特許第6247321号(P6247321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247321
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】多糖類誘導体を乾式粉砕するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/00 20060101AFI20171204BHJP
   B02C 19/06 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
   C08B11/00
   !B02C19/06 B
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-6813(P2016-6813)
(22)【出願日】2016年1月18日
(62)【分割の表示】特願2013-521743(P2013-521743)の分割
【原出願日】2010年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-106166(P2016-106166A)
(43)【公開日】2016年6月16日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ピーリニ
(72)【発明者】
【氏名】イフォンネ ゲルラッハ−ドート
(72)【発明者】
【氏名】ユールゲン ヘルマンス
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02262527(GB,A)
【文献】 特表2013−532750(JP,A)
【文献】 特表平10−502397(JP,A)
【文献】 特表2001−508116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 1/00 − 37/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエーテル粒子の、直径の中央値、長さの中央値、及び、かさ密度から選択される1つ又は複数の性質を制御又は調節する方法であって、
A) 湿潤セルロースエーテルを準備する工程であって、湿潤セルロースエーテルの含水率が湿潤セルロースエーテルの総重量を基準にして30〜98パーセントであり、セルロースエーテルがメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選択されるものである、工程と、
B) セルロースエーテルの温度を5〜80℃の範囲に制御する工程と、
C) 制御された温度のセルロースエーテルを乾式粉砕する工程と、
DI) i)乾式粉砕前のセルロースエーテルの温度と、ii)乾式粉砕後のセルロースエーテル粒子の直径の中央値若しくは長さの中央値、又はその両方との間の、負の相関関係を決定する工程、又は、
DII) i)乾式粉砕前のセルロースエーテルの温度と、ii)乾式粉砕後のセルロースエーテル粒子のかさ密度との間の、正の相関関係を決定する工程と、
E) 乾式粉砕前のセルロースエーテルの温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望する直径の中央値、長さの中央値又はかさ密度に適合させる工程と、
を含む方法。
【請求項2】
i)乾式粉砕前のセルロースエーテルの温度と、ii)直径の中央値又は長さの中央値との間の、決定された負の相関関係が、連続式乾式粉砕工程における工程内管理として用いられ、この場合において直径の中央値又は長さの中央値は、乾式粉砕前のセルロースエーテルの温度を設定し任意に適合させるために、決定され使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程内管理がオンラインで行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
セルロースエーテルの懸濁液からセルロースエーテルを分離することによってセルロースエーテルを得て、続いて乾式粉砕機内で乾式粉砕を行う、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
乾燥セルロースエーテルと液体とを配合機内で混合し、これにより得られた湿潤セルロースエーテルを、続いて乾式粉砕機中で乾式粉砕する、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
粒子の長さ又は直径の中央値、又はその両方が、高速画像解析によって決定される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
乾式粉砕工程がエアー・スエプト型衝撃式粉砕機内で行われる、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類誘導体、特にはセルロース誘導体を乾式粉砕するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖類誘導体は、典型的には反応器生成物として、砕け易く若しくは塊の多い状態で、又は場合によっては原綿に似た形態で製造される。前記の反応器生成物は、典型的には洗浄によって精製される。この形態では、湿潤多糖類誘導体は、原材料によって決まる残余構造を保持したままである。したがって、例えばセルロースエーテルは、最初のセルロースの繊維質の構造を保持したままであり得る。これらの多糖類誘導体は、例えば有機及び/又は水性媒体に可溶な製品としての使用には一般には不向きである。このため実質上すべての多糖類誘導体は、使用に適するようにするために原則として粉砕され乾燥される。
【0003】
セルロース誘導体類は、工業的に重要な多糖類誘導体のひとつである。その調製、性質及び応用については、例えばウルマン工業化学百科事典(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry)、第5版、1986年、A5巻、461〜488頁、VCH出版社、ヴァインハイム(Weinheim)、又は、「有機化学の方法(Methoden der organischen Chemie)」、第4版(1987年)、E20巻、高分子物質(Makromolekulare Stoff)、第3部、2048〜2076頁、Georg Thieme出版、シュツットガルトに記載されている。
【0004】
欧州特許第0370447号明細書(米国特許第4979681号に対応)には、湿潤セルロースエーテルに非破壊的な粉砕と乾燥を同時に行う方法が記載されており、ここで、初期含水率20〜70重量%のセルローステーテルが搬送気体によって搬送され、同時に衝撃と摩擦力によって粉末状にされ、そして粉砕のエネルギーによって残留含水率1〜10重量%に乾燥される。
