特許第6247145号(P6247145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247145
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】乗用田植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20171204BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A01C11/02 320A
   A01C11/02 322C
   A01C11/02 341
   A01C11/02 342S
   A01B63/10 E
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-96742(P2014-96742)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-213443(P2015-213443A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(72)【発明者】
【氏名】土井 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 彬
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−267614(JP,A)
【文献】 特開2001−245511(JP,A)
【文献】 特開2014−068571(JP,A)
【文献】 特開2006−081523(JP,A)
【文献】 特開2008−263884(JP,A)
【文献】 実開昭63−114115(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
A01B 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な走行部の後方に、苗を田面に植え付け可能とした植付部を、昇降機構部を介して昇降自在に取り付けるとともに、植付部の直前方に田面を整地する整地装置を上下位置調節可能に取り付け、植付部に設けたフロート支持軸にフロートを支持した乗用田植機であって、
整地装置は、
田面に接地して整地機能を果たす整地手段と、
田面から整地手段までの高さを検出する整地高さ検出手段と、
整地手段を上下位置調節する上下位置調節手段と、
整地高さ検出手段の検出結果に基づいて、上下位置調節手段により整地手段を上下位置調節することで、整地手段の整地高さを制御する制御手段と、
を備え
整地高さ検出手段は、所定の軸を中心として上下に回動するように整地手段に支持されるとともに、田面上を摺動するように設けられた検出本体を有し、検出本体の上下の回動角度を計測することによって、田面の高さを検出するように構成したものであることを特徴とする乗用田植機。
【請求項2】
整地高さ検出手段は、機体の左右幅の中央に位置する仮想前後延伸線に近接させて配置するとともに、整地手段の直前方ないしは直後方に配置していることを特徴とする請求項1記載の乗用田植機。
【請求項3】
上下位置調節手段は、
左右方向に延伸させて正逆回転自在となした回転軸と、
回転軸の両端部に各上端部を連動連結して回転軸の正逆回転に連動して上下動する左右一対の上下動機構と、
両上下動機構の各下端部間に架設した前記整地手段を上下位置調節するために回転軸を正逆回転させるアクチュエータと、
を具備することを特徴とする請求項1又は2記載の乗用田植機。
【請求項4】
植付部は、前記制御手段を介して前記昇降機構部により田面から植付部までの高さである植付部高さを制御可能とするとともに、その植付部高さの制御には、前記制御手段を介して前記整地高さ検出手段の検出結果がフィードバックされるようにしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の乗用田植機。
【請求項5】
整地装置の整地高さ制御感度は、植付部の植付部高さ制御感度よりも鈍感に設定していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の乗用田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機、詳しくは、上下位置調節可能となした整地装置を具備して、その整地装置に設けた整地手段に整地高さを検出する整地高さ検出手段を設けた乗用田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用田植機として、特許文献1〜3に開示されたものがある。すなわち、特許文献1〜3には、自走可能となした走行部の後方に苗を圃場に植え付け可能とした植付部を昇降自在に取り付けるとともに、植付部の直前方に圃場面を整地する整地装置を上下位置調節可能に取り付けて、整地された圃場面に苗を植え付けることができるようにした乗用田植機が開示されている。
【0003】
そして、これらの乗用田植機では、植付作業位置まで下降させた植付部を上下位置調節した際には、その上下位置調節に連動して整地装置も上下位置調節されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−81523
【特許文献2】特開2007−267614
