(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247222
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】側面差し込み式フィルターカートリッジ
(51)【国際特許分類】
A62B 18/02 20060101AFI20171204BHJP
A62B 23/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
A62B18/02
A62B23/02
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-542338(P2014-542338)
(86)(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公表番号】特表2014-533553(P2014-533553A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】US2012063801
(87)【国際公開番号】WO2013074337
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】13/298,402
(32)【優先日】2011年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154656
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 英彦
(72)【発明者】
【氏名】ドワイヤー, ゲイリー, イー.
(72)【発明者】
【氏名】レガル, ピエール
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0003810(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/006206(WO,A1)
【文献】
特表2008−531194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 18/02
A62B 18/00
A62B 23/02
A62B 19/00
A62B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体と、
前記マスク本体に直接固定されたメスフィルターカートリッジレセプタクルと、
第1の主面、第2の主面、及びオス端部を有するフィルターカートリッジと、を有し、
前記オス端部の少なくとも一部は、前記第1の主面と前記第2の主面との間に配置されており、
前記オス端部は、前記メスフィルターカートリッジレセプタクルに差し込むことが可能であり、
前記フィルターカートリッジの前記第2の主面と前記マスク本体との間の間隔は、前記第2の主面と前記マスク本体との間の最も近い距離では、1センチメートル未満である、レスピレーター。
【請求項2】
前記フィルターカートリッジの前記第2の主面が、前記マスク本体と直接接触している、請求項1に記載のレスピレーター。
【請求項3】
メスフィルターカートリッジレセプタクルが連結されたマスク本体を準備する工程と、
開口部とフィルターカートリッジの側部に配置された取り付け手段とを有するフィルターカートリッジを準備する工程であって、前記開口部が、前記フィルターカートリッジから、前記マスク本体によって少なくとも部分的に画定される内部ガス空間にきれいな空気が通過することを可能とし、前記フィルターカートリッジは、第1の主面、第2の主面、及びオス端部を有し、前記オス端部の少なくとも一部は、前記第1の主面と前記第2の主面との間に配置されている、工程と、
前記フィルターカートリッジの前記オス端部を前記メスフィルターカートリッジレセプタクルに差し込むことにより、前記取り付け手段が前記レセプタクル内の対応する部分と噛み合うことで、前記レセプタクルを介して前記フィルターカートリッジが前記マスク本体に固定される工程であって、前記フィルターカートリッジの前記第2の主面と前記マスク本体との間の間隔は、前記第2の主面と前記マスク本体との間の最も近い距離では、1センチメートル未満である、工程と、を含む、レスピレーターを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面差し込み式のフィルターカートリッジを有するレスピレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
レスピレーターは一般的に、マスク本体及びマスク本体に取り付けられる1つ以上のフィルターカートリッジを有している。使用時には、着用者によって吸気時に発生させられる陰圧によりフィルターカートリッジから空気が引き込まれる。周囲空気は、濾材を通過してマスク本体内部に入り、そこで濾過された空気が着用者によって安全に吸入される。
