(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の折戸では、操作部材がコイルバネにより上方に付勢されることによって上戸車の位置決めを行っているだけであるため、枠体に対する戸本体の上下方向の遊び(隙間)の分だけコイルバネの付勢に抗して戸本体の上下動が可能である。
【0005】
しかし、戸本体の開閉操作の際に枠体に対し大きな上下動が生じると、下戸車や上戸車が枠体から外れ、戸本体が脱落するおそれがある。
このような戸本体の脱落は、前述した折戸に限られず、引き戸や開き戸などの各種の建具においても同様に生じる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、枠体から着脱可能な障子の使用時における脱落を防止できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、枠体と、前記枠体に開閉可能に取り付けられる障子とを備え、前記障子は、前記枠体に係合する係合位置および前記枠体への係合が解除される解除位置に移動可能な係合部材と、前記係合部材を前記係合位置および前記解除位置に移動操作可能な操作部材と、前記操作部材を案内可能に前記障子に形成された案内溝とを備え、前記案内溝は、前記操作部材の移動を規制する操作規制溝部と、前記操作部材の移動を可能とする操作可能溝部とを有して構成され、前記操作部材が前記操作規制溝部に位置する場合は、前記係合部材は前記係合位置から前記解除位置への移動が規制され、前記操作可能溝部は、前記障子の閉鎖移動中に、前記操作可能溝部に位置する前記操作部材が前記枠体に当接可能な位置に設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、操作部材を操作可能溝部に位置させることで、操作部材により係合部材を移動操作可能な状態となり、この操作部材の操作により係合部材を枠体に係合することによって障子を枠体に取り付けることができ、また、係合部材を枠体から係合解除することで障子を枠体から取り外すことができる。
他方、操作部材を操作規制溝部に位置させることで、操作部材により係合部材を移動操作不能な状態となり、障子の枠体に対する所定の取り付け状態を維持でき、障子の使用時における枠体からの脱落を防止できる。つまり、本発明では、操作部材を操作規制溝部に位置させることで係合部材を位置決めするため、障子の枠体に対する上下方向の遊び(隙間)があっても、障子の脱着可能な位置までの上下動を規制できる。このため、例えば折戸や引戸などにおいて、障子の開閉移動の際に、障子の枠体に対するかかり代を確保でき、障子の浮き上がりによる脱落を防止できる。
また、操作部材が操作可能溝部に位置した状態のまま障子を閉鎖移動させると、操作部材が枠体に干渉するため、容易には障子を閉鎖位置に位置させることはできない。このため、建具の施工における障子の動作確認などの際に、障子が着脱可能状態のままであるか否かを容易に確認できる。
さらに、建具の通常使用時において、障子が着脱可能状態のままでは障子を閉鎖位置に位置させにくくすることで、障子の操作者に障子が着脱可能状態のままであることの注意喚起を行うことができる。
【0009】
本発明の建具では、前記操作部材は、前記案内溝を覆う覆部を備え、前記覆部は、前記操作部材が前記操作規制溝部に位置した際には前記案内溝の全体を覆うとともに、前記操作部材が前記操作可能溝部に位置した際には前記案内溝の一部を露呈する構成とされることが好ましい。
このような構成によれば、操作部材が操作規制溝部に位置している場合、覆部により案内溝の全体を覆うことで、案内溝を目立たせることなく、シンプルな外観にできる。他方、操作部材が操作可能溝部に位置している場合、覆部から案内溝の一部が露呈されることで、外観上、案内溝の露呈部分を目立たせることができ、障子の取り付けや取り外しが可能な状態であることを容易に視認可能な状態にできる。
【0010】
本発明の建具では、前記操作部材は、前記係合部材を上下方向に移動操作可能であり、前記操作規制溝部と前記操作可能溝部とは、上下方向に交差する方向において互いに隣接して配置されることが好ましい。
