特許第6247124号(P6247124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247124
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20171204BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20171204BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20171204BHJP
   B05B 13/06 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H02G1/02
   B05D1/02 C
   B05D7/22 H
   B05B13/06
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-56782(P2014-56782)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-180152(P2015-180152A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591124167
【氏名又は名称】中電工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳昭
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊一
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−264637(JP,A)
【文献】 特開平06−320068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
B05B 13/06
B05D 1/02
B05D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔における鋼管からなる主柱材の頂部から、当該主柱材の内部に挿入可能な本体と、
前記本体に連結され、前記本体を上下方向に移動させるとともに、前記本体に水系塗料を供給するホースと、
当該本体の下部に設けられ、前記ホースから供給された水系塗料を前記主柱材の内面に向けて放出するシャワー部と、
前記本体の側部に設けられ、前記主柱材に当接して前記本体を前記主柱材の中心軸上に位置付けるように支持する支持脚と、を備え、
前記シャワー部は、前記主柱材の内面に対向しかつ環状に並ぶ複数の放出口を有し、当該放出口から水系塗料が放出され
前記シャワー部は、前記本体から供給された水系塗料を充填する充填部と、当該充填部に接続され、先端に前記放出口が形成された複数の管状の放出部と、を備え、
前記複数の放出口は、前記主柱材の径方向に対して所定角度傾いた方向を向いており、かつ均等に配置されていることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記所定角度は、25度から35度の間であることを特徴とする請求項記載の塗装装置。
【請求項3】
前記複数の放出口は、上下方向に並ぶ二段に配置されていることを特徴とする請求項又は記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管送電鉄塔の主柱材の内面塗装に適用可能な塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、鋼管送電鉄塔100の構成を模式的に示した説明図である。鋼管送電鉄塔100は、主柱材102、斜材104、腕金106、水平材108及び基礎コンクリート110などにより構成される。例えば、地上における矩形の四隅の位置に4本の主柱材102を、基礎コンクリート110を介して立設し、4本の主柱材102を、斜材104や水平材108によって連結するとともに各種の補強部材によって補強し、主柱材102の上部に腕金106を設けることによって、鋼管送電鉄塔100が組み立てられる。
【0003】
主柱材102は、鋼管からなり、主柱材102の内面及び外面には、表面の腐食を防止するために溶融亜鉛めっき処理が施されている。主柱材102の内面は、外部の環境による影響を受けにくいため、主柱材102の内面にめっき処理を施すことによって、長期に亘って防食性が発揮される。しかし、溶融亜鉛めっきの寿命による経年劣化や、めっき処理の不良箇所が存在すると、そこから主柱材102の腐食が進行することによって、鋼管送電鉄塔100の強度が低下するおそれがある。このため、定期的に、主柱材102の内面に防錆塗装を行ったり、経年劣化した箇所やめっき処理の不良箇所の補修を行ったりする必要がある。
【0004】
