特許第6247328号(P6247328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247328
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】正顎矯正装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   A61F5/02 Z
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-61521(P2016-61521)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-182337(P2016-182337A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】201510135110.3
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201610159772.9
(32)【優先日】2016年3月21日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089577
【氏名又は名称】洪 澄祥
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】洪 澄祥
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−523272(JP,A)
【文献】 特表2014−521481(JP,A)
【文献】 米国特許第05683244(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0251970(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0283967(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0000495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正顎矯正装置であって、
取り外し可能な方式で、患者の上顎歯列弓に装着され、且つ、その上に固定される少なくとも一つの第一左側接続部分を有する第一左側頬面、および、その上に固定される少なくとも一つの第一右側接続部分を有する第一右側頬面を有する第一リテーナーと、
取り外し可能な方式で、患者の下顎歯列弓に装着され、且つ、その上に固定される少なくとも一つの第二左側接続部分を有する第二左側頬面、および、その上に固定される少なくとも一つの第二右側接続部分を有する第二右側頬面を有する第二リテーナーと、
前記第一リテーナーと前記第二リテーナーがそれぞれ、前記上顎歯列弓と前記下顎歯列弓で固定されるとき、前記第二リテーナーを、前記第一リテーナーに対して移動させて、前記患者の下顎骨と上顎骨間の相対位置を調整するように、前記第一左側接続部分を、前記第二左側接続部分に結合し、前記第一右側接続部分を、前記第二右側接続部分に結合する複数の弾性部材と、を有し、
前記第二リテーナーは、その上に形成される少なくとも一つのスペーサーを有する第二咬合面をさらに有し、前記第一リテーナーは、その上に形成され、前記上顎歯列弓の少なくとも一つの上顎歯を露出する少なくとも一つの開口を有する第一咬合面をさらに有して、前記第一咬合面が、前記第二咬合面に接触するとき、前記スペーサーは、前記開口により、前記上顎歯に当接して、前記上顎歯を上方に押す
ことを特徴とする正顎矯正装置。
【請求項2】
記第一リテーナーは、前記第一咬合面の上に形成される少なくとも一つのガイドブロックをさらに有し、前記ガイドブロックはガイド表面を有して、前記第二リテーナーが前記第一リテーナーに対して移動するとき、前記第二咬合面が接触して前記ガイド表面に沿って移動することを特徴とする請求項1に記載の正顎矯正装置。
【請求項3】
記第一リテーナーは、前記第一咬合面の上に形成された少なくとも一つの肉厚部をさらに有し、前記肉厚部はガイド表面を有して、前記第二リテーナーが、前記第一リテーナーに対して移動するとき、前記第二咬合面が接触して前記ガイド表面に沿って移動することを特徴とする請求項1に記載の正顎矯正装置。
【請求項4】
前記第二咬合面は、その上に形成される少なくとも一つの対応する肉厚部を有し、前記第二リテーナーが、前記第一リテーナーに対して移動するとき、前記第二咬合面上の前記対応する肉厚部は、接触して前記第一咬合面上の前記肉厚部の前記ガイド表面に沿って移動することを特徴とする請求項に記載の正顎矯正装置。
【請求項5】
