(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光重合開始剤が、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
前記エポキシ化合物のエポキシモル当量と、前記25℃で固体である酸無水物硬化剤の中和モル当量とのモル当量比が、100:50〜100:240である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
前記インクジェット装置が、吐出後の前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射することが可能である光照射部を有する、請求項9又は10に記載のインクジェット塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、インクジェット方式により塗工され、かつ光硬化及び熱硬化可能であるインクジェット用硬化性組成物である。
【0029】
また、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、光硬化性化合物と、熱硬化性化合物と、光重合開始剤と、熱硬化剤とを含む。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、上記熱硬化剤は、25℃で固体である酸無水物硬化剤である。
【0030】
また、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、JIS K2283に準拠して測定された25℃及び2.5rpmでの加熱前の粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下である。
【0031】
本発明における上述した構成の採用によって、吐出安定性を良好にし、解像度を高くし、硬化後に接着信頼性を高くし、硬化後に絶縁信頼性を高くし、更に硬化後に表面の硬化性を高くすることができる。この理由は、具体的には以下の点が挙げられる。
【0032】
上記インクジェット用硬化性組成物の粘度が適切な範囲内であるために、良好な解像度と良好な吐出性とを両立できる。また、適切な粘度範囲に調整された組成物を用いるために、組成物を加温して吐出する際の熱安定性に優れ、更に熱安定性に優れるために吐出安定性に優れる。
【0033】
定かではないが、特に25℃で固体である酸無水物硬化剤を用いているため、基板上にインクジェット装置から吐出された液滴が着弾した際、酸無水物硬化剤が25℃では固体であることに起因して、液滴が基板上で濡れ拡がったり、はじかれたりするような微小変位が抑制されることや、粘度を測定する速度以下の微小変形速度領域で、疑似ゲル化により、濡れ拡がったり、はじかれたりすることが抑制されると考えられる。この結果として、解像度が向上する。
【0034】
また、吐出安定性が優れる別の理由として、次の点が考えられる。定かではないが、25℃で固体である酸無水物硬化剤では、25℃で液体の酸無水物硬化剤に比べ、使用雰囲気での、吸湿速度が遅く、原材料を開封してからの原材料の吸湿量が少なくなるので、高温でインクジェット液滴を吐出する際の、水分の揮発によって発生すると考えられる泡の発生が抑制され、この結果、泡の発生による吐出不良が起こりにくくなるため、吐出安定性が良好になると考えられる。
【0035】
組成物がテルペン化合物や、ジシクロペンタジエン骨格を有する光硬化性化合物を含む場合には、耐湿試験時の絶縁信頼性や接着信頼性に優れる。これらの化合物の疎水性が強いため、耐湿試験時において水を吸湿することによる信頼性の低下を抑制することができることに加えて、これらの化合物の骨格上の特徴から、光反応時に、2重結合のような光反応性官能基が無くても、これらの骨格が架橋に組み込まれるため、丈夫な硬化物(硬化膜)が得られるためと考えられる。
【0036】
上記組成物に含まれる上記光重合開始剤が、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1であれば、表面の硬化性や接着性により一層優れる。これは、空気中での光反応時の表面酸素阻害が、低減されることにより、未反応の光反応性物質が減ることで、表面の硬化性が上がるだけでなく、光反応後の熱硬化時に反応しない光硬化の際に未反応で残存する光反応性物質が減るので、接着信頼性が高まるためと考えられる。
【0037】
以下、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物に用いることができる各成分を詳細に説明する。
【0038】
上記硬化性組成物は、硬化性化合物として、光硬化性化合物と、熱硬化性化合物とを含む。上記硬化性組成物は、硬化性化合物として、光及び熱硬化性化合物を更に含んでいてもよい。上記硬化性組成物は、光重合開始剤と、熱硬化剤とを含む。
【0039】
(光硬化性化合物)
上記光硬化性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、マレイミド基を有する化合物及びビニル基を有する化合物などが挙げられる。上記光硬化性化合物は、光反応性基を2個以上有する多官能化合物(以下、多官能化合物(A)と記載することがある)であってもよく、光反応性基を1個有する単官能化合物(以下、単官能化合物(A2)と記載することがある)であってもよい。
【0040】
上記多官能化合物(A)としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート類、及びポリエステル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、及びペンタエリスリトール等が挙げられる。上記「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。上記「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルとメタクリルとを示す。
【0041】
上記多官能化合物(A)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A1)であることが好ましい。多官能化合物(A1)の使用により、上記インクジェット用硬化性組成物の硬化物の耐湿熱性を高くすることができる。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物を用いたプリント配線板及び半導体装置を長期間使用でき、かつ該プリント配線板及び半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0042】
多官能化合物(A1)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有すれば特に限定されない。多官能化合物(A1)として、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する従来公知の多官能化合物を用いることができる。多官能化合物(A1)は、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するため、光の照射により重合が進行し、硬化する。多官能化合物(A1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
多官能化合物(A1)としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート類、及びポリエステル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0044】
