(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247296
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】手術用装着プラットフォームの使用者起動のクラッチ離脱
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20171204BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
A61B34/30
B25J3/00 Z
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-527626(P2015-527626)
(86)(22)【出願日】2013年8月15日
(65)【公表番号】特表2015-527137(P2015-527137A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】US2013055081
(87)【国際公開番号】WO2014028702
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2016年8月15日
(31)【優先権主張番号】61/683,626
(32)【優先日】2012年8月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス,ポール ジー
(72)【発明者】
【氏名】モーア,ポール ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】スワラップ,ニティシュ
【審査官】
近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/124390(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0142823(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0161129(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 − 90/98
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムを構成するための方法であり、当該方法は、
要求される関節動作閾値よりも低い、リンク機構に対する第一の手動の努力に応じて、第一のポーズからの、当該システムの前記リンク機構の手動での関節動作を抑制するステップ、
前記要求される関節動作閾値を超える、前記リンク機構を関節動作させるための第二の手動の努力に応じて、前記第一のポーズから第二のポーズへの前記リンク機構の手動での動作を可能にするステップ、
前記リンク機構の手動での動作の速度が閾値速度よりも低いことの決定に応じて、前記第二のポーズを決定するステップ、及び
前記第二のポーズからの前記リンク機構の手動での動作を抑制するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
関節センサは、関節に加えられた前記第一の手動の努力の第一のトルクを感知し、
手動での関節動作を抑制するステップは、プロセッサを用いて、前記リンク機構を前記第一のポーズに向かって押し戻すように、前記第一のトルクに対向する反作用トルクを前記リンク機構に引き起こすように構成された駆動信号を決定するサブステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記関節センサは、前記関節に加えられた前記第二の手動の努力の第二のトルクを感知し、
前記システムの前記プロセッサは、前記第二のトルクを使用して前記第二の手動の努力が前記要求される関節動作閾値を超えることを決定し、応答して、前記第一のトルクが手動で前記リンク機構を動かすために十分であるように前記反作用トルクを低下させるように、前記駆動信号を変える、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、閾値トルクを超える前記第二のトルクに応じて、前記第二の手動の努力が前記要求される関節動作閾値を超えることを決定する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記システムのプロセッサは、前記要求される関節動作閾値を超える前記第二の手動の努力に応じて、駆動信号に摩擦補償成分を加えることによって、前記第二のポーズに向かう手動での動作のために前記リンク機構の摩擦を軽減するように、前記駆動信号を変える、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記第二のポーズを決定するステップは、手動での動作を抑制することなく前記動作の方向を反転させることを可能にするように、閾値滞留時間の間、前記手動での動作の前記速度が閾値速度よりも低いままであることを決定するサブステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記要求される関節動作閾値よりも低い、前記リンク機構に対する第三の手動の努力に応じて、前記第二のポーズからの前記リンク機構の手動での動作を抑制するように、駆動信号を用いて、前記第二のポーズにある前記リンク機構を駆動するステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ロボットシステムは手術ロボットシステムを含み、
前記リンク機構はセットアップ構造を含み、前記セットアップ構造は、近位側の基部及びプラットフォームを有し、前記近位側の基部と前記プラットフォームとの間には関節が配置され、
前記プラットフォームは複数の手術マニピュレータを支持し、各マニピュレータは、手術器具を着脱可能に受容するように構成された器具保持部を有し、
前記手動での動作は、手術部位に対する前記複数の手術マニピュレータのポジションを変える、
請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ロボットシステムは、手術ロボットシステムを含み、
前記リンク機構は手術マニピュレータに含まれ、前記手術マニピュレータは、手術器具を着脱可能に受容するように構成された器具保持部及びカニューレを着脱可能に受容するように構成されたカニューレインターフェイスを有し、
前記手術マニピュレータは、前記手術器具のエンドエフェクタを低侵襲な手術用開口内で操作するために、前記手術器具のシャフトを前記カニューレに隣接する開口内で回動させるように構成され、
前記カニューレが前記カニューレインターフェイスに装着されたことに応じて、前記要求される関節動作閾値を超える手動の努力を用いた、前記リンク機構の手動での関節動作を抑制するステップを更に含む、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
ロボットシステムであって、
関節を有するリンク機構、
前記リンク機構に結合した駆動又は制動システム、及び
前記駆動又は制動システムと結合したプロセッサであり、当該プロセッサは、
要求される関節動作閾値よりも低い、前記リンク機構に対する第一の手動の努力に応じて、第一のポーズからの、前記リンク機構の手動での関節動作を抑制するように、前記駆動又は制動システムに信号を送信し、
前記要求される関節動作閾値を超える、前記リンク機構を関節動作させるための第二の手動の努力に応じて前記信号を変え、変えられた信号は、前記第一のポーズから第二のポーズへの、前記リンク機構の手動での動作を可能にするように構成され、
前記リンク機構の前記手動での動作の速度が閾値速度よりも低いことの決定に応じて、前記第二のポーズを決定し、且つ
前記第二のポーズからの前記リンク機構の手動での動作を抑制するように、前記駆動又は制動システムへ信号を送信する、
ように構成されている、プロセッサ、
を有する、ロボットシステム。
【請求項11】
前記関節に結合した関節センサを更に含み、前記関節センサは、前記関節に加えられた前記第一の手動の努力の第一のトルクを感知するように構成され、
前記プロセッサは、前記第一のトルクに対向し、前記リンク機構を前記第一のポーズに向かって押し戻す反作用トルクを前記リンク機構に加えるように、前記信号を決定するように構成されており、
前記駆動又は制動システムは、駆動システムを含む、
請求項10記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記関節センサは、前記プロセッサに、前記関節に加えられた第二の手動の努力の第二のトルクを送信するように構成されており、
当該ロボットシステムの前記プロセッサは、前記第二のトルクを使用して、前記第二の手動の努力が前記要求される関節動作閾値を超えるかどうかを決定し、応答して、前記第一のトルクが手動で前記リンク機構を動かすために十分であるように前記反作用トルクを低下させるように、前記信号を変える、ように構成されている、
請求項11記載のロボットシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、閾値トルクを超える前記第二のトルクに応じて、前記第二の手動の努力が前記要求される関節動作閾値を超えることを決定するように構成されている、請求項12記載のロボットシステム。
