(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、処置(例えば、歯列矯正)の経過中に噛み締めた状態に対応する正確な3D歯列モデルを得ることは、重要なポイントの1つである。3Dカメラシステムを使用して患者から直接歯列の3Dモデルを作成することは、印象を鋳造し、修復のためにそれらをラボに送付する必要性を避ける。これは、費用を低減し、歯科修復のワークフローを簡素化する。
【0003】
全体的3D歯列モデルを構築するプロセスの場合、咬合採得のステップは、必要かつ重要なステップの1つである。咬合採得は、上顎を下顎と位置合せするプロセスであり、噛み締めた状態で上顎とその対応する下顎との間に3D空間位置決め関係を確立することができる。
【0004】
既存の3Dカメラシステムにおいて、咬合採得中、全体的3D歯列モデルを構築するために1つの咬合面しか必要とされない。この方法において、単一の咬合面は、走査装置によって噛み締めた歯の1つの特定の場所(例えば、臼歯の右側)から捕捉され、次に独立して捕捉された上顎及び下顎の3D歯列モデルは、咬合採得を完了するために半自動的方法で咬合面の上に貼り合せされる。しかしながら、全体的歯列が複数の歯(例えば、5個より多くの歯)を含むとき、咬合面の1つのみの場所から得られた咬合採得は、別の場所において著しい不整合につながり得る。例えば、臼歯の右側に対応する1つのみの咬合面が使用されるとき、遠位端(例えば、切歯又は臼歯の左側)に対応する咬合採得において数百ミクロンの不整合がある。したがって、咬合採得の総合精度を保証することは困難であり、この単一の咬合採得によって構築された最適な仮想全体的3D歯列モデルと、固有の噛み締めた状態の実際の全体的歯との間に大差が存在し得るという結果になる。
【0005】
Ross J.Millerらによる米国特許公報第2005/0196724号明細書は、印象材料で充填されたブロック(200)を使用して咬合構成を記録する、咬合採得のためのデバイスを開示している。明らかに、デジタルビジュアル咬合面を提供することはできないため、デジタル3Dカメラシステムに適合できない。
【0006】
さらに、Rudger Rubbertらによる米国特許第8121718号明細書は、歯列の口腔内走査に基づく相互歯列矯正ケアシステムを開示している。このシステムにおいて、上顎及び下顎の両方を咬合面の上に貼り合せするとき、それは手動的方法で完了される。また、歯列の3D仮想モデルを得るためにも1つのみの咬合面が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題を考慮して、本発明の目的は、少なくとも咬合採得の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的又は他の目的を実現するために、本発明は、次の技術的解決法を提供する。
【0010】
本発明の一態様により、咬合採得方法が提供され、この方法は、
a.上顎及び下顎の3次元(3D)歯列モデルを生成するステップと、
b.上顎及び下顎の一部分を同時に含む咬合面を獲得するステップと、
c.上顎及び下顎の3D歯列モデルを咬合面と位置合せするよう試みるステップと、
d.位置合せが成功した場合に、咬合面と位置合せされた上顎及び下顎の3D歯列モデルと一緒に咬合面を表示するステップと、
e.異なる表示された咬合面に対応する少なくとも2つの成功した咬合採得を得るように、ステップb〜ステップdを繰り返すステップと、
f.少なくとも2つの成功した咬合採得を評価することによって、1つ以上の成功した咬合採得を選択するステップと、
g.選択された1つ以上の成功した咬合採得を使用して、最終咬合採得を計算するステップと、を含む。
【0011】
本発明の別の態様により、咬合採得のためのシステムが提供され、システムは、
上顎及び下顎の3D歯列モデルを生成するための手段と、
上顎及び下顎の一部分を同時に含む咬合面を獲得するための手段と、
上顎及び下顎の3D歯列モデルを咬合面と位置合せするよう試みるための手段と、
位置合せが成功した場合に、咬合面と位置合せされた上顎及び下顎の3D歯列モデルと一緒に咬合面を表示するための手段と、
繰り返すことによって、異なる表示された咬合面に対応する少なくとも2つの成功した咬合採得を得るための手段と、
少なくとも2つの成功した咬合採得を評価することによって、1つ以上の成功した咬合採得を選択するための手段と、
