(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記糸止め部材は、前記釣り糸を前記第一のスプール本体との間に挟むように構成され、前記糸止め部材の前記第一のスプール本体への装着は、前記糸止め部材と前記第一のスプール本体との間に前記釣り糸を挟んだとき、前記釣り糸に釣りの際の使用を妨げるような永久変形又は傷を残さない隙間を与えるように設けられた;
請求項1又は請求項2に記載の釣り糸スプール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスプールでは、必要なだけ引き出した後にスプールに残った釣り糸の端を容易に係止することができなかった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、所望の釣り糸を引き出して切り取った後にスプールに残った釣り糸の端を容易に係止することのできる釣り糸スプールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る釣り糸スプールは、例えば
図1に示すように、釣り糸を巻回する第一のスプール本体11と; 第一のスプール本体11に摺動可能に装着した糸止め部材12と;第一のスプール本体11に回転可能に装着されたリング13であって、第二のスプール本体21と接続されて、第一のスプール本体11を第二のスプール本体21に回転可能に連結するように構成されたリング13とを備え;第一のスプール本体11と第二のスプール本体21とが連結されるとき、第一のスプール本体11と第二のスプール本体21とは、釣り糸を糸止め部材12により止めることを可能とする間隔W(
図2参照)をもって連結されるように構成される。
【0007】
リングと第二のスプール本体との接続は、典型的には固定接続であり、回転可能あるいは摺動可能な接続ではない。
このように構成すると、第一のスプール本体と第二のスプール本体とが連結されるとき、第一のスプール本体と第二のスプール本体とは、釣り糸を糸止め部材により止めることを可能とする間隔Wをもって連結されるように構成されるので、余った釣り糸を第一のスプール本体と第二のスプール本体との間に挿入し、糸を止める糸止め部材に導くことができる。また、糸止め部材は、第一のスプール本体に摺動可能に装着されるので、スプールに残った釣り糸の長さが短い場合も長い場合も適切に係止することができる。さらに、第一のスプール本体に回転可能に装着されたリングであって、第二のスプールと接続されて、第一のスプール本体を第二のスプール本体に回転可能に連結するように構成されたリングとを備えるので、第一のスプール本体と第二のスプール本体とを連結したとき、両スプール本体を回転可能とすることができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る釣り糸スプールは、例えば
図1に示すように、第1の態様に係る釣り糸スプールにおいて、第一のスプール本体11は、釣り糸を巻回する筒状のドラム部11cと、ドラム部11cの軸方向両端にそれぞれ設けられた2枚の平板状のフランジ11a、11bを有し;2枚のフランジ11a、11bのうち、少なくとも糸止め部材12側のフランジ11bの外周部に、前記釣り糸を糸止め部材12に止めるために通す切欠き11d(例えば
図3参照)が形成される。
【0009】
このように構成すると、少なくとも糸止め部材側のフランジの外周部に、釣り糸を糸止め部材に止めるために通す切欠きが形成されているので、係止する釣り糸を糸止め部材に容易に届かせることができ、釣り糸スプールを携帯する際に、係止された釣り糸がほつれることを抑制することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る釣り糸スプールは、例えば
図1に示すように、第1の態様又は第2の態様の釣り糸スプールにおいて、糸止め部材12は、釣り糸を第一のスプール本体11との間に挟むように構成され、糸止め部材12の第一のスプール本体11への装着は、糸止め部材12と第一のスプール本体11との間に釣り糸を挟んだとき、釣り糸に釣りの際の使用を妨げるような永久変形又は傷を残さない隙間を与えるように設けられる。
【0011】
典型的には、釣り糸を第一のスプール本体と装着する装着部に可撓性を持たせることにより隙間を与える。糸止め部材そのものに可撓性を持たせてもよいし、第一のスプール本体の装着部に持たせてもよい。