【0005】
国際公開第96/00748号には、水和セルロースエーテルを断面積0.0075 mm〜1mm(7.5×10−9〜1×10−6)のオリフィスを通して押出す工程と、この押出物を裁断して所望の長さの生成物にする工程とを含む、セルロースエーテルを粉末状にする方法が開示されている。
【0006】
これら先行技術の方法は、大抵は、予備乾燥、予備的な脆化又は予備的な圧縮を伴う多段のものである。さらに、すべての方法において、高分子の化学的及び/又は熱的挙動は、特に高粘度、高置換生成物の処理中は、常に激しく、その結果、粉砕工程中に、その分子鎖の長さが減少するという意味で高分子は破壊され、このことは、特に粘度が当初使用された物に比べて程度の差はあれかなり低下するということで顕在化する。さらに、予備的な脆化手段又は予備的な乾燥工程によって処理された生成物の表面は、角質化されてしまう。
【0007】
欧州特許出願公開第0954536号明細書(米国特許第6320043号に対応)には、a)多糖類誘導体を、適当量の、好ましくは総重量を基準にして35〜99重量%の、特に好ましくは60〜80重量%の、水などの溶媒に浸漬又は溶解し、これにより多糖類誘導体出発物質に由来する繊維構造などの一次構造を大部分除去し、続いて、b)浸漬又は溶解された多糖類誘導体中に含まれる溶媒を過熱蒸気によって気相へと転化させる乾燥微粉砕機中で、前記多糖類誘導体を固体状態へと転化させ、次いで、c)任意に、後続する乾燥工程において先行技術単位で求められる水分率まで乾燥する、方法が開示されている。この方法で調製された多糖類誘導体は、高いかさ密度と良好な流動性を有する。このようにして生成した粒子は、形状係数(shape factor)が5未満かつ1以上であり、その多数(>50重量%)は形状係数が2以下であって、生成物中の微細分の比率は低い。形状因子は、ある物体(理想的には楕円体)における最大直径の最小直径に対する比である。
【0008】
欧州特許出願公開第1127895号明細書(米国特許第6509461号に対応)には、a)セルロース誘導体を20重量%〜50重量%及び水を50重量%〜80重量%含んでなる供給組成物を生成し、ここにおいて前記セルロース誘導体は前記供給組成物中で膨潤又は溶解しており、b)前記供給組成物を高回転速度衝撃式粉砕機内で熱交換ガスおよびキャリアガスに接触させる、ことによる粒子状の水溶性セルロース誘導体を製造する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術の方法は、当技術分野における有用な進歩を示しているとはいえ、予測できる寸法をもつ多糖類粒子を調製することに対しては、長年にわたる要求及び高まり続ける需要が存在している。
【0010】
本発明の1つの目的は、乾式粉砕後の多糖類誘導体の1つ以上の重要な寸法(dimension)を制御することができることである。最適な粒子の寸法は、多糖類誘導体の最終用途に依存する。典型的には、薬剤の放出制御への応用は、食品又は建築への応用の場合よりも小さい粒径が求められる。さらに、本発明の好適な目的は、乾式粉砕後の多糖類粒子のかさ密度及び/又は溶解速度に影響を与えることができることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、湿潤多糖類誘導体を乾式粉砕することによって粒子状多糖類誘導体を製造する方法であって、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御することによって、乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質が制御される、粒子状多糖類誘導体を製造する方法である。
【0012】
本発明の別の態様は、多糖類誘導体粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質を制御又は調節する方法であって、
A) 湿潤多糖類を準備する工程と、
B) 多糖類誘導体の温度を制御する工程と、
C) 制御された温度の多糖類誘導体を乾式粉砕する工程と、
D) i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)乾式粉砕後の多糖類誘導体粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質との間の、相関関係を決定する工程と、
E) 乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望する直径の中央値、長さの中央値、かさ密度又は溶解速度に適合させる工程と、
を含む方法である。
【0013】
驚くべきことに、i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)乾式粉砕後の多糖類誘導体粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質との間に、相関関係、典型的には線形の相関関係があることが見いだされた。
【0014】

驚くべきことに、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度が高いほど、乾式粉砕後の多糖類誘導体粒子は、一般的に、直径の中央値は小さくなり、長さの中央値は小さくなり、かさ密度は高くなり、溶解速度は短くなること、そして逆もまた同様であることが見いだされた。この発見は、特定の用途に最適な粒子直径の中央値、最適な長さの中央値、最適なかさ密度、及び最適な溶解速度を有する多糖類誘導体の生成を可能とするだけでなく、乾式粉砕工程に必要なエネルギーを最適化するものでもある。多糖類誘導体は、典型的には、その生成後に加熱水により洗浄して精製される。洗浄後、多糖類誘導体は典型的には冷却される。もし、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度が、特定の粒子直径に望ましい値に最適化されれば、乾式粉砕に必要なエネルギーを最少化することができる。本発明は、所望の粒子直径の中央値、所望の長さの中央値、所望のかさ密度、及び所望の溶解速度を有する多糖類誘導体を得るための、乾式粉砕前の最適の温度を決定することを可能とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、湿潤多糖類誘導体を乾式粉砕することによって粒子状多糖類誘導体を製造する方法に関する。乾式粉砕は、当該技術分野において、一般に、乾燥と粉砕を1つの処理工程で1つの単位操作、典型的には衝撃式粉砕機又はエアー・スエプト型(air swept)衝撃式粉砕機、によって同時に行うこととされている。乾燥は典型的には加熱したガスと機械的エネルギーの組合せによって達成される。加熱した空気が最も一般的に使用されるが、加熱した窒素ガスも用いられる。加熱したガスと湿潤生成物の流れは、一般的に、別々の注入口から粉砕器内に供給され、典型的には、加熱したガスは下部から、そして湿潤生成物は、粉砕機に接続されたフィード・スクリューシステムを経由して側面の入口から、供給される。
