特許第6247210号(P6247210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247210
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】アルブミン製剤及び用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/02 20060101AFI20171204BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20171204BHJP
【FI】
   C12N5/02ZNA
   C12N5/0735
【請求項の数】20
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2014-519285(P2014-519285)
(86)(22)【出願日】2012年7月5日
(65)【公表番号】特表2014-520535(P2014-520535A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012045505
(87)【国際公開番号】WO2013006675
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年7月3日
(31)【優先権主張番号】61/504,406
(32)【優先日】2011年7月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11174267.2
(32)【優先日】2011年7月15日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509198343
【氏名又は名称】アルブミディクス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ マリー マーケル
(72)【発明者】
【氏名】リューク ディマシ
(72)【発明者】
【氏名】コレット アン シェーハン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ハーベイ モートン
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−542761(JP,A)
【文献】 特表平04−504253(JP,A)
【文献】 特開2009−137947(JP,A)
【文献】 J. Am. Chem. Soc.,1930年,Vol.52, No.7,p.2855-2863
【文献】 Product Information, ALBUMIN,HUMAN,sigma-aldrich,1996年,URL,https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Sigma/Product_Information_Sheet/a6909pis.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
CAplus/REGISTRY(STN)
FSTA/FROSTI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する50〜400g・L−1のアルブミンと、溶媒と、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアンモニウムから選択される200mM〜1000mMのカチオンとを含み、pHが6.0〜7.0の組成物であって、更に1mM以下のオクタノエート(octanoate)を含む組成物。
【請求項2】
1mM未満のオクタノエートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
カチオンが200〜500mM存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
カチオンが200〜350mM存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
pHが6.5である、請求項1〜4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
カチオンが、ナトリウムイオンである、請求項1〜5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(a)5mM未満のアミノ酸;及び/又は
(b)20mg/L未満の洗剤
を含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
アミノ酸がN−アセチルトリプトファンを含み、及び/又は、洗剤がポリソルベート80を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
アミノ酸を1mM未満含み、及び/又は、洗剤を5mg/L未満含む、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
アミノ酸を含まない、及び/又は、洗剤を含まない、請求項7〜9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
アルブミンが、アルブミンの融合体(fusion)又はコンジュゲーション(conjugation)である、請求項1〜10の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
アルブミンが組換アルブミンである、請求項1〜11の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
(a)50〜250g/Lのアルブミンと、
(b)225〜275mMのNaと、
(c)20〜30mMのホスフェート(phosphate)とを含み、
pHが6.5である、請求項1〜12の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
オクタノエートを含まない、請求項1〜13の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載の組成物と、基本培地とを含む細胞培養培地。
【請求項16】
細胞培養培地が幹細胞培養培地である、請求項15に記載の細胞培養培地。
【請求項17】
無血清培地である、請求項15又は16に記載の細胞培養培地。
【請求項18】
細胞を培養するための、請求項1〜14の何れか一項に記載の組成物、又は、請求項15〜17の何れか一項に記載の細胞培養培地の使用。
【請求項19】
細胞を培養する方法であって、請求項15〜17の何れか一項に記載の細胞培養培地中で、細胞をインキュベートすることを含む方法。
【請求項20】
細胞が幹細胞を含む、請求項18に記載の使用、又は、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はコンピュータ読み取り可能な形式の配列表を含む。当該配列表は引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明はアルブミンの新たな製剤及び当該アルブミン製剤の用途に関する。
【0003】
アルブミンは血漿中に最も豊富に存在するタンパク質である。多数の哺乳類及び鳥類について、アルブミンの報告及び特性決定がなされてきた。アルブミンは浸透圧を適切に維持する機能に関与し、更には血流における種々の化合物の輸送にも関与していると考えられている。アルブミンは、重症の火傷、ショック、及び失血による患者の治療に用いられるタンパク質でもある。また、アルブミンは、薬理活性化合物の賦形剤としても用いられる。斯かる薬理活性化合物の多くは、アルブミンの可溶性凝集体及び/又は不溶性凝集体の形成を低減する等の目的で、安定化を行う必要がある。更にアルブミンは、幹細胞等の真核細胞の生育を促進するための添加剤としても用いられる。アルブミン融合タンパク質は、アルブミン又はその変異体若しくは断片にタンパク質を融合したものであり、タンパク質の半減期の延長又は短縮、例えばインビボ(in vivo)半減期の延長に寄与する。例えばタンパク質や化学物質等のコンジュゲーションパートナーをアルブミンに融合することにより、コンジュゲーションパートナーの半減期の延長又は短縮、例えばインビボ(in vivo)半減期の延長を図ることができる。現在では、アルブミンを血清等の血液製剤から取得したり、酵母等の微生物(例えばWO1996/037515、WO2000/044772等)や、トランスジェニック動物又は植物において組換え産生したりすることが可能である。通常、ユーザーの要求に応え、及び/又は、高収率の製品を達成するべく、実質的に純粋な製品を提供する目的で、アルブミンを産生源から精製する。細胞培養物や医薬等の一部の技術分野では、動物由来成分を実質的に含まない、或いは全く含まない製品への要請がある。
【0004】
精製されたアルブミンは、最終的な溶液形態では(固体形態のアルブミンと比べて)比較的不安定である。よって、その保存可能期間を最大限延長するために、凍結乾燥、及び/又は、最終液体製剤への安定化剤の添加が行われる。しかし、凍結乾燥は調製に係る総費用が大幅に高くなる上に、液体製剤が必要な場合には消費者が凍結乾燥品を再懸濁する必要があり、不便である。より好ましい液体製剤の場合、アルブミンに添加される一般的な安定化剤としては、n−アセチル−トリプトファン、オクタン酸 (オクタノエート、カプリレート)及び/又はポリソルベート80(例えばTween(登録商標))が挙げられる。WO2000/044772のアルブミンはオクタン酸によって安定化されている。Arakawa及びKita(2000)は、ウシ血清アルブミンの熱による凝集に対してカプリレート及びアセチルトリプトファネートが有する安定作用を開示する(Biochimica et Biophysica Acta Vol 1479: 32-36)。Hosseini等(2002)は、熱処理ヒトアルブミンのカプリレート及びアセチルトリプトファネートによる安定化に関する研究結果を開示する(Iranian Biomedical Journal 6(4): 135-140)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等はオクタン酸が、哺乳類細胞培養物、特に幹細胞培養物に対して有害となり得ることを見出した。更に、ポリソルベート80(Tween(登録商標))も、哺乳類細胞培養物に対して有害となり得る。よって、哺乳類細胞培養物に対して有害でない、安定なアルブミン液体製剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、安定性が改善されたアルブミンの液体製剤を提供する。ここで安定性は、例えば製剤におけるアルブミンの可溶性凝集体又はアルブミンの不溶性凝集体のレベルの低減により表される。また、本発明は、斯かる製剤を用いた方法や、斯かる製剤の使用、例えば哺乳類細胞培養物、特に幹細胞培養物も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、吸光度(A350)が、視覚可能な(不溶性)凝集物の尺度である0.1吸光度単位(AU)だけ上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミン組成物(10mg/mL)の安定性に対する、pHとn−アセチルトリプトファン濃度の影響を示す。
【0008】
図2図2は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミン組成物(10mg/mL)の安定性に対する、pHとホスフェート濃度の影響を示す。
【0009】
図3図3は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミン組成物(10mg/mL)の安定性に対する、pHとナトリウム濃度の影響を示す。
【0010】
図4図4は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミン組成物(10mg/mL)の安定性に対する、pHとナトリウム濃度(広範囲のナトリウム濃度について)の影響を示す。
【0011】
図5図5は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミン組成物(50mg/mL)の安定性に対する、pHとナトリウム濃度の影響を示す。
【0012】
