(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下側突出部は、前記錘部の重力方向の下端面に対向する面が導電性と固体潤滑性との少なくとも何れか一方の性質を有する膜で覆われることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子デバイス。
前記上側突出部は、前記錘部の重力方向の上端面に対向する面が導電性と固体潤滑性との少なくとも何れか一方の性質を有する膜で覆われることを特徴とする請求項5記載の電子デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の加速度スイッチでは、
図15に示すように、錘部134が重力によって重力方向(
図15の上方から下方向き)に沈み込む為、錘部134の内側面のうち、少なくとも張出部136に位置する部分に形成された電極膜146と、中央電極132の外側面のうち、張出部136と対向する部分に形成された電極膜145との水平位置にずれが生じ、それによって電極同士の接触不良が生じ、動作不良が発生するおそれがある。また、仮に錘部134の変位の許容を犠牲にして加速度スイッチに逃げ部156,157を設けない場合、錘部134の上下面を上記封止用の基板の対向面に当接させて支持することで、錘部134の沈みこみを抑えることはできる。ただし、その状態で加速度が入力された場合、錘部134の上下両面全体と基板とが相対的に摺動することになるため、双方の摩擦力の影響により中央電極132と錘部134とが接触(接離)せず、動作不良が発生するおそれがある。
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、動作信頼性を向上させることができる電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の電子デバイスは、中央電極と、前記中央電極を内側に収容するとともに、内側面が前記中央電極の外側面に接離可能とされた錘部と、前記錘部の周囲を取り囲むとともに、支持部との間で前記錘部を弾性支持する梁部と、を備えた構造体基板と、前記構造体基板を重力方向の下方より封止し、前記錘部を前記重力方向において離間した状態で収容する下側収容部を備えた下側封止基板と、記下側収容部のうち前記錘部の前記重力方向の下端面と対向する面の少なくとも一部に、前記下端面に向けて突出する下側突出部と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、錘部が重力(自重)によって沈み込んだ際、下側収容部に設けられた下側支持部によって支えられるので、錘部の内側面と中央電極の外側面との接離位置(水平位置)のずれを抑止できる。その結果、本発明によれば、錘部の変位を許容するための収容部に当該錘部を配置した場合でも、錘部への重力の作用にかかわらず中央電極と錘部との接離可能な状態を保つことが出来る為、電子デバイスとしての動作信頼性を向上させることができる。
【0008】
また、前記下側突出部は、平面視で前記中央電極に対して対称な位置に形成されることを特徴とする。
この構成によれば、錘部を中央電極に対して対称な位置で支えることが出来る為、錘部が傾くことによる感度ばらつきを抑制することができる。
【0009】
また、前記下側突出部は、導電性と固体潤滑性との少なくとも何れか一方の性質を有する材料からなることを特徴とする。
この構成によれば、下側突出部と錘部の間に作用する静電気力・摩擦力を抑制することができる為、静電引力による錘部と下側突出部との張り付きや、摩擦力による錘部の中央電極との接離動作の阻害を防ぎ、一層の電子デバイスとしての動作信頼性の向上を図ることができる。
【0010】
また、前記下側突出部は、前記錘部の重力方向の下端面に対向する面が導電性と固体潤滑性との少なくとも何れか一方の性質を有する膜で覆われることを特徴とする。
この構成によれば、下側突出部と錘部の間に作用する静電気力・摩擦力を抑制することができる為、静電引力による錘部と下側突出部との張り付きや、摩擦力による錘部の中央電極との接離動作の阻害を防ぎ、一層の電子デバイスとしての動作信頼性の向上を図ることができる。しかも、下側突出部自体は、材料が限定されないため、例えば、下側封止基板と同一材によって当該下側封止基板と一体形成することも可能となり、製造工程の簡略化も図ることが出来る。
