特許第6247265号(P6247265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247265
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】工具交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20171204BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20171204BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B23Q3/157 F
   B23Q3/155 F
   B23Q17/00 E
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-190887(P2015-190887)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-64822(P2017-64822A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2016年12月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】五十部 学
(72)【発明者】
【氏名】稲口 雄三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
【審査官】 宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−284847(JP,A)
【文献】 特開2013−071203(JP,A)
【文献】 実開平05−074738(JP,U)
【文献】 特開平04−101742(JP,A)
【文献】 特開昭61−050735(JP,A)
【文献】 米国特許第04117586(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/157−3/155
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸に工具を着脱可能な旋回式の工具マガジンと、前記工具マガジンの旋回動作及び主軸への工具の着脱動作を制御する工具交換制御手段とを備えた工作機械の工具交換装置において、
前記工具マガジンの回転可能範囲を設定する設定手段を備えると共に、
前記工具交換制御手段は、工具マガジン旋回指令の指令回転角度が前記設定手段で設定された回転可能範囲内か判別する判別手段と、該判別手段で回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、工具交換動作を停止させる手段とを有することを特徴とする工具交換装置。
【請求項2】
前記工具交換制御手段は、前記判別手段で回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、前記工作機械の動作を一時停止する指令を、前記工作機械を制御する制御装置に出力する請求項1に記載の工具交換装置。
【請求項3】
前記設定手段で設定される工具マガジンの回転可能範囲は、工具マガジンを正方向に回転させる上限角度及び逆方向への回転させる下限角度として設定され、前記判別手段は、旋回可能方向をも判別し、前記工具交換制御手段は、前記判別手段で判別された旋回可能方向に前記工具マガジンを回転させて、工具マガジン旋回指令で指令された指令回転角度に前記駆動マガジンを旋回させる請求項1又は請求項2に記載の工具交換装置。
【請求項4】
前記工具交換制御手段及び設定手段は前記工作機械を制御する制御装置内に設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の工具交換装置。
【請求項5】
前記工作機械を制御する制御装置で工作機械の加工プログラムを先読みし、先読みで得られた工具マガジン旋回指令に基づいて、前記判別手段は、指令回転角度が回転可能範囲内か判別し、回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、前記工作機械の動作を一時停止する指令を、前記工作機械を制御する制御装置に出力する請求項4に記載の工具交換装置。
【請求項6】
前記工作機械を制御する制御装置は、加工プログラムをチェックするプログラムチェック手段を備え、前記判別手段は、前記プログラムチェック手段によるプログラムチェック時に工具マガジン旋回指令の指令回転角度が回転可能範囲内か判別し、回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、前記工作機械を制御する制御装置の表示手段に回転可能範囲外の旋回指令である旨表示する請求項4又は請求項5に記載の工具交換装置。