図6図6は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、pH6.5のアルブミン組成物の安定性に対する、ナトリウム濃度とアルブミン濃度の影響を示す。
【0013】
図7図7は、40℃で14日間インキュベートされるアルブミン組成物について、ナトリウム濃度と相対的モノマー含量(%)との関係を示す。
【0014】
図8図8は、40℃で14日間インキュベートされるアルブミン組成物について、ナトリウム濃度と相対的ポリマー含量(%)との関係を示す。
【0015】
図9図9は、本発明のアルブミン製剤の脂肪酸プロフィールを示す。
【0016】
図10図10は、本発明のアルブミン製剤の、ICP−OESによる金属イオンプロフィールを示す。
【0017】
図11図11は、40℃で4週間インキュベーション後の、残存モノマー含量により測定されるアルブミンの安定性に対する、ナトリウム濃度とアルブミン濃度の影響を示す。
【0018】
図12図12は、吸光度(A350)が0.2AUだけ上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミンの安定性に対する、カチオン種とカチオン濃度の影響を示す。
【0019】
図13図13は、吸光度(A350)が0.12AUだけ上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミンの安定性に対する、ナトリウムイオン濃度とアニオン分子種の影響を示す。
【0020】
図14図14は、65℃で2時間インキュベーション後の、残存モノマー含量により測定されるアルブミンの安定性に対する、ナトリウムイオン濃度とアニオン分子種の影響を示す。
【0021】
図15図15は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミンの安定性に対する、異なる緩衝性アニオンの存在下でのナトリウムイオン濃度(NaClと緩衝液の両方からのナトリウムの濃度が含まれる)の影響を示す。
【0022】
図16図16は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミンの安定性に対する、緩衝性イオンの非存在下での又は緩衝性イオンとして50mMクエン酸塩の存在下での、ナトリウムイオン濃度(クエン酸ナトリウム緩衝液からのナトリウムイオンの寄与は無視される)の影響を示す。
【0023】
図17図17は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、異なるアルブミンとアルブミン変異体の安定性に対する、ナトリウムイオン濃度の影響を示す。
【0024】
図18図18は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、マウス血清アルブミンの安定性に対する、ナトリウムイオン濃度の影響を示す。
【0025】
図19図19は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、アルブミンの安定性に対する、pHとナトリウムイオン濃度の影響を示す。
【0026】
図20図20は、吸光度(A350)が0.1AU上昇するのにかかる時間(秒)により測定される、pH5.0でのアルブミンの安定性に対する、ナトリウムイオン濃度の影響を示す。
【0027】
図21図21は、65℃で2時間インキュベーション後の、残存モノマー含量により測定される、pH7.0、7.5、及び8.0でのアルブミンの安定性に対する、ナトリウムイオン濃度の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
用語「細胞培養培地」、「培養培地」、及び「培地調製物」は、細胞を培養するか又は増殖させるための栄養溶液をいう。
【0029】
「無血清」培地は、血清(例えば、胎児牛血清(FBS)、ウマ血清、ヤギ血清、又は当業者に公知の任意の他の動物由来の血清)を含まない培地である。
【0030】
用語「基本培地」は、細胞の増殖を支持することができる任意の培地をいう。基本培地は、標準の無機塩、例えば亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ならびに微量元素、ビタミン、エネルギー源、緩衝系、及び必須アミノ酸を供給する。適切な基本培地は、特に限定されないが、アルファ最小必須培地(アルファMEM);イーグル基本培地(BME);アールのBSSを有するイーグル基本培地;DME/F12;L−グルタミンを有する高グルコースDMEM;L−グルタミンを含まない高グルコースDMEM;L−グルタミンを有するDMEM:F12 1:1;ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM);F−10;F−12;グラスゴーの最小必須培地(G−MEM);L−グルタミンを有するG−MEM;グレース完全昆虫培地;FBSを含まないグレース昆虫培地;L−グルタミンを有するハムF−10;L−グルタミンを含むハムF−12;HEPES及びL−グルタミンを含むIMDM;HEPESを含みL−グルタミンを含まないIMDM;IPL−41昆虫培地;イスコフ改変ダルベッコ培地;L−グルタミンを含まないL−15(Leibovits);L−グルタミン及びフェノールレッドを含まないL−15(Leibovits)(2X);マッコイ5A改変培地;培地199;L−グルタミン及びフェノールレッド(2X)を含まないMEMイーグル;L−グルタミンを含むMEMイーグルアールのBSS;L−グルタミンを含まないMEMイーグル−アールのBSS;L−グルタミンを含まないMEMイーグル−ハンクスBSS;最小必須培地(MEM);最小必須培地−アルファ(MEM−アルファ);L−グルタミンを含むNCTC−109;L−グルタミンを含むリヒターCM培地;RPMI1640;L−グルタミンを含むRPMI1640;L−グルタミンを含まないRPMI1640;HEPES、L−グルタミン及び/又はペニシリン−ストレプトマイシンを含むRPMI1640;シュナイダーの昆虫培地;又は当業者に公知の任意の他の培地を含む。幹細胞培養のための好適な基本培地は、MEF、DMEM、CTS、及びDMEM/F−12を含む。
【0031】
用語「アルブミン」は、ヒト血清アルブミン(HSA)又はHSAドメインと同じか又は類似した3次構造を有するタンパク質を意味し、HSA又は関連するドメインの類似した性質を有する。類似した3次構造は、例えば、親アルブミンで言及される種からのアルブミンの構造である。アルブミンの主要な特性のいくつかは、i)血漿の量を制御する能力、ii)約19±5日間の長い血漿半減期、iii)リガンド結合性、例えばビリルビン脂肪酸、ヘミン、及びチロキシンを含む酸性、親油性化合物などの内因性分子の結合(例えば、Kragh-Hansen et al, 2002, Biol. Pharm. Bull. 25, 695の表1を参照、参照することにより本明細書に組み込まれる)、iv)例えば、ワルファリン、ジアゼパム、イブプロフェン、及びパクリタキセルなどの薬物などの、酸性又は電気陰性度性を有する小有機化合物の結合(これも、Kragh-Hansen et al, 2002, Biol. Pharm. Bull. 25, 695の表1を参照、参照することにより本明細書に組み込まれる)である。タンパク質又はフラグメントをアルブミンとして特徴付けるのに、これらの性質の必ずしもすべてを満たす必要は無い。例えば、フラグメントがあるリガンド又は有機化合物の結合に関与するドメインを含まない場合、このようなフラグメントの変異体がこれらの性質を有することを期待されない。アルブミンという用語は、変異体、アルブミンもしくはアルブミン変異体の融合体、及び/又はコンジュゲーションなどの誘導体を含む。
【0032】
用語「変異体」は、1つ又はそれ以上の(数個)の位置で、改変、すなわち置換、挿入、及び/又は欠失を含む親アルブミンから誘導されるポリペプチドを意味する。置換は、ある位置を占めるアミノ酸を別のアミノ酸で置換することを意味し、欠失は、ある位置を占めるアミノ酸の除去を意味し、挿入は、ある位置を占めるアミノ酸に隣接して1〜3個のアミノ酸を付加することを意味する。改変されたポリペプチド(変異体)は、親アルブミンをコードするポリヌクレオチド配列の修飾による、ヒトの介入を介して得ることができる。変異体アルブミンは、配列番号2と、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらにさらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であり、親アルブミン又はHSAのような類似の3次構造の主要な性質の少なくとも1つを保持する。本発明の目的において、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)(好ましくはバージョン5.00又はそれ以降)のNeedleプログラムで実行されるように、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して決定される(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)。使用されるパラメータは、ギャップオープニングペナルティ10、ギャップエクステンションペナルティ0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長の同一性」(nobriefオプションを使用して得られる)と表記されるNeedleの結果は、以下のように計算される:(同一の残基×100)/(整列の長さ−整列中のギャップの総数)。
【0033】
この変異体は、親アルブミンと比較した時、FcRnに対する改変された結合親和性を有するか、及び/又は内皮、上皮、及び/又は中皮細胞単層を横切るトランスサイトーシスの変化した速度を有してもよい。変異体ポリペプチド配列は、好ましくは天然には見出されないものである。変異体は、例えばアルブミンの少なくとも100、150、200、250、300、350、450、500、550の連続するアミノ酸を含むか又はこれらからなるフラグメントを含む。
【0034】
用語「野生型」(WT)アルブミンは、天然の動物又はヒトに見られるアルブミンと同じアミノ酸配列を有するアルブミンを意味する。配列番号2は、ヒト(Homo sapiens)由来の野生型アルブミンの例である。
【0035】
用語「親」又は「親アルブミン」は、本発明で使用され得るアルブミン変異体を産生するために改変されるアルブミンを意味する。親は、天然に存在する(野生型)ポリペプチド又はそのアレレ又はその変異体、例えばPCT/EP2010/066572に記載の変異体又はPCT/EP2011/055577に記載の変異体もしくは誘導体でもよい。
【0036】
用語「融合体」は、アルブミン(又はその変異体もしくはフラグメント)と非アルブミンタンパク質との遺伝的融合体を意味する。非アルブミンタンパク質は、治療的、予防的、又は診断的タンパク質でもよい。アルブミン融合体の例は、EP624195、WO2001/079271、WO2003/059934、WO2003/060071、WO2011051489、PCT/EP11/055577、及びEP11164955(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0037】
用語「コンジュゲーション」は、非アルブミン成分が化学的にコンジュゲートされたアルブミン(又はその変異体もしくはフラグメント又は融合体)を意味する。非アルブミン成分は、治療、予防、又は診断用タンパク質であってもよい。アルブミンコンジュゲーションの例は、PCT/EP11/055577及びEP11164955(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0038】
用語「浮遊培養」は、培養中の大部分又はすべての細胞が懸濁液中に存在しており、容器表面もしくは容器内の別の表面に付着している培養容器内の細胞(接着細胞)が少数であるか又は全く無いことを意味する。「浮遊培養」は、約50%、60%、65%、75%、85%、又は95%を超える細胞が懸濁液中にあることができ、培養容器上の又はその中の表面上に結合していない。
【0039】
用語「接着培養」は、培養中の大部分又はすべての細胞が、容器表面に又は容器内の別の表面に付着して存在しており、培養容器内で浮遊している細胞は少数であるか又は全く無いことをいう。「接着培養」は、50%、60%、65%、75%、85%、又は95%を超える細胞が接着していてもよい。
【0040】