【0011】
また、前記構造体基板を重力方向の上方より封止し、前記錘部を前記重力方向において離間した状態で収容する上側収容部を備えた上側封止基板と、前記上側収容部のうち前記錘部の前記重力方向の上端面と対抗する面の少なくとも一部に、前記上端面に向けて突出する上側突出部と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、本発明に係る電子デバイスが上下方向逆向きに利用される場合であっても、錘部が重力によって沈み込んだ際、上側収容部に設けられた上側支持部によって支持することが出来る。
【0012】
また、前記上側突出部は、導電性と固体潤滑性との少なくとも何れか一方の性質を有する材料からなることを特徴とする。
この構成によれば、上側突出部と錘部の間に作用する静電気力・摩擦力を抑制することができる為、静電引力による錘部と上側突出部との張り付きや、摩擦力による錘部の中央電極との接離動作の阻害を防ぎ、一層の電子デバイスとしての動作信頼性の向上を図ることができる。
【0013】
また、前記上側突出部は、前記錘部の重力方向の上端面に対向する面が導電性と固体潤滑性との少なくとも何れか一方の性質を有する膜で覆われる。
この構成によれば、上側突出部と錘部の間に作用する静電気力・摩擦力を抑制することができる為、静電引力による錘部と上側突出部との張り付きや、摩擦力による錘部の中央電極との接離動作の阻害を防ぎ、一層の電子デバイスとしての動作信頼性の向上を図ることができる。
しかも、上側突出部自体は、材料が限定されないため、例えば、上側封止基板と同一材によって当該上側封止基板と一体形成することも可能となり、製造工程の簡略化も図ることが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子デバイスの動作信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
[加速度スイッチ]
図1は第1実施形態におけるスイッチ本体11(電子デバイス)の平面図であり、
図2は
図1のA−A線に相当する断面図である。
図1、
図2に示すように、本実施形態の加速度スイッチ1は、スイッチ本体11(構造体基板)と、スイッチ本体11を厚さ方向で挟持する第1基板12(下側封止基板)及び第2基板13(上側封止基板)と、を備えている。
【0017】
(スイッチ本体の構成について)
図2に示すように、スイッチ本体11は、例えばシリコン材やSOI(Silicon−On−Insulator)材等からなる基板20を用いてMEMS技術によって製造されるものである。なお、以下の説明では、基板20の厚さ方向(
図2における上下方向)を単に高さ方向といい、特に
図2における上方から下方向きを重力方向として、
図2における下側を下方とし、上側を上方とする。ただし、本実施形態における加速度スイッチ1は、上記高さ方向が逆向きに使用される態様もあるため、当該上下の向きは便宜上の表現に過ぎない。
【0018】
図1、
図2に示すように、スイッチ本体11は、枠体31(支持部)と、枠体31の内側に配置された中央電極32と、枠体31と中央電極32との間に配置され、中央電極32を内側に収容する収容孔33を有する錘部34と、錘部34の周囲を取り囲む円弧状とされ、枠体31との間で錘部34を弾性支持する梁部35と、を備えている。なお、以下の説明において、梁部35の周方向を単に周方向とし、梁部35の径方向を単に径方向とする。
枠体31は、厚さ方向から見た平面視(縦断面視)で矩形状とされ、その中央部には基板20を厚さ方向に貫通する上面視円形状の貫通孔31aが形成される。
【0019】
中央電極32は、枠体31の中心(貫通孔31aの中心)を通り、厚さ方向に沿って延在する円柱状からなる。なお、スイッチ本体11のうち、少なくとも枠体31及び中央電極32の両面には、第1基板12及び第2基板13とスイッチ本体11とをそれぞれ接合するための第1接合膜41及び第2接合膜42(例えば、Au/Ni等)が形成される。図示の例において、スイッチ本体11のうち、厚さ方向における他端側の主面には、錘部34及び梁部35上を含む全体に第2接合膜42が形成される。
