特許第6247094号(P6247094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247094ドライラミネート方法および成形用包装材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247094
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ドライラミネート方法および成形用包装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/02 20060101AFI20171204BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20171204BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20171204BHJP
   B65D 1/28 20060101ALI20171204BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B29C63/02
   B32B7/12
   B32B15/08 A
   B65D1/28
   B65D65/40 D
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-271157(P2013-271157)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-123716(P2015-123716A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】ゼン カイビン
(72)【発明者】
【氏名】高田 進
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−299135(JP,A)
【文献】 特開2013−058326(JP,A)
【文献】 特開平04−226583(JP,A)
【文献】 米国特許第05143995(US,A)
【文献】 特開平07−197005(JP,A)
【文献】 特開昭57−205469(JP,A)
【文献】 特開昭63−125588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/02
B32B 7/12
B32B 15/08
B65D 1/28
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、を含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加した水添加接着剤を調製する水添加工程と、
耐熱性樹脂フィルムおよび金属箔のうちの少なくとも一方に、前記水添加工程で得られた水添加接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程で塗布した水添加接着剤を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に、前記耐熱性樹脂フィルムと前記金属箔とを前記水添加接着剤を介して貼り合わせるラミネート工程と、を含み、
前記水添加工程において、溶剤と水とを混合して撹拌することによって混合液を得た後に、該混合液と、ポリエステル樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを混合して、前記水添加接着剤を調製し、
前記水添加工程において、水添加接着剤における水の含有率が2500ppm〜15000ppmになるように水を添加することを特徴とするドライラミネート方法。
【請求項2】
主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、を含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加した水添加接着剤を調製する水添加工程と、
耐熱性樹脂フィルムおよび金属箔のうちの少なくとも一方に、前記水添加工程で得られた水添加接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程で塗布した水添加接着剤を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に、前記耐熱性樹脂フィルムと前記金属箔とを前記水添加接着剤を介して貼り合わせるラミネート工程と、を含み、
前記水添加工程において、溶剤と水とを混合して撹拌することによって第1混合液を得た後に、該第1混合液と、ポリエステル樹脂とを混合して撹拌することによって第2混合液を得、次いで前記第2混合液と、多官能イソシアネート化合物とを混合して撹拌することによって、前記水添加接着剤を調製し、
前記水添加工程において、水添加接着剤における水の含有率が2500ppm〜15000ppmになるように水を添加することを特徴とするドライラミネート方法。
【請求項3】
主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、を含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加した水添加接着剤を調製する水添加工程と、
耐熱性樹脂フィルムおよび金属箔のうちの少なくとも一方に、前記水添加工程で得られた水添加接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程で塗布した水添加接着剤を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に、前記耐熱性樹脂フィルムと前記金属箔とを前記水添加接着剤を介して貼り合わせるラミネート工程と、を含み、
前記水添加工程において、溶剤と水とを混合して撹拌することによって第1混合液を得た後に、該第1混合液と、多官能イソシアネート化合物とを混合して撹拌することによって第2混合液を得、次いで前記第2混合液と、ポリエステル樹脂とを混合して撹拌することにより、前記水添加接着剤を調製し、
前記水添加工程において、水添加接着剤における水の含有率が2500ppm〜15000ppmになるように水を添加することを特徴とするドライラミネート方法。
【請求項4】