【0016】
本方法で使用される多糖類誘導体、好適にはセルロース誘導体は、一般に溶媒、好適には水に対して溶解性であるか少なくとも湿潤性のものである。好適な多糖類誘導体は、多糖類エーテル及び多糖類エステルであり、より好適にはセルロースエーテル及びエステルであり、最も好適には水溶性セルロースエーテルである。これらは1以上の置換基を有していてもよく、その好適な種類としては、キドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、キドロキシブチル、メチル、エチル、プロピル、ジヒドロキシプロピル、カルボキシメチル、スルホエチル、疎水性で長鎖の分枝及び非分枝アルキル基、疎水性で長鎖の分枝及び非分枝アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基、カチオン基、アセテート、プロピオネート、ブチレート、ラクテート、ナイトレート又はスルフェートがあり、そのうちのいくつかの基、例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ジヒドロキシプロピル及びラクテートは、グラフトを形成することができる。本発明に従う多糖類の置換基は、これらの基に限定されるものではない。典型的な多糖類誘導体は、グアー誘導体、デンプン誘導体、キチン若しくはキトサン誘導体、及び好適にはセルロース誘導体であるが、本発明に従う多糖類誘導体は、これらに限定されるものではない。
【0017】
セルロース誘導体の例には、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HPHEC)、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、疎水性に変性されたヒドロキシエチルセルロース(hmHEC)、疎水性に変性されたヒドロキシプロピルセルロース(hmHPC)、疎水性に変性されたエチルヒドロキシエチルセルロース(hmEHEC)、疎水性に変性されたカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(hmCMHEC)、疎水性に変性されたヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(hmHPHEC)、疎水性に変性されたメチルセルロース(hmMC)、疎水性に変性されたメチルヒドロキシプロピルセルロース(hmMHPC)、疎水性に変性されたメチルヒドロキシエチルセルロース(hmMHEC)、疎水性に変性されたカルボキシメチルメチルセルロース(hmCMMC)、スルホエチルセルロース(SEC)、ヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(HESEC)、ヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(HPSEC)、メチルヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(MHESEC)、メチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(MHPSEC)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(HEHPSEC)、カルボキシメチルスルホエチルセルロース(CMSEC)、疎水性に変性されたスルホエチルセルロース(hmSEC)、疎水性に変性されたヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(hmHESEC)、疎水性に変性されたヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(hmHPSEC)又は疎水性に変性されたヒドロキシエチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(hmHEHPSEC)がある。 特に好適なセルロース誘導体は、水中で熱フロキュレーション点(thermal flocculation point)を有するセルロースエーテルであって、例えば、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどである。
【0018】
多糖類誘導体、好適には多糖類エーテル及び多糖類エステルの製造は、当該分野において知られている。典型的には、その製造方法は、セルロースなどの多糖類を例えばアルカリ金属水酸化物による処理などによって活性化すること、こうして処理された多糖類を、次にエーテル化剤又はエステル化剤などの誘導体化剤と反応させること、そしてこの多糖類誘導体を洗浄して副生成物を除去すること、を含む。洗浄後には、多糖類誘導体は一般に、湿潤多糖類誘導体の総重量を基準にして30〜60パーセント、典型的には45〜55パーセントの含水率を有する。好適な洗浄液は、具体的な多糖類誘導体の種類によるけれども、好適な洗浄液は一般的には、水、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、又は塩水である。より好適な洗浄液は一般的には水又は塩水である。セルロース誘導体は、一般的に、20〜120℃、好適には65〜95℃で洗浄される。洗浄液から多糖類誘導体を分離し洗浄した後に、溶媒で湿潤した、好適には水で湿潤したフィルターケーキが得られる。この湿潤多糖類誘導体は、通常は湿潤粒状体、湿潤塊状物及び/又は湿潤ペーストの形態で得られる。
【0019】
本発明の1つの態様によると、多糖類誘導体の懸濁液から多糖類誘導体を分離することによって多糖類誘導体が得られ、続いて乾式粉砕機内で乾式粉砕される。液中の粒子の懸濁物は、上述のような多糖類誘導体の生成及び洗浄から生じたものでもよい。懸濁液からの多糖類誘導体の分離は、遠心分離などの既知の方法で実施することができる。
【0020】