【特許文献3】特開2008−263884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した乗用田植機では、整地装置が植付部の上下位置調節に付随して上下位置調節されることになっているが、植付部が走行部に昇降機構部を介して昇降自在に取り付けられているために、植付部は走行部のピッチング等の影響を受けやすくなっている。そのために、走行部の影響を受けやすい植付部の上下位置調節に付随して上下位置調節される整地装置では、適切に整地機能を果たし得ない(整地装置が有する本来の整地性能を発揮し得ない)という不具合があった。
【0006】
そこで、本発明は、植付部とは独立して整地装置の整地高さを制御可能とすることで、整地装置が有する本来の整地性能を発揮させることができる乗用田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、自走可能な走行部の後方に、苗を田面に植え付け可能とした植付部を、昇降機構部を介して昇降自在に取り付けるとともに、植付部の直前方に田面を整地する整地装置を上下位置調節可能に取り付け、植付部に設けたフロート支持軸にフロートを支持した乗用田植機であって、整地装置は、田面に接地して整地機能を果たす整地手段と、田面から整地手段までの高さを検出する整地高さ検出手段と、整地手段を上下位置調節する上下位置調節手段と、整地高さ検出手段の検出結果に基づいて、上下位置調節手段により整地手段を上下位置調節することで、整地手段の整地高さを制御する制御手段と、を備え、整地高さ検出手段は、所定の軸を中心として上下に回動するように整地手段に支持されるとともに、田面上を摺動するように設けられた検出本体を有し、検出本体の上下の回動角度を計測することによって、田面の高さを検出するように構成したものであることを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明では、植付部とは独立して整地装置の整地高さを制御可能としている。すなわち、制御手段が、整地高さ検出手段の検出結果に基づいて、上下位置調節手段により整地手段を上下位置調節することで、整地手段の整地高さを高精度に制御するようにしている。そのため、整地装置が有する本来の整地性能を十分に発揮させることができて、精度の高い整地作業が可能となる。また、植付部高さの設定(植深設定)等の影響を受けないため、植付部高さに連動するための部品等が不要となって部品点数を削減できる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明であって、整地高さ検出手段は、機体の左右幅の中央に位置する仮想前後延伸線に近接させて配置するとともに、整地手段の直前方ないしは直後方に配置していることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明では、整地高さ検出手段を、機体の左右幅の中央に位置する仮想前後延伸線に近接させて配置するとともに、整地手段の直前方ないしは直後方に配置しているため、整地高さ検出手段が走行部や植付部のローリングの影響を受け難くすることができる。したがって、この点からも精度の高い整地作業が可能となる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明であって、上下位置調節手段は、左右方向に延伸させて正逆回転自在となした回転軸と、回転軸の両端部に各上端部を連動連結して回転軸の正逆回転に連動して上下動する左右一対の上下動機構と、両上下動機構の各下端部間に架設した前記整地手段を上下位置調節するために回転軸を正逆回転させるアクチュエータと、を具備することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明では、制御手段に制御されたアクチュエータにより回転軸部を正逆回転させることで、左右一対の上下動機構を介して整地手段を上下位置調節することができて、整地高さを構造簡易にして堅実に制御することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の発明であって、植付部は、前記制御手段を介して前記昇降機構部により田面から植付部までの高さである植付部高さを制御可能とするとともに、その植付部高さの制御には、前記制御手段を介して前記整地高さ検出手段の検出結果がフィードバックされるようにしていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明では、先行する整地高さ検出手段の検出結果が後続の植付部の植付部高さ制御にフィードバックされるため、先行する整地高さ検出手段が土塊や夾雑物を検出した場合には、その検出結果が後続の植付部の植付部高さ制御にフィードバックされて、植付部高さ制御ではその検出結果が外乱と認知されるようにすることで、突発的な田面の起伏に対応して逐一植付部が植付部高さ制御されるのを防止することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の発明であって、整地装置の整地高さ制御感度は、植付部の植付部高さ制御感度よりも鈍感に設定していることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明では、整地装置の整地高さ制御感度を植付部の植付部高さ制御感度よりも鈍感に設定することで、土塊や夾雑物による突発的な田面の起伏に対応して逐一整地高さ制御されるのを防止できる。その結果、適正な整地高さを維持することができる。ここで、制御手段が一定時間内に取得する整地高さ検出手段の検出結果からそれらの移動平均を算出して、その算出した移動平均に基づいてアクチュエータを制御するようにすることができる。この時の移動平均区間(一定時間)を長目に設定することで、整地高さ制御感度を鈍感に設定することができる。また、整地高さ検出手段の検出信号をローパスフィルタに通してカットオフ周波数(遮断周波数)を小さくし、小さくしたカットオフ周波数に基づいて制御手段がアクチュエータを制御するようにすることができる。この時のカットオフ周波数を小さめに設定することで、整地高さ制御の感度を鈍感に設定することができる。つまり、整地高さ制御感度を、制御ゲインが小側となる鈍感側に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、植付部とは独立して整地装置の整地高さを制御可能とすることで、整地装置が有する本来の整地性能を発揮させることができる乗用田植機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態としての田植機の左側面図。
