(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
ゲノムワイドシーケンシングアプローチにより、1セットの転写された非コード配列の増加が明らかにされており、その非コード配列の転写には、転写サイレンシングおよび染色体完全性に結びつけられるゲノムのヘテロクロマチン領域による「広汎性転写(pervasive transcription)」が挙げられる(J. Berretta, A. Morillon, EMBO Rep 10, 973(2009年9月);A. Jacquier, Nat Rev Genet 10, 833(2009年12月))。マウスにおいて、ヘテロクロマチンは、紡錘体複合体の形成および忠実な染色体分配に必要とされる中心体(マイナー)サテライトリピートおよび中心周囲(メジャー)サテライトリピートで構成され(M. Guenatri, D. Bailly, C. Maison, G. Almouzni, J Cell Biol 166, 493(2004年8月16日))、一方、ヒトサテライトリピートは、類似した機能を有する複数のクラスに分けられている(J. Jurkaら, Cytogenet Genome Res 110, 462(2005))。酵母におけるサテライトの双方向的転写は、ダイサー媒介性RNA誘導性転写サイレンシング(RITS)を通して、および最近同定されたダイサー非依存性経路を通して、セントロメアDNAのサイレンシングを維持するが(M. Halic, D. Moazed, Cell 140, 504(2月19日))、哺乳動物におけるセントロメアサテライトサイレンシング機構は、それほど詳細には明らかにされていない(A. A. Aravin, G. J. Hannon, J. Brennecke, Science 318, 761(2007年11月2日))。マウス細胞株およびヒト細胞株におけるサテライト転写産物の蓄積は、DICER1の欠陥(C. Kanellopoulouら, Genes Dev 19, 489(2005年2月15日);T. Fukagawaら, Nat Cell Biol 6, 784(2004年8月))、およびDNA脱メチル化、熱ショック、またはアポトーシスの誘導(H. Bouzinba-Segard, A. Guais、C. Francastel, Proc Natl Acad Sci USA 103, 8709 (2006年6月6日);R. Valgardsdottirら, Nucleic Acids Res 36, 423 (2008年2月))に起因する。培養細胞におけるサテライトのストレス誘導性転写もまた、LINE−1などのRNAポリメラーゼ活性をコードするレトロエレメントの活性化と結びつけられている(D. Ugarkovic, EMBO Rep 6, 1035(2005年11月);D. M. Caroneら, Chromosoma 118, 113(2009年2月))。これらのインビトロモデルにもかかわらず、原発性腫瘍における反復性ncRNAの全体的な発現は、アノテートされたコード配列へのマイクロアレイプラットフォームの偏り、および標準分析プログラムからの反復配列の特定的排除のために、分析されていない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ヒトおよびマウスの癌におけるサテライトRNA、およびいくつかのサテライト相関遺伝子の大量産生の同定に、少なくとも一部、基づいている。したがって、本方法は、癌の早期検出に有用であり、臨床成績を予想するために用いることができる。
【0022】
サテライト相関遺伝子をバイオマーカーとして用いる、癌の診断
本明細書に記載された方法は、被験対象において、癌、例えば、上皮由来の固形腫瘍、例えば、膵臓癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、卵巣癌、または大腸癌の存在を診断し、ならびにその癌についての処置の効力をモニターするために用いることができる。
【0023】
本明細書に用いられる場合、用語「過剰増殖性の」とは、自律的成長の能力を有する細胞、すなわち、急速に増殖する細胞成長によって特徴づけられる異常な状態または状況を指す。過剰増殖性疾患状態は、病的として、すなわち、疾患状態を特徴づけ、もしくは構成することとして、分類される場合もあるし、または非病的として、すなわち、正常からの逸脱であるが、疾患状態とは関連していないとして、分類される場合もある。その用語は、組織病理学的型または侵襲性の段階に関係なく、全ての型の癌性成長もしくは発癌性過程、転移性組織、または悪性形質転換した細胞、組織、もしくは器官を含むことを意味する。「腫瘍」は、過剰増殖性細胞の異常な成長である。「癌」は、例えば悪性腫瘍成長に特徴づけられる、病的疾患状態を指す。
【0024】
本明細書で実証されているように、例えば、ICD−O(国際疾病分類−腫瘍学(International Classification of Diseases-Oncology)コード(改訂版3)、セクション(8010〜8790)によって定義されるような癌、例えば、上皮由来の固形腫瘍、例えば、初期癌の存在は、膵臓癌細胞におけるサテライトリピートの転写およびプロセシングの増加による大量レベルのサテライトの存在、ならびに循環腫瘍細胞におけるSCG発現のレベルの増加の存在に関連している。したがって、方法は、腫瘍細胞、例えば、上皮由来の固形腫瘍からの細胞、例えば、膵臓癌細胞、肺癌細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、卵巣癌細胞、または大腸癌細胞であることが知られ、または推測される細胞を含む試料において、サテライトリピートの発現レベルの検出を含むことができる。代替として、または加えて、方法は、試料、例えば、腫瘍細胞、例えば、循環腫瘍細胞(CTC)を含むことが知られ、または推測される試料における、例えば、本明細書に記載されているようなマイクロ流体デバイスを用いた、SCGのレベルの増加の検出を含むことができる。
【0025】
