特許第6247310号(P6247310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247310
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】リード線カットアンドクリンチ装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20171204BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H05K13/04 J
   H05K13/08 M
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-544630(P2015-544630)
(86)(22)【出願日】2013年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2013079099
(87)【国際公開番号】WO2015063827
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】麻生 要
(72)【発明者】
【氏名】出蔵 和也
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰成
(72)【発明者】
【氏名】東 利美
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−289899(JP,A)
【文献】 特開2004−200606(JP,A)
【文献】 特開平06−061696(JP,A)
【文献】 特開平05−175696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の貫通穴に挿通され、その回路基板の裏面側へ突出させられた電子回路部品のリード線の突出部を、設定長さに切断するとともに回路基板の裏面に沿って折り曲げるリード線カットアンドクリンチ装置であって、
それぞれ先端面に第1刃を備えた一対の固定爪と、
それら固定爪の前記先端面の各々に沿って移動可能であり、前記第1刃の各々と共同してリード線をせん断する第2刃をそれぞれ備えた一対の可動爪と、
前記固定爪と前記可動爪とを1セットとする2セットの爪セットの間隔を変更する爪セット間隔変更装置と、
前記2セットの爪セットの各々において、前記可動爪を前記固定爪に対して相対的に移動させることにより、前記第1刃と前記第2刃とにリード線をせん断させるとともに曲げさせる可動爪駆動装置と、
前記固定爪の各々の、前記先端面の各々に対して前記可動爪の各々とは反対側へ離れた部分に、それら各固定爪とは電気絶縁層により絶縁された状態で固定された各接点部材と、
前記爪セットの位置が設定位置にある状態で、リード線が前記第1刃と前記第2刃との各々の間に挿入された後、前記可動爪駆動装置による前記可動爪の移動前に、前記爪セット間隔変更装置に前記爪セットの間隔を設定距離変更させることにより、前記接点部材の各々とリード線の各々とを接近させる事前爪セット間隔制御部と、
前記接点部材の各々と前記固定爪の各々との間に形成され、常には開状態にあるが、前記第1刃と前記第2刃との各間に挿入された各リード線により、前記絶縁層を跨いで前記接点部材と前記固定爪とがそれぞれ電気的に接続されることによって閉状態となる一対の検出回路と
を含むリード線カットアンドクリンチ装置。
【請求項2】
前記事前爪セット間隔制御部が、電子回路部品のリード線が設定長さより短い場合には前記爪セット間隔変更装置に前記爪セットの間隔変更を行わせ、リード線が設定長さ以上である場合には前記爪セットの間隔変更を行わせないものである請求項1に記載のリード線カットアンドクリンチ装置。
【請求項3】
前記固定爪が、リード線が挿入されるリード線挿入孔を備え、そのリード線挿入孔と前記先端面との交線により前記第1刃が形成され、前記可動爪が、リード線を前記リード線挿入孔に案内する案内穴を備え、その案内穴の前記固定爪側の開口周縁に前記第2刃が形成された請求項1または2に記載のリード線カットアンドクリンチ装置。
【請求項4】