このような構成によれば、例えば障子が開閉操作時に上下方向に振動しても、この振動に起因して操作部材が上下方向に交差する方向に移動される可能性は低い。このため、前述した上下方向の振動があっても、操作部材が操作規制溝部から操作可能溝部に意図せずに移動してしまうおそれを低減できる。
【0011】
本発明の建具では、前記操作規制溝部には、前記操作部材に係合可能な係合部が形成されることが好ましい。
このような構成によれば、操作部材を操作規制溝部から操作可能溝部に移動させる場合には、操作部材と係合部との係合を解除する必要がある。このため、前記係合を解除しない限り、操作部材を操作規制溝部に確実に位置させておくことができ、障子の枠体に対する取り付け状態を確実に維持できる。
【0012】
本発明の建具では、前記操作部材は、前記係合部材を上下方向に移動操作可能であり、前記係合部材は、上方への移動により前記枠体と係合可能であるとともに下方への移動により前記枠体との係合を解除可能に、前記障子の上端部に設けられ、前記障子は、前記枠体に対する前記係合位置に向けて前記係合部材を上方に付勢する付勢部材を備えることが好ましい。
このような構成によれば、付勢部材が係合部材を上方に付勢するため、操作部材が操作されない限り、係合部材は係合位置に位置する。このため、操作部材を手動操作しなくても、係合部材を枠体に押し当てることで付勢部材の弾性付勢力に抗して下方に移動させることができ、障子を枠体に簡単に取り付けることができる。
また、操作部材が操作可能溝部に位置している場合に障子を閉鎖移動すると、操作部材が枠体と干渉する。この際、操作者が操作部材と枠体とが干渉したことに気付かずに強い力で障子を閉鎖移動させてしまっても、操作部材は操作可能溝部から操作規制溝部へ横方向に移動するだけであり、障子や枠体などが破損するおそれをなくし得る。さらに、この障子の移動により操作部材を操作規制溝部に位置させることで、障子の使用時における脱落をも防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、枠体から着脱可能な障子の使用時における脱落を防止できる建具を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を
図1〜11に基づいて説明する。
図1〜7において、本実施形態に係る建具である折戸1は、浴室出入口に設けられる。折戸1は、浴室出入口に固定される枠体10と、枠体10内に配置される2枚の障子20A,20Bを備えた戸本体20と、戸本体20を枠体10に対し着脱操作可能な操作機構50とを備えて構成されている。
【0016】
枠体10は、上枠11と、下枠12と、左右の縦枠13とを四周枠組みして構成されている。上枠11および下枠12には、戸本体20を案内するレールとしてガイドレール14,15が設けられている。
ガイドレール14,15は、上枠11、下枠12の長手方向に連続して形成されているが、各縦枠13間の長さ寸法(見付け寸法)よりも短くされている。このため、ガイドレール14,15の両端と縦枠13との間には隙間(図示略)が形成されている。本実施形態では、この隙間によってレールの両端部に形成される切欠部が構成されている。
また、各縦枠13には、戸本体20の脱衣室側の面に当接する気密材13Aが設けられている。
【0017】
戸本体20は、前記2枚の障子20A,20Bと、これらの各障子20A,20Bを二つ折り可能に連結する連結框20Cとを備えたものである。
障子20Aは吊元側に位置し、障子20Bは戸先側に位置する。各障子20A,20Bは、上框21と、下框22と、左右の縦框23,24とを四周框組みした内部に面材25を配置して構成されている。障子20Bの浴室側および脱衣室側には、開閉操作用の取手26,27が設けられている。
縦框23,24は、戸本体20の左右両端に設けられる縦框23(戸先框)と、戸本体20の見付け方向中央部に設けられて前記連結框20Cで回動自在に連結された縦框24(召合せ框)とされている。また、各障子20A,20Bの一方の障子の縦框23は、戸本体20の吊元側縦框23Aとされ、他方の障子の縦框23は、戸本体20の戸先側縦框23Bとされている。