図2】植付部の左側面説明図。
図3】植付部の正面図。
図4】整地装置の平面説明図。
図5】整地装置の斜視説明図。
図6】第1実施形態としての整地高さ検出手段の斜視説明図。
図7】第2実施形態としての整地高さ検出手段の斜視説明図。
図8】第3実施形態としての整地高さ検出手段の斜視説明図。
図9】上下位置調節手段の左側面説明図。
図10】上下位置調節手段の左側面動作説明図。
図11】上下位置調節手段の平面説明図。
図12】アクチュエータの取付状態(a)と、連動体の取付状態(b)と、セクタギヤの取付状態(c)を示す分解平面説明図。
図13】制御ブロック図。
図14】植付部の左側面説明図。
図15】他実施形態としての走行部の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。すなわち、図1に示すAは、本実施形態に係る田植機であり、田植機Aは、自走可能な走行部1の後方に、苗Nを田面G(図14参照)に植え付け可能とした植付部2を、昇降機構部3を介して昇降自在に取り付けるとともに、植付部2の直前方に田面Gを整地する整地装置4を上下位置調節可能に取り付けている。
【0020】
走行部1は、図1に示すように、下部構成体10と、その下部構成体10の上に配設した上部構成体11とから構成している。下部構成体10は、左右一対の前輪12,12を取り付けたフロントアクスルケース12a(図15参照)と、左右一対の後輪14,14を取り付けたリヤアクスルケース15とを、前後方向に一定の間隔をあけて配置するとともに、両ケース12a,15を前後方向に延伸する連結支持機体16を介して連結している。フロントアクスルケース上にはミッションケース18を連動連設して、ミッションケース18から前方へ延出させて前部支持機体17を形成している。ミッションケース18とリヤアクスルケース15は、伝動シャフト19を介して連動連結している。
【0021】
上部構成体11は、前部支持機体17上にエンジン20を搭載し、エンジン20とミッションケース18とを連動連結している。エンジン20とその直後方に配置したステアリングシャフト21は、ボンネット22により被覆して、ステアリングシャフト21の上端部にステアリングホイール23を取り付けている。ボンネット22の周囲及びその後部には平坦なステップ部24を張設しており、ステップ部24から後方へ座席支持台25を一体に連設している。26は、座席支持台25上に設けた座席である。27は、伝動シャフト19の後部に設けるとともに、リヤアクスルケース15の前壁に取り付けた伝動機構ケースである。伝動機構ケース27は、エンジン20から伝動シャフト19を介して伝達される動力を、後述する整地装置4に伝達するようにしている。
【0022】
そして、エンジン20から動力をミッションケース18→フロントアクスルケース及び伝動シャフト19→リヤアクスルケース15に伝達して、前・後車輪12,12,14,14の四輪駆動が行えるようにしている。なお、上部構成体11には運転部1と植付部2をそれぞれ操作、さらには、植付部2を昇降操作するための操作具(図示せず)を設けている。
【0023】
植付部2は、図1及び図2に示すように、植付ミッションケース29から左右両側方に伝動軸ケース38,38が延設されて、伝動軸ケース38,38から後方に向けて複数(本実施形態では四つ)の植付伝動ケース30がそれぞれ延設されており、植付伝動ケース30は左右方向に適宜の間隔をとって配置されている。植付ミッションケース29の前部には、植付フレーム31を前上方へ向けて立設して、植付フレーム31に苗載台32を植付ミッションケース29の上方にて左右往復移動自在に取り付けている。
【0024】
植付伝動ケース30の後部にはロータリケース33の中央部を回転軸39を介して回転可能に取り付け、ロータリケース33の両端部に植付爪34,34を取り付けている。植付伝動ケース30等の下方には、センサーフロートであるセンターフロート35と、その左右側方にそれぞれ二つずつサイドフロート36を配置して、これらのフロート35,36により植付伝動ケース30等を田面G上に支持している。37は植付伝動シャフトであり、植付伝動シャフト37は、走行部1の後端部に設けた動力取出軸(図示せず)と、植付ミッションケース29から前方へ突出させた入力軸(図示せず)との間に介設している。
【0025】
そして、走行部1から植付伝動シャフト37を介して植付ミッションケース29に動力を取り込んで、植付ミッションケース29から伝動軸ケース38を介して植付伝動ケース30に動力を伝達し、植付伝動ケース30に取り付けたロータリケース33を回転させることで、ロータリケース33の両端部に取り付けた植付爪34,34により苗載台32上に載置した苗マットMから苗N(苗株)を切削して、田面Gに苗N(苗株)を植え付けるようにしている(図14参照)。
【0026】
