(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
次の定義は、本発明のいくつかの態様に関して説明される、いくつかの態様に適用される。これらの定義は、同様にここでさらに詳しく述べられる。各用語は、記載、図面および例により説明され、例示される。この記載における用語の解釈は、ここで表される全記載、図面および例を考慮されるべきである。
【0020】
単数の用語である「a」、「an」および「the」は、もし他に明確に規定していなければ、複数を含む。したがって、たとえばもし他に明確に規定していなければ、1つの対象への言及は複数の対象を含む。
【0021】
用語「実質的に」および「実質的な」は、かなりの程度までをいう。出来事または状況と併せて用いられるとき、その用語は、出来事または状況が正確に生じる場合、ならびにここで述べる態様の典型的な許容レベルまたは変動を考慮して、出来事または状況が非常に近接して生じる場合を含み得る。
【0022】
用語「約」は、ここで述べる態様の典型的な許容レベル、測定精度または変動を考慮して、所与の値の近くの値の範囲を含む。
【0023】
用語「被覆」、「被覆する」および「被覆された」等は、基板表面の材料の比較的薄い膜、ならびにその作成方法をいう。その用語は、連続した膜および不連続の膜を含む。
【0024】
用語「導電性」、「導電体」および「導電度」等は、電子またはイオンの輸送を容易にする材料の固有能力、ならびにその行為をいう。その用語は、その電気伝導能力が従来のエレクトロニクス用途に典型的に適したものよりも小さいが、電気絶縁材料よりもなお大きい材料を含む。
【0025】
用語「コア」等は、分子上においてペンダント基と対照的に分子の中央部位をいう。コアは全分子を占め得る。分子の形状は。コアの存否に決定的ではない。
【0026】
用語「溶媒」等は、もう1つの材料を少なくとも部分的に溶解することができる材料をいう。その用語は、単一の溶媒、または1つもしくはそれより多い溶媒を含む混合物を含み、そのような混合物は非溶媒を含み得る。
【0027】
用語「スラリー」等は、少なくともいくらかの量の、1またはそれより多い成分が溶媒に溶解していない混合物をいい、そして2つの材料の混合物を含み、そこでは混合物は溶媒なしで形成されるか、または混合物から製造される最終製品もしくは物品が形成される前に溶媒が実質的に除去されるとき、生じる。
【0028】
用語「活性材料」等は、電極、特に正極、における材料をいい、電気化学的セルにおける電気化学反応の間、導電性種を供与し、遊離させ、そうでないと供給する。
【0029】
本発明のある態様は、活性材料上に導電性被覆を形成するのに有用な化合物に関する。好ましくは、本発明の態様の化合物は、劣化し、分解し、またはそうでなければ高温または不活性雰囲気中で高温に曝された後に、使用に不適切または望ましくないものにされる、活性材料を被覆するのに用いられ、ここで高温は約500℃より高い温度である。その化合物は、そのような活性材料上で約500℃より低い温度で導電性被覆を形成し得る。
【0030】
ある態様において、導電性被覆は、金属フッ化物および炭素フッ化物を含む、望ましい活性材料の電気伝導度を向上させるのに用いられる。ある態様において、導電性被覆は、鉄フッ化物化合物(たとえばFeF
3)、マンガンフッ化物化合物(たとえばMnF
3)、銅フッ化物化合物(たとえばCuF
2)、および炭素フッ化物の電気伝導度を向上させるのに用いられる。ある態様において、導電性被覆は、リチウム−マンガン−ニッケル−酸素(LMNO)化合物、リチウム−マンガン−酸素(LMO)化合物、およびリチウムに富む層状酸化物化合物の電気伝導度を向上させるのに用いられる。もっと一般的には、導電性被覆は、リン酸塩、フルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、ケイ酸塩、スピネルおよび複合層状酸化物を含む正極用活性材料を向上させるのに用いられる。
【0031】
たとえば、適切なリン酸塩活性材料の1種は、Li
a(M1
bM2
cM3
dM4
e)
fPO
4で表され得、ここでM1, M2, M3およびM4は同一でも異なっていてもよく;M1は Mn, CoまたはNi;M2は遷移金属,たとえばTi, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Zr, Nb, またはMo;M3は遷移金属または典型元素であり、VIA族およびVIIA族元素を除外してもよい;M4は遷移金属または典型元素であり、VIA族およびVIIA族元素を除外してもよい; 1 .2≧a≧0.9 (または 1 .2 > a > 0.9), 1≧b≧0.6 (または 1 > b > 0.6), 0.4≧c≧0 (または 0.4 > c > 0), 0.2≧d≧0 (または0.2 > d > 0), 0.2≧e≧0 (または0.2 > e > 0), および 1 .2≧f≧0.9 (または 1 .2 > f > 0.9)。この種類の活性材料に関するさらなる詳細は、Goodenough et al., "Challenges for Rechargeable Li Batteries," Chemistry of Materials 22, 587-603 (2010); Marom et al., "A review of advanced and practical lithium battery materials," J. Mater. Chem., 21 , 9938 (201 1 ); Zhi-Ping et al., "Li-Site and Metal-Site Ion Doping in Phosphate-Olivine LiCoPO4 by First-Principles Calculation," Chin. Phys. Lett. 26 (3) 038202 (2009); および Fisher et al., "Lithium Battery Materials LiMPO (M) Mn, Fe, Co, and Ni): Insights into Defect Association, Transport Mechanisms, and Doping Behavior," Chem. Mater. 2008, 20, 5907-5915; に記載されており、その記載は引用によりすべてここに組み入れられる。