上皮由来の癌には、膵臓癌(例えば、膵臓腺癌、または膵管内乳頭粘液性癌腫(IPMN、膵腫瘤))、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、前立腺癌、乳癌、腎臓癌、卵巣癌、または大腸癌を挙げることができる。例えば、本方法は、サーベイランスが標準処置である良性IPMNと、切除術(有意の罹患率および小さいが有意な死亡の可能性と関連づけられる手順)を必要とする悪性IPMNとを区別するために用いることができる。いくつかの実施形態において、IPMNと診断された被験対象において、本明細書に記載された方法は、被験対象のサーベイランス/モニタリングに用いることができ、例えば、方法は、良性IPMNが、外科的介入を正当化する悪性IPMNになっているかどうかを決定するために選択された間隔で(例えば、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、または24ヶ月ごとに)繰り返すことができる。加えて、いくつかの実施形態において、方法は、非小細胞肺癌を有すると推測される被験対象由来の試料において、細気管支肺胞上皮癌を反応過程(例えば、肺炎後反応過程)と区別するために用いることができる。いくつかの実施形態において、乳癌を有すると推測される被験対象由来の試料において、方法は、乳管過形成を異型乳管過形成および非浸潤性乳管癌(DCIS)と区別するために用いることができる。その2つの後者のカテゴリーは、切除術/放射線照射を受ける。前者は、介入を必要としない。いくつかの実施形態において、前立腺癌を有すると推測される被験対象において、方法は、異型小型腺房増殖と悪性癌を区別するために用いることができる。いくつかの実施形態において、膀胱癌を有すると推測される被験対象において、方法は、例えば、尿検体において、例えば、移行上皮癌(TCC)を検出するために用いることができる。いくつかの実施形態において、バレット食道(Sharma、N Engl J Med. 2009、24;361(26):2548〜56。訂正:N Engl J Med. 2010年4月15日;362(15):1450)と診断された被験対象において、方法は、バレット食道における異形成を反応過程と区別するために用いることができる。異形成の診断は治療的介入を要求するため、その臨床的意味は重要である。他の実施形態には、とりわけ、高分化型肝細胞癌、膨大部および胆管の癌腫、神経膠腫対反応性神経膠症、黒色腫対真皮母斑、低悪性度肉腫、および膵内分泌腫瘍の診断が挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
したがって、被験対象において、癌、例えば、上皮由来の腫瘍、例えば、膵臓癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、卵巣癌、または大腸癌を診断するための方法が本明細書に含まれる。いくつかの実施形態において、方法は、試料を被験対象から得るステップ、ならびに試料においてSCGおよび/またはサテライトの存在および/またはレベルを評価するステップ、ならびにその存在および/またはレベルを、1つまたは複数の基準、例えば、SCGもしくはサテライトの正常なレベル、例えば、非罹患の被験対象もしくはその同じ被験対象由来の正常細胞におけるレベルを表す対照基準、および/または癌に関連づけられるSCGもしくはサテライトのレベル、例えば、膵臓癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、卵巣癌、もしくは大腸癌を有する被験対象におけるレベルを表す疾患基準と比較するステップを含む。
【0027】
本方法は、癌の病期、例えば、試料が前癌病変由来、初期腫瘍由来、または進行腫瘍由来の細胞を含むかどうかを決定するために用いることもできる。例えば、本方法は、被験対象が、前癌性膵臓病変、乳房病変、または前立腺病変を有するかどうかを決定するために用いることができる。用いられるマーカーがSCG転写産物またはコードされたタンパク質である場合、レベルの上昇は、病期の進行と相関する。
【0028】
試料
本方法のいくつかの実施形態において、試料は、血液、血清、および/もしくは血漿、またはそれらの一部もしくは細画分、例えば、血清中の遊離RNAまたは血液中のエキソソーム内のRNAであり、またはそれらを含む。いくつかの実施形態において、試料はCTCを含む(または含むと推測される)。いくつかの実施形態において、試料は、尿またはその一部もしくは細画分であり、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、試料は、既知の、または疑いの腫瘍細胞を含み、例えば、生検試料、例えば、穿刺吸引(FNA)細胞診、内視鏡生検、または針生検である。いくつかの実施形態において、試料は、被験対象の膵臓、肺、乳房、前立腺、腎臓、卵巣、または大腸由来の細胞を含む。いくつかの実施形態において、試料は、痰試料から得られる肺細胞、または被験対象の肺からブラッシング、洗浄、気管支鏡生検、経気管支生検、もしくはFNA、例えば、気管支鏡FNA、蛍光透視FNA、もしくはCT誘導型FNA(そのような方法はまた、同様に、他の組織から試料を得るために用いることができる)により得られる肺細胞を含む。いくつかの実施形態において、試料は凍結され、固定され、および/または透過処理され、例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である。
【0029】
検出方法
当技術分野において知られた任意の方法を、本明細書に記載されているようなバイオマーカーのレベルを検出し、および/または定量化するために用いることができる。例えば、SCG mRNA(転写産物)のレベルは、当技術分野において知られた方法、例えば、ノーザンブロット、RNAインサイチュハイブリダイゼーション(RNA−ISH)、RNA発現アッセイ、例えば、マイクロアレイ分析、RT−PCR、(例えば、ランダムプライマーまたはオリゴTプライマーを用いる)RNAシーケンシング、ディープシーケンシング、クローニング、ノーザンブロット、および例えば、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)を用いて、転写産物を増幅することを用いて評価することができる。RNA発現を決定するための分析技術は知られている。例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (2001)を参照。
【0030】
