特許第6247256号(P6247256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247256誤操作防止装置及びこれを用いた電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247256
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】誤操作防止装置及びこれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/02 20060101AFI20171204BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01H9/02 E
   H04R1/02 106
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-139912(P2015-139912)
(22)【出願日】2015年7月13日
(65)【公開番号】特開2017-22030(P2017-22030A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】齋木 深
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−073211(JP,A)
【文献】 特開2011−191748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/02
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部を遮蔽する閉位置と前記操作部を露出させる開位置との間で変位可能な蓋体と、
前記閉位置にある状態で前記蓋体が前記開位置に向けて変位することを規制するロック機構と、
前記蓋体が前記閉位置にある状態で、互いに異なる第1の方向及び第2の方向への2つの操作を同時に受けることで前記ロック機構による前記蓋体の変位の規制を解除する解除機構とを備え、
前記蓋体は、
前記解除機構に対する前記第1の方向への操作を受けてスライド可能なスライド部位を有しており、同一の前記スライド部位上においてさらに前記解除機構に対する前記第2の方向への操作を同時に受けることが可能であることを特徴とする誤操作防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誤操作防止装置において、
前記解除機構は、
前記第の方向への操作を受けている間に、重ねて前記第の方向への操作を受けることで前記ロック機構による前記蓋体の変位の規制を解除することを特徴とする誤操作防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の誤操作防止装置において、
前記解除機構は、
前記第1の方向及び第2の方向のうち、少なくとも一方への操作に対して抗力を発生させる付勢部材を含むことを特徴とする誤操作防止装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の誤操作防止装置において、
前記解除機構は、
前記蓋体に前記スライド部位として設けられ、前記第1の方向への操作を受けると、前記ロック機構による規制が有効となる初期位置から解除位置に変位して規制を解除する解除部材と、
前記解除部材に設けられ、前記第2の方向への操作を受けていない間は前記解除部材が前記初期位置から前記解除位置に変位することを制止する一方、前記第2の方向への操作を受けると前記解除部材が変位することを許容する制止部材と
を含むことを特徴とする誤操作防止装置。
【請求項5】
操作部を収容する本体を備え、
請求項1から4のいずれかに記載の誤操作防止装置を用いて前記本体の使用時に前記操作部に対する誤操作がなされることを防止する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部が誤操作されることを防止する誤操作防止装置及びこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の蓋が意図せず開いてしまうことを防止する先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術は、電子機器に内蔵したバッテリの蓋を第1ロック部材により閉状態でロックしつつ、第1ロック部材を閉位置と開位置との間で移動可能とし、第1ロック部材が閉位置にあれば蓋がロックされて開かず、第1ロック部材が開位置に移動するとロックが解除されて蓋が開く構造となっている。