昇降機構3は、図1及び図2に示すように、走行部1のリヤアクスルケース15上に立設した縦フレーム28と、植付部2の植付フレーム31との間に、前後方向に延伸するトップリンク40及び前後方向に延伸する左右一対のロワリンク41,41を介設し、両ロワリンク41,41の前部から上方へ突出させて形成した連結片42,42の上端部と、走行部1の連結支持機体16との間に昇降シリンダ43を介設して構成している。そして、昇降シリンダ43を伸縮作動させることによりロワリンク41,41及びトップリンク40を介して植付部2を昇降させるようにしている。
【0027】
整地装置4は、荒れた枕地を整地するための装置であり、図1図3に示すように、植付部2の植付フレーム31に取り付けている。すなわち、整地装置4は、田面Gに接地して整地機能を果たす整地手段50と、田面Gから整地手段50までの高さを検出する整地高さ検出手段51と、整地手段50を上下位置調節する上下位置調節手段52と、整地高さ検出手段51の検出結果に基づいて、上下位置調節手段52により整地手段50を上下位置調節することで、整地手段50の整地高さを制御する制御手段53と、を備えている。整地高さ検出手段51は、整地手段50の前部ないしは整地手段50の付近に配設している検出手段である。制御手段53は走行部1の適宜箇所に配設している。整地手段50と、走行部1の伝動機構ケース27との間には、整地伝動シャフト54を介設している。そして、エンジン20からの動力を伝動シャフト19→伝動機構ケース27→整地伝動シャフト54→整地手段50に伝達して、整地手段50により田面Gを整地するようにしている。
【0028】
このように構成して、植付部2とは独立して整地装置4の整地高さを制御可能としている。すなわち、制御手段53が、整地高さ検出手段51の検出結果に基づいて、上下位置調節手段52により整地手段50を上下位置調節することで、整地手段50の整地高さを高精度に制御するようにしている。そのため、整地装置4が有する本来の整地性能を十分に発揮させることができて、精度の高い整地作業が可能となる。また、後述する植付部高さの設定(植深設定)等の影響を受けないため、植付部高さに連動するための部品等が不要となって部品点数を削減できる。
【0029】
整地装置4を構成する各手段50〜53をより具体的に説明する。すなわち、整地手段50は、図3図5に示すように、ロータギヤケース60と、ロータギヤケース60の左右側方に配置した一対の整地ロータ61,61を具備している。ロータギヤケース60内には、前方へ軸線を向けた入力軸60aと、後外側方へ軸線を向けた左・右側出力軸60b,60cを配設して、入力軸60aの先端部(前端部)に整地伝動シャフト54の後端部を着脱自在に連結するとともに、入力軸60aの基端部(後端部)にギヤを介して左・右側出力軸60b,60cの基端部を連動連結している。整地ロータ61は、図5に示すように、左右方向に軸線を向けて延伸するロータ軸62の外周面に多数のロータ形成片63を同軸的に取り付けて構成している。ロータ形成片63は、四角形筒状に形成したロータ軸62の外周面に外嵌するボス部64と、ボス部64の外周面から半径方向に突出させて形成するとともに、円周方向に等間隔をあけて形成した複数本(本実施形態では6本)の支持片65と、各支持片65の先端部に軸線方向に延伸させて一体に形成した整地片66とから形成している。左・右側出力軸60b,60cの先端部に、それぞれロータ軸62,62の内側端部を連動連結して、各ロータ軸62,62を各出力軸60b,60cの軸線の延長線上に配置している。つまり、ロータ軸62,62は、ロータギヤケース60を中心にして後外方へ向けて延伸させている。
【0030】
そして、左右に隣接する整地片66同士は、軸線方向に整合させて配置し、ロータ軸62に連動してロータ軸62の外周廻りに一体的に回転して、田面Gを整地するようにしている。ロータギヤケース60の上壁には、板状の連結体67を重合状態に取り付け、連結体67の後部に、左側のロータ軸62に平行に沿わせて後左側方へ伸延する円管状の左側のフレーム68と、右側のロータ軸62に平行に沿わせて後右側方へ向けて伸延する円管状の右側のフレーム68の内側端部を連設している。各フレーム68には整地ロータ61の上部及び後部を覆うロータカバー69を取り付けている。
【0031】
整地高さ検出手段51は、機体である田植機Aの左右幅の中央に位置する仮想前後延伸線L(図4参照)に近接させて配置するとともに、整地手段50の直前方(第1実施形態)ないしは直後方(第2実施形態)に配置している。そのため、整地高さ検出手段51が走行部1や植付部2のローリングの影響を受け難くすることができる。したがって、この点からも精度の高い整地作業が可能となる。
【0032】
より具体的に説明すると、田植機Aの左右幅の中央に位置する仮想前後延伸線L上に、整地手段50のロータギヤケース60を配置している。そして、本実施形態の第1実施形態としての整地高さ検出手段51は、図4図6に示すように、ロータギヤケース60に近接させて配置するとともに、ロータギヤケース60の直前方に配置している。
【0033】
すなわち、第1実施形態としての整地高さ検出手段(整地高さセンサ)51は、左側フレーム68の内側端部から円管状の支持アーム68aを前方へ向けて延出し、支持アーム68aの前端部にポテンショメータ等のセンサ本体70を取り付け、センサ本体70に検出体71を取り付けて構成している。検出体71は、センサ本体70から左側方に支軸72を突出させて、支軸72に筒状のボス部73を外嵌して取り付け、ボス部73から後下方へ向けて検出アーム74を延出して、検出アーム74の後端部に横長四角形板状の取付板75を上下方向に面を向けて取り付け、取付板75に鋤状の検出本体76の前端縁部を取り付けて形成している。検出本体76は、側面視L状に折曲させた複数本(本実施形態では6本)の棒状の検出本体形成片77を左右方向に間隔をあけて配置し、検出本体形成片77の前端縁部に、上下方向に面を向けて左右方向に横長板状に形成した一体連結片78を一体に連結して形成している。なお、検出本体76の形状は、必ずしも本形状に限られるものではない。