前記固定爪の前記リード線挿入孔の前記先端面に隣接した部分に内向きの第1フランジ部が形成され、前記電気絶縁層が、(a)前記リード線挿入孔の内周面と覆う円筒部と、(b)その円筒部の前記第1フランジ部に隣接する部分に形成されて第1フランジより内径が大きい第2フランジとを備え、前記接点部材が、前記電気絶縁層の前記円筒部の内周面を覆い、内径が前記第1フランジより大きい円筒状の接点パイプである請求項3に記載のリード線カットアンドクリンチ装置。
【請求項5】
前記固定爪の前記リード線挿入孔の前記先端面に隣接した部分に内向きの第1フランジ部が形成され、前記電気絶縁層が、(a)前記リード線挿入孔の内周面と覆う円筒部と、(b)その円筒部の前記第1フランジ部に隣接する部分に形成されて第1フランジより内径が大きい第2フランジとを備え、前記接点部材が、概して円筒状を成し、前記電気絶縁層の前記円筒部の内周面を覆い、内径が前記第1フランジの内径より小さいが前記第2フランジに近づくにつれて内径が漸増し、最終的には内径が前記第1フランジの内径より大きくなる接点パイプである請求項3に記載のリード線カットアンドクリンチ装置。
【請求項6】
さらに、前記固定爪の前記リード線挿入孔へのリード線の挿入開始から前記事前爪セット間隔制御部の制御による前記爪セットの間隔変更終了までの間に前記検出回路が前記閉状態となった場合に、前記リード線挿入孔へのリード線の挿入が正常に行われたと判定する第1判定部を含む請求項3ないし5のいずれかに記載のリード線カットアンドクリンチ装置。
【請求項7】
さらに、前記固定爪の前記リード線挿入孔へのリード線の挿入開始から前記可動爪駆動装置による前記可動爪の移動終了までの間に前記検出回路が前記閉状態とならなかった場合に、前記リード線挿入孔へのリード線の挿入が正常に行われなかったと判定する第2判定部を含む請求項3ないし6のいずれかに記載のリード線カットアンドクリンチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板(以下、特に必要がない限り基板と略称する)のリード線挿入用貫通穴に挿入された電子回路部品(以下、特に必要がない限り部品と略称する)のリード線を切断するとともに、基板の裏面に沿って曲げるリード線カットアンドクリンチ装置(以下、特に必要がない限りカットアンドクリンチ装置と略称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に装着されて電子回路を構成する部品の中には、リード線を有するリード線付部品がある。このリード線付部品は、基板に形成された貫通穴にリード線が挿入され、基板の裏面から突出したリード線が適切な長さに切断された後、基板の裏面に沿って曲げられることにより、基板に装着される。そのために使用されるカットアンドクリンチ装置の一例が下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−224093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたカットアンドクリンチ装置は、リード線を切断して曲げる本来の機能に加えて、リード線が正常に挿入孔に挿入されたか否かと、カットアンドクリンチ装置にリード線の切断屑が詰まっていないか否かを検出し、正常に挿入されていない場合、および切断屑が詰まった場合には、カットアンドクリンチ装置の作動を停止させる機能を備えている。本発明は、この種のカットアンドクリンチ装置をさらに改良することを課題として為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって、(a)それぞれ先端面に第1刃を備えた一対の固定爪と、(b)それら固定爪の前記先端面の各々に沿って移動可能であり、前記第1刃の各々と共同してリード線をせん断する第2刃をそれぞれ備えた一対の可動爪と、(c)前記固定爪と前記可動爪とを1セットとする2セットの爪セットの間隔を変更する爪セット間隔変更装置と、(d)前記2セットの爪セットの各々において、前記可動爪を前記固定爪に対して相対的に移動させることにより、前記第1刃と前記第2刃とにリード線をせん断させるとともに曲げさせる可動爪駆動装置と、(e)前記固定爪の各々の、前記先端面の各々に対して前記可動爪の各々とは反対側へ離れた部分に、それら各固定爪とは電気絶縁層により絶縁された状態で固定された各接点部材と、(f)前記爪セットの位置が設定位置にある状態で、リード線が前記第1刃と前記第2刃との各々の間に挿入された後、前記可動爪駆動装置による前記可動爪の移動前に、前記爪セット間隔変更装置に前記爪セットの間隔を設定距離変更させることにより、前記接点部材の各々とリード線の各々とを接近させる事前爪セット間隔制御部と、(g)前記接点部材の各々と前記固定爪の各々との間に形成され、常には開状態にあるが、前記第1刃と前記第2刃との各間に挿入された各リード線により、前記絶縁層を跨いで前記接点部材と前記固定爪とがそれぞれ電気的に接続されることによって閉状態となる一対の検出回路とを含むカットアンドクリンチ装置が得られる。
