【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様において、本発明は関連する生体組織において標的構造を特定するように構成される医用イメージングシステムを提供し、システムは以下を有する:
‐生体組織の第一の表面領域をカバーするハイパースペクトル画像を提供するように構成されるハイパースペクトルカメラシステム。ハイパースペクトル画像のピクセルは異なる光波長帯域における情報を含む。
‐標的構造を示す情報とともに生体組織の第二の表面領域のプローブ測定を提供し、それに従ってプローブ測定データを生成するように構成されるプローブ。第二の表面領域は第一の表面領域より小さく、プローブは標的構造の特定に関してハイパースペクトルカメラシステムよりも高い特異性を提供するように選択される。
‐ハイパースペクトル画像とプローブ測定データを受信するように機能的に接続されるプロセッサ。プロセッサは標的構造を含む可能性があるハイパースペクトル画像の部分を特定するためにハイパースペクトル処理アルゴリズムに従ってハイパースペクトル画像を分析するように構成され、プロセッサはさらに、ハイパースペクトル画像において標的構造を特定する感度が増大した較正されたハイパースペクトル処理アルゴリズムを提供するように、プローブ測定データを分析し、それに応じてハイパースペクトル処理アルゴリズムを較正するように構成される。
【0006】
本発明は、十分に大きな領域の画像を非常に迅速に、ただしかなり限られたスペクトル分解能で、従って生体組織内の標的構造の特定に関してかなり低い特異性で、提供するために、ハイパースペクトル画像が使用され得るという点で、前述の問題を解決する。しかしながら、それでもハイパースペクトル画像は疑わしい領域、すなわち標的構造が存在する一定の可能性があると予想され得る領域を特定するために使用されることができる。そしてハイパースペクトル画像はオペレータによって、例えばディスプレイ上の視覚表示を用いて、ハイパースペクトル画像によってカバーされる第一の表面領域内のどの(複数の)位置が、標的構造の特定に関してより高い特異性を提供するように選択されるプローブによって測定されるべきかを選択することを目指すガイドとして、使用され得る。従って、プローブは例えばハイパースペクトル画像よりも高いスペクトル分解能を提供することによって、ただし限られた測定領域という犠牲を払って、例えば点測定若しくは点状測定の形で、標的構造を特定するためによりよいデータを提供する。プローブ測定データを用いてハイパースペクトル画像処理アルゴリズムを修正若しくは較正して、標的構造、例えば腫瘍組織の特定に関してコントラスト及び/又は感度が増大した改良された画像が得られる。一つ若しくは限られた数のプローブ測定が実行された後、ハイパースペクトル画像処理アルゴリズムはそれに従って較正されており、較正されたアルゴリズムで処理されるリアルタイムハイパースペクトル画像が、さらなる標的構造の非常に迅速な検査を提供するために使用され得る。
【0007】
従って、より時間を消費するプローブで検査される疑わしい領域を指摘するために高速のハイパースペクトルカメラが使用される。しかしながら、単一の点状プローブ測定であっても、標的構造を特定する感度の増大を目指してハイパースペクトル画像を著しく改良するために使用され得ることがわかる。このように、本発明の医用イメージングシステムは切除後の断端陽性のロバストで時間効率のよい特定を提供し得る。これはシステムが術中に使用されることを可能にし、従って、後の検査で全腫瘍組織がうまく除去されていないことがわかる場合、手術をやり直す必要なく腫瘍外科手術中に全腫瘍組織を除去する可能性を増す。プローブのタイプ及びプローブ測定データのその後の処理は、好適には問題の特定標的構造の特定に対する高感度を提供することを目指して選択されるべきであることが理解される。
【0008】
腫瘍の特定の場合、ハイパースペクトルカメラシステムは組織標本の表面の可視画像とハイパースペクトル画像を作るために使用され、接触プローブ若しくは表面プローブは標本の表面付近の組織の内部を局所的に測定することができる。ハイパースペクトル画像はルックアップテーブルデータに基づいて疑わしい領域について分析され、疑わしいシグネチャについてプローブを分析することができる。プローブは、プローブ面が断端陽性を含むかどうかを示す信号を生成することができ、表面プローブで検査される領域はハイパースペクトル画像分析に基づいて可視画像内に示される。例えば数箇所でとられる表面プローブからの信号は、ハイパースペクトル画像を分析するために使用される2D‐画像処理アルゴリズムを較正するために使用される。プローブデータは特により大きなスペクトル範囲で、より高いスペクトル分解能で取得され、表面下の組織の部分もカバーし、従ってこれらの組織点の正確な評価を可能にし得る。これらの表面プローブ測定はインターベンション中に数回だけ(例えば2D‐スペクトル画像処理が大きな再構成不確実性を示すとき)なされる必要があり、一旦この表面プローブデータでこの較正が実行されており、システムが再較正されれば、オペレータは本発明に従ってハイパースペクトル画像から得られるリアルタイム2D‐結果を使用することができる、ということである。特に、表面プローブ測定の信号は、測定のときにプローブ先端位置を標本とレジストレーションするために可視画像の画像分析に基づいて可視画像及び/又はハイパースペクトル画像において注釈付けされる。