【0003】
レスピレーターの技術分野では、フィルターエレメントをレスピレーターに取り付けるために多くの方法が使用されてきた。一般的な方法の1つは、レスピレーターの本体の対応するねじ付き取り付け部に取り付けられるねじ付きカートリッジ内に配置されたフィルターエレメントを有する。例えば、米国特許第5,222,488号、同第5,063,926号、同第5,036,844号、同第5,022,901号、同第4,548,626号、及び同第4,422,861号を参照されたい。公知のフィルターカートリッジは、通常、フィルターカートリッジのねじ山が形成された部分を受容する、ねじ立てされたカラー又はソケットと嵌合するらせん状又は前進らせん状のねじ山を有している。適当な方向にフィルターカートリッジを回転させることにより、カートリッジをレスピレーターに取り付けるか又はレスピレーターから取り外すことができる。
【0004】
ねじ山の代わりにバヨネット式の閉鎖機構を使用して、レスピレーターにフィルターカートリッジを取り付けることも行われている。これについては、例えば、米国特許第5,062,421号、同第4,934,361号、及び同第4,850,346号を参照されたい。’421号特許に開示されるバヨネット式の閉鎖機構は、構成部品を互いに固定するためのロックタブ及び切欠きを有している。’361号特許及び’346号特許では、フィルターカートリッジがレスピレーターのフェースピースに正しく装着されていることを示すために、可聴の仕組みが用いられている。フェースピース上の突起部には、カートリッジ上のリブを次第に反らすか又は変形させるように配置された戻り止め傾斜面、すなわち傾斜した表面を有するカムが設けられている。カートリッジとフェースピースとがロック位置へと互いに対して回転させられると、カムがリブと係合し、リブがカムの端部から突然落ちて可聴のカチっという音が生じるまでリブ及び突起部を反らせる。
【0005】
回転運動を行うことなくフィルターカートリッジをマスク本体に対して手で押し付けることによって可聴の嵌め合いを生じるスナップイン嵌合が開発されている。これについては、ユスチャック(Yuschak)らに付与された米国再発行特許第RE 39,493号を参照されたい。カートリッジを手で反対方向に引っぱることにより、取り外しを行うことができる。
【0006】
ねじ山、バヨネット、スナップ嵌め以外に、各種の他の連結機構が長年にわたって開発されてきた。米国特許第5,148,803号では例えば、フィルターをレスピレーターに締結するためにベローズを使用している。ベローズは、剛性のバンドとともに、フィルターを受容する剛性のカフを形成する。米国特許第5,033,465号及び同第5,078,132号は、フィルターエレメントを弾性フェースピースに固定するためのエッジシールの使用について開示している。米国特許第4,856,508号には、フィルターカートリッジを受容するための発泡材マスクシェルが開示されている。この発泡材マスクシェルは、フィルターカートリッジを受容するための開口部を画定するカラーを有している。米国特許第4,790,306号では、接着された吸収剤フィルターエレメントをレスピレーターのフェースピースに永久的に固定するためにインサート成形が用いられている。米国特許第4,771,771号には、フィルターカートリッジをレスピレーターのチャンバ内に固定するための差し込み式フレームについて述べられている。このフィルターカートリッジは、差し込み式フレームの開口部からフィルターカートリッジを滑り込ませることによってレスピレーターに取り付けることができる。米国特許第4,630,604号では、交換可能なフィルター部材をレスピレーターフレームと当接した関係に保持するため、フィルターリテーナー上にロック凸縁部が用いられている。このフィルター部材は、フィルター保持部材をフレームから折り取ることによって交換することができる。フィルターハウジングと嵌合させるためのガイドリングがレスピレーターに設けられた更なる方法が、米国特許第4,562,837号に開示されている。このガイドリングは、ガスが通過する開口部を画定するスリーブ部分によって保持される。フィルターハウジングは、格納されたスタンバイ位置から伸長した使用位置へとガイドリング上をスライドする。
【0007】