いくつかの実施形態において、SCGがコード転写産物である場合(表6参照)、SCGコード化タンパク質のレベルが検出される。タンパク質の存在および/またはレベルは、当技術分野において知られた方法を用いて、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降法、免疫蛍光法、免疫組織化学法、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、およびウェスタンブロット分析などの定量的イムノアッセイ方法を用いて、評価することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、方法は、バイオマーカー、例えば、SCG転写産物/mRNAまたはタンパク質に選択的に結合する作用物質(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ、抗体またはその抗原結合部分など)を試料と接触させて、試料におけるバイオマーカーのレベルを評価することを含む。いくつかの実施形態において、作用物質は検出可能な標識を有する。作用物質に関しての用語「標識された」は、検出可能な物質を作用物質に結合させること(すなわち、物理的に連結させること)による作用物質の直接的標識、加えて、検出可能な物質との反応性による作用物質の間接的標識を包含する。検出可能な物質の例は、当技術分野において知られており、それには、化学発光標識、蛍光標識、放射性標識、または比色標識が挙げられる。例えば、検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射性材料を挙げることができる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。適切な蛍光材料の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、量子ドット、またはフィコエリトリンが挙げられる。発光材料の例には、ルミノールが挙げられる。生物発光材料の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、適切な放射性材料の例には、
125I、
131I、
35S、または
3Hが挙げられる。一般的に、タンパク質が検出されることになっている場合、抗体を用いることができる。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくは、モノクローナルであり得る。無傷抗体またはその抗原結合断片(例えば、FabまたはF(ab’)
2)を用いることができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、ハイスループット方法、例えば、当技術分野において知られているようなタンパク質チップまたは遺伝子チップ(例えば、12章、「Genomics」、Griffithsら編、Modern genetic Analysis、1999、W. H. Freeman and Company;EkinsおよびChu、Trends in Biotechnology、1999;17:217〜218;MacBeathおよびSchreiber、Science 2000、289(5485):1760〜1763;Simpson、Proteins and Proteomics:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press;2002;Hardiman、Microarrays Methods and Applications: Nuts & Bolts、DNA Press、2003参照)は、サテライトまたはSCGの存在および/またはレベルを検出するために用いることができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、方法は、分岐鎖DNAアッセイを用いる改変型RNAインサイチュハイブリダイゼーション技術を用いて、試料においてバイオマーカーmRNAのレベルを直接的に検出かつ評価することを含む(例えば、Luoら, 米国特許第7,803,541号B2, 2010;Canalesら, Nature Biotechnology 24(9):1115〜1122 (2006);Nguyenら, Single Molecule in situ Detection and Direct Quantiication of miRNA in Cells and FFPE Tissues(ポスターが panomics.com/index.php?id=product
87で入手できる)参照)。このアッセイを実施するためのキットは、Affymetrix(ViewRNA)から市販されている。
【0034】
CTCにおけるSCG転写産物の検出
いくつかの実施形態において、マイクロ流体(例えば、「ラボオンチップ」)デバイスを本方法に用いることができる。そのようなデバイスは、マイクロ流体フローサイトメトリ、連続的なサイズに基づいた分離、およびクロマトグラフィ分離に用いるのに成功している。一般的に、SCG転写産物の発現が循環腫瘍細胞(CTC)において検出される方法は、癌の早期検出、例えば、上皮由来の腫瘍、例えば、膵臓癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、卵巣癌、または大腸癌の早期検出に用いることができる。
【0035】
デバイスは、細胞の混合物からCTCを分離し、またはCTCの濃縮集団を調製するために用いることができる。特に、そのようなデバイスは、全血などの複雑な混合物からのCTCの単離に用いることができる。
【0036】
様々なアプローチを、不均一な試料からCTCを分離するために用いることができる。例えば、デバイスは、ブロックバリアの上流のマイクロ流体チャネル内に六角形パッキングパターンで配置された複数のポストのアレイを含み得る。ポストおよびブロックバリアは、異なる結合部分で機能的にすることができる。例えば、ポストは、循環腫瘍細胞(CTC)を捕獲するための抗EPCAM抗体で機能的にすることができ(例えば、Nagrathら, Nature 450:1235〜1239(2007)参照)、任意で、下流ブロックバリアがSCG核酸もしくはタンパク質、またはサテライトを捕獲するために機能的にされてもよい。例えば、(13〜15)ならびに本明細書に列挙された出願および参考文献を参照。
【0037】