ところで、鋼管送電鉄塔100は、急峻な山地に設けられている場合が多く、現地に大型の塗装用の機材を搬入することが困難である。また、主柱材102において塗装用の機材が挿入できるような箇所は限られており、現状としては、主柱材102の頂部にボルト止めされている蓋部を外して鋼管内に、塗装用の機材が挿入される。このように、現状においては、主柱材102の内面の防錆塗装における施工面での制約が多い。
【0005】
そこで、従来、特許文献1に記載された技術が提案されている。特許文献1には、主柱材の頂部から鋼管内に塗装機を挿入して鋼管内面をスプレー塗装する工法、について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−82051公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、防錆塗料をスプレー塗装する塗装機は、防錆塗料の吐出口が目詰まりし易いという問題点がある。主柱材の外面の塗装であれば、吐出口が目詰まりしても、吐出口の目詰まりを解消した後、同じ塗装箇所から塗装を再開することができる。
【0008】
しかし、主柱材の内面の塗装の場合には、塗装機を視認することが困難であるため、吐出口が目詰まりしたか否かを判断することが困難である。このため、吐出口が目詰まりしたまま作業を進めることによって、結果として、主柱材の内面に防錆塗料が塗装されていない箇所が生じるおそれがある。また、塗装の途中で、吐出口が目詰まりした場合には、一旦塗装機を主柱材の内部から出して、所定のメンテナンスを行った後に再度挿入することになる。しかし、その際、塗装を中断した位置を正確に把握することが困難であるため、塗装を中断した位置から塗装を再開できるとは限らない。このため、主柱材の内面に防錆塗料が塗装されていない箇所が生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決し、鋼管送電鉄塔の主柱材の内面を確実に塗装することを可能にした塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0011】
(1) 鉄塔における鋼管からなる主柱材の頂部から、当該主柱材の内部に挿入可能な本体と、前記本体に連結され、前記本体を上下方向に移動させるとともに、前記本体に水系塗料を供給するホースと、当該本体の下部に設けられ、前記ホースから供給された水系塗料を前記主柱材の内面に向けて放出するシャワー部と、前記本体の側部に設けられ、前記主柱材に当接して前記本体を前記主柱材の中心軸上に位置付けるように支持する支持脚と、を備え、前記シャワー部は、周方向に並ぶ複数の放出口を有し、当該放出口から水系塗料が放出されることを特徴とする塗装装置。
【0012】
(1)によれば、ホースを主柱材の頂部から挿入又は引き出すことによって、主柱材の本体が主柱材の内部が上下方向に移動し、更にホースを介して本体に水系塗料を供給することにより、主柱材の内面に水系塗料がシャワーコートされる。このため、従来におけるスプレー式の塗装のように放出口が目詰まりすることが低減される、主柱材の内面を確実に塗装することが可能になる。
【0013】
(2) (1)において、前記シャワー部は、前記本体から供給された水系塗料を充填する充填部と、当該充填部に接続され、先端に前記放出口が形成された複数の管状の放出部と、を備えることを特徴とする塗装装置。
【0014】
(2)によれば、水系塗料が管状の放出部を通って放出されることにより、水系塗料が放出される方向が安定する。これにより、主柱材の内面を確実に塗装することが可能になる。
【0015】
(3) (1)、(2)において、複数の放出口は、前記主柱材の径方向に対して所定角度傾いた方向を向いた状態で均等に配置されていることを特徴とする塗装装置。
【0016】
(4) (3)において、前記所定角度は、25度から35度の間であることを特徴とする塗装装置。
【0017】
(3)、(4)によれば、前記主柱材の内面に対して周方向に広い範囲で水系塗料を塗布することが可能になる。これにより、塗り残し(未塗装部分)の発生を抑えることができる。
【0018】
(5) (3)又は(4)において、前記複数の放出口は、上下方向に並ぶ二段に配置されていることを特徴とする塗装装置。
【0019】
(5)によれば、水系塗料の放出方向に角度を付けることによって水系塗料が周方向に広がるが、その一方で上下方向の水系塗料が狭くなる。そこで、複数の放出口を、上下方向に二段に配置することにより、上下方向の水系塗料の塗布範囲を広げることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鋼管送電鉄塔の主柱材の内面を確実に塗装することを可能にした塗装装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における塗装装置1の外観を示す斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3】シャワー部50の平面図である。