本発明の望ましい態様においては、前記固定爪が、リード線が挿入されるリード線挿入孔を備えたものとされ、そのリード線挿入孔と前記先端面との交線により前記第1刃が形成され、また、可動爪が、リード線をリード線挿入孔に案内する案内穴を備えたものとされ、その案内穴の前記固定爪側の開口周縁に前記第2刃が形成される。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明に係るカットアンドクリンチ装置においては、一対の爪セットが設定位置にある状態で、リード線が第1刃と第2刃との間に挿入された後、可動爪駆動装置による可動爪の移動前に、事前爪セット間隔制御部による爪セット間隔変更装置の制御により、爪セットの間隔が設定距離変更される。その結果、各第1刃と第2刃との間に各リード線が正常に挿入されていれば、各接点部材と各リード線とが接近させられ、各接点部材と各固定爪とが各リード線により電気絶縁層を跨いで導通させられ、あるいは、爪セットの間隔変更に続いてカットアンドクリンチが行われることにより、各接点部材と各固定爪とが導通させられる。その導通が各検出回路により検出されることにより、各リード線の正常挿入が検出される。爪セット間隔変更装置による間隔変更が行われない場合には、リード線の正常挿入が検出されない状態においても、間隔変更の実行により正常挿入が検出されるようになるのである。
そして、固定爪がリード線挿入孔を備え、可動爪が案内穴を備えた望ましい態様のカットアンドクリンチ装置によれば、リード線の外曲げ時においても内曲げ時においても、上記本発明の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例であるカットアンドクリンチ装置を、爪セットの間隔が最小の状態で示す斜視図である。
図2図1に示すカットアンドクリンチ装置を、爪セットの間隔が最大の状態で示す斜視図である。
図3】上記カットアンドクリンチ装置の側面図である。
図4】上記カットアンドクリンチ装置の要部を示す側面断面図である。
図5図4の一部拡大図である。
図6図5の一部をさらに拡大して示す図である。
図7】上記カットアンドクリンチ装置の爪セット近傍の拡大斜視図である。
図8】上記爪セットにリード線が挿入された状態を、可動爪50の一部を除去して示す斜視図である。
図9図8に示した状態の正面断面図である。
図10図9に示した状態からカットアンドクリンチの一動作が行われた状態を示す正面断面図である。
図11】カットアンドクリンチの別の一動作が行われた状態を示す正面断面図である。
図12】上記カットアンドクリンチ装置の制御装置を示すブロック図である。
図13】上記制御装置のカットアンドクリンチルーチンを示すフローチャートである。
図14図10に示したカットアンドクリンチの実行前における爪セット間隔変更の必要性を説明するための図である。
図15図10に示したカットアンドクリンチの実行時における固定爪14と接点パイプ94とのリード線110による導通を説明するための図である。
図16】本発明の別の実施例における爪セット間隔変更に伴う固定爪14と接点パイプ94とのリード線110による導通の一過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態としての実施例を、図を参照しつつ説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0009】