【0003】
その上で先行技術は、第1ロック部材が閉位置から開位置へ移動するのをさらに規制部材によって規制し、第2ロック部材によって規制部材を退避位置に切り替えた上でなければ、第1ロック部材が開位置に移動しない構造を採用している。これにより、蓋を閉じた状態で第1ロック部材が不用意に操作され、意図せずロックが解除されて蓋が開いてしまうのを防止できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−191748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した先行技術は、第1ロック部材を開位置に移動させると蓋のロックが解除されるが、第1ロック部材を開位置に移動させるためには別の第2ロック部材を移動させて規制部材を退避位置に切り替える必要があり、いわゆる2重のロックを蓋に施したものと考えられる。このように、蓋の開放が2重にロックされていれば、電子機器の使用中にユーザが誤ってバッテリを取り出してしまうといった誤操作の防止に一応は有用である。
【0006】
しかしながら、そもそも第2ロック部材が解除位置に切り替えられたままであれば、その時点で第1ロック部材の操作に対しては何らの規制も作用しないため、相変わらず不用意な操作を防ぐ手立てがなく、第1ロック部材を容易に開位置へ移動させることができてしまうその結果、容易に蓋が開いてしまい、ユーザが誤ってバッテリを取り出してしまうといった誤操作が生じることになる。
【0007】
しかも先行技術においては、第1ロック部材や第2ロック部材が常に電子機器の外面にて操作可能に配置されているため、たとえ2重のロックを施したといっても、常に不用意な操作の危険にさらされていることは否めない。このような状況にあっては、いくら蓋のロックを強化したとしても、誤操作の防止としては不十分である。
【0008】
そこで本発明は、より確実に誤操作を防止することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
【0010】
第1に本発明は、誤操作防止装置を提供する。
誤操作防止装置は、「蓋体」、「ロック機構」及び「解除機構」を備えた構成である。このうち「蓋体」は、閉位置と開位置との間で変位可能であるが、閉位置では操作部を遮蔽している。これにより、「蓋体」が閉位置ある状態で操作部が露出することはなく、その間に誤操作が生じることを確実に防止することができる。
【0011】
「蓋体」による操作部の遮蔽は、「ロック機構」によってより強固なものとなる。すなわち、「ロック機構」は、「蓋体」が閉位置にある状態で、これが開位置に向けて変位することを規制している。したがって、「蓋体」が閉位置にある間は、「ロック機構」による規制が解除されない限り操作部に対する誤操作は起こり得ない。
【0012】
「ロック機構」による規制は、「解除機構」によって解除することができる。すなわち、「解除機構」は2つの操作を同時に受けたときにのみ、「ロック機構」による「蓋」の変位の規制を解除することができる。このとき、「解除機構」に対する2つの操作は、「第1の方向」及び「第2の方向」という互いに異なる方向への操作であるから、いずれか一方向への操作を受けただけでは「ロック機構」による規制が解除されない。
【0013】
また、「解除機構」は、互いに方向が異なる2つの操作を同時に受けない限り、「ロック機構」による蓋体の変位の規制を解除することはない。したがって、2つの操作を別々に受けたとしても、それだけでは「ロック機構」による蓋体の変位の規制が解除されないし、2つの操作を時間的に前後して受けたとしても、やはり「ロック機構」による蓋体の変位の規制が解除されない。これにより、操作部に対する誤操作の防止がより一層に強化される。
【0014】
本発明において、「解除機構」は、第1の方向への操作を受けている間に、そこへ重ねて(同時に)第2の方向への操作を受けた場合にのみ、「ロック機構」による蓋体の変位の規制を解除することができる態様が好ましい。
【0015】
上記の態様であれば、先に第の方向への操作があり、そこへ第の方向への操作が加わることによって、はじめて「2つの操作を同時に受けた」ことになる。この場合、誤操作の防止を図りつつ、正規の目的で操作部を操作する際は、わざわざ2つの操作を一時に開始しなくてもよいため、操作時の利便性を高めることができる。