本明細書において用語「哺乳動物」は、ヒト又は非ヒト哺乳動物であって、特に限定されないが、ブタ、ヒツジ、ウシ、げっ歯類、有蹄動物、ブタ、ヒツジ、子ヒツジ、ヤギ、ウシ、シカ、ラバ、ウマ、霊長類(例えばサル)、イヌ、ネコ、ラット、及びマウスを含む。
【0041】
用語「細胞」は、特に限定されないが、本明細書に記載のヒト又は非ヒト哺乳動物細胞などの任意の細胞を含む。細胞は、正常細胞又は異常細胞(例えば、形質転換細胞、樹立された細胞、又は疾患組織試料から得られた細胞)でもよい。細胞は、繊維芽細胞又はケラチン生成細胞などの体細胞でもよい。好適な細胞は、特に限定されないが、胚幹細胞、胎児幹細胞、成体幹細胞、及び多能性幹細胞、例えば誘導多能性幹細胞などの幹細胞である。特に好適な細胞は、ヒト胚幹細胞、ヒト胎児幹細胞、成人幹細胞、及びヒト多能性幹細胞、例えば誘導されたヒト多能性幹細胞である。
【0042】
本発明の第1の形態は、アルブミンと、溶媒と、少なくとも175mMのカチオンとを含み、pHが約5.0〜約9.0の組成物であって、30mM以下のオクタノエートを含む組成物を提供する。このような組成物の利点は、組成物が哺乳動物細胞培養で使用される時、この調製物が、有用な寿命を有するのに充分に安定であり、哺乳動物細胞の健康に有害ではない(例えば、毒性ではない)アルブミンを提供することである。
【0043】
組成物は、カチオンに釣り合うアニオンを含有することが好ましい。
【0044】
溶媒は、水、又はリン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのリン酸緩衝液のような無機緩衝液、又は酢酸ナトリウムもしくはクエン酸ナトリウムなどの有機緩衝液などであってもよい。緩衝液はpHを安定化させることができる。リン酸ナトリウム(例えばNaH2PO4)は例えば、pH5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0のような好ましいpH緩衝剤である。
【0045】
本発明者らは、オクタノエートが細胞培養中の哺乳動物細胞に有害であることを観察した。従って、本組成物は低レベルのオクタノエートを含む。例えば、組成物は30mM未満のオクタノエート、さらに好ましくは約28、26、24、22、20、18、16、15、14、12、10、8mM未満のオクタノエート、さらにより好ましくは約6、5、4、3mM未満のオクタノエート、最も好ましくは約2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、又は0.001mM未満のオクタノエートを含む、ことが好ましい。組成物は実質的にオクタノエートを含まないことが好ましい。すなわち、組成物中のオクタノエートのレベルは、培養中の細胞、例えばインビトロ細胞培養のような細胞培養中の哺乳動物細胞(特に、ヒト幹細胞のような幹細胞)に対して有害作用を引き起こすのには充分ではないことが好ましい。最も好ましくは、組成物はオクタノエートを含まない(0mMのオクタノエート)。
【0046】
脂肪酸の好適なパラメータは、以下に示される。脂肪酸含量は、好ましくは複数の試料(例えば、2、3、4、又は5つの試料)の平均である。
【表0】
【0047】
また組成物の全脂肪酸含量は、20mM以下、さらに好ましくは15、10、5、4、3、2、又は1mM以下であることが好ましい。さらに、組成物は、脂肪酸を実質的に含まず、さらに好ましくは脂肪酸を全く含まないことが好ましい。
【0048】
100g/Lのアルブミンと、1mM以下のオクタノエートと、250mMのNa+とを含み、pHが約6.5であるアルブミン製剤の、脂肪酸プロフィールと金属イオンプロフィールはそれぞれ図9図10に提供される。これらは特に、好適なプロフィールである。アルブミン組成物は、図9図10のプロフィールの1つ又は両方に適合してもよい。
【0049】
カチオンは、少なくとも約175mMから、例えば少なくとも約200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、650、700、750、800、850、900、950、1000mMから存在することが好ましい。好適な最大カチオン濃度は、1000、950、900、850、800、750、700、650、600、575、550、525、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、及び250mMを含む。好適なカチオン濃度は200〜500mMを含む。より好適なのは、約200〜350mMのカチオン濃度である。最も好適なのは、約250mMのカチオン濃度である。
【0050】
組成物のpHは、約5.0〜約9.0、例えば約5.0、5.25、5.5、5.75、6.0、6.25、6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75、8.0、8.25、又は8.5〜約5.5、5.75、6.0、6.25、6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75、8.0、8.25、8.5、8.75、又は9.0でもよい。pHは、約5.0〜8.0、例えば約6.0〜約8.0、さらに好ましくは約6.0〜約7.0、又は6.0〜6.5であることが好ましい。また好ましくは、pHは約6.5である。
【0051】
組成物のカチオンは、何れのカチオンによって提供されてもよく、後述されるように1つ又はそれ以上の(数個の)クラス又は分子種により提供されてもよい。例えば、カチオンは、1価又は2価であるか、単原子又は多原子であってもよく、アルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えばカルシウム、マグネシウム)、又はアンモニウムの1つ又はそれ以上(数個)により提供されてもよい。カチオンは、ナトリウム及び/又はカリウム及び/又はマグネシウム、最も好ましくはナトリウム又はマグネシウムにより提供される。
【0052】
カチオンは、無機酸の塩(例えば、1族又は2族の金属又はアンモニウムの塩、例えば塩化ナトリウム)、2価の酸の塩(例えば、1族又は2族の金属又はアンモニウムの硫酸塩又はリン酸塩、例えば硫酸ナトリウム)、又は有機酸の塩(例えば、1族又は2族の金属又はアンモニウムの酢酸塩又はクエン酸塩、例えば酢酸ナトリウム)により提供されてもよい。
【0053】
アルブミンを安定化させるのに使用されるカチオンとアニオンは、本明細書に記載の(i)塩、及び/又は(ii)pH緩衝液により提供されてもよい。従って、単一のカチオンの2以上(数個)の供給源があってもよく、例えばNaは、pH緩衝液(リン酸ナトリウム)と塩(例えばNaCl)の両方により提供されてもよい。
【0054】
本発明の有用なアニオンは、無機アニオン、例えばリン酸塩、及びハロゲン化物、例えば塩化物、及び有機アニオン、例えば酢酸塩及びクエン酸塩を含む。アニオンは、1価又は2価でも、単原子又は多原子でもよい。好適なアニオンは、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、及び塩化物、特に塩化物、硫酸塩、及び酢酸塩を含む。
【0055】
従って組成物は、1つ又はそれ以上(数個)のアルカリ金属リン酸塩又は塩化物(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、又は塩化カリウム)、アルカリ土類金属リン酸塩(例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)、又はリン酸アンモニウムもしくは塩化アンモニウムを含んでよい。
【0056】
組成物は、全体的イオン強度が少なくとも175mmol/Lでもよい。例えば、約175〜1000mmol/L、例えば約175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、650、700、750、800、850、900、950、1000mmol/L〜約1000、950、900、850、800、750、700、650、600、575、550、525、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250mmol/L。さらに好ましいのは、約200〜350mmol/Lの全体的イオン強度である。最も好ましいのは、約250mmol/Lのイオン強度である。
【0057】
本発明者らは、洗剤(例えばポリソルベート80(「ツイーン(登録商標)」))が、細胞培養中の哺乳動物細胞にとって有害となり得ることを、見いだした。従って、組成物は20mg/L未満の洗剤(例えばポリソルベート80)、好ましくは15、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.01、0.001mg/L未満の洗剤(例えばポリソルベート80)を含むことが好ましい。さらに好ましくは、組成物は洗剤(例えばポリソルベート80)を実質的に含まない。すなわち、組成物中の洗剤(例えばポリソルベート80)のレベルは、培養中の細胞、例えばインビトロ細胞培養のような細胞培養中の哺乳動物細胞(特に、ヒト幹細胞などの幹細胞)に対して有害な作用を引き起こすのには充分ではないことが好ましい。最も好ましくは組成物は、洗剤(例えばポリソルベート80)を含まない。洗剤(例えばポリソルベート80)レベルは、当業者に公知の技術、例えば、特に限定されないが、WO2004/099234(参照することにより本明細書に組み込まれる)に開示されたアッセイにより測定することができる。
【0058】
いくつかの細胞培地では、培地がトリプトファンを実質的に含まないか又は含まないことが好ましい(例えば、Lee et al (2002), Immunology Vol 107(4): 452-460に開示されているようなトリプトファン不含RPMI1640)。アルブミン組成物は、培地に添加してもよい。すなわち、媒体のトリプトファン不含性を維持するために、低レベルのアミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)を有するか、アミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)を実質的に含まないか、又はアミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)を含まないアルブミン組成物が有用である。従って、アルブミン組成物が、5mM未満のアミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)、好ましくは4、3、2、1、0.5、0.1、0.01、0.005、0.001mM未満のアミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)を含むことが好ましい。さらにより好ましくは、組成物が、アミノ酸(例えば、N−アセチルトリプトファン)を実質的に含まない。すなわち、組成物中のアミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)のレベルが、培養中の細胞、例えばインビトロ細胞培養のような細胞培養中の哺乳動物細胞(特に、ヒト幹細胞などの幹細胞)に対して有害な作用を引き起こすのには充分ではないことが好ましい。最も好ましくは組成物は、アミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)を含まない。
さらには、組成物が、オクタノエートと、アミノ酸(n−アセチルトリプトファン)と、洗剤(例えばポリソルベート80)とを実質的に含まないか、又は完全に含まないことが好ましい。
【0059】
細胞培養物に対するアルブミン製剤の有害作用又は毒性作用があるかどうかを確定するために、本発明のアルブミン製剤を含む第1の細胞培養培地を調製し、1つ又はそれ以上(数個)の対照細胞培養培地を調製し、そして細胞株に対するこれらの影響を追跡する試験を行ってもよい。対照の細胞培養培地は、本発明のアルブミン製剤が、別のアルブミン製剤、例えばオクタノエート、洗剤(例えばポリソルベート80)、及び/又はアミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)で安定化されたアルブミン製剤で置換されていること以外は、第1の細胞培養培地と同一である。試験培地と対照とを使用して、1つ又はそれ以上(数個)の細胞株(例えば、本明細書に記載の細胞株)を培養して、例えば細胞増殖、細胞形態、及び/又は細胞分化を追跡することにより、細胞に対するアルブミンの影響が追跡される。この試験は、細胞株の複数回の継代、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回の継代にわたって行われることが好ましい。適切な方法は当該分野で公知である。本発明のアルブミン製剤は、高レベルのオクタノエート、洗剤、又はアミノ酸で安定化させたアルブミンより、細胞に対する毒性又は有害性が小さいことが好ましい。例えば、本発明のアルブミン製剤を含む培地は、別のアルブミン製剤、例えば、オクタノエート、洗剤(例えばポリソルベート80)、及び/又はアミノ酸(例えばn−アセチルトリプトファン)で安定化させたアルブミン製剤を含む対照培地に対して、少なくとも2、5、10、100、1000、10000、又は100000倍の改良を示すことができる。2、5、10、100、1000、10000、又は100000倍の改良は、生存能力のある細胞の数、正しいか又は健常な細胞形態、及び/又は分化した細胞の数もしくは相対数、特に所望の細胞クラスもしくはタイプへの分化を示す細胞に関するものでもよい。