【請求項14】
前記信号は駆動信号を含み、
前記プロセッサは、前記要求される関節動作閾値を超える前記第二の手動の努力に応じて、前記駆動信号に摩擦補償成分を加えることによって、前記第二のポーズに向かう手動での動作のために前記リンク機構の摩擦を軽減するように、前記駆動信号を変えるように構成されている、
請求項10記載のロボットシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記手動での動作を抑制することなく前記手動での動作の方向を反転させることを可能にするように、閾値滞留時間の間、前記手動での動作の前記速度が閾値速度よりも低いことを決定することによって、前記第二のポーズを決定するように構成されている、請求項10記載のロボットシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記要求される関節動作閾値よりも低い、前記リンク機構に対する第三の手動の努力に応じて、前記第二のポーズからの前記リンク機構の手動での動作を抑制するように構成されている、請求項10記載のロボットシステム。
【請求項17】
当該ロボットシステムは手術ロボットシステムを含み、
前記リンク機構はセットアップ構造を含み、前記セットアップ構造は、近位側の基部及びプラットフォームを有し、前記近位側の基部と前記プラットフォームとの間には関節が配置され、
前記プラットフォームは複数の手術マニピュレータを支持し、各マニピュレータは、手術器具を着脱可能に受容するように構成された器具保持部を有し、
前記手動での動作は、手術部位に対する前記複数の手術マニピュレータのポジションを変える、
請求項10記載のロボットシステム。
【請求項18】
当該ロボットシステムは、手術ロボットシステムを含み、
前記リンク機構は手術マニピュレータに含まれ、前記手術マニピュレータは、手術器具を着脱可能に受容するように構成された器具保持部及びカニューレを着脱可能に受容するように構成されたカニューレインターフェイスを有し、
前記手術マニピュレータは、前記手術器具のエンドエフェクタを低侵襲な手術用開口内で操作するために、前記手術器具のシャフトを前記カニューレに隣接する開口内で回動させるように構成され、
前記プロセッサは、前記カニューレが前記カニューレインターフェイスに装着されたことに応じて、前記要求される関節動作閾値を超える手動の努力を用いた、前記関節の手動での関節動作を抑制するように構成されている、
請求項10記載のロボットシステム。
【請求項19】
ロボット手術システムであって、
関節を有するリンク機構であり、前記関節は近位側の基部と器具保持部との間に配置され、前記器具保持部は手術器具を着脱可能に支持するように構成された、リンク機構、
前記リンク機構に結合した駆動システム、
前記関節に結合したトルクセンサシステム、及び
前記トルクセンサシステムを前記駆動システムに結合させるプロセッサであり、当該プロセッサは、
関節動作閾値よりも低い感知されたトルクに応じて、第一の構成からの前記関節の手動での関節動作を抑制するように、前記駆動システムに駆動信号を送信し、
前記関節動作閾値を超える、前記感知されたトルクに応じて、前記駆動信号を変え、変えられた駆動信号は、前記関節動作閾値より低い動作トルクを使用した前記第一の構成から第二の構成への前記関節の手動での動作を可能にするように構成され、
閾値速度よりも低い前記手動での動作の速度に応じて、前記第二の構成を決定し、且つ
要求される関節動作閾値よりも低い前記感知されたトルクに応じて、前記第二の構成からの前記リンク機構の手動での動作を抑制するように、前記駆動システムに駆動信号を送信する、
ように構成されている、プロセッサ、
を有する、ロボット手術システム。
【請求項20】
ロボットアセンブリのリンク機構を動かすための手動の努力の間に、第一のポーズ及び第二のポーズにおける前記リンク機構の第一のデテント及び第二のデテントをそれぞれ模倣するように、前記ロボットアセンブリを駆動するステップ、及び
前記リンク機構の手動での動作の速度が閾値速度よりも低いことの決定に応じて、前記第二のポーズを決定するステップ、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ロボット及び/又は手術用の装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲医療技術は、診断又は手術の手順中に損傷を受ける無関係な組織の量を低減し、それにより患者の回復期間、不快感及び有害な副作用を低減することを意図している。低侵襲手術の一つの効果は、例えば、手術後の院内回復期間の低減である。普通の手術のための平均入院期間は、類似した低侵襲手術のための平均入院期間よりも典型的に優位に長いため、低侵襲技術の使用の増加は、毎年数百万ドルの入院費用を節約することができるかも知れない。毎年米国内で行われる手術の多くが潜在的に低侵襲な方法で実行され得るが、低侵襲手術器具における制約及びそれらを習得することに伴う追加的な外科訓練の理由から、現在の手術のほんの一部分のみが、これらの有利な技術を使用する。
【0003】
低侵襲なロボット手術システム又は遠隔手術システムは、外科医の器用さを向上させ、従来の低侵襲技術における制約のいくつかを避けるように開発されてきた。遠隔手術において、外科医は、手術器具の動きを操作するために、器具を手で直接的に保持して動かすのではなく、いくつかの形式の遠隔制御(例えばサーボ機構又は同種のもの)を使用する。遠隔手術システムにおいて、外科医は、手術用ワークステーションに手術部位の画像を提供されることができる。外科医は、ディスプレイ上の手術部位の二次元画像又は三次元画像を見ながらマスター制御装置を操作し、次いでマスター制御装置がサーボ機構で操作される器具の動きを制御することによって、患者に外科的処置を施す。
【0004】
遠隔手術のために使用されるサーボ機構は、しばしは二つのマスター制御部(外科医の手のそれぞれについて一つ)からの入力を受け入れることができ、それぞれに手術器具が装着される(mounted)二つ以上のロボットアームを含み得る。マスター制御部と、関連するロボットアームアセンブリ及び器具アセンブリとの間の手術に関する通信は、典型的には制御システムを通して達成される。制御システムは、典型的には少なくとも一つのプロセッサを含み、そのプロセッサは、マスター制御部から関連するロボットアームアセンブリ及び器具アセンブリへの入力コマンドを中継して伝えると共に、例えば力のフィードバック又は同種のものについては、器具アセンブリ及びアームアセンブリから関連するマスター制御部への返信を中継して伝える。ロボット手術システムの一つの例は、カリフォルニア州サニーベールのIntuitive Surgical(登録商標), Inc.から入手可能なDA VINCI(登録商標)システムである。
【0005】
様々な構造的な配列が、ロボット手術の間に手術部位で手術器具を支持するために使用されることができる。駆動されるリンク機構又は“スレーブ”は、しばしばロボット手術マニピュレータ(manipulator)と呼ばれる。低侵襲ロボット手術の間にロボット手術マニピュレータとして使用されるための例示的なリンク機構配列は、米国特許第7,594,912号;第6,758,843号;第6,246,200号;及び第5,800,423号において記述されている。これらの米国特許の全ての開始は、参照により本出願に取り込まれる。これらのリンク機構は、シャフトを有する器具を保持するためにしばしば平行四辺形の配列を利用する。そのようなマニピュレータの構造は、硬質のシャフトの長さに沿う空間に配置された操縦の遠隔中心(remote center)の回りを器具が回動することができるように、器具の動きを拘束し得る。操縦の遠隔中心を体内の手術部位への切開点と合わせる(例えば、腹腔鏡手術中に腹壁でトロカール又はカニューレと合わせる)ことによって、手術器具のエンドエフェクタは、腹壁に対して潜在的に危険な力をかけることなく、マニピュレータリンク機構を使用してシャフトの近位側端部を動かすことにより安全に配置されることができる。代替的なマニピュレータの構造は、例えば、米国特許第7,763,015号;第6,702,805号;第6,676,669号;第5,855,583号;第5,808,665号;第5,445,166号;及び第5,184,601号において記述されている。これらの米国特許の全ての開示は、参照により本出願に取り込まれる。
【0006】
様々な構造的な配列が、ロボット手術の間にロボット手術マニピュレータ及び手術器具を手術部位で支持及び配置するためにも使用されることができる。時々セットアップ関節又はセットアップ関節アームと呼ばれる、支持リンク機構のメカニズムは、しばしば各マニピュレータをそれぞれの患者の身体の開口点に配置及び整列させるために使用される。支持リンク機構のメカニズムは、手術マニピュレータと所望の手術切開点及び目標の解剖学的構造を整列させることを助ける。例示的な支持リンク機構のメカニズムは、米国特許第6,246,200及び第6,788,018号おいて記述されている。これらの米国特許の全ての開示は、参照により本出願に取り込まれる。
【0007】
