(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247219
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】直接音場音響試験の駆動信号分配
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
G01M7/02 B
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-539080(P2014-539080)
(86)(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公表番号】特表2015-501431(P2015-501431A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2012062255
(87)【国際公開番号】WO2013063491
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】61/552,081
(32)【優先日】2011年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514107439
【氏名又は名称】ラーキン,ポール
(73)【特許権者】
【識別番号】514107440
【氏名又は名称】イサックス,アーサー
(73)【特許権者】
【識別番号】514107451
【氏名又は名称】サリヴァン,マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ラーキン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】イサックス,アーサー
(72)【発明者】
【氏名】サリヴァン,マイケル
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2001/0032510(US,A1)
【文献】
特表2003−527565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00−7/08
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御マイクロホンと、
前記制御マイクロホンに動作可能に結合したコントローラーであって、該コントローラーは、前記制御マイクロホンから少なくとも1個の入力信号を受け取り、少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号を供給するようになっている、コントローラーと、
前記少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号を組み合わせて、少なくとも4個の第2の出力信号を形成し、前記少なくとも4個の第2の出力信号のうちの少なくとも一つは前記少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号のうちの少なくとも2つの組み合わせからなるように構成される、結合器と、
少なくとも4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群であって、それぞれが、前記少なくとも4個の第2の出力信号のうちの少なくとも1個に動作可能に結合され、前記少なくとも4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサー群のうちの少なくとも一つの出力が、前記少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号のうちの少なくとも2個の変化に応答して変動するようになっている、少なくとも4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサー群と、
を備える、直接音場音響試験システム。
【請求項2】
前記少なくとも4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサー群は、被試験ユニットの、平面図で見たすべての辺に直接音場音響励振を与えるようおおむね配置されていて、前記少なくとも4個の第2の出力信号のそれぞれに動作可能に結合した前記音響トランスデューサー又はトランスデューサー群が前記被試験デバイスのまわりに実質的に一様に分配されるようになっている、請求項1に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項3】
前記結合器は、マトリクススイッチ、ミクサー、又はデジタル信号プロセッサユニットである、請求項1に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項4】
前記制御マイクロホンは少なくとも4個の制御マイクロホンを含む、請求項1に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項5】
前記結合器は、前記少なくとも4個の別個に制御可能な出力信号の減衰、増幅、フィルタリング、遅延、加算、減算、相関、又は何らかの他の操作によって、前記少なくとも4個の別個に制御可能な出力信号を組み合わせる、請求項1に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項6】