多官能化合物(A1)の具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジメタノールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、多官能化合物(A1)は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。上記「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0045】
多官能化合物(A1)及び後述する単官能化合物(A2)における上記「多環骨格」とは、複数の環状骨格を連続して有する構造を示す。多官能化合物(A1)及び単官能化合物(A2)における上記多環骨格としてはそれぞれ、多環脂環式骨格及び多環芳香族骨格等が挙げられる。
【0046】
上記多環脂環式骨格としては、ビシクロアルカン骨格、トリシクロアルカン骨格、テトラシクロアルカン骨格及びイソボルニル骨格等が挙げられる。
【0047】
上記多環芳香族骨格としては、ナフタレン環骨格、アントラセン環骨格、フェナントレン環骨格、テトラセン環骨格、クリセン環骨格、トリフェニレン環骨格、テトラフェン環骨格、ピレン環骨格、ペンタセン環骨格、ピセン環骨格及びペリレン環骨格等が挙げられる。
【0048】
上記単官能化合物(A2)の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びナフチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、単官能化合物(A2)は、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0049】
上記マレイミド基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−p−カルボキシフェニルマレイミド、N−p−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−p−クロロフェニルマレイミド、N−p−トリルマレイミド、N−p−キシリルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド、N−o−トリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−2,5−ジエチルフェニルマレイミド、N−2,5−ジメチルフェニルマレイミド、N−m−トリルマレイミド、N−α−ナフチルマレイミド、N−o−キシリルマレイミド、N−m−キシリルマレイミド、ビスマレイミドメタン、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、ビスマレイミドドデカン、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、N,N’−p−フェニレンジマレイミド、4,4’−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4’−ビスマレイミド−ジ(3−メチルフェニル)メタン、4,4’−ビスマレイミド−ジ(3−エチルフェニル)メタン、4,4’−ビスマレイミド−ジ(3−メチル−5−エチル−フェニル)メタン、N,N’−(2,2−ビス−(4−フェノキシフェニル)プロパン)ジマレイミド、N,N’−2,4−トリレンジマレイミド、N,N’−2,6−トリレンジマレイミド、及びN,N’−m−キシリレンジマレイミド等が挙げられる。
【0050】
上記ビニル基を有する化合物としてはビニルエーテル類、エチレン誘導体、スチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、無水マレイン酸、ジシクロペンタジエン、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0051】
絶縁信頼性や接着信頼性をより一層高める観点から、上記光硬化性化合物は、ジシクロペンタジエン骨格を有することが好ましい。中でも、ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0052】
上記硬化性組成物100重量%中、上記光硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記硬化性組成物100重量%中、上記光硬化性化合物の含有量は50重量%以下であってもよい。
【0053】
(熱硬化性化合物)
上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。熱硬化性に優れているので、上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記エポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、ノボラック型エポキシ化合物及びビスフェノール型エポキシ化合物等が挙げられる。上記ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、トリスフェノールノボラック型エポキシ化合物、及びジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。上記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、及びポリオキシプロピレンビスフェノールA型エポキシ化合物等が挙げられる。また、上記エポキシ化合物としては、その他に、環式脂肪族エポキシ化合物、及びグリシジルアミン等も挙げられる。
【0055】
硬化物層をより一層高精度に形成し、硬化物層にボイドをより一層生じ難くする観点からは、上記熱硬化性化合物は、芳香族骨格を有することが好ましい。
【0056】
上記硬化性組成物100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量及び上記エポキシ化合物の含有量はそれぞれ、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。上記硬化性組成物100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は30重量%以上であってもよく、50重量%以上であってもよい。
【0057】
(光重合開始剤)
上記光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤等が挙げられる。上記光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。上記光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