【0032】
たとえば、もう1つの種類の適切なリン酸塩活性材料は、リチウム(Li), コバルト (Co), 第1遷移金属 (M1), M1と異なる第2遷移金属 (M2)およびリン酸塩(PO
4)を含み得, ここでM1およびM2は、鉄(Fe),チタン(Ti), バナジウム(V), ニオブ(Nb), ジルコニウム(Zr), ハフニウム(Hf), モリブデン(Mo), タンタル(Ta), タングステン (W), マンガン(Mn), 銅 (Cu),クロム(Cr),ニッケル(Ni),および亜鉛(Zn) からそれぞれ選ばれ(たとえば、ドーパントおよび/またはその酸化物として), そしてそれぞれ(1 -x) : (1 -y-z) : y : z : (1 -a)で規定される、Li : Co : M1 : M2 : PO
4のモル比を有し得、Li
(i-x) : Co
(i-y-z) : M1
y : M2
z : (PO
4)
(i-a)(ここで、-0.3≦x≦0.3; 0.01≦y≦0.5; 0.01≦z≦0.3; -0.5≦a≦0.5;および 0.2≦1-y-z≦0.98と略記されていてもよい。好適には、M1およびM2は、鉄(Fe), チタン(Ti), バナジウム(V) およびニオブ(Nb) からそれぞれ選ばれる(たとえば、ドーパントおよび/またはその酸化物として)。好適には、M1は鉄 (Fe) であり(たとえば、ドーパントおよび/またはその酸化物として) 、M2 はチタン(Ti),バナジウム(V), およびニオブ(Nb)から選ばれる (たとえば、ドーパントおよび/またはその酸化物として)。好適には、 -0.3≦x<0, -0.2≦x<0, または - 0.1≦x<0である。好適には、M2 はTiであり、0.05≦z≦0.25または 0.05≦z≦0.2である。好適には、M2はVであり、0.03≦z≦0.25または0.05≦z≦0.2である。好適には、0.3≦1-y-z≦0.98, 0.5≦1-y-z≦0.98または0.7≦1-y-z≦0.98である。この種類の正極材料についてのさらなる詳細は、U.S. Provisional Application No. 61 /426,733 (filed on December 23, 2010),「Lithium Ion Battery Materials with Improved Properties」に開示されており、引用によりそのすべてがここに組み入れられる。
【0033】
たとえば、適切なフルオロリン酸塩活性材料の1種は、Li
a(M1
bM2
cM3
dM4
e)
fPO
4F
gで表され得、ここでM1, M2, M3およびM4は同一でも異なっていてもよく;M1は Mn, CoまたはNi;M2は遷移金属,たとえばTi, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Zr, Nb, またはMo;M3は遷移金属または典型元素であり、VIA族およびVIIA族元素を除外してもよい;M4は遷移金属または典型元素であり、VIA族およびVIIA族元素を除外してもよい; 1 .2≧a≧0.9 (または 1.2 > a> 0.9), 1≧b≧0.6 (または 1>b>0.6), 0.4≧c≧0 (または0.4>c>0), 0.2≧d≧0 (または0.2>d>0), 0.2≧e≧0 (または0.2>e>0), 1.2≧f≧0.9 (または 1.2>f>0.9)および1.2≧g≧0 (または1.2>g>0)である。
【0034】
たとえば、適切なフルオロケイ酸塩活性材料の1種は、Li
a(M1
bM2
cM3
dM4
e)
fSiO
4で表され得、ここでM1, M2, M3およびM4は同一でも異なっていてもよく;M1は Mn, CoまたはNi;M2は遷移金属,たとえばTi, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Zr, Nb, またはMo;M3は遷移金属または典型元素であり、VIA族およびVIIA族元素を除外してもよい;M4は遷移金属または典型元素であり、VIA族およびVIIA族元素を除外してもよい; 2.2≧a≧0.9 (または2.2>a>0.9), 1≧b≧0.6 (または 1>b>0.6), 0.4≧c≧0 (または 0.4>c>0), 0.2≧d≧0 (または0.2>d>0), 0.2≧e≧0 (または0.2>e>0), および 1 .2≧f≧0.9 (または1.2>f>0.9)である。
【0035】
たとえば、適切なスピネル活性材料の1種は、Li
a(M1
bM2
cM3
dM4
e)
fO
4で表され得、ここでM1, M2, M3およびM4は同一でも異なっていてもよく;M1は MnまたはFe;M2はMn, Ni, Fe, Coまたは Cu,;M3は遷移金属、たとえばTi, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Zr, Nbまたは Moであり;M4は遷移金属または典型元素であり、VIA族およびVIIA族元素を除外してもよい; 1.2≧a≧0.9 (または1.2>a>0.9), 1.7≧b≧1.2 (または 1.7>b>1.2), 0.8≧c≧0.3 (または 0.8>c>0.3), 0.1≧d≧0 (または0.1>d>0), 0.1≧e≧0 (または0.1>e>0), および 2.2≧f≧1.5 (または2.2>f>1.5)である。LMNO型の正極材料、たとえばLi
1.05Mn
1.5Ni
0.5O
4および LMO型材料、たとえばLiMn
2O