前記少なくとも4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群の入力要件に従って前記少なくとも第2の出力信号を調整するように構成される調整器を更に備え、前記少なくとも4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群が調整後の前記少なくとも4個の第2の出力信号のうちの少なくとも1個に結合されるようになっている、請求項1に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項7】
前記調整器は前記少なくとも4個の第2の出力信号の更なるフィルタリング、利得、減衰、又は電力増幅を行う、請求項1に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項8】
制御マイクロホンと、
前記制御マイクロホンに動作可能に結合したコントローラーであって、該コントローラーは、前記制御マイクロホンから少なくとも1個の入力信号を受け取り、少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号を供給するようになっている、コントローラーと、
前記少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号を組み合わせて、それぞれが前記少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号のうちの少なくとも2つの組み合わせで構成される少なくとも4個の第2の出力信号を形成するように構成される、結合器と、
それぞれが、前記少なくとも4個の第2の出力信号のうちの少なくとも1個に動作可能に結合される、少なくとも4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群と、
を備え、
前記4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群のうちの少なくとも1個は第1の周波数帯域をカバーし、前記4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群のうちの少なくとも1個は前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域をカバーし、
前記結合器は、前記少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号を組み合わせて、前記少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号のそれぞれが、前記第1の周波数帯域をカバーする前記音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群のうちの少なくとも1個と前記第2の周波数帯域をカバーする前記音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群のうちの少なくとも1個とに動作可能に接続されるようにする、
直接音場音響試験システム。
【請求項9】
前記少なくとも4個の音響トランスデューサー又はトランスデューサー群は、被試験ユニットの、平面図で見たすべての辺に直接音場音響励振を与えるようおおむね配置されていて、前記少なくとも4個の第2の出力信号のそれぞれに動作可能に結合した前記音響トランスデューサー又はトランスデューサー群が前記被試験ユニットのまわりに実質的に一様に分配されるようになっている、請求項8に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項10】
12個の制御マイクロホンと、
前記制御マイクロホンに動作可能に結合したコントローラーであって、該コントローラーは、前記制御マイクロホンのそれぞれから1個ずつ、12個の入力信号を受け取り、12個の別個に制御可能なコントローラー出力信号を供給するようになっている、コントローラーと、
前記12個の別個に制御可能な出力信号を組み合わせて、それぞれが前記12個の別個に制御可能なコントローラー出力信号のうちの少なくとも2つの組み合わせで構成される12個の第2の出力信号を形成するように構成される、結合器と、
12個の音響トランスデューサー又はトランスデューサーの群であって、それぞれが、前記12個の第2の出力信号のうちの少なくとも1個に動作可能に結合されて各トランスデューサー又はトランスデューサー群の出力が、前記12個の別個に制御可能なコントローラー出力信号のうちの少なくとも2個の変化に応答して変動するようになっている、12個の音響トランスデューサー又はトランスデューサー群と、
を備える、直接音場音響試験システム。
【請求項11】
前記12個のトランスデューサー又はトランスデューサー群は被試験ユニットのまわりに配置され、前記12個のトランスデューサー又はトランスデューサー群のうちの9個は、100Hzよりも上の周波数帯域をおおむねカバーする3ウェイ動電型スピーカーシステムであり、前記12個のトランスデューサー又はトランスデューサー群のうちの3個は、20Hzから200Hzまでの周波数帯域をおおむねカバーする動電型サブウーファースピーカーである、請求項10に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項12】
前記12個の別個に制御可能なコントローラー出力信号のそれぞれは、100Hzよりも上の周波数帯域をカバーする前記9個のトランスデューサー又はトランスデューサー群のうちの少なくとも1個と、20Hzから200Hzまでの周波数帯域をカバーする前記3個のトランスデューサー又はトランスデューサー群のうちの少なくとも1個とに動作可能に結合される、請求項11に記載の直接音場音響試験システム。
【請求項13】