【0016】
また「解除機構」は、「付勢部材」を含む態様とすることができる。「付勢部材」は、「解除機構」が受ける2つの操作について、第1の方向及び第2の方向の少なくとも一方への操作に対して抗力を発生させるものである。
【0017】
上記の態様であれば、仮に一方向への操作が不用意に(使用者による無意識で)なされたとしても、「付勢部材」の抗力によってその操作をキャンセルすることができる。これにより、「ロック機構」による規制が不用意に解除されることがなく、操作部に対する誤操作をより確実に防止することができる。
【0018】
「解除機構」は、「解除部材」及び「制止部材」を含む態様であってもよい。このうち「解除部材」は、第1の方向への操作を受けると、「ロック機構」による規制が有効となる初期位置から解除位置に変位して規制を解除する。また「制止部材」は、第2の方向への操作を受けていない間は「解除部材」が初期位置から解除位置に変位することを制止する一方、第2の方向への操作を受けると「解除部材」が変位することを許容する。
【0019】
この場合、通常、第1の方向への操作によって「解除部材」を初期位置から解除位置に変位させれば、「ロック機構」による規制が解除されるが、「解除部材」による変位は「制止部材」によって制止されている。このため、「ロック機構」による規制を解除するためには、第2の方向への操作によって「制止部材」による制止を解除しなければならない上、その間に(第2の方向への操作と同時に)第1の方向への操作を行って「解除部材」を初期位置から解除位置に変位させる必要がある。これにより、不用意に「蓋体」が開位置に変位することがないので、確実に操作部に対する誤操作を防止することができる。
【0020】
また第2に本発明は、電子機器を提供する。
本発明の電子機器は、操作部を収容する本体を備えており、上述した誤操作防止装置を用いて本体の使用時に操作部に対する誤操作がなされることを防止するものである。
【0021】
本発明の電子機器によれば、使用時に操作部が本体の外側に露出していないので、基本的に誤操作が起こりにくい。さらに、誤操作防止装置によって操作部の露出が抑えられるので、確実に誤操作を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、より確実に誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】誤操作防止装置を用いた電子機器の一例であるハンドマイクを示す斜視図である。
図2】スイッチカバーのロック機構を示す断面図(図1中のII−II線に沿う断面図)である。
図3】スイッチカバーの開放状態を示す斜視図である。
図4】スイッチカバーを単独で示す正面図である。
図5】ロック部品によるスライドノブの変位が制止された状態を示すスイッチカバーの部分背面図である。
図6】ロック部品の操作態様を示すスイッチカバーの正面図である。
図7】スライドノブの変位が許容された状態を示すスイッチカバーの部分背面図である。
図8】実際にスイッチカバーのロックが解除された状態を示す正面図である。
図9】スライドノブが変位した状態を示すスイッチカバーの部分背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、誤操作防止装置が適用された電子機器の例として、ハンドマイクを挙げているが、本発明の電子機器はこの例に限られるものではない。
【0025】
図1は、誤操作防止装置を用いた電子機器の一例であるハンドマイク100を示す斜視図である。このハンドマイク100は、例えば特定の周波数帯を用いて図示しない音響設備と無線通信し、音声信号を送信するワイヤレスマイクである。
【0026】
ハンドマイク100は、大きく分けて本体102及びマイクヘッド104から構成される。本体102は略円筒形状をなしており、その外径と長さは、司会者、演者等の使用者が片手で容易に把持することができる程度に設定されている。またマイクヘッド104は、その先端部分に概ね球形状をなした風防110を有しており、その全体がネック111を介して本体102の一端(上端)に連結されている。特に図示していないが、マイクヘッド104にはマイクロホンが内蔵されており、本体102には電子部品を実装した回路基板が内蔵されている。
【0027】
その他、本体102にはバッテリ106が取り付けられている。バッテリ106は着脱式であり、装着時には本体102と一体になって外面を形成する。また、本体102の他端(下端)部にはアンテナ108が形成されている。