4もこの種類に含まれる。この種類の活性材料に関するさらなる詳細は、Goodenough et al., "Challenges for Rechargeable Li Batteries," Chemistry of Materials 22, 587-603 (2010); Marom et al., "A review of advanced and practical lithium battery materials," J. Mater. Chem., 21 , 9938 (201 1 ); and Yi et al., "Recent developments in the doping of LiNio.5Mn1.5O4 cathode material for 5 V lithium-ion batteries," Ionics (201 1 ) 17:383- 389; に記載されており、その記載は引用によりすべてここに組み入れられる。
【0036】
たとえば、適切なLiに富む層状酸化物活性材料の1種は、Li
a(M1
bM2
cM3
dM4
e)
fO
2で表され得、ここでM1, M2, M3およびM4は同一でも異なっていてもよく;M1は遷移金属、たとえばMn, Fe, V, CoまたはNi;M2は遷移金属、たとえばMn, Fe, V, CoまたはNi;M3は遷移金属、たとえばMn, Fe, V, CoまたはNi;であり;M4は遷移金属または典型元素であり、VIA族およびVIIA族元素を除外してもよい; 0.4≧a≧0.05 (または0.4>a>0.05), 0.7≧b≧0.1 (または 0.7>b>0.1), 0.7≧c≧0.0 (または 0.7>c>0.0), 0.7≧d≧0.0 (または0.7>d>0.0), 0.2≧e≧0 (または0.2>e>0), および 1.2≧f≧0.9 (または1.2>f>0.9)である。OLO型の材料もこの種類に含まれる。この種類の活性材料に関するさらなる詳細は、Goodenough et al., "Challenges for Rechargeable Li Batteries," Chemistry of Materials 22, 587-603 (2010); Marom et al., "A review of advanced and practical lithium battery materials" J. Mater. Chem., 21 , 9938 (201 1 ); Johnson et al., "Synthesis, Characterization and Electrochemistry of Lithium Battery Electrodes: xLi2MnO3 (1 - x)LiMn0.333Nio.333Coo.333O2 (0 < x < 0.7)," Chem. Mater., 20, 6095-6106 (2008); and Kang et al., "Interpreting the structural and electrochemical complexity of 0.5Li2MnO3 .5LiMO2 electrodes for lithium batteries (M = Mno.5-xNio.5- xCo2x, 0 = x = 0.5)," J. Mater. Chem., 17, 2069-2077 (2007);に記載されており、その記載は引用によりすべてここに組み入れられる。
【0037】
ある態様によれば、活性材料は、前駆体材料を用いて被覆される。適切な前駆体材料は、活性材料上への、特に活性材料の粒子上への、導電性被覆の堆積を容易にする。
【0038】
ある態様において、前駆体は炭素含有化合物である。これらの態様において、炭素前駆体はポリマー、すなわち高分子材料である。さらに一般的には、炭素前駆体は、加熱の際に分解して導電性炭素を形成するものであればよい(たとえば、ポリマー、砂糖、種々の生体分子等)。好適には、前駆体は、活性材料の分解温度未満で分解する(炭素前駆体の特別な場合において、「炭化する」)。たとえば、炭素フッ化物活性材料は、約550℃〜700℃の範囲の温度に加熱されると、実質的な分解を示す。適切な炭素前駆体の他の例は、ショ糖、ポリエチレングリコール、ポリビニリデンフッ化物、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、セルロース、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの組み合わせ、を含む。好適には、ポリマー前駆体は、炭素フッ化物活性材料の分解温度の範囲未満の温度で実質的に黒鉛状の炭素被覆を形成する。
【0039】
ある態様によれば、活性材料上の導電性炭素被覆の形成に有用な化合物は、非局在化電子配置を有する有機分子である。ある態様によれば、その化合物は、導電性有機分子である。高度に電子非局在化されたどの化合物も、または高電導度のどの化合物も、活性材料上に導電性被覆を形成するのに使用され得る。
【0040】
一般的にいえば、非局在化された電子は、イオンまたは金属の場合においては単一原子、または有機材料の場合には単一の共有結合、の軌道に限定されない電子である。炭素系材料において、炭素原子の外部エネルギーレベルにおける4つの電子の1つより多くがもう1つの原子と共有結合しているとき、炭素原子を含む結合は、非局在化された電子のための源であり得る。電子非局在化は、炭素−炭素結合で起こることが多い。これらの結合は、共役結合といわれることがある。
【0041】
混成理論によれば、非局在化された電子は、炭素のような原子の内側および外側の軌道間での混合として表され得る。炭素において、混成された軌道は、sp
3混成、sp
2混成、およびsp混成であり得る。理論または特定の作用様式により拘束されないで、高度のspまたはsp
2混成を有する有機材料は、活性材料上に導電性炭素被覆を形成するのに好適であると考えられる。本発明の態様による化合物は、複合コアを含み、そこでは多くの炭素原子はspまたはsp
2混成されている。本発明の態様による化合物は、その固有電導度が知られ得る。
【0042】
黒鉛被覆のような、従来の導電性炭素被覆は、非混成またはsp
3混成軌道電子を有する、非導電性炭素分子から形成されている。そのような材料は、材料を分解し黒鉛化するように、典型的には高温に加熱され、sp
2混成軌道を有する炭素被覆を形成することが多い。そのような被覆において、黒鉛化の効率は温度とともに増加すること、そして高温熱処理は最良の被覆を与えることが知られている。
【0043】
