(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247312
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】磁気装荷型複合ロータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20171204BHJP
C08J 5/10 20060101ALI20171204BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20171204BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20171204BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
B29B11/16
C08J5/10CFC
B29C70/32
H02K15/02 K
B29K105:08
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-548752(P2015-548752)
(86)(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公表番号】特表2016-504220(P2016-504220A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】GB2013053282
(87)【国際公開番号】WO2014096787
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月17日
(31)【優先権主張番号】1223001.7
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511042821
【氏名又は名称】ジーケーエヌ ハイブリッド パワー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリン デーヴィッド タラント
【審査官】
大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特表平07−502400(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02491975(GB,A)
【文献】
特開昭54−054178(JP,A)
【文献】
特開2002−095208(JP,A)
【文献】
特開平04−214327(JP,A)
【文献】
特開2004−122683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
B29C 70/00−70/88
H02K 1/00−1/16;1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
H02K 15/00−15/02
H02K 15/04−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック材料のロータの製造方法であって、
縦軸を有する回転可能なマンドレルを提供するステップ(a)と、
上記マンドレルに離型剤を塗布するステップ(b)と、
上記縦軸の方向に延びる繊維を有する繊維材料を上記マンドレルの上記離型剤上に適用するステップ(c)と、
磁性粒子が実質的に上記マンドレルに侵入しないように適用される上記繊維材料上に上記磁性粒子を含む磁気装荷型トウを供給するステップ(d)とを含んでいる
ことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記繊維材料は、織られておりかつ平織り、模紗織、四枚朱子織、八枚朱子織または綾織りのいずれか1つである
ことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
上記繊維材料は、樹脂が予備含浸されたガラス繊維もしくは炭素繊維のクロス、生地、フェルトまたはマットで作られている
ことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
上記ステップ(d)は、複数層のマルチフィラメントのガラストウ、および樹脂と磁性粒子との混合物を上記繊維材料に供給することを含み、ドクタープレートが、上記樹脂と磁性粒子との混合物を上記繊維材料と上記複数層のマルチフィラメントのガラストウの各々の間とに向かって上記繊維材料を通り抜けないで押し付けるように構成されている
ことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記ガラストウは、上記マンドレル上の上記繊維材料の軸方向長さよりも小さい幅を有していて、上記縦軸の方向に巻回されている
ことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項において、
上記ステップ(d)は、
樹脂含浸繊維を含む少なくとも1つの中間層を上記繊維材料の周りに巻回して上記中間層の繊維同士の間の空間を規定するステップと、
フィラー状の磁性材料および樹脂のマトリクス材料を含む混合物を上記空間に配置するステップと、
樹脂含浸繊維を含む外側層を上記中間層の周りに巻回するステップと、
ゲル化のプロセスにおいて上記樹脂がゲル化する前の液相であるとき、上記フィラー状の磁性材料を所望の向きに配列させるために磁場を与えるステップと、
上記樹脂を硬化させるステップと、