錘部34は、平面視で円形状からなり、その中央部には基板20を厚さ方向に貫通する収容孔33が形成される。
【0020】
なお、錘部34の外径は、枠体31の貫通孔31aの内径よりも小さく、収容孔33の内径は中央電極32の外径よりも大きくなる。したがって、錘部34は、その内側面と中央電極32の外側面との間に径方向におけるギャップが設定されるとともに、加速度スイッチ1への加速度の入力により中央電極32に対して接離可能とされる。なお、ギャップの径方向における幅は、周方向の全周に亘って均一になっていることが好ましい。
【0021】
また、錘部34のうち、厚さ方向における他端部は、一端部よりも径方向の内側に張り出した張出部36を有する。そして、錘部34の内側面のうち、少なくとも張出部36に位置する部分と、中央電極32の外側面のうち、張出部36と対向する部分と、には、それぞれ電極膜45,46が形成されている。したがって、加速度スイッチ1は、初期状態において、ギャップを挟んで電極膜45,46同士が離間して対向した状態(OFF状態)となる。なお、電極膜45,46は、上述した第2接合膜42に各別に接続される。
【0022】
梁部35は、枠体31及び錘部34よりも薄く形成され、弾性変形可能とされる。具体的に、梁部35は、錘部34の周囲をほぼ全周に亘って取り囲む枠体状の円弧部51と、円弧部51における周方向の一端部と錘部34との間を接続する錘部側接続部52と、円弧部51における周方向の他端部と枠体31との間を接続する枠体側接続部53と、からなる。
円弧部51は、周方向の全周に亘って一定の曲率半径で延在し、その周方向の両端部が近接した状態で対向する。
【0023】
(第1基板及び第2基板の構成について)
図2に示すように、第1基板12は、例えば、ボロシリケートガラス等のガラス材等からなり、平面視外形がスイッチ本体11と同等の形状を呈し、重力方向の下方よりスイッチ本体11を封止する。また、第1基板12は、第1接合膜41を介してスイッチ本体11の枠体31及び中央電極32に接合されている。また、第1基板12におけるスイッチ本体11側の主面のうち、枠体31及び中央電極32以外に位置する部分は、錘部34の変位を許容する(錘部34を重力方向において離間した状態で収容する)逃げ部56(下側収容部)が形成されている。そして、
図2に示すように、当該逃げ部56の上面のうち、錘部34の下方に相当する位置には、突起部70(下側突出部)が設けられる。
【0024】
突起部70は、例えば、ガラス材等で構成され、逃げ部56の上面より錘部34の底面(重力方向の下端面)に向かって突出した形状(
図2では縦断面視で台形状)からなる。当該突起部70は、錘部34が自重によって突起部70に向かって沈みこんだ際に、錘部34の底面と当接して当該錘部34を所定高さに支持する。ここで、上記所定高さとは、重力方向において中央電極32と錘部34の電極膜45,46が形成された側の端面(
図2では各々の上面)同士が水平な位置関係を保つための高さであることが好ましいが、少なくとも、中央電極32の外側面に設けられた電極膜46の下端と、張出部36の外側面に設けられた電極膜45の上端とが、
図2における左右方向において当接可能となる高さ以上の高さである。すなわち、加速度スイッチ1へ加速度が入力された際に、電極膜45,46同士が当接可能な状態(ON状態)を形成するための高さである。なお、
図2に示す突起部70の錘部34との対向面における長さ(
図2における左右方向の長さ)は、加速度が入力された際の錘部34と突起部70との相対移動時の摩擦力の影響を緩和するため、少なくとも錘部34の底面の長さ(
図2における左右方向の長さ)よりも短いことが好ましい。
【0025】
また、突起部70は、例えば、
図3に示すように、平面視で錘部34の底部のうち何れかの箇所に設けられる。ここで、
図3(a)は、突起部70が平面視で円弧状の錘部34の底部のうち、円弧の径方向中央近傍を中心として円形状に形成された場合を、
図3(b)は、突起部70が半円弧状に形成された場合を、それぞれ示唆する。
【0026】
この場合、錘部34は、自重によって沈みこんで突起部70上に載置された状態で、平面位置に応じて異なる高さ位置で支持されることとなるが、各平面位置における錘部34のうち、底面が最も第1基板12に近接する箇所で上記所定高さとなるように突起部70の高さを調整しておけば良い。
