特許第6247166号(P6247166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社丸山製作所の特許一覧

<>
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000002
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000003
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000004
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000005
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000006
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000007
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000008
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000009
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000010
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000011
  • 特許6247166-薬剤散布装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247166
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】薬剤散布装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   A01M7/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-128417(P2014-128417)
(22)【出願日】2014年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-7150(P2016-7150A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 航
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−022562(JP,U)
【文献】 実開昭60−155967(JP,U)
【文献】 米国特許第04629087(US,A)
【文献】 実開平05−046228(JP,U)
【文献】 特開2008−017780(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0273063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
B05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤タンク(2)と、
前記薬剤タンク(2)の下方に配置されて、前記薬剤タンク(2)を支持する支持部(20)と、
前記薬剤タンク(2)の外表面に沿って延びる傾斜部(61c)を含むとともに、前記支持部(20)または前記支持部(20)に対して連結されたフレーム(30,40)に両端が固定された保持部(60)と、を備え、
前記薬剤タンク(2)の側面(2c)には、前方に向かうにつれて低くなるように水平面に対して傾斜する肩部(2k)が形成され、
前記保持部(60)の前記傾斜部(61c)は、水平面に対して傾斜すると共に、前記肩部(2k)の前側において前記肩部(2k)に沿って延びており、
前記フレーム(30,40)には、前記薬剤タンク(2)の後面(2j)に対面すると共に、前進することで前記後面(2j)に圧接される押圧部材(33)が設けられ、
前記薬剤タンク(2)は、前記支持部(20)および前記傾斜部(61c)の間に配置されると共に前記後面(2j)に前記押圧部材(33)が圧接されることによって固定されていることを特徴とする薬剤散布装置(1)。
【請求項2】
前記フレーム(30,40)は、前記支持部(20)に対して連結されて前記薬剤タンク(2)の前面側に延びる前部フレーム(30)と、前記支持部(20)に対して連結されて前記薬剤タンク(2)の後面側に延びる後部フレーム(40)と、を有し、