対照的に、ある態様の化合物は、少なくとも一部はその固有電導度のために、高温熱処理を必要としない。本発明の態様の化合物は、導電性炭素被覆を提供するのに黒鉛化を必要としない。さらに、本発明の態様の化合物の分解は、化合物の固有電導度を低下または破壊するかもしれないので望ましくない。
【0044】
本発明の態様によれば、活性材料を被覆するための化合物は、spまたはsp
2混成されている炭素原子を含む。好適には、化合物において少なくとも35%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも40%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも45%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも50%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも55%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも60%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも65%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも70%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも75%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも80%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも85%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも90%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において少なくとも95%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物において100%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。
【0045】
本発明の態様によれば、活性材料を被覆するための化合物は、複合コアを含み、そこでは多くの炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも35%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも40%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも45%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも50%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも55%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも60%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも65%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも70%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも75%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも80%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも85%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも90%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは少なくとも95%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。好適には、化合物は複合コアを含み、そこでは100%の炭素原子がspまたはsp
2混成されている。
【0046】
複合コアを含む化合物の例は、次のとおりであるが、これらに限定されない:ペンタセン、アンスラセン、ナフタレン、ルブレン、C60、グラフェン、多層炭素ナノチューブ(MWCNT)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミド、ペリレン、ピレン、テトラチアフルバレン、ポリアニリン、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン、4−(ヘプタデカフルオロオクチル)アニリン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジル)、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、11−フェノキシウンデカン酸、トリフェニレン、ポリ(2,6−ナフタレンビニレン)、オクトフルオロナフタレン、オリゴチオフェン、ヘキサベンゾコロネン、フタロシアニン、p−キンクエフェニル8、およびテトラ−N−フェニルベンジジン。1つより多い化合物が、追加もしくは向上した性能を生じるように、単一被覆において組み合わされ得る。
【0047】