試料から特定の粒子を濃縮するための工程は、一般的に、順次処理ステップに基づいており、そのステップのそれぞれは、混合物において非所望細胞/粒子の数を低減するが、いくつかの実施形態において、1つの処理ステップで十分である場合がある。様々な処理ステップを実行するためのデバイスは、分離することができ、または1つのマイクロ流体システムへ統合することができる。デバイスは、細胞/粒子結合のためのデバイス、細胞溶解のためのデバイス、細胞をアレイするためのデバイス、ならびに、例えば、サイズ、形、および/もしくは変形能、または他の判断基準に基づいての、粒子分離のためのデバイスを含む。特定の実施形態において、処理ステップは、細胞をデバイスまたはシステムへ導入する前に細胞の数を低減するために用いられる。いくつかの実施形態において、デバイスは、最初の試料混合物と比較して所望の細胞の少なくとも75%、例えば80%、90%、95%、98%、または99%を保持し、一方、所望の細胞の集団を、1つまたは複数の非所望細胞型に対して少なくとも100倍、例えば、1000倍、10,000倍、100,000倍、またはさらに1,000,000倍、濃縮する。
【0038】
粒子の分離のためのいくつかのデバイスは、同時的な細胞結合あり、またはなしでの、サイズに基づいた分離に依存する。いくつかの、サイズに基づいた分離デバイスは、CTCおよび流体の他の成分の側方変位を引き起こす障壁の1つまたは複数のアレイを含み、それにより、そのような成分を濃縮し、または別の形で処理する機構を提供する。サイズに従って粒子を分離するための障壁のアレイ(複数可)は、典型的には、ギャップのネットワークを画定し、ギャップを通過する流体は、次のギャップへ不均等に分けられる。篩およびアレイのサイズに基づいた分離デバイスのどちらも、細胞結合デバイスに関して、上記のように、選択的透過性障壁を組み込むことができる。
【0039】
ギャップのネットワークを形成する障壁のアレイを含むデバイスは、例として、例えば、それぞれの連続的な列が、前列の期間の半分未満、差し引かれるように、障壁のねじれ型の2次元アレイを含むことができる。障壁はまた、異なるパターンで配置することもできる。可能な障壁の形およびパターンの例は、WO2004/029221においてより詳細に論じられている。
【0040】
いくつかの実施形態において、デバイスは、例えば、米国特許出願公開第2007/0026413号に記載されているような、アレイに基づいたサイズ分離方法を用いる、CTCの分離および/または濃縮を提供することができる。一般的に、デバイスは、流体試料に懸濁したCTCおよび他の成分などの大きな粒子の側方変位を引き起こす選択的透過性障壁の1つまたは複数のアレイを含み、それにより、そのような成分を濃縮し、または別の形で処理する機構を提供し、一方また、障壁を構成するナノチューブの高密度マトリックス内の空隙を貫通することができる、他のより小さい粒子を選択的に結合する可能性も提供する。フィルター、篩、および濃縮デバイスまたは分離デバイスを含む、サイズ、形、または変形能に基づいた粒子の濃縮のためにそのような選択的透過性障壁を利用するデバイスは、国際特許出願公開第2004/029221号および第2004/113877号、Huangら, Science 304:987〜990(2004)、米国特許公開第2004/0144651号、米国特許第5,837,115号および第6,692,952号、ならびに米国特許出願第60/703,833号、第60/704,067号、および第11/227,904号に記載されている。親和性捕獲に有用なデバイスは、例えば、国際特許出願公開第2004/029221号、および米国特許出願第11/071,679号に記載されたものである。試料における細胞の優先的溶解に有用なデバイスは、例えば、国際特許出願公開第2004/029221号、米国特許第5,641,628号および米国特許出願第60/668,415号に記載されたものである。細胞をアレイするのに有用なデバイスは、例えば、国際特許出願公開第2004/029221号、米国特許第6,692,952号、ならびに米国特許出願第10/778,831号および第11/146,581号に記載されたものである。流体送達に有用なデバイスは、例えば、米国特許出願第11/071,270号および第11/227,469号に記載されたものである。2つ以上のデバイスは、例えば、国際特許出願公開第WO2004/029221号に記載されているように、連続して組み合わせることができる。前述の全ては、参照により本明細書に組み入れられている。
【0041】
いくつかの実施形態において、デバイスは、特定の細胞型、例えば、上皮由来の細胞、例えば、腫瘍細胞へ選択的に結合する結合部分、例えば、モノクローナル抗EpCAM抗体またはその断片を含む障壁を含有することができる。デバイスの障壁の全部がこれらの結合部分を含むことができる。または、障壁の一部のみがそれらを含む。デバイスはまた、マイクロ流体チャネルデバイスと流体連結する追加のモジュール、例えば、細胞計数モジュールまたは検出モジュールを含むことができる。例えば、検出モジュールは、デバイスの出力試料を可視化するように形成することができる。
【0042】
一例において、検出モジュールは、分離デバイスまたは濃縮デバイスと流体連結することができる。検出モジュールは、本明細書に開示された任意の検出方法または当技術分野において知られた他の方法を用いて操作することができる。例えば、検出モジュールには、顕微鏡、細胞計数機、磁石、バイオキャビティレーザー(例えば、Gourleyら, J. Phys. D: Appl. Phys., 36:R228〜R239(2003)参照)、質量分析計、PCRデバイス、RT−PCRデバイス、マイクロアレイ、RNAインサイチュハイブリダイゼーションを実施するためのデバイス、またはハイパースペクトル画像化システム(例えば、Vo-Dinhら, IEEE Eng. Med. Biol. Mag., 23:40〜49(2004)参照)が挙げられる。いくつかの実施形態において、コンピュータ端末は、検出モジュールに接続することができる。例えば、検出モジュールは、関心対象となる細胞、タンパク質、または核酸、例えば、SCG転写産物またはコード化タンパク質へ選択的に結合する標識を検出することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体システムは、(i)CTCの分離または濃縮のためのデバイス;(ii)濃縮されたCTCの溶解のためのデバイス、および(iii)SCG転写産物またはコード化タンパク質の検出のためのデバイスを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているようなマイクロ流体デバイスを用いて調製されるCTC集団は、例えば、上記およびSambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press;第3版(2001年1月15日));およびShort Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編(Current Protocols;第52版(2002年11月5日))に記載されているような知られた分子生物学的技術を用いるSCG転写産物またはタンパク質の発現の分析に用いられる。