【0060】
アルブミン組成物の安定性が、水中又は150mMのNa中の同等のアルブミンの安定性より高いことが好ましい。特にアルブミンの不溶性凝集物の生成に関連する安定性を比較するための1つの方法は:
i)アルブミン組成物のアリコート(例えば1mL)をキュベット(例えば、ポリスチレンキュベット、例えばSarstedt 10×4×45mm)に入れ、
ii)あらかじめ平衡化させ所望の温度(例えば65℃)に制御された温度制御分光光度計にキュベットを入れ、
iii)空のキュベットを対照として350nmで、所望の時間(例えば2時間)にわたって所定の間隔(例えば18秒毎)で読むことにより、組成物の吸光度を追跡/測定し、
iv)最初の数個(例えば7つ)のデータ点を取り、データ点の読み値を平均し、すべてのデータ点からこのデータ点を引くことによりデータを処理して、約0の基礎吸光度値を得て、
v)処理された吸光度値が、このベースラインより0.1AU(吸光度単位)だけ上昇させるのにかかる時間を測定及び/又は記録する。
【0061】
安定性解析は二重で行われることが好ましい。
【0062】
測定された吸光度がベースラインより0.1AU上昇するのにかかる時間(65℃で行われる上記試験に従って)が、溶媒(例えば150mMのNa又は水)中の同じ濃度の、及び同じ条件下で測定されたアルブミンの対照溶液と比較して、少なくとも10%良好になるように、本発明のアルブミン組成物の安定性が充分な高いことが好ましい。この安定性は、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%良好であることがより好ましい。
【0063】
特にアルブミンの可溶性凝集物の生成のための代替又は追加の安定性試験は、設定した温度で、GP−HPLCにより可溶性アルブミンポリマーの経時的生成を追跡するためである。GP HPLCによる測定を用いる1つの適切な安定性試験は以下を含む:
i)試験すべき各試料10mLを無菌的に(例えば、無菌の0.22μmフィルターで濾過して)無菌のバイアル(例えば、ベーキングした10mLのガラスバイアル)に入れ、次にこれを栓をし(例えば、無菌のブチルゴムシール、及び任意にオーバーシールする)、
ii)約200μlのT0試料を取り、バイアルを特定の温度でインキュベートし(例えば、特定の温度(例えば40℃)に設定した水浴中に入れる)、
iii)次に試料(約200μl)を、各バイアルからある時点(例えば14日)後に取り、
iv)バイアル(<50mg/mLで)から取ったアルブミン試料のアリコート(例えば25μl)をGP−HPLCカラム(例えば、7.8mm内径×300mm長のTSK G3000SWXLカラム(Tosoh Bioscience)、6.0mm内径×40mm長のTSK SWガードカラム(Tosoh Bioscience)を有する)に注入し、
v)適切な緩衝液(例えば、25mMのリン酸ナトリウム、100mMの硫酸ナトリウム、0.05%(w/v)のアジ化ナトリウム、pH7.0)中で、適切な速度(例えば1mL/分)で、アリコートのクロマトグラフィーを行い、
vi)例えば、280nmでのUV検出により、クロマトグラフィーを追跡し、
vii)アリコートのモノマー、ダイマー、トリマー、及びポリマー含量の1つ又はそれ以上(数個)又はすべてを、総ピーク面積に対する各ピーク面積を確定することにより、%(w/w)として定量する。
【0064】
試験は三重で行うことが好ましい。
【0065】
すなわち本発明はまた、上記試験の1つ又は両方で定義した安定性を有するアルブミン組成物と、上記試験の1つ又は両方を含む、アルブミン組成物を製造するための方法とを提供する。
【0066】
多数の哺乳動物や鳥類からのアルブミンが記載され性状解析されている[例えば、WO2010/092135(特に表1)及びPCT/EP11/055577(特に第9頁と配列番号2、4〜19、及び31)(両方とも参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のアルブミン類)]。
【0067】
本発明の組成物は、1つ又はそれ以上(数個)のアルブミンを含んでよい。好ましくはこの組成物は、ヒトアルブミン(例えばAAA98797又はP02768−1、配列番号2(成熟)、配列番号3(未熟))、ヒト以外の霊長類アルブミン、(例えばチンパンジーアルブミン(予測される配列XP_517233.2、配列番号4)、ゴリラアルブミン又はマカクアルブミン(例えばNP_001182578、配列番号5)、げっ歯類のアルブミン(例えばハムスターアルブミン(例えばA6YF56、配列番号6)、モルモットアルブミン(例えばQ6WDN9−1、配列番号7)、マウスアルブミン(例えばAAH49971又はP07724−1バージョン3、配列番号8、又は成熟配列、配列番号19)とラットアルブミン(例えばAAH85359又はP02770−1バージョン2、配列番号9)、ウシ科のアルブミン例えばウシアルブミン(例えばウシアルブミンP02769−1、配列番号10)、ウマ科のアルブミン例えばウマアルブミン(例えばP35747−1、配列番号11)又はロバアルブミン(例えばQ5XLE4−1、配列番号12)、ウサギアルブミン(例えばP49065−1バージョン2、配列番号13)、ヤギアルブミン(例えばACF10391、配列番号14)、ヒツジアルブミン(例えばP14639−1、配列番号15)、イヌアルブミン(例えばP49822−1、配列番号16)、ニワトリアルブミン(例えばP19121−1バージョン2、配列番号17)とブタアルブミン(例えばP08835−1バージョン2、配列番号18)から選択されるアルブミンを含む。成熟型のアルブミンが特に好ましく、当業者は、タンパク質データバンクなどの公に入手できる情報を使用して、及び/又はSignalP(例えば、SignalP(Nielsen et al., 1997, タンパク質 Engineering 10: 1-6))などのシグナルペプチド認識ソフトウェアを使用して、成熟型を同定することができる。SignalPバージョン4.0が好ましい(Petersen et al (2011) Nature 方法s (8): 785-786)。
【0068】
配列番号2に開示されているヒトアルブミン又はその天然に存在するアレレは、本発明のアルブミン組成物の好適なアルブミンである。配列番号2は、配列番号1のヌクレオチド配列によりコードされてよい。
【0069】
アルブミン、特にヒトアルブミンは、変異体、又は、アルブミンの又はアルブミン変異体のコンジュゲーションの融合体などの誘導体でもよい。このアルブミンは、HSA(配列番号2)と少なくとも70%の同一性、より好ましくはHSAと少なくとも72、73、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%の同一性を有することが好ましい。アルブミン変異体は、特に配列番号2で配列リストに提供されるような親アルブミンと比較して、1つ以上(数個)の点突然変異(例えば、K573P、K573Y、K573W、K500A)を有してもよい(変異は、配列番号2に関連して記載されており、当業者は、本明細書に記載されたEMBOSSソフトウェアを使用して、配列番号2に対してアルブミン配列を整列させることにより、他のアルブミン中の同等の変異を同定することができる)。配列番号2と約70〜80%の同一性を有するアルブミン(例えば、配列番号19のマウスアルブミン)について、カチオンが少なくとも250mMから存在することが、より好ましい。
【0070】
アルブミンは、組成物中で約1g/L〜約400g/Lの濃度で存在することが好ましい。例えば、この濃度は、約1、5、10、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275g/Lから、約5、10、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、又は400g/Lまででもよい。アルブミンの濃度は、約50g/L〜約200g/Lであることが好ましい。
【0071】
有利には、組成物は組換アルブミンを含んでよい。すなわちアルブミンは、組換生物、例えば組換微生物、組換植物、又は組換動物から得られてよい。動物を含まない成分を好むユーザーもいるため、アルブミンは、動物ではない組換供給源、例えば組換微生物又は組換植物に由来することがより好ましい。好適な微生物は、原核生物、さらに好ましくは真核生物、例えば動物、植物、真菌、又は酵母を含み、特に限定されないが、アルブミンが組換タンパク質としてうまく発現されている以下の種を含む:
− 真菌(特に限定されないが、アスペルギルス属(Aspergillus)(WO06066595)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)(Fleer 1991, Bio/technology 9, 968-975)、ピチア属(Picchia)(Kobayashi 1998 Therapeutic Apheresis 2, 257-262)、及びサッカロミセス属(Saccharomyces)(Sleep 1990, Bio/technology 8, 42-46))、細菌(Pandjaitab 2000, J. Allergy Clin. Immunol. 105, 279-285)、
− 動物(Barash 1993, Transgenic Research 2, 266-276)、
− 植物(特に限定されないが、ジャガイモ及びタバコ(Sijmons 1990, Bio/technology 8, 217 and Farran 2002, Transgenic Research 11, 337-346)及びイネ、例えばオリザ・サティバ(Oryza sativa))、
− 哺乳動物細胞、例えばCHO及びHEK。
すべての引用は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
本発明のアルブミンは、好ましくは適切な宿主細胞中で組換産生される。非動物宿主細胞が好ましい。好適な宿主は酵母であり、好ましくはピチア属(Picchia)又はサッカロミセス属(Saccharomycacae)、さらに好ましくはサッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)から選択される。
【0073】
好適な組成物は、50〜250g/Lのアルブミンと、200〜300mMのNa+と、20〜30mMのホスフェートとを含み、2mM未満のオクタノエートを含み、pHが約6.0〜7.0である。特に好適な組成物は、50〜150g/Lのアルブミンと、225〜275mMのNa+と、20〜30mMのホスフェートとを含み、1mM未満のオクタノエートを含み、pHが約6.5である。
【0074】
本発明の他の形態は、アルブミンと、溶媒と、少なくとも175mMのカチオンとを有し、pHが約5.0〜約8.0又は9.0である組成物を提供する。このような組成物の利点は、この製剤が、哺乳動物細胞培養物で使用される時、有用な寿命を有するのに充分に安定であり、哺乳動物細胞の健康に有害ではないアルブミンを提供することである。溶媒、カチオン、イオン強度、及びpHの好適なパラメータは、本発明の第1の形態に関連して開示されたものと同じである。
【0075】
本発明のアルブミン組成物は、柔軟性のあるポリマー容器、例えばバッグ中で提供されてよい。適切な容器容量は、約50mL〜約10000mL、例えば50mL、1000mL、5000mL、及び10000mLを含む。この容器は、容器の充填及び/又はバッグからの供給を可能にするように、1つ又はそれ以上(数個)の入り口又は出口を有することが好ましい。アルブミン組成物は、例えば容器に充填される前又は後に、滅菌されてよい。