前記保持部(60)は、前記前部フレーム(30)に前端が固定され前記後部フレーム(40)に後端が固定されて、前記薬剤タンク(2)の一対の前記側面(2c,2c)に沿ってそれぞれ延びる前記傾斜部(61c)を含む一対の保持部材(61)を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤散布装置(1)。
【請求項3】
前記支持部(20)は、前方傾斜部(23a)および後方傾斜部(23b)を含むV字状の支持部材(23)を有し、
前記薬剤タンク(2)の底部(2a)は、前後方向の幅が下方に向かうにつれて小さくなるテーパ状をなしており、前記前方傾斜部(23a)および前記後方傾斜部(23b)の間に嵌まっている、請求項1または2に記載の薬剤散布装置(1)。
【請求項4】
前記支持部(20)は、一対の支持部材(23)を有し、
前記薬剤タンク(2)の底部(2a)には、前記支持部材(23)の間に嵌まり込む凸部(2b)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤散布装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤タンクを備える薬剤散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水田や畑作において中間管理作業を行うための薬剤散布装置の一種であるブームスプレーヤは、液状の薬剤を貯留する薬剤タンクと、薬剤を散布するブームノズル装置と、薬剤タンク内の薬剤を吸引しブームノズル装置に圧送するポンプ装置とを備えている。また、このようなブームスプレーヤは、走行車に設計当初から組み込まれている自走式のものと、走行車に取外し可能に搭載される搭載式のものがある。
【0003】
特許文献1に記載された薬剤散布装置の薬剤タンクは、合成樹脂の成形品である。この薬剤タンクは、インサート成形によってナットが埋め込まれたリブを有している。このナットを用いて、ポンプ装置等が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−117920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の薬剤タンクは、たとえば、前方のフレームと後方のマストとの間に配置され、これらのフレームとマストの間で前後方向に配列された複数個の連結管(パイプ等)がボルトまたはナットによって締結されることで固定されていた。また、薬剤タンクの底面には、インサートナット(埋め込みナット)が埋め込まれ、薬剤タンクを支持する下部のフレームと薬剤タンクとがボルトによって締結されていた。薬剤タンクがFRP製である場合には、ボルト類が薬剤タンクの底面にモールドされて、下部のフレームと薬剤タンクとがナットによって締結されていた。特に、高さ方向の寸法が小さい薬剤タンクや、自走式の走行車に搭載される前後方向に長い薬剤タンクでは、薬剤タンクの底面に複数個のアンカーが配置され、下部のフレームと薬剤タンクとがボルトによって締結される場合が多い。
【0006】
上記したような薬剤タンクの固定方法では、圃場を走行する際の揺れまたは振動により、ボルト締結部に応力が集中しやすい。そのため、薬剤タンクの肉厚を増したり、フレームを強化したり、アンカーボルトの個数を増やしたりする等の方策が取られている。しかし、これらは薬剤タンクやフレームの重量増加およびコスト増大の要因になり得る。
【0007】
また、連結管を用いた固定方式では、薬剤タンクの左右方向への膨らみが増大し得るが、その対策としては、薬剤タンクの肉厚を増すか、薬剤タンクの材質を強固なものに変更する必要があった。連結管は薬品に浸されるため、腐食しない材質の選定や塗装材を強靭なものにする必要があった。このことも、コスト増大の要因になり得る。
【0008】
薬剤タンクをフレームに固定する際にアンカーボルト類を用いる場合は、インサートナットまたはモールド金具が薬剤タンクに設けられるが、これらは樹脂から分離することが困難であり、十分なリサイクル化が難しいという問題もある。以上のように、薬剤タンクの固定構造が複雑化すると共に、コストが増大するといった問題があった。
【0009】