【0028】
〔誤操作防止装置〕
図1に示されるハンドマイク100は、その外面の露出した位置にスイッチ等の操作部が一切設けられていない。すなわち、本体102の他端(下端)部にはスイッチカバー120が設けられており、ハンドマイク100のスイッチ類は通常、スイッチカバー120で遮蔽されている。スイッチカバー120は2つのヒンジ122を有しており、これらヒンジ122を介して本体102に開閉可能に支持されているが、通常は本体102に対してロックされているため、ハンドマイク100の使用中にスイッチカバー120が開かない限り、誤って操作部が操作されることはない。また、ハンドマイク100は通常、本体102の上部分(長手方向でバッテリ106の位置)を使用者が把持することを想定してデザインされており、スイッチカバー120自体が本体102の下端部に位置しているため、公演・講演中に使用者がスイッチカバー120付近に手を触れることはなく、それによってスイッチカバー120が不用意に開かれることをも防止している。
【0029】
なお、スイッチカバー120にはスライドノブ124が設けられており、このスライドノブ124をスライド操作すると、ロックが解除されてスイッチカバー120を開くことができる。スイッチカバー120を開くと、本体102に内蔵された操作部が露出し、そこではじめて各種の操作(例えば、電源ON/OFF、チャンネル設定、マイク特性設定、感度設定、バッテリ106の取り外し等)が可能となるが、このような操作を行うのは使用者たる司会者や演者ではなく、音響技術者(いわゆるスタッフ)である。ただし、本実施形態では、たとえスライドノブ124に使用者が意図せず触れたとしても、不用意にロックが解除されない構造を採用している。すなわち、スライドノブ124には比較的小型のロック部品126が付属しており、このロック部品126を操作した状態でなければ、スライドノブ124を操作することができない構造である。また、スイッチカバー120にはロックする機構部品が内蔵されているが、機構部品は押さえ板128で覆われている。以下、誤操作防止装置の構成についてより詳細に説明する。
【0030】
〔蓋体〕
スイッチカバー120は、本体102の長手方向に延びる舌片形状をなしており、上記のように2つのヒンジ122を介して本体102に支持(連結)されている。本実施形態では、本体102の下端側にヒンジ122が位置するため、ハンドマイク100を立てた状態でスイッチカバー120が開かれる際は、ちょうど跳ね橋のようにして倒れ込む格好となる。ただし、スイッチカバー120の開閉方向はこの例に限らず、長手方向の逆側に開閉してもよいし、幅方向に開閉してもよい。あるいは、スイッチカバー120が本体102に対してスライド式に開閉したり、着脱式に開閉したりしてもよい。
【0031】
〔ロック機構〕
図2は、スイッチカバー120のロック機構を示す断面図(図1中のII−II線に沿う断面図)である。ここでは、図2中(A)にスイッチカバー120がロックされた状態を示し、図2中(B)にロックが解除された状態を示している。
【0032】
〔ロック状態〕
図2中(A):スイッチカバー120には、幅方向で一対をなすラッチ部品130,132が内蔵されており、これらラッチ部品130,132は、間にコイルばね134を挟んで配置されている。コイルばね134は圧縮ばねであり、図2中(A)に示すロック状態では、コイルばね134がその反発力で一対のラッチ部品130,132をスイッチカバー120の幅方向でみて両外側に押し出している。また、一対のラッチ部品130,132は、それぞれロック爪130a,132aを有しており、これらロック爪130a,132aはスイッチカバー120の幅方向でみた両外側に向けて延びている。一方、スイッチカバー120の幅方向でみた両側縁部には、それぞれ貫通孔120bが形成されており、これら貫通孔120bは、それぞれ対応するロック爪130a,132aをスライド自在に挿通させることができる大きさと形状を有している。
【0033】
上記のように、コイルばね134が一対のラッチ部品130,132を押し出した状態では、ロック爪130a,132aがそれぞれ貫通孔120bを通じてスイッチカバー120の両側面から突出した状態となる。一方、本体102の外殻を構成する外装カバー102aには、スイッチカバー120に対応した開口(参照符号なし)が形成されており、この開口は、スイッチカバー120の外形を受け入れ可能な大きさ及び形状を有している。そして外装カバー102aには、一対のロック爪130a,132aにそれぞれ対応する位置に掛止部102bが形成されており、掛止部102bは開口の縁を段付きに抉るようにして外装カバー102aの内側に形成されている。