主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、を含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加した水添加接着剤を調製する水添加工程と、
耐熱性樹脂フィルムおよび金属箔のうちの少なくとも一方に、前記水添加工程で得られた水添加接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程で塗布した水添加接着剤を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に、前記耐熱性樹脂フィルムと前記金属箔とを前記水添加接着剤を介して貼り合わせるラミネート工程と、を含み、
前記水添加工程において、溶剤と水とを混合して撹拌することによって第1混合液を得る一方、ポリエステル樹脂と多官能イソシアネート化合物とを混合して撹拌することによって第2混合液を得、該第1混合液と前記第2混合液とを混合して撹拌することにより、水添加接着剤を調製し、
前記水添加工程において、水添加接着剤における水の含有率が2500ppm〜15000ppmになるように水を添加することを特徴とするドライラミネート方法。
【請求項5】
主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、を含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加した水添加接着剤を調製する水添加工程と、
耐熱性樹脂フィルムおよび金属箔のうちの少なくとも一方に、前記水添加工程で得られた水添加接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程で塗布した水添加接着剤を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に、前記耐熱性樹脂フィルムと前記金属箔とを前記水添加接着剤を介して貼り合わせるラミネート工程と、を含み、
前記主剤としてのポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が8000〜25000であり、重量平均分子量(Mw)が15000〜50000であり、これらの比率(Mw/Mn)が1.3〜2.5であり、
前記水添加工程において、水添加接着剤における水の含有率が2500ppm〜15000ppmになるように水を添加することを特徴とするドライラミネート方法。
【請求項6】
前記水添加工程において、水添加接着剤における水の含有率が4000ppm〜8000ppmになるように水を添加する請求項1〜のいずれか1項に記載のドライラミネート方法。
【請求項7】
前記水添加工程において水を添加して水添加接着剤を調製してから、前記接着剤塗布工程で塗布するまでの時間が12時間以内であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のドライラミネート方法。
【請求項8】
外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む成形用包装材の製造方法であって、
前記耐熱性樹脂層を構成する耐熱性樹脂フィルムと、前記金属箔層を構成する金属箔とを、請求項1〜のいずれか1項に記載のドライラミネート方法により貼り合わせる工程を含むことを特徴とする成形用包装材の製造方法。
【請求項9】
請求項の方法によって製造されたことを特徴とする成形用包装材。
【請求項10】
請求項に記載の成形用包装材を深絞り成形または張り出し成形してなることを特徴とする成形ケース。
【請求項11】
電池ケースとして用いられる請求項10に記載の成形ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池等)のケースとして好適に用いられる成形用包装材の製造、或いは食品、医薬品の包装材として好適な成形用包装材の製造に用いられるドライラミネート方法、および成形用包装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池ケースの材料として、金属箔の両面に接着層を介して樹脂層を積層した多層構造の包装材が用いられている。
【0003】
前記包装材の製造において、金属箔と外側樹脂層との貼り合わせにはポリオールとイソシアネートによる二液反応型接着剤を用い、接着剤を塗布して溶媒を蒸発させた後にこれらを貼り合わせるドライラミネート法が採用されている。ドライラミネート法では、金属箔と外側樹脂層を貼り合わせた後、数10℃程度の温度で数日間のエージングを行い、接着剤の硬化を促して接着強度を高めている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記のシート状包装材でケースを製造する場合、ケース内容積を確保するために、絞り成形や張り出し成形によって立体形状に加工することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−58326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ケースの側壁をより高くする成形、即ちより深い成形を行うと、金属箔層と外側樹脂層との間で層間剥離を生じるおそれがあるため、成形深さが制限されている。また、成形直後に層間剥離が発生しない場合でも、ケースを高温環境下で使用すると層間剥離が発生することもある。
【0007】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、外側の樹脂層である耐熱性樹脂層と金属箔層の層間剥離を防止できるドライラミネート方法、ひいてはより深い成形が可能な成形用包装材を製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、を含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加した水添加接着剤を調製する水添加工程と、
耐熱性樹脂フィルムおよび金属箔のうちの少なくとも一方に、前記水添加工程で得られた水添加接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程で塗布した水添加接着剤を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に、前記耐熱性樹脂フィルムと前記金属箔とを前記水添加接着剤を介して貼り合わせるラミネート工程と、を含み、