図1ないし3にカットアンドクリンチ装置の一例を示す。このカットアンドクリンチ装置10は、基板を水平な姿勢で搬送して予め定められた位置に固定して保持する基板搬送保持装置,部品を供給する部品供給装置,およびその部品供給装置から部品を受け取って基板搬送保持装置に保持された基板に装着する装着装置を含む電子回路部品装着機の一構成要素として設けられるものである。装着装置は、部品保持具として、一対の爪により部品の本体部またはリード線部を挟んで保持する保持爪、あるいは負圧により部品の本体部を吸着保持する吸着ノズルを備えた装着ヘッドと、その装着ヘッドを水平面内において互いに直交するX軸およびY軸と鉛直なZ軸とにそれぞれ平行な方向に移動させるヘッド移動装置と、装着ヘッドを鉛直軸線まわりに回転させるヘッド回転装置とを備えたものとされる。カットアンドクリンチ装置は、基板の貫通穴に挿入された部品のリード線を所定の長さに切断するとともに、基板の裏面に沿って曲げることにより、部品を基板に仮止めする装置であり、このカットアンドクリンチ装置10も、カットアンドクリンチ装置移動回転装置により、上記X軸,Y軸およびZ軸に平行な方向に移動させられるとともに鉛直軸線まわりに回転させられる。以上の装置はいずれもよく知られたものであるため、図示および詳細な説明は省略し、以下、カットアンドクリンチ装置10自体について詳細に説明する。
【0010】
カットアンドクリンチ装置10は装置本体12を備えており、この装置本体12には直線的な固定爪ガイド14が水平に設けられ、この固定爪ガイド14により一対の固定爪16が互いに接近離間可能に支持されている。なお、装置本体12,固定爪16および後述の可動爪50は、加工,組み立ての都合や、摩耗時の部分的交換等のために、複数の部材をボルト等により固定して一体的な部材とされているが、本発明とは直接関係がないため、一体の部材として説明する。
【0011】
一対の固定爪16は、間隔変更装置20によって位置を変更され、これら固定爪16の間隔が図1に示す最小の状態から図2に示す最大の状態まで変更され得る。間隔変更装置20は、右ねじ部22と左ねじ部24とを同軸に備えた雄ねじ部材26と、雄ねじ部材回転駆動装置28とを備えている。雄ねじ部材回転駆動装置28は、駆動源としてのサーボモータ32と、ギヤ34をはじめとする回転伝達機構36とを備えており、図12に示すカットアンドクリンチ装置制御部150のサーボモータ制御部152によるサーボモータ32の制御により、雄ねじ部材26を任意の角度回転させ得る。間隔変更装置20はさらに、右ねじ部22と左ねじ部24とにそれぞれ螺合され、各固定爪16に固定されたナット38を備えており、サーボモータ制御部152の制御によって、一対の固定爪16の間隔を任意に調整可能である。なお、雄ねじ部材26とナット38とはボールねじ機構を構成している。
【0012】
上記一対の固定爪16の各々には、可動爪50および可動爪駆動装置52がそれぞれ保持されており、各固定爪16と共に移動可能とされている。各可動爪50は、図3に最も明瞭に示されているように、各固定爪16に固定された直線状の可動爪ガイド54により案内され、固定爪16の移動方向と平行な方向に移動可能である。可動爪駆動装置52は、駆動源として、各固定爪16にそれぞれ保持されたエアシリンダ60を備え、これらエアリンダ60の鉛直方向の作動が、運動変換機構62により、可動爪50の水平方向の運動に変換される。運動変換機構62は、各固定爪16に鉛直方向に延びる状態で固定された直線的なカムガイド68に案内されるカム70を備えており、カム70には鉛直方向に対して傾斜したカム溝72が形成されている。このカム溝72に、可動爪50に水平な回転軸線まわりに回転可能に取り付けられたカムフォロワとしてのローラ74が係合させられており、エアシリンダ60によりカム70が昇降させられるとき、一対の可動爪50が水平方向に、かつ、互いに対称に相対移動させられる。
【0013】
固定爪16には、図4および図5に示すように、鉛直方向に延びるリード線挿入孔80が形成され、そのリード線挿入孔80と上端面との交線に沿って、図6に示すように刃82が形成されている。一方、可動爪50は、概して固定爪16に沿って鉛直方向に延びているが、上端部が直角に曲げられて刃形成部84とされており、その刃形成部84の下面が固定爪16の上端面に近接させられている。刃形成部84には、図6に最も明瞭に示されているように、リード線案内穴 (以下、案内穴と略称する) 86が形成され、それの内周面の下端部と刃形成部84の下面との交線に沿って刃88が形成されている。案内穴86は、刃88が形成された側の端から反対側の端に向かって直径が漸増させられて内周面がテーパ内周面とされており、最終的には直径が加速度的に増大させられて、案内穴86の内周面と刃形成部84の上面との成す角が丸められている。さらに、刃形成部84の上面には、カットアンドクリンチの実行時に所定の長さに切断されたリード線の通過を許容するために逃がし溝90が形成されている。