【0045】
一般的に、濃縮されたCTC集団におけるSCG転写産物またはコード化タンパク質の発現の検出および/または定量化のためのデバイスは、本明細書に記載されており、癌、例えば、上皮由来の腫瘍の早期検出、例えば、膵臓癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、卵巣癌、または大腸癌の早期検出に用いることができる。
【0046】
疾患過程または処置効力をモニターする方法
いくつかの実施形態において、人が癌を有し、または癌を発症するリスクが増加していることがいったん決定されているならば、処置、例えば、当技術分野において知られているような処置を施すことができる。処置の効力は、本明細書に記載された方法を用いてモニターすることができる。追加の試料は、処置後(または処置中)、例えば、処置の1回または複数回の投与が施された後、評価することができ、SCG転写産物もしくはコード化タンパク質の発現のレベルの減少、または試料中のSCG転写産物もしくはタンパク質発現細胞の数の減少が、その処置が有効であったことを示し、一方、SCG転写産物またはタンパク質発現細胞のレベルに変化がないことまたはその増加は、その処置が有効ではなかったことを示している。方法は、処置の経過中および/または処置が終了した後、例えば、疾患の可能性のある再発をモニターするために、複数回、繰り返すことができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、例えば、癌を引き起こし得る良性状態と診断されている被験対象、癌について処置が成功している被験対象、または例えば、遺伝的素因もしくは発癌物質への環境的曝露により、癌のリスクが増加している被験対象について、方法は、被験対象における悪性腫瘍への進行または癌の発症の早期検出として、被験対象においてその疾患をモニターするために、選択された間隔で、例えば、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、または24ヶ月の間隔で、繰り返すことができる。
【実施例】
【0048】
本発明はさらに、以下の実施例において記載されており、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない。
【実施例1】
【0049】
メジャーサテライトレベルは、細胞株および正常組織と比較して、腫瘍組織において大量に上昇している
Helicos Biosciences社製の次世代デジタル遺伝子発現(DGE)アプリケーション(D. Lipsonら, Nat Biotechnol 27, 652(2009年7月))を利用して、原発性癌およびそれら由来の転移性前駆体において腫瘍マーカーの発現を比較した。まず、本発明者らは、活性化型Krasの組織標的化発現およびTp53の喪失(Kras
G12D、Tp53
lox/+)を通して発生した原発性マウス膵管腺癌(PDAC)のDGEプロファイルを決定した(N. Bardeesyら, Proc Natl Acad Sci USA 103, 5947(2006年4月11日))。これらの腫瘍は、事実上、普遍的な突然変異体KRAS(症例の>90%)およびTP53の喪失(50〜60%)を示すヒトPDACの組織病理学的および遺伝学的模倣体である。
【0050】
Bardeesy研究室において以前に記載されているように(Bardeesyら, Proc Natl Acad Sci USA 103, 5947(2006))、異なる遺伝子型の膵臓癌を有するマウスを飼育した。正常な野生型マウスをJackson研究所から購入した。動物プロトコールガイドラインの通り、動物を安楽死させた。膵臓腫瘍および正常組織を無菌的に抽出し、その後、液体窒素で急速凍結した。組織を−80℃で保存した。以前に記載されているように(Aguirreら, Genes Dev 17, 3112(2003))、動物AH367およびAH368について細胞株を新鮮に作製し、樹立細胞株を、RPMI−1640+10%FBS+1%Pen/Strep(Gibco/Invitrogen)中で培養した。大腸および肺由来の追加のマウス腫瘍は、Kevin Haigis(Massachusetts General Hospital)およびKwok−Kin Wong(Dana Farber Cancer Institute)により寛大にも提供された。
【0051】
新鮮な凍結組織を、ドライアイス上のミクロチューブ中、滅菌乳棒で微粉砕した。細胞株を培養し、核酸抽出前に液体窒素中で新鮮凍結した。細胞株および新鮮凍結腫瘍および正常組織由来のRNAおよびDNAを全て、同じ様式で処理した。RNAを、TRIzol(登録商標)試薬(Invitrogen)を用いて製造会社の仕様書通り、抽出した。組織および細胞株由来のDNAを、QIAamp Mini Kit(QIAGEN)を用いて製造会社のプロトコール通り、抽出した。
【0052】
精製されたRNAを、デジタル遺伝子発現(DGE)試料プレッピングおよびHelicos Biosciences社製のHeliScope(商標)1分子シークエンサーでの分析に供した。この方法は、以前に記載されている(Lipsonら, Nat Biotechnol 27, 652 (2009))。簡単に述べると、一本鎖cDNAを、RNAからdTU25VプライマーおよびSuperscript III cDNA合成キット(Invitrogen)を用いて逆転写した。RNAを消化し、一本鎖cDNAを、Agencourt(登録商標)AMPure(登録商標)磁気ビーズでの固相可逆的固定化(SPRI)技術を用いて精製した。一本鎖cDNAを変性し、その後、ポリAテールを、ターミナルトランスフェラーゼ(New England Biolabs)を用いて3’末端に付加した。
【0053】