上記に述べたレスピレーターは、フィルター及びフィルターカートリッジをレスピレーターに固定するために異なる方法を用いているが、これらの方法はいくつかの欠点を有している。例えば、レスピレーターにねじ込まれるフィルターカートリッジは一般的に、マスク本体にカートリッジを取り付けるために何回も回さなければならない。円筒状の幾何形状は一般的に、フィルターカートリッジを、着用者の視界の妨げとなり得る外部の付属装置として使用する必要を生じる。他の構成では、フィルターカートリッジは、回転運動をほとんど又はまったく行わずに取り付けることができるが、それでもこれらの装置はマスク本体の表面からある程度突出し得る。フィルターカートリッジがマスク本体から遠くに配置されるほどモーメントが大きくなり、したがって着用者の首により大きな重力トルクがかかる場合がある。公知のレスピレーターでは、取り付けは、一般的にフィルターカートリッジの内側の主面で行われるが、このことは、2個の部分の嵌合を可能とするために2個の部分が互いからある程度離間していることをしばしば必要とする。従来の設計の最後の欠点は、最新の魅力を示す際立った外観が往々にして欠けている点である。
【0008】
用語集
以下に記載する用語は、以下に定義される意味を有する。
「活性粒子」とは、触媒作用及び/若しくはイオン交換などの化学的性質、並びに/又は捕捉、吸着、吸収、若しくはそれらの組み合わせなどの物理的性質を含むいくつかの特性又は性質に起因するいくつかの作用又は機能を行ううえで特に適した粒子又は顆粒を意味する。
「きれいな空気」とは、濾過によって汚染物質が除去された一定量の大気からなる周囲空気を意味する。
「外部ガス空間」とは、吐出されたガスが、マスク本体及び/又は呼気弁を通過した後に流入する、周囲大気からなるガス空間を意味する。
「フィルターカートリッジ」とは、内部ガス空間に空気が入る前に空気を濾過する目的で、レスピレーターのマスク本体に(着脱可能又は永久的に)取り付け可能である装置を意味する。
「フィルターカートリッジ容器レセプタクル」とは、フィルターカートリッジの一部を受容するようなサイズとされ、適合された装置を意味する。
「濾材」とは、それを通過する空気から汚染物質を除去するように設計された通気性の構造を意味する。
「ハウジング側壁」とは、この構造の側部の少なくとも一部分に配置される非通気性の表面を意味する。
「一体の」とは、同時に形成されるか、又は一体の部品の1つ以上を破損することなく分離することができないことを指す。
「内部ガス空間」とは、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
「主面」とは、装置上の最大の表面積を有する1つ又は2つの表面、通常は空気が通過してフィルターカートリッジに流入する表面のことを意味する。
「マスク本体」とは、少なくとも人の鼻及び口を覆ってぴったりと装着され、外部ガス空間から分離された内部ガス空間を画定する助けとなる構造を意味する。
「プレナム」とは、複数の空気流経路が収束するか若しくは別の空気流経路と合流する領域又は空間、あるいは複数の空気流経路がその領域又は空間から分岐する領域又は空間を意味する。
「複数」とは、2又はそれ以上を意味する。
「差し込まれた」とは、1つの部品を別の部品に手で滑り込ませる動作により、一方の部品が他方の部品と嵌合することを意味する。
「レスピレーター」とは、人間により着用されることにより人間の呼吸器系に空気が流入する前に空気を濾過する装置のことを意味する。
「固定された」とは、互いに連結されていることを意味する。
フィルターカートリッジに関連して「側面」又は「縁部」とは、フィルターカートリッジの主面間に全体又は一部が位置する表面又は表面の組み合わせを意味する。
「側部」とは、側面を有し、その側面に隣接した主面の1つ以上の部分を含み得る部分を意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フィルターカートリッジをマスク本体に取り付けるための独自のシステムを有する新規なレスピレーターを提供する。公知のレスピレーターと同様、本発明のレスピレーターは、マスク本体と、マスク本体に取り付けられるか又は取り付けることが可能な1つ以上のフィルターカートリッジとを有する。本発明は、更にフィルターカートリッジレセプタクル、及びレセプタクルに差し込むことが可能な第1の側部を有するフィルターカートリッジを有する点で公知のレスピレーターと異なっている。
【0010】
本発明は、(a)レセプタクルが連結されたマスク本体を準備する工程と、(b)カートリッジの側部に配置された取り付け手段を有するフィルターカートリッジを準備する工程と、(c)フィルターカートリッジをレセプタクルに差し込むことにより、取り付け手段がレセプタクル内の対応する部分と噛み合うことで、レセプタクルを介してフィルターカートリッジがマスク本体に固定される工程と、を含む、レスピレーターを製造する新規な方法も提供する。
【0011】
フィルターカートリッジをレセプタクルに滑り込ませることにより、可聴の「カチッ」という音又は他の指標を生じさせることができ、これにより、使用者に2個の部分が嵌合されたことが知らされる。