図4】主柱材102の内部における塗装装置1の状態を示す説明図である。
図5】塗装装置1によって主柱材102の内部に塗布された水系塗料の広がりを示す説明図である。
図6】主柱材102の内部に塗布された水系塗料の養生時の状態を示す説明図である。
図7】鋼管送電鉄塔100の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における塗装装置1の外観を示す斜視図、図2は、図1の平面図である。
【0024】
塗装装置1は、本体10と、ホース20と、支持脚30と、シャワー部50と、を備えている。
【0025】
本体10は、中空の円柱状部材によって構成されている。本体10の軸方向の一方の端面には、ホース20に連結される円筒形のホース連結部12が立設しており、本体10の軸方向の他方の端面には、シャワー部50に連結される円筒形の連結部14が立設している。また、本体10の側面における連結部14側の端部には、突起部16が3箇所に形成されている。3つの突起部16は、本体10を軸方向視した場合に、本体10の中心と隣合う突起部16、16とによる角度が120度となる位置にある。
【0026】
ホース連結部12及び連結部14の中心軸は、本体10の中心軸と同軸であり、ホース連結部12及び連結部14の内部空間は、本体10の内部空間に連通している。
【0027】
ホース20は、可撓性部材によって構成される配管部材である。ホース20の一端部は、本体10のホース連結部12に着脱自在に接続され、ホース20の他端部は、水系塗料を送り出す塗料供給装置(図示せず)に接続される。また、ホース20は、主柱材102の内部に挿入することによって本体10が主柱材102の内部を下降し、主柱材102から引き出すことによって本体10が主柱材102の内部を上昇する。このように、ホース20は、本体10の昇降に利用される。
【0028】
支持脚30は、第1シャフト32と、第2シャフト34と、キャスター36、38と、スライダ40と、を備えている。
【0029】
スライダ40は、リング状に形成されており、本体10の側面におけるホース連結部12側の端部に設けられている。本体10の側面におけるホース連結部12側の端部には、帯状の凹部10aが形成されている。スライダ40は、凹部10aに設置されており、凹部10aの幅の範囲で軸方向にスライド自在である。また、スライダ40の外周面には、突起部42が3箇所に形成されている。3つの突起部42は、スライダ40を軸方向視した場合に、スライダ40の中心と隣合う突起部42、42とによる角度が120度となる位置にある。このため、3つの突起部42と、3つの突起部16とを本体10の軸方向に対向させることができる。
【0030】
また、スライダ40は、図示していない付勢部材によって、連結部14側に付勢されている。このため、初期状態においては、スライダ40は、本体10における連結部14側に位置している。
【0031】
第1シャフト32は、2本の棒状部材からなり、一端部は突起部42に回動自在に固定され、他端部には、キャスター36が回転自在に取り付けられている。
【0032】
第2シャフト34は、2本の板状部材からなり、一端部は突起部16に回動自在に固定され、他端部には、キャスター38が回転自在に取り付けられている。
【0033】
また、第1シャフト32の長手方向の中央部及び第2シャフト34の長手方向の中央部には孔部(図示せず)が形成されている。
【0034】
第1シャフト32は、第2シャフト34の2本の板状部材の間に通され、第1シャフト32と第2シャフト34とは、中央部において交差する。この交差部位において、第1シャフト32の中央部の孔部(図示せず)と、第2シャフト34の中央部の孔部(図示せず)とが一致しており、この孔部(図示せず)に支持軸39が挿入されることにより、第1シャフト32と第2シャフト34とが互いに回動自在に連結される。この時、互いに連結している第1シャフト32及び第2シャフト34に設けられたキャスター36とキャスター38とが、本体10の軸方向に互いに対向する位置に配置される。また、図2に示すように、3組の第1シャフト32及び第2シャフト34はそれぞれ半径方向に延びており、隣合う第1シャフト32及び第2シャフト34の組が延びる方向の角度は120度となる。
【0035】
このように構成された支持脚30によれば、スライダ40が、連結部14側にスライドした場合には、3つの支持脚30が同時に本体10の半径方向に沿って延びていく。この際、キャスター36及びキャスター38は、本体10の半径方向に沿って本体10から遠ざかりながら、本体10の軸方向に互いに近づいていく。スライダ40がホース連結部12側にスライドした場合には、3つの支持脚30が同時に本体10側に縮んでいく。この際、キャスター36及びキャスター38は、本体10の半径方向に沿って本体10に近づきながら、本体10の軸方向に離間していく。初期状態においては、スライダ40が連結部14側に位置するため、支持脚30は、最も伸びた状態にあり、キャスター36及びキャスター38は、本体10から最も離れた位置にある。