【0009】
腫瘍組織の特定は別として、イメージングシステムは例えば術中に生体組織の表面下の他の標的構造、例えば血管、神経束などの存在を特定するためにも使用され得る。これによって時間のかかる及び/又はインターベンショナルなプローブの必要性の範囲内でこのような血管及び神経束の不測の切開を回避することが可能である。
【0010】
好適な実施形態において、プローブ測定はハイパースペクトル画像よりも高いスペクトル分解能で取得される。特に、ハイパースペクトル画像はかなり低スペクトル分解能のオーバーラップスペクトル帯で取得され得るか、又はスペクトル帯は非オーバーラップであり、従っていかなる情報も伴わないスペクトル帯を持ち得る。従って、両方の場合において、プローブはより高いスペクトル分解能で測定データを提供し、従ってこれは生体組織内の標的構造の特定に関してより高い特異性を可能にし得る。
【0011】
好適には、第二の表面領域は第一の表面領域内に位置するように選択され、従ってプローブ測定はハイパースペクトル画像によってカバーされる領域内で実行される。プローブがインターベンションデバイスである場合、"第一の表面領域内"とは、プローブ測定が第一の表面領域の表面下の生体組織内の点若しくは小領域において実行されることと理解されることが理解される。
【0012】
システムは、一部分の視覚表示と一緒にハイパースペクトル処理アルゴリズムで処理された後のハイパースペクトル画像を視覚的に表示するように構成され、例えば特殊シェーディング、着色、ハイライト、若しくは包囲が、標的構造を含む可能性があると特定される一つ若しくは複数の部分を図示するために使用され得る。
【0013】
システムは好適には較正されたハイパースペクトル処理アルゴリズムで処理された後のハイパースペクトル画像を視覚的に表示するように構成される。これによって、オペレータ、例えば医師は、較正されたアルゴリズムによる処理後に標的構造をよりよく可視化するように改良される、結果として得られるハイパースペクトル画像を検査することができる。
【0014】
プロセッサは、プローブ測定データをルックアップテーブルと比較することを有するプローブ処理アルゴリズムに従ってプローブ測定データを分析するように構成され得る。代替的に若しくは付加的に、プロセッサは複数の測定パラメータを計算すること、及び複数の測定パラメータを標的構造を示す生理学的パラメータに変換することを有するプローブ処理アルゴリズムに従ってプローブ測定データを分析するように構成され得る。
【0015】
プロセッサは、標的構造に属するとプローブ測定データにおいて特定されるハイパースペクトル画像内のピクセルのグルーピングを精緻化することによってハイパースペクトル処理アルゴリズムを較正するように構成され得る。このような改良されたハイパースペクトル画像内のピクセルのグルーピングは標的構造の改良された可視化を提供する。例えば同じ色若しくは明るさを与えられるピクセルのグルーピングはプローブ測定データから抽出されるパラメータに基づいて変更若しくは調整され得る。
【0016】
プローブは表面プローブ及び/又はインターベンションデバイスを有し得る。プローブは光学プローブ及び/又は超音波プローブを有し得る。どのプローブを使用するかの選択は生体組織とその中で特定される標的構造のタイプによって決まる。特に光学プローブは、拡散反射分光法プローブ、拡散光トモグラフィプローブ、光路長差分光法、蛍光プローブ、ラマン分光法プローブ、共焦点反射プローブ、共焦点蛍光プローブ、二光子蛍光プローブ、光コヒーレンストモグラフィプローブ、及び共焦点イメージングを実行するように構成されるスキャンファイバ顕微鏡のうちの一つを有し得る。
【0017】
好適には、ハイパースペクトルカメラシステムは二次元リアルタイム画像を提供するように構成され、従ってハイパースペクトル画像がモニタ上でプローブオペレータへ表示される場合にプローブ先端のリアルタイムナビゲーションを可能にする。ハイパースペクトルカメラシステムは一般に、(1)広帯域光源からの光に基づいてカメラ内部に波長分離を持つ専用ハイパースペクトルカメラ、(2)可変波長若しくは同調フィルタセットを持つ光源と標準カメラ、並びに(3)標準カメラの前の広帯域光源と同調フィルタのうちの一つに基づき得る。
【0018】