前記12個の音響トランスデューサー又はトランスデューサー群のうちの少なくとも1個は第1の周波数帯域をカバーし、前記12個の音響トランスデューサー又はトランスデューサー群のうちの少なくとも2個は、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域をカバーし、前記12個の別個に制御可能なコントローラー出力信号のそれぞれは、前記第1の周波数帯域をカバーする前記音響トランスデューサー又はトランスデューサーのうちの少なくとも1個と前記第2の周波数帯域をカバーする前記音響トランスデューサー又はトランスデューサーのうちの少なくとも1個とに動作可能に結合される、請求項10に記載の直接音場音響試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、その動作中の信頼性を強力な振動試験を用いて評価することができる、衛星、計測装置、又は何らかの他の対象等の対象の振動試験の分野に関する。詳細には、本発明は、振動試験を行うための直接音場音響システムの使用、及び所定の仕様に準拠する音場を直接音場音響システムが生成することができるようにする制御手段に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、引用することによってその全体が本明細書の一部をなす、2011年10月27日出願の米国仮特許出願第61/552,081号の米国特許法第119条(e)のもとでの利益を主張する、正規の出願である。
図2に示す直接音場音響試験システムは、LARKIN P A ET AL: “Recent Developments in Direct Field Acoustic Testing”, 26TH SPACE SIMULATION CONFERENCE 2010: ANNAPOLIS, MARYLAND, USA, 18-21 October 2010, CURRAN, US, 18 October 2010(2010-10-18), pages 465-492に記載されている。斯かる直接音場音響試験システムは本発明に関連する技術を開示する。
【背景技術】
【0003】
2011年5月27日出願の「Direct Field Acoustic Testing System and Method」という発明の名称の同時係属米国特許出願第13/117,870号(以後「’870出願」)の明細書が、引用することにより本明細書の一部をなす。’870出願において論じられているように、直接音場音響試験(DFAT)の分野においては、一般的に、被試験ユニット(UUT)のまわりの空間全体にわたって均一なスペクトル成分を有する音場を得ることが望ましい。’870出願において説明されているように、個別に制御可能な音響トランスデューサーの多数の群を組み込んだ多入力多出力(MIMO)装置を用いることによって、制御マイクロホン位置において優れたスペクトル均一性が得られた。しかし、更なる非制御すなわち監視マイクロホンで音場を監視すると、制御位置においてはスペクトル変動が十分に制御されるが、非制御位置においてより大きい変動及び仕様からの逸脱が存在することが明らかになった。また、おおむね150Hzよりも高い周波数について、非制御位置におけるより高い音響強度への一般的なシフトも観察されたが、これはUUTを過度に試験するリスクを招く。したがって、このような変動を減らし制御位置における音響スペクトルの大きさの応答と非制御位置における音響スペクトルの大きさの応答との間のより緊密な対応関係を維持する、強化したDFATシステムを提供することは有利である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、より高度な空間的均一性を有する音場を提供するように、少なくとも4個の群の音響トランスデューサーと、少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号と、コントローラー出力信号の組み合わせを変更しそれぞれの群の音響トランスデューサーへと向ける信号変更器及び結合器とを有する直接音場音響試験システムを含む。
【0005】
本発明の実施形態はまた、より高度な空間的均一性を有する音場を提供するように、適切な位置に配置されて別個に制御可能なコントローラー出力信号を決定するのに用いる少なくとも1個の音響入力信号を提供する少なくとも1個のマイクロホンと、少なくとも4個の群の音響トランスデューサーと、コントローラー出力信号の組み合わせを変更しそれぞれの群の音響トランスデューサーへと向ける信号変更器及び結合器とを有する直接音場音響試験システムも含む。
【0006】
本発明の実施形態はまた、より高度な空間的均一性を有する音場を提供するように、直接音場音響試験システムと、少なくとも1個の制御マイクロホンと、少なくとも1個の入力と少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力とを有する多入力多出力(MIMO)振動制御システムと、少なくとも4個の別個に駆動される群の音響トランスデューサーと、別個に制御可能なコントローラー出力信号の組み合わせを変更し少なくとも4個の別個の群のトランスデューサーのそれぞれへと向ける信号変更器及び結合器とを含む。
【0007】
本発明の実施形態はまた、より高度な空間的均一性を有する音場を提供するように、適切な位置に配置されて別個に制御可能なコントローラー出力信号を決定するのに用いる少なくとも1個の音響入力信号を提供する少なくとも1個のマイクロホンと、ほぼ環状配列に配置された少なくとも4個の群の音響トランスデューサーと、コントローラー出力信号の組み合わせを変更し少なくとも4個の群の音響トランスデューサーのそれぞれへと向ける信号変更器及び結合器とを有する直接音場音響試験システムを含み、別個に制御可能なコントローラー出力信号のうちの少なくとも2つは、それぞれ、試験環境内で前記少なくとも2個の別個に制御可能なコントローラー出力信号がほぼ一様に分配されるようにする方法で、少なくとも2個の群の音響トランスデューサーに向けられる。