本発明のある態様による炭素源被覆材料の例は、次のとおりであるが、これらに限定されない:PVDF,トリス[4−(5−ジシアノメチリデンメチル−2−チエニル)フェニル]アミン、トリフェニレン、テトラチアフルバレン、ルブレン、ピレン、ポリアニリン(エメラルジン塩基)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジル)、PNB,ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジアンヒドリド、ペリレン、ペンタセン/MWCNT,ペンタセン/アンスラセン(4:1)、ペンタセン/アンスラセン(1:4)、ペンタセン−N−スルフィニル−tert−ブチルカーバメート、ペンタセン、ナフタレン、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミド、ジチエノ[3,2−b:2,3−d]チオフェン、ジリチウムフタロシアニン、ジベンゾテトラチアフルバレン、ジベンズ[a,h] アンスラセン、コロネン、銅(II)フタロシアニン、C60,ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、ベンズ[b] アンスラセン、アンスラセン、29H,31H−フタロシアニン、11−フェノキシウンデカン酸、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン、5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン、4−(ヘプタデカフルオロオクチル)アニリン、2,2':5',2":5",2"‐クオーターチオフェン、1,8−ナフタル酸無水物、1,6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、1,3−ジメチルー2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾールおよびそれらの組み合わせ。
【0048】
ある態様によれば、電気化学的セルに用いられる電極は、活性材料、バインダー材料および導電性材料から形成される。活性材料は、典型的には粒状であるが、他の形状も採りえる。電極を形成する前に、活性材料は本発明の態様による化合物を用いて被覆される。ある態様において、その化合物は、活性材料の粒子を「濡らす」(wet)。その化合物は、溶液により、または溶融により粒子を濡らし得る。ある態様によれば、活性材料粒子を被覆するのに好適な化合物は、約500℃未満の温度で粒子を濡らし、かつ導電性被覆を形成する。ある態様によれば、炭素フッ化物粒子を被覆するのに好適な炭素前駆体は、約600℃未満〜約700℃の温度で粒子を濡らし、かつ導電性被覆を形成する。好適には、その化合物は、活性材料の分解温度の範囲未満の温度で、実質的に導電性の炭素被覆を形成する。
【0049】
本発明のある態様によれば、その化合物は、溶媒と混合される。これらの態様において、溶媒は、溶解度、濡れ性、粘度、引火点、揮発性および他の特性に基づいて、化合物とペアを組まれる。化合物と溶媒は、ボールミルを含む、いかなる混合手段も用いて混合される。ある態様において、活性材料およびポリマーは、溶媒としてのアセトンとともにボールに供される。適切な溶媒の例は、アセトン、NMP、メタノール、ヘキサン、アセトニトリル、THF、DMSO、ピリジン、ベンゼン、水、エタノール、イソプロパノール、およびそれらの組み合わせを含む。ある態様において、溶媒は、活性材料粒子上への化合物の濡れを向上させ、もっと均一で完全な被覆を加熱段階前に形成する。他の態様におて、溶媒は、化合物粒子および活性材料粒子の処理を助け、加熱段階前に混合を向上させ、および/または粒径を調節する。このような加熱前の被覆の均一性および完全さの向上は、加熱後に活性材料上にもっと均一で完全な炭素被覆を与える。
【0050】
ある態様によれば、活性材料、化合物および溶媒は、ボールミルのような方法を用いて混合される。好適には、活性材料、被覆化合物および溶媒は、活性材料上に被覆化合物の実質的に均一で完全な被覆を形成する方法を用いて混合される。いくつかの態様において、活性材料、化合物および溶媒は、活性材料上に化合物の実質的に均一で完全な被覆を形成する方法を用いて撹拌される。いくつかの態様において、活性材料および化合物は、溶媒なしに混合される。
【0051】
ある態様によれば、活性材料、被覆化合物および溶媒の混合物は、スラリーを形成する。ある態様において、スラリーは加熱されて、活性材料上に導電性炭素被覆を形成する。ある態様において、加熱は、不活性雰囲気下で行うのが好適である。
【0052】
ある態様によれば、加熱条件は、活性材料上に導電性炭素の薄層を形成するように選ばれ、活性電極材料の劣化を制限する。いくつかの態様において、加熱は、約300℃〜約700℃、好ましくは約400℃〜約600℃、の温度範囲で行われる。好適には、加熱は、約500℃未満で行われる。好適には、加熱は、約450℃未満で行われる。好適には、加熱は、約400℃未満で行われる。好適には、加熱は、約350℃未満で行われる。好適には、加熱は、約300℃未満で行われる。好適には、加熱は、約250℃未満で行われる。好適には、加熱は、約200℃未満で行われる。好適には、加熱は、約150℃未満で行われる。好適には、加熱は、約100℃未満で行われる。
【0053】
ある態様において、spまたはsp
2混成された原子が分解されないように、そして複合コアの非局在化電子が実質的に維持されるように、アニールを適合させるのが好適である。しかし、その系に十分なエネルギー(たとえば、熱および/または機械的エネルギー)を供給して、活性材料粒子上に望ましい被覆を生じさせるのがさらに好適である。ある態様において、比較的低いアニール温度は電池容量を増加させるが、電圧性能を低下させる。ある態様において、被覆前駆体と活性材料の間で反応が生じるので、その系は色変化を受け、それは被覆化合物と活性材料の間の結合の証拠となり得る。
【0054】
いくつかの態様において、加熱は約6時間未満行われる。好適には、加熱は約5時間未満行われる。好適には、加熱は約4時間未満行われる。好適には、加熱は約3時間未満行われる。好適には、加熱は約2時間未満行われる。好適には、加熱は約1時間未満行われる。
【0055】
ある態様によれば、被覆活性材料はバインダー材料および導電性材料とさらに混合される。そのような態様において、混合は、ボールミルのような適切な方法によりなされ得、電極形成用材料を生成する。電極形成用材料は、典型的には、主に被覆活性材料からなり、好ましくは約85〜約97%の範囲の活性材料である。電極形成材料の残りは、バインダー材料および導電性材料からなる。バインダー材料は、典型的には約2.5%〜約11%存在する。ある態様において、導電性材料は、約0.5%〜約7.5%存在する。