新たな遠隔手術システム及び装置は、高度に効果的かつ有利であると判明しているが、更なる改良が望ましい。概して、改良された低侵襲ロボット手術システムが望ましい。これらの改良された技術がロボット手術システムの有効性及び使いやすさを高めるならば、特に有益であろう。例えば、これらの新たな手術システムの、操縦性を高めること、手術室における空間利用を改善すること、より早くかつより容易なセットアップを提供すること、使用中に複数のロボット装置間の衝突を防止すること及び/又は機械的な複雑さ及び寸法を低減することは、特に有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,594,912号明細書
【特許文献2】米国特許第6,758,843号明細書
【特許文献3】米国特許第6,246,200号明細書
【特許文献4】米国特許第5,800,423号明細書
【特許文献5】米国特許第7,763,015号明細書
【特許文献5】米国特許第6,702,805号明細書
【特許文献6】米国特許第6,676,669号明細書
【特許文献7】米国特許第5,855,583号明細書
【特許文献8】米国特許第5,808,665号明細書
【特許文献9】米国特許第5,445,166号明細書
【特許文献10】米国特許第5,184,601号明細書
【特許文献11】米国特許第6,788,018号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基本的な理解を提供するために、本発明のいくつかの実施形態の簡略化した概要を以下に提示する。この概要は、本発明の広範囲に及ぶ概観ではない。本発明の主要な/決定的に重要な意味を持つ要素を特定すること又は本発明の範囲を詳細に叙述することは意図されていない。その唯一の目的は、後に提示される、より詳細な記述の前置きとして、本発明のいくつかの実施形態を単純な形で提示することである。
【0010】
本発明は、概して、改良されたロボット及び/又は手術用の装置、システム及び方法を提供する。本明細書において記述される運動学的リンク機構の構造及び関連する制御システムは、システム使用者が、特定の患者への外科的処置のための準備を含む使用準備中のロボット構造を用意又は配列(arrange)することを助けることにおいて特に有益である。本明細書において記述される例示的なロボット手術システムは、一つ以上の運動学的リンク機構サブシステムを有してもよい。その運動学的リンク機構サブシステムは、マニピュレータ構造を手術作業部位と整列させることを助けるように構成される。これらのセットアップシステムの複数の関節は、(それらが手動で関節を動かされ、次いでマニピュレータが治療に使用される間、所望の構成、形状又は立体配置(configuration)にロックされることができるように)能動的に駆動されてもよく、受動的であってもよく、又は両方の複合であってもよい。本明細書において記述されるロボットシステムの複数の実施形態は、セットアップモードを採用してもよい。セットアップモードにおいて、一つ以上の関節は、初期的に、制動機又は関節駆動システムによって静的に保持される。故意ではない関節動作(articulation)は、制動機又は駆動システムによって制限されるが、使用者は、(複数の)関節の手動関節動作閾値を超える力、トルク又は同種のものでリンク機構に対して手動で押すことによって、(複数の)関節を手動で関節動作させることができる。ひとたび(複数の)関節が動き始めると、プロセッサは、制動機又は駆動システムに送信される信号を変更することによって、より小さな使用者の努力での関節動作を可能若しくは容易にするか又は促進(facilitate)してもよい。使用者が所望の構成に達した場合に、システムは、任意的に要求される滞留時間の間、閾値よりも低い(複数の)関節の速度から、使用者が再構成を完了したことを感知してもよい。システムは、次いで同様に(複数の)関節の故意ではない関節動作を抑制してもよい。滞留時間は、方向を反転させる場合に、リンク機構をロックすることの防止を助けることができる。また、システムは、機械的に予め規定されたデテント関節構成に限定されない、“デテント”様の手動の関節動作を提供することができる。本発明の複数の実施形態は、使用者インターフェイスが直感的であることを提供することができ、また、追加的な入力装置を加えることなくロボット手術システム又は同種のものにおいて複数の手術マニピュレータを支持するプラットフォームの手動での動作のために特によく適していてもよい。
【0011】
第一の態様において、本発明は、ロボットシステムを構成する(configuring)ための方法を提供する。方法は、要求される関節動作閾値よりも低い、リンク機構に対する第一の手動の努力に応じて、第一のポーズからの、システムのリンク機構の手動での関節動作を抑制するステップを含む。第一のポーズから第二のポーズに向かうリンク機構の手動での動作は、要求される関節動作閾値を超える、リンク機構を関節動作させるための第二の手動の努力に応じて可能にされる。第二のポーズは、リンク機構の手動での動作に応じて決定される。第二のポーズからのリンク機構の手動での動作は、抑制される。
【0012】
したがって、第一の態様において、ロボットシステムを構成するための方法が提供される。方法は、リンク機構に対する第一の手動の努力に応じて、第一のポーズからの、システムのリンク機構の関節動作を抑制する(inhibiting)ステップ、第一のポーズから第二のポーズに向かうリンク機構の手動での動作を可能にする(facilitating)ステップ、リンク機構の手動での動作に応じて第二のポーズを決定するステップ、及び第二のポーズからのリンク機構の手動での動作を抑制するステップ、を含む。抑制するステップは、要求される関節動作閾値よりも低い、リンク機構に対する第一の手動の努力に応じてなされる。可能にするステップは、要求される関節動作閾値を超える、リンク機構に対する第二の手動の努力に応じてなされる。
【0013】
複数の他の実施形態において、関節センサは、関節に加えられた第一の努力の第一のトルクを感知してもよい。また、プロセッサは、リンク機構を第一のポーズに向かって押し戻すように、第一のトルクに対抗する反作用トルクをリンク機構に引き起こすように構成された駆動信号を決定すること(サブステップ)によって手動での関節動作を抑制してもよい。複数の更なる実施形態において、関節センサはまた、関節に加えられた第二の手動の努力の第二のトルクを感知してもよい。また、プロセッサは、第二の手動の努力が要求される関節動作閾値を超えることを決定するように構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、関節動作閾値はトルク閾値であってもよく、プロセッサは第二のトルクが閾値トルクを超えることを決定することによって、第二の努力が要求される関節動作閾値を超えることを決定してもよい。プロセッサは、要求される関節動作閾値を超える第二の努力に応じて、第一のトルクが手動でマニピュレータを動かすために十分であるように反作用トルクを低下させるように、駆動信号を変えてもよい。
【0014】
本方法のいくつかの実施形態において、プロセッサは、要求される関節動作閾値を超える第二の努力に応じて、駆動信号に摩擦補償成分を加えることによって、第二のポーズに向かう手動での動作のためにリンク機構の摩擦を軽減するように、駆動信号を変えてもよい。
【0015】
複数の他の実施形態において、第二のポーズは、手動での動作の速度が閾値速度よりも低いことを決定すること(サブステップ)によって決定されてもよい。加えて、第二のポーズはまた、手動での動作を抑制することなく手動での動作の方向を反転させることを可能にするように、閾値滞留時間の間、手動での動作の速度が閾値速度よりも低いままであることを決定すること(サブステップ)によって決定されてもよい。
【0016】
複数の更なる実施形態において、ロボットシステムを構成するための方法は、要求される関節動作閾値よりも低い、マニピュレータに対する第三の手動の努力に応じて、第二のポーズからのリンク機構の手動での動作を抑制するように、駆動信号を用いて、第二のポーズにあるリンク機構を駆動するステップを含む。
【0017】
以上の複数の例示的な方法は、手術ロボットシステムを構成するために使用されてもよい。例えば、リンク機構は、近位側の基部及びプラットフォームを有しそれらの間には関節が配置されたセットアップ構造であってもよい。プラットフォームは複数の手術マニピュレータを支持してもよく、各マニピュレータは、手術器具を着脱可能に受容するように構成された器具保持部を有してもよい。手動での動作は、手術部位に対する複数のマニピュレータのポジションを変える動作であってもよい。一つの他の実施例において、リンク機構は、手術器具を着脱可能に受容するための保持部を有する手術マニピュレータに含まれてもよい。手術マニピュレータはまた、カニューレを着脱可能に受容するように構成されたカニューレインターフェイスを有してもよい。マニピュレータは更に、器具のエンドエフェクタを低侵襲な手術用開口内で操作するために、器具のシャフトをカニューレに隣接する開口内で回動させるように構成されてもよい。本構成方法は、カニューレがカニューレインターフェイスに装着されたことに応じて、要求される関節動作閾値を超える手動の努力を用いた、関節の手動での関節動作を抑制するステップを更に含んでもよい。
【0018】