このように構成すると、糸止め部材と第一のスプール本体との間に釣り糸を挟んだとき、釣り糸に釣りの際の使用を妨げるような永久変形又は傷を残さない隙間を与えるように設けられるので、変形や傷の残った釣り糸部分を切り落とす等の処理が不要となる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る釣り糸スプールは、例えば
図1に示すように、第1の態様乃至第3の態様のいずれか1の釣り糸スプールにおいて、第一のスプール本体11に装着した糸止め部材12は、第一のスプール本体11と第一のスプール本体11と同一形状の第二のスプール本体21とが連結されたとき、第一のスプール本体11の第二のスプール本体21に対向する面から糸止め部材12の第二のスプール本体21側の面までの距離Hが、前記間隔W(
図2参照)よりも大となるように構成される。
糸止め部材12の第二のスプール本体21側の面は、第一のスプール本体11に当接する面と反対側であるので、反当接面と呼ぶことができる。
【0013】
このように構成すると、距離Hが間隔Wよりも大となるように構成されるので、釣り糸を係止するために第一のスプール本体と第二のスプール本体との間に通したとき、釣り糸が確実に第一のスプール本体と糸止め部材との間に導かれる。言い換えれば、糸止め部材と第二のスプール本体とがオーバーラップするので、釣り糸が糸止め部材と第二のスプール本体との間に入り込むことなく、第一のスプール本体と糸止め部材との間に導かれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所望の釣り糸を引き出して切り取った後にスプールに残った釣り糸の端を容易に係止することのできる釣り糸スプールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
まず
図1の断面図及び
図2(a)の一部拡大断面図を参照して、本発明の実施の形態に係る、釣り糸スプール10を説明する。本図には、釣り糸スプール10と連結される、釣り糸スプール10と同一形状、同寸法の釣り糸スプール20も同時に図示する。釣り糸スプール10は、第一の釣り糸スプール本体としてのスプール本体11と、スプール本体11に摺動可能に装着した糸止め部材12と、スプール本体11に回転可能に装着されたリング13とを備える。スプール本体11には、釣り糸が巻回される。スプール本体11は、回転軸線Cに対して回転対称(典型的には回転体)に形成される。
【0018】
ここで「摺動」とは摺りながらも相対的に動くことをいい、例えば動かそうとする力を除くと摺る抵抗により動きが直ちに止まる。「回転」とは摺動よりも滑らかに回る(摺る抵抗が僅少であり、回す力が僅かであっても回る)ことをいい、典型的にはクリアランスをもって装着することをいう。
【0019】
スプール本体11は、釣り糸を巻回する筒状のドラムとしての円筒状のドラム部11cと、ドラム部11cの回転軸線方向両端にそれぞれ設けられた2枚の平板状のフランジとしての円板状のフランジ11a、11bを有する。釣り糸は2枚のフランジ11a、11bの間に巻回される。糸止め部材12は、フランジ11bの側に装着される。フランジ11bには、釣り糸を糸止め部材12とフランジ11bとの間に挟んで止めるために通す、切欠き11dが形成されている。切欠き11dは少なくともフランジ11bに形成されていればよい。釣り糸は、この切欠き11dを通してフランジ11bを越えることができる。すなわち、係止する釣り糸を糸止め部材12に容易に届かせることができる。また釣り糸は糸止め部材12に係止した状態で携帯されるが、切欠き11dに収まっているので、携帯中にほつれることを防止できる。なお本実施の形態では、2枚のフランジ11aと11bの両方に切欠き11dが形成されている。このようにすると、切欠き11dの加工が容易となり、製造効率を高めることができる。切欠き11dは、巻回される釣り糸の太さよりも十分に大に形成されるので、釣り糸がここに挟まれて傷つくことがない。
【0020】
図3(a)の斜視図を参照して、さらに本実施の形態のスプール本体11を説明する。本実施の形態では、スプール本体11と連結されるスプール本体21も同一の構成を有するので、スプール本体11の説明はスプール本体21にも共通する。
図3(a)の斜視図は、スプール本体21が連結されるべき側から見た図である。糸止め部材12とリング13が装着される側でもある。
【0021】
スプール本体11には、フランジ11a、11bと同心の円形の凹み11hが形成されている。凹み11hは、後で詳細に説明する糸止め部材12の円環状の糸止め部材本体12a(