本発明は、シンプルかつ安価な薬剤タンクの固定構造を実現することができる薬剤散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の薬剤散布装置(1)は、薬剤タンク(2)と、薬剤タンク(2)の下方に配置されて、薬剤タンク(2)を支持する支持部(20)と、薬剤タンク(2)の外表面に沿って延びる傾斜部(61c)を含むとともに、支持部(20)または支持部(20)に対して連結されたフレーム(30,40)に両端が固定された保持部(60)と、を備え、薬剤タンク(2)の側面(2c)には、前方に向かうにつれて低くなるように水平面に対して傾斜する肩部(2k)が形成され、保持部(60)の傾斜部(61c)は、水平面に対して傾斜すると共に、肩部(2k)の前側において肩部(2k)に沿って延びており、フレーム(30,40)には、薬剤タンク(2)の後面(2j)に対面すると共に、前進することで後面(2j)に圧接される押圧部材(33)が設けられ、薬剤タンク(2)は、支持部(20)および傾斜部(61c)の間に配置されると共に後面(2j)に押圧部材(33)が圧接されることによって固定されていることを特徴とする。
【0011】
この薬剤散布装置(1)によれば、薬剤タンク(2)は、支持部(20)によって支持される。さらに、薬剤タンク(2)の外表面に沿って、保持部(60)の一部分(61c)が延びる。支持部(20)および保持部(60)の間に薬剤タンク(2)が配置されることで、薬剤タンク(2)は固定される。ここで、保持部(60)の両端は、支持部(20)または支持部(20)に対して連結されたフレーム(30,40)に固定されている。この構成により、支持部(20)および保持部(60)によって、薬剤タンク(2)を囲む枠状の構造が形成されており、その内部において薬剤タンク(2)が固定される。従来のように、薬剤タンク(2)をボルトまたはナット等により締結する必要がなく、シンプルな構造になる。具体的には、たとえば連結管を薬剤タンク(2)内に貫通させる必要がなく、また、薬剤タンク(2)にインサートナットを設ける必要がない。しかも、薬剤タンク(2)は、保持部(60)によって囲まれるため、水圧による薬剤タンク(2)の膨らみが抑制される。よって、薬剤タンク(2)の肉厚を増大させたり、強固な材質を用いたりする必要がなく、より安価な薬剤タンク(2)の固定構造が実現される。
【0012】
上記薬剤散布装置(1)において、保持部(60)は、前部フレーム(30)に前端が固定され後部フレーム(40)に後端が固定されて、薬剤タンク(2)の一対の側面(2c,2c)に沿ってそれぞれ延びる部分(61c)を含む一対の保持部材(61)を有する。この場合、一対の保持部材(61)が、薬剤タンク(2)の側面(2c,2c)を保持するため、側方への揺れ及び側面の膨らみを抑制する効果が高い。また、保持部材(61)によって前部フレーム(30)と後部フレーム(40)とが連結されるため、一方のフレームが、保持部材(61)を介して他方のフレームを支える構造となる。よって、フレームをシンプルかつ軽量にすることができる。
【0013】
上記薬剤散布装置(1)において、支持部(20)は、前方傾斜部(23a)および後方傾斜部(23b)を含むV字状の支持部材(23)を有し、薬剤タンク(2)の底部(2a)は、前後方向の幅が下方に向かうにつれて小さくなるテーパ状をなしており、前方傾斜部(23a)および後方傾斜部(23b)の間に嵌まっている。
上記薬剤散布装置(1)において、支持部(20)は、一対の支持部材(23)を有し、薬剤タンク(2)の底部(2a)には、支持部材(23)の間に嵌まり込む凸部(2b)が設けられている。この場合、薬剤タンク(2)の底部(2a)に設けられた凸部(2b)が一対の支持部材(23)の間に嵌まり込むため、薬剤タンク(2)の着座安定性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シンプルかつ安価な薬剤タンク(2)の固定構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る薬剤散布装置を示す斜視図である。
図2図1の薬剤散布装置を背面側から見た斜視図である。
図3図1の薬剤散布装置を底面側から見た斜視図である。
図4図1の薬剤散布装置の正面図である。
図5図1の薬剤散布装置の側面図である。
図6図1の薬剤散布装置の背面図である。
図7図1の薬剤散布装置の平面図である。
図8図5の一部を拡大して示す側面図である。
図9図4の一部を拡大して示す正面図である。
図10図8のX−X線に沿う断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る薬剤散布装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。本明細書及び特許請求の範囲において使用されている「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」等の方向を示す語は、水平面上の走行車に薬剤散布装置を設置した状態において、当該走行車の通常の前進方向を前方と定めた状態を基準としている。