【0027】
第2基板13は、第1基板12と同一の材料からなるとともに、平面視外形がスイッチ本体11と同等の形状を呈し、重力方向の下方よりスイッチ本体11を封止する。また、第2基板13は、第2接合膜42を介してスイッチ本体11の枠体31及び中央電極32に接合される。これにより、加速度スイッチ1のうち、枠体31、第1基板12、及び第2基板13で画成された内側空間に、中央電極32、及び梁部35が封止される。また、第2基板13におけるスイッチ本体11側の主面のうち、枠体31及び中央電極32以外に位置する部分は、錘部34の変位を許容する逃げ部57(上側収容部)が形成される。
【0028】
さらに、第2基板13のうち、中央電極32上部に位置する部分、及び枠体31上部に位置する部分には、それぞれ厚さ方向に貫通して第2接合膜42を露出させる露出孔58が形成される。そして、第2基板13には、各露出孔58を通して第2接合膜42と外部装置とを導通させるための貫通電極59(例えば、Al等)が各々形成される。すなわち、第2接合膜42のうち、中央電極32上部及び枠体31上部に位置する箇所は、中央電極32及び錘部34の各電極膜45,46と外部装置との間を接続するための回路としても機能する。
【0029】
[加速度スイッチの製造方法]
次に、上述した加速度スイッチ1の製造方法について説明する。
図4、
図5は、加速度スイッチ1の製造方法を説明するための工程図であって、
図2に相当する断面図である。
まず、
図4(a)に示すように、基板20の厚さ方向における一端側の主面上に、第1接合膜41を形成する(第1接合膜形成工程)。具体的には、リフトオフ法等を用い、基板20の厚さ方向における一端側の主面上のうち、枠体31、及び中央電極32に相当する部分のみに第1接合膜41を残存させる。
【0030】
次に、
図4(b)に示すように、図示しないマスクを用いてDRIE(深掘り反応性イオンエッチング)等のドライエッチングを、基板20の厚さ方向における一端側から行い、基板20のうち、枠体31、中央電極32、及び錘部34以外に相当する部分に、所定深さの凹部60を形成する(第1エッチング工程)。なお、凹部60の深さ(エッチング量)は、基板20の厚さと梁部35の厚さとの差分に相当している。
【0031】
次に、
図4(c)に示すように、第1基板12の逃げ部56の上面において、例えばマスクスパッタ法やスクリーン印刷法を用いて低融点ガラス等から成る突起部70を、
図3で例示した位置に形成する(突起部形成工程)。その後、
図4(d)に示すように、基板20のうち、枠体31及び中央電極32に対して、第1接合膜41を介して第1基板12を接合する(第1基板接合工程)。
【0032】
次に、
図5(a)に示すように、図示しないマスクを用いてDRIE等のドライエッチングを、基板20の厚さ方向における他端側から行い、基板20のうち、枠体31、中央電極32、錘部34、及び梁部35以外に相当する部分を除去する(第2エッチング工程)。これにより、凹部60が厚さ方向に貫通することで、梁部35が成形されるとともに、中央電極32と錘部34とがギャップを介して離間した状態になる。
【0033】
続いて、
図5(b)に示すように、スパッタ等を用い、基板20の厚さ方向における他端側の主面全体に亘って第2接合膜42を成膜する(金属膜形成工程)。なお、第2接合膜42を形成する際の粒子の回り込みにより、錘部34の内側面及び中央電極32の外側面に粒子を堆積させることで、錘部34の内側面及び中央電極32の外側面に電極膜45,46が形成される。
その後、
図5(c)に示すように、基板20のうち、枠体31及び中央電極32に対して、第2接合膜42を介して第2基板13を接合する(第2基板接合工程)。
【0034】
最後に、
図2に示すように、第2基板13に対してAl等からなる金属膜を成膜し、その後パターニングすることで、貫通電極59を形成する(貫通電極形成工程)。
以上により、上述した加速度スイッチ1が完成する。
【0035】
「加速度スイッチの動作」
次いで、本実施形態に係る加速度スイッチ1の動作について説明する。ここで、
図6は、加速度スイッチ1の動作説明図であって、
図2に相当する断面図である。