一つの他の態様において、ロボットシステムが提供される。ロボットシステムは、関節を有するリンク機構、リンク機構に結合した駆動又は制動システム、及び駆動又は制動システムと結合したプロセッサを含む。プロセッサは、要求される関節動作閾値よりも低い、リンク機構に対する第一の手動の努力に応じて、第一のポーズからの、リンク機構の手動での関節動作を抑制するように、駆動又は制動システムに信号を送信するように構成されてもよい。プロセッサは、要求される関節動作閾値を超える、リンク機構を関節動作させるための第二の手動の努力に応じて信号を変えてもよい。変えられた信号は、第一のポーズから第二のポーズへの、リンク機構の手動での動作を可能にするように構成されてもよい。プロセッサはまた、リンク機構の手動での動作に応じて、第二のポーズを決定してもよく、且つ第二のポーズからのリンク機構の手動での動作を抑制するように、駆動システムへ信号を送信してもよい。
【0019】
複数の例示的な実施形態において、ロボットシステムは、関節に結合した関節センサを更に含む。関節センサは、関節に加えられた第一の手動の努力の第一のトルクを感知するように構成されてもよい。プロセッサは、第一のトルクに対向し且つリンク機構を第一のポーズに向かって押し戻す反作用トルクをリンク機構に加えるように、信号を決定するように構成されてもよい。複数の特定の実施形態において、駆動又は制動システムは、駆動システムを含んでもよい。さらに、関節センサは、プロセッサに、関節に加えられた第二の手動の努力の第二のトルクを送信するように構成されてもよい。プロセッサは更に、第二のトルクを使用して、第二の手動の努力が要求される関節動作閾値を超えるかどうかを決定するように構成されてもよい。例えば、プロセッサは、第二のトルクが閾値トルクを超えるか否かを決定することによって、第二の手動の努力が要求される関節動作閾値を超えることを決定するように構成されてもよい。要求される関節動作閾値を超える第二の手動の努力に応じて、プロセッサは、第一のトルクが手動でマニピュレータを動かすために十分であるように反作用トルクを低下させるように、駆動信号を変えてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、ロボットシステムの信号は駆動信号を含んでもよく、プロセッサは、要求される関節動作閾値を超える第二の努力に応じて、駆動信号に摩擦補償成分を加えることによって、第二のポーズに向かう手動での動作のためにリンク機構の摩擦を軽減するように、駆動信号を変えるように構成されてもよい。
【0021】
プロセッサは、閾値速度よりも低い手動での動作の速度に応じて、第二のポーズを決定するように構成されてもよい。プロセッサは更に、手動での動作を抑制することなく手動での動作の方向を反転させることを可能にするように、閾値滞留時間の間、手動での動作の速度が閾値速度よりも低いことを決定することによって、第二のポーズを決定するように構成されてもよい。プロセッサはまた、要求される関節動作閾値よりも低い、マニピュレータに対する第三の手動の努力に応じて、第二のポーズからのリンク機構の手動での動作を抑制するように構成されてもよい。
【0022】
以上の例示的なシステムは、手術ロボットシステムであってもよい。例えば、リンク機構は、近位側の基部及びプラットフォームを有しそれらの間には関節が配置されたセットアップ構造であってもよい。プラットフォームは複数の手術マニピュレータを支持してもよく、各マニピュレータは、手術器具を着脱可能に受容するように構成された器具保持部であってもよい。手動での動作は、手術部位に対する前記複数のマニピュレータのポジションを変える動作であってもよい。一つの他の実施例において、リンク機構は、手術器具を着脱可能に受容するための保持部を有する手術マニピュレータに含まれてもよい。手術マニピュレータはまた、カニューレを着脱可能に受容するように構成されたカニューレインターフェイスを含んでもよい。マニピュレータは更に、器具のエンドエフェクタを低侵襲な手術用開口内で操作するために、器具のシャフトをカニューレに隣接する開口内で回動させるように構成されてもよい。システムは更に、カニューレインターフェイスへのカニューレの装着に応じて、要求される関節動作閾値を超える手動の努力を用いた、関節の手動での関節動作を抑制することを伴ってもよい。
【0023】
一つの追加的な態様において、ロボット手術システムが提供される。ロボット手術システムは、関節を有するリンク機構、リンク機構に結合した駆動システム、関節に結合したトルクセンサシステム、及びトルクセンサを駆動システムに結合させるプロセッサを含む。関節は、近位側の基部と器具保持部との間に配置されてもよい。器具保持部は、手術器具を着脱可能に支持するように構成されてもよい。プロセッサは、要求される関節動作閾値よりも低い感知されたトルクに応じて、第一の構成からの関節の手動での関節動作を抑制するように、駆動システムに駆動信号を送信するように構成される。関節動作閾値を超える感知されたトルクに応じて、プロセッサは、関節動作閾値より低い動作トルクを使用した第一の構成から第二の構成への関節の手動での動作を可能にするように、駆動信号を変えてもよい。閾値速度よりも低い手動での動作の速度に応じて、プロセッサは、第二の構成を決定してもよい。プロセッサはまた、要求される関節動作閾値よりも低い感知されたトルクに応じて、第二のポーズからのリンク機構の手動での動作を抑制するように、駆動システムに駆動信号を送信するように構成されてもよい。
【0024】
一つの他の態様において、ロボットシステムを構成又は設定する方法が提供される。その方法は、アセンブリのリンク機構を動かすための手動の努力の間に、第一のリンク機構ポーズ及び第二のリンク機構ポーズにおけるリンク機構の第一のデテント及び第二のデテントを模倣(simulate)するように、ロボットアセンブリを駆動すること(ステップ)を含む。その方法はまた、リンク機構の第二のポーズへの手動での動作に応じて、第二のポーズを決定すること(ステップ)を含む。
【0025】
本発明の特質及び利点のより完全な理解のために、次の詳細な説明及び添付の図面への参照がなされるべきである。本発明の複数の他の態様、目的及び利点が、図面及び続く詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、多くの実施形態による、手術を実施するために使用される低侵襲ロボット手術システムの平面図である。
【0027】
【
図2】
図2は、多くの実施形態による、ロボット手術システムのための外科医用制御コンソールの斜視図である。
【0028】
【
図3】
図3は、多くの実施形態による、ロボット手術システム電子カートの斜視図である。
【0029】
【
図4】
図4は、多くの実施形態による、ロボット手術システムを図式的に示す。
【0030】
【
図5A】
図5Aは、多くの実施形態による、ロボット手術システムの患者側カート(手術ロボット)の部分図である。
【0031】
【
図5B】
図5Bは、多くの実施形態による、ロボット手術ツールの正面図である。
【0032】
【
図6】
図6は、多くの実施形態による、ロボット手術システムの透視図法による模式的な表示である。
【0033】
【
図7】
図7は、多くの実施形態による、他のロボット手術システムの透視図法による模式的な表示である。
【0034】
【
図8】
図8は、多くの実施形態による、
図7の模式的な表示に一致するロボット手術システムを示す。
【0035】
【
図9】
図9は、
図8のロボット手術システムの方向付けプラットフォームに対する、セットアップリンク機構の回転位置制限を示す。
【0036】
【
図10】
図10は、多くの実施形態による、ロボット手術システムのためのブームアセンブリの回転制限に関連する重心図を示す。
【0037】
【
図11】
図11は、手術のためにロボット手術システムを準備するための方法を模式的に示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明において、本発明の様々な実施形態が説明される。説明の目的のため、複数の実施形態の完全な理解を提供するために具体的な構成及び詳細が説明される。しかしながら、本発明は上記の具体的な特有の詳細通りでなくとも実践し得ることも当業者には明らかであろう。さらに、周知な特徴は、本明細書に記述される実施形態を不明瞭にしない目的で省略又は単純化され得る。
【0039】
本明細書において記述される運動学的リンク機構構造及び制御システムは、システム使用者が、特定の患者への処置のロボット構造を用意又は配列することを助けることにおいて特に有益である。治療中に組織及び同種のものと相互作用するために使用される、能動的に駆動されるマニピュレータと共に、ロボット手術システムは、一つ以上の運動学的リンク機構システムを有してもよい。その運動学的リンク機構システムは、マニピュレータ構造を支持し、手術部位と整列することを助けるように構成される。これらのセットアップシステムは、それらが手動で関節動作され、次いでマニピュレータが治療に使用される間、所望の構成にロックされることができるように、能動的に駆動されてもよく又は受動的であってもよい。受動的にセットアップされる運動学的システムは、寸法、重量、複雑さ及び費用において利点を有し得る。複数のマニピュレータが各患者の組織を治療するために使用されることができ、複数のマニピュレータは、その器具によって支持された器具が作業空間の至る所で所望の動作をもつことを可能にするように正確に配置することから、それぞれ独立に恩恵を受けることができるが、残念なことに、隣接する複数のマニピュレータの相対的な位置における小さな変化が、(不適切に配置された複数のマニピュレータが潜在的に、衝突すること又は有意に低下したそれらの運動の範囲及び/又は容易さを有することによって)複数のマニピュレータの間の相互作用に対して有意な影響を有する可能性がある。それ故に、手術のために準備中のロボットシステムを迅速に用意又は配列することの(難易度が高い)課題は、重要であり得る。