上記光ラジカル重合開始剤は特に限定されない。上記光ラジカル重合開始剤は、光の照射によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始するための化合物である。上記光ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、リボフラビンテトラブチレート、チオール化合物、2,4,6−トリス−s−トリアジン、有機ハロゲン化合物、ベンゾフェノン類、キサントン類及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。上記アセトフェノン類としては、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン及び1,1−ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。上記アミノアセトフェノン類としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェン等が挙げられる。上記アントラキノン類としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン及び1−クロロアントラキノン等が挙げられる。上記チオキサントン類としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。上記ケタール類としては、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等が挙げられる。上記チオール化合物としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール及び2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。上記有機ハロゲン化合物としては、2,2,2−トリブロモエタノール及びトリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。上記ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン及び4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0060】
上記光ラジカル重合開始剤は、α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることがより好ましい。この特定の光ラジカル重合開始剤の使用により、露光量が少なくても、上記硬化性組成物を効率的に光硬化させることが可能になる。このため、光の照射によって、塗工された上記硬化性組成物が濡れ拡がるのを効果的に抑制できる。さらに、上記光ラジカル重合開始剤がジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤である場合には、熱硬化速度を速くすることができ、上記硬化性組成物の光照射物の熱硬化性を良好にすることができる。
【0061】
上記α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤の具体例としては、BASF社製のIRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE379及びIRGACURE379EG等が挙げられる。これら以外のα−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤を用いてもよい。中でも、上記硬化性組成物の光硬化性と硬化物による絶縁信頼性とをより一層良好にする観点からは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE369)又は2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE379又はIRGACURE379EG)が好ましい。これらはジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤である。
【0062】
表面の硬化性や接着性をより一層良好にする観点からは、上記光重合開始剤が、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1であることが好ましい。
【0063】
上記光ラジカル重合開始剤とともに、光重合開始助剤を用いてもよい。該光重合開始助剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これら以外の光重合開始助剤を用いてもよい。上記光重合開始助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
また、可視光領域に吸収があるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)のチタノセン化合物などを、光反応を促進するために用いてもよい。
【0065】
上記光カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物及びベンゾイントシレート等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記硬化性組成物100重量%中、上記光重合開始剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7.5重量%以下である。
【0067】
(熱硬化剤)
解像度と吐出性とを良好にする観点から、本発明では、上記熱硬化剤は、25℃で固体である酸無水物(酸無水物硬化剤)である。
【0068】
また、25℃で固体である酸無水物硬化剤とともに、他の熱硬化剤を用いてもよい。上記他の熱硬化剤としては、有機酸、アミン化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィッド化合物、アミン−エポキシアダクトなどの変性ポリアミン化合物及び25℃で液体である酸無水物等が挙げられる。
【0069】
耐湿試験時の絶縁信頼性や接着信頼性をより一層高める観点から、上記25℃で固体である酸無水物硬化剤は、テルペン化合物であることが好ましい。
【0070】
熱硬化性をより一層高める観点から、上記熱硬化性化合物がエポキシ化合物を含むことが好ましく、更に上記エポキシ化合物のエポキシモル当量と、上記25℃で固体である酸無水物硬化剤の中和モル当量とモルの当量比(エポキシモル当量:酸無水物モル当量)は、好ましくは100:30〜100:300、より好ましくは100:50〜100:240、更に好ましくは100:75〜100:150である。
【0071】
上記硬化性組成物100重量%中、上記25℃で固体である酸無水物硬化剤の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0072】
25℃で固体である酸無水物硬化剤とは異なる他の熱硬化剤を用いる場合に、熱硬化剤の全体100重量%中、上記他の熱硬化剤の含有量は好ましくは70重量%未満、より好ましくは50重量%未満、更に好ましくは20重量%未満である。
【0073】
(硬化促進剤)
上記硬化促進剤としては、第三級アミン、イミダゾール、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、有機金属塩、リン化合物及び尿素系化合物等が挙げられる。
【0074】
上記硬化性組成物100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0075】
(インクジェット用硬化性組成物の他の詳細)
(光及び熱硬化性化合物)
硬化物層をより一層高精度に形成し、硬化物層にボイドをより一層生じ難くする観点からは、上記硬化性組成物は、光及び熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記光及び熱硬化性化合物としては、各種の光硬化性官能基と各種の熱硬化性官能基とを有する化合物が挙げられる。硬化物層をより一層高精度に形成する観点からは、上記光及び熱硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有することが好ましい。上記光及び熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記光及び熱硬化性化合物としては、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有する化合物、エポキシ化合物の部分(メタ)アクリル化物、ウレタン変性(メタ)アクリルエポキシ化合物等が挙げられる。