【0017】
図1に示されるように、ブームスプレーヤ1は、たとえばトラクタ等の走行車(図示せず)の後部に搭載される薬剤散布装置である。従来と同様、ブームスプレーヤ1は、合成樹脂の成形品である薬剤タンク2と、この薬剤タンク2内の液状の薬剤を吸引して圧送するポンプ装置3と、ポンプ装置3から送られてくる薬剤を散布するブームノズル装置4とを備えている。
【0018】
ブームスプレーヤ1は、薬剤タンク2を固定するための設置フレーム10を備えている。設置フレーム10は、走行車に対してブームスプレーヤ1を固定する。設置フレーム10は、主として鋼製であり、薬剤タンク2の下方に配置された下部フレーム(支持部)20と、下部フレーム20に連結されて薬剤タンク2の前面2h側に延びる前部フレーム30と、下部フレーム20に連結されて薬剤タンク2の後面2j側に延びる後部フレーム40とを有する。ブームスプレーヤ1は、薬剤タンク2を取り囲むように配された設置フレーム10によって、薬剤タンク2を固定(または支持)する固定構造を備えている。
【0019】
図1図3に示すように、ブームノズル装置4は、後部フレーム40の下部に取り付けられたセンターブーム6と、センターブーム6の両端部に揺動可能に取り付けられた左右一対のサイドブーム7、7とを含んで構成されている。サイドブーム7には送液パイプ8が取り付けられており、ポンプ装置3から圧送された薬剤が送液パイプ8のノズル9から噴射されるようになっている。図3に示されるように、センターブーム6の後方には、センターブーム6と平行になるようにブーム6Aが設けられており、このブーム6Aに、送液パイプ8およびノズル9が取り付けられている。
【0020】
作業時には、センターブーム6と一対のサイドブーム7,7とはほぼ一直線上に配置され(図2参照)、左右方向にサイドブーム7を延ばして使用される。なお、左右一対のサイドブーム7,7を備える場合に限られず、センターブーム6に代えてターンブームを備え、サイドブーム7がターンブームの左右いずれか一方の先端部に取り付けられてもよい。この場合、ターンブームを180度揺動させることで、サイドブーム7を右方および左方に延ばすことが可能である。
【0021】
図2図3および図6に示されるように、ブームスプレーヤ1は、ブームノズル装置4を昇降させるための昇降装置50を備えている。昇降装置50は、後部フレーム40の一部を構成する門形のマスト11と、センターブーム6上に固定されたリール16およびハンドル17と、マスト11の上端部材13に固定された滑車18と、一端がマスト11の下部に連結され他端がリール16に巻きつけられたワイヤ19とを有する。ワイヤ19は、滑車18に引っ掛けられている。
【0022】
マスト11は、上下方向に延びる一対の角形の鋼管であるレール材12,12を有する。レール材12,12の上端部は、左右方向に延びる上端部材13によって連結されている。ブームノズル装置4のセンターブーム6は、レール材12に沿って上下方向に移動可能である。具体的には、ハンドル17が操作されてリール16が回転することにより、ワイヤ19がリール16に巻き取られ、ブームノズル装置4がレール材12に沿って上昇する。ハンドル17が操作されてリール16が逆回転することにより、ワイヤ19がリール16から繰り出され、ブームノズル装置4がレール材12に沿って下降する。リール16には、たとえばラチェット機構が設けられている。
【0023】
続いて、設置フレーム10の構成について説明する。図1および図3に示されるように、下部フレーム20は、薬剤タンク2を下方から支持している。薬剤タンク2の下方および前方を囲むようにして、一対のL字状の主フレーム21,21が設けられている。主フレーム21は、薬剤タンク2の下方で前後方向に延在する水平板部21aと、水平板部21aの前端に連結された起立板部21bとを有する。起立板部21bは、水平板部21aと一体的に成形されており、薬剤タンク2の前方で上下方向に延在する。主フレーム21の一部である水平板部21aが、下部フレーム20の構成要素になっている(図5参照)。
【0024】
左右方向に対向する2本の水平板部21a,21aには、左右方向に延びる連結部材21eが連結されている(図3参照)。連結部材21e上には、動力伝達部品を収容する直方体状のボックス22が固定されている。
【0025】