【0012】
本発明は、マスク本体が着用者によって装着されている状態でカートリッジを適正な位置に挿入することができるという点で有用である。使用者に実際の嵌合を視覚的に確認させることなく、固定を実現することができる。レセプタクルと差し込み機能の使用により、使用者がカートリッジをマスク本体に固定することが比較的容易となる。カートリッジ端部の側部又は端部をレセプタクルに単に挿入し、カートリッジをレセプタクルの奥に向かって押し込む。カートリッジをレセプタクルと嵌合するように滑り込ませる。可聴のカチッという音又は他の指標によって、使用者に適切な嵌合が実現されたことが知らされる。更に、本発明は、カートリッジとマスク本体との間の間隔がほとんどない嵌合を可能とする。したがって、本発明のレスピレーターは、より快適に着用することができる。カートリッジがマスク本体から遠くに位置するほど、生じるモーメントが大きくなる。フィルターカートリッジを使用した従来のレスピレーターでは、着用者の首により大きなトルクがかかることにより、マスクが長時間にわたって着用される場合に着用者により大きな不快感をもたらす場合がある。本発明によれば、フェースシールド及び聴覚保護器などの他の個人用保護装置のマスク本体に更なるクリアランスのための空間を空けることもできる。本発明の最後の利点は、新規な取り付け方法が外観及び魅力において非常に際立っており、使用者に最高品質の従来にない設計のレスピレーターを着用しているという実感を与えるという点である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に基づく、レスピレーター10の斜視図である。
【
図2】本発明に基づく、組み立てられたフィルターカートリッジ12とフィルターカートリッジレセプタクル15の斜視図である。
【
図3】本発明に基づく、分離されたフィルターカートリッジ12とフィルターカートリッジレセプタクル15の斜視図である。
【
図4】本発明に基づく、フィルターカートリッジレセプタクル15の取り付け機構の斜視図である。
【
図5】本発明に基づく、フィルターカートリッジ12とレセプタクル15の第2の実施形態の後面斜視図である。
【
図6】本発明に基づく、レセプタクル15に挿入されているフィルターカートリッジ12の第2の実施形態の前面斜視図である。
【
図7】本発明に基づく、組み立てられたフィルターカートリッジ12とフィルターカートリッジレセプタクル15の第3の実施形態の正面斜視図である。
【
図8】本発明に基づく、組み立てられたフィルターカートリッジ12とフィルターカートリッジレセプタクル15の第3の実施形態の後面斜視図である。
【
図9】本発明に基づく、フィルターカートリッジレセプタクル15から分離されたフィルターカートリッジ12の第3の実施形態の後面斜視図である。
【
図10】本発明に基づく、フィルターカートリッジレセプタクル15に取り付けられたフィルターカートリッジ12の第4の実施形態の正面斜視図である。
【
図11】本発明に基づく、組み立てられフィルターカートリッジ12とフィルターカートリッジレセプタクル15の第4の実施形態の後面斜視図である。
【
図12】本発明に基づく、フィルターカートリッジレセプタクル15から分離されたフィルターカートリッジ12の第4の実施形態の後面斜視図である。
【
図13】本発明に基づく、フィルターカートリッジレセプタクル15に取り付けられたフィルターカートリッジ12の第5の実施形態の正面斜視図である。
【
図14】本発明に基づく、組み立てられたフィルターカートリッジ12とフィルターカートリッジレセプタクル15の第5の実施形態の後面斜視図である。
【
図15】本発明に基づく、フィルターカートリッジレセプタクル15から分離されたフィルターカートリッジ12の第5の実施形態の後面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施においては、マスク本体と、フィルターカートリッジレセプタクルを介してマスク本体に取り付けられるか又は取り付けることが可能な1つ以上のフィルターカートリッジとを有するレスピレーターが提供される。フィルターカートリッジは、レセプタクルに差し込むことが可能な第1の側部を有する。フィルターカートリッジレセプタクル、及びレセプタクルを介してマスク本体に固定することが可能なフィルターカートリッジの提供により、マスク本体との取り付けを行うために回転又は様々な操作を必要としない新たなカートリッジの取り付け機構が可能となる。カートリッジは、レセプタクルに速やかに差し込んで使える状態とすることができる。更に、下記に詳細に述べるように、使用者が1個以上のボタンなどの取り外し機構を押すだけで、速やかな取り外しを実現することができる。
【0015】
