【実施例】
【0039】
例1−8
加熱及び冷却ジャケットを備えた市販の連続式配合機が使用されて、乾燥したMETHOCEL(登録商標)K100Mセルロースエーテル(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから商業的に入手可能)に水が添加された。配合機のジャケットには−10〜70℃の流体が供給された。
【0040】
メトキシル基の置換度が19〜24%でありヒドロキシプロポキシル基の置換度が7〜12%であり、2パーセント水溶液として20℃で測定した粘度が100000mPa.sであり、水分レベルが5%未満であるMETHOCEL(登録商標)K100Mセルロースエーテルを、前記配合機内に供給速度30kg/hで連続的に供給した。温度25℃〜60℃の水を、45kg/hの速度で連続的に配合機に加えて、水分レベルを約60%とした。湿潤生成物は、搬送ベルトにより連続的に粉砕機の供給装置(Altenburger Maschinen Jaeckering社、ハム、ドイツ)へと搬送された。槽攪拌機の下部のブレードが、ペーストを、層の下部に取り付けられた単軸オーガスクリュー(single augur screw)へと圧入した。湿潤生成物は、有孔板を通して直接UltrarotorII”S”衝撃式粉砕機(Altenburger Maschinen Jaeckering社、ハム、ドイツ)の側部の第1と第2粉砕ステージの間に、送り込まれた。粉砕機は7つの粉砕ステージを備えていた。下部の3つの粉砕ステージは、標準的な粉砕バーを備えていた。上部の4つの粉砕ステージにはターボバーが備えられていた。12個のブレードを持つ共回転するフィンガーシフターホイール(finger sifter wheel)が、第7粉砕ステージの上部に設置された。粉砕機のジャケットの内部は、標準的なAltenburger波状静止粉砕プレートを有していた。
【0041】
衝撃式粉砕機のローターは周速度114m/sで動作させた。加熱した気体流、すなわち窒素を、1000m
3/hで粉砕機の下部に供給した。乾燥した生成物を窒素から分離するためにサイクロンを使用した。最終生成物の水分は2重量%よりも少なかった。
【0042】
高速画像解析装置(高速画像解析装置センサーQICPIC、Sympatec社、ドイツ、内径4mmの乾式分散器RODOS/LとドライフィーダーVIBRI/Lと分割ソフトウェアWINDOX5、バージョン5.3.0とM7レンズを一緒に用いた)によって、粒子の直径、長さ、及び投影面積等価円の直径(DOP、LOP及びEQPCと呼ばれる)、並びに、体積分布に基いて計算された、粒子の直径の中央値、粒子長の中央値、及び投影面積等価円の直径の中央値(DOP50,3、LOP50,3、及びEQPC50,3と呼ばれる)が、測定された。QICPIC WINDOXソフトウェアは、DOP、LOP及びEQPCを次の方法で計算する。DOP(粒子の直径(Diameter of Particle))の計算は、完全に画像フレーム内の粒子にのみ適用され、投影面積を繊維の枝の全長の合計で割ることによる。粒子長(LOP)は、粒子の輪郭の内側における対向する端部間の直線距離のうち最長のものと定義される。EQPCは、粒子の投影面積と同じ面積をもつ円の直径として計算される。
【0043】
生成物の溶解速度は、50%及び80%粘度増加の時間を次の手順に従って測定することによって決定された。
【0044】
イソプロパノール中のセルロースエーテルの5重量%分散液を作り、レオメーターシステム(Haake RS600、攪拌機を配置したシリンダーシステムZ40−DIN)に移した。測定用シリンダーシステムには20℃でのpHが5.9であるKH
2P0
4/NaOH緩衝溶液が入っている。緩衝溶液混合物中のセルロースエーテルの濃度は1.5重量%である。レオメーターシリンダーシステムの攪拌機は20℃において900秒間388rpmで作動する。水和中にセルロースエーテルの粘度増加が示されている時間にわたって、トルクを測定する。最終的なトルク増加が50%及び80%となるのに必要な時間は溶解速度の指標とみなされ、それぞれ、緩衝溶液中でのセルロースエーテルの水和時間である。セルロース誘導体が水性緩衝溶液中に溶解すると、セルロース誘導体の1.5パーセント水性緩衝溶液の粘度は平衡になるまで増加する。平衡状態の粘度の50%及び80%までどのくらい速く増加するかを測定することは、セルロース誘導体の溶解速度の尺度である。
【0045】
本明細書において、かさ密度とは、取り上げた材料の質量に対する見掛け体積の比(非タップかさ密度と呼ばれる)と定義され、そしてまた、取り上げた材料の質量に対するタップされた体積の比(タップかさ密度と呼ばれる)とも定義される。これらのかさ密度を測定するために役立つ手順は、米国薬局方24、試験616 「かさ密度及びタップ密度」、米国薬局方協会、ロックビル、メリーランド州、1999、に記載されている。生成したセルロースエーテル粒子のかさ密度は、オフラインで測定された。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の結果は、乾式粉砕前の粒子状多糖類誘導体の温度、乾式粉砕後の粒子状多糖類誘導体のDOP50,3、LOP50,3、粘度増加50%と80%それぞれの時間として測定した溶解速度、及びかさ密度との間の相関関係を示している。DOP50,3及びLOP50,3の測定は、オンラインで行うことが可能であり、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度、乾式粉砕後の溶解速度とかさ密度の間接的な決定のための、迅速な工程内管理である。このことは、温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望の直径の中央値、長さの中央値、及び所望の溶解速度とかさ密度へと適合させることを可能とする。