精製されたDNAを、以前に記載されている(Pushkarev, N. F. Neff, S. R. Quake,Nat Biotech 27, 847(2009))Helicos社製のDNAシーケンシング試料プレッピングプロトコールに供した。簡単に述べると、ゲノムDNAを、Covaris S2音響ソニケータで剪断し、平均200bpsで100〜500bpsの範囲である断片を生じた。その後、剪断されたDNAをSPRIでクリーニングした。その後、DNAを変性し、ポリAテールを、ターミナルトランスフェラーゼを用いて3’末端に付加した。
【0054】
その後、テール付加のcDNAまたはDNAを、シーケンシングフローセルにハイブリダイズさせ、続いて「充填およびロック(Fill and Lock)」および1分子シーケンシングを行った。その後、遺伝子発現配列リードを、DGEプログラムを用いて既知のヒトまたはマウストランスクリプトームライブラリーにアラインメントした。ゲノムDNA配列リードを、マウスゲノムにアラインメントし、計数して、メジャーマウスサテライトのコピー数(CNV)を決定した。
【0055】
分析された、最初のマウス膵臓腫瘍、AH284は、DGE配列が、同じマウス由来の正常肝臓転写産物についての3〜4%の差と比較して、アノテートされたマウストランスクリプトームと48〜52%の矛盾を示した点で注目に値した。ほとんど全部の相違した配列は、中心周囲(メジャー)マウスサテライトリピートに位置した。サテライト転写産物は、正常膵臓または肝臓における0.02〜0.4%(196〜4,115tpm)と比較して、腫瘍において全ての細胞転写産物の約49%(495,421tpm)を占める(表1)。
【0056】
【表1】
【0057】
サテライト配列リードは、センス方向とアンチセンス方向の両方で見出され、ポリA精製されたRNAには存在していない。したがって、腫瘍AH284は、大量の非ポリアデニル化dsRNAエレメントを含有し、同じ動物由来の正常組織に存在するものに対して>100倍の増加として定量的に決定された。比較として、腫瘍組織におけるサテライト転写産物のレベルは、豊富なmRNA Gapdhより約8,000倍高かった。同じマウス由来の第2の無関係の膵臓腫瘍結節は、サテライト転写産物の、より低い、しかしそれでもなお大きく上昇した、レベルを示した(総細胞転写産物の4.5%)。
【0058】
(Kras
G12D、Tp53
lox/+)マウス由来の4個の追加の膵臓腫瘍および別の膵臓腫瘍原性遺伝子型(Kras
G12D、SMAD4
lox/lox)を有する4匹のマウスの分析により、6/8個の追加の腫瘍においてサテライト発現の増加が明らかになった(総細胞転写産物の1〜15%の範囲)。2/3個のマウス大腸癌腫瘍(Kras
G12D、APC
lox/+)および2/2個の肺癌(Kras
G12D、Tp53
lox/lox)において、サテライト発現レベルは、総細胞転写産物の2〜16%の範囲であった。全体で、12/15個(80%)の独立したマウス腫瘍が、正常マウス組織と比較してサテライト発現のレベルが非常に増加していた(
図1A、表2)。
【0059】
【表2】
【0060】
注目すべきことには、コード転写産物、リボソーム転写産物、および他の非コード転写産物の間での総RNAリードの複合分布は、原発性腫瘍と正常組織の間で有意な差異を示し(
図1A)、全体的な細胞転写機構が、原発性腫瘍におけるサテライト転写産物の大量発現によって影響を及ぼされることを示唆している。3つの原発性膵臓腫瘍から樹立された不死化細胞株は、サテライトリピートの最小発現を示し、インビトロ増殖中のネガティブ選択かまたはインビトロ培養条件下での安定的なサテライトサイレンシング機構の再確立かのいずれかを示唆している(
図1A)。サテライトを過剰発現する原発性腫瘍において注目すべきことには、コード転写産物、リボソーム転写産物、および他の非コード転写産物の間での総RNAリードの複合分布は、正常組織のそれと有意な差異を示し(
図1B)、細胞転写機構が、これらの腫瘍におけるサテライト転写産物の大量発現によって影響を及ぼされることを示唆している。
【実施例2】
【0061】
メジャーサテライト転写産物は、組織型に依存して様々なサイズを有し、発現レベルは、ゲノムメチル化および増幅に結びつけられる
マウス原発性膵臓腫瘍のノーザンブロット分析を、以下の通り、実行した。ノーザンブロットを、NorthernMax−Gly Kit(Ambion)を用いて実施した。全RNA(10μg)を、等量のGlyoxal Load Dye(Ambion)と混合し、50℃で30分間、インキュベートした。1%アガロースゲル中での電気泳動後、RNAをBrightStar−Plus膜(Ambion)上へうつし、紫外線で架橋結合させた。膜を、ULTRAhyb緩衝液(Ambion)中、68℃で30分間、プレハイブリダイズさせた。マウスRNAプローブ(1100bp)を、MAXIscript Kit(Ambion)を用いて調製し、BrightStar Psoralen−Biotin Kit(Ambion)を用いて、製造会社の使用説明書に従い、非アイソトープ的に標識した。0.1nMプローブを用いて、膜を、ULTRAhyb緩衝液(Ambion)中、68℃で2時間、ハイブリダイズさせた。膜を、低ストリンジェンシー洗浄で、室温で10分間、洗浄し、続いて、68℃で15分間の2回の高ストリンジェンシーの洗浄を行った。非アイソトープ化学発光検出について、BrightStar BioDetect Kitを、製造会社の使用説明書に従って用いた。
【0062】
結果は、メジャーサテライト由来転写産物が100bpから2.5kbまでの範囲であることを示し(
図2A)、ダイサー1による複数のタンデムリピートで構成される大きな一次転写産物の予想される切断と一致し(C. Kanellopoulouら, Genes Dev 19, 489(2005年2月15日);T. Fukagawaら, Nat Cell Biol 6, 784(2004年8月);H. Bouzinba-Segard, A. Guais, C. Francastel, Proc Natl Acad Sci USA 103, 8709(2006年6月6日))、その発現は、中央値より上のサテライト発現を有するマウス膵臓腫瘍において、2.6倍高い(p=0.0006、t検定)。高サテライト発現を有する原発性腫瘍由来の樹立した膵臓癌細胞株は、サテライト発現がほとんどなく、本発明者らのシーケンシング結果が確認される(T3およびCL3;
図2A)。CL3の5−アザシチジンでの処理は、サテライト転写産物の大量の再発現をもたらし、インビトロでの安定的なサテライトサイレンシングの機構としてのDNAメチル化を裏付けている(
図2B)。肺を例外として、ほとんどの正常な成体マウス組織は、サテライトリピートの最小発現を示す(