このように構成された加速度スイッチ1では、
図2に示した初期状態より、錘部34が自重(重力)によって下方に沈み込み、
図6に示すように突起部70に支持される。この際、例えば加速度スイッチ1に対して、
図6における左側〜右側方向(以下、加速度方向)への加速度が入力されると、錘部34を除く加速度スイッチ1全体が当該加速度方向に移動する。一方、錘部34は、梁部35を介して枠体31に支持されているため、慣性によりその場に留まろうとする。これにより、枠体31及び中央電極32と錘部34とが相対移動するとともに、この相対移動に伴い梁部35が弾性変位する。
【0036】
その結果、
図6に示すように、中央電極32と錘部34との電極膜45,46同士が電気的に接触することで、加速度スイッチ1がON状態となる。この際、錘部34が自重によって下方に沈み込んでいるため、中央電極32と錘部34との厚み方向位置は初期状態からずれたものとなるが、上述の通り、錘部34は突起部70によって所定高さに支持されるため、電極膜45,46同士は確実に電気的接触を行うことが出来る。
そして、外部装置は、貫通電極59を介して加速度スイッチ1のON状態を検出信号として検出することで、所定の動作を行う。
【0037】
以上、本実施形態に係る加速度スイッチ1によると、錘部34の底面に対向する第1基板12の逃げ部56の上面に突起部70が設けられる。そして、当該突起部70は、錘部34が自重によって沈みこんだ際に当該錘部34を所定高さ(少なくとも、中央電極32の外側面に設けられた電極膜46の下端と、張出部36に設けられた電極膜45の上端とが、
図2における左右方向において当接可能となる高さ以上の高さ)に支持するので、電極膜45,46同士は確実に電気的接触を行うことが出来る。したがって、本実施形態に係る加速度スイッチ1によると、加速度スイッチとしての動作信頼性を向上させることができる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。ここで、
図7は第2実施形態におけるスイッチ本体100の断面図であり、
図8は突起部の形成位置を説明するためのスイッチ本体100の平面図である。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
第1実施形態に係るスイッチ本体100では、突起部70を
図3に示した箇所にのみ設ける場合を例示したが、本実施形態に係るスイッチ本体100では、
図7及び
図8に示すように、錘部34の下方に相当する箇所のうち、中央電極32を中心として対称な位置に突起部70aを設ける。ここで、
図8(a)は、
図3(a)に示した平面位置に相当する箇所に形成された突起部70aと同一形状の突起部70aを、中央電極32を中心として対称な位置に形成した状態を例示する図である。一方、
図8(b)は、円弧状の錘部34の底部のうち、当該円弧の径方向中央近傍に亘って突起部70aが円弧状に形成された場合を示唆する図である。この場合、第1実施形態に係るスイッチ本体100では、
図6に示した通り、錘部34が突起部70に支持された状態で錘部34の高さ位置は局所的にバラつくこととなるが、本実施形態に係るスイッチ本体100では、突起部70aによって、中央電極32を中心として対称な位置の錘部34を均等な高さに支持することができる。
【0040】
したがって、本実施形態に係る加速度スイッチ1によると、第1実施形態に係る加速度スイッチ1と同様の効果が得られることは勿論、何れの方向から加速度が入力された場合であっても一層確実に電極膜45,46同士の電気的接触を実現することができるので、加速度スイッチとしてのさらなる動作信頼性の向上が期待できる。
【0041】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図9は第3実施形態におけるスイッチ本体100の断面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係るスイッチ本体100では、
図9に示すように、突起部70aの上面に導電性膜71が形成される。
【0042】
導電性膜71は、例えば、Au、Cr、Ni、Si等の金属材からなる導電性を有する膜であり、突起部70aの上面を覆うように形成される。当該導電性膜71は、加速度スイッチ1に加速度が入力された際の、錘部34と突起部70との間に生ずる静電気力の影響を緩和する。