選択された1つ以上の成功した咬合採得を使用して、最終咬合採得を計算するための手段と、を含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様により、走査装置及びコンピュータワークステーションを含む咬合採得のためのシステムが提供され、このワークステーションは、
上顎及び下顎の3D歯列モデルを生成することと、
上顎及び下顎の一部分を同時に含む咬合面を獲得することと、
上顎及び下顎の3D歯列モデルを咬合面と位置合せするよう試みることと、
位置合せが成功した場合に、咬合面と位置合せされた上顎及び下顎の3D歯列モデルと一緒に咬合面を表示することと、
異なる表示された咬合面に対応する少なくとも2つの成功した咬合採得を得るために、獲得するステップから表示するステップまでを繰り返すことと、
少なくとも2つの成功した咬合採得を評価することによって、1つ以上の成功した咬合採得を選択することと、
選択された1つ以上の成功した咬合採得を使用して、最終咬合採得を計算することと、を行うように構成される。
【0013】
本発明の上記及び他の目的と利益は、同一又は類似の要素が同一の参照記号によって示されている図面を参照し、以下の詳細な説明から完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多くの可能な実施形態の一部は、本発明の基本的な理解を提供するために以下に記載されるものであり、本発明の重要もしくは決定的な要素を特定する、あるいは保護の範囲を定義するためではない。本発明の技術的解決法により、当業者が本発明の真の趣旨から逸脱することなく他の代替実装を提案できることは容易に理解され得る。したがって、以下の実施形態及び添付の図面は、本発明の技術的解決法の例示的な説明であり、本発明の全体を構成するものとして、あるいは本発明の技術的解決法を制限もしくは定義するものとして見なされるべきでない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態による、咬合採得のためのシステムの概略構造図である。少なくとも、システム10を使用して咬合採得する。
図1に簡潔に示されるように、この実施形態において、システム10は、走査装置13及びコンピュータワークステーション91を含む。走査装置13は、歯科医が手で持ち、患者90の口に部分的に入れることができる。口に入れたとき、走査装置13は、必要に応じて歯列又は他の3Dビューの画像(複数可)を捕捉することができる。走査装置13及びワークステーション91は、走査装置13によって捕捉された画像又はビューが、データ処理又は実時間表示のためにワークステーションに転送され得るように、無線又は有線で接続され得る。当然のことながら、ワークステーション91によって生成されたいくつかの命令もまた、その動作を制御するように走査装置13に転送され得る。
【0017】
ワークステーション91は、少なくともモニター19を備え、ワークステーション91の制御下であらゆる種類の2D/3D画像又はウィンドウを表示することができる。咬合採得のソフトウェアは、ワークステーション91にインストールされ得る。ソフトウェアを実行するとき、ワークステーション91は、少なくとも全体的3D歯列モデルを構築するプロセスにおいて咬合採得ステップを完了させることができる、画像処理デバイスとして機能する。当然のことながら、このソフトウェアは、咬合採得ステップを行うことに制限されることはないが、全体的3D歯列モデルを時間内に実現するために使用され得る。したがって、必要に応じて、主に歯列に適合した3Dカメラシステムを構築するシステム10は、患者の全体的3D歯列モデルを構築するように機能することもできる。
【0018】
咬合採得のソフトウェア機能は、以下の図面と併せて以下に慎重に説明される。確実に、咬合採得方法は、全体的3D歯列モデルを構築するためにさらに適用され得る。
【0019】
図2は、本発明の実施形態による、咬合採得方法のワークフローである。この実施形態において、
図2の方法は、異なる咬合採得に対応する少なくとも2つの成功した咬合採得を得ることができる。以下の説明は、
図1〜10と併せて、少なくとも2つの成功した咬合採得を取得し、少なくとも1つの咬合採得をユーザが選択する、咬合採得のワークフローを説明する。
【0020】