【0056】
以下の実施例に記載されるように、ある態様は、未被覆の電極と比べて、比較的高い電力、増加した動作電圧、高放電レートでの比較的高い容量、ならびに減少された発熱、を与える被覆電極を生成する。特定の原理、仮説、または作用方法に拘束されないで、本発明のある態様の被覆は、電子およびリチウムイオン輸送のための抵抗経路を提供し、電極抵抗を著しく低下させる。この1つの結果は、比較的高い電力および比較的低いアンダーポテンシャルを有する電気化学的セルである。その結果、電気化学的セルが比較的高いレートで作動されるとき、比較的高い容量が得られ得る。
【0057】
ここである例に示されるように、本発明のある態様の被覆は、比較的高い電力、増加した動作電圧、高い放電レートでの増加した容量、減少した発熱、および増加した熱消失を可能にすることにより電池のいくつかの課題に向けられる。たとえば、高ドレイン用途において、ある態様は、電池のエネルギー容量を向上させるので、従来の電池と比べて、比較的高い電圧が高電流で達成され得る。ある態様は、中〜高ドレイン条件下での有用な電池寿命を延ばす。予想外に、本発明のある態様の被覆は、低濃度でこれらの課題に向かう。本発明のある態様による被覆電極材料は、放電深さで改良された電圧および電力を示す。
【0058】
本発明のある態様による被覆正極材料は、以下に示される例による電気化学的セルに含まれる。いくつかの場合において、電気化学的セルの電解質溶液は、添加剤を含む。本発明のある態様の被覆正極材料ならびに添加剤を含む電解質溶液の組み合わせは、改良された性能を示す。多くの場合において、性能向上は、被覆または添加剤のいずれかで実現される性能向上よりも実質的に大きい。
【0059】
次の例は、本発明のいくつかの態様の具体的態様を記載し、当業者のために示すものである。その例は、本発明を限定すると解釈されるべきではなく、本発明のいくつかの態様を理解し、実施するのに有用な、具体的。方法論を提供するにすぎない。
【実施例】
【0060】
例1−炭素前駆体材料から導電性被覆電極の作製
材料および合成方法
炭素フッ化物活性材料は、中程度のエネルギーで炭素前駆体とともにミルに供され、ついで後アニールされた。炭素前駆体は、KJ600(カーボンブラック)、PEG、PVDFおよびショ糖を含んでいた。炭素前駆体量は5wt%であった。アニール条件は、450℃と600℃で、2および6時間であった。
【0061】
例2−添加材料ありとなしで導電性被覆電極の作製
方法は、次の変更を除けば、例1と同一であった:ポリビニリデンフッ化物が炭素前駆体として使用された;炭素前駆体量は3つの条件であった(1、3、5wt%);アニール条件は、450℃と500℃で、3、6および12時間であった。
【0062】
例3−複合コア化合物から導電性被覆電極の作製
材料および合成方法
すべての反応は、高純度アルゴンを充てんされたグローブボックス(M-Braun,O
2および湿分<0.1ppm)中で行われた。特に特定がなければ、材料は市販源から得られたものであり(たとえば、Sigma-Aldrich, Advanced Research Chemicals Inc., およびAlfa Aesar)、さらなる精製なしで用いられた。
【0063】
炭素被覆
CFx、LMO、およびLMNO粒子がミル処理により導電性炭素材料で被覆された。ミル容器は、ベース正極材料、導電性炭素被覆前駆体材料および溶媒を充てんされた。導電性炭素被覆前駆体材料は0〜5wt%の範囲で充てんされた。容器は密封され、ついでその内容物はミルされた。ミル後に、溶媒は約60℃で蒸発され、そしてある態様において、試料はN
2流通下にアニールされた。
【0064】
電極配合
被覆CFx粒子の場合において、電極は、活性材料85%、バインダー材料11%、および導電性添加剤4%の配合組成で、次の配合法に従って、調製された:約200mgのPVDF(Sigma Aldrich)が10mLのNMP(Sigma Aldrich)に夜通し溶解された。約72.7mgの導電性添加剤が、その溶液に添加され、数時間撹拌された。約154mgの被覆CFx固体が、この溶液1mLに添加され、夜通し撹拌された。約100μLのスラリーをステンレス鋼カレントコレクター上に落下させて、150℃で約1時間、乾燥することにより、薄膜がキャスト形成された。乾燥薄膜は、冷却され、ついで1トン/cm
2の圧力で押圧された。さらに電極は、真空下、150℃で12時間乾燥され、ついで電池組み立てのためにグローブボックスに運ばれた。
【0065】
電極配合
被覆LMO、LMNOおよびOLO粒子の場合において、電極は、活性材料85%、バインダー材料7.5%、および導電性添加剤7.5%の配合組成で、次の配合法に従って、調製された:約198mgのPVDF(Sigma Aldrich)および約198mgのSuper P Li(Timcal)が15mLのNMP(Sigma Aldrich)に夜通し溶解された。約150mgの被覆LMO、LMNOまたはOLO固体が、この溶液1mLに添加され、夜通し撹拌された。約66μLのスラリーをステンレス鋼カレントコレクター上に落下させて、150℃で約1時間、乾燥することにより、薄膜がキャスト形成された。乾燥薄膜は、冷却され、ついで1トン/cm
2の圧力で押圧された。さらに電極は、真空下、150℃で12時間乾燥され、ついで電池組み立てのためにグローブボックスに運ばれた。
【0066】
例4−被覆電極を含む電気化学的セルの作製
すべての電池は、特に特定がなければ、高純度アルゴンを充てんされたグローブボックス(M-Braun,O
2および湿分<0.1ppm)中で組み立てられた。
【0067】
一次CFxセルは負極としてリチウム、セパレーターとしてCelaguard 2400、そして電解質として180mLの1M LiBF
4(1:1 PC:DME中)を用いて、作製された。
【0068】
二次LMOおよびLMNOハーフセルは負極としてリチウム、セパレーターとしてCelaguard 2400、そして電解質として90mLの1M LiPF
6(1:2 EC:EMC中)(Novalyte)を用いて、作製された。
【0069】