前記水添加工程において、水添加接着剤における水の含有率が2500ppm〜15000ppmになるように水を添加することを特徴とするドライラミネート方法。
【0010】
[2]前記水添加工程において、溶剤と水とを混合して撹拌することによって混合液を得た後に、該混合液と、ポリエステル樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを混合して、前記水添加接着剤を調製する前項1に記載のドライラミネート方法。
【0011】
[3]前記水添加工程において、溶剤と水とを混合して撹拌することによって第1混合液を得た後に、該第1混合液と、ポリエステル樹脂とを混合して撹拌することによって第2混合液を得、次いで前記第2混合液と、多官能イソシアネート化合物とを混合して撹拌することによって、前記水添加接着剤を調製する前項1に記載のドライラミネート方法。
【0012】
[4]前記水添加工程において、水添加接着剤における水の含有率が4000ppm〜8000ppmになるように水を添加する前項1〜3のいずれか1項に記載のドライラミネート方法。
【0013】
[5]前記主剤としてのポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が8000〜25000であり、重量平均分子量(Mw)が15000〜50000であり、これらの比率(Mw/Mn)が1.3〜2.5である前項1〜4のいずれか1項に記載のドライラミネート方法。
【0014】
[6]前記水添加工程において水を添加して水添加接着剤を調製してから、前記接着剤塗布工程で塗布するまでの時間が12時間以内であることを特徴とする前項1〜5のいずれか1項に記載のドライラミネート方法。
【0015】
[7]外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む成形用包装材の製造方法であって、
前記耐熱性樹脂層を構成する耐熱性樹脂フィルムと、前記金属箔層を構成する金属箔とを、前項1〜6のいずれか1項に記載のドライラミネート方法により貼り合わせる工程を含むことを特徴とする成形用包装材の製造方法。
【0016】
[8]前項7の方法によって製造されたことを特徴とする成形用包装材。
【0017】
[9]前項8に記載の成形用包装材を深絞り成形または張り出し成形してなることを特徴とする成形ケース。
【0018】
[10]電池ケースとして用いられる前項9に記載の成形ケース。
【発明の効果】
【0019】
[1]の発明では、主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、を含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加してなる水添加接着剤を使用し、且つ水添加接着剤における水の含有率を2500ppm〜15000ppmの範囲に設定するので、塗布された二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の架橋反応における分岐が促進され、架橋密度の高い網状構造の硬化樹脂層(接着層)が形成される。架橋密度の高い網状構造の硬化樹脂(接着層)は、強度及び耐熱性に優れているので、耐熱性樹脂フィルムと金属箔とは接着強度が高く、層間剥離が防止される。
【0020】
[2]の発明では、水添加工程において、溶剤と水とを混合して撹拌することによって混合液を得た後に、該混合液と、ポリエステル樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを混合して、水添加接着剤を調製する方法を採用しており、水を溶剤に均一に分散させた状態において水と硬化剤(多官能イソシアネート化合物)が混合されるので、水添加接着剤の使用可能時間(ポットライフ)を延長させることができる。なお、この[2]の発明において、混合液と、ポリエステル樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、を混合する際の混合順序は、いかなる順序であってもよい。
【0021】
[3]の発明では、水添加工程において、溶剤と水とを混合して撹拌することによって第1混合液を得た後に、該第1混合液と、ポリエステル樹脂とを混合して撹拌することによって第2混合液を得、次いで第2混合液と、多官能イソシアネート化合物とを混合して撹拌することによって、水添加接着剤を調製する方法を採用しており、水を溶剤に均一に分散させた状態において水とポリエステル樹脂が混合され、その後に硬化剤(多官能イソシアネート化合物)が混合されるので、水添加接着剤の使用可能時間(ポットライフ)をさらに延長させることができる。
【0022】
[4]の発明では、水添加接着剤における水の含有率を4000ppm〜8000ppmの範囲に設定するので、塗布された二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の架橋反応における分岐がより促進され、架橋密度のより高い網状構造の硬化樹脂層(接着層)が形成される。これにより、耐熱性樹脂フィルムと金属箔の層間剥離を十分に防止できる。
【0023】
[5]の発明では、主剤としてのポリエステル樹脂のMnが8000〜25000、Mwが15000〜50000であり、これらの比率(Mw/Mn)が1.3〜2.5であるので、良好な塗膜強度と塗膜伸びを有し、耐熱性にも優れた硬化樹脂層(接着層)を形成できて、耐熱性樹脂フィルムと金属箔の層間剥離をより十分に防止できる。
【0024】
[6]の発明では、水添加工程において水を添加して水添加接着剤を調製してから、12時間以内に接着剤の塗布を行うものであり、水添加接着剤の粘度上昇が小さい段階で接着剤の塗布を行うことができるので、均一な接着を行うことができて十分な接着強度を確保することができ、ひいては耐熱性樹脂フィルムと金属箔の層間剥離をより十分に防止できる。
【0025】
[7]の発明では、耐熱性樹脂層と金属箔層とを上記[1]〜[6]のいずれかのドライラミネート方法によって貼り合わせるから、これらの層間の接合強度が高く、深い成形を行った時であっても耐熱性樹脂層が剥離しない成形用包装材を製造できる。
【0026】
[8]の発明では、耐熱性樹脂層と金属箔層とが上記[1]〜[6]のいずれかのドライラミネート方法によって貼り合わされているから、これらの層間の接合強度が高く、深い成形を行った時であっても耐熱性樹脂層が剥離しない成形用包装材が提供される。