前記スペーサーと前記第二リテーナーは、一体成型されることを特徴とする請求項1記載の正顎矯正装置。
【請求項6】
前記第一リテーナーは前記患者の前記上顎歯列弓の一部を包み込む形状の収容部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の正顎矯正装置。
【請求項7】
前記第二リテーナーは前記患者の前記下顎歯列弓の一部を包み込む形状の収容部を有することを特徴とする請求項1に記載の正顎矯正装置。
【請求項8】
前記第二リテーナーは、その上に固定される第二中央接続部分を有する唇側面をさらに有し、前記正顎矯正装置は、前記患者の前記下顎骨と前記上顎骨間の水平非対称を矯正するように、前記第二中央接続部分と前記第二左側接続部分を結合し、前記第二左側接続部分と前記第一左側接続部分を結合するか、または、前記第二中央接続部分と前記第二右側接続部分を結合し、前記第二右側接続部分と前記第一右側接続部分を結合する、少なくとも一つの他の弾性部材をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の正顎矯正装置。
【請求項9】
前記第一リテーナーは、さらに、その上に固定される少なくとも一つの第一舌接続部分を有する舌表面を有することを特徴とする請求項1に記載の正顎矯正装置。
【請求項10】
前記第二リテーナーは、さらに、その上に固定される少なくとも一つの第二舌接続部分を有する舌表面を有することを特徴とする請求項1に記載の正顎矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2015年3月26日に出願された中国特許第201510135110.3、および、2016年3月21日に出願された中国特許第201610159772.9号から優先権を主張するものであり、その内容は引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明は、正顎矯正技術に関するものであって、特に、正顎矯正装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、上顎骨と下顎骨間の顎関節(TMJ)が最適位置にない場合、上顎骨と下顎骨間の相対位置の異常を生じるので、患者は正顎矯正が必要である。
【0004】
現在、医師は、多くが、骨切術を行って、患者の上顎骨、下顎骨、または、両方を切り開き、砕かれた骨を必要な位置で再建して、正顎矯正を達成する。しかし、多くの患者は、この外科手技に関連する煩わしさやリスクに恐れ、往々にして、この選択に躊躇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題に関し、本発明の目的は、正顎矯正装置を提供し、特に、多くの患者に恐れられる外科手技を行わずに、正顎矯正を達成することができる取り外し可能な正顎矯正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様は、第一リテーナー、第二リテーナー、および、少なくとも二つの弾性部材を有する正顎矯正装置を提供する。第一リテーナーは、取り外し可能な方式で、患者の上顎歯列弓に装着され、且つ、その上に固定される少なくとも第一左側接続部分を有する第一左側頬面、および、その上に固定される少なくとも第一右側接続部分を有する第一右側頬面を有する。第二リテーナーは、取り外し可能な方式で、患者の下顎歯列弓に装着され、且つ、その上に固定される少なくとも第二左側接続部分を有する第二左側頬面、および、その上に固定される少なくとも第二右側接続部分を有する第二右側頬面を有する。複数の弾性部材は、第一左側接続部分を第二左側接続部分に結合し、第一右側接続部分を第二右側接続部分に結合して、第一リテーナー、および、第二リテーナーが、それぞれ、上顎歯列弓と下顎歯列弓に固定されるとき、弾性部材が、第二リテーナーを、第一リテーナーに対して移動させ、これにより、患者の下顎骨と上顎骨間の相対位置を調整する。ここで、第二リテーナーは、その上に形成される少なくとも一つのスペーサーを有する第二咬合面をさらに有し、第一リテーナーは、その上に形成され、上顎歯列弓の少なくとも一つの上顎歯を露出する少なくとも一つの開口を有する第一咬合面をさらに有して、第一咬合面が、第二咬合面に接触するとき、スペーサーは、開口により、上顎歯に当接して、上顎歯を上方に押す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明が充分理解できるように、次に添付図面を参照しながら発明を説明する。
図1A】通常の場合の患者の頭蓋骨、上顎骨、および、下顎骨の相対関係を示す図である。
図1B】通常の場合の患者の頭蓋骨、上顎骨、および、下顎骨の相対関係を示す図である。