【0040】
一つの選択肢は、時には方向付けプラットフォーム(orienting platform)と呼ばれるマニピュレータ支持プラットフォームを用いて、多数のマニピュレータを単一のプラットフォームに装着することである。方向付けプラットフォームは、(本明細書において時々セットアップ構造と呼ばれ、典型的にセットアップ構造リンク機構等を有する、)能動的に駆動される支持リンク機構によって支持されることができる。システムはまた、方向付けプラットフォームを支持するロボットセットアップ構造のモータの付いた複数の軸を提供し、且ついくつかの種類の操作棒又は複数のボタンの組で制御してもよい。いくつかの種類の操作棒又は複数のボタンの組は、使用者がそれらの軸を、独立して要求通りに、能動的に駆動することを可能にするものである。このアプローチはいくつかの状況において有用であるが、一方でいくつかの不具合を経験する可能性がある。特に、複雑なシステムの全ての要素に関する駆動ボタンを置き、それぞれが、システムの全ての潜在的な構成においてシステムに接近する使用者にアクセス可能であるようにすることは、難しいかも知れない。システムの制動機を解放するか又はシステムを駆動するために、独立したクラッチボタンも使用され得るが、複数の異なる機能を有する複数のボタンの間で混乱の可能性が残り得る。その上に、(例えば、無菌の区域(field)の内側又は外側の複数の異なる位置を把持することによって、)手術チームの無菌部材及び非無菌部材の両方が、いくつかの関節又はリンク機構を動かさなければならない可能性がある。それ故に、より直感的且つ柔軟な使用者インターフェイスが望ましいであろう。これは特に、多象限(四分円)手術において使用されるための方向付けプラットフォーム、又は手術台又はその他の支持具上の患者に対してマニピュレータを方向付ける(orient)ために複数の手術マニピュレータを支持し、少なくともおおよそ垂直に延びる軸の回りで回動し得る構造に関する方向付けプラットフォームに当てはまる。
【0041】
低侵襲ロボット手術
ここから、同様な参照数字はいくつかの図面を通じて同様な部品を代表する、複数の図面を参照すると、
図1は低侵襲ロボット手術システム(MIRS)10の平面図である。低侵襲ロボット手術システム10は、手術台14上に横になった患者12への低侵襲診断又は外科的処置を実行するために典型的に使用される。システムは、処置の間外科医18によって使用されるための外科医用コンソール16を含んでもよい。一人又はそれ以上の助手20も処置に参加することができる。MIRSシステム10は、患者側カート22(手術ロボット)及び電子カート24を更に有してもよい。患者側カート22は、外科医18がコンソール16を通して手術部位を観察している間、患者12の体の低侵襲な切開を通じて、少なくとも一つの取り外し可能に連結されたツールアセンブリ26(以下、単に“ツール”を呼ぶ)を操作することができる。手術部位の画像は、内視鏡28によって取得されることができる。内視鏡28は、例えば内視鏡28を方向付けるように患者側カート22によって操作され得る、立体視内視鏡である。電子カート24は、処理に続く外科医用コンソール16を通じた外科医18への画像表示のために、手術部位の画像を処理するために使用されることができる。一度に使用される手術ツール26の数は一般的に、その他の要素の中でもとりわけ、その診断又は外科的処置及び手術室内の空間の制約に依存する。ある処置の間に、使用中の複数のツール26のうちの一つ以上を交換することが必要な場合は、助手20は患者側カート22からツール26を取り外し、手術室内のトレイ30からの他のツール26に交換することができる。
【0042】
図2は、外科医用コンソール16の斜視図である。外科医用コンソール16は、奥行き知覚を可能にする手術部位の協調された立体像(coordinated stereo view)を外科医18に提示するための左目用表示部32及び右目用表示部34を有する。コンソール16は、一つ又はそれ以上の入力制御装置36を更に有する。次いで入力制御装置36は、患者側カート22(
図1参照)に一つ又はそれ以上のツールを操作させる。複数の入力制御装置36は、それらに関連するツール26(
図1参照)と同じ自由度を提供し、外科医がツール26を直接的に制御しているという強い感覚を持つように、外科医にテレプレゼンス、又は入力制御装置36がツール26と一体化しているかのような知覚を提供することができる。この目的を達成するために、ポジション、力、及び触覚のフィードバックセンサ(図示せず)を採用して、入力制御装置36を通じて、ポジション、力、及び触覚の知覚をツール26から外科医の手に返してもよい。
【0043】
外科医用コンソール16は、外科医が直接処置を監視し、必要であれば物理的に居合わせ、そして電話又は他の通信媒体を通すよりもむしろ、助手に直接話すことができるように、通常患者と同じ部屋内に位置している。しかしながら、外科医は異なる部屋、完全に異なる建物又はその他の患者から離れた場所に位置することが可能であり、遠隔外科的処置が可能である。
【0044】
図3は、電子カート24の斜視図である。電子カート24は、内視鏡28と結合することができ、キャプチャーした画像を処理し、例えば現地に及び/又は遠隔地に位置する外科医用コンソール上又は他の適切な表示部上の外科医へ、続いて表示するためのプロセッサを有していてもよい。例えば、立体視内視鏡が使用される場合に、電子カート24は、キャプチャーされた画像を処理して、手術部位の協調立体像を外科医に提示することができる。そのような協調は、対向する複数の画像の間の位置合わせを含むことができ、また、立体視内視鏡のステレオ作動距離を調整することを含むことができる。その他の例として、画像処理は、以前に決定されたカメラ校正パラメータを使用して、例えば光学収差のような、画像キャプチャー装置の結像誤差を補償することを含んでもよい。
【0045】
図4は、(例えば
図1のMIRSシステム10のような)ロボット手術システム50を概略的に示す。前述のように、(例えば
図1における外科医用コンソール16のような)外科医用コンソール52は、低侵襲処置の間に、(例えば
図1における患者側カート22のような)患者側カート(手術ロボット)54を制御するために、外科医によって使用され得る。患者側カート54は、例えば立体視内視鏡のような画像装置を使用して、処置部位の画像をキャプチャーし、キャプチャーした画像を(例えば
図1における電子カート24のような)電子カート56に出力することができる。前述のように、電子カート56は、如何なる後続の表示にも先立って、キャプチャーされた画像を様々な方法で処理することができる。例えば、電子カート56は、キャプチャーされた画像を仮想制御インターフェイスに重ねてから、外科医用コンソール52を介して組み合わされた画像を外科医に表示することができる。患者側カート54は、電子カート56の外部での処理のために、キャプチャーされた画像を出力することができる。例えば、患者側カート54は、キャプチャーされた画像を処理するために使用され得るプロセッサ58に、キャプチャーされた画像を出力することができる。画像はまた、電子カート56及びプロセッサ58の組み合わせによって処理され得る。これらは一体に結合されて、キャプチャーされた画像を合同で、順番に及び/又はこれらの組合せで処理することができる。一つ又はそれ以上の独立した表示部60もまた、例えば処置部位の画像又はその他の関係する画像の、現地での及び/又は遠隔での画像の表示のために、プロセッサ58及び/又は電子カート56に結合され得る。
【0046】
プロセッサ58は、典型的に、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを含ものである。ソフトウェアは、本明細書において記述される制御の方法の複数のステップを機能的に実行するための、コンピュータ可読コード命令を具体化する有形媒体を有する。ハードウェアは、典型的に、一つ以上のデータ処理ボードを含む。そのデータ処理ボードは、同一箇所に位置してもよいが、しばしば、本明細書において記述されるロボット構造中に分配された複数の構成要素を有するものである。ソフトウェアは、しばしは不揮発性媒体を有するものであり、モノリシックなコードも有し得るが、より典型的には多数のサブルーチンを有するものであり、これらのサブルーチンは任意的に多種多様な分配されたデータアーキテクチャのいずれにおいても走る。
【0047】
図5A及び
図5Bは、それぞれ、患者側カート22及び手術ツール62を示す。手術ツール62は、手術ツール26の一つの例である。図示される患者側カート22は、3つの手術ツール26、及び例えば処置部位の画像のキャプチャーに使用される立体視内視鏡のような、一つの画像装置28の操作を提供する。操作は、多数のロボット関節を有するロボット機構によって提供される。画像装置28及び手術ツール26は、運動学的な遠隔の中心が患者の切開の位置に維持されて切開の寸法を最小化するように、患者の切開を通じて配置及び操作されることができる。手術ツール26が画像装置28の視野内に配置される場合に、手術部位の画像は、手術ツール26の遠位側端部の画像を含むことができる。