【0048】
粒子の直径の中央値DOP50,3は、温度に対して、次式
DOP50,3=+49.519−0.1617×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.9311であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにDOP50,3が減少する関係を示す。
【0049】
粒子長の中央値LOP50,3は、温度に対して、次式
LOP50,3=+346.07−2.0125×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.9236であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにLOP50,3が減少する関係を示す。 EQPC50,3は、温度に対して、次式
EQPC50,3=+139.31−1.0222×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.9699であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにEQPC50,3が減少する関係を示す。
【0050】
非タップかさ密度は、温度に対して、次式
非タップかさ密度=+149.71+2.0904×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.8433であり、正の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに非タップかさ密度が増加する関係を示す。
【0051】
タップかさ密度は、温度に対して、次式
タップかさ密度=+229.85+3.293×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.889であり、正の傾きとなる相関関係を示す。
【0052】
粘度増加50%の時間として測定した溶解速度は、温度に対して、次式
粘度増加50%の時間=+89.686−0.5693×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.944であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに粘度増加50%の時間が減少する関係を示す。
【0053】
粘度増加80%の時間として測定した溶解速度は、温度に対して、次式
粘度増加80%の時間=+164.32−0.9471×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.944であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに粘度増加80%の時間が減少する関係を示す。
【0054】
粒子の直径の中央値DOP50,3及び粒子長の中央値LOP50,3は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度の上昇とともにDOP50,3及びLOP50,3が減少することを示す。粘度増加50%及び80%の時間はそれぞれ、多糖類誘導体粒子の溶解速度の尺度であるが、粒子の直径さらに長さの中央値の減少とともに減少するものであり、すなわち、乾式粉砕後の粒子の溶解速度は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御することにより制御することができる。
【0055】
例9−16
衝撃式粉砕機のローターを周速度58m/sで動作させたこと以外は、例1−8の手順を繰り返した。
結果を表2に記載する。
【0056】
【表2】
【0057】
表2の結果は、乾式粉砕前の粒子状多糖類誘導体の温度、エアー・スエプト型衝撃式粉砕機を58m/sで用いた乾式粉砕後の粒子状多糖類誘導体の、DOP50,3、LOP50,3、粘度増加50%と80%それぞれの時間として測定した溶解速度、及びかさ密度との間の、相関関係を示している。
【0058】
粒子の直径の中央値DOP50,3は、温度に対して、次式
DOP50,3=+84.486−0.3165×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.7569であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにDOP50,3が減少する関係を示す。
【0059】
粒子長の中央値LOP50,3は、温度に対して、次式
LOP50,3=+1538.4−15.029×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.972であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにLOP50,3が減少する関係を示す。
【0060】
EQPC=+540.79−4.7037×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.9326であり、負の傾き、すなわち、温度の上昇とともにEQPCが減少する。
【0061】
非タップかさ密度は、温度に対して、次式
非タップかさ密度=+148.56+1.5862×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.9235であり、正の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに非タップかさ密度が増加する関係を示す。