図1は、本発明に基づく特徴を有するレスピレーター10の一例を示している。レスピレーター10は、着用者の頭部に鼻と口を覆って装着される。レスピレーター10は、マスク本体14の両側に配置された1個以上のフィルター12を有している。フィルターカートリッジ12は、レセプタクル15を介してマスク本体14と脱着可能であっても、永久的に固定されてもよい。カートリッジ12は、周囲空気がマスク本体14の内部に配置された内部ガス空間内に入る前に周囲空気を濾過する。内部ガス空間に存在することになる空気は、着用者による吸入に適したきれいな空気である。マスク本体14は、剛性のインサート16及びエラストマー製の顔面接触部分18を有し得る。このような構成を有するマスク本体は、フラニガン(Flannigan)らに付与された米国特許第7,650,884号、及びバーンズ(Burns)らに付与された米国特許第5,062,421号に述べられている。呼出された空気をマスク本体内部から速やかに排出するための呼気バルブ19をマスク本体に配置することもできる。本発明のマスク本体における使用に適当であり得る呼気バルブの例としては、米国再発行特許第RE 37,974号、米国特許第6,584,974号、同第5,509,436号、同第5,325,892号、及び同第7,849,856B2号に開示されるバルブが挙げられる。レスピレーター10は、レスピレーターが装着される際に着用者の頭部にマスク本体14を支持するためのハーネス20を更に有している。ハーネス20は異なる形態をとり得るが、一般的には、着用者の頭部の後ろに通される1本以上のストラップ22を有している。ストラップ22同士は、1個以上のバックル23によって互いに連結することができる。ハーネス20は、例えば、ブロストローム(Brostrom)らに付与された米国特許第6,732,733B1号及び同第6,457,473号、ビラム(Byram)に付与された同第5,691,837号、及びセッパラ(Seppala)らに付与された同第5,237,986号に述べられるようなドロップダウン式のハーネスであってよい。マスク本体14を着用者の頭部に支持する補助となる冠状部材を、必要に応じて使用することもできる。これについては、例えば、カスティグリオン(Castiglione)らに付与された米国特許出願公開第2011/0220115A1号及びブロストローム(Brostrom)らに付与された米国特許第6,732,733号を参照されたい。マスク本体14に固定されるフィルターカートリッジ12は、第1及び第2の主面26及び28、並びにハウジング側壁30を有している。ハウジング側壁30は、少なくとも第1の主面26から少なくとも第2の主面28に延びている。ハウジング側壁30は一般的に、その内部に配置される濾材の層の外周と接する。カートリッジハウジングの側部において、主面26及び28の一方又は両方が側面30と接している。これらの表面26及び28は、周囲空気がフィルターカートリッジ12に流入できるように流体透過性であってよい。主面26及び28は、一般的にはそれぞれ約30〜200平方センチメートル(cm
2)、より一般的には約60〜90cm
2の表面積を有する。レスピレーターは、各カートリッジとマスク本体との間、特に第2の主面28とマスク本体14との間に間隔がほとんど又はまったくないように構成することができる。最も近い距離では、カートリッジとマスク本体との間の間隔は、1センチメートル(cm)未満、0.5cm未満、更には2ミリメートル(mm)未満、又はマスク本体と
直接接触することができる。図に示されるように、フィルターカートリッジ12は、フィルターカートリッジレセプタクル15によってマスク本体14と連結される。
【0016】
図2は、フィルターカートリッジレセプタクル15と連結されたフィルターカートリッジ12の正面図を示している。レセプタクル15は、上面32、前側面34、並びに第1及び第2の互いに反対側の側面36及び38を有している。これらの側面及び表面の内側によって形成される内部区画は、フィルターカートリッジ12の側部又は嵌合端40(
図3)よりもわずかに大きい断面積を有しているため、フィルターカートリッジ12をレセプタクル15内にしっかりと挿入することが可能である。したがって、マスク本体14とフィルターカートリッジ12との嵌合は、フィルターカートリッジのオス端部40を、マスク本体14に固定されたメスレセプタクル15に挿入することによって実現することができる。
【0017】