【請求項7】
前記工具交換制御手段は、前記工具マガジンの回転可能範囲を設定する設定手段に代えて、工具の工具長データに対応する工具マガジンの干渉領域若しくは回転可能範囲のデータを記憶するデータ格納手段と、工具マガジンに装着された工具長より、前記データ格納手段に記憶されたデータに基づいて工具マガジンの回転可能範囲を算出し設定する手段とを有す請求項1乃至6のいずれか1項に記載の工具交換装置。
【請求項8】
表示手段を備え、前記工具交換制御手段は、前記判別手段で回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、前記表示手段によりユーザにその旨を知らせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の工具を保持する旋回式の工具マガジンを備えた工作機械の工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回式の工具マガジンを備えた工具交換装置においては、工具マガジンの円周面上に複数の工具把持部(工具ポット)を備え、該各工具把持部に工具を保持し、工具マガジンを旋回して工具収容位置を割り出し、工作機械の主軸に工具を取り付け、取り外しができるようにしている。
工具マガジンからの工具取り出し時等において、取り出し工具が、他の部材と干渉しないようにしたものは種々開発されている(特許文献1、2等参照)。
また、工具マガジンを主軸軸線に対して傾けることによって、工具マガジンの旋回中、該マガジンに収容された工具と他のものとの干渉の発生を最小限に抑えるようにした工具交換装置も特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−228767号公報
【特許文献2】特開2013−205975号公報
【特許文献3】特開平8−118181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工具マガジンには、種々の工具が収容されるものであるが、工具マガジンは、工具を割り出すとき旋回するものであるから、工具マガジンが旋回するとき収容した工具が他のものと干渉するようでは危険である。そのため、工具マガジンの旋回中に収容工具が工作機械の部品や治具等の他のものと干渉しないようにしなければならない。従来の工具交換装置においては、工具マガジンが旋回したとき、360度のどの位相においても他の部材との干渉が発生しないように、工具マガジンに収容する工具の工具長や工具形状を限定していた。
【0005】
しかし、工具マガジンに収容できる工具が限定されては、工作機械での加工機能が制限されることになり、好ましくない。
そこで、本発明は、工具マガジンに収容する工具を制限することなく、かつ、収容工具と他のものとの干渉発生を防止して安全に使用可能な工具交換装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
工作機械の主軸に工具を着脱可能な旋回式の工具マガジンと、前記工具マガジンの旋回動作及び主軸への工具の着脱動作を制御する工具交換制御手段とを備えた工作機械の工具交換装置において、請求項1に係る発明は、前記工具マガジンの回転可能範囲を設定する設定手段を備えると共に、前記工具交換制御手段は、工具マガジン旋回指令の指令回転角度が前記設定手段で設定された回転可能範囲内か判別する判別手段と、該判別手段で回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、工具交換動作を停止させる手段とを有するものとした。
また、請求項2に係る発明は、前記判別手段で回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、前記工作機械の動作を一時停止する指令を、前記工作機械を制御する制御装置に出力するものとした。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、前記設定手段で設定される工具マガジンの回転可能範囲が、工具マガジンを正方向に回転させる上限角度及び逆方向への回転させる下限角度として設定され、前記判別手段は、旋回可能方向をも判別し、前記工具交換制御手段は、前記判別手段で判別された旋回可能方向に前記工具マガジンを回転させて、工具マガジン旋回指令で指令された指令回転角度に前記駆動マガジンを旋回させるものとした。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記工具交換制御手段及び設定手段を前記工作機械を制御する制御装置内に設けて、工作機械を制御する制御装置が工具交換制御手段を兼ねるものとした。