【0036】
シャワー部50は、水系塗料をシャワー状に放出するものであり、連結部14に固定されている。
【0037】
図3は、シャワー部50の平面図である。シャワー部50は、充填部に相当する円柱部52と、放出部に相当する第1シャワー部54及び第2シャワー部56と、を備えている。
【0038】
円柱部52は、中空の円柱部材からなり、片方の端面の中央部が連結部14に固定されている。
【0039】
第1シャワー部54及び第2シャワー部56は、直径2mm〜3mm程度の細い管状部材からなる。
【0040】
円柱部52の上部側面には、第1シャワー部54の基端部が接続されており、先端部には放出口54aが形成されている。第1シャワー部54は、円柱部52の半径方向に対して若干斜め方向を向いている。また、円柱部52の上部側面には、複数の第1シャワー部54が、円柱部52の上部側面を周回するように等間隔に並べて配置されている。
【0041】
円柱部52の下部側面には、第2シャワー部56の基端部が接続されており、先端部には放出口56aが形成されている。放出口56aは、円柱部52の半径方向に対して若干斜め方向を向いている。また、円柱部52の下部側面には、複数の第2シャワー部56が、円柱部52の下部側面を周回するように等間隔に並べて配置されている。このように、シャワー部50は、第1シャワー部54と第2シャワー部56とが上下方向に配置された二段構造である。
【0042】
連結部14、第1シャワー部54及び第2シャワー部56の内部空間は、円柱部52の内部空間に連結している。
【0043】
本実施形態によれば、円柱部52上部には、第1シャワー部54及び第2シャワー部56がそれぞれ16本接続されている。16本の第1シャワー部54の基端の位置は、円柱部52の中心に対して22.5度おきに設定されている。また、第1シャワー部54の軸方向は、半径方向に対して30度傾いている。16本の第2シャワー部56の基端の位置も同様に、円柱部52の中心に対して22.5度おきに設定されている。また、第2シャワー部56の軸方向は、半径方向に対して30度傾いている。
【0044】
また、第2シャワー部56は、第1シャワー部54に対して11.25度回転した位置に配置されている。このため、図3に示すように、円柱部52を平面視した場合に、第1シャワー部54と第2シャワー部56の計32本の管状部材が、11.25度おきに均等に配置されている。
【0045】
このように構成された塗装装置1によれば、塗料供給装置(図示せず)が駆動して水系塗料が送り出されると、水系塗料は、ホース20を介して本体10に供給され、更に、本体10から連結部14を介して、シャワー部50に供給される。シャワー部50の円柱部52内に水系塗料が充填されると、第1シャワー部54及び第2シャワー部56の先端から水系塗料が、円柱部52の半径方向に対して30度の方向に放出される。
【0046】
図4は、主柱材102の内部における塗装装置1の状態を示す説明図である。塗装装置1が、主柱材102の内部に挿入された場合、第1シャワー部54の放出口54a及び第2シャワー部56の放出口56aが主柱材102の内面に対向し、キャスター36及びキャスター38が主柱材102の内面に当接する。このとき、塗装装置1の本体10は、3組の支持脚30によって中心に主柱材102の中心に向かって押圧されるため、主柱材102の中心に位置付けられる。
【0047】
次に、本実施形態の塗装装置1を用いた、主柱材102の内面の塗装作業について説明する。塗装作業においては、塗装工程と、養生工程とが行われる。
【0048】
[塗装工程]
塗料には、水系塗料が適用され、例えば、亜鉛めっき面への付着性、耐湿性に優れる水性エポキシ樹脂系塗料が適用可能である。
【0049】
まず、作業員は、塗装装置1と、ホース20と、水系塗料が貯えられたタンクと、塗料供給装置(図示せず)と、滑車(図示せず)と、養生において使用する負圧ポンプ60(図6参照)と、作業用の工具とを持参して鋼管送電鉄塔100を上る。ここで、ホース20の長さは主柱材102よりも長いため、ホース20における主柱材102以上の長さ分だけ、塗料供給装置(図示せず)を主柱材102の頂部よりも下方に配置することが可能である。したがって、作業員は、水系塗料が貯えられたタンクと、塗料供給装置(図示せず)とについては、主柱材102の頂部まで持ち運ぶ必要は無い。
【0050】