図に示されるように、フィルターカートリッジ12は、前方から後方にかけて湾曲していてよい。カートリッジはまた、上部から下部にかけて、又は両方の方向において湾曲していてもよい。湾曲したフィルターカートリッジにより、着用者の視界を向上させることができる。本発明と組み合わせて使用するのに適した一般的な形状又は構成を有し得るフィルターカートリッジの一例が、ビリングスレイ(Billingsley)らに付与された、発明の名称が「圧延ベースのハウジング側壁を有するフィルターカートリッジの製造方法(Method of Making filter Cartridge Having Roll-based Housing Sidewall)」である米国特許出願第12/784,182号に示されている。フィルターカートリッジにおいて使用することができるプレナムの一例が、アンガジバンド(Angadjivand)らに付与された米国特許出願第2007/0144123号に開示されている。フィルターカートリッジには、粒子状及び/又はガス状の濾材の1つ以上の層を含み得る濾材が収容されている。粒子状濾材は、周囲空気中に浮遊する微粒子を除去するように構成され、ガス状濾材は、その中に浮遊している蒸気を除去するように構成されている。濾過層は様々な形状及び形態のものであってよく、一般的に約0.2ミリメートル(mm)〜1センチメートル(cm)の厚さを有し、概ね平面状のウェブとするか又は拡大された表面積を与えるように波形のものとすることができる。これについては、例えば、ブラウン(Braun)らに付与された米国特許第5,804,295号及び同第5,656,368号を参照されたい。濾過層はまた、接着剤又は他の任意の適当な手段により互いに接合された複数の濾過層を含んでもよい。濾過物質は、インスレイ(Insley)らに付与された米国特許第6,752,889号及び同第6,280,824号に述べられるような一連の平行な溝を有し得る。濾過層を形成するための公知の(又は後に開発される)基本的に任意の適当な物質を使用することができる。Wente,Van A.,Superfine Thermoplastic Fibers,48 Indus.Engn.Chem.,1342 et seq.(1956)に教示されるものなどのメルトブローン繊維のウェブが、特に持続的に荷電された(エレクトレット)形態のものである場合に特に有用である(例えば、キュビック(Kubik)らに付与された米国特許第4,215,682号を参照)。これらのメルトブローン繊維は、約20マイクロメートル(μm)未満の有効繊維直径を有するマイクロファイバーであってもよい(「ブローンマイクロファイバー」のBMFと呼ばれる)。有効な繊維直径は、Davies,C.N.,The Separation Of Airborne Dust Particles,Institution Of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に従って決定することができる。ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)及びこれらの組み合わせから形成される繊維を含有するBMFウェブが広く使用されている。米国再発行特許第31,285号(バン・ターンハウト(van Turnhout))に教示されるような荷電されたフィブリル化フィルム繊維、並びにロジンウール繊維質ウェブ及びグラスファイバーのウェブ、又は溶液ブローン若しくは静電スプレー繊維、特にマイクロフィルムの形態のものも適当であり得る。アイツマン(Eitzman)らに付与された米国特許第6,824,718号、アンガジバンド(Angadjivand)らに付与された同第6,783,574号、インスレイ(Insley)らに付与された同第6,743,464号、アイツマン(Eitzman)らに付与された同第6,454,986号及び同第6,406,657号、並びにアンガジバンド(Angadjivand)らに付与された同第6,375,886号及び同第5,496,507号に開示されるように、繊維を水と接触させることによって電荷を繊維に付与することができる。電荷はまた、クラッセ(Klasse)らに付与された米国特許第4,588,537号に開示されるようなコロナ帯電によるか、又はブラウン(Brown)に付与された同第4,798,850号に開示されるような摩擦帯電によって繊維に付与することもできる。また、ハイドロチャージングプロセスにより製造されるウェブの濾過性能を高めるために、繊維に添加剤を添加することができる(ルソー(Rousseau)らに付与された米国特許第5,908,598号を参照)。特に、フッ素原子を濾過層の繊維の表面に配置することにより、油性ミスト環境における濾過性能を向上させることができる。これについては、ジョーンズ(Jones)らに付与された米国特許第6,398,847B1号、同第6,397,458B1号、及び同第6,409,806B1号を参照されたい。エレクトレットBMF濾過層の一般的な坪量は、1平方メートル当たり約10〜100グラムである。