さらに、請求項5に係る発明は、前記工作機械を制御する制御装置で工作機械の加工プログラムを先読みし、先読みで得られた工具マガジン旋回指令に基づいて、前記判別手段は、指令回転角度が回転可能範囲内か判別し、回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、前記工作機械の動作を一時停止する指令を、前記工作機械を制御する制御装置に出力するものとした。
また、請求項6に係る発明は、前記工作機械を制御する制御装置に、加工プログラムをチェックするプログラムチェック手段を備え、前記判別手段は、前記プログラムチェック手段によるプログラムチェック時に工具マガジン旋回指令の指令回転角度が回転可能範囲内か判別し、回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、前記工作機械を制御する制御装置の表示手段に回転可能範囲外の旋回指令である旨表示するものとした。
【0009】
請求項7に係る発明は、前記工具マガジンの回転可能範囲を設定する設定手段に代えて、前記工具交換制御手段には、工具の工具長データに対応する工具マガジンの干渉領域若しくは回転可能範囲のデータを記憶するデータ格納手段と、工具マガジンに装着された工具長より、前記データ格納手段に記憶されたデータに基づいて工具マガジンの回転可能範囲を算出し設定する手段とを有すものとした。
【0010】
また、請求項8に係る発明は、請求項1乃至3に係る発明において、さらに、表示手段を設け、前記工具交換制御手段で、前記判別手段で回転可能範囲外への指令回転角度と判別されたとき、前記表示手段によりユーザにその旨を知らせるようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、従来、工具マガジンの旋回時に他のものと干渉する恐れがあるため使用ができなかった工具長や工具形状の工具も、工具マガジンの回転可能範囲を制限することによって干渉が発生しないようにしたから、安全に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における旋回式工具マガジンを有する工具交換装置を備えた工作機械の概要図である。
図2】同実施形態における工作機械及び工具交換装置を制御する制御系の概要図である。
図3】干渉発生の説明図である。
図4】工具マガジンの回転可能範囲の設定の説明図である。
図5】本実施形態において、干渉が発生する工具を各工具把持部に収容したときの回転可能範囲の説明図である。
図6】ある程度のマージンを持って回転可能範囲を設定することの説明図である。
図7】工具マガジンの回転方向と干渉の発生の説明図である。
図8】工具マガジンの旋回処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図9】工具長データと干渉範囲データを対応させた一例図である。
図10】干渉が発生する工具を工具マガジンに複数収容したときの回転可能範囲の説明図である。
図11】工具長データに基づく回転可能範囲の設定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本実施形態における旋回式の工具マガジンを有する工具交換装置を備えた工作機械の概要図である。また、図2は、この工作機械及び工具交換装置を制御する制御系の概要図である。工具交換装置1は工具マガジン11と、該工具マガジン11を駆動制御するプロセッサやメモリ等からなる工具交換制御手段12と、該工具交換制御手段12に接続された液晶やCRT等で構成される表示手段13、各種設定値を入力するためのキーボード等からなる入力手段14を備える。工具交換制御手段12は、工作機械本体3を制御する制御装置2に接続されている。この実施形態では、この制御装置としてCNC(コンピュータ数値制御装置)を用いている。CNC2は加工プログラム等により工作機械本体3を制御して被加工物に対して加工を行う。また、CNC2は該加工プログラム等より工具交換指令が読み出されれば、この指令を工具交換装置1の工具交換制御手段12に送る。工具交換制御手段12は、この工具交換指令を受けて、工具マガジン11を駆動制御して、工具マガジン11と工作機械の主軸間での工具の受け渡し制御を行う。
【0014】
工具マガジン11は、周上に複数の工具把持部を備えている。この実施形態では回転角45度ごとに符号A〜Hで示す8つの工具把持部を備えている。各工具把持部A〜Hは、それぞれ工具把持手段20を備え、種々の工具22を保持する。図1では、工具把持部C、Hに工具22を収容し、工作機械本体3の主軸21に工具把持部Aに収容していた工具22が取り付けられている例を示している。工具交換制御手段12のメモリには、工具交換時に工具把持部を割り出すための、ある位相を基準とした工具マガジンの回転角度が記憶されており、この実施形態ではこの位相角度を工具把持部A〜Hの角度と呼ぶ。また、主軸21の中心軸の位置を基準位置100とし、図1に示すように、工具把持部Aがこの基準位置100に位置する状態を工具マガジン11の位相角度の原点0としている。工具マガジン11は正、逆回転が可能で、図1において時計方向の回転を正(+)、反時計方向の回転を逆(−)回転としている。