図5参照)を収納できる外径を有する。凹み11h内には、半径方向外側に向いたフックを有する糸止め部材用タブ11eと内側に向いたフックを有するリング用タブ11fが形成されている。糸止め部材用タブ11eは糸止め部材12の円環状の糸止め部材本体12aの内側の全周に連続的に形成された案内レールに係合して、糸止め部材12をスプール本体11に摺動可能に連結する。糸止め部材12の案内レールについては、
図5を参照して後で説明する。リング用タブ11fはリング13の外側の全周に連続的に形成された案内レールに回転可能に係合する。リング13の案内レールについては、
図6を参照して後で説明する。
【0022】
図3(b)の断面図に示されるように、糸止め部材用タブ11eはスプール本体11の凹み11hの底面に垂直に立設された支柱部11e−1と支柱部11e−1の先端に形成されたフック部11e−2を有して構成される。ここで凹み11hの底面は、スプール本体11の回転軸線Cに垂直に形成されている。支柱部11e−1は、糸止め部材12をスプール本体11に装着する際に、内側に撓んで装着を可能にするように、又装着を可能とする程度に、可撓性を有する。フック部11e−2のスプール本体11側のフック内面は、スプール本体11の表面(凹み11hの底面)に平行(スプール11の回転軸線Cに垂直)又は奥に向かってスプール本体11の表面から離れる方向に僅かに傾斜している(図中θ1は0度以上)。これは、フック部11e−2が糸止め部材12と係合した後で外れにくくするためである。糸止め部材用タブ11eと糸止め部材12は係合後に取り外す必要がない。またフック部11e−2の外面(凹み11hの底面とは反対の側の面)側は、糸止め部材12を装着する際に、無理なく装着できるように面取りがされている(傾斜がつけられている)。
【0023】
図3(c)の断面図を参照してリング用タブ11fを説明する。リング用タブ11fとリング13の関係は、回転可能な係合である点を除き、糸止め部材用タブ11eと糸止め部材12との関係と同様である。リング用タブ11fはスプール本体11の表面(凹み11hの底面)に垂直に立設された支柱部11f−1と支柱部11f−1の先端に形成されたフック部11f−2を有して構成される。支柱部11f−1は、リング13をスプール本体11に装着する際に、外側に撓んで装着を可能にするように、また可能にする程度に、可撓性を有する。フック部11f−2のスプール本体11側のフック内面は、スプール本体11の表面に平行(スプールの回転軸線に垂直)又は奥に向かってスプール本体11の表面(この実施の形態では凹み11hの底面)から離れる方向に僅かに傾斜している(図中θ2は0度以上)。これは、フック部11f−2がリング13と係合した後で外れにくくするためである。リング用タブ11fとリング13は係合後に取り外す必要がない。またフック部11e−2と同様に、フック部11f−2の外面(凹み11hの底面と反対側の面)側は、リング13を装着する際に、無理なく装着できるように面取りがされている(傾斜がつけられている)。
【0024】
糸止め部材用タブ11eの支柱部11e−1とリング用タブの支柱部11f−1は、スプール本体11の半径方向の厚さが同等である。
糸止め部材用タブ11eとリング用タブ11fは、本実施の形態では、それぞれ4個設けられている。それらの個数は、3個以上であればよい。但し、可撓性を持たせるための円周方向の幅と全体の強度を考慮して、4個以上が好ましい。タブは円周方向に湾曲しているので、可撓性をもたせるためには、あまり幅広にできないからである。
【0025】
図3(a)に示すように、さらに補助タブ11jが配置されている。補助タブ11jは糸止め部材用タブ11eとリング用タブ11fとで挟まれるように、また両タブから独立して、スプール本体11に(凹み11hの底面に)立設される。補助タブ11jは、糸止め部材用タブ11e及びリング用タブ11fと同等の半径方向厚さを有する。したがって、糸止め部材用タブ11e及びリング用タブ11fと同様に、糸止め部材12とリング13との間に納まる。補助タブ11jは、糸止め部材12やリング13をスプール本体11に組み立てる作業等の際に、不用意に何かがぶつかることによる、糸止め部材用タブ11eやリング用タブ11fの折損を防ぐための補強部として作用する。糸止め部材用タブ11eやリング用タブ11fは、前述のようにあまり幅広にできないため、強度が高いとは言えないからである。補助タブ11jは、可撓性をもたせる必要がないので、糸止め部材用タブ11eとリング用タブ11fよりも、幅広に構成することができる。したがって、折損しにくいように、比較的高い強度をもたせることができる。
【0026】
図4(a)の斜視図を参照して、さらに本実施の形態のスプール本体11、21を説明する。