さらに、ボックス22上には、一対のV字状の支持部材23,23が固定されている。図3に示されるように、下部フレーム20は、主フレーム21の水平板部21aと、連結部材21eと、ボックス22と、支持部材23とを含んで構成されている。支持部材23は棒状であって定形性を有しており、たとえば円形のパイプからなる。支持部材23は、前方傾斜部23aと、後方傾斜部23bと、これらを連結する中央水平部23c(図3参照)とを有する。支持部材23の一部である中央水平部23cが、ボックス22上に固定されている。
【0026】
一対の支持部材23,23は、左右方向に離間しており、その離間距離は薬剤タンク2の幅よりも小さい。一対の支持部材23,23は、平行に延びている。図10に示されるように、一対の支持部材23,23の間に、薬剤タンク2の底部2aにおいて下方に突出する凸部2bが嵌まり込んでいる。このようにして、支持部材23上に薬剤タンク2が載置されている。
【0027】
図8に示されるように、薬剤タンク2の底部2aは、支持部材23の形状に対応するV字状をなしている。言い換えれば、薬剤タンク2の底部2aは、前後方向の幅が下方に向かうにつれて小さくなるテーパ形状をなしている。なお、中央水平部23c,23c間には底部2aは嵌まり込んでおらず、中央水平部23cよりも上方に位置する。薬剤タンク2の左側下部に膨出する膨出部2gには、ドレーン管24が接続されている。この膨出部2gは、支持部材23の左側方に張り出して、凸部2bよりもさらに下方に落ち込んでいる(図8および図10参照)。
【0028】
図10に示されるように、薬剤タンク2は、底部2aの凸部2bから側面2cに向けて、段状に形成されている。凸部2bの左右には、支持部材23の形状に対応してV字状に延びる谷部2dが形成されており、この谷部2dに、支持部材23が嵌まり込んでいる。谷部2dと凸部2bとの間には、左右方向の幅が下方に向かうにつれて小さくなる傾斜部2f,2fが形成されている。薬剤タンク2の設置時に薬剤タンク2を上方から支持部材23に向けて降ろすと、これらの傾斜部2f,2fが案内部として機能する。これにより、薬剤タンク2の設置が容易であり、薬剤タンク2を安定して支持部材23上に着座させることができる。
【0029】
薬剤タンク2を左右に分割する仮想の中心面に関して、支持部材23,23は略対称に設けられている。また、薬剤タンク2の底部2a(傾斜部2f等)は、当該中心面に関して略対称に形成されている。支持部材23,23のそれぞれは、薬剤タンク2の底部2aの外形に対応する形状を有している。
【0030】
図1に示されるように、前部フレーム30は、主フレーム21の起立板部21bと、起立板部21bの上端部に連結された上端部材21dと、起立板部21bの中央部に連結された連結部材21fとを含んで構成されている。左右方向に延びる上端部材21dは、薬剤タンク2の前面2hに当接している(図7も参照)。左右方向に延びる連結部材21fには、左右の支持部材23,23にそれぞれ溶接等により固着された2個のL字状の支持板25,25が固定されている(図4図9も参照)。各支持板25には孔部25aが形成されており(図9参照)、この孔部25aに、上記した前方傾斜部23a(支持部材23)の前端部が挿入された状態で固着されている。このように、前方傾斜部23a(支持部材23)の前端部は、連結部材21fに支持されている。
【0031】
上端部材21dの中央部には、トラクタ等のアッパーリンクへ接続される1個の接続部26が固定されている。一方、起立板部21b,21bの下端部には、左右の外方に突出して、トラクタ等のロアーリンクへ接続される一対の接続ピン27,27が固定されている。このように、前部フレーム30は、3点リンク用の接続部を備えている。
【0032】
図2および図3に示されるように、後部フレーム40は、昇降装置50の一部を兼ねている門形のマスト11を含んで構成されている。レール材12,12の下端部は、水平板部21aの後端部に対して固定されている。上下方向に延びるレール材12,12の中央部には、それぞれ左右方向に延びる第1連結部材28および第2連結部材29が固定されている。上側の第1連結部材28は、薬剤タンク2の上端部の位置に設けられている(図6参照)。下側の第2連結部材29は、薬剤タンク2の胴部(上下方向の中央部)の位置に設けられている。
【0033】