活性微粒子の充填ベッド、及び、例えばPSA微小粒子と一体に保持された活性微粒子の透過性成形構造(センクス(Senkus)らに付与された米国特許第6,391,429号を参照)、又はブラウン(Braun)らに付与された米国特許第5,033,465号に述べられるような結合された吸着微粒子を使用することもできる。活性微粒子を含む繊維質濾材の一例が、タタルチャック(Tatarchuk)らに付与された米国特許第7,501,012B2号に示されている。本発明のフィルターに使用することができる活性微粒子には、反応、触媒作用、及びイオン交換などの化学変化特性、並びに/又は、大きな表面積、多孔度、並びに比較的小さなサイズ及び形状などの物理的特性を含むある特性又は性質に起因するある作用又は機能を行うのに適した粒子又は顆粒が含まれる。活性微粒子の一例として、流体中の成分と相互作用してこれを除去するか又は組成を変化させる粒子がある。流体中の成分は活性微粒子上、若しくは活性微粒子内に吸着されるか、又は反応することによってその組成の有害性を減らすことができる。したがって、活性微粒子は、吸着性、触媒性、又は反応性のものとすることができる。本発明と組み合わせて使用することが可能な活性微粒子材料の例としては、活性炭、化学的に表面処理された活性炭、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、カオリンケイソウ土、粉末状ゼオライト(天然及び合成)、イオン交換樹脂及びモレキュラーシーブなどの吸着性微粒子顆粒、触媒粒子及びカプセル化された化合物を含有した粒子などの微粒子が挙げられる。一般的な活性微粒子としては、活性炭、化学処理された炭素、及びアルミナ微粒子が挙げられる。本発明において使用することが可能な市販の活性炭の例としては、Kuraray 12×20型GG(株式会社クラレ(大阪、日本)より販売されるもの)及びCalgon 12×30 URC(カルゴン・カーボン社(Calgon Carbon Corporation)(ペンシルベニア州ピッツバーグ)より販売されるもの)が挙げられる。本発明において使用することが可能な異なる種類の活性微粒子について述べた特許としては、ブレイ(Brey)らに付与された米国特許第7,309,513号、センクス(Senkus)らに付与された同第7,004,990号及び同第6,391,429号、ブラウン(Braun)らに付与された同第5,763,078号、並びにアブラー(Abler)に付与された同第5,496,785号が挙げられる。濾過層を保護するために被覆ウェブを使用することもできる。被覆ウェブは、滑らかな外表面となるように処理後にウェブ表面から飛び出す繊維がほとんどないように構成することができる。本発明において使用することが可能な被覆ウェブの例は、例えばアンガジバンド(Angadjivand)に付与された米国特許第6,041,782号、ボストック(Bostock)らに付与された米国特許第6,123,077号、及びボストック(Bostock)らに付与された国際特許出願公開第96/28216A号に開示されている。フィルターカートリッジは、カートリッジの使用寿命が過ぎた時点で使用者に知らせるために、カートリッジの側面に配置されたセンサーを有してもよい。これについては、ラコウ(Rakow)らに付与された米国特許出願第2008/0063575号を参照されたい。
【0018】
図3は、フィルターカートリッジ12のオス端部40は、レセプタクル15の格納可能な切欠き部44(
図4)と嵌合する1つ以上の開口部42が配置されるように構成することができることを示している。使用時には、フィルターカートリッジ12の第1及び第2の主面26及び28の少なくとも一方を通過した空気が、バヨネット嵌め機構48の開口部46と流体連通したプレナムに流入する。したがって、バヨネット嵌め機構48は、流体連通と固定手段の両方に寄与し得る。側壁50の導路42は、カートリッジ内部に配置されたプリナムからレセプタクル15に空気を通過させる。主面28ではなく側面50上に流出口42が位置することで、フィルターカートリッジ表面12上の有効濾過面積を増大させることができ、これにより、製品の性能が向上し得る。
【0019】
図4は、レセプタクル15が、格納可能な切欠き部44をフィルターカートリッジ12の第1の側面40の開口部42から取り外させる1個以上の手動応答ボタン52を有し得ることを示している。ボタン52が互いに向かって押し込まれると、切欠き部44が同様に互いに向かって動くことで側壁50の内表面から取り外され、これによりカートリッジ12の第1の端部40をレセプタクルの内部から手で引き抜くことができる。ボタン52を含む、本発明において使用される取り外し機構には、しっかりとした固定が得られるようにばね付勢することができる。この
図4に示されるように、レセプタクル15は、バヨネット嵌め機構48(