【0034】
このように、スイッチカバー120が閉じられた状態(閉位置)にあると、一対のロック爪130a,132aの先端部が掛止部102bに引っ掛かり、スイッチカバー120が本体102に対してロックされた状態となる。この状態ではスイッチカバー120が開かれることはなく、本体102に収容された操作部(図示されていない)に対する操作は不能になる。
【0035】
〔ロック解除状態〕
図2中(B):コイルばね134の反発力に抗して一対のラッチ部品130,132がスイッチカバー120の内側(中心寄り)に引き込まれ、ロック爪130a,132aと掛止部102bとの引っ掛かりが解消すると、スイッチカバー120のロックが解除される。このロック解除状態では、図示しない板ばねによってスイッチカバー120が開方向へ押し出され、その開放を容易にする。これにより、本体102に収容された操作部が露出するので、正規の目的で各種の操作が可能となる。なお、図示の都合上、コイルばね134は圧縮されていない状態で示されているが、実際には一対のラッチ部品130,132が引き込まれた分だけコイルばね134は圧縮された状態にある。
【0036】
図3は、スイッチカバー120の開放状態を示す斜視図である。
図3中(A):上記のように、ロックが解除された状態でスイッチカバー120の開放が可能となる。また、スイッチカバー120の開放に伴い、本体102に収容された操作部として、ここではスイッチモジュール150が露出した状態となる。なお、スイッチカバー120の開放中はコイルばね134の反発力で一対のラッチ部品130,132が再度スイッチカバー120の両外側に押し出され、一対のロック爪130a,132aが両側面から突出した状態となる。
【0037】
〔操作部〕
ここで、スイッチモジュール150には、例えば電源スイッチ152やトグルスイッチ154、LCDパネル156等が一体化されている。電源スイッチ152は、ハンドマイク100の電源をON/OFFするものであり、トグルスイッチ154は、ハンドマイク100の各種設定を変更するものである。また、電源ON中はLCDパネル156にバッテリ106の残量や各種設定のステータス等が表示される。
【0038】
スイッチモジュール150の他にも、本体102にはバッテリ爪158が収容されており、このバッテリ爪158は、本体102からバッテリ106を取り外す際にスタッフが操作するものである。バッテリ爪158もまた、スイッチカバー120を開放することによって露出し、その操作が可能となる。言い換えれば、スイッチカバー120を開放しない限り、ハンドマイク100からバッテリ106を取り外すことができないので、使用中に誤ってバッテリ106が脱落してハンドマイク100が使用不能に陥ることはない。
【0039】
図3中(B):スイッチカバー120は、ヒンジ122による可動範囲内で任意に開放することができる。すなわち、スイッチカバー120を大きく開放した状態では、本体102の開口面に一部でもスイッチカバー120が重ならないため、スイッチモジュール150やバッテリ爪158等に対する操作がより容易になる。この他にも、本体102にはUSBポート160(接続インタフェース)が収容されており、スイッチカバー120を開放した状態で、USBポート160にケーブルを接続し、PC等からのバッテリ106への給電や内蔵する電子回路とのシリアル通信が可能になる。
【0040】
2つのヒンジ122の中間には、本体102に上述した板ばね123が設けられており、ロック状態が解除されると、スイッチカバー120は板ばね123の復元力により一定角度だけ開方向に持ち上げられる。なお、スイッチカバー120を再び閉じる際は、板ばね123の復元力に抗してスイッチカバー120を閉位置まで押し込むと、一対のロック爪130a,132aが掛止部102bに引っ掛かってスイッチカバー120をロックする。
【0041】
〔解除機構〕
ここで、図3中(B)には、スイッチカバー120の背面とともに上述したロック部品126の背面形状が示されている。ロック部品126はスイッチカバー120の前面側にて操作されるものであるが、ロック部品126はその背面側の構造を用いてスライドノブ124のロックとその解除を行っている。また、スイッチカバー120の背面には、ロック部品126によるロックとその解除をなすためのL字孔120aが形成されている。以下、ロック部品126及びL字孔120aについてさらに詳しく説明する。また、合わせてスライドノブ124によるラッチ部品130,132のロックとその解除をなすための構成についても説明する。