次に、作業員は、主柱材102の頂部に固定されている蓋部(図示せず)取り外して、主柱材102の頂部を開放する。次に、作業員は、ホース20を引っ掛ける滑車(図示せず)を主柱材102の頂部に設置する。次に、作業員は、塗料供給装置(図示せず)に水系塗料を充填し、ホース20の基端部を塗料供給装置(図示せず)に接続する。更に、作業員は、ホース20を滑車(図示せず)に引っ掛け、ホース20の先端部を塗装装置1のホース連結部12に固定する。次に、作業員は、キャスター36及びキャスター38を本体10側に寄せて3つの支持脚30を折り畳み、塗装装置1をコンパクトな状態にしてから、シャワー部50を下方に向けて塗装装置1を主柱材102の内部に挿入し、ホース20とともに塗装装置1を降ろして行く。
【0051】
ここで、主柱材102は、下部から頂部に向かって内径が小さくなり、かつ厚さが薄くなるように設計されている。このため、塗装装置1の支持脚30は、主柱材102の下方に移動するに従って半径方向に広がっていき、キャスター36及びキャスター38が主柱材102の内面に当接した状態で維持される。
【0052】
また、地上の作業員は、主柱材102の最下部に形成されている水抜き孔102a(図5参照)を介して、塗装装置1が主柱材102の最下部に到達したか否かを確認する。塗装装置1が主柱材102の最下部に到達した場合には、塗装装置1を降ろす作業を停止するように、主柱材102の頂部の作業員に伝達する。
【0053】
そして、主柱材102の頂部の作業員は、塗料供給装置(図示せず)を駆動させ、ホース20を手動で上方に引き上げる。これにより、塗装装置1は、シャワー部50から水系塗料を放出して主柱材102の内面を塗布しながら、上方に移動する。
【0054】
本実施形態においては、シャワー部50における第1シャワー部54の放出口54a及び第2シャワー部56の放出口56aが、半径方向に対して30度傾いた方向を向いているため、第1シャワー部54及び第2シャワー部56から放出された塗料は、内面に対して斜めから衝突することにより、内面に弾かれることなく、内面に沿って横方向(周方向)に滑りながら塗り広がる。また、複数の放出口54a、56aは、主柱材102の内面に対向しかつ環状に並んでいるため、第1シャワー部54及び第2シャワー部56からの塗料の放出によって、内面に沿って横方向に滑りながら塗り広がった部分と、隣の第1シャワー部54及び第2シャワー部56から塗料の放出において内面に衝突した部分とが重なり合う。これにより、塗り残し(未塗装部分)の発生を抑えることができる。
【0055】
そして、主柱材102の頂部の作業員は、塗装装置1を主柱材102の頂部まで引き上げた時点で塗料供給装置(図示せず)を停止させ、塗装装置1を主柱材102の内部から取り出し、滑車を取り外す。これにより、塗装工程が終了する。
【0056】
[養生工程]
次に、養生工程について、図5を参照しながら説明する。
主柱材102の頂部の作業員は、主柱材102の頂部に、排気部に相当する負圧ポンプ60を設置する。この負圧ポンプ60は、主柱材102の内部の空気を吸引して外部に排気するものである。この際、主柱材102の頂部には、外部の空気が主柱材102の内部に流入することを防止するため、空気漏入防止カバーを設置することが望ましい。
【0057】
また、地上の作業員は、水抜き孔102aを清掃して、水抜き孔102aから主柱材102の内部に空気が流通できるようにしておく。
【0058】
そして、負圧ポンプ60を駆動させることにより、主柱材102の内部の空気が負圧ポンプ60によって吸引されて外部に排出される。このため、水抜き孔102aから主柱材102の内部に流入した空気が、主柱材102の内部を上昇して、主柱材102の頂部から排出される、という空気流が主柱材102の内部に形成される。このような環境下で所定時間、主柱材102の内面に塗布された塗料の養生が行われる。
【0059】
養生中においては、作業員は、他の主柱材102の頂部に移動して、他の主柱材102の内面の塗装を行うとよい。養生後、主柱材102の頂部から負圧ポンプ60を取り外し、蓋部(図示せず)を取り付けて、主柱材102の頂部を閉鎖する。これにより、養生工程が終了する。この塗装工程と養生工程とを、4本の主柱材102に施すことによって塗装作業が終了する。
【0060】
通常、主柱材102の内部は空気の循環がほとんどないが、上述したように、主柱材102の頂部に負圧ポンプ60を設置して、主柱材102の内部の空気を強制的に循環させることにより、塗料の乾燥・硬化を促進することが可能になる。また、塗料に含まれる、例えばシンナーのような成分が揮発した場合に、そのシンナーを主柱材の頂部から放出することが可能になる。
【0061】
以上説明したように構成された本実施形態によれば、主柱材102の内面に水系塗料がシャワーコートにされるため、スプレー式で水系塗料を塗布するよりも、放出口54a、56aの目詰まりが低減され、外部から視認することが困難な主柱材102の内面を確実に塗装することが可能になる。
【0062】