【0018】
各縦框23の上端には、
図4に示すように、同一構造(形状および寸法が同一)の係合部材である上戸車30がそれぞれ設けられている。
上戸車30は、ガイドレール14に係合可能に構成されている。吊元側縦框23Aに設けられる上戸車30は、
図5(A)に示す吊元側上戸車30Aとしてガイドレール14に沿って移動できないように設けられている。また、戸先側縦框23Bに設けられる上戸車30は、
図5(B)に示す戸先側上戸車30Bとしてガイドレール14に沿って摺動可能に設けられている。
【0019】
各上戸車30A,30Bは、それぞれ、
図4に示すように、縦框23の上端内部に取り付けられたケース31と、ケース31内に挿入配置されたガイドホルダ部32と、ガイドホルダ部32の上部に設けられたガイド部35とを備えている。
なお、
図5(A),5(B)に示すように、戸先側上戸車30Bにおけるガイドホルダ部32とガイド部35の取り付け向きは、吊元側上戸車30Aにおけるガイドホルダ部32とガイド部35の取り付け向きから90度回転された向きとなっている。
【0020】
ケース31は、
図4,6に示すように、縦框23の上端に固定された本体部311と、縦框23の内部に挿入固定された係合筒部312とを有して構成されている。本体部311には、ガイドホルダ部32が挿入可能な挿入孔311Aが形成されている。係合筒部312は、本体部311に連結片部313を介して連結されている。
【0021】
ガイドホルダ部32は、
図4,6に示すように、ガイド部35が上部に設けられたホルダ本体321と、ホルダ本体321の下方に設けられた円板状のフランジ322と、フランジ322から下方に向かって延長された係止軸部323とを備えている。そして、ガイドホルダ部32は、ケース31に上下方向に移動可能にかつ回動可能に挿入されている。
【0022】
フランジ322は、円板状に形成され、ホルダ本体321の下面から所定寸法離れて配置されている。
係止軸部323は、ガイドホルダ部32がケース31から外れないように係止するために設けられている。具体的には、
図6にも示すように、係止軸部323はフランジ322から下方に向かって延長され、その先端(下端)は二股に分かれている。係合筒部312の下面に突出された係止軸部323の先端には、係止爪324が左右方向に突設されており、この係止爪324を係合筒部312の下面に係合することで、ガイドホルダ部32はケース31から抜け出ることがないように係止される。
【0023】
ガイド部35は、
図5に示すように、プレート状の本体部351と、本体部351に形成された吊元用ガイド溝352および戸先用ガイド溝353とを備えている。ガイド溝352,353は互いに直交して形成され、それぞれガイドレール14に係合可能に構成されている。
【0024】
吊元用ガイド溝352は、その両端のうちの一端側が本体部351の端縁まで形成されて本体部351の端部に開口されている。他方、吊元用ガイド溝352の他端側は、本体部351の端縁手前までしか形成されておらず、その端部は係止壁部354で塞がれている。
戸先用ガイド溝353は、その両端が本体部351の端縁まで形成されて本体部351の端部に開口されている。
【0025】
図5(A)に示すように、吊元用ガイド溝352をガイドレール14に沿った横方向に向ければ、ガイドレール14と縦枠13間の隙間部分にガイド部35の係止壁部354が配置される。このため、ガイド部35は係止壁部354がガイドレール14の端面に当接し、ガイドレール14に沿った方向に移動不可能となる。従って、
図5(A)に示すガイド部35は、吊元側ガイド部35Aとして利用されている。
【0026】
図5(B)に示すように、戸先用ガイド溝353を横方向に向ければ、ガイド部35はガイドレール14に沿った方向に移動可能となる。このため、このガイド部35は、戸先側ガイド部35Bとして利用されている。
また、吊元用ガイド溝352に沿った方向のガイド部35の外形寸法は、戸先用ガイド溝353に沿った方向のガイド部35の外形寸法よりも小さく設定されている。
【0027】
各縦框23の下端には、ガイドレール15に沿って移動する下戸車40がそれぞれ設けられている。