【0042】
図4は、スイッチカバー120を単独で示す正面図である。同図では、スイッチカバー120から押さえ板128が取り除かれた状態で示されている(これ以降も同様。)。
【0043】
〔解除部材〕
上記のスライドノブ124は、スイッチカバー120に対し、その長手方向(図4でみて上下方向)に一定の範囲内をスライド自在に支持されている。スイッチカバー120におけるスライドノブ124の配置は、一対のラッチ部品130,132を幅方向とすると、これらに対しT字形をなすようにして長手方向に配置されている。またスライドノブ124は、その外面に凹凸が施されることで、操作者の指に対する引っ掛かりを与え、そのスライド操作を容易にしている。
【0044】
上記のように、ラッチ部品130,132及びコイルばね134は通常、押さえ板128に覆われているが、スライドノブ124もまた、その長手方向の一端部(図4でみて上端部)が押さえ板128に覆われている。すなわち、スライドノブ124の一端部にはV字形状のガイドエッジ124aが形成されており、このガイドエッジ124aは、スライドノブ124のスライド方向(上方向)に末広がりとなっている。スライドノブ124は、ガイドエッジ124aにて一対のラッチ部品130,132に対して機構的に連結されることで、一端部が押さえ板128に覆われた状態にある。
【0045】
一方、一対のラッチ部品130,132には、これらが対向する部位にそれぞれ鉤爪部130b,132bが形成されている。これら鉤爪部130b,132bは、スライドノブ124のガイドエッジ124aと対向する端縁がちょうどガイドエッジ124aのV字形状に合わせて斜めに形成されている。そして、一対のラッチ部品130,132は、それぞれ鉤爪部130b,132bの斜めの端縁にてスライドノブ124のガイドエッジ124aに接しており、この状態で互いに機構的に連結されている。
【0046】
〔初期位置〕
図4に示される初期位置では、スライドノブ124がラッチ部品130,132から最もはなれており、この初期位置でスライドノブ124は、ラッチ部品130,132によるスイッチカバー120のロックを有効に機能させている。これは、スライドノブ124が初期位置にある場合、末広がりのガイドエッジ124aと接する鉤爪部130b,132bが互いに最も離れた位置まで離隔するので、上記のように一対のロック爪130a,132aがスイッチカバー120の両側面から外側に突出し、スイッチカバー120をロックすることができる。
【0047】
〔解除位置〕
図4には示されていないが、この状態からスライドノブ124を一対のラッチ部品130,132に近接させる方向(第1の方向)にスライド操作すると、V字型のガイドエッジ124aに沿って鉤爪部130b,132bが相対的に内側(谷側)へ案内される結果、一対のラッチ部品130,132が互いに近接する方向へ移動し、ロック爪130a,132aがスイッチカバー120(貫通孔120b)内に引き込まれることになる。これにより、スイッチカバー120のロックが解除されることとなるが、本実施形態では、スライドノブ124だけを単独でスライド操作することはできず、同時にロック部品126を操作していなければ、スイッチカバー120のロックが解除されない構造を採用している。
【0048】
〔制止部材〕
ロック部品126は、スライドノブ124に比較して小型である。すなわち、ロック部品126は、図4に示される正面視では矩形状をなしているが、その一辺の長さはスライドノブ124の幅の半分以下ほどである。またロック部品126は、その大部分がスライドノブ124の背後に隠れた状態で、スライドノブ124に対してその幅方向に一定範囲内をスライド自在に支持されている。逆に、ロック部品126はスライドノブ124に対してその他の方向(例えば長手方向)へのスライドは拘束されている。スライドノブ124には、その前面に溝120cが形成されており、この溝120cを通じてロック部品126の一部が前面側に突出している。このためロック部品126は、スライドノブ124の前面側においてその突出した部分を操作することにより、スライドノブ124の幅方向(第2の方向)にスライド操作することができる。なお、スライドノブ124がスイッチカバー120の長手方向にスライド操作されると、ロック部品126もまたスライドノブ124とともに長手方向へ移動することになるが、これはロック部品126そのものが操作される方向ではない。