【0008】
本発明の実施形態はまた、直接音場音響試験システムと、少なくとも1個の制御マイクロホンと、少なくとも1個の入力と少なくとも4個の別個に制御可能なコントローラー出力信号とを有する多入力多出力(MIMO)振動制御システムと、少なくとも4個の別個に駆動される群の音響トランスデューサーと、別個に制御可能なコントローラー出力信号の組み合わせを、別個に制御可能なコントローラー出力信号のうちの少なくとも2個の変化に応答して少なくとも1個の別個の群のトランスデューサーの出力が変動するように変更し少なくとも4個の別個の群のトランスデューサーのそれぞれへと向ける信号変更器及び結合器とを含む。
【0009】
ここで、添付の概略図を参照して、本発明の実施形態を単に例としてのみ説明する。概略図において、対応する参照符号は対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】’870出願による直接音場音響試験用の音響トランスデューサー群の概略レイアウトである。
【
図2】’870出願による直接音場音響試験システムの簡略ブロック図である。
【
図3】
図2のシステムの振動音響コントローラーの簡略制御図である。
【
図4】12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有するMIMO制御を用いる
図1、
図2、及び
図3のシステムについての、制御マイクロホンの音圧の測定スペクトル変動対すべての制御マイクロホンの平均値を示すグラフである。
【
図5】12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有するMIMO制御を用いる
図1、
図2、図及び3のシステムについての、監視マイクロホンの音圧の測定スペクトル変動対すべての制御マイクロホンの平均値を示すグラフである。
【
図6】12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有するMIMO制御を用いる
図1、
図2、及び
図3のシステムについての、トランスデューサー群への別個に制御可能な制御出力信号の割当てを示す表である。
【
図7】本発明の一実施形態による直接音場音響試験システムの簡略ブロック図である。
【
図8】12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有するMIMO制御を用いる本発明の一実施形態による、トランスデューサー群への別個に制御可能な制御出力信号の割当てを示す表である。
【
図9】12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有するMIMO制御を用いる本発明の一実施形態による直接音場音響試験についての、音響トランスデューサー群とコントローラー出力の割当てとの概略レイアウトである。
【
図10】12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有するMIMO制御を用いる本発明の一実施形態についての、制御マイクロホンの音圧の測定スペクトル変動対すべての制御マイクロホンの平均値を示すグラフである。
【
図11】12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有するMIMO制御を用いる本発明の一実施形態についての、監視マイクロホンの音圧の測定スペクトル変動対すべての制御マイクロホンの平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図面において、同じ参照文字/番号は同一の要素又は機能的に同様の要素を示す。具体的な構成及び配置を論じるが、これは説明の目的のためのみに行われることが認識されるべきである。関連技術の当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の構成及び配置を用いることができることを認識するであろう。
【0012】
図1を参照して、2011年5月27日出願の同時係属米国特許出願番号第13/117,870号(「’870出願)によるDFATシステムの一実施形態を示す。図示のように被試験ユニット(UUT)3のまわりにほぼ環状配列に配置された、さまざまな周波数帯域をカバーする動電型音響源又はトランスデューサーT1〜T12で構成されるトランスデューサーのアレイが含まれる。図示の実施形態におけるトランスデューサーのアレイは、8個のトランスデューサーからなる12個の群T1〜T12で構成され、そのうち9個の群T1〜T9は、100Hzよりも上の周波数帯域をおおむねカバーする3ウェイ動電型スピーカーシステムであり、3個の群T10〜T12は、20Hzから200Hzまでの周波数帯域をおおむねカバーする動電型サブウーファースピーカーである。制御マイクロホンC1〜C12は、音場に関する情報を制御システム(後述)に提供するために、UUT3のまわりのさまざまな場所に配置される。動作中特に重要な特定の点における音場を監視する、監視マイクロホンM9〜M16もまた設けられてもよいが、この、及びこのいかなる他の実施形態の動作にも不可欠だというわけではない。監視マイクロホンは、音響試験空間内のどこに置いてもよく、制御マイクロホン位置に対応する必要はない。
【0013】
図2を参照して、’870出願による
図1のDFATシステムの簡略ブロック図を示す。制御マイクロホンC1〜Cnのそれぞれは、それぞれのマイクロホンにおける音場を表す電気信号を生成する。それぞれの電気信号は、振動音響コントローラー12の入力要件に従って、入力信号調整器20内で調整される。限定としてではなく例として、調整器20は、アンチエリアシング又は他のフィルタ、適切な標準を基準としたマイクロホン較正データの適用、及び適切なユニットを表すための信号のスケーリングを含んでもよい。アナログデジタル変換器21は、調整した電気信号をデジタル形式に変換し、そのデジタル化した信号は、