【0014】
リード線挿入孔80内には、接点部材としての接点パイプ94が配設されている。接点パイプ94は固定爪16に対して、上部が絶縁層96により、その他の部分は図示を省略する絶縁テープにより電気的に絶縁されている。詳しくは、図6に示すように、絶縁層96が円筒部98とフランジ部100とを備え、円筒部98が、接点パイプ94の外周面とリード線挿入孔80の内周面との間に介在させられ、フランジ部100が、接点パイプ94の上端面とリード線挿入孔80の開口部に設けられたフランジ部102との間に介在させられているのである。フランジ部100の内径はフランジ部102の内径より僅かに大きくされて、図9に示すように、リード線110が挿入された場合に、フランジ部100がフランジ部102とリード線110との接触を妨げないようにされている。この構成は、フランジ部100がリード線110との接触により損傷あるいは摩耗させられることを防止する上でも有効である。また、接点パイプ94の内径もフランジ部102の内径より僅かに大きくされて、リード線110の挿入時にリード線110の下端縁が接点パイプ94の上端縁に係合しないようにされている。
上記のように、接点パイプ94と固定爪16とは電気的に絶縁されているが、図4,5に示すように、合成樹脂製の絶縁部材120により固定爪16と電気的に絶縁された状態で設けられた接続ピン122が接点パイプ94に接触させられており、この接続ピン122にコネクタ124によりリード線126が接続されている。
【0015】
なお、リード線挿入孔80は、機能上は「孔」と称すべきものであるが、実際には接点パイプ94および絶縁層96の固定爪16への組み込みの都合で、図8に示すように、固定爪16の可動爪50と対向する側の面に溝130が形成され、接点パイプ94,絶縁層96,絶縁部材120および接続ピン122が外部で一体的に組み立てられた後、絶縁層96が、固定爪16に精度良く形成された位置決め溝部132に嵌合されて位置決めされつつ、接点パイプ94が溝130に収容され、固定される。したがって、厳密には、リード線挿入孔は接点パイプ94の内周面により形成されることとなる。
【0016】
装置本体12には、図4に示すように、カットアンドクリンチ動作によりリード線110から切り離されたリード線片140を収容する収容器142が設けられており、案内路144によりリード線挿入孔80(換言すれば接点パイプ94)の下端開口に連ならされている。
【0017】
この以上説明したカットアンドクリンチ装置10の制御部たるカットアンドクリンチ装置制御部150は図12に示す制御装置160の一部を成すものである。制御装置160は、電子回路部品装着機全体を制御するものであり、前述の部品供給装置,基板搬送保持装置および装着装置をそれぞれ制御する部品供給制御部,基板搬送保持制御部および装着制御部とともに、カットアンドクリンチ装置移動回転装置を制御するカットアンドクリンチ装置移動回転制御部を備えているが、詳細な説明は省略する。
カットアンドクリンチ装置制御部150は、前述のサーボモータ制御部152の他に、エアシリンダ60を切換バルブ154を介して制御するエアシリンダ制御部156と、それぞれ1つずつの固定爪16と可動爪50とから成る2セットの爪セットの各々に対応して設けられた前記接点パイプ94と固定爪16との導通を検出する2つの検出回路158とを含んでいる。
【0018】
制御装置160は、ROM161,RAM162,PU163および入出力インタフェース164を含むコンピュータ165と、電子回路部品装着機の各部に対する指令を入力するための操作を行う操作部おおび各部に関する情報を表示する表示部およびスピーカを含む操作・報知パネル166およびそれの制御部である操作・報知制御部168を備えており、ROM161に記憶されている各種プログラムの実行により、基本的に自動で電子回路部品装着機を制御するのであるが、それらプログラムのうち、カットアンドクリンチ装置10に関連する部分であるカットアンドクリンチルーチンを図13に示す。このルーチンは、電子回路部品装着機の制御プログラムの一部として実行される。
【0019】