【0049】
〔付勢部材(モーメンタリ動作)〕
上記のように、ロック部品126はスライドノブ124の幅方向にスライド操作することができるものであるが、その際に、ある程度の抗力を生じる構造(モーメンタリ動作)を採用している。具体的には、スライドノブ124の背面側にはトーションばね136が配置されており、このトーションばね136は、その復元力でロック部品126をスライドノブ124の幅方向の一側端側へ押し付けている。このため図4に示されるように、通常、ロック部品126は、その突出する部分が溝120cの一端に接する位置に保持されている。
【0050】
図5は、ロック部品126によるスライドノブ124の変位が制止された状態を示すスイッチカバー120の部分背面図である。上記のように、スイッチカバー120の背面にはL字孔120aが形成されている。L字孔120aは、スイッチカバー120の背面視で略L字形状をなしているが、L字の内側部分は斜めに面取り(カット)されている。ロック部品126は、その背面側ではL字孔120a内に突出する部位を有しており、上記のように、トーションばね136によってロック部品126が前面側で溝120c内に突出する部分が一端に接する位置に保持された状態では、L字孔120a内でもその突出する部位が一端に接している。この状態で、ロック部品126はL字孔120a内をスイッチカバー120の幅方向に移動することはできるが、長手方向への移動は規制されていることがわかる。
【0051】
〔スライドノブの制止〕
したがって、ロック部品126に対する操作がなされていない状態で、スライドノブ124だけをスライド操作しようとしても、その背面側ではロック部品126がL字孔120a内で長手方向へ移動することができないため、結果的にスライドノブ124の変位は制止されることになる。
【0052】
〔ロック部品の操作〕
図6は、ロック部品126の操作態様を示すスイッチカバー120の正面図である。ロック部品126の溝120c内に突出する部分を通じ、ロック部品126全体をスライドノブ124の幅方向(第2の方向)にスライド操作すると、ロック部品126は、それまでトーションばね136により保持されていた位置から反対側へ移動する。このとき、トーションばね136にねじり力が作用するので、トーションばね136は、ロック部品126のスライド操作に対して抗力を発生させることができる。したがって、一時的にロック部品126をスライド操作しただけでその力を抜く(操作を止める)と、トーションばね136の抗力によってロック部品126は元の位置(図4図5)に戻されることになる。
【0053】
図7は、スライドノブ124の変位が許容された状態を示すスイッチカバー120の部分背面図である。上記のように、ロック部品126がスライド操作を受け、その操作が保持されていると、ロック部品126がL字孔120a内で突出する部位が一端から離れる。これにより、それまでロック部品126はL字孔120a内で幅方向にしか移動が許容されていなかったが(図5)、今度はL字孔120a内での長手方向への移動も許容された状態になることがわかる。ただし、一時的にロック部品126をスライド操作しただけでその力を抜く(操作を止める)と、トーションばね136の抗力によってロック部品126は元の位置(図5)に戻されることになり、再び長手方向への移動が規制される。
【0054】
〔ロック解除〕
図8は、実際にスイッチカバー120のロックが解除された状態を示す正面図である。上記のように、ロック部品126を幅方向(第2の方向)にスライド操作しつつ、その操作を維持したままの状態では、スライドノブ124を長手方向(第1の方向)にスライド操作することができる。このように、ロック部品126に対する幅方向へのスライド操作に加えて、そこにスライドノブ124に対する長手方向へのスライド操作が重ねて行われ、2つの操作が同時になされると、スイッチカバー120のロックを解除することができる。具体的には、スライドノブ124が一対のラッチ部品130,132に近接させる方向(第1の方向)にスライド操作されることで、V字型のガイドエッジ124aに沿って鉤爪部130b,132bが相対的に内側(谷側)へ案内される結果、一対のラッチ部品130,132が互いに近接する方向へ移動し、ロック爪130a,132aがスイッチカバー120(貫通孔120b)内に引き込まれることになる。これにより、本体102に対するスイッチカバー120のロックが解除されることとなる。