最初に、S110のステップにおいて、歯科医は走査装置13を患者90の口内で操作し、したがって上顎及び下顎の複数の2D画像が異なる視点からそれぞれ捕捉され得る。複数の2D画像は、ワークステーション91に転送され、次に上顎及び下顎の3D歯列モデルを生成するように処理される。
【0021】
好ましい実施形態において、
図3に示されるように、S110は、以下のステップを含む。
S111:上顎又は下顎上の3D歯列面を、手持ち式走査装置13によって捕捉する
S112:捕捉された部分が特定の患者に対して最初のものか否かをワークステーション91において判断する
S114:捕捉された部分が走査中の最初のものである場合、捕捉された部分が受諾される
S117:S116において受諾に成功した場合、捕捉された3D歯列面を3D歯列モデルと組み合わせる
S113:捕捉された部分が最初のものでない場合、捕捉された部分を既存の3D歯列モデルの上に貼り合せするよう試みる
S115:捕捉された部分が成功裏に貼り合せされたか否かを判断する
S117:S115において貼り合せに成功した場合、捕捉された部分を既存の3D歯列モデルと組み合わせる。
したがって、既存の3D歯列モデルと組み合わされた捕捉された部分は、上顎又は下顎の最適に形成された3D歯列モデルをより正確にする。
【0022】
別の実施形態において、S110のステップにおける3D歯列モデルの生成方法は、いずれも発明の名称が「3D INTRAORAL MEASUREMENTS USING OPTICAL MULTILINE METHOD」である、2つの出願された特許の米国出願第13/293,308号及び出願第13/525,590号を参照することができる。これらの特許出願のそのような内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
さらに、S120のステップにおいて、上顎の一部分及び下顎の一部分を同時に含む咬合面が獲得される。この実施形態において、走査装置13は、数本の歯に対応する1つ以上の咬合ビュー(又は表面)を捕捉するような場所に設置される。走査装置13によって捕捉された咬合ビュー(複数可)は、上顎が下顎との関連で静的である、固有の噛み締めた状態で得られる。したがって、1つ以上の咬合ビューは、上顎及び下顎の一部分を同時に含む咬合面を形成することができる。特に、咬合ビューは、上顎及び下顎を含む3D表面であり、一実施形態において、異なる歯列にそれぞれ対応するいくつかの咬合ビューは、より大きな咬合面を形成するように1つのビューに組み合わされ得る。一実施例において、咬合面191は、
図5に示されるように、時間内にモニター上に表示され得る。
【0024】
咬合面191は、3D表面であり、1つ以上の咬合ビューに適用される画像処理の方法によって取得され得ることが理解できる。実施形態において、この方法は、S110のステップにおいて使用されるものと同様である。噛み締めた状態で捕捉されるため、走査装置13は、歯列の外側を撮像することが便利であることも理解できる。したがって、咬合面191は、通常は外側に特徴的な3D形状を表す3D表面であり、最終的に得られた全体的3D歯列モデルの機能を代行させることはできない。しかしながら、この咬合面は、全体的3D歯列モデルの精度を向上させるように、全体的マッチングの処理においてさらに使用され得る。咬合面191は、3D歯列モデルと位置合せするためにも使用されるため、咬合面191は、固有の噛み締めた状態で上顎及び下顎の一部を同時に含んでいなければならない。
【0025】
好ましい実施形態において、咬合面において観察される上顎及び下顎の一部分を変更することができる。例えば、S120のステップを繰り返し行うとき、咬合面は、噛み締めた上顎及び下顎の異なる部分から得ることができるため、獲得された咬合面の場所を変更することができる。選択可能な実施形態において、得られた咬合面は、切歯、小臼歯、臼歯からの部分を含み得るが、それらに限定されない。
【0026】
さらに、S130のステップにおいて、上顎及び下顎の3D歯列モデルを咬合面と位置合せするよう試みる。実施形態において、位置合せは、少なくとも咬合面の3D歯列面の一部分を上顎及び下顎の3D歯列モデルと貼り合せすることによって完了され得る。別の実施形態において、位置合せは、少なくとも獲得された咬合面の3D歯列面の一部分を下歯列弓又は上歯列弓のいずれかと貼り合せすることによって完了され得る。
【0027】