【0034】
そして、取付板75の下面に一体連結片78の上面を重合させて取付ボルト79により取り付けている。検出本体76は、後半部が田面Gに線接触状に接地するとともに、田面G上を摺動するようにしている。そして、センサ本体70により検出本体76の上下方向の揺動角度を計測することによって、検出本体76と田面Gの位置関係を検出することができて、田面Gの実高さ(苗Nを植え付ける田面高さ)を検出することができるようにしている。
【0035】
このように、検出本体形成片77を細長く形成することで、田面G及び田面水Wとの接触面積を小さくして、田面Gに対する検出本体形成片77の抵抗を低減し、検出本体形成片77が田面Gから離れ難くなるようにしている。そして、検出本体形成片77を複数の棒体で構成して熊手形状に形成することによって、検出本体形成片77に夾雑物が噛み込まれるのを防いでいる。検出本体形成片77を構成する材料としては針金等、所望の長さに対して形状を保持できる程度の強度を有するものが適している。検出本体形成片77の長さは、例えば、検出本体形成片77が田面Gに接触した状態で、田面水Wよりも上方に延出される程度が適している。なお、検出アーム74には、検出本体76の下方への回動角度を規制する規制部材(図示せず)を設けて、検出本体76の回動範囲を制限することができる。そうすることで、植付部2を上昇させた際に検出本体76を確実に地面から離隔させることができる。
【0036】
また、本実施形態の第2実施形態としての整地高さ検出手段51は、図7に示すように、第1実施形態としての整地高さ検出手段51と基本的構造を同じくし、ロータギヤケース60に近接させて配置するとともに、ロータギヤケース60の直後方に配置している点で異なる。
【0037】
すなわち、ロータギヤケース60の上壁に取り付けた連結体67の後部に、取付ブラケット140を介して整地高さ検出手段51を取り付けている。取付ブラケット140には、ポテンショメータ等のセンサ本体70を取り付け、センサ本体70に検出体71を取り付けて構成している。検出体71は、センサ本体70から右側方に支軸72を突出させて、支軸72に筒状のボス部73を外嵌して取り付け、ボス部73から後下方へ向けて検出アーム74を延出して、検出アーム74の後端部に横長四角形板状の取付板75を上下方向に面を向けて取り付け、取付板75に鋤状の検出本体76の前端縁部を取り付けて形成している。このようにして、第2実施形態としての整地高さ検出手段51は、ロータギヤケース60の直背後に配設して、田面Gの実高さ(苗Nを植え付ける田面高さ)を検出することができるようにしている。
【0038】
また、本実施形態の第3実施形態としての整地高さ検出手段51は、図8に示すように、第2実施形態としての整地高さ検出手段51と同様にロータギヤケース60の直背後に配設しているが、検出体71を板状に形成している点で異なる。
【0039】
すなわち、ロータギヤケース60の上壁に取り付けた連結体67の後部に、取付ブラケット140を介して整地高さ検出手段51を取り付けている。取付ブラケット140の左側部には、ポテンショメータ等のセンサ本体70を取り付け、センサ本体70に検出体71を取り付けて構成している。検出体71は、センサ本体70から右側方に支軸72を突出させて、支軸72に筒状のボス部73を外嵌して取り付け、ボス部73に側面視L状に折曲させて形成した検出本体76の上端縁部を連設している。支軸72から垂下された検出本体76は、後半部が田面Gに面接触状に接地するとともに、田面G上を摺動するようにしている。そして、センサ本体70により検出本体76の上下方向の揺動角度を計測することによって、検出本体76と田面Gの位置関係を検出することができて、田面Gの実高さ(苗Nを植え付ける田面高さ)を検出することができるようにしている。
【0040】
上下位置調節手段52は、図5,図9図11に示すように、左右方向に延伸させて正逆回転自在となした回転軸80と、回転軸80の両端部に各上端部を連動連結して回転軸の正逆回転に連動して上下動する左右一対の上下動機構81と、両上下動機構81の各下端部間に架設した前記整地手段50を上下位置調節するために回転軸80を正逆回転させるアクチュエータとして正逆回転駆動可能な電動モータ82と、を具備している。このように、制御手段53に制御された電動モータ82により回転軸80を正逆回転させることで、左右一対の上下動機構81を介して整地手段50を上下位置調節することができて、整地高さH1(図2参照)、つまり、田面Gから整地ロータ61(例えば、ロータ軸62の軸芯の位置)までの高さを構造簡易にして堅実に制御することができる。なお、アクチュエータとしては、電動モータ82に限らず、電動式や油圧式のシリンダ等を適宜採用することができる。
【0041】