上記磁性材料を磁化するステップとをさらに含んでいる
ことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項において、
上記ステップ(d)は、
磁気装荷型予備含浸テープを形成するために、熱可塑性樹脂溶液と溶媒がドープされた異方性磁性材料とを繊維テープ材料に含浸させるステップと、
異方性の上記磁気装荷型予備含浸テープと熱可塑性樹脂含浸繊維トウとを加熱ステーションに送るステップと、
磁気装荷型複合テープを作り出すために、上記熱可塑性樹脂含浸繊維トウと上記磁気装荷型予備含浸テープとを接合するために上記加熱ステーションで加熱するステップと、
所望の磁場配位での磁化の前に上記異方性磁性材料を整列させるために、上記磁気装荷型複合テープを磁気的に活発化されたマンドレル上に巻回するステップとを含んでいる
ことを特徴とするロータの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により製造された磁気装荷型複合ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気装荷型複合(MLC)ロータおよびそのようなロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MLCロータは、フライホイールとも称され、例えば30,000rpmを超える高速で回転し、蓄電装置およびモータの少なくとも一方として作動する電気モータ/発電機において使用され得る。
【0003】
ロータは、ロータと併用されるステータの電気コイルに対してエネルギーが加えられるか、または取り出されるかにより、モータまたは発電機として作動し得る。
【0004】
MLCロータを使用することにより、高速において飛散し得る個別の磁石が不要になるという効果が得られる。
【0005】
例えばエポキシ樹脂等の未硬化エポキシ樹脂マトリックスに埋め込まれた繊維トウ、すなわちガラス繊維、炭素繊維またはカーボンナノチューブのような人工繊維の無撚連続繊維束を使用して形成された複合フライホイールが、EP−B−06
67987およびPCT/GB2012/051367に記載されている。
【0006】
EP−B−0667987では、乾燥ガラス繊維トウ、例えば等方性NdFeBのような粉末磁性材料で構成されたスラリー、および熱硬化性樹脂であってもよい未硬化エポキシ樹脂がマンドレル上に巻回されている。開示された方法は、スラリー層を形成するためにマンドレル上にスラリーを徐々に送る一方、同時に、スラリー層上に間隙構造の乾燥ガラス繊維トウの層を巻回させる。間隙構造の間隙はスラリーで満たされるため、ガラス繊維トウがMLCスラリー層を閉じ込め、圧搾して必要な樹脂レベルを与える。MLCスラリーの過剰樹脂はガラス繊維に含浸されて所望の構造を製造するために使用される。そして、巻回構造はマンドレル上でゲル化および硬化される。
【0007】
そのようなMLCロータの製造方法は、必要な構造を形成するために樹脂およびNdFeB粉末スラリーの流動性に依存している。
【0008】
流動性があることにより、使用している異方性NdFeB粒子は配向磁石の磁極周辺に凝集する傾向にあるため、粒子に伴う残留磁束密度の利益を得るために必要な手順を採用することができなくなる。
【0009】
そのような凝集は高速フライホイールに有害なアンバランスを引き起こし、ロータおよびステータ組立品の故障の原因となり得る。
【0010】
そのような既知の方法に関連する問題は、PCT/GB2012/051367の開示において、少なくとも部分的に軽減されている。
【0011】
これを参照すると、磁気装荷型予備含浸テープが、熱可塑性溶液および溶媒がドープされた異方性磁性粒子材料と共に繊維テープを含浸させる。
【0012】
ロータは、磁気装荷型予備含浸テープおよび熱可塑性樹脂含浸繊維トウを加熱ステーションでマンドレル上に巻回することにより形成され、トウとテープとを接合するために加熱ステーションにおいて熱を利用する。
【0013】
そのようなロータは、商業的に実用的であるために、適当な生産速度および非常に高精度に製造される必要があることは尊重されるだろう。マンドレルは、ロータを形成して硬化させた後に、ロータがマンドレルから外れる必要があるように、再利用可能であることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
粉末状の磁性材料は、硬くて非常に鋭く製造工程の間においてロータの半径方向内側面に向き合う傾向にあり、よって、硬化したMLCロータをマンドレルから取り外すのを妨げながらマンドレルをすり減らす。よって、マンドレルから硬化したMLCロータを取り外すためには大きな力が必要となり、マンドレルに近接していた最も内側の硬化層を傷つけ、さらにはマンドレルの仕上げを傷つける可能性がある。EP−B−06
67987における上述の欠点を軽減しようとして、MLCロータの巻回よりも先に予備含浸ガラス繊維トウがマンドレル上に巻回された。しかしながら、まだ、ガラス繊維トウを通過して、マンドレルの表面に移動する磁性材料粉末が存在し、それはロータの取り外しの妨げとなる。
【0015】
上記ガラス繊維トウの巻回よりも先にマンドレルを離型剤層で被覆する方法も発見されているが、マンドレル自体は傷つかなくとも、そのような離型剤層が磁性粒子により傷つく傾向がある。
【0016】
それに加えて、ロータの内側面から微小クラックが広がることが発見され、これらの微小クラックは少なくとも部分的に、樹脂およびガラス繊維の両方の材料に作用する力によるものと信じられている。磁性材料の粒子は、樹脂およびガラス繊維がロータの内側面を横切って流れる原因となる。