【0055】
図9は、スライドノブ124が変位した状態を示すスイッチカバー120の部分背面図である。上記のように、ロック部品126がスライド操作を受け、その操作が保持された状態でスライドノブ124がスライド操作されると、ロック部品126の突出する部位がL字孔120a内で長手方向に移動する。なお、この状態でロック部品126に対する操作がなくなったとしても、既にスライドノブ124が初期位置から解除位置(図8)に変位しているので、スイッチカバー120のロック解除は有効のままとなる。
【0056】
この後、スイッチカバー120を開放した状態でスライドノブ124に対する操作がなくなると、コイルばね134の反発力で一対のラッチ部品130,132が互いに離れる方向に移動する。これに伴い、相対的に一対のラッチ部品130,132がそれぞれ鉤爪部130b,132bを介してスライドノブ124を押し返すので、結果的にスライドノブ124が初期位置に復帰する。また、このときロック部品126もトーションばね136による反発力で元の位置(図4図5)に復帰するので、以後はロック部品126を操作しない限りスライドノブ124の移動は制止されることになる。
【0057】
上述した一実施形態によれば、以下の有用性が得られる。
スイッチカバー120は、スライドノブ124をスライド操作するだけではロックを解除することができず、スライドノブ124の操作とは異なる方向(直交する方向)にロック部品126を操作した上で、2つの操作を同時に行わなければロックが解除されない。したがって、ハンドマイク100の使用中に司会者や演者等が無意識にスライドノブ124に触れることがあったとしても、それだけで不用意にスイッチカバー120のロックが解除されることはない。これにより、操作部(スイッチモジュール150等)に対する誤操作を確実に防止し、使用時の事故(音声の消失等)をなくすことができる。
【0058】
また、ロック部品126を一時的に操作しただけではスライドノブ124をスライド操作することができず、スライドノブ124を操作するためには、ロック部品126の操作を維持(継続)している必要がある。これにより、単発で2つの操作が順番に行われただけでスイッチカバー120のロックが解除されてしまうことを防止することができ、より確実に誤操作をなくすことができる。
【0059】
また、ロック部品126そのものが操作しにくい配置となっており、それだけスライドノブ124のロックを解除することを困難にしている。すなわち、司会者・演者等がハンドマイク100を把持しやすい箇所は本体102のバッテリ106を装着した部分であり、通常は本体102の下部に位置するスイッチカバー120に触れることはないが、加えてロック部品126をできるだけスイッチカバー120の下端側に配置することにより、より操作をしにくくしている。これにより、使用中は不用意にロック部品126に触れることがなく、より一層誤操作を防止することができる。
【0060】
本発明は上述した一実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施可能である。例えば、スライドノブ124やロック部品126の操作方向は、互いに逆向きであってもよい。また、スライドノブ124に対する操作がスライド方向であっても、ロック部品126に対する操作は押し込み方向、引っ張り方向、回転方向等でもよいし、スライドノブ124自体をスライド以外の操作としてもよい。
【0061】
一実施形態では、電子機器の例をハンドマイク100としているが、電子機器は携帯情報端末やパーソナルコンピュータ、タブレット端末、デジタルカメラ等でもよい。
【0062】
その他、図示とともに挙げたハンドマイク100の形態や各部の構造はあくまで好ましい一例であり、基本的な構造に各種の要素を付加し、あるいは一部を置換しても本発明を好適に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0063】
100 ハンドマイク
102 本体
102a L字孔
104 マイクヘッド
120 スイッチカバー
124 スライドノブ
126 ロック部品
130,132 ラッチ部品
130a,132a ロック爪
102b 掛止部
134 コイルばね
136 トーションばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9