図2のブロック22において表されるように、高速フーリエ変換(FFT)の適用によって固定帯域幅狭帯域電力スペクトル密度に変換される。これらの結果として生じるデータストリームのそれぞれは、振動音響コントローラー12の1個の入力13に接続される。当業者であれば、入力信号調整器20、A/D変換器21、及びFFT22はコントローラー12の一部であってもよいということを認識する。コントローラー12からのそれぞれの出力14は、ブロック32において表されるように、逆FFTによって狭帯域電力スペクトル密度からデジタル化した時系列に変換される。このデジタル化した時系列は次に、行っている試験のタイプ次第で時間領域ランダム化35してもよく、次にデジタルアナログ変換器33においてアナログ信号に変換される。次にそれぞれのアナログ信号が、増幅及び音響トランスデューサーT1〜Tmの入力要件に従って、出力信号調整器34において調整される。限定としてではなく例として、この調整は更なるフィルタリング、利得、減衰、又は電力増幅を含んでもよい。調整した信号のそれぞれは、次に音響トランスデューサー群T1〜Tmのそれぞれに印加される。予め指定した音響基準スペクトル10が、標準の1/nオクターブの形式から、制御マイクロホンC1〜Cnからの信号の形式と整合する固定帯域幅狭帯域電力スペクトル密度の形式に変換され、振動音響コントローラーの入力13に印加される。当業者であれば、逆FFT32、時間領域ランダム化、デジタルアナログ変換器(正:converter)33、及び出力信号調整器はコントローラー12の一部であってもよい(正:may be)ということを認識する。
【0014】
多入力多出力(MIMO)制御論理の原理については、当業者は精通しており、本実施形態及び他の実施形態の実施において、本発明の範囲内で多くのさまざまな方法で適用することができる。
図3を参照して、’870出願に従ったMIMO振動音響コントローラー12のあり得る一実施形態の機能をおおまかに説明する簡略ブロック図を示す。準備工程中に、音響トランスデューサー群T1〜Tmのそれぞれに信号51が印加される。それぞれのトランスデューサー群の音響出力53がそれぞれの制御マイクロホンC1〜Cnによって別個に監視される。それぞれのトランスデューサー群に応答した制御マイクロホンC1〜Cnの電気出力は、トランスデューサー群と制御マイクロホンとのそれぞれの組み合わせの伝達関数を表す。伝達関数は、それぞれの要素がそのような伝達関数の1つである、n×mのマトリクス55に記録される。これらの伝達関数は、音響基準スペクトルデータ10と比較される。誤差関数のマトリクス56が計算され、それを用いてトランスデューサー群T1〜Tmのそれぞれについて補正済みの駆動信号57を計算する。実際の試験58の開始時、前もって記憶した1〜mの補正済みの駆動信号57がそれぞれのトランスデューサー群T1〜Tmに印加される(59)。結果として生じる音場は、制御マイクロホンC1〜Cnによって監視され、その出力が音響基準スペクトルデータ10と比較され、そこから誤差関数60が計算される。このような誤差関数60を用いて駆動信号61のリアルタイム更新を行い、それが制御ループ62を介してそれぞれのトランスデューサー群T1〜Tmに印加される。本実施形態は、
図3に示す閉ループ制御モード又は開ループ制御モードのいずれにおいても動作することができる。開ループモードにおいては、準備工程中に計算した記憶した補正済みの駆動信号57の最初の印加59後、駆動信号のリアルタイム調整は行われない。したがって、ブロック60における誤差関数の計算、結果として生じる駆動信号の更新61、及びフィードバックループ62は省かれる。したがって制御マイクロホンC1〜Cnは、監視機能のみを行う。
【0015】
振動音響コントローラー12は、上に挙げたコントローラーの各機能を果たすことができるいかなるコントローラーであってもよい。当業者には知られているように、コントローラー12は一般に、プロセッサとラフィカルユーザーインターフェース(図示せず)とを含む。一実施形態において、コントローラー12は、限定としてではなく例として、Spectral Dynamics社のJaguarシステム等の現存する機械的振動コントローラーであってもよい。
【0016】
図1〜
図3に関して示し説明した実施形態において、n=12の制御マイクロホンC1〜C12及びm=12のトランスデューサー群T1〜T12がある。しかし当業者であれば、これよりも多い又は少ない制御マイクロホン及びトランスデューサー群を利用してもよいことを認識する。例えば、そして限定としてではなく、制御マイクロホンの数は1から16までの範囲であってもよく、別個に駆動されるトランスデューサー群の数は、4から16までの範囲であってもよい。しかし当業者であれば、被試験ユニット及びコントローラー12の限界次第で更なる制御マイクロホン及び別個に駆動されるトランスデューサー群を利用してもよいことを認識する。音響入力信号を表すのに用いる電力スペクトル密度データと音響基準スペクトルデータとの個々の周波数帯の帯域幅は、好ましくは12.5Hz以下であり、例として6.25Hz、3.125Hz、2.5Hz、1.25Hz、又は0.625Hz等の、利用できるFFT機能の特性によって決まるいかなる好適な狭帯域幅であってもよい。
【0017】