【0017】
本発明は、少なくとも部分的に上述した問題を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の側面によると、繊維強化プラスチック材料のロータの製造方法であって、縦軸を有する回転可能なマンドレルを提供するステップ(a)と、上記マンドレルに離型剤を塗布するステップ(b)と、上記縦軸の方向に延びる繊維を有する繊維材料を上記マンドレルの上記離型剤上に適用するステップ(c)と、磁性粒子が実質的に上記マンドレルに侵入しないように適用される上記繊維材料上に上記磁性粒子を含む磁気装荷型トウを供給するステップ(d)とを含んでいる。
【0019】
好ましくは、上記繊維材料は、織られておりかつ平織り、模紗織、四枚朱子織、八枚朱子織または綾織りのいずれか1つである。
【0020】
その代わりに、少なくとも上記縦軸の方向において配列された繊維を構成する不織布、フェルトまたはマットである。
【0021】
好都合なことには、上記繊維材料は、樹脂が予備含浸されたガラス繊維もしくは炭素繊維のクロス、生地、フェルトまたはマットで作られている。
【0022】
1つの実施形態では、ステップ(d)は、複数層のマルチフィラメントのガラストウまたはテープ、および樹脂と磁性粒子との混合物を上記繊維材料に供給することを含み、ドクタープレートが、上記樹脂と磁性粒子との混合物を上記繊維材料と上記複数層のマルチフィラメントのガラストウの各々の間とに向かって上記繊維材料を通り抜けないで押し付けるように構成されている。
【0023】
好都合なことには、上記ガラストウは、上記マンドレル上の上記繊維材料の軸方向長さよりも小さい幅を有していて、上記縦軸の方向に巻回されている。
【0024】
別の実施形態では、ステップ(d)は、樹脂含浸繊維を含む少なくとも1つの中間層を上記繊維材料の周りに巻回して上記中間層の繊維同士の間の空間を規定するステップと、フィラー状の磁性材料および樹脂のマトリクス材料を含む混合物を上記空間に配置するステップと、樹脂含浸繊維を含む外側層を上記中間層の周りに巻回するステップと、ゲル化のプロセスにおいて上記樹脂がゲル化する前の液相であるとき、上記フィラー状の磁性材料を所望の向きに配列させるために磁場を与えるステップと、上記樹脂を硬化させるステップと、上記磁性材料を磁化するステップとをさらに含んでいる。
【0025】
さらに別の実施形態では、ステップ(d)は、磁気装荷型予備含浸テープを形成するために、熱可塑性樹脂溶液と溶媒がドープされた異方性磁性材料とを繊維テープ材料に含浸させるステップと、異方性の上記磁気装荷型予備含浸テープと熱可塑性樹脂含浸繊維トウとを加熱ステーションに送るステップと、磁気装荷型複合テープを作り出すために、上記熱可塑性樹脂含浸繊維トウと上記磁気装荷型予備含浸テープとを接合するために上記加熱ステーションで加熱するステップと、所望の磁場配位での磁化の前に上記異方性磁性材料を整列させるために、上記磁気装荷型複合テープを磁気的に活発化されたマンドレル上に巻回するステップとを含んでいる。
【0026】
本発明の特徴によると、第1の側面に基づいて製造された磁気装荷型複合ロータが提供される。
【0027】
本発明の第2の側面によると、縦軸の方向に延びる繊維を有し、複数層の磁気装荷型トウまたはテープにより被覆された樹脂予備含浸繊維材料を備えていることを特徴とする磁気装荷型複合ロータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明に係る繊維材料の第1の層が形成されたマンドレルの斜視図である。
【
図2】
図2は、磁気装荷型複合ロータを形成するための装置の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明によって作られたロータを示す図である。
【
図4】
図4は、磁気装荷型複合テープを製造するための別の装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0030】
図面中では、同じ参照番号は同じ部品を示す。
【0031】
図1では、円筒状で中空のマンドレル1は、その上にロータが形成されるものであって、長手方向に延びる軸2を有している。マンドレルの外側面の少なくとも一部は、商業的に利用可能な離型剤3で被覆されている。離型剤は、ワックス、ポリビニルアルコール、あるいは例えばwww.fibreglast.comから入手可能なFibRelease(登録商標)のような商業的に利用可能なあらゆる離型剤であってもよい。離型剤の表面に被覆されているのは、少なくとも一層の繊維材料4であって、好ましくは予備含浸ガラス繊維クロス材料であり、縦軸2の方向に延びる繊維を含んでいる。
【0032】
繊維材料は、その代わりに、不織布、フェルトもしくはマット、または縫い合わせられたクロスであってもよい。
【0033】
予備含浸ガラス繊維クロスは、もともと粘着性がありかつプレカットされてマンドレルの表面上に巻かれて、そして加熱硬化される。
【0034】
織られた材料の他の例として以下のものがある。
【0035】
[平織り]
この織り方のパターンでは、たて糸とよこ糸とが交互の様式で互いに上下になるように絡み合わせられる。平織りは、所与の番手に対して、安定性および多孔性が良く、糸のずれが最も少ない。
【0036】
[模紗織]
模紗織は、比較的小さい番号の糸が求められる場合に使用される。模紗織は、二本以上のたて糸を互いにまたいで交差させて一本以上のよこ糸と絡み合わせることにより、糸を所定位置に固定する。
【0037】
[四枚朱子織]