例5−被覆電極を含む電気化学的セルの試験
例1および2により作製された電気化学的セルは、種々の試験方法により試験された。被覆された電極のない電気化学的セルと比較して、ある電気化学的セルは性能の増加を示した。
【0070】
たとえば、
図1に示されるように、被覆電極は、60%未満の放電深さ(DoD)のCFx/SVO複合セルにおいて無負荷電圧の約100〜150mVの増加をもたらした。
図1に示されるように、被覆電極は、20〜60%の放電深さ(DoD)のCFx/SVO複合セルにおいて無負荷電圧の約50〜150mVの増加をもたらした。
図2に示されるように、被覆電極は、60%およびそれ未満のDoDのCFx/SVO複合セルにおいて、2mA/cm
2のパルス電流で約0.2mW/cm
2のパルス電力増加をもたらした。
図3に示されるように、標準的電極配合の半分の導電性添加剤を用いた被覆電極は、未被覆CFxを用いた標準配合に比べて、60%のDoDのCFx/SVO複合セルにおいて、2mA/cm
2のパルス電流で約0.1mW/cm
2のパルス電力増加をもたらした。
図4に示されるように、被覆電極は、ある電解質添加剤と相乗的に挙動し、電解質添加剤なしの被覆電極に比べて、60〜80%のDoDのCFx/SVO複合セルにおいて、2mA/cm
2のパルス電流で約0.1〜0.2mW/cm
2のパルス電力増加をもたらした。
図5に示されるように、標準的電極配合の半分の導電性添加剤を用いた被覆電極は、60%のDoDのCFx/SVO複合セルにおいて、25mA/cm
2のパルス電流で約5mW/cm
2のパルス電力増加をもたらした。
図6に示されるように、フッ素化された(PVDF)およびフッ素化されていない(PEG)炭素前駆体を用いて調製された被覆電極は、50%未満のDoDのCFx/SVO複合セルにおいて、2mA/cm
2のパルス電流で約0.2〜0.3mW/cm
2のパルス電力増加をもたらした。
【0071】
例6−被覆電極を含む一次電気化学的セルの試験プロトコール
一次セルとして設計された電極およびセルは、0.1Cおよび1Cで一定の電流放電プロトコールを用いて30℃で電気化学的に特徴付けられた。
【0072】
例7−被覆電極を含む二次電気化学的セルの試験プロトコール
二次セルとして設計された電極およびセルは、次のプロトコールを用いて室温(〜23℃)で、電気化学的に特徴付けられた:(1)セルは、1サイクルで条件づけられ、そこでは、充電および放電がC/20のC−レートで生じ、電流がC/100に達するまで、定電流、定電圧放電を含む;(2)セルは、各C−レートでの3時間の無不可保持時間を伴う、種々のC−レート(2C、1C、0.5C、0.1C)の段階を経て、充電容量維持率を試験された。LMO活性材料について、充電電圧は4.5Vであった。LMNO活性材料について、充電電圧は4.95Vであった。セルは、各C−レートの間、3時間の無負荷保持時間を伴う、種々のC−レート(2C、1C、0.5C、0.1C)の段階を経て、放電された;(3)セルは、3時間の無負荷保持時間を含む、C/10のC−レートでサイクルされて過リチオ化相を生成する;ならびに(4)セルは、段階(2)のように、再度試験された。
【0073】
例8−被覆電極を含む一次電気化学的セルの試験
CFx正極を有し、例3および4にしたがって組み立てられた一次セルは、例6にしたがって試験された。0.1C放電試験の正極は、(1)未被覆CFx活性材料;(2)PVDF前駆体材料を用いて堆積された炭素被覆を有し、黒鉛化方法により被覆されたCFx活性材料;および(3)ペンタセンで被覆されたCFx活性材料、からなっていた。
図7は、ペンタセン被覆試料における動作電圧の改良を示す。
【0074】
例9−被覆電極を含む一次電気化学的セルの試験
CFx正極を有し、例3および4にしたがって組み立てられた一次セルは、例6にしたがって試験された。1C放電試験の正極は、(1)未被覆CFx活性材料;(2)MWCNTで被覆されたCFx活性材料;(3)ペンタセンで被覆されたCFx活性材料;ならびに(4)MWCNTおよびペンタセンの混合物で被覆されたCFx活性材料からなっていた。
図8は、ペンタセン被覆試料およびペンタセン/MWCNT試料の動作電圧および電圧遅延の改良を示す。
【0075】
例10−被覆電極を含む一次電気化学的セルの試験
CFx正極を有し、例3および4にしたがって組み立てられた一次セルは、例6にしたがって試験された。1C放電試験の正極は、(1)未被覆CFx活性材料;(2)7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンで被覆されたCFx活性材料;(3)テトラチアフルバレンで被覆されたCFx活性材料;ならびに(4)テトラチアフルバレンと7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンの混合物で被覆されたCFx活性材料からなっていた。
図9は、テトラチアフルバレンと7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンの混合物被覆試料の動作電圧および電圧遅延の改良を示す。
【0076】
例11−被覆電極を含む二次電気化学的セルの試験
二次セルは、例3および4にしたがって組み立てられた。試験の正極は、(1)未被覆LMO活性材料;(2)未被覆LMNO活性材料;(3)ルブレンで被覆されたLMO活性材料;(4)ルブレンで被覆されたLMNO活性材料;(5)N,N−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミドで被覆されたLMO活性材料;ならびに(6)N,N−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミドで被覆されたLMNO活性材料からなっていた。
図10(A)(LMO)および10(B)(LMNO)は、被覆試料の高C−レートでの容量維持率の改良を示す。
【0077】
例12−被覆電極を含む電気化学的セルの電圧および電力試験
電極およびセルは、次のプロトコールを用いて37℃で、電気化学的に特徴付けられた:電力測定のために所定の放電深さで、高電流パルスを伴う0.01Cバックグラウンド放電。パルスは、10秒間、2mA/cm