図2および図8に示されるように、第2連結部材29の中央部には、薬剤タンク2の後面2jに対面する支持板31が固定されている。支持板31には、雌ねじが形成された孔部が設けられており、この孔部に、後方からボルト32がねじ込まれている。前後方向に配置されたボルト32の先端(すなわち前端)には、たとえば溝形の押圧部材33が設けられている。この押圧部材33は、溝形の開放部が後方に向けられており、薬剤タンク2の後面2jと支持板31との間に設けられている。押圧部材33は、支持板31に対して前後方向にスライド自在であり、前面の板部が、薬剤タンク2の後面2jの中央部に対面している。ボルト32がねじ込まれて前進することにより、押圧部材33が前進し、薬剤タンク2の後面2jに圧接される。この状態で、薬剤タンク2の前面2hは主フレーム21の上端部材21dに当接し、薬剤タンク2が前後方向において固定される。ボルト32が緩められると、薬剤タンク2と上端部材21dおよび押圧部材33との間に隙間が生じ、前後方向における薬剤タンク2の固定が解除される。
【0034】
図3図6および図8に示されるように、第2連結部材29には、支持板31の左右両側の位置において、下方に延びる2個の支持板36,36が固定されている。支持板36,36は、左右の支持部材23,23にそれぞれ溶接等により固着されるものである。各支持板36には孔部36aが形成されており(図3参照)、この孔部36aに、上記した後方傾斜部23b(支持部材23)の後端部が挿入された状態で固着されている。このように、後方傾斜部23b(支持部材23)の後端部は、後部フレーム40の一部である支持板36に支持されている。
【0035】
ブームスプレーヤ1の設置フレーム10は、上方および左右側方から薬剤タンク2を保持する保持フレーム(保持部)60を備える。保持フレーム60は、一対の保持部材61,61を有する。保持部材61は、棒状であって定形性を有しており、たとえば円形のパイプからなる。図5および図8に示されるように、保持部材61は、前方鉛直部61aと、後方水平部61bと、これらを連結する中央傾斜部61cとを有する。一対の保持部材61,61は、左右方向に離間しており、その離間距離は薬剤タンク2の幅よりも小さく、支持部材23,23の離間距離よりも大きい。一対の保持部材61,61は、平行に延びている。
【0036】
図8に示されるように、前方鉛直部61aの下端部(前端)は、上端部材21dの両端部に対してボルト・ナット等により固定されている。後方水平部61bの後端部は、第1連結部材28の両端部に対してボルト・ナット等により固定されている。そして、中央傾斜部61cは、薬剤タンク2の外表面に沿って延びている。薬剤タンク2の側面2cの上部には、肩部2kが形成されている。水平面(前後方向)に対する肩部2kの傾斜角度は、中央傾斜部61cの傾斜角度に略等しい。中央傾斜部61cは、肩部2kに沿って延びている。
【0037】
図9に示されるように、薬剤タンク2の側面2cには、肩部2kと頂部2mとの間において、左右方向の幅が上方に向かうにつれて小さくなる傾斜部2n,2nが形成されている。中央傾斜部61cは、傾斜部2nに沿って延びている(図7も参照)。薬剤タンク2の設置時に薬剤タンク2に保持部材61を乗せると、これらの傾斜部2n,2nが案内部として機能する。これにより、薬剤タンク2に対する保持部材61の設置が容易である。
【0038】
薬剤タンク2を左右に分割する仮想の中心面に関して、保持部材61,61は略対称に設けられている。また、薬剤タンク2の肩部2kおよび傾斜部2nは、当該中心面に関して略対称に形成されている。保持部材61,61のそれぞれは、薬剤タンク2の外形(側面2c、すなわち肩部2kおよび傾斜部2nの外形)に対応する形状を有している。
【0039】
ブームスプレーヤ1の薬剤タンク2およびその設置フレーム10では、薬剤タンク2は、下部フレーム20および保持フレーム60の間に配置されることによって、固定されている。より具体的には、図8に示されるように、支持部材23および保持部材61によって、薬剤タンク2を上下から挟み込むことで保持している。また、保持部材61によって上端部材21d(前部フレーム30)とレール材12(またはマスト11)とが連結されている。よって、レール材12(またはマスト11)の倒れが抑制されている。また、図9に示されるように、一対の保持部材61,61によって薬剤タンク2を挟み込み、横方向の揺れおよび薬剤タンク2の膨らみを抑制している。また、支持部材23,23によって薬剤タンク2の凸部2bを挟み込むことによっても、横方向の揺れを抑制している。
【0040】