図4を参照して、12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有する多入力多出力(MIMO)制御を用いる、’870出願による一実施形態に従ったDFATシステムについての、すべての制御マイクロホンの平均値と比較した、それぞれの制御マイクロホンの場所におけるスペクトル変動の実際の測定データを示す。精査するとわかるように、個々の制御マイクロホン間では変動が比較的少なく、すべての制御マイクロホンの平均値からの逸脱も比較的少ない。
【0018】
図5を参照して、12個の制御マイクロホンと12個の音響源を駆動する12個の別個の出力とを有する多入力多出力(MIMO)制御を用いる、’870出願による実施形態に従ったDFATシステムについての、すべての制御マイクロホンの平均値と比較した、非制御場所に置かれた10個の監視マイクロホンのそれぞれにおけるスペクトル変動の実際の測定データを示す。精査するとわかるように、制御マイクロホン自体についてよりも、個々の監視マイクロホン間での変動がより多く、制御マイクロホンの平均値からの逸脱もより多い。さらに、データは、非制御監視場所についてはほぼ150Hzよりも上では制御マイクロホンの平均値と比較しておおむね高い音響強度を示している。
【0019】
図6を参照して、’870出願に従ったトランスデューサー群へのコントローラー出力信号の割当てを示す。精査するとわかるように、別個に制御可能なコントローラー出力信号とトランスデューサー群とは一対一対応になっている。
【0020】
図7を参照して、この実施形態に従った簡略ブロック図を示す。特徴は
図2について説明されており、
図7では
図2の出力信号調整手段34が出力信号変更及び組み合わせ手段34a及び信号調整手段34bに取って代わられているということを除き、同じ参照番号がついている。デジタルアナログ変換器33を通った後、出力信号変更及び組み合わせ手段34aは、それぞれが1つ又は複数の別個に制御可能なコントローラー出力信号15の組み合わせである第2の群の出力信号16を作成する。それぞれの第2の出力信号16は次に、増幅及び音響トランスデューサーT1〜Tmの入力要件に従って、出力信号調整器34bにおいて調整される。限定としてではなく例として、この調整は、更なるフィルタリング、利得、減衰、又は電力増幅を含んでもよい。調整した信号のそれぞれは、次にそれぞれの音響トランスデューサー群T1〜Tmに印加される。限定としてではなく例として、出力信号変更及び組み合わせ手段34aは、前記第2の出力信号16を、それぞれの群のトランスデューサーについて信号の適切な組み合わせを作成するよう、別個に制御可能なコントローラー出力信号15の減衰、増幅、フィルタリング、遅延、加算、減算、相関、又は何らかの他の操作によって作ってもよい。
【0021】
この
図7において、本発明のこの実施形態によれば、変更及び組み合わせ手段34aは例えば、RANE RPM−88又はYamaha DME64N等、いかなる好適なマトリクススイッチ又はミクサー又はデジタル信号プロセッサ(DSP)ユニットであってもよい。さらに、変更及び組み合わせ手段34aは、別個のユニットである必要はない。
図7を参照して、変更及び組み合わせ機能を果たすための信号路における多くのあり得る場所のうちの1つのみを示す。当業者であれば誰でも直ちに明白なように、本機能は、アナログ形式であれデジタル形式であれ、個々に制御可能な出力信号の発生後、信号路におけるいかなるポイントにおいて果たしてもよい。限定としてではなく例として、そのような信号の組み合わせは、コントローラー12自体に組み込んでも、最終の信号調整手段34bに組み込んでもよい。
【0022】
図8を参照して、12個の制御マイクロホンと12個の別個に制御可能なコントローラー出力とを有する多入力多出力(MIMO)制御を用いるこの具体的な一実施形態において、
図7の別個に制御可能なコントローラー出力信号15は、
図8に従って組み合わせて、それぞれの音響トランスデューサー群についての第2の出力信号を形成する。精査すると、第2の出力16−1は等しく足し合わせた別個に制御可能なコントローラー出力信号15−1、15−4、15−7、及び15−11で構成されているということがわかる。第2の出力16−2は、等しく足し合わせた別個に制御可能なコントローラー出力信号15−2、15−5、15−8、及び15−12で構成されており、
図8による第2の出力16−3〜16−12についても同様である。
【0023】
図9を参照して、12個の制御マイクロホン、12個の別個に制御可能なコントローラー出力、及び12個の群の音響トランスデューサーを有する本発明のこの実施形態による、トランスデューサーの配列及び信号の構成を示す。それぞれの音響トランスデューサー群T1〜T12を示し、その後にその群のトランスデューサーに向けられる別個に制御可能なコントローラー出力信号の組み合わせをカッコ内に入れて記す。図を精査するとわかるように、
図7のそれぞれの別個に制御可能なコントローラー出力信号15は、より高周波数のトランスデューサー群T1〜T9に関してはそれぞれの別個に制御可能なコントローラー出力信号15が環のまわりに略一様に分配されるような方法で、低周波数トランスデューサー群T10〜T12のうちの少なくとも1個と、より高周波数のトランスデューサー群T1〜T9のうちの少なくとも3個とに分配される。
【0024】
図10を参照して、12個の制御マイクロホン、12個の別個に制御可能なコントローラー出力、及び12個の群の音響トランスデューサーを有する本発明のこの実施形態からの、それぞれの制御マイクロホンのスペクトルの大きさをすべての制御マイクロホンの平均値と比較した実際の測定データを示す。精査するとわかるように、個々の制御マイクロホン間では変動が比較的少なく、すべての制御マイクロホンの平均値からの逸脱も比較的少ない。
【0025】