【0027】
[9]の発明では、深い成形が行われたものであっても、耐熱性樹脂層が剥離することのない成形ケースが提供される。この成形ケースを高温環境下で使用した場合でも、耐熱性樹脂層と金属箔層の層間剥離を防止できる。
【0028】
[10]の発明では、深い成形が行われたものであっても、耐熱性樹脂層が剥離することのない電池ケースが提供される。この電池ケースを高温環境下で使用した場合でも、耐熱性樹脂層と金属箔層の層間剥離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のドライラミネート方法を用いて作製した成形用包装材の一実施形態を示す断面図である。
図2】二液硬化型接着剤の架橋反応を示す説明図である。
図3】成形用包装材の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る成形用包装材の製造方法について説明する。本製造方法で得られる成形用包装材1の一実施形態を図1に示す。この成形用包装材1は、リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられるものである。即ち、前記成形用包装材1は、深絞り成形等の成形に供されて2次電池ケースとして用いられるものである。
【0031】
前記成形用包装材1は、金属箔層4の上面に第1接着剤層5を介して耐熱性樹脂層(外側層)2が積層一体化されるとともに、前記金属箔層4の下面に第2接着剤層6を介して熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。前記耐熱性樹脂層2と前記金属箔層4とが本発明のドライラミネート方法によって貼り合わされている。
【0032】
<水添加工程>
主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、を含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加した水添加接着剤を調製する。この時、水添加接着剤における水の含有率が2500ppm〜15000ppmの範囲になるように水を添加する。
【0033】
前記水添加接着剤を調製するに際し、配合順序としては、特に限定されるものではないが、例えば、次のような配合手順を採用することができる。
1)溶剤と水とを混合して撹拌することによって混合液を得た後に、該混合液に、ポリエステル樹脂(主剤)と多官能イソシアネート化合物(硬化剤)を同時に添加して撹拌することにより、水添加接着剤を得る。
2)溶剤と水とを混合して撹拌することによって第1混合液を得た後に、該第1混合液と、ポリエステル樹脂(主剤)とを混合して撹拌することによって第2混合液を得、次いで前記第2混合液と、多官能イソシアネート化合物(硬化剤)とを混合して撹拌することにより、水添加接着剤を得る。
3)溶剤と水とを混合して撹拌することによって第1混合液を得た後に、該第1混合液と、多官能イソシアネート化合物(硬化剤)とを混合して撹拌することによって第2混合液を得、次いで前記第2混合液と、ポリエステル樹脂(主剤)とを混合して撹拌することにより、水添加接着剤を得る。
4)溶剤と水とを混合して撹拌することによって第1混合液を得る一方、ポリエステル樹脂(主剤)と多官能イソシアネート化合物(硬化剤)とを混合して撹拌することによって第2混合液を得、該第1混合液と前記第2混合液とを混合して撹拌することにより、水添加接着剤を得る。
【0034】
上記1)〜4)の配合手順のように、溶剤と水とを混合して撹拌することによって得た混合液に、他の成分(主剤、硬化剤)を混合するのが好ましく、この場合には、水を溶剤に均一に分散させた状態において水と硬化剤(多官能イソシアネート化合物)が混合されるので、水添加接着剤の使用可能時間(ポットライフ)をより延長させることができる利点がある。
【0035】
これらの中でも、2)の配合手順を採用するのが好ましく、この場合には、他の3成分が混合された後に、硬化剤(多官能イソシアネート化合物)が混合されるので、水添加接着剤の使用可能時間(ポットライフ)をより一層延長させることができる。
【0036】
前記水添加接着剤における水の含有率が2500ppm〜15000ppmの範囲になるように水を添加することが重要である。2500ppm未満では、得られた成形用包装材は、高温環境において耐熱性樹脂層2が剥離してしまう。また、15000ppmを超えると、水の含有率が多くなり過ぎて水添加接着剤に白濁を生じ、その結果、得られる成形用包装材1は、白濁や色むらが生じて外観不良となる。
【0037】
中でも、前記水添加接着剤における水の含有率が4000ppm〜8000ppmの範囲になるように水を添加するのが好ましい。
【0038】
前記水添加接着剤(ポリエステル樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、水とを含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤)を構成するポリエステル樹脂(主剤)としては、ジカルボン酸およびジアルコールを原料とする共重合体(ポリエステルポリオール)等が挙げられる。本発明では、原料のジカルボン酸およびジアルコールの種類および組成を適宜選択することによって接着強度および成形性を高めて深い成形を行った時の層間剥離を抑制することができる。
【0039】
前記ジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸として、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等を例示できる。また、芳香族ジカルボン酸として、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を例示できる。これらのジカルボン酸を用いることにより、接着強度が高くかつ成形性の良い硬化樹脂(第1接着剤層5)を生成し、成形性が良く側壁の高いケースへの成形が可能であり、かつ金属箔層4と耐熱性樹脂層2との層間剥離を防止できる成形用包装材となし得る。
【0040】
前記ジアルコールとして、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等を例示できる。
【0041】