【0076】
組換アルブミンの産生は当該分野で公知であり、大腸菌(Escherichia coli)(ep73,646)、酵母(WO00/44772、EP0683233A2、及びUS5,612,196)、及び枯草菌(Bacillus subtilis)(Saunders et al, 1987, J. Bacteriol, 169, 2917-2925)、アスペルギルス属(Aspergillus)などの多くの宿主が報告されている。アルブミンの産生は、トランスジェニック植物(例えば、特に限定されないが、タバコ、イネ、及びトウモロコシ)、及びトランスジェニック動物(例えば、特に限定されないが、ニワトリ及びウシ)で証明されている。
【0077】
本発明の第2の形態は、本明細書に記載の組成物と基本培地とを含む細胞培養培地を提供する。細胞培養培地は、例えばヒト細胞のような哺乳動物細胞の培養用でもよい。細胞培養培地は、例えば、幹細胞の、配偶子の、又は胚の培養用、例えば生殖補助技術(ART)目的の細胞培養用でもよい。
【0078】
細胞培養培地は、動物由来成分を実質的に含まないことが好ましい。細胞培養培地は、動物由来成分を含まないことが、より好ましい。この文脈において、「動物由来」成分は、動物から得られて成分を意味する。これは、動物由来成分と同一であるか又は実質的に同一であるが、動物から得られる代わりに、非動物の組換成分として得られる成分は含まない。非動物は、植物(例えばイネ)、微生物(例えば酵母又は細菌)を含む。
【0079】
その中でアルブミン製剤が使用される細胞培養培地の例は、WO2008/009641(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されたものを含む。
【0080】
本発明の第1の形態のアルブミン製剤を含む細胞培養培地は、1つ又はそれ以上(数個)の脂肪酸、例えば脂肪酸補助物質により提供されるような1つ又はそれ以上(数個)の脂肪酸を含んでも含まなくてもよい。脂肪酸補助物質は市販されており、例えばSIgma-Aldrichから入手できるF7050脂肪酸補助物質(動物成分不含、液体、無菌濾過、細胞培養に適している)である。
【0081】
本発明の第3の形態は、細胞、例えば本発明の第2の形態及び/又は後述の本発明の第5の形態に関連して記載した細胞、を培養するための、本明細書に記載のアルブミン製剤、組成物、又は細胞培養培地の使用に関する。
【0082】
本発明の第4の形態は、本明細書に記載の培養培地中で細胞をインキュベートすることを含む、細胞を培養する方法に関する。細胞は、本発明の第2の形態及び/又は後述の本発明の第5の形態に関連して記載した細胞でもよい。
【0083】
本発明の第5の形態は、医薬品における本発明の第1の形態のアルブミン製剤の使用に関する。すなわち本発明はまた、アルブミン製剤と活性医薬成分(API)とを含む医薬組成物を提供する。
【0084】
本発明の第6の形態は、アルブミンを安定化するための高カチオン濃度、例えば本発明の第1の形態について記載した少なくとも175mMのカチオンの使用に関する。
【0085】
本発明の組成物と培地は、種々の細胞を培養するのに使用してもよい。ある態様において培地は、真核細胞、例えば植物細胞及び/又は動物細胞を培養するために使用される。細胞は、哺乳動物細胞、魚の細胞、昆虫細胞、両生類の細胞、又は鳥類の細胞でもよい。培地は、MK2.7細胞、PER−C6細胞、NS0、GS−NS0、CHO細胞、HEK293細胞、COS細胞、及びSp2/0細胞からなる群から選択される細胞を培養するために使用することができる。MK2.7(ATCCカタログ番号CRL1909)は、ラット脾細胞とマウスSp2/0骨髄腫の融合から誘導されるハイブリドーマ細胞株を発現する抗マウスVCAM IgGIである。MK2.7は、無血清培地中で増殖することができる非接着性細胞株である。他のタイプの細胞は、5L8ハイブリドーマ細胞,Daudi細胞,EL4細胞,HeLa細胞,HL−60細胞,K562細胞,Jurkat細胞,THP−1細胞,Sp2/0細胞;及び/又は表2に列記されるハイブリドーマ細胞(表2、WO2005/070120に列記されている)、又は本明細書に開示されるか又は当該分野で公知の任意の他のタイプの細胞からなる群から選択することができる。
【0086】
好適な細胞は、幹細胞、例えば特に限定されないが、胚幹細胞、胎児幹細胞、成人幹細胞、及び多能性幹細胞(例えば、誘導された多能性幹細胞)を含む。特に好適な細胞は、ヒト胚幹細胞、ヒト胎児幹細胞、ヒト成人幹細胞、及びヒト多能性幹細胞、例えば誘導されたヒト多能性幹細胞である。細胞株は胚盤胞由来でもよい。この細胞株は、1つ又はそれ以上(数個)の以下の細胞マーカーについて陽性であってもよい:POU5F1(OCT−4)、SSEA−3、SSEA−4、TRA1−60、TRA1−81、ALPL、テロメラーゼ活性、及び/又はhES−Cellect(登録商標)(Cellartis AB, Gothenburg Sweden)。細胞株は、細胞マーカーALPL及び/又はSSEA−1について陰性であってもよい。. 特に好適な細胞株は、SA121及びSA181(Cellartis AB, Gothenburg, Sweden)を含む。
【0087】
追加の哺乳動物細胞のタイプは、特に限定されないが、1次上皮細胞(例えば、ケラチン細胞、子宮頸部上皮細胞、気管支上皮細胞、気管上皮細胞、腎臓上皮細胞、及び網膜上皮細胞)、及び樹立された細胞株、及びこれらの株(例えば、293胚性腎臓細胞、BHK細胞、HeLa子宮頸部上皮細胞、及びPER−C6網膜細胞、MDBK(NBL−1)細胞、911細胞、CRFK細胞、MDCK細胞、CHO細胞、BeWo細胞、Chang細胞、Detroit562細胞、HeLa229細胞、HeLaS3細胞、Hep−2細胞、KB細胞、LS180細胞、LS174T細胞、NCI−H−548細胞、RPMI2650細胞、SW−13細胞、T24細胞、WI−28 VA13、2RA細胞、WISH細胞、BS−C−I細胞、LLC−PK2細胞、Clone M−3細胞、1−10細胞、RAG細胞、TCMK−1細胞、Y−1細胞、LLC−PK1細胞、PK(15)細胞、GH.1細胞、GH3細胞、L2細胞、LLC−RC256細胞、MHlC1細胞、XC細胞、MDOK細胞、VSW細胞、及びTH−I、B1細胞、又はこれらの誘導体)、任意の組織又は臓器[特に限定されないが、心臓、肝臓、腎臓、結腸、小腸、食堂、胃、神経組織(脳、脊髄)、肺、管組織(動脈、静脈、毛細管)、リンパ組織(リンパ腺、アデノイド、扁桃腺、骨髄、及び血液)、脾臓]からの繊維芽細胞、及び繊維芽細胞と繊維芽細胞様細胞株(例えば、CHO細胞、TRG−2細胞、IMR−33細胞、Don細胞、GHK−21細胞、シトルリン血症細胞、Dempsey細胞、Detroit551細胞、Detroit510細胞、Detroit525細胞、Detroit529細胞、Detroit532細胞、Detroit539細胞、Detroit548細胞、Detroit573細胞、HEL299細胞、IMR−90細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、WI−26細胞、MiCl1細胞、CHO細胞、CV−1細胞、COS−1細胞、COS−3細胞、COS−7細胞、Vero細胞、DBS−FrhL−2細胞、BALB/3T3細胞、F9細胞、SV−T2細胞、M−MSV−BALB/3T3細胞、K−BALB細胞、BLO−11細胞、NOR−10細胞、C3H/IOTI/2細胞、HSDMlC3細胞、KLN205細胞、McCoy細胞、マウスL細胞、2071株(マウスL)細胞、L−M株(マウスL)細胞、L−MTK(マウスL)細胞、NCTCクローン2472及び2555、SCC−PSA1細胞、Swiss/3T3細胞、インドキョン細胞、SIRC細胞、CII細胞、及びジェンセン細胞、又はこれらの誘導体)を含むことができる。
【0088】
細胞は、癌細胞、例えば特に限定されないが、以下の癌細胞株を含む:ヒト骨髄腫(例えば、 KMM−1、KMS−11、KMS−12−PE、KMS−12−BM、KMS−18、KMS−20、KMS−21−PE、U266、RPMI8226);ヒト乳癌(例えば、KPL−1、KPL−4、MDA−MB−231、MCF−7、KPL−3C、T47D、SKBR3、HS578T、MDA4355、Hs606(CRL−7368)、Hs605.T(CRL−7365)HS742.T(CRL−7482)、BT−474、HBL−100、HCC202、HCC1419、HCC1954、MCF7、MDA−361、MDA−436、MDA−453、SK−BR−3、ZR−75−30、UACC−732、UACC−812、UACC−893、UACC−3133、MX−1及びEFM−192A);乳管(乳房)癌(例えば、HS57HT(HTB−126)、HCC1008(CRL−2320)、HCC1954(CRL−2338;HCC38(CRL−2314)、HCC1143(CRL−2321)、HCC1187(CRL−2322)、HCC1295(CRL−2324)、HCC1599(CRL−2331)、HCC1937(CRL−2336)、HCC2157(CRL−2340)、HCC2218(CRL−2343)、Hs574.T(CRL−7345)、Hs742.T(CRL−7482);皮膚癌(例えば、COLO829(CRL−1974)、TE354.T(CRL−7762)、Hsは925.T(CLU−7677));ヒト前立腺癌(例えば、MDAのPCa2aとMDAのPCa2B);骨癌(例えば、Hs919.T(CRL−7672)、Hs821.T(CRL−7554)、Hs820.T(CRL−7552)YHS704.T(CRL−7444)、HS707(A)、T(CRL−7448)、HS735.T(CRL−7471)、HS860.T(CRL−7595)YHS888.T.(CRL−7622);HS889.T(CRL−7626);HS890.T(CRL−7628)、HS709.T(CRL−7453));ヒトリンパ腫(例えば、K562);ヒト子宮頚癌(例えば細胞、HeLA);肺癌細胞株(例えば、H125、H522、H1299、NCI−H2126(ATCC CCL−256)、NCI−H1672(ATCC CRL−5886)、NCI−2171(CRL−5929);NCI−H2195(CRL05931);肺腺癌(例えば、NCI−H1395(CRL−5856)、NCI−H1437(CRL−5872)、NCI−H2009(CRL−5911)、NCI−H2122(CRL−5985)、NCI−H2087(CRL−5922);転移性肺癌(例えば、骨)(例えば、NCI−H209(HTB−172);結腸癌細胞株(例えば、LN235、DLD2、ColonA、LIM2537、LIM1215、LIM1863、LIM1899、LIM2405、LIM2412、SK−CO1(ATCC HTB−77)、HT29(ATCC HTB38)、LoVo(ATCC CCL−229)、SW1222(ATCC HB−11028)、及びSW480(ATCC CCL−228);卵巣癌(例えば、OVCAR−3(ATCC HTB−161)及びSKOV−3(ATCC HTB−77)、中皮腫(例えば、NCI−H2052(CRL−5915);神経内分泌癌(例えば、HCI−H1770(例えば、CRL−5893);胃癌(例えば、LIM1839);神経膠腫(例えば、T98、U251、LN235);頭頸部扁平上皮癌細胞株(例えば、SCC4、SCC9、及びSCC25)、髄芽腫(例えば、Daoy、D283 Med、及びD341Med);精巣非セミノーマ(例えば、TERA1);前立腺癌(例えば、178−2BMA、DU145、LNCaP、及びPC−3)。他の癌細胞株は、当該分野で周知である。
【0089】
本明細書に開示される培地は、浮遊細胞又は接着細胞を培養するのに使用することができる。本発明の培地は、細胞の、及び単層培養又は浮遊培養の細胞中のタンパク質もしくは抗体の発現のための、接着培養、単層培養、又は浮遊培養、トランスフェクション、及び/又は培養に適している。
【0090】
細胞培養は、種々の培養器具、例えば発酵槽型のタンク培養器具、エアリフト型の培養器具、培養フラスコ型の培養器具、スピナーフラスコ型の培養器具、マイクロキャリアー型の培養器具、流動床型の培養器具、中空繊維型の培養器具、ローラーボトル型の培養器具、充填ベッド型の培養器具、又は当該分野で公知の任意の他の適した器具、を使用して行うことができる。
【0091】
本発明はさらに、本発明の範囲を限定すると解するべきではない以下の例により記載される。