図11を参照して、12個の制御マイクロホン、12個の別個に制御可能なコントローラー出力、及び12個の群の音響トランスデューサーを有する多入力多出力(MIMO)制御を用いる本発明のこの実施形態からの、非制御場所に置かれた10個の監視マイクロホンのそれぞれのスペクトルの大きさをすべての制御マイクロホンの平均値と比較した実際の測定データを示す。精査するとわかるように、
図5に示すシステムのデータと比較して、個々の監視マイクロホン間の変動がはるかに少なくなっており、すべての制御マイクロホンの平均値からの逸脱もはるかに少なくなっている。
【0026】
図1を参照して、精査すると、それぞれの制御マイクロホンC1〜C8における音場はそれぞれの制御マイクロホンに最も近い音響トランスデューサー又はトランスデューサー群T1〜T12に主として影響を受け、それよりも遠いトランスデューサーから受ける影響はかなり少ないということがわかる。当業者には明白なように、空間内のあるポイントにおける音場への所与の音響源からの寄与は、その音響源までの距離が増大するにつれて急激に低下する。限定としてではなく例として、
図1を参照して、精査すると、制御マイクロホンC4における音場は音響トランスデューサー群T8及びT9の出力に支配されるということがわかる。それよりも離れた音響トランスデューサー群、例えばT1、T10、又はT7は、制御マイクロホンC4における音場に与える影響がはるかに少ない。したがって、主としてそれぞれの制御マイクロホンC1〜C8に最も近いトランスデューサー群T1〜T12の出力を変更することによって、制御マイクロホンC1〜C8のそれぞれにおいて予め指定した音場を実現することが可能である。それよりも離れたトランスデューサー群を変更しても、制御マイクロホンの音場に与える影響はほとんどない。
図6を参照して、別個に制御可能なコントローラー出力1〜12と音響トランスデューサー群T1〜T12との間の一対一対応を精査すると、それぞれのトランスデューサー群の出力を変更するのに、1つのコントローラー出力信号のみの変更が必要であるということがわかる。したがって、それぞれの制御マイクロホンにおける音場は、別個に制御可能なコントローラー出力のうちのいくつかのみ、通常3個以下、しばしば1個のみの変動にほぼ完全に依存する。さらに、
図1を参照して、精査すると、1個又は2個の制御マイクロホンについての音場を主として決定するトランスデューサー群は、それよりも離れた制御マイクロホンに与える影響がほとんどないということがわかる。したがって、所与の制御マイクロホンについての音場を主として決定するトランスデューサー群に動作可能に結合したコントローラー出力は、それよりも離れた制御マイクロホンにおける音場に与える影響はほとんどない。限定としてではなく例として、
図1及び
図6を参照して、精査すると、制御マイクロホンC4における音場は、コントローラー出力7〜9に動作可能に結合したトランスデューサー群T7〜T9によって主として決定されるということがわかる。精査するとまた、トランスデューサー群T1〜T6及びT10〜T12、したがってコントローラー出力1〜6及び10〜12は、制御マイクロホンC4における音場に与える影響がほとんどないということもわかる。これは、制御マイクロホン間の空間内の各ポイントにおける予め指定した音場からの逸脱を招き得る。
【0027】
本発明の一実施形態による
図9を参照して、精査すると、それぞれの制御マイクロホンC1〜C12における音場は依然として、最も近いトランスデューサー群によって主として決定されるということがわかる。しかし、
図8もまた参照して、それぞれのトランスデューサー群T1〜T12は、今度はカッコ内に示すコントローラー出力信号の組み合わせを受け取る。したがって、それぞれの制御マイクロホンにおける音場は、今度はコントローラー出力信号の組み合わせにおける変動によって主として決定される。さらに、それらの同じコントローラー出力における変動はまた、他の制御マイクロホン位置における音場も主として決定する。限定としてではなく例として、
図9及び
図8を参照して、制御マイクロホンC4の音場は、トランスデューサー群T7〜T9によって主として決定される。しかしトランスデューサー群T7〜T9の音響出力は、すべてのコントローラー出力1〜12における変動によって決定される。同様に、C4からいくらか距離のある制御マイクロホンC6における音場は、トランスデューサー群T1〜T3によって主として決定され、トランスデューサー群T1〜T3もまた、まとまってコントローラー出力1〜12における変動に応答し、その結果、制御マイクロホン間の空間内の各ポイントにおける予め指定した音場からの逸脱が低減する。
【0028】
図9を参照して、限定としてではなく例として、図面を精査すると、それぞれのコントローラー出力における変動の影響が被試験ユニットのまわりで或る程度対称的に分配されるよう、コントローラー出力信号が組み合わされトランスデューサー群に分配されることがわかる。しかし、対称的な又は非対称的な、均一な又は非均一な、本発明の範囲内にある多くの異なる配列が可能であることは容易に明白である。一般に、被試験ユニットのまわりの音場のコヒーレンスと、それぞれのコントローラー出力の変動がそれぞれの制御マイクロホンにおける音場に与える影響の量との間の相関関係が証明されている。最大コヒーレンスは、すべてのコントローラー出力の変動がすべての制御マイクロホンにおける音場に同じ影響を与える場合に対応し、最小コヒーレンスは、それぞれのコントローラー出力の変動が主として1個の制御マイクロホンのみにおける音場に影響を与える場合に対応する。
【0029】