【0077】
上記(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0078】
上記エポキシ化合物の部分(メタ)アクリル化物としては、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って触媒の存在下で反応させることにより得られる。上記エポキシ化合物の部分(メタ)アクリル化物に用いることができるエポキシ化合物としては、ノボラック型エポキシ化合物及びビスフェノール型エポキシ化合物等が挙げられる。上記ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、トリスフェノールノボラック型エポキシ化合物、及びジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。上記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、及びポリオキシプロピレンビスフェノールA型エポキシ化合物等が挙げられる。エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との配合量を適宜変更することにより、所望のアクリル化率のエポキシ化合物を得ることが可能である。エポキシ基1当量に対してカルボン酸の配合量は、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.2当量以上、好ましくは0.7当量以下、より好ましくは0.5当量以下である。
【0079】
上記ウレタン変性(メタ)アクリルエポキシ化合物は、例えば、以下の方法によって得られる。ポリオールと2官能以上のイソシアネートを反応させ、さらに残りのイソシアネート基に、酸基を有する(メタ)アクリルモノマー及びグリシドールを反応させる。または、ポリオールを用いず、2官能以上のイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとグリシドールとを反応させてもよい。または、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートモノマーにグリシドールを反応させても、上記ウレタン変性(メタ)アクリルエポキシ化合物が得られる。具体的には、例えば、まず、トリメチロールプロパン1モルとイソホロンジイソシアネート3モルとを錫系触媒下で反応させる。得られた化合物中に残るイソシアネート基と、水酸基を有するアクリルモノマーであるヒドロキシエチルアクリレート、及び水酸基を有するエポキシであるグリシドールを反応させることにより、上記ウレタン変性(メタ)アクリルエポキシ化合物が得られる。
【0080】
上記ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、及び(ポリ)プロピレングリコール等が挙げられる。
【0081】
上記イソシアネートは、2官能以上であれば、特に限定されない。上記イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及び1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0082】
硬化物層をより一層高精度に形成し、硬化物層にボイドをより一層生じ難くする観点からは、上記光及び熱硬化性化合物が、下記式(11)で表される光及び熱硬化性化合物であることが好ましい。
【0084】
硬化物層をより一層高精度に形成する観点からは、上記硬化性組成物100重量%中、上記光及び熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは0重量%(未使用)以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0085】
硬化物層をより一層高精度に形成する観点からは、上記硬化性組成物100重量%中、上記光硬化性化合物と上記光及び熱硬化性化合物との合計の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0086】
(溶剤)
上記硬化性組成物は溶剤を含まないか又は含む。上記硬化性組成物は、溶剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。硬化物層をより一層高精度に形成し、更に硬化物層にボイドをより一層生じ難くする観点からは、上記硬化性組成物における溶剤の含有量は少ないほどよい。
【0087】
上記溶剤としては、水及び有機溶剤等が挙げられる。なかでも、残留物の除去性をより一層高める観点からは、有機溶剤が好ましい。上記有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、並びに石油エーテル、ナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0088】
上記硬化性組成物が上記溶剤を含む場合には、上記硬化性組成物100重量%中、上記溶剤の含有量は好ましくは1重量%以下である。
【0089】
(他の成分)
上記硬化性組成物は、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては特に限定されないが、カップリング剤等の接着助剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、及び重合禁止剤等が挙げられる。上記硬化性組成物は、導電性粒子を含んでいなくてもよい。
【0090】
上記硬化性組成物においては、JIS K2283に準拠して測定された加熱前の25℃及び2.5rpmでの粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下である。上記硬化性組成物の粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記硬化性組成物をインクジェットヘッドから容易にかつ精度よく吐出できる。さらに、上記硬化性組成物が50℃以上に加温されても、上記硬化性組成物をインクジェットヘッドから容易にかつ精度よく吐出できる。
【0091】
上記硬化性組成物の上記粘度は、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下である。上記粘度が好ましい上記上限を満足すると、上記硬化性組成物をヘッドから連続吐出したときに、吐出性がより一層良好になる。また、上記硬化性組成物の濡れ拡がりをより一層抑制し、硬化物層を形成する際の配置精度をより一層高める観点からは、上記粘度は250mPa・sを超えることが好ましく、500mPa・sを超えることがより好ましい。
【0092】
(インクジェット塗布装置)
上記インクジェット用硬化性組成物は、インクジェット装置内に充填されて用いられる。インクジェット用硬化性組成物がインクジェット装置内に充填されている装置を、インクジェット装置と区別して、インクジェット塗布装置と呼ぶ。上記インクジェット塗布装置は、インクジェット装置と、上記インクジェット用硬化性組成物とを備える。
【0093】