本発明の別の態様によると、乾燥多糖類誘導体と水などの液体とは、所望の含水率まで配合機内で混合することができ、こうして得られた湿潤多糖類誘導体は、続いて本発明の方法にしたがって乾式粉砕機中で乾式粉砕される。配合機は好適に、徹底的な強い混合を起こすことができる。有用な配合機は、例えば、造粒機、ニーダー、押出機、圧搾機又はロールミルであり、これにより多糖類誘導体と液体との混合物が、二軸スクリュー配合機などのせん断力を受け混ぜ合わされて均一化される。共回転、逆回転のいずれの装置でも適する。いわゆる分割トラフニーダー(divided trough kneaders)であって、2つの水平に配置された攪拌ブレードを備え、二軸スクリュー配合機の場合のように、これらが互いに深くかみ合っており、互いにはぎ取り合うような動きをするものが特に適している。一軸型連続式ニーダーとして適するものには、いわゆるReflector(登録商標)配合機、これはモジュール構造の高性能混合機で、複数パート(multi-part)の加熱と冷却が可能なシリンダーと、一方に備えられたブレード形ミキサーとからなっている(製造者:Berstorff社、ドイツ)。また、いわゆるピン型シリンダー押出機(pinned cylinder extruder)又はStiftconvert(登録商標)押出機(製造者:Berstorff社、ドイツ)も適する。ハウジングに組み込まれたピンは、混練される材料が軸と一緒に回転するのを防ぐための支台として作用する。いわゆる二重ブレードのシグマ攪拌機(製造者:Fima社、ドイツ)を水平に組み付けたニーダーミキサーが特に適している。これらのブレードは異なった速度で作動し、それらの回転方向は反対であってもよい。垂直に配置された混合軸を備えた攪拌槽も、混練された塊が攪拌軸と一緒に回転することを防ぐために槽壁面に適当な流れの邪魔板を取り付ければ、使用に適し、この方法により、混練された材料に強い混合作用が加えられる(製造者:バイエル社)。遊星式攪拌機とインラインホモジナイザーを備えた二重壁の混合槽もまた使用に適する。
【0021】
本発明の方法において、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御することは重要である。本発明の好適な実施形態では、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を、a)制御すること、及びb)変化させ又は調節することによって、乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び/又は溶解速度が、a)制御され、及びb)変化させられ又は調節される。
【0022】
本発明の別の好適な実施形態では、乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の第1の温度によって第1の値に調節され、第2の温度によって第2の値に調節される。
【0023】
直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質を制御するための特に好適な方法は、以下の工程を含む。
a) 乾式粉砕前の温度が異なる湿潤多糖類誘導体の、少なくとも2つの試料、好適には少なくとも3つの試料、より好適には少なくとも4つの試料、もっとも好適にはすくなくとも8つの試料を乾式粉砕し、各試料の乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質を測定する工程、
b) i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質との間の、相関関係を決定する工程、及び
c) 乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望する直径の中央値、長さの中央値、かさ密度又は溶解速度に適合させる工程。
【0024】
好適には、i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)直径の中央値及び/又は長さの中央値との間の、決定された相関関係は、連続式乾式粉砕工程における工程内管理(in-process control)として用いられ、この場合において直径の中央値又は長さの中央値は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を設定し任意に適合させるために、決定され使用される。最も好適には、工程内管理はオンラインで行われる。
【0025】
乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度は、5〜80℃、より好適には7〜75℃、もっとも好適には10〜60℃の範囲に制御されそして任意に変化させ調節することが好ましい。もし水などの液体が乾式粉砕前の多糖類誘導体に添加される場合は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度は、添加される液体の温度及び/又は配合機のジャケット温度を制御し及び任意に変化させ若しくは調節することによって、制御されそして任意に変化させられ若しくは調節されることが好ましい。これは乾式粉砕プロセスを中断することなく行うことも可能である。
【0026】
乾式粉砕前の多糖類誘導体の含水率は、乾式粉砕前に湿潤多糖類誘導体の総重量を基準にして、好適には30パーセント以上、より好適には50パーセント以上、もっとも好適には55パーセント以上である。含水率は、乾式粉砕前に湿潤多糖類誘導体の総重量を基準にして、好適には98パーセント以下、より好適には80パーセント以下、もっとも好適には70パーセント以下である。含水率は、ASTM D−2363−79法(1989年に再承認)によって測定できる。所望の含水率において、乾式粉砕前の多糖類誘導体の最適温度を、乾式粉砕後の粒子の所望の直径の中央値及び/又は長さの中央値に適合させることは、乾式粉砕後の粒子サイズの制御を向上させるだけでなく、乾式粉砕工程で必要とされるエネルギーを最適化することにもなる。本発明の方法によれば、製品に望ましくない性能をもたらすこともある非経済的な冷却及び再加熱を、避けることができる。さらに、乾式粉砕装置やプロセスのパラメーター、例えば周速度、粉砕機を通過する空気又は気体の流量(m3/h)などを変更することなく、粒子の直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び/又は溶解速度を制御し、さらに任意に調節し変更することができる。直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び/又は溶解速度を変更することが望まれる場合や、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び/又は溶解速度が所望の生成物の仕様に適合しない場合であって調節が必要な場合に、そのような変更を、乾式粉砕工程を中断することなく、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御することにより達成することができる。このことは本発明の方法を非常に効率的なものとする。