図4(a)の斜視図は、スプール本体21を、スプール本体11と連結されるべき側から見た図である。スプール本体11を、スプール本体11と同一形状、同寸法の他のスプール本体に連結されるべき側から見た図であるといってもよい。
【0027】
したがって以下は、スプール本体11が連結されるスプール本体21で説明する。そのままスプール本体11の構造として読み替えることができる。
【0028】
スプール本体21には、フランジ21a、21bと同心の円形の凹み21iが形成されている。凹み21iは、スプール本体11と連結したとき、後で詳細に説明する糸止め部材12の糸止めタブ12b(
図5参照)を収納できる内径を有する。凹み21iは、回転軸線Cに近い側の高段部21i−1と外周側の低段部21i−2とに深さを変えて形成されている。凹み21i内、凹みの高段部21i−1には、外側に向いたフックを有するリング係止用タブ21gとリング当接タブ21kと補助タブ21mとが形成されている。
【0029】
リング係止用タブ21gは、スプール本体11に回転可能に装着されたリング13の内面に形成された凹部13b(
図6参照)に係合して、スプール本体21をリング13に固定的、但し着脱可能に連結する。固定的な連結であるから、連結後は、スプール本体21とリング13とは相対的に摺動も回転もしない。着脱可能であるから、スプール本体11とスプール本体21とは一体に連結して携帯しやすくすること、切り離すこと、また別のスプール本体と連結することを自由に行うことができる。固定的な連結の構成はリング13の図を参照して、後で説明する。ここで、スプール本体11とリング13とが回転可能に装着されている結果として、連結されたスプール本体11とスプール本体21とは、相対的に回転可能である。
【0030】
図4(b)の断面図を参照して、リング係止用タブ21gの構成を説明する。図示のように、リング係止用タブ21gはスプール本体21の表面(スプール本体21の凹み21iの底面(高段部21i―1の表面))に垂直に立設された支柱部21g−1と支柱部21g−1の先端に形成されたフック部21g―2を有して構成される。ここで凹み21iの底面は、スプールの回転軸線Cに垂直に形成されている。支柱部21g−1は、相手のリング13に装着する際に、内側に撓んで装着を可能にするように、また可能とする程度に、可撓性を有する。フック部21g−2のリング13側のフック内面は、凹み21iの底部表面に対して、傾斜をもって形成されている。その傾斜は、奥に向かって凹み21iの底部表面に近づく方向の傾斜である。この傾斜の角度(図中θ3)は、スプール本体21をリング13に着脱可能な角度とする。リング係止用タブ21gの撓みの弾性にも関係するが、連結したスプール同士が携帯中に不用意に分離しないように、また連結したスプールを別のスプールと交換する等の際には、分離を妨げない程度の傾斜とする。傾斜の角度θ3は、20〜80度、好ましくは30〜60度、典型的には45度である。またフック部21g−2には、糸止め部材用リブ11e、リング用リブ11fと同様に、外面側に、リング13と連結する際に、無理なく連結できるように面取りがされている。
【0031】
リング当接タブ21kは、スプール本体21の表面(凹み21iの底面)に平行な面を有し、その面がリング13に当接する。スプール本体21とリング13との連結は、固定的であるので、リング当接タブ21kとリング13とは相対的に移動しない。当接面での両者間のクリアランスはほぼゼロである。典型的には密着状態にあるが、後述のように、リング13の構造で摺動も回転も防いでいるので、連結した釣り糸スプール10と20が、携帯中にがたつかない程度のクリアランスは存在してもよい。
【0032】
リング当接タブ21kは、本実施の形態では円周方向に4個設けられている。リング当接タブ21kに挟まれるように、またリング当接タブ21kから独立して、8個の補助タブ21mがスプール本体21(凹み21iの底面)に立設されている。補助タブ21mは、当接タブ21kに沿って配置されている。但し、本実施の形態では、リング当接タブ21kは、補助タブ21mについて1個おきに配置されている。ここで、リング当接タブ21kを補助タブ21mと同数の8個としてもよい。補助タブ21mは、補助タブ11jと同様に、スプール本体21をリング13に連結する作業等の際に、不用意にこれらが互いにぶつかることによる、リング係止用タブ21gの折損を防ぐための補強部として作用する。半径方向の厚さは、リング係止用タブ21gと同等であり、リング13とスプール本体11との間に納まる。補助タブ21mは、補助タブ11jと同様に可撓性をもたせる必要がないので、円周方向の幅はリング係止用タブ21gよりも、幅広に構成することができる。リング当接タブ21kは、典型的には4個であるが、3個以上であればよい。また、連続した円環状としてもよい。