上記インクジェット装置は、上記インクジェット用硬化性組成物を加温するための加温部を有することが好ましい。上記加温部は、上記硬化性組成物を50℃以上に加温可能であることが好ましく、70℃以上に加温可能であることがより好ましく、80℃以上に加温可能であることが更に好ましい。
【0094】
上記インクジェット装置は、吐出後の上記インクジェット用硬化性組成物に光を照射することが可能である光照射部を有することが好ましい。上記インクジェット装置のノズルの移動に伴って、光照射部が連動して移動可能であることが好ましい。
【0095】
(インクジェット用硬化性組成物の用途)
電子部品の製造方法:
上記硬化性組成物は、以下の電子部品の製造方法に好適に用いることができる。
【0096】
上記硬化性組成物を用いた電子部品の製造方法では、先ず、上記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターンを描画する。このとき、上記硬化性組成物を直接描画することが特に好ましい。「直接描画する」とは、マスクを用いずに描画することを意味する。上記電子部品としては、プリント配線板及びタッチパネル部品等が挙げられる。上記電子部品は、配線板であることが好ましく、プリント配線板であることがより好ましい。
【0097】
上記硬化性組成物の塗工には、インクジェット装置が用いられる。該インクジェット装置は、インクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッドはノズルを有する。インクジェット装置は、インクジェット装置内又はインクジェットヘッド内の温度を50℃以上に加温するための加温部を備えることが好ましい。上記硬化性組成物は、塗工対象部材上に塗工されることが好ましい。上記塗工対象部材としては、基板等が挙げられる。該基板としては、配線等が上面に設けられた基板等が挙げられる。上記硬化性組成物は、プリント基板上に塗工されることが好ましい。
【0098】
また、上記電子部品の製造方法により、基板をガラスを主体とする部材に変え、液晶表示装置等の表示装置用のガラス基板を作製することも可能である。具体的には、ガラスの上に、蒸着等の方法によりITO等の導電パターンを設け、この導電パターン上に上記電子部品の製造方法により、インクジェット方式で硬化物層を形成してもよい。この硬化物層上に、導電インク等でパターンを設ければ、硬化物層が絶縁膜となり、ガラス上の導電パターンの中で、所定のパターン間にて電気的接続が得られる。
【0099】
次に、パターン状に描画された上記硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、硬化物層を形成する。このようにして、硬化物層を有する電子部品を得ることができる。該硬化物層は、絶縁膜であってもよく、レジストパターンであってもよい。該絶縁膜は、パターン状の絶縁膜であってもよい。該硬化物層はレジストパターンであることが好ましい。上記レジストパターンはソルダーレジストパターンであることが好ましい。
【0100】
上記電子部品の製造方法は、レジストパターンを有するプリント配線板の製造方法であることが好ましい。上記硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画し、パターン状に描画された上記硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、レジストパターンを形成することが好ましい。
【0101】
パターン状に描画された上記硬化性組成物に、光を照射することにより一次硬化させ、一次硬化物を得てもよい。これにより描画された上記硬化性組成物の濡れ拡がりを抑制することができ、高精度なレジストパターンが形成可能となる。また、光の照射により一次硬化物を得た場合には、一次硬化物に熱を付与することにより本硬化させ、硬化物を得て、レジストパターンなどの硬化物層を形成してもよい。上記硬化性組成物は、光の照射及び熱の付与により硬化可能である。光硬化と熱硬化とを併用した場合には、耐熱性により一層優れたレジストパターンなどの硬化物層を形成することができる。熱の付与により硬化させる際の加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0102】
上記光の照射は、描画の後に行われてもよく、描画と同時に行われてもよい。例えば、硬化性組成物の吐出と同時又は吐出の直後に光を照射してもよい。このように、描画と同時に光を照射するために、インクジェットヘッドによる描画位置に光照射部分が位置するように光源を配置してもよい。
【0103】
光を照射するための光源は、照射する光に応じて適宜選択される。該光源としては、UV−LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプ等が挙げられる。照射される光は、一般に紫外線であり、電子線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線等であってもよい。
【0104】
上記硬化性組成物の塗工時における温度は、上記硬化性組成物がインクジェットヘッドから吐出できる粘度となる温度であれば特に限定されない。上記硬化性組成物の塗工時における温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、好ましくは100℃以下である。塗工時における上記硬化性組成物の粘度は、インクジェットヘッドから吐出できる範囲であれば特に限定されない。
【0105】
また、印刷時に、基板を冷却するという方法もある。基板を冷却すると、着弾時に上記硬化性組成物の粘度が上がり、解像度が良くなる。この際には、結露しない程度に冷却をとどめるか、結露しないよう雰囲気の空気を除湿することが好ましい。また、冷却することで、基板が収縮するので、寸法精度を補正してもよい。
【0106】
半導体装置の製造方法:
ところで、従来、基板上に半導体チップが硬化物層を介して積層された半導体装置が知られている。また、複数の半導体チップが、硬化物層を介して積層された半導体装置が広く知られている。
【0107】
上記半導体装置は、半導体チップの下面に硬化性組成物層を積層した状態で、基板又は半導体チップ上に、硬化性組成物層付き半導体チップを、硬化性組成物層側から積層し、かつ硬化性組成物層を硬化させることにより製造されている。
【0108】
また、半導体装置は、例えば、基板又は半導体チップ上に、ディスペンサー又はスクリーン印刷、スピンコート印刷などにより硬化性組成物を塗布して硬化性組成物層を形成した後、硬化性組成物層上に半導体チップを積層し、かつ硬化性組成物層を硬化させることにより形成されることもある。
【0109】
上述した従来の半導体装置の製造方法では、半導体チップの欠け(チッピング)による歩留まりの低下により、半導体装置を効率的に製造することは困難である。さらに、得られる半導体装置における各層間の接着信頼性が低くなることがある。また、スクリーン印刷、スピンコート印刷では、材料のスタートストップロスや、使用時のロス等で材料の使用効率が低い。
【0110】
特に、硬化性組成物層付き半導体チップを用いる製造方法では、半導体ウエハがウエハリングにバックグラインドテープにより固定され、研磨が行われ、その後、研磨面に硬化性組成物が塗布される。硬化性組成物が塗布され、乾燥や光硬化が行われ、硬化性組成物層が形成される。その後、その面にダイシングテープを貼り付け、逆面のバックグラインドテープをはぎ取り、チップ表層のダイシングラインに沿って、従来のダイアッタッチドフィルムが積層されたウエハのように、ダイシング(切断)を行う。次に半導体チップはダイボンド装置によりピックアップされ、基板を半導体チップ状にダイボンド(積層・仮接着)される。