図6は、本発明の実施形態による、3D歯列モデルを咬合面と位置合せする概略ワークフローである。咬合面の3D歯列面の一部分と3D歯列モデルとの貼り合せは、S131〜S136のステップを含む。S131において、候補3D剛体変換を生成し、咬合面の3D歯列面を3D歯列モデルに対して配置する。S132において、3D歯列モデルに対する3D歯列面の相対配置を使用して、候補3D剛体変換の計量を評価する。S133において、最良の計量に対応する最良の3D剛体変換を選択する。S134において、最良の計量が既定の閾値を超えるか否かを判断し、最良の計量が既定の閾値を下回る場合は、対応する3D剛体変換を受諾するS136に入り、最良の計量が既定の閾値を超える場合は、貼り合せを拒否するS135に入り、これは貼り合せの失敗を意味する。
【0028】
貼り合せプロセスは、手動的方法、半自動的方法、又は自動的方法で完了され得ることに留意されたい。半自動的方法を使用する場合、特定の貼り合せ方法は、米国特許第8121718 B2号を参照することができる。他の好ましい実施形態において、貼り合せプロセスは、アルゴリズムに基づいて自動的に行われ得る。米国特許第8121718 B2号の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。位置合せプロセスにおいて使用される自動的方法は、ユーザの貴重な時間を大幅に節約し得ることが理解できる。したがって、咬合採得の速度だけでなく、ユーザ経験も向上する。
【0029】
さらに、S140のステップにおいて、S130における位置合せが成功したか否かを判断する。位置合せが成功した場合は、S150のステップに入り、すなわち、上顎及び下顎の3D歯列モデルと一緒に咬合面が表示され、位置合せが成功しなかった場合は、位置合せが成功するまで別の咬合面を獲得するようにS120のステップに戻る。
【0030】
図7は、本発明の別の実施形態による、位置合せが成功したときのユーザインターフェースの表示を示す。実施形態において、
図7に示されるように、106は、咬合面の上に貼り合せされた上顎/下顎の3D歯列モデルと一緒に咬合面を示し、これは1つの成功した咬合採得を表す。また具体的に、101は、アプリケーションウィンドウを示し、102は、アプリケーションメニューバーを示し、103は、アプリケーションワークスペースを示し、104は、初期配置の上顎の3D歯列モデルを示し、105は、初期配置の下顎の3D歯列モデルを示す。矢印は、位置合せのプロセスにおける上顎/下顎の3D歯列モデルの移動方向を表す。位置合せが成功したとき、成功した咬合採得に対応する変換を得て保管することができ、ユーザは、次のステップの最終咬合採得の計算においてそれを用いることができる。
【0031】
図8は、本発明の別の実施形態による、位置合せが成功しなかったときのユーザインターフェースの表示を示す。位置合せが成功しなかった場合、
図8のユーザインターフェースに示されるように、ユーザは、咬合面の位置合せ又は採得に失敗したという通知109を受け取る。また、咬合面は自動的に破棄されることがある。したがって、ユーザは、位置合せのアルゴリズム品質基準を満たす結果のみを入手し、これが咬合採得の精度の向上を助ける。一方で、咬合採得の別の循環プロセスを繰り返すように、S120に戻ることが必要である。
【0032】
さらに、S160のステップにおいて、ユーザは、別の成功した咬合採得を得るように、S120〜S150のステップを繰り返し行うことができる。S120〜S150のステップを繰り返す時間は、この実施形態によって制限されていない。ユーザは、少なくとも2つの成功した咬合採得を得るように、繰り返す時間を主観的に決定することができる。複数の成功した咬合採得は、ユーザによって保管され、自由に表示され得る。したがって、成功した咬合採得の全てを評価することはユーザにとって非常に便利であり、ユーザはさらに、次のステップにおいて、成功した咬合採得から好ましい変換を有するものを選択することができる。
図7及び
図8に示されるように、各ボタン107は、繰り返すプロセスを表す。実施例において、ボタン107は、成功した咬合採得が選択された場合、緑色に設定され得る。
【0033】