【0027】
さらに、乾式粉砕が回転式乾式粉砕装置内で行われる特定のプロセスの場合において、所望であれば、乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御することに加えて、乾式粉砕装置の周速度を制御しそして任意に変化させ若しくは調節することによっても、制御され及び任意に変化させられ若しくは調節されるようにできる。乾式粉砕装置の周速度は、35〜140m/s、より好適には45〜120m/s、もっとも好適には55〜115m/sの範囲内において制御され及び任意に変化させられ若しくは調節されることが好ましい。
【0028】
乾式粉砕の後、多糖類誘導体の直径の中央値DOP(50,3)は、少なくとも20マイクロメートル、より好適には少なくとも30マイクロメートルであることが好ましい。多糖類誘導体の直径の中央値DOP(50,3)は、250マイクロメートル以下、より好適には150マイクロメートル以下、もっとも好適には100マイクロメートル以下であることが好ましい。粒子の直径はDOPと呼ばれる。DOPは好適には粒子の大きさと形状の解析を組み合わせた高速画像解析システムにより測定される。この具体的な画像解析法は、W.Witt,U.Kohler,J. List、高速画像解析による粒子の大きさ及び形状解析の現在の限度(Current Limits of Particle Size and Shape Analysis with High Speed Image Analysis)、PARTEC 2007、に記述されている。
【0029】
粒子の直径の中央値DOP(50,3)は次のように定義される。
すべての粒子サイズ分布、例えばDOPは、個数(0)、長さ(1)、面積(2)又は体積(3)分布として表示し使用できる。DOPの体積分布は累積分布Qとして計算される。体積分布であることは、粒子の直径の値DOP50,3におけるカンマの後の数字3で表記される。表記50は、中央値を反映するものであるが、粒子の直径の分布の50%が与えられたμm値よりも小さく、50%が大きいことを表す。50%DOP値は画像解析ソフトウェアにより計算される。高速画像解析システムは、動的画像解析(DIA)システムQICPIC(登録商標)として、Sympatec社、Clausthal Zellerfeld、ドイツ、から商業的に入手可能である。このシステムは粒子の形状を解析し、粒子の潜在的なカールの傾向(curliness)を考慮に入れる。これにより他の方法よりもより正確な真の粒子サイズの測定が行われる。この動的画像処理(DIA)システムQICPIC(登録商標)については、Witt,W.,Kohler,D.,List,J.:「極めて高速の粒子の直接画像化が、大きさ及び形状のキャラクタライゼーションのために、強力な(乾式)分散を使用する道を開く(Direct Imaging of very fast Particles Opens the Application of Powerful (dry) Dispersion for Size and Shape Characterization)」、PARTEC 2004、ニュルンベルグ、ドイツ、においてより詳細に記述されている。
【0030】
乾式粉砕後の多糖類誘導体は、その投影面積等価円(Circle of Equal Projection Area)の直径の中央値(EQPC50,3)が、少なくとも30マイクロメートル、よい好適には少なくとも50マイクロメートル、そしてもっとも好適には少なくとも70マイクロメートルであることが好ましい。多糖類誘導体のEQPCの中央値は、1000マイクロメートル以下、より好適には750マイクロメートル以下、もっとも好適には500マイクロメートル以下であることが好ましい。
【0031】
粒子のEQPCは、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径として定義される。EQPCは、好適には粒子の大きさと形状の解析を組み合わせた高速画像解析システムにより測定される。この具体的な画像解析法は、Witt,W.,Koehler,U.,List,J.:「極めて高速の粒子の直接画像化が、大きさ及び形状のキャラクタライゼーションのために、強力な(乾式)分散を使用する道を開く(Direct Imaging of very fast Particles Opens the Application of Powerful (dry) Dispersion for Size and Shape Characterization)」、PARTEC 2004、ニュルンベルグ、ドイツ、においてより詳細に記述されている。
【0032】
EQPC(50,3)は、投影面積等価円の直径の中央値であって、以下のように定義される。
すべての粒子サイズ分布、例えばEQPCは、個数(0)、長さ(1)、面積(2)又は体積(3)分布として表示し使用できる。EQPCの体積分布は累積分布Qとして計算される。体積分布であることは、投影面積等価円の直径の中央値EQPC50,3におけるカンマの後の数字3で表記される。表記50は、中央値を反映するものであるが、粒子のEQPCの分布の50%が与えられたμm値よりも小さく、50%が大きいことを表す。50%EQPC値は画像解析ソフトウェアにより計算される。
【0033】
乾式粉砕後の多糖類誘導体は、その粒子長の中央値が、少なくとも50マイクロメートル、よい好適には少なくとも75マイクロメートル、そしてもっとも好適には少なくとも100マイクロメートルであることが好ましい。多糖類誘導体の粒子長の中央値は、2000マイクロメートル以下、より好適には1500マイクロメートル以下、もっとも好適には1000マイクロメートル以下であることが好ましい。粒子長は、粒子の輪郭の内側における対向する端部間の直線距離のうち最長のものと定義され、LOP(粒子長(Length of Particle))として示される。「直線の」とは、ループや枝分かれがないことを意味する。LOPは好適には粒子の大きさと形状の解析を組み合わせた高速画像解析システムにより測定される。この具体的な画像解析法は、W.Witt,U.Koehler,J.List、高速画像解析による粒子の大きさ及び形状解析の現在の限度(Current Limits of Particle Size and Shape Analysis with High Speed Image Analysis)、PARTEC 2007、に記述されている。
【0034】
LOP(50,3)は長さの中央値であり、次のように定義される。