前記ポリエステル樹脂としては、数平均分子量(Mn)が8000〜25000の範囲であり、重量平均分子量(Mw)が15000〜50000の範囲であり、且つこれらの比率(Mw/Mn)が1.3〜2.5であるポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。数平均分子量(Mn)が8000以上であり、重量平均分子量(Mw)が15000以上であることで、適性な塗膜強度と耐熱性が得られ、数平均分子量(Mn)が25000以下であり、重量平均分子量(Mw)が50000以下であることで、硬くなり過ぎずに適性な塗膜伸びが得られる。また、これらの比率(Mw/Mn)が1.3〜2.5であることで、接着剤塗布適性と接着性能のバランスを保つことができる。前記ポリエステル樹脂の特に好ましい数平均分子量(Mn)は10000〜23000であり、特に好ましい重量平均分子量(Mw)は20000〜40000であり、特に好ましい比率(Mw/Mn)は1.5〜2.3である。
【0042】
前記ポリエステル樹脂の分子量は、多官能性であるイソシアネートで鎖伸長することで調整することができる。即ち、主剤中のポリエステル成分をNCOで連結すると末端が水酸基のポリマーが生成され、イソシアネート基とポリエステルの水酸基との当量比の調整によりポリエステル樹脂の分子量を調整することができる。本発明においては、これらの当量比(NCO/OH)が0.1〜10となるように連結したものを用いることが好ましい。また、他の分子量調整方法として、ジカルボン酸とジアルコールの共重合反応の反応条件(温度、時間、モノマー組成)の変更を挙げることができる。
【0043】
更に、接着主剤(ポリエステル樹脂)の添加剤として、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂を添加しても良い。
【0044】
前記水添加接着剤(二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂)を構成する多官能イソシアネート化合物(硬化剤)としては、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環族系等の各種多官能イソシアネート化合物を使用できる。具体例としては、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、脂環族系のイソホロンジイソシアネート(IPDI)、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることもできる。なお、前記「多官能イソシアネート化合物」の語は、2官能以上のイソシアネート基を有している化合物を意味する。
【0045】
前記水添加接着剤(二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂)において、主剤と硬化剤との配合割合は、ポリエステルポリオールの水酸基(OH)1モルに対してイソシアネート官能基(NCO)2〜25モルの割合で配合されていることが好ましい。これらのモル比(NCO)/(OH)が2未満でイソシアネート官能基(NCO)が少なくなると、十分な硬化反応が行われなくなる結果、十分な接着強度が得られなくなるおそれがある。一方、(NCO)/(OH)が25を超えてイソシアネート官能基(NCO)が多くなると、ポリオール以外の官能基との反応が進み過ぎて硬化塗膜(第1接着剤層5)が硬くなりすぎて適性な伸びが得られなくなるおそれがあるし、水添加接着剤のポットライフも短くなる。特に好ましいポリエステルポリオール水酸基とイソシアネート官能基のモル比(NCO)/(OH)は、3〜15である。
【0046】
前記水添加接着剤を構成する溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸エチル等のエステル系有機溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤、ジエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤などが挙げられる。前記水添加接着剤における溶剤の含有率は、50質量%〜90質量%に設定するのが好ましい。50質量%以上とすることで接着剤の粘度を抑制することができて接着剤を平滑に塗布することができ、均一な接着剤層を形成できると共に、90質量%以下とすることで接着剤の固形分塗布量が十分になるので良好な接着強度を確保できる。中でも、前記水添加接着剤における溶剤の含有率は、60質量%〜80質量%に設定するのが特に好ましい。
【0047】
<接着剤塗布工程>
次に、耐熱性樹脂フィルムおよび金属箔のうちの少なくとも一方の表面に、前記水添加工程で得られた水添加接着剤(ポリエステル樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、水とを含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤)を塗布する。塗布手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、リップロールコート法等が挙げられる。前記耐熱性樹脂フィルムおよび前記金属箔の詳細な構成等については、後に詳述する。
【0048】
後の乾燥工程、ラミネート工程等を経て得られる成形用包装材1における第1接着剤層5の厚さ(硬化後の厚さ)が、0.1μm〜10μmの範囲になるように、前記水添加接着剤の塗布量を調整するのが好ましい。
【0049】
<乾燥工程>
次に、前記接着剤塗布工程で塗布した水添加接着剤を乾燥させる。この乾燥工程において、塗布された接着剤中の溶剤を蒸発(揮発)させる。乾燥手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱風加熱による乾燥、遠赤外線ヒーター加熱による乾燥等が挙げられる。
【0050】
<ラミネート工程>
前記乾燥工程の後に、前記耐熱性樹脂フィルムと前記金属箔とを前記水添加接着剤を介して貼り合わせることによって、積層体を得る。
【0051】
前記水添加接着剤を耐熱性樹脂フィルムの一方の表面に塗布した場合には、この耐熱性樹脂フィルムの接着剤塗布面に金属箔を重ね合わせて、耐熱性樹脂フィルムと金属箔とを貼合する。前記水添加接着剤を金属箔の一方の表面に塗布した場合には、この金属箔の接着剤塗布面に耐熱性樹脂フィルムを重ね合わせて、耐熱性樹脂フィルムと金属箔とを貼合する。また、前記水添加接着剤を耐熱性樹脂フィルムの一方の表面および金属箔の一方の表面の両方に塗布した場合には、耐熱性樹脂フィルムの接着剤塗布面と金属箔の接着剤塗布面を重ね合わせて、耐熱性樹脂フィルムと金属箔とを貼合する。