【0111】
このダイシング(切断)が行われる際、硬化性組成物層も切断する必要がある。この切断時に、硬化性組成物が、切断刃にまとわりつくことで、切断性が低下することがある。切断性が低下することで、半導体チップが欠けて、歩留まりが低下する。
【0112】
さらに、特に、ディスペンサー又はスクリーン印刷などにより硬化性組成物を塗布する製造方法では、硬化性組成物層及び形成される接続部の厚みを制御することが困難であり、また、厚みの均一性を高めることが困難である。
【0113】
また、厚みの均一性を確保するために、上述したディスペンサー又はスクリーン印刷、スピンコート印刷などにより硬化性組成物を塗布して硬化性組成物層を形成する代わりに、硬化性組成物層を形成するためにダイアタッチドフィルム(DAF)を用い、DAFを半導体ウエハに積層した状態で、DAFが積層された半導体ウエハを個々の半導体チップに個片化する方法もある。この方法でも、半導体ウエハを個片化するには、DAFを切断する必要があるので、この切断時に、DAFが、切断刃にまとわりつくことで、切断性が低下することがある。切断性が低下することで、半導体チップが欠けて、歩留まりが低下するという問題がある。さらに、DAFを作る際には、多くの工程と工程材料とが必要であり、材料の使用効率も悪いというという問題がある。
【0114】
これに対して、上記硬化性組成物は、以下の半導体装置の製造方法に好適に用いることができる。
【0115】
上記硬化性組成物を用いた半導体装置の製造方法は、基板又は第2の半導体チップと、第1の半導体チップとが、硬化物層により接続されている半導体装置の製造方法である。上記半導体装置の製造方法は、上記基板又は上記第2の半導体チップ上に、上記硬化性組成物を、インクジェット装置から吐出して、硬化性組成物層を形成する工程と、上記硬化性組成物層を光硬化させて、Bステージ化硬化性組成物層を形成する工程と、上記Bステージ化硬化性組成物層上に、上記第1の半導体チップを積層し、かつ上記Bステージ化硬化性組成物層を熱硬化させて、上記基板又は上記第2の半導体チップと上記第1の半導体チップとが上記硬化物層により接続されている半導体装置を得る工程とを備える。
【0116】
上記硬化性組成物の使用により、以下の半導体装置の製造方法により半導体装置を製造した場合に、タクトタイムを短くし、半導体装置を効率的に得ることができ、得られる半導体装置における各層間の接着信頼性を高めることができる。
【0117】
上記半導体装置の製造方法では、特に、硬化性組成物層付き半導体チップを用いずに、基板又は第2の半導体チップ上に、硬化性組成物層が積層されていない第1の半導体チップを積層することができるので、チッピング等による歩留まりを低下させることなくタクト(生産時間)を短縮できる。
【0118】
さらに、上記半導体装置の製造方法では、特に、ディスペンサー又はスクリーン印刷などにより硬化性組成物を塗布せずに、インクジェット装置から上記硬化性組成物を塗布するので、硬化性組成物層及び形成される接続部の厚みを制御しやすいだけでなく、印刷パターンを自在に調整できる。
【0119】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0120】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット用硬化性組成物を用いた半導体装置の製造方法により得られる半導体装置を模式的に示す断面図である。
【0121】
図1に示す半導体装置11は、積層構造体12を備える。積層構造体12は、基板13と、硬化物層14と、基板13上に硬化物層14を介して積層された第2の半導体チップ15とを有する。基板13上に、第2の半導体チップ15が配置されている。基板13上に、第2の半導体チップ15は間接に積層されている。平面視において、基板13は、第2の半導体チップ15よりも大きい。基板13は、第2の半導体チップ15よりも側方に張り出している領域を有する。
【0122】
硬化物層14は、例えば、硬化性組成物を硬化させることにより形成されている。硬化前の硬化性組成物を用いた硬化性組成物層は、粘着性を有していてもよい。硬化前の硬化性組成物層を形成するために、硬化性組成物シートを用いてもよい。
【0123】
基板13は上面に、第1の接続端子13aを有する。第2の半導体チップ15は上面に、接続端子15aを有する。接続端子15aから配線16が引き出されている。配線16の一端は、第2の半導体チップ15上に設けられた接続端子15aに接続されている。配線16の他端は、基板13上に設けられた第1の接続端子13aに接続されている。配線16により、接続端子15aと第1の接続端子13aとが電気的に接続されている。配線16の他端は、第1の接続端子13a以外の他の接続端子に接続されていてもよい。配線16は、ボンディングワイヤーであることが好ましい。
【0124】
積層構造体12における第2の半導体チップ15上に、硬化物層21を介して、第1の半導体チップ22が積層されている。硬化物層21は、上記硬化性組成物を光硬化及び熱硬化させることにより形成されている。
【0125】
基板13は上面に、第2の接続端子13bを有する。第1の半導体チップ22は上面に、接続端子22aを有する。接続端子22aから配線23が引き出されている。配線23の一端は、第1の半導体チップ22上に設けられた接続端子22aに接続されている。配線23の他端は、基板13上に設けられた第2の接続端子13bに接続されている。配線23により、接続端子22aと第2の接続端子13bとが電気的に接続されている。配線23の他端は、第2の接続端子13b以外の他の接続端子に接続されていてもよい。配線23は、ボンディングワイヤーであることが好ましい。
【0126】
半導体装置11は、以下のようにして得ることができる。
【0127】
図2(a)に示すように、積層構造体12における第2の半導体チップ15上に、上記硬化性組成物を、インクジェット装置51から矢印Xで示す方向に吐出して、硬化性組成物層21Aを形成する。ここでは、インクジェット装置51に光照射装置52が接続されている複合装置を用いている。タクトタイムをより一層短くする観点、並びに液滴を即硬化することで解像度を高める観点から、光を照射するために、インクジェット装置51と連動可能な光照射装置52が用いられている。
【0128】
次に、インクジェット装置51と光照射装置52との複合装置を矢印Zで示す方向に移動させて、硬化性組成物層21Aに矢印Yで示す方向に光を照射して、硬化性組成物層21Aを光硬化させる。この結果、
図2(b)に示すように、Bステージ化硬化性組成物層21Bを形成する。Bステージ化により、第2の半導体チップ15とBステージ化硬化性組成物層21Bとが仮接着される。Bステージ化硬化性組成物層21Bは、半硬化状態にある半硬化物である。Bステージ化硬化性組成物層21Bは、完全に硬化しておらず、熱硬化がさらに進行され得る。なお、インクジェット装置51のノズル付近の迷光によって、意図しない光硬化が進行して、ノズルの目詰まりが生じることを防止するために、別の光強度の高い別の照射機を用いてもよい。
【0129】
光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源や、波長420nm以下の特定波長に強い発光を有する光源等が挙げられる。波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。また、波長420nm以下の特定波長に強い発光を有する光源の具体例としては、LEDランプ等が挙げられる。なかでもLEDランプが好ましい。LEDランプを用いた場合には、被照射物自身の発熱が非常に少なくなり、発熱による上記硬化性組成物層の過度の硬化を防ぐことができる。