基板搬送保持装置に基板が位置決め保持された状態で、装着装置により部品供給装置から次に装着すべき部品が受け取られ、移動させられるのと並行して、S1の位置決めおよび間隔変更が実行される。部品はアキシャル部品,ラジアル部品等形態は問わないが、ここでは、部品保持具により本体部が保持されて、一対のリード線110が設定ピッチで互いに平行にかつ鉛直に延びる姿勢で基板169の上方に移動させられ、基板169の貫通穴170に対して位置決めされるものとする。S1の実行時には、一対の固定爪16と可動爪50とのセットである爪セットの案内穴86およびリード線挿入孔80の中心線が上記設定ピッチのリード線110の中心線と一致するようにされ、S1の実行後、S2において、図9に示すように、リード線110が貫通穴170および爪セットへ挿入されることが待たれ、挿入が完了すると、S3において、部品のリード線110が設定長さ以上であるか否かが、予め設定されているリード線長さデータに基づいて判定され、判定結果がNOであれば、S4において爪セットの間隔変更が行われる。すなわち、カットアンドクリンチ動作が、図10に示すように、一対のリード線110の貫通穴170から下方への突出部172を互いに遠ざかる向き(以下、外向きと称する)に曲げるものである場合(以下、外曲げと称する)には、2セットの爪セットの間隔(2セットの爪セットの案内穴86およびリード線挿入孔80の中心線の間隔)が設定量広げられ、また、図11に示すように、一対のリード線110の貫通穴170から下方への突出部172を互いに近づく向きに曲げるものである場合(以下、内曲げと称する)には、2セットの爪セットの間隔が設定量狭められるのである。
【0020】
その理由を、外曲げの場合を例として、図14,15に基づいて説明する。リード線110が設定長さより短い場合には、爪セット間隔の変更を行うことなくカットアンドクリンチ動作が行われると、図14に示すように、リード線110の先端が接点パイプ94の内周面に接触する前に、中間部がフランジ部102に接触し、リード線110が固定爪14と接点パイプ94とを導通させることが妨げられる。その後は可動爪50がさらに外向きに移動させられても、リード線110の先端部は外向きには移動せず、フランジ部102への接触を保ちつつリード線挿入孔80から抜け出すのみとなる。その結果、リード線110の先端部は可動爪50とフランジ部102とにより内向きに曲げられる傾向となり、リード線110の先端はむしろ接点パイプ94の内周面から遠ざかることとなって、接点パイプ94には接触しない。
【0021】
それに対し、先ず爪セットの間隔が設定距離以上広げられ、その後にカットアンドクリンチ動作が行われれば、リード線110の先端部の鉛直線に対する傾斜角度が大きくなるため、図15に示すように可動爪50によりカットアンドクリンチ動作が行われる際に、リード線110の中間部がフランジ部102に接触する前に接点パイプ94の内周面と接触する。その後、さらに可動爪50が移動させられれば、リード線110の先端部が可動爪50と接点パイプ94とにより内向きに曲げられる傾向となり、やがて接点パイプ94とフランジ部102との両方に接触して両者を導通させ、その事実がPU163によりRAM162のリード線挿通検出メモリたる導通検出メモリに記憶させられる。それ以後はリード線110の先端が接点パイプ94の内周面から遠ざかり、リード線110がフランジ部102への接触を保ちつつリード線挿入孔80から抜け出すこととなる。
以上はリード線110が設定長さより短い場合について説明したが、設定長さより長い場合は、爪セットの間隔が広げられることなくカットアンドクリンチ動作が行われても、リード線110の中間部がフランジ部102に接触する前に先端が接点パイプ94の内周面に接触し、それ以後は爪セットの間隔が広げられた場合について説明した上記と同じ現象が生じて、固定爪14と接点パイプ94とがリード線110により導通させられ、RAM162の導通検出メモリに記憶される。
【0022】
以上の理由により、リード線110が設定長さより短い場合はS4の爪セット間隔変更が行われた後にS5のカットアンドクリンチ動作が実行され、設定長さ以上である場合にはS4をバイパスしてS5が実行されるのであり、いずれの場合にもカットアンドクリンチ動作の実行後に、S6において、S2からS5までの実行の間のいずれかの時点において固定爪14と接点パイプ94とがリード線110により導通させられ、その事実が導通検出メモリに記憶させられたか否かの判定が行われ、判定の結果がYESであれば、S7において、次の部品の装着動作等、装着機の次の動作が実行されるのであるが、判定の結果がNOであれば、S8において、RAM162の導通検出メモリに導通検出が記憶させられていないことに基づいて装着機の作動が停止させられるとともに、操作・報知パネル166による異常警告が行われる。具体的には、音声による「リード線110の挿入が正常に行われなかった」旨の報知と、2セットの爪セットのうちリード線110の正常挿入が検出されなかったものの状況の画面への表示とが行われるのである。