【0043】
つまり、錘部34が突起部70に支持された状態で、加速度スイッチ1に対して
図9における左右方向に加速度が入力された場合、突起部70(を含む錘部34以外の加速度スイッチ1全体)が当該加速度方向に移動するため、突起部70と錘部34との間には摩擦による静電気力が生じ、双方が僅かながら引き合う可能性がある。この場合、突起部70と連接した中央電極32の電極膜46が錘部34の電極膜45と十分に接触しない場合も考えられる。しかし、本実施形態に係るスイッチ本体100では、突起部70aの上面に備わる導電性膜71によって当該静電気力の影響が緩和されるので、中央電極32を加速度方向に確実に移動させて、電極膜46と電極膜45との接触をより確かなものとすることができる。
【0044】
したがって、本実施形態に係る加速度スイッチ1によると、上記実施形態に係る加速度スイッチ1と同様の効果が得られることは勿論、加速度スイッチ1に加速度が入力された際の、錘部34と突起部70との間に生ずる静電気力の影響を緩和することができ、一層確実に電極膜45,46同士の電気的接触を実現し、加速度スイッチとしてのさらなる動作信頼性の向上が期待できる。
【0045】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図10は第4実施形態におけるスイッチ本体100の断面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係るスイッチ本体100では、
図10に示すように、突起部70aの上面に固体潤滑膜72が形成される。
【0046】
固体潤滑膜72は、例えば、テフロン(登録商標)、二硫化モリブデン、等の固体潤滑性を有する材料からなる膜であり、突起部70aの上面を覆うように形成される。当該固体潤滑膜72は、加速度スイッチ1に加速度が入力された際の、錘部34と突起部70との間に生ずる摩擦力の影響を緩和する。なお、固体潤滑膜72は、銅、グラファイトなどのように、導電性と固体潤滑性の双方を有する材料からなる膜を用いてもよい。
【0047】
つまり、錘部34が突起部70に支持された状態で、加速度スイッチ1に対して
図9における左右方向に加速度が入力された場合、突起部70(を含む錘部34以外の加速度スイッチ1全体)が当該加速度方向に移動する際、突起部70と錘部34との間には摩擦力が作用するので、突起部70の加速度方向への移動が僅かながら阻害される可能性もある。この場合、突起部70と連接した中央電極32の電極膜46が錘部34の電極膜45と十分に接触しない場合も考えられる。しかし、本実施形態に係るスイッチ本体100では、突起部70aの上面に備わる固体潤滑膜72によって当該突起部70と錘部34との間の摩擦係数を低くすることができるので、中央電極32を加速度方向に確実に移動させて、電極膜46と電極膜45との接触をより確かなものとすることができる。また、固体潤滑膜72は、上述の通り導電性と固体潤滑性の双方を有する材料からなる膜とすることもできるため、第3実施形態で述べたとおり、静電気力の影響の緩和も同時に図ることができる。
【0048】
したがって、本実施形態に係る加速度スイッチ1によると、上記実施形態に係る加速度スイッチ1と同様の効果が得られることは勿論、加速度スイッチ1に加速度が入力された際の、錘部34と突起部70との間に生ずる摩擦力の影響を緩和することができ、一層確実に電極膜45,46同士の電気的接触を実現し、加速度スイッチとしてのさらなる動作信頼性の向上が期待できる。
【0049】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図11は第5実施形態におけるスイッチ本体100の断面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係るスイッチ本体100では、
図11に示すように、第2基板13の逃げ部57(上側収容部)にも突起部80(上側突出部)が形成される。
【0050】
当該突起部80は、逃げ部57の下面(錘部34との対向面)に形成され、突起部70aと同一材料且つ同一形状からなる。ここで、先述の通り、加速度スイッチ1は、