下戸車40は、ガイドレール15に係合し、このガイドレール15に沿って摺動可能な摺動戸車である。そして、吊元側縦框23Aに設けられる下戸車40は、吊元側下戸車としてガイドレール15に沿って移動できないように設けられている。また、戸先側縦框23Bに設けられる下戸車40は、戸先側下戸車としてガイドレール15に沿って摺動可能に設けられている。
【0028】
このように上戸車30、下戸車40を介して枠体10に取り付けられた戸本体20は、戸先側上戸車30B、戸先側下戸車がガイドレール14,15に沿って吊元側縦框23Aに向かって横方向に移動することで折りたたまれながら開放移動可能であり、また、戸先側上戸車30B、戸先側下戸車がガイドレール14,15に沿って戸先側の縦枠13に向かって横方向に移動することで伸長されながら閉鎖移動可能である。
【0029】
[操作機構の構成]
図3に示すように操作機構50は、吊元側、戸先側の双方に設けられている。操作機構50は、
図4に示すように、縦框23に装着された操作部材51と、縦框23の上端部に開口して形成された案内溝56とをそれぞれ備えて構成されている。
操作部材51は、操作により縦框23の見付け方向において
図7に示す操作規制位置から
図8に示す操作可能位置まで移動可能であり、操作可能位置に位置した場合には上戸車30を縦框23に沿って上下方向(縦框23の見付け方向に直交する方向)に移動操作可能である。
案内溝56は、操作部材51の各方向の移動を案内可能な
図9に示す形状とされている。
【0030】
操作部材51は、操作部材本体52と、操作摘み53と、係合突起54と、被案内部55とを有して構成されている。
操作部材本体52の表面には、操作摘み53が形成され、操作部材本体52の裏面には、係合突起54および被案内部55が形成されている。
【0031】
操作部材本体52は、
図7に示すように矩形板状に形成されている。操作部材本体52の縦枠13側部分は、縦框23の湾曲形状に沿って湾曲して形成されている。この操作部材本体52は、操作規制位置において案内溝56の全体を覆う程度の縦方向幅寸法および横方向幅横寸法を有し、この案内溝56を覆う覆部52Aとして構成されている。
操作摘み53は、操作部材本体52の見付け方向内側下部から突出形成されている。
【0032】
係合突起54は、
図10に示すように、操作部材本体52の裏面に形成された基端部541と、基端部541から上方に延びた延出部542と、延出部542の上端から突出した係合部543とを有している。
基端部541は、上下方向に延びて形成されている。
延出部542は、操作部材本体52との間に縦框23の脱衣室側壁部が配置される隙間を形成している。
係合部543は、フランジ322の上面とガイドホルダ部32のホルダ本体321の下面との間に位置してガイドホルダ部32に係合する。
このような係合突起54は、上下方向の移動ではガイドホルダ部32およびガイド部35を上下方向に移動するが、横方向(縦框23の見付け方向)の移動では、ガイドホルダ部32およびガイド部35を移動させることなく単独移動する。
【0033】
被案内部55は、
図10に示すように、操作部材本体52の裏面に形成された四つの凸部55Aと、前述した係合突起54の基端部541とによって構成されている。
四つの凸部55Aは、仮想上の四辺形の角部にそれぞれ位置しており、操作部材本体52の裏面から案内溝56を通って縦框23の内部空間まで突出している。
基端部541の上面は、四つの凸部55Aのうちの上方に位置する二つの凸部55Aよりも上方に位置している。
【0034】
案内溝56は、
図9に示すように、横方向において左右に隣り合う操作規制溝部561および操作可能溝部562を有して構成されている。各溝部561,562は、上下方向に延びて形成されている。操作可能溝部562は、操作規制溝部561に対し縦枠13側(縦框23の見付け方向外側)に位置している。
操作規制溝部561の縦方向幅寸法は、係合突起54の基端部541の上面から四つの凸部55Aのうちの下方に位置する凸部55Aの下面までの縦方向幅寸法と略同じである。