【0015】
各工具把持部A〜Hの角度は、基準位置100と工具マガジンの位相角度の原点(工具把持部Aの位置)を合わせた状態(図1の状態)から、各工具把持部を基準位置合わせるまでの移動角度である。よって、工具把持部Aの角度は0、工具把持部Bの角度は、工具マガジン11を正方向に45度回転させたとき基準位置100に位置するから45度であり、同様に工具把持部Cは工具マガジン11を正方向に90度回転させたとき基準位置100に位置するから90度である。また、工具把持部Hの角度は、工具マガジン11を逆(−)方向に45度回転させたとき基準位置100に位置するから−45度である。各工具把持部A〜Hの角度は以下のようになる。また、この工具把持部A〜Hの角度データは工具交換制御手段のメモリに登録されている。
【0016】
工具把持部A=0度
工具把持部B=+45
工具把持部C=+90度
工具把持部D=+135度
工具把持部E=±180度
工具把持部F=−135度
工具把持部G=−90度
工具把持部H=−45度
CNC2より工具交換指令が工具交換装置1に入力されると、工具交換制御手段12は、主軸21に装着されている工具22を工具マガジン11の工具把持部20に受け渡し、次に使用する工具のある工具把持部の角度データを読み、交換前に割り出されている工具把持部の角度から、読み出した工具把持部の角度データまで工具マガジン11を回転させ、使用する工具のある工具把持部を主軸位置(基準位置)に割り出す。そして、工具把持部から主軸21へ使用する工具22を受け渡す。
例えば、工具把持部Cの工具から工具把持部Eの工具に交換する場合、工具把持部Cの角度は+90度で工具把持部の角度Eは+180であるから工具交換制御手段12は、工具マガジン11を90度(工具把持部Cが基準位置にあり工具マガジンの回転角度は90度の状態)から180度へ、正方向へ移動回転角90度回転させて、工具把持部Eを主軸位置(基準位置)に割り出し、工具把持部Eから主軸21へ工具22を受け渡す。
一方、工具マガジン11が旋回中、工具マガジン11に収容された工具22と工作機械の一部とが接触し、干渉が発生する場合がある。図3に示すように、工具マガジン22の工具把持部20と工作機械3の一部301間の距離がLである場合、工具長がLより大きい工具22を工具マガジン11に収容しているとき、図3の(ii)に示すように工具22が工作機械の一部301と接触し、工具と機械の干渉が発生する。そのため、従来は、工具の使用を制限し、工具長がL以下の工具しか使用できなかった。
【0017】
そこで、本発明は、工作機械の構造、工具マガジンの配置位置等で、工具マガジンに収容した工具が、その工具長や形状によって他のものとの干渉が発生するような場合でも、その工具の使用を可能にできるようにした。
【0018】
本実施形態では、工具マガジン11の回転可能範囲を設定し、設定された回転可能範囲内で工具マガジン11を回転させるようにした。回転可能範囲は、工作機械のユーザが予め工具マガジン11がどの位相にあるとき工具の干渉が発生するか確認し、それを元に回転可能範囲をパラメータP1〜Pnを用い入力手段14で設定し、工具交換制御手段12内のメモリに格納するようにする。この実施形態では入力手段14とメモリによって回転可能範囲の設定手段を構成している。
【0019】
このパラメータP1〜Pnによる設定方法としては、工具マガジン11の位相の下限と上限や、回転可能範囲の中心角度と角度の幅などを用いる。例えば、図4に示すように、回転可能範囲を工具マガジンの基準位相に対して−140度〜+140度に設定したい場合、下限、上限の−140、+140をパラメータとして設定する。ただし、この工具マガジン11は、0度〜180度=−180度〜0度の角度が設定されているので、180度を超える場合は、その角度に対応する逆符号の角度となる。
【0020】
図5は、図4に示すような、中心線から前後40度が干渉範囲(回転禁止範囲)となる工具22を工具把持部A〜Hのいずれかに収容したときの回転可能範囲を説明する説明図であり、回転可能範囲は次のようになる、なお、カッコ内に干渉範囲を示す。
【0021】
A:−140〜0〜+140度(+140〜+180=−180〜−140度)
B:−95〜0〜+180=−180〜−175度(−175〜−95度)
C:−50〜0〜+180=−180〜−130度(−130〜−50度)
D:−5〜0〜+180=−180〜−85度(−85〜−5度)
