、標準コースにて洗浄した。
【0050】
・評価方法
5人の評価者によりポリプロピレン皿表面に残った油膜について、下記評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
・評価基準
A:皿が完全に洗浄されていた
B:皿の表裏の一部分がヌルついていた
C:皿の大部分がヌルついていた
【0051】
<茶渋汚れに対する洗浄性評価>
・試験食器の作成
(1)市販の紅茶ティーバッグ(三井農林株式会社製「日東紅茶DAY&DAY ティーバッグ」)をお湯1Lに対し、3袋用意した。
(2)熱湯にティーバッグを入れて、10分間紅茶液を煮出した。
(3)ティーバッグを取り出し、紅茶液を撹拌して均一にした。
(4)メラミン製湯呑み(タンブラー・小MN−17〔直径74mm、高さ80mm〕・200mL DAIWAより購入)にそれぞれ100gずつ紅茶液をとり(泡は除く)、1時間静置した後、紅茶液を除いた。
(5)そのまま25℃で一昼夜乾燥させて試験食器とした。
【0052】
・洗浄試験
前記実施例及び比較例で調製した自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を洗浄液中の濃度が0.67質量%となるように食器洗い乾燥機(パナソニック株式会社、型番「NP−TR3」(卓上タイプ))の専用洗剤入れに投入した(水道水の使用量:3L)。
前記試験食器を食器洗い乾燥機の上かごにメラミン製湯呑み4つを設置し、標準コースにて洗浄を行った。
【0053】
・評価方法
5人の評価者により試験食器の表面に残った茶渋を目視により観察し、下記評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:湯呑が完全に洗浄されていた
B:喫水線がわずかに見えた
C:喫水線がはっきりと残っていた
【0054】
<乾燥半熟卵黄汚れの洗浄性評価>
・試験皿の作成
(1)鶏卵(5個)を割って、卵黄取り分け器を用いて卵白を除き卵黄を取り分けた。
(2)スクリュー管(No.8)に卵黄5個分を入れて、水浴(73〜75℃)にて10分間加熱した。
(3)水浴よりスクリュー管を取り出し、25℃にて1時間静置し、半熟卵黄を茶こしにかき出し、裏ごしした。
(4)半熟卵黄を裏ごしし、茶こし下部より排出されたものをよくかき混ぜた後1gとり、絵筆で陶器皿(白玉渕業務用9吋リムミート皿〔直径233mm×24mm〕、有限会社鎌田商店製)に対して均一に塗布した。
(5)陶器皿に塗った半熟卵黄を25℃で一昼夜乾燥させて試験皿とした。
【0055】
・洗浄試験
前記実施例及び比較例で調製した自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を洗浄時の洗浄液中の濃度が0.67質量%となるように、食器洗い乾燥機(パナソニック株式会社、型番「NP−P45M2PS」(ビルトインタイプ))の専用洗剤入れに投入し、スピーディーコースにて洗浄を行った。なお、汚れを塗った陶器皿は、前記食器洗い乾燥機の右下部位の最も右側の皿立て溝の1つおきに2枚立てた。汚れの付いた陶器皿2枚と汚れの付いていない清浄な陶器皿2枚とが交互になるように設置した。
・評価方法
5人の評価者により、陶器皿表面に残った卵黄を目視により観察し、下記評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
・評価基準
A:皿が完全に洗浄されていた
B:点状に一部卵黄のスポットが残っていた
C:塗布した卵黄のほとんどが洗浄されずに残っていた
【0056】
<再付着抑制評価>
(脱脂粒子の調製)
エマルゲン105(花王株式会社製)100ppmの水溶液1L中にカレーパウダー(ハウス食品株式会社製)を30g加えて10分間撹拌したのち、ステンレスメッシュ(200メッシュ)を用いて吸引濾過を行った。メッシュ上の粒子に対して同様の操作を5回行った。さらに、吸着した界面活性剤を除去するため、メッシュ上の粒子を1Lのイオン交換水中に加え10分間撹拌した。同様の操作を5回行った後、凍結乾燥を行った。得られた粒子を、脱脂した粒子として評価に供した。
(洗浄操作)
脱脂した粒子200mgを食器洗い乾燥機(パナソニック株式会社、型番「NP−P45M2PS」(ビルトインタイプ))の洗剤投入口の部分に投入した。食器を自動食器洗浄機内の皿立て等の全てにセットし、前記実施例及び比較例で調製した自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を洗浄時の洗浄液中の濃度が0.67質量%となるように投入後、標準コースで運転を行った。洗浄終了後、自動食器洗浄機内の端にセットしておいた飲料用食器4つについて、付着した粒子の量を測定し、下記評価基準にしたがって汚れの再付着抑制評価を行った。結果を表1に示す。
・評価基準
A:再付着した粒子の量が4.0mg未満であった。
B:再付着した粒子の量が4.0〜6.0mgであった。
C:再付着した粒子の量が6.0mgを超えていた。
【0057】
【表1】
【0058】
表に記載の化合物の詳細は以下のとおりである。
<カチオン性ポリマー>
CM−318、株式会社クラレ製、平均分子量90kDa、カチオン化度1.7mol%、下記式(I)中のp:q:rは88.5:9.8:1.7
【0059】
【化5】
【0060】
HP−1、日本合成化学工業株式会社製、平均分子量90kDa、カチオン化度0.9mol%、下記式(II)中のp:q:rは86.8:12.3:0.9
【0061】
【化6】
【0062】
Poiz−C60H、花王株式会社製、平均分子量600kDa、カチオン化度0.49mol%
【0063】
<アニオン性ポリマー>
Poiz−520、花王株式会社製、アクリル酸Na/マレイン酸Na共重合体、下記式(III)中のm:nは70:30、重量平均分子量21,000
【0064】
【化7】
【0065】
<キレート剤>
Dissolvine GL-47S、アクゾノーベル株式会社
リンゴ酸、扶桑化学工業株式会社製
【0066】
<ノニオン性界面活性剤>
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(sec−C12−14(EO)3)、有効分100%、日本触媒株式会社製
アルキルグリコシド(C10,12,14)、有効分40%、花王株式会社製
ポリプロピレングリコール、平均分子量3000、有効分100%、花王株式会社製
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C12(EO)5)、有効分100%、花王株式会社製
【0067】
<酵素>
Termamyl Ultra 300L、ノボザイムズ ジャパン株式会社製
Everlase 16L、ノボザイムズ ジャパン株式会社製
【0068】
表1より明らかなように、本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、油汚れ、茶渋汚れ、及び脂質とタンパク質とが複合した汚れに対して優れた洗浄性能を示すと共に、汚れの再付着を抑制することができる。