【0048】
手術ツール26は、低侵襲なアクセス用開口、例えば切開、生来の開口部、経皮的な貫通又は同種のものを通して管状のカニューレ64を挿入することによって、患者体内に挿入される。カニューレ64はロボットマニピュレータアームに装着され、手術ツール26のシャフトはカニューレの管腔(lumen)を通過する。マニピュレータアームは、カニューレがそのアーム上に装着されたことを示す信号を送信してもよい。
【0049】
ロボット手術システム及びモジュラーマニピュレータ支持
図6は、多くの実施形態による、ロボット手術システム70の透視図法による模式的な表示である。手術システム70は、取付け基部72、支持リンク機構74、方向付けプラットフォーム76、複数の外側セットアップリンク機構78(二つ図示されている)、複数の内側セットアップリンク機構80(二つ図示されている)及び複数の手術器具マニピュレータ82を含む。マニピュレータ82のそれぞれは、マニピュレータ82に装着された手術器具を選択的に関節動作させるように機能することができ、挿入軸に沿って患者体内に挿入可能である。マニピュレータ82のそれぞれは、複数のセットアップリンク機構78,80のうちの一つに取り付けられ、それによって支持される。外側セットアップリンク機構78のそれぞれは、第一のセットアップリンク機構関節84によって、方向付けプラットフォーム76に対して回転可能に結合させられ、それによって支持される。内側セットアップリンク機構80のそれぞれは、方向付けプラットフォーム76に対して固定的に結合させられ、それによって支持される。方向付けプラットフォーム76は、支持リンク機構74に対して回転可能に結合させられ、それによって支持される。そして、支持リンク機構74は、取付け基部72に対して固定的に取り付けられ、それによって支持される。
【0050】
多くの実施形態において、取付け基部72は動作可能であり、床に支持されている。それにより取付け基部72は、例えば手術室内での全手術システム70の選択的な再配置を可能にしている。取付け基部72は、選択的な再配置及び選択されたポジションからの取付け基部72の動きを選択的に防止することを提供する、可動な車輪アセンブリ及び/又は如何なる他の適切な支持機構でも含み得る。取付け基部72はまた、その他の適切な構成、例えば、天井取付け台、固定された床/台座取付け台、壁取付け台又は任意の他の適切な取付け面によって支持されるように構成された接合部分を有してもよい。
【0051】
支持リンク機構74は、方向付けプラットフォーム76を取付け基部72に対して選択的に配置し及び/又は方向付けるように機能することができる。支持リンク機構74は、柱状基部86、平行移動可能な柱状部材88、肩部関節90、ブーム基部部材92、ブーム第一段階部材94、ブーム第二段階部材96及び手首関節98を含む。柱状基部86は、取付け基部72に対して固定的に取り付けられている。平行移動可能な柱状部材88は、柱状基部86に対する平行移動のために、柱状基部86に対してスライド可能に結合している。多くの実施形態において、平行移動可能な柱状部材88は、垂直に方向付けられた軸に沿って柱状基部86に対して平行移動する。ブーム基部部材92は、肩部関節90によって、平行移動可能な柱状部材88に対して回転可能に結合している。肩部関節90は、ブーム基部部材92を水平面内で、平行移動可能な柱状部材88に対して選択的に方向付けるように機能することができる。平行移動可能な柱状部材88は、柱状基部86及び取付け基部72に対して固定された角度位置を有する。ブーム第一段階部材94は、水平方向にブーム基部部材92に対して選択的に平行移動する。多くの実施形態において、ブーム基部部材92及びブーム第一段階部材94の両方が、水平方向に一列に並ぶ。ブーム第二段階部材96は、同様に、水平方向にブーム第一段階部材94に対して選択的に平行移動する。多くの実施形態において、ブーム第一段階部材94及びブーム第二段階部材96の両方が、水平方向に一列に並ぶ。したがって、支持リンク機構74は、肩部関節90とブーム第二段階部材96の遠位側端部との間の距離を選択的に設定するように機能することができる。手首関節98は、ブーム第二段階部材96の遠位側端部を方向付けプラットフォーム76に対して回転可能に結合させる。手首関節98は、方向付けプラットフォーム76の取付け基部72に対する角度位置を選択的に設定するように機能することができる。
【0052】
複数のセットアップリンク機構78,80のそれぞれは、関連するマニピュレータ82を方向付けプラットフォーム76に対して選択的に配置し及び/又は方向付けるように機能することができる。複数のセットアップリンク機構78,80のそれぞれは、セットアップリンク機構基部リンク100、セットアップリンク機構延長リンク102、セットアップリンク機構平行四辺形リンク機構部104、セットアップリンク機構垂直リンク106、第二のセットアップリンク機構関節108及びマニピュレータ支持リンク110を含む。外側セットアップリンク機構78のセットアップリンク機構基部リンク100のそれぞれは、第一のセットアップリンク機構関節84の働きによって、方向付けプラットフォーム76に対して選択的に方向付けられることができる。図示された実施形態において、内側セットアップリンク機構80のセットアップリンク機構基部リンク100のそれぞれは、方向付けプラットフォーム76に対して固定的に取り付けられる。内側セットアップリンク機構80のそれぞれはまた、外側セットアップリンク機構と同じように、追加的な第一のセットアップリンク機構関節84を用いて、方向付けプラットフォーム76に対して回転可能に取り付けられてもよい。セットアップリンク機構延長リンク102のそれぞれは、水平方向に、関連するセットアップリンク機構基部リンク100に対して平行移動可能である。多くの実施形態において、関連するセットアップリンク機構基部リンクとセットアップリンク機構延長リンク102が、水平方向に一列に並ぶ。セットアップリンク機構平行四辺形リンク機構部104のそれぞれは、セットアップリンク機構垂直リンク106を垂直に方向付けられた状態に保ちながら、垂直方向に、セットアップリンク機構垂直リンク106を選択的に平行移動させるように構成され、機能することができる。複数の例示的な実施形態において、セットアップリンク機構平行四辺形リンク機構部104のそれぞれは、第一の平行四辺形関節112、結合リンク114及び第二の平行四辺形関節116を含む。第一の平行四辺形関節112は、結合リンク114をセットアップリンク機構延長リンク102に対して回転可能に結合させる。第二の平行四辺形関節116は、セットアップリンク機構垂直リンク106を結合リンク114に対して回転可能に結合させる。第一の平行四辺形関節112は、セットアップリンク機構垂直リンク106が選択的に垂直に平行移動する間、セットアップリンク機構垂直リンク106を垂直に方向付けられた状態に維持するために、セットアップリンク機構延長リンク102に対する結合リンク114の回転が、反対に作用する(counteracting)結合リンク114に対するセットアップリンク機構垂直リンク106の回転と同等になる(matched by)ように、第二の平行四辺形関節116に対して回転可能に結び付けられる。第二のセットアップリンク機構関節108は、マニピュレータ支持リンク110をセットアップリンク機構垂直リンク106に対して選択的に方向付け、それにより、関連する取り付けられたマニピュレータ82をセットアップリンク機構垂直リンク106に対して方向付けるように機能することができる。
【0053】
図7は、多くの実施形態による、ロボット手術システム120の透視図法による模式的な表示である。手術システム120は
図6の手術システム70の構成要素と同様の構成要素を含むため、同様の構成要素については同一の参照番号が使用され、上記で説明した同様の構成要素の対応する記述は、手術システム120に対して適用可能であり、ここでは繰り返しを避けるために省略される。手術システム120は、取付け基部72、支持リンク機構122、方向付けプラットフォーム124、複数のセットアップリンク機構78(4つ図示されている)及び複数の手術器具マニピュレータ82を含む。マニピュレータ82のそれぞれは、マニピュレータ82に装着された手術器具を選択的に関節動作させることができ、挿入軸に沿って患者体内に挿入可能である。マニピュレータ82のそれぞれは、複数のセットアップリンク機構126のうちの一つに取り付けられ、それによって支持される。セットアップリンク機構126のそれぞれは、第一のセットアップリンク機構関節84によって、方向付けプラットフォーム124に対して回転可能に結合させられ、それによって支持される。方向付けプラットフォーム124は、支持リンク機構122に対して回転可能に結合させられ、それによって支持される。そして、支持リンク機構122は、取付け基部72に対して固定的に取り付けられ、それによって支持される。
【0054】