E:+40〜+180=−180〜−40度(−40〜0〜+40度)
F:+85〜+185=−180〜0〜+5度(+5〜+85度)
G:+130〜+180=−180〜0〜+50(+50〜+130度)
H:+175〜+180=−180〜0〜+95度(+95〜+175度)
【0022】
工具把持部Cに工具22を収容した場合を例にとって説明すると、工具把持部Cが基準位置100にある状態では、工具マガジン11の位相は+90度であり、この角度から正方向に+140、逆方向に−140度の回転が可能であるから、逆方向に回転させて下限を検出するときは、90−140=−50度が検出される。一方、正方向に回転させ上限を検出するときには、90+140=230度であるが、検出値は−130度(230−360=−130)が検出される。すなわち、正方向に回転させ負の回転角が検出されたときは、180度を超えていることを意味し、この場合は、180度を含む範囲が回転可能範囲ととなり、下限−50度、上限−130で、回転可能範囲は、−50〜0、0〜+180=−180〜−130で図5に示すように−50〜−130となる。
【0023】
また、回転可能範囲の設定は、ある程度余裕を持って設定する。図6に示すように、工具マガジン11の位相が−155度から−180度、+155から+180度の範囲で工具が他のものと干渉する場合、ある程度マージンを見込んで回転可能範囲の下限を−145度、上限を+145度と設定する。
【0024】
機械の一部との干渉が発生するような工具を複数工具マガジン11に収容させるような場合は、共通回転可能範囲のうち、最も大きな領域(干渉範囲を除いた範囲のうち、最も大きな領域)を回転可能範囲として設定する。例えば、図4に示すように、工具把持部Aに工具を収容したとき、−140度〜+140度の回転可能範囲を有する工具を、工具把持部AとCに収容する場合は、図5に示すように、工具把持部Aの工具に対する回転可能範囲の下限、上限の−140、+140であり、工具把持部Cの工具に対する回転可能範囲の下限、上限の−50、−130(=+230)であるから、共通回転可能範囲領域の下限、上限は、−50、+140となる。
【0025】
この回転可能範囲は、その上限、下限を、上述したように予め測定して設定してもよいが、回転幅とその回転幅の中心角度とを設定し、その工具を収容する工具把持部の角度をオフセットするようにしてもよい。この場合、工具交換制御手段12は次の演算を行って、回転可能範囲の上限、下限を求め設定記憶させればよい。
【0026】
回転可能範囲の上限=+(設定回転幅/2)+設定中心角度+工具把持部の角度
回転可能範囲の下限=−(設定回転幅/2)+設定中心角度+工具把持部の角度
となる。例えば、図4に示す例で、中心角度0と回転角280度と設定されると、工具把持部の角度は0度であるから、
回転可能範囲の上限=+(280/2)+0+0=+140、
回転可能範囲の下限=−(280/2)+0+0=−140
となる。さらに、工具把持部Aではなく工具把持部Cに収容した場合は、工具把持部の角度が90度となるから、回転可能範囲の上限は、+(280/2)+0+90=+230
回転可能範囲の上限=+(280/2)+0+90=+230=−130、
回転可能範囲の下限=−(280/2)+0+90=−50、
となる(図5参照)。
【0027】
また、中心角度90と回転幅280度と設定された場合(図4において、工作機械の一部301が工具マガジン11の上部ではなく、図4において工具マガジンの右側に配置されているような場合では、
工具を工具把持部Aに収容した場合は、
回転可能範囲の上限=+(280/2)+90+0=+230=−130、
回転可能範囲の下限=−(280/2)+90+0=−50
となる。
【0028】
工具把持部Gに収容した場合は、
回転可能範囲の上限=+(280/2)+90-90=+140、
回転可能範囲の下限=−(280/2)+90-90=−140、
となる。
【0029】
なお、回転可能範囲ではなく逆に回転不可能な干渉範囲を設定するようにしてもよい。そして、工具交換制御手段12によって、この設定された干渉範囲から回転可能範囲を求めるようにすればよい。
【0030】
以上のようにして工具マガジンの回転可能範囲の上限、下限を工具交換制御手段のメモリに設定記憶させておく。
【0031】
また、工具マガジンに搭載された工具と他のものとの干渉発生は、工具マガジン11の回転方向によって発生する場合と、発生しない場合がある。図7に示すように、工具把持部Aに機械の一部301と干渉する工具22が収容されている場合において、工具把持部Dが基準位置100に位置する状態から、該工具保持部Fに保持する工具を主軸に取り付けるため、工具把持部Fを基準位置に移動させる場合、工具マガジン11を正方向に回転させると、図7の(i)に示すように、工具と機械の一部301との干渉が発生する。しかし、図7(ii)に示すように、逆方向に回転すれば、干渉を発生させることなく、工具把持部Fを基準位置100に移動させることができる。