【0023】
それに応じて、作業者は、リード線110が正常に挿入されるようにするために必要な処置を行う。この処置の中には、例えば、カットアンドクリンチ装置10の整備や、カットアンドクリンチルーチンの変更が含まれる。このカットアンドクリンチルーチンの変更は、例えば、「S3における接点パイプ94の移動量を増すことが許容され、かつ、それによりリード線110の正常挿入が可能になるか」を判断し、判断の結果が肯定であれば、操作・報知パネル166の操作により、接点パイプ94の移動量を増すべきことを指令すること等、リード線110の正常挿入が検出されるようにする上で,有効と考えられる処置である。
【0024】
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、カットアンドクリンチルーチンのS2からS5までのいずれかの実行中に検出回路が閉状態となった場合に、リード線挿入孔へのリード線の挿入が正常に行われたと判定されるようになっているが、S5のカットアンドクリンチ動作開始前にリード線の挿入が正常に行われたと判定する第1判定部と、S5の実行終了までに検出回路が閉状態とならなかった場合に、リード線挿入孔へのリード線の挿入が正常に行われなかったと判定する第2判定部とを設けることも可能である。
【0025】
上記実施例においては、リード線が設定長さより短い場合にのみS4の爪セット間隔変更が実行されるようにされているため、必要のない場合に爪セット間隔変更が行われる無駄を省き得る利点があるが、リード線の長さ如何を問わず爪セット間隔変更が行われるようにすることも可能である。
また、固定爪14のフランジ部102の内径が接点パイプ94の内径より小さくされていたが、図16に示すように、接点パイプ94の内径の方が小さい状態とすることも可能である。このようにすれば、カットアンドクリンチの実行前の爪セット間隔の変更に伴い、先ず接点パイプ94が図16に矢印で示す向きに移動してリード線110の突出部172に接触し、その後更に同方向に移動することにより、突出部172を撓ませて接点パイプ94と可動爪50との両方がリード線110に接触する瞬間、すなわち接点パイプ94と固定爪14とのリード線110による導通が検出される瞬間が生じるのである。ただし、本実施例においては、リード線110のリード線挿入孔80への挿入に際して、接点パイプ94の上端との当接により挿入が妨げられることを回避するために、図16に示すように、接点パイプ94の内周面の上端部に比較的緩やかなテーパ付して、接点パイプ94の上端面がフランジ102により完全に覆われるようにすることが必要である。また、リード線110は接点パイプ94と固定爪14とを直接導通させるのではなく、可動爪50ならびに、可動爪50と固定爪14とを導通させている他の部材を介して間接的に導通させるのである。さらに付言すれば、本実施例においては、爪セットが、先の実施例の場合とは逆に、カットアンドクリンチ動作のための可動爪50の移動の向きとは逆の向きに移動させられることが、不可欠ではないが、望ましい。
【0026】
以上は、リード線110の外曲げと内曲げとの両方が可能なカットアンドクリンチ装置について説明したが、外曲げあるいは内曲げのいずれか一方のみが可能なものとすることも可能であり、その場合は、固定爪や可動爪がリード線110の全周を囲むリード線挿入孔80や案内穴86を有するものである必要はなく、互いに共同してリード線110をせん断し得る第1刃と第2刃とを備えたものであればよい。
【符号の説明】
【0027】
10:カットアンドクリンチ装置 14:固定爪 20:間隔変更装置 50:可動爪 52:可動爪駆動装置 80:リード線挿入孔 82:刃 86:リード線案内穴(案内穴) 88:刃 94:接点パイプ 96:絶縁層 110:リード線 150:カットアンドクリンチ装置制御部 158:検出回路 169:回路基板(基板) 170:貫通穴 172:突出部
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