すべての粒子サイズ分布、例えばLOPは、個数(0)、長さ(1)、面積(2)又は体積(3)分布として表示し使用できる。好適には、LOPの体積分布は累積分布Qとして計算される。体積分布であることは、粒子長の値LOP50,3におけるカンマの後の数字3で表記される。表記50は、中央値を反映するものであるが、粒子長分布の50%が与えられたμm値よりも小さく、50%が大きいことを表す。50%LOP値は画像解析ソフトウェアのより計算される。高速画像解析システムは、既述のように、動的画像解析(DIA)システムQICPIC(登録商標)として、Sympatec社、Clausthal Zellerfeld、ドイツ、から商業的に入手可能である。
【0035】
乾式粉砕後の粒子の、所望する直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び/又は溶解速度にとって適切な温度を決定した後に、前記適切な温度を多糖類誘導体の実際の温度と比較する。その結果に応じて、多糖類誘導体はそのままにしておくか、又は冷却若しくは加熱によりその温度が調節され、及び/又は、多糖類誘導体は溶媒と接触させて多糖類誘導体の温度を所望の値にされる。典型的には、多糖類誘導体は、当該多糖類誘導体を溶解するか若しくは部分的に溶解するか又は十分湿潤化する溶媒と接触させる。多糖類誘導体は、一般に、0〜75℃で、好適には5〜60℃で、溶媒と接触させる。溶媒は、多糖類誘導体の温度を制御するために使用することができる。別の方法として、多糖類誘導体の温度は、多糖類誘導体を直接冷却又は加熱することにより制御することができる。
【0036】
湿潤化又は溶解のために適切な溶媒は、その分子が極性基、好適にはヘテロ原子の窒素、硫黄又は酸素を含む基を有する溶媒である。しかしながら、炭化水素及びハロゲン化された炭化水素もまた、用いることができる。好適な溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルである。特に好適な溶媒は水である。本明細書において「溶媒」という用語は、溶媒の混合物も含むものとして使用する。
【0037】
通常は湿潤粒状物、湿潤塊状物及び/又は湿潤ペーストの形態である湿潤多糖類誘導体の乾式粉砕は、既知の乾式粉砕機、例えば、ガス・スエプト(gas-swept)型衝撃式粉砕機、好適にはエアー・スエプト型衝撃式粉砕機内で行うことができ、その中で多糖類誘導体には衝撃及び/又はせん断応力が加えられる。適切な粉砕機は、例えば、ハンマーミル、スクリーンタイプミル、ピンミル、ディスクミル、ジェットミル、又は好適には分級粉砕機である。欧州特許出願のEP0954536A1及びEP1127910A1により詳細に記載されているように、過熱水蒸気などの溶媒の過熱蒸気、又は蒸気/不活性ガス混合物若しくは蒸気/空気混合物を、伝熱ガス及び輸送ガスとして用いることができる。本発明の乾式粉砕工程において、多糖類誘導体の乾式粉砕後の含水率は、典型的には、湿潤多糖類誘導体の総重量を基準にして1〜20パーセント、好適には1〜10パーセント、より好適には1〜5パーセントまで低減される。
【0038】
本発明は、以下の例によりさらに具体的に説明されるが、これらの例によって本発明の範囲が制限されると解釈されるものではない。他に指示のない限り、すべての部及び百分率は重量によるものである。
【実施例】
【0039】
例1−8
加熱及び冷却ジャケットを備えた市販の連続式配合機が使用されて、乾燥したMETHOCEL(登録商標)K100Mセルロースエーテル(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから商業的に入手可能)に水が添加された。配合機のジャケットには−10〜70℃の流体が供給された。
【0040】
メトキシル基の置換度が19〜24%でありヒドロキシプロポキシル基の置換度が7〜12%であり、2パーセント水溶液として20℃で測定した粘度が100000mPa.sであり、水分レベルが5%未満であるMETHOCEL(登録商標)K100Mセルロースエーテルを、前記配合機内に供給速度30kg/hで連続的に供給した。温度25℃〜60℃の水を、45kg/hの速度で連続的に配合機に加えて、水分レベルを約60%とした。湿潤生成物は、搬送ベルトにより連続的に粉砕機の供給装置(Altenburger Maschinen Jaeckering社、ハム、ドイツ)へと搬送された。槽攪拌機の下部のブレードが、ペーストを、層の下部に取り付けられた単軸オーガスクリュー(single augur screw)へと圧入した。湿潤生成物は、有孔板を通して直接UltrarotorII”S”衝撃式粉砕機(Altenburger Maschinen Jaeckering社、ハム、ドイツ)の側部の第1と第2粉砕ステージの間に、送り込まれた。粉砕機は7つの粉砕ステージを備えていた。下部の3つの粉砕ステージは、標準的な粉砕バーを備えていた。上部の4つの粉砕ステージにはターボバーが備えられていた。12個のブレードを持つ共回転するフィンガーシフターホイール(finger sifter wheel)が、第7粉砕ステージの上部に設置された。粉砕機のジャケットの内部は、標準的なAltenburger波状静止粉砕プレートを有していた。
【0041】
衝撃式粉砕機のローターは周速度114m/sで動作させた。加熱した気体流、すなわち窒素を、1000m/hで粉砕機の下部に供給した。乾燥した生成物を窒素から分離するためにサイクロンを使用した。最終生成物の水分は2重量%よりも少なかった。
【0042】
高速画像解析装置(高速画像解析装置センサーQICPIC、Sympatec社、ドイツ、内径4mmの乾式分散器RODOS/LとドライフィーダーVIBRI/Lと分割ソフトウェアWINDOX5、バージョン5.3.0とM7レンズを一緒に用いた)によって、粒子の直径、長さ、及び投影面積等価円の直径(DOP、LOP及びEQPCと呼ばれる)、並びに、体積分布に基いて計算された、粒子の直径の中央値、粒子長の中央値、及び投影面積等価円の直径の中央値(DOP50,3、LOP50,3、及びEQPC50,3と呼ばれる)が、測定された。QICPIC WINDOXソフトウェアは、DOP、LOP及びEQPCを次の方法で計算する。DOP(粒子の直径(Diameter of Particle))の計算は、完全に画像フレーム内の粒子にのみ適用され、投影面積を繊維の枝の全長の合計で割ることによる。粒子長(LOP)は、粒子の輪郭の内側における対向する端部間の直線距離のうち最長のものと定義される。EQPCは、粒子の投影面積と同じ面積をもつ円の直径として計算される。
【0043】
生成物の溶解速度は、50%及び80%粘度増加の時間を次の手順に従って測定することによって決定された。
【0044】