さらに、S170のステップにおいて、少なくとも2つの成功した咬合採得を評価することによって、少なくとも1つの成功した咬合採得を選択する。このステップにおいて、上顎及び下顎106の3Dモデルを有する咬合面を、異なる視点から表示することができ、したがって、この咬合面及び採得された下歯列弓及び上歯列弓は、ユーザによって異なる視点から観察されることができ、これは異なる場所における不整合の完全な観察に著しく寄与する。評価するとき、上顎及び下顎の3D歯列モデルのそれぞれの場所は、咬合面が適切であるか否かを判断するように、ユーザによって評価され得る。咬合面の遠位端に対応する不整合が所望の値を超える場合、咬合面及びその対応する咬合採得は、次のステップの最終咬合採得の計算において使用するために適切でない。例えば、咬合面が臼歯の右側から選択されるとき、ユーザは、臼歯の左側の場所における不整合を観察することができる。さらに少なくとも2つの成功した咬合採得を比較評価することによって、より良い評価を有する1つ以上の成功した咬合採得及びその対応する咬合面が、ユーザによって容易に選出され得る。したがって、ユーザは、最適化された変換を有する咬合採得を直感的に選択することができ、これが最終的に形成された全体的3D歯列モデルの精度をさらに大幅に向上させることができる。
【0034】
具体的に
図7及び
図8に示されるように、ユーザは、ボタン107のうちのいずれかをダブルクリックして、所望の成功した咬合採得及びその対応する咬合面を有効にして保管し、選択されなかったものは、次のステップの最終咬合採得の計算において無効になる。一実施形態において、成功した咬合採得がユーザによって選択されたとき、ボタン107は緑色になり、成功した咬合採得が選択されなかったとき、ボタン107は赤色になる。したがって、ユーザは、選択された成功した咬合採得と、選択されなかったものとを容易に区別することができる。別の実施形態において、成功した咬合採得の選択は、自動的方法で完了され得る。別の実施形態において、ステップ170は、ユーザインタラクションなしに、全ての成功した咬合採得を自動的に選択する。さらにボタン108をクリックすると、S180のステップに進む。
【0035】
さらに、S180のステップにおいて、選択された1つ以上の成功した咬合採得を使用して最終咬合採得(複数可)を計算する。
【0036】
一実施形態において、最終咬合採得の計算は、選択された成功した咬合採得の複数の行列補間を用いる。少なくとも2つの成功した咬合採得がステップS170において選択される場合、異なる選択された成功した咬合採得に対応する全ての変換をそれぞれ単一の変換に組み合わせる。具体的に
図9に示されるように、4x4行列補間は、各行列を同等の値の集合に分解するステップ(S211)、各値の集合から対応する値を補間するステップ(S212)、及び補間された値の集合から行列を再構成するステップ(S213)を含んでよい。同等の値の集合は、移動、拡大、歪曲(全てが3つの構成要素を有するベクトルとして表される)、及び透視、四元(いずれも4つの構成要素を有するベクトルとして表される)において一致し得る。詳しくは、上述の複数の行列補間もhttp://dev.w3.org/csswg/css3−transforms/#matrix−interpolationに記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれ得る。
【0037】
したがって、複数の行列補間の実施形態において、S180は、全ての選択された咬合採得からの情報を一緒に併合する方法をユーザに提供し、上歯列弓及び下歯列弓を剛性に保ちながら、変換を平均化する(すなわち、貼り合せノイズを平均化する)プロセスと見なすことができる。
【0038】
1つのみの成功した咬合採得がステップS170において選択される場合、選択された咬合採得の変換は、先行技術の方法によって処理され得ることに留意されたい。
【0039】
別の実施形態において、計算は、選択された成功した咬合採得に応じて費用関数の最適化を用い、すなわち、3Dビューの全体的マッチングを用いて、いくつかの重なりを有する全てのビューの相対配置を同時に最適化する。このプロセスにおいて再利用される咬合面は、選択された咬合採得に対応する咬合面である。つまり、S170において選択された咬合面は、各3D表面の配置を最適化するためにさらに使用される。
【0040】