図2B)。しかしながら、切断されていない5kbサテライト転写産物の発現が、胚性組織において明らかである(
図2C)。したがって、原発性膵臓腫瘍におけるサテライトリピートの異常な発現は、胚性細胞の運命を単に繰り返すだけでなく、一次5kbサテライト転写産物のプロセシングの変化も反映している。1分子シーケンシングプラットフォームは、小さい反復性ncRNA断片の定量化について並外れて感度が高く、それらの断片のそれぞれが、固有のリードとしてスコアリングされる。マウスメジャーサテライトの高レベル発現は、RNAインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)によって示されているように、原発性腫瘍内の全ての細胞において明らかであった(
図2D)。顕著なことには、発現は、初期の新生物発生前病変、膵臓上皮内新生物(PanIN)においてすでに上昇しており、完全な膵臓腺癌への移行でさらに増加した(
図2E)。明確に画定された、肝臓への転移性病変が、RNA ISHによって強く陽性であり、さもなければ組織病理学的分析によっては検出されていなかっただろう肝臓実質内の個々のPDAC細胞も同様であった(
図2F)。全載胚分析によって示されているように、低レベルの散在性発現が、肝臓および肺において明らかであったが、腫瘍細胞において明らかなレベルに匹敵するサテライト発現を正常成体または胚性組織は示さなかった。
【0063】
サテライトリピートのゲノム増幅もまた、マウス膵臓腫瘍におけるこれらの転写産物の桁外れの大量の存在に寄与しているかどうかを決定するために、指標のAH284腫瘍を、ゲノムDNAシーケンシングについて上記のような次世代DNAデジタルコピー数変動(CNV)分析を用いて分析した。
【0064】
表3に示された結果より、サテライトDNAは、マッチングされた正常肝臓におけるゲノム配列の2.3%と比較して、この腫瘍における総ゲノムアラインメント化リードの18.8%を構成することが示された。メジャーサテライトリピートは、正常マウスゲノムの約3%と以前に推定されている(J. H. Martensら, EMBO J 24, 800(2005年2月23日))。したがって、サテライトリピートの発現の>100倍の増加を有するこの腫瘍において、リピートの約8倍の遺伝子増幅が、それらの異常な発現に寄与している可能性がある。
【0065】
【表3】
【実施例3】
【0066】
ヒト膵臓癌および他の上皮癌におけるサテライト転写産物の過剰発現
ヒト腫瘍もまたサテライトncRNAを過剰発現するかどうかを試験するために、本発明者らは、DGE分析をヒト膵臓癌の検体へ広げた。ヒト膵臓腫瘍組織を、Massachusetts General HospitalからIRBプロトコールに従って、余分な廃棄されるヒト材料として入手した。腫瘍全体を切除し、核酸抽出前に、液体窒素中で新鮮凍結した。正常膵臓RNAを、2つの商業的ベンダーのClontechおよびAmbionから入手した。上の実施例1に記載されているように、試料を調製し、分析した。
【0067】
15個のPDACの分析により、正常膵臓と比較して、総サテライト転写産物の発現の中央値21倍の増加が示された。非小細胞肺癌、腎細胞癌腫、卵巣癌、および前立腺癌のコホートもまた、有意なレベルのサテライトおよびHSTAIIサテライトを有した。胎児脳、脳、大腸、胎児肝臓、肝臓、肺、腎臓、胎盤、前立腺、および子宮を含む他の正常なヒト組織は、若干のより高いレベルの総サテライト発現を有する(表4、
図3A)。
【0068】
【表4】
【0069】
複数のクラスの間でのヒトサテライトの細分化により、腫瘍と全正常組織の間の主要な違いが明らかになった。マウスサテライトリピートはメジャーサテライトおよびマイナーサテライトへ大ざっぱに細分されるが、ヒトサテライトは、より徹底的に分類されている。全てのヒトサテライトのうち、最大の発現倍数の差異は、動原体周囲のサテライトHSATII(平均2,416tpm、サテライトリードの10.3%)について明らかであり、それは正常ヒト膵臓においては検出不可能である(
図3B)。対照的に、正常組織は、GSATII、βサテライト(BSR)、およびTAR1クラスの提示がずっと高いが(それぞれ、総サテライトリードの21.1%、17.3%、および2.1%)、これらは、膵臓癌においてサテライトリードのごく少数を構成する。
【0070】
正常に発現するヒトサテライトの最も豊富なクラスである、α(ALR)(Okadaら, Cell 131, 1287(2007年12月28日))は、正常なヒト膵臓において294tpmで発現しているが、ヒト膵臓腺癌において平均して12,535tpmを含む(43倍の発現差異、サテライトリードの60.3%)。したがって、ヒトALRリピートの過剰発現は、マウスメジャーサテライトリピートの過剰発現に匹敵するが、ヒトPDACについて例外的な特異性を示すのは、豊富ではないHSATIIである(GAPDHの49倍)。ヒト膵臓腫瘍におけるLINE−1のサテライト転写産物との共発現もまた顕著であり、平均16,089tpm(範囲358〜38,419)を有する。
【0071】
ALRリピート以外に、正常膵臓とPDACのサテライト発現プロファイルは著しく異なる。例えば、正常膵臓組織は、GSATII、TAR1、およびSST1クラスの提示がはるかに高いが(総サテライトリードの26.4%、10.6%、および8.6%)、これらは、膵臓癌においてサテライトリードのごく少数であった。対照的に、癌は、正常膵臓において発現が検出不可能であるサブタイプであるHSATIIサテライトを、高レベルで発現する(10
6個の転写産物あたり4,000個、サテライトリードの15%)(
図3B)。マウス対ヒトの膵臓癌におけるサテライト転写の定量的比較は、マウスメジャーサテライトが、豊富なGapdh mRNAの中央値466倍、発現しているが、ヒトALRおよびHSATIIサテライトは、それぞれ、GAPDHの180倍および47倍で発現していることを示す。
【実施例4】
【0072】
サテライトレベルの増加と線形相関を持つ細胞転写産物は、ヒストンデメチラーゼおよびRNAプロセシング酵素に結びつけられる、幹細胞エレメントおよび神経エレメントについて濃縮されている
異なる組織像および遺伝的バックグラウンドの25個の異なるマウス組織についての包括的なDGEプロファイルの作成は、細胞転写産物の発現をサテライトの発現と、幅広い定量的範囲にわたって相関させることを可能にした。そのような同時制御される遺伝子を同定するために、DGEによって定量化された全てのアノテートされた転写産物を、線形回帰分析に供し、サテライト発現に対する最高の相関係数を有する転写産物を順序づけた。