支持リンク機構122は、方向付けプラットフォーム124を取付け基部72に対して選択的に配置し及び/又は方向付けるように機能することができる。支持リンク機構122は、柱状基部86、平行移動可能な柱状部材88、肩部関節90、ブーム基部部材92、ブーム第一段階部材94及び手首関節98を含む。支持リンク機構122は、肩部関節90とブーム第一段階部材94の遠位側端部との間の距離を選択的に設定するように機能することができる。手首関節98は、ブーム第一段階部材94の遠位側端部を方向付けプラットフォーム124に対して回転可能に結合させる。手首関節98は、方向付けプラットフォーム124の取付け基部72に対する角度位置を選択的に設定するように機能することができる。
【0055】
複数のセットアップリンク機構126のそれぞれは、関連するマニピュレータ82を方向付けプラットフォーム124に対して選択的に配置し及び/又は方向付けるように機能することができる。複数のセットアップリンク機構126のそれぞれは、セットアップリンク機構基部リンク100、セットアップリンク機構延長リンク102、セットアップリンク機構垂直リンク106、第二のセットアップリンク機構関節108、トルネード(竜巻,tornado)機構支持リンク128及びトルネード機構130を含む。セットアップリンク機構126のセットアップリンク機構基部リンク100のそれぞれは、関連する第一のセットアップリンク機構関節84の働きによって、方向付けプラットフォーム124に対して選択的に方向付けられることができる。セットアップリンク機構垂直リンク106のそれぞれは、垂直方向に、関連するセットアップリンク機構延長リンク102に対して選択的に平行移動可能である。第二のセットアップリンク機構関節108は、トルネード機構支持リンク128をセットアップリンク機構垂直リンク106に対して選択的に方向付けるように機能することができる。
【0056】
トルネード機構130のそれぞれは、トルネード関節132、結合リンク134及びマニピュレータ支持部136を含む。結合リンク134は、マニピュレータ支持部136をトルネード関節132に対して固定的に結合させる。トルネード関節130は、マニピュレータ支持部136を、トルネード機構支持リンク128に対してトルネード軸136の回りで回転させるように機能することができる。トルネード機構128は、マニピュレータ82の操作の遠隔中心(RC)がトルネード軸136によって交差されるように、マニピュレータ支持部134を配置し及び方向付けるように構成されている。したがって、トルネード関節132の機能は、関連する操作の遠隔中心(RC)を患者に対して動かすことなく、関連するマニピュレータ82を患者に対して再方向付けするために使用されることができる。
【0057】
図8は、
図7のロボット手術システム120の模式的な表示に一致する、多くの実施形態によるロボット手術システム140の簡略化された表示である。手術システム140は
図7のロボット手術システム120と同じであるため、類似した構成要素については同一の参照番号が使用され、上記で説明した類似した構成要素の対応する記述は、手術システム140に対して適用可能であり、ここでは繰り返しを避けるために省略される。
【0058】
支持リンク機構122は、支持リンク機構122の複数のリンクの間の、複数のセットアップ構造軸に沿った相対的な動きによって、方向付けプラットフォーム124を取付け基部72に対して選択的に配置し及び/又は方向付けるように構成されている。平行移動可能な柱状部材88は、第一のセットアップ構造(SUS)軸142に沿って、柱状基部86に対して選択的に再配置可能である。第一のSUS軸142は、多くの実施形態において垂直に方向付けられている。肩部関節90は、第二のSUS軸144の回りで、ブーム基部部材92を平行移動可能な柱状部材88に対して選択的に方向付けるように機能することができる。第二のSUS軸144は、多くの実施形態において垂直に方向付けられている。ブーム第一段階部材94は、第三のSUS軸146に沿って、ブーム基部部材92に対して選択的に再配置可能である。第三のSUS軸146は、多くの実施形態において水平に方向付けられている。手首関節98は、第四のSUS軸148の回りで、方向付けプラットフォーム124をブーム第一段階部材94に対して選択的に方向付けるように機能することができる。第四のSUS軸148は、多くの実施形態において垂直に方向付けられている。
【0059】
複数のセットアップリンク機構126のそれぞれは、セットアップリンク機構126の複数のリンクの間の、複数のセットアップ関節(SUJ)軸に沿った相対的な動きによって、関連するマニピュレータ82を方向付けプラットフォーム124に対して選択的に配置し及び方向付けるように構成される。第一のセットアップリンク機構関節84のそれぞれは、第一のSUJ軸150の回りで、関連するセットアップリンク機構基部リンク100を方向付けプラットフォーム124に対して選択的に方向付けるように機能することができる。第一のSUJ軸150は、多くの実施形態において垂直に方向付けられている。セットアップリンク機構延長リンク102のそれぞれは、第二のSUJ軸152に沿って、関連するセットアップリンク機構基部リンク100に対して選択的に再配置されることができる。第二のSUJ軸152は、多くの実施形態において水平に方向付けられている。セットアップリンク機構垂直リンク106のそれぞれは、第三のSUJ軸154に沿って、関連するセットアップリンク機構延長リンク102に対して選択的に再配置されることができる。第三のSUJ軸154は、多くの実施形態において垂直に方向付けられている。第二のセットアップリンク機構関節108のそれぞれは、第三のSUJ軸154の回りで、トルネード機構支持リンク128をセットアップリンク機構垂直リンク106に対して選択的に方向付けるように機能することができる。トルネード関節132のそれぞれは、関連するマニピュレータ82を関連するトルネード軸138の回りで回転させるように機能することができる。
【0060】
図9は、多くの実施形態による、方向付けプラットフォーム124に対する、セットアップリンク機構126の回転位置制限を示す。複数のセットアップリンク機構126のそれぞれは、方向付けプラットフォーム124に対する時計回りの制限位置で示されている。対応する反時計回り制限位置は、垂直に方向付けられた鏡面に対する
図9の鏡像によって表される。図示されるように、二つの内側セットアップリンク機構126のそれぞれは、縦の基準156から一方の方向に5度から、縦の基準156から反対の方向に75度まで方向付けられることができる。また、図示されるように、二つの外側セットアップリンク機構126のそれぞれは、縦の基準156から、対応する方向に15度から95度まで方向付けられることができる。
【0061】
使用中に、手術助手、外科医、技術的支援者又はその他の使用者にとって、しばしば、手術のためにロボット手術システム140のリンク機構のいくつか又は全てを構成又は設定する(configure)ことが望ましいことがある。そのリンク機構は、セットアップ構造リンク機構、セットアップ関節及び/又は各マニピュレータを含む。手首関節98の垂直な第四のSUS軸148の回りで、第一段階部材94に対して方向付けプラットフォーム124を配置することが、これらのリンク機構を構成する作業の中に含まれ得る。関節駆動モータ121及び/又は制動システム123が手首関節98に結合し、一つの例示的な実施形態は、駆動部121及び制動機123の両方を含む。加えて、関節センサシステムは、主として手首関節98の角度又はポジションを感知してもよい。
【0062】
使用のためにシステムを手動で構成するための、一つの例示的な使用者インターフェイス、システム及び方法が本明細書において記述される。その記述は、矢印127によって模式的に示されるような、第四のSUS軸148の回りでの、手首関節98の関節動作による方向付けプラットフォーム124の手動での関節動作を参照してなされる。全運動学的システムの一つ以上の代替的な関節を関節動作させるために、代替的な実施形態が利用されてもよいことが理解されるべきである。その一つ以上の代替的な関節は、セットアップ構造の一つ以上の代替的な関節、セットアップ関節の一つ以上の関節又はマニピュレータリンク機構の一つ以上の関節を含んでもよい。モータの付いた手首関節実施形態を関節動作させるための例示的な実施形態の使用は、使用者が、効率的にマニピュレータ82を配置することを可能にすることができる。本明細書において記述されるような手首関節98の手動での関節動作は、
図5Bに示されるように、複数のマニピュレータ82をそれらの関連するカニューレ64にドッキングさせながら、速さ及び使用の容易さを改善することができる。
【0063】
図10は、多くの実施形態による、ロボット手術システム160のための支持リンク機構の回転制限に関連する重心図を示す。ロボット手術システム160の複数の構成要素が、手術システム160の支持リンク機構164に対して最大限に一方側にロボット手術システム160の重心162の位置を動かすように配置及び方向付けされているので、取付け基部の所定の安定性制限を超えることを防止するために、支持リンク機構164の肩部関節は、セットアップ構造(SUS)肩部関節軸166の回りでの支持リンク機構164の回転を制限するように構成されてもよい。
【0064】