つまり、スプレー式で水系塗料を塗布した場合には、圧縮空気とともにノズルから霧状に噴出した塗料の一部がノズルの先端部付近に付着し、そのまま硬化することによって目詰まりを起こすおそれがある。特に、長時間連続してスプレーした場合には多くの塗料の一部がノズルの先端部付近に付着するため、目詰まりを起こし易くなる。それに対し、本実施形態によれば、第1シャワー部54及び第2シャワー部56からの水系塗料の放出に圧縮空気を用いておらず、水系塗料は、霧状ではなく、液体の状態でまとまって直線に近い放物線を描くように放出される。このため、水系塗料が放出口54a、56aの周囲に飛散することがなくなり、水系塗料が放出口54a、56aの周囲に付着することによって目詰まりが発生することが防止できる。
【0063】
また、水系塗料は、塗装後、水分が水蒸気となり蒸発するが、水蒸気は空気よりも密度が小さいため上方(主柱材102の頂部)に向かって揮散するという性質を有している。ここで、一般的に用いられている有機溶剤系塗料の場合には、主柱材102の下部に有機溶剤蒸気が沈降・滞留したり、塗料の硬化不良・流出(ベーパーウォッシュ現象)が生じたりするおそれがある。本実施形態においては、水系塗料を主柱材102の内部に塗布することにより、これらの不具合の発生を防止することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、水系塗料が管状の第1シャワー部54及び第2シャワー部56を通って放出されることにより、水系塗料は拡散せずにまとまって放出され、しかも、放出方向が安定する。また、放出口54a、56aの周囲に塗料が付着しにくくなるため、放出口54a、56aが目詰まりしにくくなる。これにより、主柱材102の内面を確実に塗装することが可能になる。
【0065】
また、本実施形態によれば、複数の第1シャワー部54及び第2シャワー部56の放出口54a、56aは、主柱材102の径方向に対して約30度傾いた方向を向いているため、主柱材102の内面に対して周方向に広い範囲で水系塗料を塗布することが可能になる。
【0066】
つまり、複数の第1シャワー部54及び第2シャワー部56の放出口54a、56aから水系塗料が、主柱材102の径方向に放出された場合には、水系塗料が主柱材102に衝突した部位を中心とした略円形の領域に塗布される。このため、水系塗料の周方向への広がりが小さく、下方に流下する水系塗料の量が多くなる。これにより、隣の複数の第1シャワー部54及び第2シャワー部56による水系塗料の塗布範囲と重ならない部分が生じ、その結果、塗り残し(未塗装部分)が発生するおそれがある。それに対し、本実施形態によれば、放出口54a、56aに角度を設けているため、主柱材102の内面に対して周方向に広い範囲で水系塗料を塗布することが可能になり、その結果、隣の複数の第1シャワー部54及び第2シャワー部56による水系塗料の塗布範囲と重なる領域が大きくなるため、塗り残し(未塗装部分)の発生を抑えることができ、塗装ムラを低減することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、複数の第1シャワー部54及び第2シャワー部56が上下方向に並ぶ二段に配置されており、塗料の放出方向が、主柱材102の半径方向に対して約30度傾いた方向を向いているため、水系塗料の放出方向に角度を付けることによって水系塗料が周方向に広がる。しかしその一方で上下方向の水系塗料の塗布範囲が狭くなる。そこで、複数の放出口を、上下方向に二段に配置することにより、上下方向の水系塗料の塗布範囲を広げることが可能になり、塗り残し(未塗装部分)の発生をより確実に抑えることが可能になる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態によれば、第1シャワー部54及び第2シャワー部56の放出口54a、56aは、半径方向に対して30度傾いているが、30度に限るものではなく、塗料を放出する圧力が比較的高い場合には、35度と角度を大きくし、塗料を放出する圧力が比較的低い場合には、25度と角度を小さくするなど、複数種類のシャワー部50を用意して、塗料を放出する圧力や主柱材102の内径等に応じて、適宜選択できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 塗装装置
10 本体
10a 凹部
12 ホース連結部
14 連結部
16 突起部
20 ホース
30 支持脚
32 第1シャフト
34 第2シャフト
36、38 キャスター
39 支持軸
40 スライダ
42 突起部
50 シャワー部
52 円柱部
54 第1シャワー部
54a 放出口
56 第2シャワー部
56a 放出口
60 負圧ポンプ
100 鋼管送電鉄塔
102 主柱材
102a 水抜き孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7