【0032】
図5に示す回転可能範囲を説明する説明図で説明すると、干渉を発生する工具が工具把持部Aに保持され、その回転可能範囲が−140〜+140度と設定されているとき、図7の(i)の状態では、工具マガジン11は135度の位置にあり(図5で符号Pの位置)、目標回転角度−135(図5の符号Qの位置)は、回転可能範囲に含まれている。しかし、この+135度の位置から−135度の位置まで回転させるには、正方向に回転させるときは+140度までしか回転できず、−135(+225)まで回転させることはできない。しかし、逆(−)方向には+135度の位置まで回転させることができる。
【0033】
図8は、本実施形態における工具交換装置1の工具交換制御手段12のプロセッサが実施する工具マガジン旋回処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
工具交換装置1の工具交換制御手段12のプロセッサは、工作機械の制御装置2より工具交換指令を受けると、図8に示す工具マガジン旋回処理を実行する。
【0034】
工具交換指令で指令された目標工具把持部(工具)の角度が、設定されている回転可能範囲内にあるか否か判別し(ステップS1)、回転可能範囲内にないときは、工具交換動作を一時停止させる。さらには、工作機械の動作を停止させる指令を工作機械の制御装置2へ出力する(ステップS8)。また、表示手段13にアラームや回転可能範囲外の回転指令が出されている旨等の表示を行い(ステップS9)、当該処理を終了する。
一方、ステップS1で目標工具把持部の角度が、設定されている回転可能範囲内であると判別されたときには、工具マガジンを正方向に回転させて、設定上限角度に達する前に目標角度に達するか、又、逆方向に回転させて設定下限角度に達する前に目標角度に達するか判別する(ステップS2)。図7に示す例で説明すると、工具把持部D(角度+135)が基準位置にある状態(図5において符号Pの角度)で、工具交換指令が工具把持部F(角度−135)に把持された工具への交換指令の場合、工具マガジンの位相角度+135から位相角度−135へ正方向に移動させる場合には、180度を超えて移動させる必要があり、回転可能範囲の設定上限角度が140度であるから、正方向への回転はできないと判断される。しかし、逆(−)方向に回転させれば、また、又、回転可能範囲の設定下限角度が−140度に達する前に目標角度−135(図5において符号Qの角度)に達することができると判別される。
【0035】
そして、ステップS2で正、逆のどちらか一方しか回転できないと判別されたときは、回転可能方向が正方向か、逆方向か、判別し(ステップS3)、正方向ならば、工具マガジンを正方向に回転させて、基準位置100に指令された目標角度の工具保持部を位置づけて(ステップS4)、工具マガジン旋回処理を終了する。また、逆方向と判別されれば、工具マガジンを逆方向に回転させて、基準位置100に指令された目標角度の工具保持部を位置づけ(ステップS5)、工具マガジン旋回処理を終了する。
【0036】
また、ステップS2で正、逆、両方向に回転可能と判別されたときは、目標角度まで移動させる回転量の少ない方の方向を求め(ステップS6)、その方向に工具マガジンを回転させて、基準位置100に指令された目標角度の工具保持部を位置づけ(ステップS7)、工具マガジン旋回処理を終了する。
【0037】
上述した実施形態では、工具マガジンの回転可能範囲を入力手段14等からなる設定手段で設定するようにしたが、この設定手段に変えて、工具交換制御手段が、工具を工具マガジンに装着した際に自動的に工具マガジンの可動範囲を設定するようにしてもよい。
【0038】
この場合、工具交換装置の工具交換制御手段は、工具マガジンの各工具把持部に装着されている工具の工具長データと、その工具長に対応する干渉領域若しくは回転可能領域のデータ(以下干渉範囲データという)を予めメモリに格納しておく。図9に示すように、工具交換制御手段12のメモリに工具長と、その工具長の工具を工具マガジン11点の位相原点の工具把持部Aに取り付け、該工具把持部Aを基準位置100に位置づけたときの干渉範囲を対応させて設定記憶させておく。そして、工具マガジン11に工具を装着し、工具マガジンの回転範囲設定指令を入力手段14より入力することにより、工具交換制御手段12のプロセッサは図11の処理を開始する。まず指標iを1にセットし(ステップT1)、i番目の工具把持部に装着されている工具長を読みだし(ステップT2)、読みだした工具長に対して干渉範囲が設定されているか否かをメモリに記憶する干渉範囲データより判別する(ステップT3)。干渉範囲が設定されていなければステップT5に進む。設定されていれば、この干渉範囲データよりi番目の工具把持部に装着された工具による工具マガジンの干渉範囲を算出する。この干渉範囲の算出は、工具長に対する干渉範囲の上限、下限にi番目の工具把持部の角度を加算してオフセットして干渉範囲を求めて記憶する(ステップT4)。