2で実施され、ついで10秒間、OCV(無負荷電圧)を実施した。パルスは4パルスのセットで行われ、セルは、第1パルスの前および第4パルスの後に、1お時間OCVで休止された。
図11は、放電深さ80%における、最良の炭素被覆CFxのパルス電力向上を示す。
【0078】
表1は、試験された被覆材料、ならびに対照と比較して電圧およびレート能力試験におけるそれらの性能を示す。セルは、表1に示される炭素源で被覆された複合正極(CFx/SVO)材料を用いて作製された。レート能力は、0.1Cレートに比較されるCレートでの放電百分率として示される。
【0079】
【表1】
【0080】
表2は、表2に示される炭素源で被覆された複合正極(CFx/SVO)材料を用いて試験された被覆材料を示す。表2は、放電深さ70%および放電深さ80%で、セルについて測定された電力を示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表3は、試験された被覆材料、ならびに対照と比較して電圧およびレート能力試験におけるそれらの性能を示す。セルは、表3に示される炭素源で被覆された純CFx電極材料を用いて作製された。レート能力は、0.1Cレートに比較されるCレートでの放電百分率として示される。
【0083】
【表3】
【0084】
ここで開示される種々の材料は、対照に比べて改良された性能を示した。ある試験において、ナフタル酸無水物は、対照と比べて、3%の容量向上、電力性能向上、および改良された電力安定性を示した。ある試験において、ペリレンは、対照と比べて、9%の電圧向上を示した。ある試験において、ルブレンは、対照と比べて、高電圧における優れた容量を示した。
【0085】
本発明は、その具体的な態様について説明されているが、種々の変更がなされ得、っして均等物は、請求項に規定される発明の真の精神および範囲から逸脱しないで置換され得る。さらに、多くの修正が、特定の状況、材料、組成物、方法、または処理を、本発明の目的、精神および範囲に適合するようになされ得ることが当業者に理解されるべきである。そのようなすべての修正は、請求項の範囲内であるように意図される。特に、ここに開示される方法は、特定の順序で実施される特定の操作について説明されているが、これらの操作は、本発明の教示を逸脱しないで均等の方法を形成するために、結合され、細分化され、または再構成され得ることが理解されるであろう。したがって、ここで具体的に指摘がなければ、操作の順序およびグループ分けは、本発明の制限にはならない。
本明細書に記載の実施態様の一部を[1]−[20]に記載する。
[項目1]
固有の導電度を有する被覆用化合物を活性電極材料と一緒にして混合物を形成すること;
その混合物を加熱して、導電性に被覆された活性電極材料を形成すること、ここでその混合物は活性電極材料の劣化を制限する時間および温度で加熱される;
その導電性に被覆された活性電極材料を、バインダー材料および導電性添加剤と混合して、電極形成用混合物を形成すること;ならびに
その電極形成用混合物を加熱して電極を形成すること;
を含む電気化学的セル用の電極の製造方法。
[項目2]
被覆用化合物が有機材料である項目1に記載の方法。
[項目3]
被覆用化合物が複合コアを含み、そこでは炭素原子の少なくとも90%はspまたはsp2混成されている項目1に記載の方法。
[項目4]
被覆用化合物が、炭素原子の少なくとも35%はspまたはsp2混成されている化合物である項目1に記載の方法。
[項目5]
被覆用化合物が複合コアを含み、そこでは炭素原子の100%はspまたはsp2混成されている項目1に記載の方法。
[項目6]
被覆用化合物が450℃未満で加熱される項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[項目7]
被覆用化合物が0〜6時間の範囲の時間、加熱される項目1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[項目8]
被覆用化合物がナフタレンコアを含む項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[項目9]
被覆用化合物がペンタセンコアを含む項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[項目10]
被覆用化合物がペリレンコアを含む項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[項目11]
活性電極材料;
バインダー材料;ならびに
固有導電性の被覆、ここで被覆は活性電極材料に付着される、
を含む電気化学的セル用の電極。
[項目12]
固有導電性の被覆が、複合コアを含む有機被覆用化合物から形成される項目11に記載の電極。
[項目13]
固有導電性の被覆が、複合コアを含む有機被覆用化合物から形成され、ここで炭素原子の少なくとも90%はspまたはsp2混成されている項目11に記載の電極。
[項目14]
複合コアが、ナフタレンコア、ペンタセンコア、ペリレンコア、アンスラセンコア、およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる項目12に記載の電極。
[項目15]
正極活性電極材料と固有有機導電体の粒子を混合すること;ならびに
その混合物を正極活性電極材料の劣化を制限する時間および温度で加熱すること;
を含む活性電極材料の被覆粒子の製造方法。
[項目16]
時間が6時間未満であり、かつ温度が450℃未満である項目15に記載の方法。
[項目17]
時間が6時間未満であり、かつ温度が350℃未満である項目16に記載の方法。
[項目18]
時間が6時間未満であり、かつ温度が250℃未満である項目16に記載の方法。
[項目19]
固有有機導電体が複合コアを含み、そこでは炭素原子の少なくとも90%はspまたはsp2混成されている項目15に記載の方法。
[項目20]
複合コアが、ナフタレンコア、ペンタセンコア、ペリレンコア、アンスラセンコア、およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる項目19に記載の方法。