図11における上下方向が逆向きに使用される態様もある。つまり、当該逆向きに使用される場合、錘部34は自重により逃げ部57に向かって沈みこととなる。この場合、錘部34は逃げ部57に設けられた突起部80によって、所定高さ(少なくとも、中央電極32の外側面に設けられた電極膜46の上端と、張出部36に設けられた電極膜45の下端とが、
図11における左右方向において当接可能となる高さ以上の高さ)に支持されるので、電極膜45,46同士は確実に電気的接触を行うことが出来る。
【0051】
したがって、本実施形態に係る加速度スイッチ1によると、上記実施形態に係る加速度スイッチ1と同様の効果が得られることは勿論、加速度スイッチ1が上下逆向きに使用される場合であっても、確実に電極膜45,46同士の電気的接触を実現し、加速度スイッチとしてのさらなる動作信頼性の向上が期待できる。
【0052】
<変形例>
第5実施形態に係るスイッチ本体100は、第2基板13の突起部80に対して、
図12に示すような下面へ導電性膜81を形成したものや、
図13に示すような下面へ固体潤滑膜82を形成したもの、としても良い。
【0053】
ここで、
図12に示す導電性膜81は、例えば、
図9に示す導電性膜71と同一材料からなり、加速度スイッチ1に加速度が入力された際の、錘部34と突起部80との間に生ずる静電気力の影響を緩和する。また、
図13に示す固体潤滑膜82は、例えば、
図10に示す固体潤滑膜72と同一材料からなり、加速度スイッチ1に加速度が入力された際の、錘部34と突起部80との間に生ずる摩擦力や静電気力の影響を緩和する。
【0054】
したがって、本変形例に係る加速度スイッチ1によると、加速度スイッチ1が上下逆向きに使用される場合であっても、錘部34と突起部80との間に生ずる静電気力や摩擦力に影響されることなく、確実に電極膜45,46同士の電気的接触を実現し、加速度スイッチとしてのさらなる動作信頼性の向上が期待できる。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上記各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0055】
例えば、上述した実施形態では、突起部70,70a,80の形状を縦断面視で台形状としたが、三角形状や四角形状など、錘部34を支持できる形状であれば適宜の変更が可能である。また、突起部70,70a,80の材料として、低融点ガラスを例示したが、第1基板12や第2基板13と同一材料(例えば、ボロシリケートガラス等のガラス材)で形成することとしても良い。この場合、第1基板12や第2基板13に逃げ部56,57を加工形成する際に、逃げ部56,57も突起部70,70a,80と一体的に形成することで、製造工程を簡略化することができる。さらに、突起部70,70a,80は、逃げ部56,57のうち錘部34と同じ平面位置に形成するものとしたが、梁部35と同じ平面位置にも形成することとしても良い。この場合、錘部34と接続された梁部35の自重による沈み込みも防止できるため、一層確実な電極膜45,46同士の電気的接触が期待できる。
【0056】
さらに、突起部70,70a,80がバネ状の構造を有し、自重により錘部34と当接した状態でバネの反力によって錘部34を押し上げるように構成してもよい。また、
図14に示すように、錘部34の突起部70,70a,80と対向する面全体に固体潤滑材膜90、91を形成してもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、梁部35が円弧状である構成について説明したが、これに限らず、矩形状等、適宜設計変更が可能である。また、これに伴い、中央電極32や錘部34の平面視形状についても、矩形状等、適宜設計変更が可能である。すなわち、梁部35は、錘部34の周囲を取り囲んでいれば構わない。また、梁部35の周方向における長さについても適宜設計変更が可能である。
【0058】
さらに、上述した実施形態では、本発明の電子デバイスを加速度スイッチ1に適用した場合について説明したが、これに限らず、加速度センサ等に本発明を適用しても構わない。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。