【0052】
(接着剤の架橋反応について)
図2は、水添加接着剤(ポリエステル樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、水とを含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤)の架橋反応(硬化反応)を模式的に示したものである。
【0053】
(P)は長鎖ポリエステルがジイソシアネートで鎖伸長されたNCO末端のプレポリマーである。このプレポリマー(P)の架橋反応においては架橋すると同時に分岐が生じるが、水が鎖伸長剤として反応に参加すると考えられ、水の存在によって鎖の分岐が促進される。硬化樹脂は、鎖の架橋密度が増大するほど引き締まった網状構造となり、強度および耐熱性に優れた硬化樹脂(第1接着剤層)が形成される。本発明では、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤として、水を添加してなる水添加接着剤を使用し、且つ水添加接着剤における水の含有率を2500ppm〜15000ppmの範囲に設定することにより、鎖の分岐を促進して架橋密度の高い硬化樹脂(第1接着剤層)を形成する。架橋密度の高い硬化樹脂(第1接着剤層)は強度および耐熱性が優れているので、かかる層で接合された耐熱性樹脂フィルムと金属箔とは接着強度が高く、層間剥離が防止される。また、このような接着層を有する成形用包装材は、深い成形や過酷な環境下での使用に対しても剥離し難いものとなる。
【0054】
<熱可塑性樹脂層の貼合工程>
前記ラミネート工程で得られた積層体(耐熱性樹脂フィルムと金属箔とが水添加接着剤を介して貼合されたもの)における金属箔の非積層面に、第2接着剤6を介して熱可塑性樹脂フィルム(熱可塑性樹脂層)3を貼合する。前記第2接着剤6の詳細な構成については、後に詳述する。
【0055】
しかる後、使用する接着剤5、6の硬化条件に従って所定温度で保持するエージングを行う(例えば、40℃〜60℃の温度で保持する)ことにより、各接着剤5、6の硬化を進行させて、成形用包装材1を得る(図1、3参照)。
【0056】
上記製造方法は、その一例を示したものに過ぎず、各工程の実施順序は、上記順序に特に限定されるものではない。例えば、上記の例では、熱可塑性樹脂層と金属箔との貼合を最後に設けているが、この熱可塑性樹脂層と金属箔との貼合を、前記ラミネート工程(耐熱性樹脂フィルムと金属箔とを水添加接着剤を介して貼り合わせる工程)より前の段階で行うようにしてもよい。
【0057】
また、本発明では、熱可塑性樹脂層(内側層)3と金属箔層4との接合形態を限定するものではなく、前記第2接着剤層6を介して行う貼り合わせは、その接合形態の一例に過ぎない。
【0058】
次に、本発明における各構成層について詳述する。
【0059】
(耐熱性樹脂層)
前記耐熱性樹脂層(耐熱性樹脂フィルム)(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、成形性および強度の点で、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ポリアミドフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばPETフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層で形成されていても良い。
【0060】
前記耐熱性樹脂層2の厚さは、9μm〜50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは9μm〜50μmであるのが好ましく、ポリアミドフィルムを用いる場合には厚さは10μm〜50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できるとともに、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0061】
(熱可塑性樹脂層)
前記熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂フィルム)(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、包材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0062】
前記熱可塑性樹脂層3としては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂未延伸フィルム層であるのが好ましい。前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層は、特に限定されるものではないが、耐薬品性およびヒートシール性の点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物及びアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。
【0063】
前記熱可塑性樹脂層3の厚さは、20μm〜80μmに設定されるのが好ましい。20μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できるとともに、80μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図り得る。中でも、前記熱可塑性樹脂層3の厚さは30μm〜50μmに設定されるのが特に好ましい。なお、前記熱可塑性樹脂層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0064】
(金属箔層)
前記金属箔層(金属箔)4は、成形用包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。前記金属箔層4の厚さは、20μm〜100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できるとともに、100μm以下であることで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0065】