【0073】
全てのマウス試料リードを、マウスメジャーサテライトについてのカスタムメイドライブラリー(UCSCゲノムブラウザからの配列)にアラインメントした。ヒト試料を、Repbaseライブラリー(Pushkarevら, Nat Biotech 27, 847(2009))から作成された全てのサテライトリピートおよびLINE−1変種についてのカスタムメイド参照ライブラリーにアラインメントした。加えて、全ての試料を、トランスクリプトーム分析のためにDGEプログラムに供した。全ての試料について、10
6個のゲノムアラインメント化リードごとにリードを標準化した。
【0074】
マウスメジャーサテライトのトランスクリプトームへの線形相関について、全ての組織および細胞株を、メジャーサテライトのレベルに従って順序づけた。その後、全てのアノテートされた遺伝子を、全ての組織にわたって、線形回帰分析に供した。その後、遺伝子を、線形回帰のピアソン係数に従って順序づけ、Matlabによりプロットした。
【0075】
最高線形相関(R>0.85)を有する297個の遺伝子の1セットの分析により、190個のアノテートされた細胞mRNAおよび転位因子のサブセットが明らかになった(
図4A)。
【0076】
細胞mRNAのサブセットは、多様なマウス腫瘍にわたって、サテライトリピート発現のレベルとの非常に高い程度の相関を示した(本明細書では「サテライト相関遺伝子(SCG)」と呼ばれている)。R>0.85を有する線形相関した遺伝子を、DAVIDプログラムを用いてマッピングした(Dennis, Jr.ら, Genome Biol 4, P3(2003); Huangら, Nat Protoc 4, 44(2009))。その後、これらの遺伝子を、機能予測クラスタリングプログラムおよびUPTISSUEデータベースを用いて分析し、これらのマッピングされた遺伝子のそれぞれを分類した。生殖細胞/幹細胞遺伝子は、精巣、卵、栄養芽細胞、および神経幹細胞において高度に発現した遺伝子を含んだ。神経遺伝子は、脳、脊髄、ならびに嗅覚、聴覚、および視覚を含む特定化された感覚ニューロンにおいて高度に発現した遺伝子を含んだ。HOXおよびジンクフィンガータンパク質は、INTERPROデータベースを用いて分類された。
【0077】
DAVID遺伝子オントロジープログラムを用いる190個のアノテートされた転写産物の分析により、これらの転写産物のうちの120個(63%)が神経細胞運命に関連があるとして同定され、50個(26%)が生殖細胞/幹細胞経路に結びつけられた(表5)。
【0078】
【表5】
【0079】
加えて、HOX関連(9個、5%)およびジンクフィンガータンパク質(16個、8%)を含む転写制御因子について有意な濃縮が明らかであった。この遺伝子セットは、GSEAデータベース(Subramanianら, Proc Natl Acad Sci USA 102, 15545(2005年10月25日))におけるいかなる既知の遺伝子サインとも一致させることができなかったが、オントロジー分析は、神経内分泌表現型を指摘する。神経内分泌分化は、膵臓癌を含む様々な上皮悪性腫瘍において記載されており((Tezelら, Cancer 89, 2230(2000年12月1日))、前立腺癌において最もよく特徴づけられており、前立腺癌において、それは、より高悪性度の疾患と相関している(Cindoloら, Urol Int 79, 287(2007))。マウスPDACにおけるより高いサテライト発現の関数としての特徴的な神経内分泌マーカーのクロモグラニンAについての癌腫細胞染色の数の顕著な増加(
図4D)が観察され、ncRNAの包括的に変化した発現と特定の細胞分化プログラムの間の関連を裏付けた。
【0080】
ALR(最も豊富なヒトサテライト)を用いるヒト膵臓癌および正常組織における平行分析は、合計539個のSCGを生じ、これらのうち、206個が、DAVID遺伝子オントロジープログラムによってマッピングすることができ、生殖細胞/幹細胞運命と神経細胞運命の類似した濃縮があった(表6)。まとめると、これらの観察は、マウス遺伝的モデルにおいてのように、サテライト由来リピートの腫瘍関連抑制解除は、細胞mRNAのサブセットの発現の増加と高度に相関していることを示唆している。
【0081】
【表6】
【0082】
バイオマーカーとしての有用性があるSCGのリストについては、癌と正常組織の間で最小20倍の差異があり、かつ100万個あたり500個のリードの最小発現があるヒトSCGを採用することにより、さらに精巧にした。結果は表7に示されている。
【0083】
【表7】
【実施例5】
【0084】
オリゴヌクレオチド分岐DNAハイブリダイゼーションアッセイを用いた確証
上で記載された(および表7に列挙された)ように、Helicos RNAシーケンシング判定基準から同定された候補SCGを、Affymetrix QUANTIGENEプローブを用いてさらに評価した。4つの原発性膵管腺癌(PDAC)由来の全RNAを、QUANTIGENE Plex RNAアッセイを用いて分析した。結果は下記(表8)に示されている。
【0085】
【表8】
【0086】
このデータに基づいて、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)原発性腫瘍検体においてHSP90BBおよびAK096196について試験するために、Affymetrix VIEWRNAプローブを開発した。FFPE材料に関してMGHにおいて、RNAインサイチュハイブリダイゼーション(RNA−ISH)アッセイを用いて、これらのプローブを試験した。大腸癌細胞株HCT−116を用いてNu/Nuマウスに作製されたヒト癌皮下異種移植片上に、陽性染色が見られた。HSP90BBを、MGHからの原発性ヒトPDAC検体においてさらに試験した。その結果は
図5に示されており、上皮腺管癌腫細胞の大量かつ特異的な染色を示した。
【0087】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と共に記載されているが、前述の説明は、例証することを意図され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲によって定義される。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。