四枚朱子織は平織りよりもしなやかであって、典型的に強化プラスチックにおけるカーブした表面により容易に適合する。この織りパターンでは、3本のたて糸の上および1本のたて糸の下をよこ糸が通る3×1芯地が存在する。
【0038】
[八枚朱子織]
この織りパターンは、1本のよこ糸が7本のたて糸の上および1本のたて糸の下を通ることを除いて四枚朱子織に似ている。この織り方は非常にしなやかであって、大きく湾曲した表面を形成するのに使用され得る。
【0039】
[綾織り]
綾織りは、平織りよりもしなやかでより良いドレープ性を有している一方、四枚朱子織または八枚朱子織よりも安定した構造を維持する。その織りパターンは、1本のたて糸が少なくとも2本のよこ糸の上を通ることにより生み出される斜め模様のリブにより特徴づけられる。
【0040】
繊維材料はまずマンドレルに適用され、この例では好ましくは電気伝導性がなく、好ましくは、織られて樹脂が予備含浸されて、たて糸またはよこ糸が縦軸2の方向に延びる状態でマンドレルに適用される。
【0041】
重要なことに、予備含浸繊維材料は、(後述するように)引き続き適用される磁性粒子材料が繊維材料を通って離型剤3の表面上に移動しないように、粉末の侵入に対して抵抗を有している。
【0042】
図2は、概略図であって、MLCロータを形成するための装置を示している。マンドレルはモータ(図示せず)によって駆動される。マンドレルは、矢印21で示すように、シリンダの内部に熱した空気を供給する適当な熱源(図示せず)によって加熱されてもよい。マンドレル1は巻上機(図示せず)に取り付けられていて、当該マンドレルは矢印22の方向に回転するように配置されている。熱可塑性樹脂含浸トウ24は、矢印26の方向に回転可能なドラム25から供給される。トウ材料24は、1,000〜3,000本、好ましくは2400本のより糸のマルチフィラメントを有している。トウ24は、マンドレル上の繊維材料4の軸方向長さよりも小さい幅を有していて、両矢印27で示すように、縦軸2の方向に沿って前後に織られるように配置されている。コンテナ28は、60〜100℃まで加熱された溶剤、ポリエーテルエーテルケトン(PEAK)およびポリエーテルイミド(PEI)を含む、樹脂と異方性NdFeB粒子材料の混合物を保持している。コンテナ28からの樹脂と磁性粒子との混合物はトウ24に適用される。
【0043】
ドクターまたはスクレーパブレード29はトウの上に位置していて、トウ表面の径が増加するように取り付けられており、そのためブレードは立てられている。よって、ドクターブレード29は、樹脂および磁性粒子をトウの内部および各トウラップの間に押し込むスクィージとして作用する。トウおよびドクターブレードは、適当な厚さのロータを作り上げるために、両矢印27の方向に動かされる。
【0044】
本方法により製造されたロータが
図3に示されている。MLCロータ30は、少なくとも、繊維材料、例えば予備含浸織布で作られた第1の径方向内側層31を有している。
【0045】
本発明では、繊維材料は結合層として作用し、ロータが運転中で250,000g近くの慣性力の下で動作しているときに、トウ24の軸方向クリープを防止する。
【0046】
図2はロータを製造するための1つの装置を示しているが、ロータは他の方法を用いて製造されてもよく、軸方向に強化された最も内側の繊維材料4の層を備えるという共通要素があればよい。
【0047】
よって、離型剤および繊維材料の内側層を有するマンドレルは、
図1を参照して上記に記載したように提供され、そして装置はEP−B−06
67987に記載されたものであってもよい。未硬化のエポキシ樹脂が含浸された炭素繊維またはガラス繊維のトウは内側の繊維材料4上に巻き付けられる。
【0048】
未硬化のエポキシ樹脂が含浸された炭素繊維のトウの中間層は、互いに180°位相がずれた関係で繊維材料4上に巻き付けられる。トウの間の空間は、減磁された状態の磁性粒子材料および未硬化のエポキシ樹脂で満たされる。未硬化のエポキシ樹脂が含浸された繊維のトウの外側層は、上述したトウの中間層上に巻き付けられる。外部ケーシングは似たような方法で形成され、磁性粒子材料を整列させるために磁場が適用される。エポキシ樹脂は適当な加熱環境で硬化される。
【0049】
その他の構成では、
図1を参照して上述したようにマンドレルが提供される。そして、ロータを形成するための装置は、PCT/GB2012/051367に記載されたものと大体において同様である。よって、
図4を参照すると、熱可塑性樹脂含浸トウ24は、プリテンションローラ65,66,67を経て、加熱ステーション69に配置された転圧ガイドローラ68へ送られる。加熱ステーション69では、レーザ70から加熱エネルギーが供給される。レーザ70は、加熱ステーション69において350〜400℃の温度のパルス照射または連続エネルギーを供給する2kWレーザであってもよい。また、加熱ステーション69には、磁気装荷型予備含浸テープ80が供給され、これはテンションローラ81,82を経て送られる。トウ24およびテープ80は、加熱ステーション69で一緒になり、MLCロータを形成するためにマンドレルの縦軸の方向において軸方向に移動させられる。形成後は、オーブン中でロータを300℃まで加熱することにより応力開放が行われてもよい。
【0050】
本発明は、MLCロータがその上に形成される上述した向きの繊維材料の内側層を提供し、マンドレルからロータを取り外すのを容易にする。さらに、MLCロータの層の軸方向クリープを防止し、従って、ロータの内側層からの径方向のクラッキングを防止する。そのような特徴は、MLCロータの疲労寿命を大幅に長くするという効果を有する。