【0039】
そして、指標iに1加算し(ステップT5)、該指標iが工具マガジン11の工具把持部20の数Nを超えているか判別(ステップT6)、超えていなければ、ステップT2に戻りステップT2〜T6の処理を実行し、指標iが工具把持部の数Nを超え、すべての工具把持部の工具に対して、干渉範囲データが有るか否か、及び干渉範囲データが有れば、その干渉範囲を算出して記憶した後、ステップT7に進み、ステップT4で求めた干渉範囲より、工具マガジン11の回転可能範囲を求めて設定する。
例えば、図9に示すように工具長に対して干渉範囲が設定され、工具把持部Cに工具長150mmの工具を取り付けた場合、干渉範囲は−160度〜160度(−160〜−180=+180〜+160)であり、工具把持部Cの角度は90度であるから、ステップT4で求められる、工具把持部Cの工具の干渉範囲は−70(=−160+90)〜−110(=+160+90=250)となる。この工具把持部Cに装着された工具だけ干渉範囲が有る場合には、ステップT7では、求めたこの干渉範囲を除いた領域を回転可能範囲として設定する。すなわち、工具マガジン11を逆方向(−方向)には、下限角度−70まで回転可能であり、正方向(+方向)に回転させる場合は、上限角度−110まで回転可能となる。
【0040】
また、図10に示すように、工具把持部Aに取り付けた工具の基準位置における干渉範囲θaが−130度〜+130度で、工具把持部Cに取り付けた工具の基準位置における干渉範囲θcが−160度〜+160度のデータが工具長に対する干渉範囲の記憶データから読みだされた場合、工具把持部Aの角度が0であるから、ステップT4では、工具把持部Aに取り付けた工具の干渉範囲を、−130度〜+130度と記憶し、また工具把持部Cの角度が90度であるから、工具把持部Cに取り付けた工具の干渉範囲は、−70(=−160+90)〜−110(=+160+90=250)となり、これを記憶する。その結果、ステップT7では、この2つの干渉領域を除いたθ1(−130度〜−110度)とθ2(−70度〜+130度)の領域が回転可能範囲となり、このうち最大の領域のθ2(−70度〜+130度)が回転可能範囲として設定されることになる。
【0041】
上述した実施形態では、工具交換装置に工具交換制御手段を設けたが、この工具交換制御手段を工作機械を制御する制御装置(CNC)内に設けてもよい。すなわち、工作機械を制御する制御装置(CNC)が工具交換制御手段を兼ね、入力手段や表示手段も工作機械を制御する制御装置(CNC)が有する入力手段や表示手段を用いるようにすればよい。そして、工作機械を制御する制御装置(CNC)のプロセッサによって、工具マガジン旋回処理や工具マガジンの回転範囲設定処理を実行するようにすればよい。この場合、工作機械を制御する制御装置(CNC)は、加工プログラムを先読む機能を備えていれば、加工プログラムを先読みすることによって、工具交換のための工具マガジンの旋回指令の目標回転角度が、回転可能範囲内にあるか判別し(図8におけるステップS1の処理)、範囲外であるときには機械動作を一時停止させるようにすればよい。これによって、安全に干渉の回避ができる。
【0042】
また、工作機械を制御する制御装置(CNC)が加工プログラムのプログラムチェック機能を有している場合は、このプログラムチェック時に、工具マガジンの旋回指令に対してその旋回指令の目標角度が工具マガジンの回転範囲内か判別し、回転可能範囲外への旋回指令の場合には、干渉が発生し旋回できない旨の表示を行うようにすれば、工作機械が加工を実行開始する前に、干渉が発生するか否かの確認をとることができる。
【0043】
上述した実施形態では、工具マガジンを旋回させるとき、工具マガジンに収容された工具が他のものと干渉するような場合に、工具マガジンの回転範囲を制限するものとして説明したが、この工具と他のものとの干渉防止の目的以外にも、工具マガジンの回転範囲を制限したい場合にも、本発明は適用できるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 工具交換装置
2 工作機械の制御装置(CNC)
3 工作機械本体
11 工具マガジン
12 工具交換制御手段
13 表示手段
14 入力手段
20 工具把持部
21 主軸
22 工具
100 基準位置
301 工作機械の一部
A〜H 工具把持部
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11