より具体的に説明すると、図3にも示すように、植付フレーム31の一部を形成する左右一対の上下延伸片31a,31aの中途部間に左右延伸片31bを横架し、左右延伸片31bの中途部に左右一対の軸支持片31c,31cを垂下して、両軸支持片31c,31c間に、左右方向に軸線を向けた回転軸80を、その軸線廻りに回転自在に横架している。左右一対の上下動機構81,81は、回転軸80の左右側部に前方へ向けて突出する左右一対の上アーム84,84の基端部を取り付ける一方、上下延伸片31a,31aの下部間に横架した下部左右延伸片31dに左右一対の枢支片83,83を前方へ突設し、各枢支片83,83に前方へ向けて突出する左右一対の下アーム85,85の基端部を枢支している。各上アーム84,84の先端部(前端部)には、上下方向に延伸する左右一対の上下動ロッド86,86の上端部を連結するとともに、各下アーム85,85の先端部(前端部)には、各上下動ロッド86,86の下部を連結している。そして、両上下動ロッド86,86は、その上下摺動動作が平行リンクを形成する上アーム84,84と下アーム85,85の上下揺動動作に連動するように、上アーム84,84と下アーム85,85に支持されている。各上下動ロッド86,86の下端部にはリング状の枢支片87,87を設けて、各枢支片87,87に各ロータ軸62の外側部を貫通させて枢支している。88は後輪14により跳ね上げられた泥がその後方に配置された各フロート35,36,36上に載るのを防止するための防泥板、89はフレーム68と上下動ロッド86との間に介設した補強用の斜張材である。
【0042】
回転軸80の右側部には、筒状のセクタギヤボス部90を回転自在に外嵌し、セクタギヤボス部90の外周面にセクタギヤ91の基端部を連設するとともに、セクタギヤ91の前端縁部を前方へ膨出させて、セクタギヤボス部90の軸芯を中心とする仮想同一円周上にセクタギヤ91の歯部を配置している。植付フレーム31には、板状の支持側壁体92をセクタギヤ91に平行状態に隣接させて取り付け、支持側壁体92の上端縁部と前端縁部から左側方へ延出させて上面形成体93と前面形成体94を形成している。前面形成体94にはブラケット95を介して電動モータ等のアクチュエータ82を取り付け、アクチュエータ82にピニオンギヤケース96を取り付けている。アクチュエータ82の駆動軸82aにピニオンギヤ96aを取り付けて、ピニオンギヤ96aをピニオンギヤケース96内に配置している。そして、ピニオンギヤ96aはセクタギヤ91に噛合させている。このように構成して、アクチュエータ82の駆動軸を正逆回動させることにより、ピニオンギヤ96aを介してセクタギヤ91を正逆回転させることができるようにしている。97はセクタギヤ91から後下方へ延設した可動側連結片、98は前面形成体94から後下方へ延設した固定側連結片、99は可動側連結片97と固定側連結片98との間に介設した引っ張りスプリングであり、引っ張りスプリング99により可動側連結片97を介してセクタギヤ91を左側面視にて時計廻りに回動付勢している。
【0043】
回転軸80には、図9図12に示すように、セクタギヤボス部90を跨ぐように門型に形成した連動体100を取り付けている。すなわち、連動体100は、基端部が回動軸80に固定状態に取り付けられて、セクタギヤ91の上端部よりも前上方へ向けて延出されたアーム片101,101と、両アーム片101,101間に架設した横架片102とから門型に形成して、セクタギヤ91との干渉を回避している。右側のアーム片101の前端縁部の先端部には係合凹部103を形成する一方、セクタギヤ91の上端部から右側方へ向けて係合ピン104を突設して、係合ピン104の周面に係合凹部103が上方から係合状態に当接されるようにしている。セクタギヤボス部90の外周面には、ねじりコイルばね105を巻回し、ねじりコイルばね105の一端106をセクタギヤ91の下端縁部に係合させる一方、ねじりコイルばね105の他端107を左側のアーム片101の後端縁部に係合させている。
【0044】
そして、連動体100は、ねじりコイルばね105により左側面視にて反時計廻りに回動付勢されて、右側のアーム片101に形成した係合凹部103が、ねじりコイルばね105により係合ピン104に係合状態にて当接する方向に弾性付勢されている。一方、セクタギヤ91は、前記したように引っ張りスプリング99により可動側連結片97を介して左側面視にて時計廻りに回動付勢されて、係合ピン104が係合凹部103に係合状態にて当接する方向に弾性付勢されている。つまり、連動体100の係合凹部103とセクタギヤ91の係合ピン104は、相互に当接する方向に弾性付勢されて、連動体100とセクタギヤ91とが弾性付勢力により一体的に正逆回転動作するようにしている。
【0045】
このように構成することで、アクチュエータ82の駆動軸82aを正逆回転させると、駆動軸82aに取り付けたピニオンギヤ96aを介してセクタギヤ91が正逆回転される。セクタギヤ91が正逆回転動作すると、セクタギヤ91に一体的に連動して連動体100も正逆回転動作し、連動体100と一体に回転軸80が正逆回転される。回転軸80が正逆回転動作されると、回転軸80に連動して左右一対の上アーム84,84が上下揺動され、上アーム84,84の上下揺動動作に左右一対の上下動ロッド86,86の上下摺動動作が連動して、上下動ロッド86,86の下端部に枢支片87,87を介して枢支連結した整地ロータ61,61が上下位置調節される。
【0046】
この際、回転軸80は、ねじりコイルばね105により左側面視にて反時計廻りに回動されるように付勢されている。つまり、回転軸80は、整地ロータ61,61が下降されるように、ねじりコイルばね105により回動付勢されている。そのため、整地ロータ61が勢いよく凸部等に当接した場合でも、整地ロータ61は、上方へバウンドすることもなく、凸部を通過した後は速やかに下降することになる。
【0047】
また、田面Gの凸面や異物により整地ロータ61,61に下方から上方へ向けて押し上げる突発的な負荷が作用した際には、上下動ロッド86,86→上アーム84,84→回転軸80→連動体100に負荷が伝播されて、連動体100がねじりコイルばね105の弾性付勢力に抗して左側面視にて時計廻りに回動される。つまり、図10に示すように、連動体100がセクタギヤ91から離隔する方向に回動される。具体的には、ねじりコイルばね105の弾性付勢力により連動体100の係合凹部103がセクタギヤ91の係合ピン104の周面に押圧作用している状態から、ねじりコイルばね105の弾性付勢力に抗して連動体100の係合凹部103がセクタギヤ91の係合ピン104から強制的に離隔されて押圧作用が解除された状態となる。このように、突発的に整地ロータ61,61に対して押し上げる負荷が作用した際には、連動体100が、セクタギヤ91から離隔動作されることで、セクタギヤ91を介してアクチュエータ82に負荷が作用するのを防止するリミッターとして機能するようにしている。