操作可能溝部562の縦方向幅寸法は、操作規制溝部561の縦方向幅寸法よりも長く、係合部543の上面から四つの凸部55Aのうちの下方に位置する凸部55Aの下面までの縦方向幅寸法と略同じである。操作可能溝部562は、操作規制溝部561よりも下方に延出して形成されている。このため、操作規制溝部561は、操作可能溝部562の上部側に隣接して位置する。
各溝部561,562の横方向幅寸法は、四つの凸部55Aのうちの右側に位置する凸部55Aの右側面から左側に位置する凸部55Aの左側面までの横方向幅寸法と略同じである。
【0035】
このような案内溝56には操作部材51がはめ込まれている。操作部材51が操作規制位置に位置した場合、つまり、四つの凸部55Aおよび基端部541が操作規制溝部561に位置した場合には、操作規制溝部561によって操作部材51の上下方向の移動が規制された状態になる。この際、操作可能溝部562側に向かって横方向に移動可能な状態となる。また、操作部材51が操作可能位置に位置した場合、つまり、四つの凸部55Aおよび基端部541が操作可能溝部562に位置した場合には、凸部55Aが操作可能溝部562に沿って案内されながら上下方向に移動可能な状態となる。
操作摘み53は、案内溝56に対し脱衣室側に位置しており、操作部材51が操作規制溝部561に位置した際には、縦枠13の気密材13Aに当接しない位置に配置されるが、操作部材51が操作可能溝部562に位置した際には、気密材13Aに当接可能な位置に配置される。
案内溝56の全体の縦方向幅寸法および横方向幅寸法は、操作部材51の縦方向幅寸法および横方向幅寸法よりも小さい。操作部材51が操作規制溝部561に位置する際には、案内溝56の全体は
図7に示すように操作部材51の覆部52Aに覆われるが、操作部材51が操作可能溝部562に位置する際には、案内溝56のうちの一部である操作規制溝部561は
図8に示すように外部に露呈される。
図5に示すように、戸本体20(障子20A,20B)が閉鎖位置にある場合、気密材13Aは、横方向において操作摘み53の隣に位置し、かつ操作可能溝部562に対し脱衣室側に位置する。
【0036】
[本実施形態の施工]
以下、本実施形態に係る折戸1における戸本体20の吊り込み手順の一例について説明する。先ず、戸本体20を持ち上げ、枠体10に対して斜めに傾けながら差し込み、各下戸車40をガイドレール15に係合する。
次に、操作摘み53を横方向に操作して操作部材51を操作可能溝部562に位置させ、さらに操作摘み53を下方に操作して各上戸車30を
図8に二点鎖線で示す位置まで下降する。つづいて、戸本体20を傾き状態から起き上がらせて枠体10に沿って立てた状態とし、各上戸車30をガイドレール14に係合する。
次に、操作摘み53を上方に操作して各上戸車30を
図8に実線で示す位置まで上昇し、さらに操作摘み53を横方向に操作して操作部材51を操作規制溝部561に位置させ、戸本体20が枠体10から外れない状態とする。
この際、吊元側縦框23Aがガイドレール14,15に沿って移動しないように枠体10に取り付けられているか、戸先側縦框23Bがガイドレール14,15に沿って摺動可能に取り付けられているかを確認し、前述したように取り付けられていない場合には、各上戸車30の取り付け向きを変更する。
このようにして、戸本体20を枠体10に吊り込んで折戸1を形成する。
【0037】
折戸1の形成後、戸本体20を開閉操作して戸本体20が枠体10に正常に取り付けられているか否かを確認する。具体的には、取手26または取手27の操作により、吊元側縦框23Aを中心として障子20Aを回転するとともに、戸先側縦框23Bを中心として障子20Bを回転しつつ、戸本体20を伸長し(閉鎖移動)、また、折りたたむ(開放移動)。
そして、戸本体20を閉鎖移動させた際に戸本体20を閉鎖位置(完全閉鎖位置)まで容易に閉鎖移動できるか否かを確認する。戸本体20を閉鎖位置まで容易に閉鎖移動できた場合には、操作部材51が左右両方とも操作規制溝部561に位置していることが確認できる。また、戸本体20を閉鎖位置まで容易に移動できなかった場合には、左右の一方または両方の操作摘み53が縦枠13の気密材13Aに干渉しており(