図2】本発明の一実施態様による正顎矯正装置、および、患者の上顎歯列弓と下顎歯列弓の相対関係を示す図である。
図3A】本発明の一実施態様による第一リテーナーを患者の上顎歯列弓に装着した状態を示す図である。
図3B】本発明の一実施態様による第二リテーナーを患者の下顎歯列弓に装着した状態を示す図である。
図4】本発明の一実施態様による正顎矯正装置の動作原理を示す図である。
図5A】本発明の別の実施態様による第一リテーナーを患者の上顎歯列弓に装着した状態を示す図である。
図5B】本発明の別の実施態様による第二リテーナーを患者の下顎歯列弓に装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的、特徴、および、長所を説明するため、以下で好ましい実施態様を図面とともに説明する。
【0012】
以下の記述において、 “上”、“上方”、“下” 、“下方”、“左”と “右”の方位は、図中に示されるように、各構成要素の相対位置間の関係を示すものであり、本発明を限定するものではない。また、各構成要素の相対位置の関係は、図に示されるように、X軸、Y軸、および、Z軸を含む直交座標を参照する。このほか、本発明は、各種例において、同じ、または、相同の部分は、同じ参照番号、および/または、文字を使用して、説明を簡潔、且つ、明確にする。
【0013】
図1A図1Bは、通常の場合の患者の頭蓋骨40、上顎骨10、および、下顎骨20の相対関係を示す図で、上顎骨10は、固定して頭蓋骨40に接続され、下顎骨20は、顎関節30により、移動可能な方式で、頭蓋骨40に接続される。また、患者の上顎歯列弓12、および、下顎歯列弓22は、それぞれ、上顎骨10と下顎骨20に接続される。患者の上顎骨10と下顎骨20間の顎関節30が最適位置でないとき、下顎骨20が、上顎骨10に対して突顎(図1A)、または、陥没(図1B)するので、上顎歯列弓と下顎歯列弓12と22の不正咬合が発生する。よって、患者の歯の美観、口腔機能、たとえば、咀嚼、発音、および、口腔衛生関係、たとえば、歯腔、および、歯の摩損等に影響する。
【0014】
上述のように、本発明の目的は、正顎矯正装置を提供し、特に、患者に恐れられる外科手技をせずに、正顎矯正を達成する患者が取り外し可能な正顎矯正装置を提供することである。
【0015】
図2は、本発明の一実施態様による正顎矯正装置、および、患者の上顎歯列弓12、および、下顎歯列弓22の相対関係を示す図である。図2に示されるように、正顎矯正装置は、主として、第一リテーナー100、第二リテーナー200、および、数個の弾性部材500を有する。このほか、第一リテーナー100上に設置される数個の第一ブラケット302、第一弧線304、および、第一接続部分306を有し、および、第二リテーナー200上に設置される数個の第二ブラケット402、第二弧線404、および、第二接続部分406を有する。
【0016】
第一リテーナー100は、互いに反対の第一歯収容部R1、および、第一咬合面B1を有する。また、第二リテーナー200は、互いに反対の第二歯収容部R2、および、第二咬合面B2を有する。第一咬合面B1は第二咬合面B2に対応する。第一、および、第二歯収容部R1とR2は、収容空間を形成して、それぞれ、上顎歯列弓と下顎歯列弓12と22に収容する。
【0017】
理解すべきことは、第一リテーナー100と第二リテーナー200は、取り外し可能なリテーナー(また、可動式リテーナーとしても知られる)であるので、患者は、状況や需要に従って、リテーナーを自由に装着、および、取り外すことができるとともに、普通に歯を磨くことができることである。いくつかの実施態様において、第一リテーナー100と第二リテーナー200は、熱可塑性物質、合成樹脂、または、口腔に適するその他の材料を有する。
【0018】
図2の実施態様に示されるように、第一リテーナー100は、さらに、互いに反対の第一左側頬面100a、および、第一右側頬面100bを有する。第一ブラケット302は、第一左側頬面100aと第一右側頬面100b上に装着される(たとえば、第一左側頬面100aと第一右側頬面100bは、それぞれ、5個の第一ブラケット302を有する)。第一弧線304(たとえば、二個の第一弧線304)は、それぞれ、第一左側頬面100aと第一右側頬面100b上の第一ブラケット302を通過し、且つ、第一ブラケット302により固定される。このほか、第一弧線304は、それぞれ、取り付けられる第一接続部分306(たとえば、それぞれ、フック構造を有する4個の第一接続部分306)を有し、且つ、第一接続部分306は、第一ブラケット302間に位置する。
【0019】