【0048】
支持側壁体92の上部には、セクタギヤ91の回転動作を検出するポテンショメータ等のセクタギヤ検出体110を取り付けている。セクタギヤ検出体110は、検出本体111に検出端子112を係合ピン104側に向けて突設して、検出端子112の下端縁部を係合ピン104の周面に当接状態に付勢させている。そして、セクタギヤ91が正逆回転動作すると、係合ピン104を介して検出端子112が連動して正逆回転動作するようにして、検出端子112を介してセクタギヤ検出体110がセクタギヤ91の正逆回転角度を検出するようにしている。
【0049】
制御手段53は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を備えており、コンピュータ機能を有するものである。制御手段53には、図13に示すように、その入力側に整地高さ検出手段51とセクタギヤ検出体110が接続される一方、その出力側にアクチュエータ82が接続されている。そして、走行部1に牽引されるとともに、植付作業位置に配置された植付部2の移動に伴って、整地高さ検出手段51の検出本体76が田面Gに沿って摺動するようにしている。この際、検出本体76は田面Gの起伏に対応して上下回動されると、その上下回動変位がセンサ本体70により検出されるとともに、その検出結果が制御手段53に送信される。制御手段53は整地高さ検出手段51から取得した検出結果に基づいてアクチュエータ82に駆動信号を送信して、アクチュエータ82を正逆回転駆動させる。その結果、整地ロータ61が回転軸80と上下動機構81,81を介して田面Gに対して上下動される。そして、アクチュエータ82の正逆回転量がセクタギヤ検出体110により検出されて、その検出結果が制御手段53に送信される。制御手段53はセクタギヤ検出体110から取得した検出結果に基づいてアクチュエータ82に制御信号を送信して、アクチュエータ82を回転停止させる。このようにして、整地ロータ61の田面Gからの高さ(整地高さ)が適正に制御される(以下に、「整地高さ制御」という。)。
【0050】
上記のように構成した整地装置4の整地高さ制御感度は、後述する植付部2の植付部高さ制御感度よりも鈍感に設定することができる。例えば、一定時間内に制御手段53が取得する整地高さ検出手段51の検出結果からそれらの移動平均(単純移動平均、加重移動平均、指数移動平均等)を算出するプログラムをROMに格納しておき、そのプログラムをCPUが読み出して、そのプログラムに取得した整地高さ検出手段51の検出結果を代入して、その移動平均値を算出し、算出した移動平均値に基づいてアクチュエータ82を制御するようにする。この時の移動平均区間(一定時間)を長目に設定することで、整地高さ制御感度を適宜鈍感に設定することができる。
【0051】
また、整地高さ制御感度を鈍感に設定する他実施形態としては、制御手段53のCPUにローパスフィルタ(図示せず)を内蔵させることもできる。ローパスフィルタは、整地高さ検出手段51の出力から慣性の影響による誤差や水面の横揺れの影響による誤差が含まれる高周波数成分、つまり、高周波帯域の信号を除去するものである。そして、ローパスフィルタに整地高さ検出手段51の検出値が通されて、その検出値の低周波成分だけが制御手段53に取得されるようにする。そうすることで、制御手段53は高周波帯域の信号が無いものとしてアクチュエータ82の制御を行うことができて、整地装置4の整地高さ制御を抑制することが可能となる。つまり、整地高さ制御の感度を鈍感に設定することができる。整地高さ制御感度を、制御ゲインが小側となる鈍感側に設定することができる。
【0052】
このように、整地装置4の整地高さ制御感度は鈍感、さらには、後述する植付部2の植付部高さ制御感度よりも鈍感に設定することで、土塊や夾雑物による突発的な田面Gの起伏に対応して敏感に逐一整地高さ制御されるのを防止することができる。その結果、適正な整地高さを維持することができる。したがって、枕地等における整地作業時において、整地装置4の不要な整地高さ制御を解消して、田面Gの凹凸を均す均平性を向上することが可能となる。
【0053】
整地高さ制御の感度(鈍感の度合い)は、ボリュウームスイッチ等の人為的に操作可能な感度設定手段(図示せず)により調節可能として、感度設定手段の操作位置が制御手段53に送信されるようにすることもできる。
【0054】
植付部2は、制御手段53を介して昇降機構部3により田面Gから植付部2までの高さである植付部高さを制御可能としている。そして、その植付部高さの制御には、制御手段53を介して整地高さ検出手段51の検出結果がフィードバックされるようにしている。このようにして、先行する整地高さ検出手段51が土塊や夾雑物を検出した場合には、その検出結果が後続の植付部2の植付部高さ制御にフィードバックされて、植付部高さ制御ではその検出結果が外乱と認知されるようにすることで、突発的な田面Gの起伏に対応して逐一植付部2が植付部高さ制御されるのを防止することができる。
【0055】