【実施例】
【0092】
実施例1:アルブミンの安定性に対するn−アセチルトリプトファン、ホスフェート濃度、及びナトリウム濃度の影響
【0093】
目的:以前の研究は、65℃での350nmの吸光度の上昇による不溶性凝集物の生成の追跡は、アルブミンの安定性に対する異なる製剤(組成物)パラメータの影響のスクリーニングのための有効な方法であることを示した。オクタノエート及びポリソルベート80は幹細胞増殖に対して有害なようであるため、アルブミン製剤はこれらの成分を実質的に含まないことが好ましい。本実施例は、アルブミンの安定性に対するpH、ナトリウムイオン、及び緩衝液濃度の影響を分析する。アルブミンの一般的な安定剤はn−アセチルトリプトファンであり、従って本実施例にはこれが試験成分として含まれる。
【0094】
方法:145mMのNaCl中の100mg/mLのアルブミン(アルブミンバッチ1401)を、表3に従って10mg/mLに希釈した。希釈に使用された緩衝液は表1と2に示される。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0098】
いったん希釈後、試料は、1M HCl(その容量はわずかであり、アルブミン又は成分濃度を変化させない)を用いて、その目的pHに調整された。次に、得られる溶液のアリコート(1mmL)をポリスチレンキュベット(Sarstedt 10×4×45mm)に入れた。次に、キュベットを65℃であらかじめ平衡化させ制御しておいた温度制御分光光度計に入れた。次に、350nmでの吸光度を、空のキュベットを対照として、2時間にわたって18秒毎に読むことにより追跡した。最初の7つのデータ点を取り、これらを平均し(平均を計算し)、次にすべてのデータ点からこれを引いて処理することにより、約0の基礎吸光度値を得た。特定の製剤試料について、この吸光度値をこのベースラインより0.1AU(吸光度単位)だけ上昇させるのにかかる時間を記録した。各製剤試料を二重で測定し、吸光度値を0.1AUだけ上昇させるのにかかる時間を、各多重測定値について平均した。
【0099】
結果:各試料が0.1AU上昇するための時間の処理されたデータを、試験した各製剤成分(n−アセチルトリプトファン、ホスフェート濃度、及びナトリウム濃度)について、pHに対する吸光度上昇の時間をプロットした。7200秒を超える値は外挿された。データは、図1(pHとn−アセチルトリプトファン)、図2(pHとホスフェート)、及び図3(pHとナトリウム)に提示される。
【0100】
結論:
・50mMナトリウム以外のすべてのデータについて、最適pHはpH6〜7の間であった。50mMナトリウムについては、不溶性凝集物は生成していなかったが、高レベルの可溶性オリゴマーが生成されており、これらは、合体して不溶性凝集物を形成するということはない可能性がある。可溶性凝集物は、GP−HPLCにより同定することができる。
・ホスフェート緩衝液濃度について、50mMと100mMの間に有意差はなかった。しかし、0mMのホスフェートは、pH6〜8の間でわずかにより安定のように見えた。安定性の点ではホスフェートを使用しないことが最適であるが、例えば、緩衝液は製剤化の前にアルブミンのpHを調整する必要性を低減又は排除するため、緩衝液の使用はpH制御を助ける。
・ナトリウムレベルを上昇させることは安定性に大きな効果を与え、145〜300mMのナトリウムの間で安定性が大きく上昇する。
【0101】
実施例2:アルブミンの安定性に対するナトリウム濃度上昇の影響
目的:実施例1は、上昇したナトリウムレベルがアルブミン安定性に有益な影響を与えることを示した。これをさらに調べるために、最適pH範囲で実施例1より広い範囲にわたって上昇させたナトリウム濃度を調べた。
【0102】
方法:145mMのNaCl中の100mg/mLのアルブミン(アルブミンバッチ1401)を、表6に従って10mg/mLに希釈した。希釈に使用された緩衝液は表4と5に示される。
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
まずアルブミンと緩衝液とをバルクとして混合して希釈を行い、次にこれを1M HClの添加により正しいpHに調整した。次に、これを分割し、水と5M NaClを適宜加えた。これにより、すべての試料が確実にちょうど同じpHになった。得られた溶液のアリコート(1mL)をポリスチレンキュベット(Sarstedt 10×4×45mm)に入れた。次に、キュベットを65℃であらかじめ平衡化させ温度制御しておいた温度制御分光光度計に入れた。次に、350nmでの吸光度を、空のキュベットを対照として、2時間にわたって18秒毎に読むことにより追跡した。最初の7つのデータ点を取り、これらを平均し(平均を計算し)、次にすべてのデータ点からこれを引いて処理することにより、約0の基礎吸光度値を得た。特定の製剤試料について、この吸光度値をこのベースラインより0.1AU(吸光度単位)だけ上昇させるのにかかる時間を記録した。各製剤試料を二重測定で測定し、吸光度値を0.1AUだけ上昇させるのにかかる時間を、各多重測定値について平均した。
【0107】
結果:各試料が0.1AU上昇するための時間の処理されたデータを、各pHについて、Na濃度に対して吸光度上昇の時間をプロットした。7200秒を超える値は外挿された。データは、図4に示される。
【0108】
結論:
・実施例1に一致して、ナトリウムレベルの上昇はアルブミンの安定性を上昇させた。これは、特に約200mMで顕著であり、ここで安定性が急に上昇した。これはすべてのpHについて同じであったが、pH6では、<200mMでも、上昇する塩はまだ有効な影響を与えたため、これはあまり明らかではなかった。この上昇が約200mMであったという事実は、ほとんどの他のアルブミン製剤がほぼ生理学的に維持するために150mM以下であるため、以前は観察されなかったことが理由かも知れない。細胞培養培地で使用されるアルブミンについては、アルブミンは培地の中へ希釈され、培地の全体の塩濃度が細胞培養に適したものとなるため、これは問題ではないはずである。
・pH6はpH6.5よりわずかに良好であり、何れもpH7よりは顕著に良好であった。
【0109】
実施例3:異なる濃度のアルブミンの安定性に対するナトリウム濃度の影響
【0110】
目的:実施例2は、ナトリウム濃度がアルブミンの安定性にとって重要であることを示す。実施例2は、アルブミン濃度10mg/mLで行われた。この作用がより高濃度でも同じであることを確認するために、より高濃度のアルブミンでナトリウムの影響を調べた。
【0111】
方法:145mMのNaCl中の100mg/mLのアルブミン(アルブミンバッチ1401)を、表9に従って50又は90mg/mLに希釈した。希釈に使用された緩衝液は表7と8に示される。
【0112】
【表7】
【0113】
【表8】
【0114】
【表9】
【0115】
まずアルブミンと緩衝液とをバルクとして混合し、次にこれを1M HClの添加により正しいpHに調整した。次に、これを分割し、水と5M NaClを適宜加えた。これにより、すべての試料が確実にちょうど同じpHになった。
【0116】
次に、得られた溶液のアリコート(1mL)をポリスチレンキュベット(Sarstedt 10×4×45mm)に入れた。次に、キュベットを65℃であらかじめ平衡化させ制御しておいた温度制御分光光度計に入れた。次に、350nmでの吸光度を、空のキュベットを対照として、2時間にわたって18秒毎に読むことにより追跡した。最初の7つのデータ点を取り、これらを平均し(平均を計算し)、次にすべてのデータ点からこれを引いて処理することにより、約0の基礎吸光度値を得た。特定の製剤試料について、この吸光度値をこのベースラインより0.1AU(吸光度単位)だけ上昇させるのにかかる時間を記録した。各製剤試料を二重で測定し、吸光度値を0.1AUだけ上昇させるのにかかる時間を、各多重測定値について平均した。
【0117】
結果:各試料が0.1AU上昇するための時間の処理されたデータを、各pH(6.0、6.5、及び7.0)で50mg/mLのアルブミンについて、Na濃度に対する吸光度上昇の時間をプロットし、次に3つの異なるアルブミン濃度(10、50、及び990mg/mL)についてpH6.5でプロットした。データは、図5と6に示される。
【0118】
結論:
・50mg/mLのアルブミンで、ナトリウム濃度の上昇がアルブミン安定性を改善する傾向が、すべての3つのpHで確認された。この例では、pH6.5が最適であった。
・pH6.5では、増加したナトリウムが安定性を改善する傾向が、再度すべてのアルブミン濃度で確認された。この傾向は90g/Lではそれほど顕著ではなかったが、200mMを超えるナトリウム濃度は、やはりアルブミン安定性を顕著に改善させた。
【0119】
実施例4:アルブミン中の可溶性凝集物の産生に対するナトリウム濃度の影響
【0120】
目的:不溶性凝集物を測定する製剤スクリーニングアッセイを使用すると、実施例1〜3は、ナトリウム濃度の上昇がアルブミン安定性を改善させることを示す。可溶性凝集物(アルブミンポリマー)を調べるために、40℃で2週間の加速安定性試験でポリマー生成を追跡するための測定手段として、GP−HPLCを使用する必要がある。実施例1〜3によりpH6.5が好適なpHであることが証明されたため、この試験はpH6.5で行われた。前記の製剤化条件(pH8.6、150mMのNa)中のアルブミンの対照をまた、新しい製剤が有意に有益であることを確認するために使用した。実際のアルブミン濃度は、予測された100mg/mLではなく90mg/mLであった(これは、種々の製剤への希釈を可能にする最も高い濃度であったため)。しかし、このわずかに低い濃度で観察された傾向は、より高いアルブミン濃度でも同じであろうと考えられた。
【0121】
方法:145mMのNaCl中の100mg/mLのアルブミン(アルブミンバッチ1401)を、表12に従って90mg/mLに希釈した。希釈に使用された緩衝液は表10と11に示される。
【0122】
【表10】
【0123】
【表11】
【0124】
【表12】
【0125】
まずアルブミンと緩衝液とをバルクとして混合して希釈を行い、次にこれを1M HClの添加により正しいpHに調整した。次に、これを適切なサイズのアリコートに分割し、必要に応じて水と5M NaClを加えた。これにより、すべての試料が確実にちょうど同じpHになった。
【0126】
各試料10mLを、ベーキングした10mLのガラスバイアル中に無菌濾過し、無菌のブチルゴムシールをし、次にオーバーシールした。約200μlのT0試料を取り、バイアルを40℃に設定した水浴中に入れた。次に試料(約200μl)を、14日後に各バイアルから取り、2倍希釈し、GP−HPLCシステムに三重で注入した。
【0127】
GP−HPLCシステムは、6.0mm内径×40mm長のTSK SWガードカラム(Tosoh Bioscience)を有する7.8mm内径×300mm長のTSK G3000SWXLカラム(Tosoh Bioscience)に注入(25μl)して行なった。試料を、25mMのリン酸ナトリウム、100mMの硫酸ナトリウム、0.05%(w/v)のアジ化ナトリウム、pH7.0中で、1mL/分でクロマトグラフィーを行い、280nmでのUV検出により追跡した。さらに、モノマー、ダイマー、トリマー、及びポリマー含量を、総ピーク面積に対する各ピーク面積を%(w/w)として定量した。三重注入からの結果を平均して、各試料の平均値を得た。
【0128】
結果:モノマー(図7)とポリマー(図8)についての14日時点のデータを、ナトリウム濃度に対してプロットした。
【0129】
結論:
・pH6.5の製剤は、アルブミンバッチ1401について使用したpH8.6の製剤より、顕著に良好であった。pH8.6ではポリマーのレベルは顕著に上昇して、pH6.5での同じ濃度の約2%と比較すると、40℃で2週間後に約20%まで上昇した。
・スクリーニングアッセイで観察されたナトリウムの上昇がアルブミン安定性を上昇させるという提唱された傾向は、ここで可溶性凝集物についても確認され、ナトリウム濃度の上昇によりポリマー生成が低下する顕著な傾向がある。生理学的条件に近いために標準的アルブミン濃度である150mMから200mMナトリウムまで行くと、ポリマーのレベルは>2倍低下し、200から250mMに行くとさらに約2倍低下する。塩濃度がさらに350mM(及びそれ以上の可能性有り)まで上昇すると、ポリマーはさらに低下するが、その低下速度は遅くなる。これらの結果は、ナトリウムの上昇により残存するモノマーが増加することと一致する。全体で、150から250mMナトリウムまで行くと、ポリマー生成が>4倍低下する。従って、好適なアルブミン製剤は、20mMのリン酸緩衝液、pH6.5、250mM ナトリウムである。ホスフェートは、pH制御を助けるために存在する。注意すべきことは、ナトリウムは塩化ナトリウムとリン酸ナトリウムの両方から得られ(ホスフェートのpHを確保するために使用されるNaOHを含むことは正しい)、従って緩衝液は、250mMのNaClではないことである。