図11参照)、操作部材51が操作可能溝部562に位置していることが確認できる。この場合には、操作部材51を操作して操作規制溝部561に位置させる。
このように戸本体20の取り付け状態を確認することで、折戸1の使用時に戸本体20が枠体10から脱落することを防止できる。
【0038】
以下、戸本体20の枠体10からの取り外し手順の一例について説明する。先ず、操作摘み53を操作して操作部材51を操作可能溝部562に位置させ、さらに操作摘み53を下方に操作して各上戸車30を下降する。次に、戸本体20を持ち上げて各下戸車40をガイドレール15から外し、戸本体20を枠体10から抜き出す。このようにして、戸本体20を枠体10から取り外す。
【0039】
[本実施形態の効果]
(1)操作部材51を操作可能溝部562に位置させることで、操作部材51により各上戸車30を上下方向に移動操作可能な状態とし、操作部材51の操作により各上戸車30を枠体10に係合することによって戸本体20を枠体10に取り付けることができる。また、各上戸車30を枠体10から係合解除することで戸本体20を枠体10から取り外すことができる。
他方、操作部材51を操作規制溝部561に位置させることで、操作部材51により各上戸車30を上下方向に移動操作不能な状態となり、戸本体20の枠体10に対する所定の取り付け状態を維持でき、戸本体20の使用時における枠体10からの脱落を防止できる。
また、操作部材51が操作可能溝部562に位置した状態のまま戸本体20を閉鎖移動させると、操作部材51が枠体10に干渉するため、容易には戸本体20を閉鎖位置に位置させることはできない。このため、折戸1の施工における戸本体20の開閉動作確認などの際に、戸本体20が着脱可能状態のままか否かを容易に確認できる。
さらに、折戸1の通常使用時において、戸本体20が着脱可能状態のままでは戸本体20を閉鎖位置に位置させにくくすることで、戸本体20の操作者に戸本体20が着脱可能状態のままであることの注意喚起を行うことができる。
【0040】
(2)操作部材51が操作規制溝部561に位置した場合には、覆部52Aにより案内溝56の全体を覆うことで、案内溝56を外部から目立たせることなく、シンプルな外観にできる。
他方、操作部材51が操作可能溝部562に位置した場合には、覆部52Aから案内溝56の一部である操作規制溝部561が外部に露呈することで、外観上、案内溝56の露呈部分を目立たせることができ、戸本体20が着脱可能な状態のままであることを容易に視認可能な状態にでき、操作者への注意喚起ができる。
(3)戸本体20が開閉操作時に上下方向に振動しても、この上下方向の振動に起因して操作部材51が横方向に移動される可能性は低いため、当該振動に起因して操作部材51が操作規制溝部561から操作可能溝部562に意図せずに移動してしまうおそれを低減できる。
【0041】
[変形例]
なお、本発明は以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、操作部材本体52は、覆部52Aとして構成され、操作部材51が操作規制溝部561に位置した際に案内溝56の全面を覆うが、これに限定されず、案内溝56を覆わない構成であってもよい。
【0042】
前記実施形態では、覆部52Aは、操作部材51が操作可能溝部562に位置した際に、案内溝56の操作規制溝部561を露呈させる程度の大きさ(横方向幅寸法)に形成されているが、これに限定されず、操作部材51が操作可能溝部562に位置した際においても、操作規制溝部561を露呈させることなく、案内溝56の全面を覆った状態を維持できる程度の大きさ(横方向幅寸法)に形成されていてもよい。
【0043】
前記実施形態では、操作機構50は、操作部材51と、案内溝56とを備えて構成されているが、これらの構成に加えて、例えば、
図12に示すように、枠体10に対する係合位置に向けて上戸車30を上方に付勢する付勢部材である復帰バネ57(コイルばね)を備えていてもよい。
復帰バネ57は、係止軸部323に挿通され、係合筒部312の上面とフランジ322の下面との間に介在されている。
【0044】