上記した植付部高さ制御について、より具体的に説明する。植付部2には、図2及び図14に示すように、植付伝動ケース30の下部に左右方向に延伸するフロート支持軸121をその軸芯廻りに回転自在に枢支している。フロート支持軸121には、前後方向に延伸する複数本のフロート支持アーム122の基端部(前端部)を左右方向に間隔をあけて連設し、フロート支持アーム122の先端部(後端部)に枢支ブラケット123を介して各フロート35,36の上面中途部を左右方向に軸線を向けた枢軸124により枢支連結している。そして、枢軸124の軸線廻りに、センターフロート35及びサイドフロート36の前部及び後部が上下方向に揺動自在に支持されている。フロート支持軸121の中途部には、人為的に操作可能な植付設定高さレバー125の下端部を固設して、植付設定高さレバー125を前上方へ向けて延出させている。図3に示す126は、植付設定高さレバー125をガイドするレバーガイドである。
【0056】
このように構成して、植付設定高さレバー125によりフロート支持軸121を支点にしてフロート支持アーム122を回動操作して、枢軸124の軸芯位置(センターフロート35及びサイドフロート36)を上下に変更することによって、後述する植付設定高さH2(設定深さ)(図14参照)を変更することができる。そして、植付設定高さレバー125をレバーガイド126に係合させることにより、枢軸124の軸芯位置(センターフロート35及びサイドフロート36)を固定して、植付設定高さH2(設定深さ)を設定することができる。
【0057】
植付フレーム31には、ポテンショメータ等の植付設定高さ検出手段(植付設定高さセンサ)127(図13参照)を設けて、植付設定高さ検出手段127によりフロート支持軸121の回転角度を検出することにより、枢軸124の軸芯位置(センターフロート35及びサイドフロート36)を検出可能としている。
【0058】
センターフロート35の前端部には、連結片130を介して上下方向に延伸する連結ロッド131の下端部を左右方向に軸線を向けた枢支ピン132により枢支連結している。一方、植付フレーム31の前下部には上下揺動体133の基端部を上下揺動自在に枢支し、上下揺動体133の先端部に左右方向に軸線を向けた枢支連結軸134を介して連結ロッド131の上端部を連結している。上下揺動体133の基端部を枢支している枢軸(図示せず)には、ポテンショメータ等のフロート角検出手段135(図13参照)を設けて、フロート角検出手段135によりセンターフロート35のフロート角(枢軸124を中心に上下方向に揺動するセンターフロート35の仰角ないしは俯角)を検出可能としている。そして、フロート角検出手段135の検出結果(検出値)は、制御手段53に送信されるようにしている。
【0059】
すなわち、センターフロート35は田面Gに接地追従するのに対して、植付部2が上下動すると、これに伴って田面Gから植付部2までの高さ(植付爪34による苗Nの植付深さH3)が変化する。そうすると、田面Gから植付部2までの高さ(植付爪34による苗Nの植付深さH3)の変化が、フロート角検出手段135により検出されて、フロート角検出手段135の検出値が設定検出値(植付設定高さH2(設定深さ))となるように、昇降シリンダ43に作動油を給排操作する制御弁136が制御手段53により操作され、昇降シリンダ43により植付部2が昇降駆動されて、植付部2(植付爪34)による苗Nの植付深さH3が設定深さに維持される。以上が植付部高さ制御である。
【0060】
また、植付設定高さレバー125により枢軸124の軸芯位置(センターフロート35及びサイドフロート36)を変更すると、これに伴い植付設定高さ検出手段127の検出値に基づいて、例えば、センターフロート35の底面が水平となるフロート角検出手段135の検出値が、植付設定高さH2(設定深さ)に対応する設定検出値として新たに設定される。このようにして、植付部2(植付爪34)による苗Nの植付深さH3を変更することができる。
また、整地高さ制御において、整地高さ検出手段51の検出結果が所定値以上で、かつ、検出時間が所定時間未満であった場合には、その検出結果を取得した制御手段53が、その検出結果を土塊や夾雑物等の外乱と判断して、整地高さ検出手段51の検出結果に基づいた植付部高さ制御は実行されないようにしている。そうすることで、突発的な田面Gの起伏に対応して逐一植付部2が植付部高さ制御されるのを抑制している。つまり、過敏に植付部2が昇降されるのを防止している。その結果、植付部2の植付精度を安定化させることができる。
【0061】
この際のフィードバック制御においては、前記したように整地高さ制御感度は植付部高さ制御感度よりも鈍感に設定しておくことで、植付部2が過敏に昇降制御されるのを堅実に抑制することができる。また、フィードバックされた整地高さ検出手段51の検出結果と、フロート角検出手段135等により検出された検出結果とから、田面の水深を推定することもできる。
【0062】
図15は、他の実施形態としての走行部1であり、この走行部1は前記した実施形態の走行部1と基本的な構造を同じくしているが、伝動機構ケース27を備えていない点で異なる。つまり、伝動シャフト19の終端部(後端部)にリヤアクスルケース15が連動連結され、リヤアクスルケース15に整地伝動シャフト54の始端部(前端部)が連動連結されている。そして、リヤアクスルケース15内には、整地伝動シャフト54への動力を接続・切断するクラッチ(図示せず)を設けており、このクラッチは、機械的に接続・切断作動する形態を採用することも、また、電動式に接続・切断する形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
A 田植機
1 走行部
2 植付部
3 昇降機構部
4 整地装置
50 整地手段
51 整地高さ検出手段
52 上下位置調節手段
53 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15