・この研究はナトリウムを用いて行われているが、同様の1価又は2価金属イオンは、同様の効果を有すると予測される。しかしナトリウムは幹細胞培養と適合性があるため、好適な金属イオンである。
【0130】
実施例5:アルブミンの安定性に対するアルブミン濃度とナトリウムイオン濃度の影響
【0131】
方法:低オクタノエート(約0.2mMのオクタノエート、100g/Lのアルブミン)を含有する精製アルブミンの試料を、25mMのホスフェート、50mMのナトリウム、pH6.5の少なくとも10の連続容量に対してダイアフィルターで濾過し、次に10KDaのPall OmegaクロスフローUFを使用して濃縮し、50mMのナトリウム出発物質を得た。次に試料を水、5MのNaCl、及び0.5Mのリン酸ナトリウム、pH6.5で、表13に示すように希釈した。
【0132】
【表13】
【0133】
次に、試料を無菌の5mLガラスバイアル中に無菌濾過(0.22μmフィルター)し、バイアルを40℃のインキュベーター中に4週間入れた。各試料のアリコートを間隔をおいて取り出し、水で40g/Lに希釈し、可溶性凝集物について実施例4に示したようにGP−HPLCにより測定した。
【0134】
結果:図11は、4週間インキュベーション後のモノマーレベルを示す。より高いモノマー含量は、良好な安定性を示す。
【0135】
結論:
・すべての点は、150g/Lのアルブミン、100mMのナトリウム試料とは異なる傾向に従う。この試料がなぜ傾向をはずれたかは不明であるが、外れ値の可能性があり、実験の全体的結論を変えることは無い。
・試験したすべてのアルブミン濃度について、モノマー含量、すなわち安定性の上昇とナトリウム含量の上昇の明らかな相関がある。
・改善された安定性の大部分は、最大約200mMのナトリウムイオン濃度の上昇からくる。この濃度を超えると、安定性がわずかにさらに上昇するが、ほとんど横ばい状態になった。従って最適ナトリウムイオン濃度は200mM以上である。
【0136】
実施例6:アルブミンの安定性に対する異なるカチオンの影響
【0137】
方法:低オクタノエート(100g/Lのアルブミンについて約0.2mM)を含有する精製アルブミンの試料を、まず水で50mg/mLに希釈して、50mg/mLのアルブミン、75mMのNaClを含み、pH緩衝液成分は0になるようにした。pHは、0.5MのHClを用いてpH6.43に調整した。加えたHClの量はわずかであり、アルブミン又は他の成分の濃度を変化させることは無いであろう。次に、表14に示すように、1Mカチオンストック(KCl,NH4Cl、CaCl2、MgCl2、NaCl)を使用して、UV透過性マイクロタイタープレートのウェル中で、試料をさらに10mg/mLに希釈した。
【0138】
【表14】
【0139】
各KCl,NH4Cl、CaCl2、MgCl2、NaClの試料を、表14に従って調製した。すなわち、全部で40の異なる試料を調製した。各試料を、マイクロタイタープレート上で二重で試験した。
【0140】
マイクロタイタープレートを静かに揺らして各ウェルの内容物を混合し、遠心して気泡を除去し、65℃であらかじめ平衡化させ制御しておいたBiotek Synergy Mx((Potton, UK)プレートリーダーに入れた。次にプレートを350nmで、総インキュベーション時間8時間にわたって毎分読んだ。Gen5ソフトウェア(プレートリーダー用のBiotekソフトウェア、バージョン2.00.18)を使用して、A350nmの吸光度がベースラインより0.2吸光度単位だけ上昇するのにかかる時間を計算した。ベースラインは、最初の5つのデータ点の平均から計算した。
【0141】
結果:図12は、試料の吸光度がベースラインより0.2単位上昇するのにかかる時間を示す。より長い時間は、良好な安定性を示す。
【0142】
結論:
・NaClを使用する対照は、他の例と同じ傾向を示し、すなわちナトリウムレベルの上昇は安定性を改善する。これは、このマイクロタイタープレート法が、安定性効果を試験するのに適していることを確認する。
・すべての異なるカチオン[1価と2価(それぞれ1族金属と2族金属)の両方]について、カチオン濃度が最大500mMまで(及びおそらくはそれ以上も)上昇された、アルブミン安定性が明らかに上昇した。
・これらのデータは、すべてのカチオンがアルブミンの安定性を改善することを示すが、MgCl2が非常に優れている。
【0143】
実施例7:アルブミンの安定性に対する異なるアニオンの影響
方法:低濃度のオクタノエートを含有する精製アルブミンの試料(約0.2mM、100g/Lのアルブミン)を、まず水で50mg/mLに希釈して、50mg/mLのアルブミン、75mMのNaClを含み、pH緩衝液成分は0になるようにした。試料を0.5MのHClを用いてpH6.43に調整した。加えたHClの量はわずかであり、アルブミン又は他の成分の濃度を変化させることは無かったであろう。表15に従って、1Mのアニオンストック溶液を調製した。
【0144】
【表15】
【0145】
アルブミンとアニオンストックを後述のように使用して、ポリスチレンキュベット(Sarstedt 10×4×45mm)に最終容量1mLで作成した。試料を静かに混合した後、キュベットを65℃であらかじめ平衡化させ制御しておいた温度制御分光光度計に入れた。次に、350nmでの吸光度を、空のキュベットに対して30秒毎に読むことにより、2時間にわたって追跡した。最初の9つのデータ点(ほぼ最初の4分)を取り、平均値を計算し(平均し)、次にすべてのデータ点からこれを引いて処理することにより、ベースライン吸光度を得た。特定の製剤試料について、この吸光度をこのベースラインより0.1AUだけ上昇させるのにかかる時間を記録した。吸光度が2時間(7200秒)で0.1AUを超えなかった場合は、データを外挿して近似時間を得た。吸光度が2時間で0.1AUを超えない試料は、より低いカチオン濃度を有する試料と比較して、安定性が顕著に改善されている。
【0146】
分光光度計中の6キュベットホルダーを使用して、最初の試料はいつも対照とし、他の5つの試料は、上昇する賦形剤(すなわち、NaCl、Na2SO4などの試験物質)濃度を使用した。対照はいつも、250mMのNaClを含有するpH6.5試料であったが、これは、試験が有効であると見なされる完全な2時間の65℃でのインキュベーションにわたって、不溶性凝集物が溶液中に残存しないようにするため必要であった。
【0147】
【表16】
【0148】
A350nm吸光度の上昇により検出される不溶性凝集物を測定する時、クエン酸試料について、ナトリウムの安定化作用は決定的ではなかった。従って、分光光度計中で2時間の65℃インキュベーション後、試料を取り出し,遠心分離して大きな粒子を除去し、試料をGP−HPLCにより可溶性凝集物について分析した(実施例4のように)。データは、残存する%モノマーアルブミンとして表した(この値が高いほど、製剤が安定である)。これはまた、ホスフェート試料についても行われた。
【0149】
結果:すべての対照は有効であった。図13は、A350吸光度がベースラインより0.1AU上まで上昇するのにかかる時間に対する、ナトリウムイオン濃度とアニオン分子種の影響を示す。図14は、65℃で2時間インキュベーション後の、アルブミンの安定性に対するクエン酸塩、ホスフェート、及びナトリウムの影響を示す。より高いモノマーレベルは、より高い安定性を示す。同時に行なったpH6.5の対照(250mMのナトリウム)の結果は、81%のモノマー含量の平均結果を与えた。
【0150】
結論:
・塩化ナトリウム(無機酸のナトリウム塩)、硫酸ナトリウム(2価酸のナトリウム塩)、及び酢酸ナトリウム(有機酸のナトリウム塩)はすべて、ナトリウム濃度の上昇によるアルブミン安定性の強い上昇を与えた。
・リン酸二水素ナトリウムについては、その傾向は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムほど強くなかった。しかし150mM及びそれ以上では、ナトリウム含量の上昇により安定性が上昇する傾向がある。この傾向は、ナトリウム濃度の上昇による残存モノマーの上昇の強い傾向で示されるように、可溶性凝集物を測定した時確認された。
・リン酸ナトリウム試料について、ナトリウム濃度の上昇とともに安定性が上昇する傾向は、600mMのナトリウムまで続き、おそらくより高いナトリウム濃度でも続くであろう。
・クエン酸ナトリウムについては、不溶性凝集物の存在をA350吸光度により測定すると、ナトリウム濃度の上昇によるアルブミン安定性の明らかな傾向はなかった。しかし、試料(65℃で2時間インキュベーション後)を、GP−HPLCにより残存する%モノマー含量を測定して可溶性凝集物について評価すると、傾向があった。200mMのナトリウム及びそれ以下では、モノマー含量はほぼ一定であったが、ナトリウム含量が200mMを超えて上昇すると、モノマー含量が上昇し、従ってアルブミン安定性が上昇する明確な傾向があった。クエン酸はキレート剤であり、従って存在するナトリウムはクエン酸塩によりキレート結合され、例えばNaClによりナトリウムが提供された時、アルブミンを安定化するのに利用できる可能性は低い。
・従って、本発明者らは、ナトリウム塩(又は、前の例に基づいて他の1価又は2価アニオン)はアルブミンに安定性を与え、アニオン濃度の上昇により安定性が上昇する傾向があると考える。
【0151】
実施例8:アルブミン安定性に対する異なる緩衝液の影響
【0152】
方法:低濃度のオクタノエートを含有する精製アルブミンの試料(約0.2mM、100g/Lのアルブミン)を、まず水で50mg/mLに希釈して、50mg/mLのアルブミン、75mMのNaClを含み、緩衝液成分は0になるようにした。試料を0.5MのHClを用いてpH6.43に調整した。加えたHClの量はわずかであり、アルブミン又は他の成分の濃度を変化させることは無かったであろう。
【0153】
1MのNaClの緩衝化していないストックを、アルブミンストックと同様にpH6.43に調整した(従ってアルブミンに添加されても、pHは変化しないであろう)以下の緩衝液(表17)を調製した。ホスフェートについては、pHを27%のNaOHで調整し、クエン酸塩については、クエン酸(クエン酸粉末)で調整し、酢酸塩については酢酸(氷酢酸)で調整した。
【0154】
【表17】
添加した酸の量はわずかであり、アルブミン又は成分濃度を変化させることは無かったであろう。
【0155】
アルブミンと緩衝液ストックを後述するように使用し、ポリスチレンキュベット(Sarstedt 10×4×45mm)に最終容量1mLで作成した。試料を静かに混合した後、キュベットを65℃であらかじめ平衡化させ制御しておいた温度制御分光光度計に入れた。次に、350nmでの吸光度を、空のキュベットに対して30秒毎に読むことにより、2時間にわたって追跡した。最初の9つのデータ点(ほぼ最初の4分)を取り、平均値を計算し、次にすべてのデータ点からこれを引いて処理することにより、ベースライン吸光度を得た。特定の製剤試料について、この吸光度をこのベースラインより0.1AUだけ上昇させるのにかかる時間を記録した。吸光度が2時間(7200秒)で0.1AUを超えなかった場合は、データを外挿して近似時間を得た。
【0156】
分光光度計中の6キュベットホルダーを使用して、最初の試料はいつも対照とし、他の5つの試料は、上昇する賦形剤濃度を使用した。対照はいつも、250mMのNaClを含有するpH6.5試料であったが、これは、試験が有効であると見なされる完全な2時間の65℃でのインキュベーションにわたって、不溶性凝集物が溶液中に残存しないようにするため必要であった。
【0157】
【表18】
【0158】
結果:すべての対照は有効であった。試料について、A350吸光度がベースラインより0.1AU上まで上昇するのにかかる時間をナトリウム濃度に対してプロットした。図15は、すべての緩衝液について、ナトリウムイオン濃度が上昇するとアルブミン安定性が上昇することを示す。
【0159】
クエン酸塩試料について、傾向は他の試料に比較して弱いようである。従って、緩衝液が無い場合(ナトリウムはNaClによってのみ提供される)のデータを、クエン酸ナトリウムで緩衝化した試料とともにプロットしたが、クエン酸ナトリウムからくるナトリウム濃度は無視された(図16)。