成形用包装材の外側層および内側層は樹脂からなる層であり、これらの樹脂層には極微量ではあるが、ケースの外部からは光、酸素、液体が入り込むおそれがあり、内部からは内容物(電池の電解液、食品、医薬品等)がしみ込むおそれがある。これらの侵入物が金属箔層に到達すると金属箔層の腐食原因となる。本発明では、金属箔層4の両面に耐食性の高い化成皮膜11a、11bを形成した構成(図3参照)を採用するのが好ましく、この場合には、金属箔層4の耐食性を向上させることができる。
【0066】
前記化成皮膜は、金属箔の表面に化成処理を施すことによって形成される皮膜であり、例えば、金属箔にクロメート処理、ジルコニウム化合物を用いたノンクロム型化成処理を施すことによって形成することができる。例えば、クロメート処理の場合は、脱脂処理を行った金属箔の表面に下記1)〜3)のいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥する。
1)リン酸、クロム酸およびフッ化物の金属塩の混合物からなる水溶液
2)リン酸、クロム酸、フッ化物金属塩および非金属塩の混合物からなる水溶液
3)アクリル系樹脂または/およびフェノール系樹脂と、リン酸と、クロム酸と、フッ化物金属塩との混合物からなる水溶液。
【0067】
前記化成皮膜11a、11bは、クロム付着量として0.1mg/m2〜50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2〜20mg/m2が好ましい。このようなクロム付着量の化成皮膜によって高耐食性の成形用包装材となし得る。
【0068】
なお、前記金属箔層4のいずれか一方の面のみに化成皮膜を形成した構成を採用してもよい。
【0069】
(第1接着剤層)
前記第1接着剤層5は、金属箔層4と耐熱性樹脂層(外側層)2との接合を担う層である。前記第1接着剤層5は、前記水添加接着剤(ポリエステル樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、溶剤と、水とを含む二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤)の硬化物により形成されている。
【0070】
前記第1接着剤層5の厚さは、0.1μm〜10μmの範囲が好ましい。0.1μm以上であることで接着強度を確保でき、10μm以下とすることで良好な成形性を保ち、かつ第1接着剤層5が部分的に割れてしまうことを十分に防止できる。
【0071】
(第2接着剤層)
前記第2接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤層が挙げられる。中でも、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤を用いるのが好ましく、この場合には、成形用包装材1の耐電解液性および水蒸気バリア性を向上させることができる。
【0072】
本発明に係る製造方法で製造された成形用包装材1は、リチウムイオン二次電池ケース用包材として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【0073】
この成形用包装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、成形ケース(電池ケース等)を得ることができる。
【0074】
なお、前記水添加工程において、「水」の添加に代えて、「多官能アルコール」を添加した場合でも、同様の効果が得られる。
【実施例】
【0075】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0076】
<実施例1>
厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、180℃で乾燥を行うことによって、両面に化成皮膜11a、11bが形成されたアルミニウム箔4を準備した。クロム付着量は片面で10mg/m2であった。
【0077】
(水添加工程)
酢酸エチル(溶剤)20kg及び水133gを容器に投入して撹拌機で十分に撹拌することによって第1混合液を得た後、容器内に、主剤としてのポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)と酢酸エチル(溶剤)とを質量比で1:1で混合した樹脂溶液を20kg投入して撹拌機で十分に撹拌することによって第2混合液を得、さらに容器内にトリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体(硬化剤、固形分75質量%)を4kg投入して撹拌機で十分に撹拌することによって、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤(水添加接着剤)を得た。
【0078】
なお、上記ポリエステルポリオールは、イソフタル酸70モル%及びアゼライン酸30モル%の組成からなるジカルボン酸と、ヘキサンジオール45モル%、エチレングリコール20モル%及びネオペンチルグリコール35モル%の組成からなるジアルコールとを、1:1の等モル量(割合)で反応させて得られたポリエステルポリオールである。前記ポリエステルポリオール(ポリエステル樹脂)のMnは14000、Mwは35000であり、これらの比率(Mw/Mn)は2.5であった。
【0079】
上記のようにして得られた二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤(水添加接着剤)における水の含有率は、3010ppmである。また、前記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤におけるイソシアネート官能基(NCO)と、ポリエステルポリオールの水酸基(OH)のモル比(NCO)/(OH)は9であった。
【0080】
(接着剤塗布工程)
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面11aに、前記水添加工程で得られた水添加接着剤をグラビアロールで15.5g/m2の塗布量で塗布した。
【0081】
(乾燥工程)
得られた接着剤塗布済みアルミニウム箔4を80℃の環境下に1分間放置することによって、アルミニウム箔4の表面の接着剤を乾燥させた(溶剤を蒸発させた)。
【0082】
(ラミネート工程)