【0033】
図5(a)の斜視図と(b)の断面図を参照して、本実施の形態で使用する糸止め部材12の構成を説明する。糸止め部材12は、円環状の糸止め部材本体12aと、その外周に配置された4個の糸止めタブ12bを有する。円環状の糸止め部材本体12aの内面には、円周方向に連続した案内レール12cが形成されている。案内レール12cには、糸止め部材用タブ11e(
図3参照)のフック部11e−2が摺動可能に係合する。本実施の形態では、案内レールはリングの表面から突き出た凸状レール12cとして構成されているが、その代わりに、リングの表面から凹んで形成された溝状レールとしてもよい。または、フック部11e−2が係合できる周方向に連続した段部を有する段差レールとしてもよい。要は、フック部11e−2が摺動可能に係合する案内レールであればよい。
【0034】
糸止めタブ12bは、糸止め部材12をスプール本体11に装着したとき、丁度スプール本体11の表面に当接するように寸法が定められている。この当接面でスプール本体11と摺動可能である。釣り糸を糸止め部材12で止めたとき、釣り糸は当接した糸止めタブ12bとスプール本体11との間に挟まる。糸止めタブ12bは、スプール1本体11に装着したとき、外周側に向かって開く楔状の空間を形成するように、スプール本体11に当接する面から逃げるように傾斜が付けられている。楔状の空間があるので、釣り糸を、スプール本体11と糸止め部材12との間に容易に導くことができる。糸止めタブ12bは、釣り糸に傷がついたり、過度に扁平にならない程度に撓む、幅と厚さに形成されている。また釣り糸は、楔状の空間の奥に挟むようにして止めてもよい。楔状の空間は奥に行くほど幅が狭くなるので、釣り糸を挟んで止めることができる。従来から、例えば本実施の形態の切欠き11dをスリット状に形成して、ここに挟んで糸を止めるような構成も考えられていたが、そのような構造では、釣り糸に傷やつぶれを生じがちであった。本実施の形態ではそのように生じ得る傷やつぶれを防止することができる。
【0035】
本実施の形態では、糸止めタブ12bは糸止め部材本体12aに4個が独立して設けられている。このように構成すると、釣り糸を止めやすい。また摺動可能であるので、切欠き11dに対する位置を適度に調節することができる。
【0036】
ここで、
図2に戻って、糸止め部材12とスプール本体11、21との関係を説明する。
まず、
図2(a)の断面図を参照して、糸止め部材12の高さHと、スプール本体11、21の間隔Wの関係を説明する。釣り糸スプール10、20を連結したとき、スプール本体11のフランジ11bとスプール本体21のフランジ21aとの間には、間隔Wが空くようにスプール本体11と、これに当接するリング13、これと当接するスプール本体21のリング当接タブ21kの寸法を定める。実施例ではW=1.0mmとした。
【0037】
糸止め部材12の高さH(フランジ11bと当接する当接面から反当接面までの厚さ)は、間隔Wよりも大に定める。実施例ではH=2.0mmとした。ここで、釣り糸スプール10、20を連結したとき、糸止め部材12の反当接面がスプール本体11に装着されたリング13と面一になるように、糸止め部材12とリング13の寸法を定める。このように構成するので、釣り糸スプール10、20を連結したとき、糸止め部材12は、スプール本体21の凹み21iの中に、高段部21i−1に接しないように納まる。いわば、糸止め部材12はスプール本体21に、オーバーラップして納まる。糸止め部材12の反当接面とリング13とが面一になるということは、糸止め部材12の反当接面は、リング当接タブ21kの面とほぼ面一となり、高段部21i−1に当たることはない。また、糸止め部材12の高さHが間隔Wよりも大であるので、釣り糸を糸止め部材12で止めるために、スプール本体11と12との間に挿入したとき、糸止め部材12とフランジ11bとの間に、確実に導くことができる。
【0038】
ここで、糸止め部材12と糸止め部材用リブ11eのフック部11e−2とが係合する係合面と、リング13とリング係止用タブ21gのフック部21g−2とが係合する係合面とは、一致するように各部の寸法を定める。釣り糸スプール10、20を連結したとき、この係合面の位置は、間隔Wの中央にある。実施例では、スプール本体11からこの係合面までの距離W1、スプール本体21からこの係合面までの距離W2は、0.5mmとした。間隔Wは1.0mmに限らず、釣り糸スプール10、20に巻回する釣り糸の号数(太さ)に合わせて、適宜設定することができる。
ここで、