本実施形態のブームスプレーヤ1によれば、薬剤タンク2は、下部フレーム20によって支持される。さらに、薬剤タンク2の外表面に沿って、保持フレーム60の中央傾斜部61cが延びる。下部フレーム20および保持フレーム60の間に薬剤タンク2が配置されることで、薬剤タンク2は固定される。保持フレーム60の両端は、下部フレーム20に対して連結された前部フレーム30および後部フレーム40に固定されている。この構成により、下部フレーム20および保持フレーム60によって、薬剤タンク2を囲む枠状の構造が形成されており、その内部において薬剤タンク2が固定される。従来のように、薬剤タンク2をボルトまたはナット等により締結する必要がなく、シンプルな構造になる。具体的には、たとえば連結管を薬剤タンク内に貫通させる必要がなく、また、薬剤タンク2にインサートナットを設ける必要がない。この構成は、組み立て容易性の向上に寄与する。さらには、フレーム(下部フレーム20、前部フレーム30、後部フレーム40等)への応力の集中を軽減するという効果も奏する。応力の集中が軽減されると、薬剤タンク2の肉厚を増したり、フレームを強化したり、アンカーボルトの個数を増やしたりするといった対策は不要である。その結果として、フレームが軽量化され、コストが低減される。また、インサートナットやモールド金具を樹脂から分離する必要がないため、部品の完全リサイクル化も可能であり、環境面に配慮された製品を提供可能である。しかも、薬剤タンク2は、保持フレーム60によって囲まれるため、水圧による薬剤タンク2の膨らみが抑制される。よって、薬剤タンク2の肉厚を増大させたり、強固な材質を用いたりする必要がなく、より安価な薬剤タンク2の固定構造が実現される。
【0041】
また、一対の保持部材61,61が、薬剤タンク2の左右の側面2cを保持するため、側方への揺れ及び側面2cの膨らみを抑制する効果が高い。また、保持部材61によって前部フレーム30と後部フレーム40とが連結されるため、前部フレーム30が、保持部材61を介して後部フレーム40を支える構造となる。よって、フレームをシンプルかつ軽量にすることができる。その結果として、ブームスプレーヤ1全体として、軽量かつ安価な製品の提供が可能となっている。
【0042】
また、薬剤タンク2の底部2aに設けられた凸部2bが支持部材23,23の間に嵌まり込むため、薬剤タンク2の着座安定性が向上している。
【0043】
また、ブームノズル装置4を昇降させる昇降装置50のレール材12が、後部フレーム40の一部を兼ねている。レール材12は、主フレーム21の水平板部21aに対して連結される位置(下端部)よりも上方(薬剤タンク2の上端部の位置)で、保持部材61によって、主フレーム21の上端部材21dに対して連結される。よって、レール材12に求められる強度を低減し、シンプルかつ軽量なレール材12の提供を可能にしている。特に、レール材12の長さが薬剤タンク2の頂部2mより上方にオーバーハングする場合であっても、薬剤タンク2を固定するための保持部材61を利用して主フレーム21とレール材12とを連結できる。よって、重量の増大やコストの上昇を抑えられる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない
【0045】
例えば、上記実施形態では3点ヒッチによるトラクタ搭載式のブームスプレーヤ1について説明したが、本発明は、他の型式の薬剤散布装置にも適用可能である。たとえば、図11に示されるように、2点ヒッチ70,70が適用されたブームスプレーヤ1Aであってもよい。また、自走式のブームスプレーヤであってもよい。
【0046】
上記したように搭載式または自走式の薬剤散布装置では、特に薬剤タンク2の幅方向又は前後方向の寸法が制約され易いため、フロント荷重を確保するためにタンク形状が縦長になることが多い。すなわち、タンク重心位置が前方に移動される。このような薬剤散布装置に対しても、本発明によれば、フレームへの応力集中を軽減し、軽量かつシンプルな構造にすることができる。その結果として、安価な製品の提供が可能になる。
【0047】
また、一対の保持部材61,61を備える場合に限られず、1本の保持部材を備えてもよい。この場合、薬剤タンク2を取り囲むように、薬剤タンク2の周囲に保持部材を延在させてもよい。また、前部フレーム30および後部フレーム40を備える場合に限られず、下部フレーム20すなわち支持部のみを備えてもよい。この場合、支持部によって支持された薬剤タンク2を上方から、または、上方および側方から、保持部によって保持すればよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A…ブームスプレーヤ(薬剤散布装置)、2…薬剤タンク、2a…底部、2b…凸部、10…設置フレーム、20…下部フレーム(支持部)、23…支持部材、30…前部フレーム、40…後部フレーム、60…保持フレーム(保持部)、61…保持部材、61c…中央傾斜部(薬剤タンク2の外表面に沿って延びる部分)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11