前記乾燥工程を経たアルミニウム箔4の接着剤塗布面に、厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルム(耐熱性樹脂層)2を貼り合わせて、積層体を得た。
【0083】
(熱可塑性樹脂層の貼合工程)
次いで、得られた積層体におけるアルミニウム箔4の他方の面(非積層面)11bに、ポリアクリル接着剤6をグラビアロールで塗布し、加熱によりある程度乾燥させた後、その接着剤面に、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層)3を貼り合わせ、さらに40℃環境下で5日間放置することによって、図3に示す成形用包装材1を得た。得られた成形用包装材1において、第1接着剤層5の厚さは4.5μmであり、第2接着剤層6の厚さは2.5μmであった。
【0084】
<実施例2>
水の使用量(容器への投入量)を222gとし、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤(水添加接着剤)における水の含有率を5020ppmとした以外は、実施例1と同様にして、図3に示す成形用包装材1を得た。
【0085】
<実施例3>
水の使用量(容器への投入量)を311gとし、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤(水添加接着剤)における水の含有率を7020ppmとした以外は、実施例1と同様にして、図3に示す成形用包装材1を得た。
【0086】
<実施例4>
水の使用量(容器への投入量)を445gとし、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤(水添加接着剤)における水の含有率を10000ppmとした以外は、実施例1と同様にして、図3に示す成形用包装材1を得た。
【0087】
<比較例1>
水の使用量(容器への投入量)を0gとした(容器に水を投入しなかった)以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。なお、この比較例1において、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤における水の含有率は、100ppm以下である。
【0088】
<比較例2>
水の使用量(容器への投入量)を89gとし、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤(水添加接着剤)における水の含有率を2020ppmとした以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0089】
<比較例3>
水の使用量(容器への投入量)を898gとし、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤(水添加接着剤)における水の含有率を20000ppmとした以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0090】
なお、上記実施例、比較例での説明中の「水添加接着剤における水の含有率」は、得られた水添加接着剤中の水分含有率(ppm)をカールフィッシャー法により測定して得た測定値(実測値)である。測定のための水添加接着剤の採取量は1mLである。
【0091】
上記のようにして得られた各成形用包装材について下記評価法に基づいて評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0092】
<層間剥離の有無の評価法>
作製した成形用包装材を110mm×180mmに切断して成形用素材とした。ダイス肩R:1mmのダイスと、長辺60mm×短辺45mm、コーナーR:1〜2mm、肩R:1mmのポンチとからなる成形高さフリーのストレート金型を用い、内側の熱可塑性樹脂層3をパンチと接触させる態様で張り出し一段成形を行い、側壁高さ(成形深さ)が5mmの電池用ケースを作製した。
【0093】
作製した電池用ケースを90℃に設定した乾燥機中に入れ、3時間経過後に取り出し、目視観察により耐熱性樹脂層のデラミネーション(剥離)の有無を調べ、下記の基準で評価し、○、△の評価が得られたものを合格とした。
○:デラミネーション発生なし
△:微小なデラミネーションが認められるものの僅かな領域に限定されていて実質的なデラミネーションの発生がない
×:デラミネーション発生あり。
【0094】
<成形用包装材の外観の評価法>
作製した成形用包装材の外観を目視により調べ、下記の基準で評価した。
○:成形用包装材に白濁、色むらが認められない
△:成形用包装材に白濁も色むらも殆ど認められない
×:成形用包装材に白濁や色むらが認められる。
【0095】
【表1】
【0096】
表1から明らかなように、本発明の方法を用いて製造された実施例1〜4の成形用包装材は、成形後に高温環境に晒されても耐熱性樹脂層が剥離することがなかった。
【0097】
これに対し、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂接着剤に水を添加しなかった比較例1では、高温環境において耐熱性樹脂層が剥離した。また、水を添加しても水添加接着剤における水の含有率が2500ppm未満である比較例2では、得られた成形用包装材は、高温環境において耐熱性樹脂層が剥離した。また、水を添加した水添加接着剤における水の含有率が15000ppmを超える比較例3では、得られた成形用包装材は、白濁や色むらが認められ、外観不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のドライラミネート方法によって作製した成形用包装材は、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオンポリマー二次電池等の電池のケースとして好適に用いられ、また、これ以外にも、食品の包装材、医薬品の包装材として好適であるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。中でも、電池ケース用として特に好適である。
【符号の説明】
【0099】
1…成形用包装材
2…耐熱性樹脂層(外側層、耐熱性樹脂フィルム)
3…熱可塑性樹脂層(内側層)
4…金属箔層(金属箔)
5…第1接着剤層
6…第2接着剤層
11a、11b…化成皮膜
図1
図2
図3