イソプロパノール中のセルロースエーテルの5重量%分散液を作り、レオメーターシステム(Haake RS600、攪拌機を配置したシリンダーシステムZ40−DIN)に移した。測定用シリンダーシステムには20℃でのpHが5.9であるKHP0/NaOH緩衝溶液が入っている。緩衝溶液混合物中のセルロースエーテルの濃度は1.5重量%である。レオメーターシリンダーシステムの攪拌機は20℃において900秒間388rpmで作動する。水和中にセルロースエーテルの粘度増加が示されている時間にわたって、トルクを測定する。最終的なトルク増加が50%及び80%となるのに必要な時間は溶解速度の指標とみなされ、それぞれ、緩衝溶液中でのセルロースエーテルの水和時間である。セルロース誘導体が水性緩衝溶液中に溶解すると、セルロース誘導体の1.5パーセント水性緩衝溶液の粘度は平衡になるまで増加する。平衡状態の粘度の50%及び80%までどのくらい速く増加するかを測定することは、セルロース誘導体の溶解速度の尺度である。
【0045】
本明細書において、かさ密度とは、取り上げた材料の質量に対する見掛け体積の比(非タップかさ密度と呼ばれる)と定義され、そしてまた、取り上げた材料の質量に対するタップされた体積の比(タップかさ密度と呼ばれる)とも定義される。これらのかさ密度を測定するために役立つ手順は、米国薬局方24、試験616 「かさ密度及びタップ密度」、米国薬局方協会、ロックビル、メリーランド州、1999、に記載されている。生成したセルロースエーテル粒子のかさ密度は、オフラインで測定された。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の結果は、乾式粉砕前の粒子状多糖類誘導体の温度、乾式粉砕後の粒子状多糖類誘導体のDOP50,3、LOP50,3、粘度増加50%と80%それぞれの時間として測定した溶解速度、及びかさ密度との間の相関関係を示している。DOP50,3及びLOP50,3の測定は、オンラインで行うことが可能であり、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度、乾式粉砕後の溶解速度とかさ密度の間接的な決定のための、迅速な工程内管理である。このことは、温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望の直径の中央値、長さの中央値、及び所望の溶解速度とかさ密度へと適合させることを可能とする。
【0048】
粒子の直径の中央値DOP50,3は、温度に対して、次式
DOP50,3=+49.519−0.1617×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.9311であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにDOP50,3が減少する関係を示す。
【0049】
粒子長の中央値LOP50,3は、温度に対して、次式
LOP50,3=+346.07−2.0125×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.9236であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにLOP50,3が減少する関係を示す。 EQPC50,3は、温度に対して、次式
EQPC50,3=+139.31−1.0222×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.9699であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにEQPC50,3が減少する関係を示す。
【0050】
非タップかさ密度は、温度に対して、次式
非タップかさ密度=+149.71+2.0904×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.8433であり、正の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに非タップかさ密度が増加する関係を示す。
【0051】
タップかさ密度は、温度に対して、次式
タップかさ密度=+229.85+3.293×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.889であり、正の傾きとなる相関関係を示す。
【0052】
粘度増加50%の時間として測定した溶解速度は、温度に対して、次式
粘度増加50%の時間=+89.686−0.5693×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.944であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに粘度増加50%の時間が減少する関係を示す。
【0053】
粘度増加80%の時間として測定した溶解速度は、温度に対して、次式
粘度増加80%の時間=+164.32−0.9471×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.944であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに粘度増加80%の時間が減少する関係を示す。
【0054】
粒子の直径の中央値DOP50,3及び粒子長の中央値LOP50,3は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度の上昇とともにDOP50,3及びLOP50,3が減少することを示す。粘度増加50%及び80%の時間はそれぞれ、多糖類誘導体粒子の溶解速度の尺度であるが、粒子の直径さらに長さの中央値の減少とともに減少するものであり、すなわち、乾式粉砕後の粒子の溶解速度は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御することにより制御することができる。
【0055】
例9−16
衝撃式粉砕機のローターを周速度58m/sで動作させたこと以外は、例1−8の手順を繰り返した。
結果を表2に記載する。
【0056】
【表2】
【0057】
表2の結果は、乾式粉砕前の粒子状多糖類誘導体の温度、エアー・スエプト型衝撃式粉砕機を58m/sで用いた乾式粉砕後の粒子状多糖類誘導体の、DOP50,3、LOP50,3、粘度増加50%と80%それぞれの時間として測定した溶解速度、及びかさ密度との間の、相関関係を示している。
【0058】
粒子の直径の中央値DOP50,3は、温度に対して、次式
DOP50,3=+84.486−0.3165×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.7569であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにDOP50,3が減少する関係を示す。