図3)にではなく、レセプタクル34の前側面34に配置された流体出口開口部46’を有することで、空気をマスク本体の内部に通過させることができる。
【0020】
図5〜6は、フィルターカートリッジ12をマスク本体14に取り付けるための別の実施形態を示している。この実施形態では、レセプタクル15はマスク本体14と一体に形成されている。カートリッジ12は、レセプタクル15の内部に配置されたカートリッジ取り付け機構の解除可能なクリップと嵌合するループ53を有している。フィルターカートリッジ12を取り外すためには、解除ボタン54を押して内部クリップをカートリッジループ53から取り外すことができる。この実施形態では、きれいな空気は、フィルターカートリッジ12の前側面34の開口部42から、レセプタクル15の隣接開口部46’を通り、更にマスク本体14の内部ガス空間内に通過する。この実施形態では、開口部42は開口部46’と対向しており、レセプタクル15をマスク本体に取り付けるためにバヨネット嵌め機構を使用していない。空気は、マスク本体内部に流入するためにバヨネット嵌め機構の開口部も通過しない。空気は開口部からレセプタクル内、更にマスク本体の内部ガス空間につながる通路に直接通過する。
【0021】
図7〜15は、本発明に基づいてフィルターカートリッジ12をレセプタクル15に取り付け、レセプタクル15から取り外すための手段の別の実施形態を示している。
図7〜9に示される実施形態では、レセプタクル15は、フィルターカートリッジ12をレセプタクル15から取り外すために使用者が引っぱる可動タブ55を含む取り付け機構を有している。タブ55がレセプタクル15の内側面56(
図8)から遠ざかる方向に引かれると、固定タブ58が内側に引っ込んで、フィルターカートリッジ12の挿入端部40に配置された、突出したリップ60(
図9)から取り外される。
図10〜12は、互いに向かって押すことで、突出したフランジ64を、フィルターカートリッジ12の第1の端部40に配置されたそれぞれのリップ66(
図12)から取り外すことができる、1個以上のタブ62をレセプタクル15の両側面に有する実施形態を示している。
図13〜15は、フィルターカートリッジ/レセプタクル12/15嵌合機構が、レセプタクル15上のラッチ68を含む実施形態を示しており、ラッチ68を開くことによって嵌合面70を、フィルターカートリッジ12の第1の端部40に配置されたリップ72から取り外すことができる。フィルターカートリッジ12をレセプタクル15に挿入すると、リップ72により、リップ72がラッチ70の下を通過するまでラッチが外側に押される。カートリッジが所望の位置に配置されると、ラッチ70がリップ72に嵌まり、カートリッジ12の第1の端部40がレセプタクル15内に固定される。他の実施形態と同様、この嵌合機構は、適切な嵌合いが得られたことを使用者に知らせるために、可聴のカチッという音を生じるようにばね付勢することができる。可聴のカチッという音に加えるか、又はその代わりに、適切な固定を示すための手段は、例えばフラッグ又はカラーマーカーなどの目に見える指標とすることもできる。
【実施例】
【0022】
図5に示されるフィルターカートリッジに似た、ループと、レセプタクル、クリップ、及び解除ボタンを含む取り付け機構とを有するフィルターカートリッジを製造した。ループ、レセプタクル、クリップ、及びボタンは、ラピッドプロトタイプステレオリソグラフィーを用いて作製した。フィルターカートリッジには、ハウジング側壁の外形に一致した形状に切断した複数の濾材層を収容した。カートリッジは、周囲空気が濾材を通過した後、内部ガス空間に流入するために通過する第1及び第2の主面を有していた。濾材は、4層の粒子状濾材と、4層のガス状濾材とを含んでいた。各濾材層は、ホットメルト接着剤を用いて厚紙製のハウジング側壁に対して縁部に沿ってシールした。第1及び第2の主面はそれぞれ、69cm
2の露出表面積を有していた。ループ本体は、カートリッジの濾材内において、カートリッジ側面に配置された開口部から突出したループ構造によって挟み込んだ。クリップ及び解除ボタンをレセプタクル内で組み立てて、取り付け機構を構成した。レセプタクルをマスク本体に取り付けた。次いで、組み立てたレスピレーターを装着し、嵌合可能な側部をレセプタクルの奥に向かって滑り込ませることによってフィルターカートリッジをレセプタクル内に差し込んだ。嵌合状態では、フィルターカートリッジの第2の主面は、その最も近い間隔でマスク本体から0.5mmの間隔を隔てていた。次いで解除ボタンを押すことにより、フィルターカートリッジをレセプタクルから取り外した。この操作を、異なる被験者によって行ったところ、本発明によって新規で、しっかりとした、便宜のよいフィルターの取り付け及び取り外しの方法が提供されることが示された。