ハイパースペクトルカメラ、すなわちタイプ(1)は典型的には高価であり、一方タイプ(2)及び(3)は標準カメラに基づく。しかしながら、それらは他の利点に悩まされる。例えば、異なる波長光での照明によるソリューションは、高品質画像を生成するために環境が暗くなることを要する。ハイパースペクトルカメラシステムに関する"An introduction to hyperspectral imaging and its application for security,surveillance and target acquisition",P.W.T.Yuen,M.Richardson,The Imaging Science Journal,Vol.58,2010,p.241‐253を参照。従って、一実施形態において、ハイパースペクトルカメラシステムは以下のうちの一つを有する:
‐ハイパースペクトル画像を提供するように構成されるハイパースペクトルカメラ。
‐標準カメラ及び異なる狭帯域波長を持つ複数の光源、及び生体組織が複数の光源によって連続的に照明される画像を提供するように構成されるコントローラ。
‐標準カメラ、及び同調光学フィルタの異なる設定で連続画像を提供するように、標準カメラと生体組織の間に配置される同調光学フィルタ。
【0019】
プロセッサは、ハイパースペクトル画像のどの部分にプローブ測定データが対応するかを特定するよう、ハイパースペクトル画像においてプローブの先端を特定するために画像処理アルゴリズムに従ってハイパースペクトル画像を処理するように構成され得る。この実施形態において、ハイパースペクトル画像のどの部分に所与のプローブ測定が当てはまるかを自動的に特定することが可能であり、これは測定中にプローブの位置を決定するための他のタイプのロケーション手段と比較して迅速で信頼できる方法でハイパースペクトル処理アルゴリズムの較正を実行するために好適である。
【0020】
既に述べた通り、イメージングシステムは腫瘍組織、神経束、血管(動脈若しくは静脈)、リンパ節、及び組織の酸素化レベルなど、異なる標的構造の特定のために使用され得る。
【0021】
プロセッサは好適には適切なプロセッサシステム若しくはコンピュータ上での実行のために構成されるソフトウェアプログラムとして実装され得る制御アルゴリズムによって制御される。システムのプロセッサは、例えばハイパースペクトル画像を表示するディスプレイを含む、専用デバイスにおいて実装され得るか、又はシステムのプロセッサはサーバ若しくは汎用コンピュータ上で実行するように構成されるソフトウェアプログラムとして実装され得る。
【0022】
インターベンションデバイス及び/又は表面プローブのサイズと形状、例えば光学プローブの場合光ファイバの厚さと数は、所与のアプリケーションのために選択されることが理解される。
【0023】
第二の態様において、本発明は関連する生体組織において標的構造を検出するための方法を提供し、方法は以下のステップを有する:
‐関連する生体組織の第一の表面領域をカバーするハイパースペクトル画像を提供するステップ。ハイパースペクトル画像のピクセルは異なる光波長帯域に関する情報を含む。
‐標的構造を示す情報とともに生体組織の第二の表面領域のプローブ測定に従ってプローブ測定データを提供するステップ。第二の表面領域は第一の表面領域より小さく、第一の表面領域内に位置し、プローブ測定は標的構造の特定に関してハイパースペクトルカメラシステムよりも高い特異性を提供するように選択される。
‐標的構造を含むかもしれないハイパースペクトル画像の部分を特定するためにハイパースペクトル処理アルゴリズムに従ってハイパースペクトル画像を分析するステップ。
‐プローブ測定データを分析するステップ。及び、
‐ハイパースペクトル画像において標的組織構造を特定する感度が増大した、較正されたハイパースペクトル処理アルゴリズムを提供するよう、プローブ測定データ分析の結果に応じてハイパースペクトル処理アルゴリズムを較正するステップ。
【0024】
ハイパースペクトル画像を"提供"すること及びプローブ測定データを"提供"することは、"提供"が単に例えば保存若しくは送信されたデータなど、データを例えばデジタル形式で受信することを意味する方法のバージョンをカバーすることが理解される。しかしながら、方法の別のバージョンでは、"提供"は生体組織のハイパースペクトル画像を実際にとること、及び生体組織に対してプローブ測定を実行することもカバーする。
【0025】
当然のことながら第一の態様の同じ利点と実施形態は第二の態様にも当てはまる。一般に第一及び第二の態様は本発明の範囲内で可能ないかなる方法でも組み合わされ、結合され得る。本発明のこれらの及び他の態様、特徴及び/又は利点は以下に記載の実施形態から明らかとなり、それらを参照して解明される。
【0026】
第一の態様にかかるシステムと第二の態様にかかる方法は、腫瘍外科手術後の断端陽性の特定、組織表面下の血管(動脈若しくは静脈)の特定、組織表面下の神経束の特定、リンパ節、及び組織の酸素化レベルなど、複数のアプリケーションにおいて使用され得ることが理解される。
【0027】
本発明の実施形態は、ほんの一例として、図面を参照して記載される。