【0059】
粒子長の中央値LOP50,3は、温度に対して、次式
LOP50,3=+1538.4−15.029×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.972であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともにLOP50,3が減少する関係を示す。
【0060】
EQPC=+540.79−4.7037×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.9326であり、負の傾き、すなわち、温度の上昇とともにEQPCが減少する。
【0061】
非タップかさ密度は、温度に対して、次式
非タップかさ密度=+148.56+1.5862×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.9235であり、正の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに非タップかさ密度が増加する関係を示す。
【0062】
タップかさ密度は、温度に対して、次式
タップかさ密度=+191.1+2.4011×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.92であり、正の傾きとなる相関関係を示す。
【0063】
粘度増加50%の時間として測定した溶解速度は、温度に対して、次式
粘度増加50%の時間=+795.91−7.9809×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.872であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに粘度増加50%の時間が減少する関係を示す。
【0064】
粘度増加80%の時間として測定した溶解速度は、温度に対して、次式
粘度増加80%の時間=+1316.5−12.691×[℃ 温度]
に従う相関関係であって、Rが0.8779であり、負の傾きとなる相関関係、すなわち、温度の上昇とともに粘度増加80%の時間が減少する関係を示す。
以下に、本願発明に関連する発明の実施形態について列挙する。
[実施形態1]
湿潤多糖類誘導体を乾式粉砕することによって粒子状多糖類誘導体を製造する方法であって、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御することによって、乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質が制御される、粒子状多糖類誘導体を製造する方法。
[実施形態2]
乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1又は複数の性質が、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を制御し及び調節することによって、制御され及び調節される、前記実施形態1記載の方法。
[実施形態3]
乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質が、乾式粉砕前の多糖類誘導体の第1の温度によって、第1の値に調節され、第2の温度によって第2の値に調節される、前記実施形態1記載の方法。
[実施形態4]
前記実施形態1〜3のいずれか1項記載の方法であって、
a) 乾式粉砕前の温度が異なる湿潤多糖類誘導体の、少なくとも2つの試料を乾式粉砕し、各試料の乾式粉砕後の粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質を測定する工程と、
b) i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質との間の、相関関係を決定する工程と、
c) 乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望する直径の中央値、長さの中央値、かさ密度又は溶解速度に適合させる工程と、
を含む方法。
[実施形態5]
多糖類誘導体粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質を制御又は調節する方法であって、
A) 湿潤多糖類を準備する工程と、
B) 多糖類誘導体の温度を制御する工程と、
C) 制御された温度の多糖類誘導体を乾式粉砕する工程と、
D) i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)乾式粉砕後の多糖類誘導体粒子の、直径の中央値、長さの中央値、かさ密度及び溶解速度から選択される1つ又は複数の性質との間の、相関関係を決定する工程と、
E) 乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を、乾式粉砕後の粒子の、所望する直径の中央値、長さの中央値、かさ密度又は溶解速度に適合させる工程と、
を含む方法。
[実施形態6]
i)乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度と、ii)直径の中央値又は長さの中央値との間の、決定された相関関係が、連続式乾式粉砕工程における工程内管理として用いられ、この場合において直径の中央値又は長さの中央値は、乾式粉砕前の多糖類誘導体の温度を設定し任意に適合させるために、決定され使用される、前記実施形態5記載の方法。
[実施形態7]
工程内管理がオンラインで行われる、前記実施形態6記載の方法。
[実施形態8]
多糖類誘導体の懸濁液から多糖類誘導体を分離することによって多糖類誘導体を得て、続いて乾式粉砕機内で乾式粉砕を行う、前記実施形態1〜7のいずれか1項記載の方法。
[実施形態9]
乾燥多糖類誘導体と液体とを配合機内で混合し、これにより得られた湿潤多糖類誘導体を、続いて乾式粉砕機中で乾式粉砕する、前記実施形態1〜7のいずれか1項記載の方法。
[実施形態10]
乾式粉砕前の多糖類誘導体粒子の温度が5〜80℃の範囲に制御される、前記実施形態1〜9のいずれか1項記載の方法。
[実施形態11]
セルロース誘導体がセルロースエーテルである、前記実施形態1〜10のいずれか1項記載の方法。
[実施形態12]
粒子の長さ又は直径の中央値、又はその両者が、高速画像解析によって決定される、前記実施形態1〜11のいずれか1項記載の方法。
[実施形態13]
乾式粉砕工程がエアー・スエプト型衝撃式粉砕機内で行われる、前記実施形態1〜12のいずれか1項記載の方法。