より高度な均一性を有する、又は予め指定した音場により忠実に準拠する音場を実現するために、別個に制御可能なコントローラー出力信号の、すべて本発明の範囲内にあるさまざまな組み合わせを無限に作ることができることもまた容易に明白であろう。限定としてではなく例として、上記音場の仕様は、特定の試験に必要な音響強度勾配又は他の場の非対称性を含んでもよい。さらに、別個に制御可能なコントローラー出力信号は、単に単純に加算することによって組み合わせる必要はなく、すべて同じ割合で組み合わせる必要はない。限定としてではなく例として、別個に制御可能なコントローラー出力信号を、加算、減算、乗算、除算、相互相関、又は何らかの他の形の演算によって組み合わせられる他の別個に制御可能なコントローラー出力信号に対して、増幅、減衰、フィルタリング、遅延、他の方法で変更してもよい。トランスデューサーの配列は環状である必要はなく、特定のUUTで試験の仕様を実現するのに好適ないかなる配列であってもよい。限定としてではなく例として、そのような配列は、球体、平面図で長方形、偏球のいかなる一部を含んでもよく、頭上に配置したトランスデューサーを含んでも含まなくてもよい。当業者には、本発明の範囲内にある多くの更なる変形を実施してもよいこともまた明白である。これらは、限定としてではなく例として、さまざまなタイプ又は数のトランスデューサー、さまざまな数の入力及び出力、トランスデューサーのアレイのさまざまなレイアウト、トランスデューサーのサブアレイの代替の構成及び前記出力への接続、制御又は監視の位置の選択、何らかの好適なタイプの多入力多出力制御システム又は論理、動作中用いるさまざまなタイプ若しくは組み合わせの信号、又は開示した多数の出力技術が直接音場音響試験システムに適用される何らかの他の環境を含んでもよい。
【0030】
図6を参照して、’870出願によるトランスデューサー群へのコントローラー出力信号の割当てを示す。精査するとわかるように、別個に制御可能なコントローラー出力信号とトランスデューサー群とは一対一対応になっている。コントローラー出力信号1〜9は、おおむね100Hzよりも上の周波数を再生する中〜高周波数トランスデューサー群T1〜T9に割り当てられている。コントローラー出力信号10〜12は、おおむね20Hzから200Hzまでの周波数を再生する低周波数トランスデューサー群T10〜T12に割り当てられている。
図3を参照して、前述したように、’870出願に従ったMIMO振動音響コントローラー12のあり得る一実施形態の機能をおおまかに説明する簡略ブロック図を示す。’870出願において説明されているように、閉ループ動作中は、駆動信号1〜mが絶えず更新されて、予め指定した音場を維持する。しかし、
図6のコントローラー出力信号1〜9は、おおむね100Hzより上の周波数を再生するトランスデューサー群T1〜T9に割り当てられている。その結果、トランスデューサー群T1〜T9について更新される駆動信号は、100Hzよりも下で定常的に上昇する信号レベルを含むかもしれない。
図6のコントローラー出力信号10〜12は、おおむね20Hzから200Hzまでの周波数を再生するトランスデューサー群T10〜T12に割り当てられている。その結果、トランスデューサー群T10〜T12について更新される駆動信号は、200Hzよりも上で定常的に上昇する信号レベルを含むかもしれない。トランスデューサーの1群について意図する周波数帯域の外側の周波数で信号レベルが上昇すると、過度の電力消費、強い歪み、予め指定した音場の特性が実現できないということ、又はシステムの構成要素の故障を招く場合がある。
図9を参照して、おおむね100Hzよりも上の周波数を再生する、より高周波数のトランスデューサー群T1〜T9を示し、おおむね20Hzから200Hzまでの周波数を再生する低周波数トランスデューサー群T10〜T12を示す。それぞれの音響トランスデューサー群T1〜T12を示し、その後にその群のトランスデューサーに向けられる別個に制御可能なコントローラー出力信号の組み合わせをカッコ内に入れて記す。図を精査するとわかるように、
図7のそれぞれの別個に制御可能なコントローラー出力信号15は、低周波数トランスデューサー群T10〜T12のうちの少なくとも1個と、より高周波数のトランスデューサー群T1〜T9のうちの少なくとも1個とに分配され、それぞれの別個に制御可能なコントローラー出力信号における変動によって、予め指定した音場の音響周波数帯域全体をカバーする周波数をまとめて再生するトランスデューサー群の組み合わせの音響出力が変動するようになっている。したがって、それぞれの別個に制御可能なコントローラー出力信号によって制御されるトランスデューサー群についての更新された駆動信号は、意図する音響周波数帯域の外側の周波数成分を含まない。限定としてではなく例として、異なる音響周波数帯域をカバーする異なるトランスデューサー群の数は、2と8との間であってもよい。それぞれの別個に制御可能なコントローラー出力信号をトランスデューサーの群に割り当てて、それぞれの別個に制御可能なコントローラー出力信号における変動によって、予め指定した音場の音響周波数帯域全体をカバーする周波数をまとめて再生するトランスデューサー群の組み合わせの音響出力が変動するようにする、多くのそのような信号分配配列が可能であるということが、当業者には明白であろう。そのような配列はすべて、本発明の範囲内にある。
【0031】
本明細書において、「異なる周波数帯域」という用語は、重なり合う周波数帯域を含んでもよい。例えば、限定としてではなく、トランスデューサー群T1〜T9はおおむね100Hzより上の周波数を再生し、トランスデューサー群T10〜T12は20Hzと200Hzとの間の周波数を再生することを上述した。したがって、トランスデューサー群T1〜T9は、たとえ周波数帯域が100Hz〜200Hzの範囲内で重なり合っても、トランスデューサー群T10〜T12とは異なる周波数帯域を再生する。当業者には、より広い全体的な周波数帯域を再生するために音響トランスデューサーの別個の群によって再生される異なる周波数帯域は、通常、いくらか部分的な重なりを有することが明白であろう。そのような部分的に重なりあう周波数帯域もまた、本発明の範囲内である。