図2(a)にリング13とリング係止用タブ21gの係合部をさらに拡大した拡大図を円内に示す。この図に示すように、リング13とリング係止用タブ21gとは、回転軸線Cに直交する面に角度θ3だけ傾斜した面で係合する。本実施の形態では、θ3=45度、回転軸線Cの方向に見た係合面の幅W4は、0.2mmとした。なお、幅W4の釣り糸スプール20側の端線が間隔Wの中央になるように設定されている。したがって、本実施の形態では、係合面は幅W4の半分だけ釣り糸スプール10の側に寄っていることになる。但し、糸止め部材12側の端線の位置は、これに限らず、リング13の回転軸線C方向の幅の中にあればよい。
【0039】
図2(b)を参照して、スプール本体11と糸止め部材12との当接関係が、以上の実施の形態とは異なる場合を説明する。以上の実施の形態では、糸止めタブ12bがスプール本体11に当接して摺動可能であるものとしたが、糸止め部材本体12aがスプール本体11の凹み11hの底面に当接するように構成してもよい。このときは、糸止め部材12はスプール本体11に、凹み11hの底面と糸止め部材用リブ11eとで摺動可能にスプール本体11に装着されることになる。したがって、糸止めタブ12bは、糸止め部材12をスプール本体11に装着したときも、スプール本体11の表面(本実施の形態ではフランジ11bと面一の面)に当接せずに、適度な隙間W3を残すように構成することができる。このように構成するときは、釣り糸をさらに無理なく、糸止めタブ12bとスプール本体11との間に挟むことができる。隙間W3は、巻回する釣り糸の太さよりも小さく設定する。但し、釣り糸には弾性があるので、隙間W3の寸法は、厳密に釣り糸の太さに合わせる必要はない。
【0040】
図6の斜視図(a)と部分断面図(b)を参照して、リング13の構成を説明する。リング13には、案内レールとしての段差レール13aが外周面に形成されている。段差レールは外周面に形成された周方向に連続的に形成された段部である。この段差レール13aにリング用タブ11f(
図3参照)が回転可能に係合する。別の実施の形態では、案内レールを、外周面から凸状に突き出て外周面に周方向に連続的に形成された凸状レールとしてもよいし、外周面に連続的に凹状に形成された溝状レールとしてもよい。要は、リング用タブ11fが係合することができる、周方向に連続した段部があればよい。
【0041】
リング13の内周面には、円周方向に断続的に複数の凹部13bが形成されている。凹部13bは、回転軸線Cの方向に形成された浅い溝であり、リング13がスプール本体11に当接する面の側に開いている。その反対側の面(スプール本体21に当接する側の面)の側は、閉じている。スプール本体11にスプール本体21を連結するとき、この凹部13bの閉じた側にリング係止用タブ21gが着脱可能に係合する。凹部13bは、円周方向に断続的に形成されているので、連結された相手側のスプール本体はリングとは相対的に動くことがない。すなわち相手側のスプール本体とリング13は固定的に連結される。
【0042】
なお、各凹部13bは、リング用タブ11fの位置と整合する円周方向の位置に設けられる。また凹部13bの一方が開いているので、加工、製造が容易である。凹部13bの閉じた側には、回転軸線Cに直交する面に角度θ3だけ傾斜した面となっている。リング係止用タブ21gの係合面の角度θ3と同じ角度の傾斜である。したがって、リング13とリング係止用タブ21gは、この傾斜した面でしっくりと係合することができる。本実施の形態ではθ3=45度に形成されており、リング13とリング係止用タブ21gとは、回転軸線Cの方向に自由に着脱することができる。なお、リング係止用タブ21gの寸法は、リング13と係合する際に、決して折れることなく適度に撓むように定める。リング係止用タブ21gの係合面の、リング13の周方向に見た幅は、1.5〜5mmの範囲とし、典型的には約2mmとするが、これは、リング13の凹部の係合部の長さ、釣り糸スプールの大きさによって適切に定める。
【0043】
以上のように構成されるので、釣り糸スプール10は、他の釣り糸スプール例えば釣り糸スプール20と連結されたとき、互いに独立して自由に回転可能である。
以上のように構成されるので、複数個数を連結可能で、携帯容易な釣り糸スプールを提供することができる。
連結した複数の釣り糸スプールは、それぞれ自由に回転可能であるので、各スプールに異なる号数の釣り糸を巻回するときは、所望の号数の釣り糸を容易に取り出すことができる。
【0044】
以上の実施の形態では、糸止め部材は、リングと同じ側に装着するものとして説明したが、反対側であってもよい。その場合は、相手側のスプール本体に、糸止め部材を収容可能な凹み部を設けることになる。