図11は、手首関節98を関節動作させることによって方向付けプラットフォーム124を配置するための方法を模式的に示す。概略的に前述したように、ロボットシステム140は、組織又は同種のものを治療するためのマスター追従モードにおいて使用されてもよい。ロボットシステムは、典型的に追従モードを停止することができ、また、構成モード(又は設定モード)を開始することができる(131)。構成モードは、使用者が、方向付けプラットフォームを第四のSUS軸148の回りで所望の方向付けに手動で構成することを可能にする。ひとたび構成モードに入ると、ステップ133において、手首関節98の現在の角度Θ
Cは、関節センサシステムによって感知され、所望の角度(要求される角度)Θ
Dとして設定される。プラットフォーム124によって支持される複数のマニピュレータのうちのいずれかにカニューレが装着されている場合は、ステップ135によって、システムは、手首関節の手動での動作を抑制するために、手首関節に対して制動機を適用し、構成モードを終了させることができる。
【0065】
構成モードにある間、プラットフォームが手首関節の回りで動かない場合は、システムプロセッサは、典型的に、設定された所望の角度Θ
Dを維持するために、手首関節98に関連付けられた関節モータに信号を送信することができる。それ故に、システムが軽く衝突を受け、押され又は引かれた場合に、手首モータは、誤差(error)Eに対する関節トルクを加えることによって、プラットフォームを、所望の角度に向かって押し戻すことができる。誤差Eは、感知された関節ポジションと所望の関節ポジションとの間の差だけ異なる。
【0066】
【数1】
ステップ137における所望の姿勢に向かうこの関節の駆動は、しばしば制限されることができ、使用者がリンク機構システムに対して十分な努力139を加えることによって手首関節のサーボ制御(servoing)に打ち勝つことを可能にする。例えば、関節感知システムが閾値量を超える関節の移動を示す場合、加えられた力に反対に作用させるためにモータに加えられているトルクが閾値量に到達した場合、関節の遠位側のリンク機構システムに加えられた、感知された力が閾値量を超える場合又は同様の場合に、プロセッサは、関節の関節動作に反対に作用するための手首関節のサーボ制御を停止することができる。いくつかの実施形態において、例えば、閾値を超える時間の間の閾値を超えるトルクに応じて、サーボ制御を停止することによって、サーボ制御に打ち勝つための努力閾値の時間要素が存在してもよい。閾値力又はトルクと時間との間のより複雑な関係、手首関節(又はその他の関節動作可能な関節)に支持されたある特定の関節機構又は関節機構のサブセットに力が加えられたことを感知すること、等を含む更に他の選択肢が可能である。一つの例示的な実施形態において、方向付けプラットフォームとセットアップ構造システムの残りとの間の関節センサが、方向付けプラットフォームに加えられたトルクを評価するために使用される信号を提供し、関節の変位とサーボの堅さが、手術用アーム及び/又はセットアップ関節に加えられた外乱トルクを評価されるために使用される。一つの追加的、例示的な実施形態において、ゆっくりとした信号又は一定の信号よりも一時的に押すことに対してシステムをより高感度にするために、誤差信号がフィルタにかけられてもよい。上記の誤差フィルタリングは、セットアップ構造が傾斜面上にある場合に、誤ったトリガーを制限しながら、トリガーをより高感度にすることができる。
【0067】
使用者が、要求される関節動作閾値を超えるために十分な努力で一つ以上の手術マニピュレータセットアップ関節リンク機構又は直接的にプラットフォームを押すか又は引く場合に、使用者は、サーボ制御と奮闘する必要なく、方向付けプラットフォームを回転させることができる。ステップ141において、プラットフォームの使用者動作に対抗するためのサーボ制御は停止されるが、なおも駆動信号は手首モータに送信されてもよい。例えば、摩擦補償、重力補償、運動量補償及び同様のものが、プラットフォームの手動での動作の間に適切な駆動信号を適用することによって、提供されてもよい(143)。例示的な補償駆動システムは、"Friction Compensation in a Minimally Invasive Surgical Apparatus"と表題がつけられた、Neimeyerの名による米国特許出願公開第2009/0326557号明細書、"Control System for Reducing Internally Generated Frictional and Inertial Resistance to Manual Positioning of a Surgical Manipulator"と表題がつけられた、Priscoらの名による米国特許出願公開第2011/0009880号明細書、及び同種のものにおいてより完全に記述される。いくつかの実施形態において、システムは、サーボ制御が停止された場合に、単独で又は駆動信号に加えて関節の運動の範囲の制限を利用してもよい。そのような運動の範囲制限は、それらが一方側である場合を除き、使用者が運動範囲制限を超えて押すときに、サーボ制御と同様に応答することがきる。
【0068】
ひとたび使用者が手動で手首を所望の方向付けの近くまで関節動作させると、使用者は、プラットフォームを減速させる傾向があり、所望の構成に到達した際には、プラットフォームの動作を停止させることになる。システムはこれを活用し、関節センサが、プラットフォームの動作がゼロの所望の閾値よりも低くなることを示すと、プロセッサは、それに応じて、その関節ポジションからの動作を抑制するように、所望の関節角度を再設定し、サーボ制御(又は制動)を再び開始する。使用者は、いくらかの行き過ぎを修正するために手動での関節の関節動作の方向を反転させることを欲するかも知れないため、プロセッサは、要求される滞留時間の間、関節動作の速度が閾値よりも低いままであるまで、サーボを再び手配することをしなくてもよい。
【0069】
複数の他の変形が、本発明の精神に含まれる。したがって、本発明は、様々な変更及び代替の構成を受け入れる余地があるが、本発明の特定の図解された実施形態が図面に示され、詳細に上記された。しかしながら、本発明を具体的な形式又は開示された形式に限定する意図は全くなく、対照的に、添付の特許請求の範囲において規定されたような本発明の精神及び範囲に含まれる全ての変更、代替の構成及び等価物を包含するように意図されていることが理解されるべきである。
【0070】
本発明の記述の文脈における(特に続く特許請求の範囲の文脈における)、用語“一つ”及び“ある”及び“前記の”並びに同様の参照の使用は、本明細書において異なる示唆がなされるか又は文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語“有する”、“備える”、“含む”及び“包含する”は、特に断りのない限り、無制限の(すなわち、“含むが、これに限定されない”を意味する)用語として解釈されるべきである。用語“接続される”は、たとえ何かが間に位置する場合でも、部分的又は完全に内部に包含される、取り付けられる又は一体に接合されるものとして解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において異なる示唆がなされない限り、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個別に参照することの簡単な方法として働くことを単に意図しており、それぞれの別個の値は、本明細書において個別に列挙された場合と同様に詳細な説明に組み込まれる。本明細書において記述される全ての方法は、本明細書において異なる示唆がなされるか又はそうでなければ文脈によって明確に否定されない限り、如何なる適切な順序でも実行されることができる。本明細書においてもたらされる如何なる及び全ての、例としての又は例示的な言葉(例えば、“のような”)の使用は、本発明の実施形態の理解を容易にすることを単に意図されており、別段の請求がなされない限り、本発明の範囲に限定を課さない。詳細な説明における如何なる言葉であっても、いずれかの特許請求の範囲にない要素を本発明の実践のために本質的なものとして示すものとして解釈されるべきでない。
【0071】
本発明の複数の好ましい実施形態が、発明者らが知る本発明を実施するための最良の形態を含め、本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の様々な変形が、前述の説明を読むことによって当業者にとって明らかになるであろう。発明者らは、当業者が適宜このような変形を利用することを予期し、そして発明者らは、本発明が本明細書において具体的に記述された以外の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用可能な法によって許容される限り、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された対象物の全ての変更及び等価物を含む。その上に、明細書等にこれに反する示唆がなされるか又は文脈上明確に矛盾しない限り、そのすべての可能な変形における複数の上述の要素の任意の組合せが本発明に包含される。
【0072】
本明細書において引用した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別にかつ具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。