このような復帰バネ57を備えている場合、復帰バネ57が各上戸車30を上方に付勢するため、操作部材51が操作されない限り、各上戸車30はガイドレール14との係合位置に位置する。このため、操作部材51を手動操作しなくても、各上戸車30を枠体10に押し当てることで復帰バネ57の弾性付勢力に抗して下方に移動させることができ、戸本体20を枠体10に簡単に取り付けることができる。
また、操作部材51が操作可能溝部562に位置している場合に戸本体20を閉鎖移動すると、操作部材51が枠体10の気密材13Aと干渉する。この際、仮に操作者が操作部材51と気密材13Aとの干渉に気付かずに強い力で戸本体20を閉鎖移動させてしまっても、復帰バネ57の弾性力により被案内部55が操作可能溝部562の上部側に位置しているため、操作摘み53が気密材13Aや気密材13Aが取り付けられた縦枠13の取付部に押し当てられ、操作部材51が操作可能溝部562の上部側から操作規制溝部561に向かって横方向に移動するだけである。このため、戸本体20や枠体10などが破損するおそれを低減できる。さらに、戸本体20の移動により操作部材51を操作規制溝部561に位置させることで、戸本体20の使用時における脱落をも防止できる。
【0045】
前記実施形態では、案内溝56は、操作規制溝部561と操作可能溝部562とを有して構成されているが、これらの構成に加えて、例えば
図13(A)に示すように、操作部材51の操作可能溝部562への移動を規制する係合部である係合凹部563Aをさらに有していてもよい。
係合凹部563Aは、操作規制溝部561の下部に形成されている。係合凹部563Aの横方向幅寸法は、操作部材51の被案内部55の横方向幅寸法と略同じである。
係合凹部563Aが形成される場合、操作規制溝部561の横方向幅寸法は、係合凹部563Aの横方向幅寸法よりも若干大きくされる。このため、横方向において係合凹部563Aと操作可能溝部562との間には、被案内部55を係止可能な仕切り壁部が形成される。
このような係合凹部563Aは、操作規制溝部561に位置した操作部材51の自重に基づいて被案内部55と係合し、操作部材51の操作可能溝部562に向かう横方向の移動を規制する。係合凹部563Aと操作部材51との係合は、操作により操作部材51を若干上昇させることによって解除可能である。
このような係合凹部563Aに対し操作部材51の被案内部55が係合することで、操作部材51の操作可能溝部562に向かう横方向の移動を規制できる。そして、操作部材51を操作規制溝部561から操作可能溝部562に移動させる場合には、操作部材51と係合凹部563Aとの係合を解除する必要がある。このため、これらの係合を解除しない限り、操作部材51を操作規制溝部561に確実に位置させておくことができ、戸本体20の枠体10に対する取り付け状態を確実に維持できる。
【0046】
また、操作機構50が
図12に示す前述した復帰バネ57を備えている場合には、係合凹部563Aに代えて、
図13(B)に示す係合部である係合凹部563Bを備えていてもよい。
係合凹部563Bは、係合凹部563Aと概ね同様に構成されているが、操作規制溝部561の下部ではなく上部に逆向きに形成されている。この場合、操作規制溝部561の横方向幅寸法は、係合凹部563Bの横方向幅寸法よりも若干大きく形成される。このため、係合凹部563Bと操作可能溝部562との間には、被案内部55を係止可能な段部が形成される。
このような係合凹部563Bに対し、復帰バネ57によって上方に付勢される操作部材51の被案内部55が係合することで、操作部材51の操作可能溝部562に向かう横方向の移動を規制できる。そして、操作部材51を操作規制溝部561から操作可能溝部562に移動させる場合には、操作部材51と係合凹部563Bとの係合を解除する必要がある。このため、これらの係合を解除しない限り、操作部材51を操作規制溝部561に確実に位置させておくことができ、戸本体20の枠体10に対する取り付け状態を確実に維持できる。なお、係合凹部563Bと操作部材51との係合は、操作により操作部材51を若干下降させることによって解除可能である。
【0047】
前記実施形態では、折戸1を建具としたが、これに限定されず、引き戸、開き戸などの各種の建具であってもよい。