【0130】
光の照射により上記硬化性組成物層をBステージ化させるために、上記硬化性組成物層の硬化を適度に進行させるための光照射強度は、例えば、波長365nmにピークを持つLEDランプ光源を用いる場合は、好ましくは100〜3000mJ/cm
2程度である。また、上記硬化性組成物層の硬化を適度に進行させるための光の照射エネルギーは、好ましくは500mJ/cm
2以上、より好ましくは2000mJ/cm
2以上、好ましくは100000mJ/cm
2以下、より好ましくは20000mJ/cm
2以下である。
【0131】
なお、光の照射は、第1の半導体チップ22の積層前、積層時又は積層後に行われ、積層前に行われてもよく、積層時に行われてもよく、積層後に行われてもよい。光の照射は、第1の半導体チップ22の積層前に行われることが特に好ましい。
【0132】
次に、
図2(c)に示すように、Bステージ化硬化性組成物層21B上、すなわちBステージ化硬化性組成物層21Bの第2の半導体チップ15側とは反対の表面上に、第1の半導体チップ22を積層する。さらに、第1の半導体チップ22の積層時に、Bステージ化硬化性組成物層21Bを加熱して本硬化させ、硬化物層21を形成する。ただし、第1の半導体チップ22の積層前又は積層後に、Bステージ化硬化性組成物層21Bを加熱してもよい。第1の半導体チップ22の積層時又は積層後に、Bステージ化硬化性組成物層21Bを加熱して本硬化させることが好ましく、第1の半導体チップ22の積層時に、Bステージ化硬化性組成物層21Bを加熱して本硬化させることがより好ましい。Bステージ化硬化性組成物層21Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧により、各層間の接着信頼性がより一層高くなる。
【0133】
加熱によりBステージ化硬化性組成物層21Bを充分に硬化させるための加熱温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0134】
Bステージ化硬化性組成物層21Bを硬化させることにより、第2の半導体チップ15と第1の半導体チップ22とが、硬化物層21を介して接続される。また、配線23により、接続端子22aと第2の接続端子13bとを電気的に接続する。このようにして、
図1に示す半導体装置11を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、電気的な信頼性と熱的な信頼性(接着信頼性)とに優れている。
【0135】
図3は、
図1に示す半導体装置の変形例を模式的に示す断面図である。
【0136】
図3に示す半導体装置31は、基板13Aと、硬化物層41と、第1の半導体チップ42とを備える。基板13Aは、第2の接続端子13bが設けられていないことを除いては、基板13と同様に形成されている。
【0137】
基板13A上に、硬化物層41を介して、第1の半導体チップ42が積層されている。硬化物層41は、上記硬化性組成物を光硬化及び熱硬化させることにより形成されている。
【0138】
第1の半導体チップ42は上面に、接続端子42aを有する。接続端子42aから配線43が引き出されている。配線43により、接続端子42aと第1の接続端子13aとが電気的に接続されている。
【0139】
半導体装置11では、第2の半導体チップ15上に、上記硬化性組成物を、インクジェット装置から吐出して、硬化性組成物層を形成することで得ることができる。これに対して、半導体装置31は、基板13A上に、上記硬化性組成物を、インクジェット装置から吐出して、硬化性組成物層を形成することで得ることができる。
【0140】
上記基板(金属層を有する場合は金属層を除く基板部分)は、絶縁性を有することが好ましく、絶縁基板であることが好ましい。上記基板は、適宜の絶縁性材料により形成される。上記基板は、合成樹脂などの有機材料により形成されていてもよく、ガラス又は絶縁性セラミックスなどの無機材料により形成されていてもよい。上記基板の具体例としては、ガラスエポキシ基板等が挙げられる。
【0141】
上記半導体装置の製造方法において、上記第2の半導体チップを用いる場合に、上記硬化性組成物層を形成する前の上記第2の半導体チップが、硬化物層を介して他の基板又は他の半導体チップ上に積層されていることが好ましい。
【0142】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0144】
(実施例1〜5,7〜15及び比較例1,2)
硬化性組成物の調製:
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量(配合単位は重量部)で配合することにより、硬化性組成物を得た。なお、下記の表1,2に記載のトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(共栄社化学社製「DCP−M」)及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製「IRR214K」)は、ジシクロペンタジエン骨格を有する。また、酸無水物(三菱化学社製「YH309」)は、テルペン化合物である。
【0145】
半導体装置(積層構造体:1段)の作製:
FR4ガラスエポキシ基板(厚み0.3mm、市販のソルダーレジストが塗布されており、縦10mm×横10mmの半導体チップが置かれる場所が3行×9列で27か所設けられている)を用意した。このFR4ガラスエポキシ基板上に、半導体チップを置く位置毎に、縦10mm×横10mmの大きさになるように、インクジェット装置(実施例1〜3,5,8〜15及び比較例1,2では75℃に加温、実施例4及び7では80℃に加温、リコープリンティングシステムズ社製のヘッドを使用、ヘッド直近にLEDUV光源を設置)を用いて、硬化性組成物を厚み30μmに塗布し、硬化性組成物層を形成した。UV−LED光により塗布直後の硬化性組成物層に光を照射して、光仮硬化を行った。その後、超高圧水銀灯により積算光量が1000mJ/cm
2となるように光を照射することで、光本硬化を行い、Bステージ化硬化性組成物層を形成した。
【0146】
その後、Bステージ化硬化性組成物層上に、ダイボンド装置を用いて、半導体チップ(縦10mm×横10mm×厚み80μm)に見立てたシリコンベアチップを積層して、積層体を得た。
【0147】
得られた積層体を160℃のオーブン内に入れ、1時間加熱することで、Bステージ化硬化性組成物層を熱硬化させることにより、半導体装置(積層構造体)を得た。
【0148】
半導体装置(積層構造体:2段)の作製:
FR4ガラスエポキシ基板の代わりに半導体装置(積層構造体:1段)作製で得られた積層構造体(但し、160℃の熱硬化は行わない、シリコンベアチップをダイボンドして得られた積層体を使用)を用意した。この積層構造体を用いて、ダイボンドされた積層体上に、半導体装置(積層構造体:1段)作製と同様にしてインクジェット装置により硬化性組成物を厚み30μmに塗布し、硬化性組成物層を形成することにより、半導体装置(積層構造体:2段)を得た(熱硬化も同様に行う)。
【0149】
(実施例6及び比較例3)
硬化性組成物の調製:
下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量(配合単位は重量部)で配合し、そこに染料(オリエント化学社製「oil blue650M」0.5重量部)をさらに添加することにより、硬化性組成物を得た。
【0150】
ソルダーレジスト塗布基板の作製:
FR4ガラスエポキシ基板(全面銅張り、厚み0.3mm、縦10mm×横10mmの半導体チップが置かれる場所が3行×9列で27か所設けられている)を用意した。このFR4ガラスエポキシ基板上に、インクジェット装置(実施例6及び比較例3では75℃に加温、リコープリンティングシステムズ社製のヘッドを使用、ヘッド直近にLEDUV光源を設置)を用いて、硬化性組成物を厚み30μmに塗布し、硬化性組成物層を形成した。UV−LED光により塗布直後の硬化性組成物層に光を照射して、光仮硬化を行った。その後、超高圧水銀灯により積算光量が1000mJ/cm
2となるように光を照射することで、光本硬化を行った。
【0151】
その後、160℃のオーブン内に入れ、1時間加熱することで、熱硬化させることにより、ソルダーレジスト塗布基板を得た。
【0152】
(評価)
(1)初期粘度、加熱後粘度
コーンプレート型のE型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、下記の表1,2に示す測定温度(25℃又は80℃)で、配合直後の硬化性組成物の初期粘度(25℃又は80℃)と、硬化性組成物を80℃で6時間加熱した後の粘度(80℃)とを測定した。回転数は2.5rpmとし、ロータはトルクが0−100%の間となるよう適宜選択した。
【0153】
(2)吐出安定性
リコープリンティングシステム社製のヘッドにて下記の条件にて硬化性組成物を吐出し、液滴観察装置で吐出状態(液滴)を観察することにより、吐出安定性を評価した。
【0154】
吐出ヘッド温度:実施例1〜3,5,6,8〜15及び比較例1〜3では75℃、実施例4及び7では80℃
吐出周波数:2kHz
吐出電圧:21V
吐出ノズル:全(384)ノズル吐出
吐出状態を確認方法:正常な吐出状態以外(未吐出、曲がり、異常振動、ミスト多発)のノズルの個数を確認
連続吐出性:30分吐出を続けた後吐出状態を確認
経時後の吐出性:硬化性組成物を80℃で6時間加温した後に吐出して吐出性を確認
【0155】
(3)解像度
リコープリンティング社製のインクジェット吐出装置で、半導体装置やソルダーレジスト塗布基板を作るかわりに、銅箔付きのFR4基板上に下記の条件で吐出を行った。
【0156】
oddノズルのみ吐出
吐出解像度:横方向:150dpi、scan(印刷)方向:1200dpi
印刷速度:100mm/sec
印刷回数:1回(1scan)
光照射:ヘッドの2cm後方にLEDを取付、吐出後0.2秒後に50mJ照射
印刷終了してから20秒後に、超高圧水銀灯で1000mJ照射
印刷した画像を以下の基準で判断した(なお、線の重なりに関しては、正常に吐出されたノズルの間同士で判断した)。
【0157】
[解像度の判定基準]
○:隣り合う線間が全て離れている
△:隣り合う線間が離れていない箇所がわずかにある
×:大部分で隣り合う線間が離れていない
【0158】
(4)表面硬化性
銅箔付きのFR4基板(40mm×40mm)上に、硬化性組成物をスピンコーターで厚み20μmになるように塗布し、超高圧水銀灯で1000mJの照射を行い、塗膜(熱硬化は行わない)を形成した。塗膜の表面を観察して、表面硬化性を下記基準で判定した。
【0159】
[表面硬化性の判定基準]
○○:表面のタック感無し
○:表面にタック感有り
△:ヌメリ成分(低粘度成分)が存在
×:スパチュラ等でかき集められる程度ヌメリ成分が多い
【0160】
(5)接着信頼性1
以下の方法で、ダイシェア強度測定用のサンプルを作製し、ダイシェア強度を測定することで、接着信頼性1を評価した。
【0161】
ダイシェア強度を測定するためのサンプル作製方法:
解像度を測定した際に使用したインクジェット装置で、Siチップ(縦10mm×横10mm×厚み300μm)又はCu板(厚み0.6mm、銅張り積層板)に、縦3mm×横3mmの大きさで厚み20μmになるように硬化性組成物を吐出して、印刷を行った。他の条件は、作製条件は、以下の通りである。
【0162】
全ノズル吐出:横方向:1200dpi、scan方向:1200dpi
速度:100mm/sec
ヘッドの2cm後方にLEDを取付、吐出してから0.2秒後に50mJ照射
印刷終了してから20秒後に、超高圧水銀灯で1000mJ照射
その上に、Siチップ(縦10mm×横10mm×厚み300μm)を120℃にて2秒加圧(0.1MPa)接着し、160℃で1時間熱硬化
【0163】
ダイシェア強度の測定方法:
上記サンプルを、ダイシェア強度測定器(ダイシェアテスター(Daze社製))にて200℃のダイシェア強度を測定した。6つのサンプルの測定値の平均値を求めた。
【0164】
(6)接着信頼性2
ソルダーレジスト用途の場合、下記の方法で剥離強度測定サンプルを作製し、剥離強度を測定することで、接着信頼性2を評価した。
【0165】
剥離強度を測定するためのサンプル作製方法:
上記装置で、Cu板(厚み0.6mm、銅張り積層板)に32mm×50mmの大きさで厚み20μmになるように硬化性組成物を吐出して、印刷を行った。他の条件は、作製条件は、以下の通りである。
【0166】
全ノズル吐出:横方向:1200dpi、scan方向:1200dpi
印刷速度:100mm/secで4パス印刷
ヘッドの2cm後方にLEDを取付、吐出してから0.2秒後に50mJ照射
印刷終了してから20秒後に、超高圧水銀灯で1000mJ照射
その後、160℃で1時間熱硬化
【0167】
剥離強度の測定方法:
その上に、積水化学工業社製の25mm幅の布粘着テープ(No600)を貼り付け、Cuとソルダーレジストとの間の180度ピール強度を測定した。引きはがしヘッド速度は100mm/minとした。
【0168】
(7)熱的信頼性
接着信頼性1で作製したダイシェア強度サンプルについて、PCT条件(飽和水蒸気加圧条件:121℃、100RH%で100時間)、TCT条件(−40℃と125℃のサイクル試験、(1)−40℃で15分、(2)昇温、(3)125℃で15分、(4)冷却の(1)〜(4)の工程を1サイクルとする、300サイクル実施)で熱処理を行い(熱履歴を与える)、その後ダイシェア強度を測定することにより、熱的信頼性を評価した。熱的信頼性を下記の基準で判定した。
【0169】
[熱的信頼性の判定基準]
○:熱処理後のダイシェア強度が、熱処理前のダイシェア強度の90%以上
△:熱処理後のダイシェア強度が、熱処理前のダイシェア強度の70%以上、90%未満
×:熱処理後のダイシェア強度が、熱処理前のダイシェア強度の70%未満
【0170】
(8)電気的信頼性
IPC−B−25のくし型テストパターンBを用意した。このくし型テストパターンBの表面の全体を30μmの厚みの硬化性組成物層で覆うために、インクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから吐出して、塗布した。その後、硬化性組成物層を160℃で1時間熱硬化させた。次に、このサンプルを、HAST条件(不飽和水蒸気加圧条件:130℃、85RH%、5V)で、100時間まで電圧を印加し、マイグレーションが起こるまでの時間を評価した。マイグレーションが起こった直前の抵抗値、起こらなかったときは100時間後の抵抗値を評価することにより、電気的信頼性を評価した。
【0171】
組成及び結果を下記の表1,2に示す。
【0174】
実施例1〜15では、各性能に優れていたのに対し、酸無水物硬化剤を用いていない比較例2では、硬化性組成物のポットライフ(保存安定性)に劣っていた。
【0175】
比較例1及び3では、酸無水物硬化剤を用いているので、接着信頼性は良好であった。しかし、比較例1及び3では、液状の酸無水物硬化剤を使用しているので、ポットライフ(保存安定性)や印刷の解像度に劣っていた。