【0062】
タップかさ密度は、温度に対して、次式
タップかさ密度=+191.1+2.4011×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.92であり、正の傾きとなる相関関係を示す。
【0063】
粘度増加50%の時間として測定した溶解速度は、温度に対して、次式
粘度増加50%の時間=+795.91−7.9809×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.872であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに粘度増加50%の時間が減少する関係を示す。
【0064】
粘度増加80%の時間として測定した溶解速度は、温度に対して、次式
粘度増加80%の時間=+1316.5−12.691×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、R
2が0.8779であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに粘度増加80%の時間が減少する関係を示す。
以下に、本願発明に関連する発明の実施形態について列挙する。
[実施形態1]
湿潤多糖類誘導体を乾式粉砕することによって粒子状多糖類誘導体を製造する方法であって、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御することによって、乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質が制御される、粒子状多糖類誘導体を製造する方法。
[実施形態2]
乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1又は複数の性質が、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御し及び調節することによって、制御され及び調節される、前記実施形態1記載の方法。
[実施形態3]
乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質が、乾式粉砕前の多糖類誘導体の第1の温度によって、第1の値に調節され、第2の温度によって第2の値に調節される、前記実施形態1記載の方法。
[実施形態4]
前記実施形態1〜3のいずれか1項記載の方法であって、
a) 乾式粉砕前の温度が異なる湿潤多糖類誘導体の、少なくとも2つの試料を乾式粉砕し、各試料の乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質を測定する工程と、
b) i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質との間の、相関関係を決定する工程と、
c) 乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望する直径の中央値、長さの中央値、かさ密度又は溶解速度に適合させる工程と、
を含む方法。
[実施形態5]
多糖類誘導体粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質を制御又は調節する方法であって、
A) 湿潤多糖類を準備する工程と、
B) 多糖類誘導体の温度を制御する工程と、
C) 制御された温度の多糖類誘導体を乾式粉砕する工程と、
D) i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)乾式粉砕後の多糖類誘導体粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質との間の、相関関係を決定する工程と、
E) 乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望する直径の中央値、長さの中央値、かさ密度又は溶解速度に適合させる工程と、
を含む方法。
[実施形態6]
i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)直径の中央値又は長さの中央値との間の、決定された相関関係が、連続式乾式粉砕工程における工程内管理として用いられ、この場合において直径の中央値又は長さの中央値は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を設定し任意に適合させるために、決定され使用される、前記実施形態5記載の方法。
[実施形態7]
工程内管理がオンラインで行われる、前記実施形態6記載の方法。
[実施形態8]
多糖類誘導体の懸濁液から多糖類誘導体を分離することによって多糖類誘導体を得て、続いて乾式粉砕機内で乾式粉砕を行う、前記実施形態1〜7のいずれか1項記載の方法。
[実施形態9]
乾燥多糖類誘導体と液体とを配合機内で混合し、これにより得られた湿潤多糖類誘導体を、続いて乾式粉砕機中で乾式粉砕する、前記実施形態1〜7のいずれか1項記載の方法。
[実施形態10]
乾式粉砕前の多糖類誘導体粒子の温度が5〜80℃の範囲に制御される、前記実施形態1〜9のいずれか1項記載の方法。
[実施形態11]
セルロース誘導体がセルロースエーテルである、前記実施形態1〜10のいずれか1項記載の方法。
[実施形態12]
粒子の長さ又は直径の中央値、又はその両者が、高速画像解析によって決定される、前記実施形態1〜11のいずれか1項記載の方法。
[実施形態13]
乾式粉砕工程がエアー・スエプト型衝撃式粉砕機内で行われる、前記実施形態1〜12のいずれか1項記載の方法。