【0160】
・すべての緩衝液について、及び緩衝液が無い場合について、ナトリウム濃度の上昇によりアルブミン安定性が上昇する明らかな傾向がある。
・NaClのようなアルブミン安定性用の良好なナトリウム供与体とは見えなかったクエン酸塩でさえ、ナトリウム濃度の上昇で安定性が上昇する傾向があったが、これは少し弱かった。この弱い理由は、すべての緩衝液についてと同様に、総ナトリウム含量の計算に、緩衝液からのナトリウムが使用されたためであった。従って、このナトリウムが塩化ナトリウムからのナトリウムのように有効(例えば利用可能)ではない場合(前の実施例で示されるように)、弱くなるであろう。これは、図16により確認された。
・リン酸ナトリウムは、良好なpH緩衝液であるが、安定化のためのナトリウムの供与体としては、より良好な供与体があり、従ってリン酸ナトリウムを他のカチオン供与体(ナトリウム又は他のカチオン)と組合せて、アルブミンを安定化することが有利かも知れない。
・従って、本発明者らは、製剤中の緩衝液は特に重要ではなく、任意の緩衝液、又は緩衝液無しでも使用できると考えている。しかし、緩衝液がキレート性である場合、緩衝液からの存在するアニオンは、アニオンの必要濃度の計算に含めるべきではない。
【0161】
実施例9:緩和変異体の安定性に対する高塩濃度の影響
【0162】
方法:種々のアルブミン及び変異体(表19)を0.5Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)で希釈した。変異体は、点突然変異(K573P、K500A、K573Y、K573W)を有する成熟HSA(配列番号2)と、マウス血清アルブミン(MSA、配列番号19)であった。アルブミン変異体のストック溶液のrHSA濃度とナトリウムイオン濃度は、表20に示される。
【0163】
【表19】
【0164】
【表20】
【0165】
【表20b】
【0166】
すべての変異体は、野生型ヒトアルブミンとはわずかに異なって精製されており、存在するオクタノエートのレベルは各変異体についてわずかに異なっていたであろう。前記結果から、変異体中に存在するオクタノエートは、100g/Lアルブミンで約4mMに等しかったであろうと推定された。野生型ストックは存在するオクタノエートが無視できるレベルであるため、次にこのストックに2Mのオクタノエート5μlを最終容量まで加えて、変異体アルブミンに対してほぼ同等のオクタノエート濃度を与えた。
【0167】
アルブミンストックと1MのNaClストックを表21に従って使用し、各試料はポリスチレンキュベット(Sarstedt 10×4×45mm)に最終容量1mLで作成した。試料を静かに混合した後、キュベットを65℃であらかじめ平衡化させ制御しておいた温度制御分光光度計に入れた。次に、350nmでの吸光度を、空のキュベットに対して30秒毎に読むことにより、2時間にわたって追跡した。最初の9つのデータ点(ほぼ最初の4分)を取り、平均値を計算(平均)し、次にすべてのデータ点からこれを引いて処理することにより、ベースライン吸光度を得た。特定の製剤試料について、この吸光度をこのベースラインより0.1AUだけ上昇させるのにかかる時間を記録した。吸光度が2時間(7200秒)で0.1AUを超えなかった場合は、データを外挿して近似時間を得た。
分光光度計中の6キュベットホルダーを使用して、最初の試料はいつも対照とし、他の5つの試料は、上昇する賦形剤濃度を使用した。対照はいつも、250mMのNaClを含有するpH6.5試料であったが、これは、試験が有効であると見なされる完全な2時間の65℃でのインキュベーションにわたって、不溶性凝集物が溶液中に残存しないようにするため必要であった。
【0168】
【表21】
【0169】
結果:すべての対照は有効であった。図17と18は、A350吸光度がベースラインより0.1AU上まで上昇するのにかかる時間に対する、ナトリウムイオン濃度の影響を示す。
【0170】
結論:すべての点は、野生型アルブミン、150mMのナトリウム試料とは異なる傾向に従う。この点が傾向をはずれる理由は不明であるが、外れ値である可能性があり、全体の結論を変えることは無い。
・すべてのアルブミン変異体について、ナトリウム濃度の上昇によりアルブミン安定性が上昇する明らかな傾向がある。
・成熟マウス血清アルブミン(配列番号19)は、成熟野生型ヒト血清アルブミン(配列番号2)と72.1%同一であり、全体の安定性はHSA又はHSA変異体ほど高くはないが、200mM以上でナトリウム濃度の上昇により安定性が上昇する明らかな傾向がある。
・存在するオクタノエートのレベルについて基礎製剤は、各変異体間で同じであるように完全には制御されていないため、変異体の安定性を野生型アルブミンの安定性と比較することは困難なため、異なる変異体間の安定性の有意差があるかどうかを言うのは難しい。しかし、各変異体についてのデータセット内で、オクタノエートのレベルは同じであり、従って安定性の上昇は、ナトリウムレベルの上昇にのみ由来する可能性が高い。
・オクタノエートが既知である1つの試料(野生型ヒト血清アルブミン、100g/Lアルブミンで4mMに等しい)は、ナトリウムによる観察された安定性の上昇がまた、このレベルのオクタノエートでも有効であることを示す。
【0171】
実施例10:アルブミン安定性に対するpHの影響
【0172】
方法:低濃度のオクタノエートを含有する精製アルブミンの試料(約0.2mM、100g/Lのアルブミン)を、まず表23のホスフェートストックを使用して、表22に従って50mg/mLに希釈した。
【0173】
【表22】
【0174】
【表23】
【0175】
試料は0.5MのHCl(すなわち、ナトリウムの添加無し)でpHを調整し、pH5ストックを使用して最終pH5.02と5.55を得て、pH6.5ストックを使用して最終pH6.00と6.49を得て、pH7ストックを使用して最終pH7.04を得て、そしてpH8ストックを使用して最終pH7.55と7.98を得た。添加したHClの量はわずかであり、アルブミン又は成分濃度は変化させなかったであろう。
【0176】
ストックは後述(表24)のように使用し、ポリスチレンキュベット(Sarstedt 10×4×45mm)に最終容量1mLで作成した。試料を静かに混合した後、キュベットを65℃であらかじめ平衡化させ制御しておいた温度制御分光光度計に入れた。次に、350nmでの吸光度を、空のキュベットに対して30秒毎に読むことにより、2時間にわたって追跡した。最初の9つのデータ点(ほぼ最初の4分)を取り、平均値を計算(平均)し、次にすべてのデータ点からこれを引いて処理することにより、ベースライン吸光度を得た。特定の製剤試料について、この吸光度をこのベースラインより0.1AUだけ上昇させるのにかかる時間を記録した。吸光度が2時間(7200秒)で0.1AUを超えなかった場合は、データを外挿して近似時間を得た。
【0177】
分光光度計中の6キュベットホルダーを使用して、最初の試料はいつも対照とし、他の5つの試料は、上昇する賦形剤濃度を使用した。対照はいつも、250mMのNaClを含有するpH6.5試料であったが、これは、試験が有効であると見なされる完全な2時間の65℃でのインキュベーションにわたって、不溶性凝集物が溶液中に残存しないようにするため必要であった。
【0178】
【表24】
【0179】
A350nm吸光度の上昇により検出される不溶性凝集物を測定する時、pH7(pH7.04と測定された)試料、pH7.5(pH7.55と測定された)試料、及びpH8(pH7.98と測定された)試料について、ナトリウムの安定化作用は決定的ではなかった。従って、分光光度計中で2時間の65℃インキュベーション後、試料を取り出し,遠心分離して大きな粒子を除去し、試料をGP−HPLCにより可溶性凝集物について分析した(実施例4のように)。データは、残存する%モノマーアルブミンとして表した(この値が高いほど、製剤が安定である)。
【0180】
結果:すべての対照は有効であった。図19、20、及び21は、ナトリウムイオン濃度に対するアルブミンの安定性を示す。pH7、7.5、及び8試料と同時に流したpH6.5対照の結果は、82%のモノマー含量の平均結果を与えた。
【0181】
結論:
・pH5からpH6.5までのすべてのpHについて、A350吸光度上昇(不溶性凝集物)により測定すると、アルブミン濃度の上昇によりアルブミン安定性が上昇することが明らかであった。
・pH7、7.5、及び8では、この傾向は明瞭ではなく(図19)、150mMのNaあたりに安定性の低下の可能性があった。しかし、これらの試料を、可溶性凝集物と残存する%モノマー(図21)についてGP−HPLCにより分析すると、ナトリウムの上昇により安定性が上昇する明らかな傾向があった。不溶性凝集物についてこの傾向が観察されなかった理由は、これらのpHがアルブミンのpI(アルブミンについて5.2)から最も遠く、従って、これらが溶液から出てくる凝集物とともに参加する可能性が低かったためである。
・pH6.5対照は、より高いpHのものより、同じナトリウムイオン濃度(250mM)で残存するモノマーのレベルが高く、pH6.5がアルブミンについてより安定なpHであることを示していた。
・不溶性凝集物と可溶性凝集物の両方のデータを組合せると、ナトリウム濃度の上昇は、pH5からpH8まで、アルブミン安定性を上昇させることを示す。
【0182】
実施例11:幹細胞培養物に対するオクタノエートの影響
【0183】
方法:幹細胞培養物に対するオクタノエートの影響は、委託研究機関であるCellartis AB(Gothernburg, Sweden)により行われた。簡単に説明すると、異なるレベルのオクタノエート(0.2、0.5、1.0、及び8.0mM)を有する100g/Lのアルブミンを、標準的幹細胞培地のアルブミン補助物質として使用した。ヒト胚幹細胞(細胞株SA121とSA181(Cellartis AB、European Human Embryonic Stem Cell Registryに寄託された細胞株))を、その標準培地から移し、6ウェルプレート中で、種々のレベルのオクタノエートを含有するアルブミンを補足した培地中で、5継代にわたって増殖させた。5継代にわたる細胞増殖を、細胞産生中の連続継代中の細胞倍加時間を追跡することにより評価した。培養物の倍加時間は、28〜40時間の範囲内のはずであり、傾向の指標として見られる。アルブミン補足培地中での5継代後の細胞の未分化状態を調べるために、未文化状態の4つの異なる認められたマーカー(すなわち、Oct−4、SSEA−3、Tra−1 60、及びhES−Cellect)に対する抗体を免疫染色で使用した。
【0184】
結果:表25は、倍加時間のデータを示す。初期の倍加時間は極めて大きいが、おそらく細胞が新しい培地組成物に適応する必要があるためであろう。しかし、継代2と継代4の間の倍加時間は、8mMのオクタノエートを含有する試料(これは、許容される細胞付着を維持できず、改変培地及び被覆条件を用いても継代2を超えて継続できなかった)以外は、すべて予測された範囲内である。継代5の倍加時間は極めて変動が大きく、一部の試料については、標準範囲のかなり外にあった。しかし、培養物はさらに拡張できなかったため、結論を導くのは困難である。
【0185】
【表25】
【0186】
表26は、分化マーカーについての免疫細胞化学染色のデータを示し、すべての試料(第5継代に到達できなかったため、8mMのオクタノエートを含有する試料は除く)は、培養物が、試験した5継代について未分化状態を維持することを支持した。
【0187】
【表26】
【0188】
結論:
・アルブミン中に存在するオクタノエートレベルは、幹細胞の付着、未分化細胞増殖の維持に重要である。100g/Lのアルブミン中の8mMオクタノエートでは、オクタノエートは幹細胞に対して毒性であり、表面へのこれらの結合又は細胞増殖を可能にしない。
【0189】
本明細書に記載され、添付の特許請求の範囲に規定された発明の範囲は、本明細書に挙げる具体的な態様によって限定されるべきではない。斯かる具体的態様はあくまでも本発明の一部態様の例示を目的とするものだからである。任意の均等な態様が本発明の範囲に含まれるものとする。事実、本明細書に提示及び記載された変形の他にも、本発明に対して種々の変形が可能であることは、本明細書の上記記載に接した当業者には明らかであろう。斯かる変形例も添付の特許請求の範囲に規定された発明の範囲に含まれるものとする。不整合がある場合には、定義を含む本明細書の記載が優先するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]