具体的には、全体的マッチングは、費用関数を最適化するような各3D表面の配置最適化を指す。全体的マッチングの実施形態において、上顎、下顎、及び選択された成功した咬合採得からの3D表面は、最適化される費用関数において一緒に使用されてもよい。全体的マッチングの別の実施形態において、下顎からの3D表面のサブセット、上顎からの表面のサブセット、及び選択された成功した咬合採得のサブセットは、最適化される費用関数において使用される。一実施形態において、費用関数は、3D表面の対の間の距離から計算される。3D表面の対の間の距離は、表面上の対応する最近点の間の距離から計算されてもよい。表面が離散表現を使用する場合、対応する点は、離散座標の補間を使用して得ることができる。表面上の対応する最近点の間の距離は重みづけされてよく、その重みは既定の閾値に依存し得る。既定の閾値は、対応する最近点の影響が減少する、閾値距離を表し得る。
【0041】
3D表面S1及びS2の単一対の費用関数は、次のように記述され得る。
【0043】
式中、指数iは、表面S
1上の点であり、d
i(S
1,S
2)は、その点から他の表面までの距離であり、w
iは重みであり、2つの表面間の初期距離及び既定の閾値にも依存し得る。
【0044】
3D表面の全ての対の費用関数は、次のように記述され得る。
【0046】
式中、(k、l)は、離散表面の任意の対を表し、T
k、T
lは、最適化される表面変換を表す。
【0047】
全体的マッチングは、ここで最小の二乗和関数の最小化に対応し、未知数は、変換T
k、T
lである。
【0048】
同様の最終変換を提供する、費用関数の他の変型が存在し、これは当業者に対して同じ役割を有すると考慮されるであろう。
【0049】
1つ以上の選択された咬合採得を使用する変換の最適化は、費用関数を最適化することにより1つ以上の選択された咬合採得を使用する、下歯列弓に対する上歯列弓の配置最適化を指し得る。一実施形態において、費用関数は、3D表面の対の間の距離から計算される。3D表面の対の間の距離は、表面上の対応する最近点の間の距離から計算されてもよい。表面上の対応する最近点の間の距離は重みづけされてよく、その重みは既定の閾値に依存し得る。既定の閾値は、対応する最近点の影響が減少する、閾値距離を表し得る。
【0050】
変換の最適化のための費用関数は、次のように記述され得る。
【0052】
式中、bは、選択された咬合面の指数を表し、Bは、選択された咬合面指数のプールを表し、Lは、下顎からの表面のプールを表し、Uは、上顎からの表面のプールを表し、T
bは、指数bを有する各咬合面の変換を表し、Tは、上顎に対する下顎の変換を表す。上顎は、この表現において静的であると考えられるが、この費用関数の変型が存在し、同様の最終変換を提供する。最適化される未知数は、咬合面T
bの個別の変換及び下顎Tの全体的変換である。
【0053】
図10は、咬合面を有する獲得された3D表面の一部を示す。ここで、201は上顎を示し、203は下顎を示し、202は咬合面202を示す。上顎及び下顎からの累積配置誤差は、全てのメッシュの配置を同時に最適化することによって低減される。したがって、上顎と下顎との間の関係は維持され、メッシュの配置が最適化される。
【0054】
S220の後、全体的3D歯列モデルを構築するための方法は、下顎及び上顎において別個にメッシュを併合し、重複領域において表面を補間することによって全体的面を生成するS230、及び穴埋め、スムージング、及びクリーニング等のメッシュ操作を組み合わせる後処理をメッシュするS240等の他のステップをさらに含むことができる。他のステップは、当業者に既知であるため、それらは本明細書において慎重に記載されていない。
【0055】
最後に、全体的3D歯列モデルが形成され、モニターに表示される。正確な咬合採得、ならびにステップS210及びS220を使用すると、全体的3D歯列モデルの精度は大幅に向上する。
【0056】
咬合採得のためのシステムは、全体的3D歯列モデルを構築するためのシステムのサブモジュールとして見られ得ることが理解できる。
【0057】
この文脈において、表面は、1回の獲得で獲得された表面(1ビューとも呼ばれる)に対応し、実際にいくつかの断続面を含み得る。
【0058】
上記実施例は、主に咬合採得のための方法及びシステム、ならびに全体的3D歯列モデルを構築するための方法及びシステムについて論じている。本発明の実施形態のうちの一部のみが説明されてきたが、本発明がその趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの他の形態で実装され得ることは、当業者に理解される。したがって、例示の実施例及び実施形態は、制限ではなく典型例として見なされるべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び置換を含むことができる。