同様に、第二リテーナー200は、さらに、互いに反対の第二左側頬面200a、および、第二右側頬面200bを有し、第二左側頬面200aは第一リテーナー100の第一左側頬面100aに対応し、第二右側頬面200bは第一リテーナー100の第一右側頬面100bに対応する。第二ブラケット402が、第二左側頬面200a、および、第二右側頬面200bに装着される(たとえば、第二左側頬面200aと第二右側頬面200bは、それぞれ、5個の第二ブラケット402を有する)。第二弧線404(たとえば、二個の第二弧線404)は、それぞれ、第二左側頬面200aと第二右側頬面200b上の第二ブラケット402を通過し、且つ、第二ブラケット402により固定される。このほか、第二弧線404は、それぞれ、取り付けられる第二接続部分406(たとえば、それぞれ、フック構造を有する4個の第二接続部分406)を有し、 且つ、第二接続部分406は、第二ブラケット402間に位置する。
【0020】
いくつかの実施態様において、第一と第二ブラケット302と402は、ステンレス鋼、Ni-Ti 合金、または、プラスチックセラミック材料でなる。第一と第二弧線304と404は、第一と第二接続部分306と406と同様に、ステンレス鋼、または、Ni-Ti 合金材料でなる。
【0021】
図2に示されるように、弾性部材500を用いて、第一左側頬面100a上の第一接続部分306(つまり、第一左側接続部分)を、第二左側頬面200a上の第二接続部分406(つまり、第二左側接続部分)に結合するとともに、第一右側頬面100b上の第一接続部分306(つまり、第一右側接続部分)を、第二右側頬面200b上の第二接続部分406(つまり、第二右側接続部分)に結合し(たとえば、第一と第二リテーナー100と200の左側頬面と右側頬面は、それぞれ、3個の弾性部材500が設置される)、よって、弾性部材500の弾性力は、第二リテーナー200を、第一リテーナー100に対し、後方と上方(Y軸とZ軸間の方向に沿って)に移動させるか、または、前方と下方(−Y軸と−Z軸間の方向に沿って)に移動させる。したがって、第二リテーナー200に接続される患者の下顎骨20と第一リテーナー100に接続される患者の上顎骨10間の相対位置が調整され、これにより、正顎矯正を達成する。
【0022】
なお、弾性部材500の第一リテーナー100と第二リテーナー200の対応する頬面上の第一と第二接続部分306と406の結合方法が異なるとき、第二リテーナー200を、第一リテーナー100に対し、後方と上方(Y軸とZ軸間の方向に沿って)、または、前方と下方(−Y軸と−Z軸間の方向に沿って)に移動させる弾性力を生成することがある。いくつかの実施態様において、弾性部材500は、同じ、または、異なる弾性力を有する Ni-Ti合金材料でなる、たとえば、ラバーバンドやスプリングコイル等の環状物である。
【0023】
特に、第一リテーナー100と第二リテーナー200の左側右側頬面上に配置される弾性部材500の数量と弾性力が互いに適合するとき、第一リテーナー100と第二リテーナー200の左側右側頬面が受ける力が一致し、よって、第二リテーナー200に接続される下顎骨20が、患者の口腔の垂直中央軸C(図2中のY軸に平行)に沿って、第一リテーナー100に接続される上顎骨10に対し回転するのを防止するとともに、下顎骨20と上顎骨10間の相対移動を、図2中のY軸と Z軸間の方向、または、−Y軸と−Z軸間の方向だけにする。しかし、いくつかの実施態様において、異なる患者の異なる条件により、第一リテーナー100と第二リテーナー200の左側右側頬面上に配置される弾性部材500の数量と弾性力は一致しなくてもよい。
【0024】
このほか、第一と第二ブラケット302と402の位置と数量、第一と第二弧線304と404の数量と長さ、第一と第二(左側と右側)接続部分306と406の位置と数量、および、弾性部材500の数量は、図2の実施態様に限定されず、必要に応じて調整できる。
【0025】
図2を引き続き参照すると、正顎矯正装置は、さらに、固定して、第一リテーナー100の第一左側頬面100aと第一右側頬面100b間の唇側面100c上に設置される第一中央接続部分308(たとえば、フック構造)を有する。また、少なくとも一つの弾性部材500を用いて、第一中央接続部分308と第一左側頬面100a、または、第一右側頬面100b上の第一接続部分306を結合し、その後、第一接続部分306、および、第二リテーナー200上の対応する(第一接続部分306に対し後方位)第二接続部分406を結合するので、弾性部材500の弾性力は、第二リテーナー200を、第一リテーナー100に対し、図2に示されるようにX方向、または、−X方向に沿って、移動させ、これにより、上顎骨10と下顎骨20間の水平非対称を改善する。同様に、図2に示されるように、正顎矯正装置は、さらに、固定して、第二リテーナー200の第二左側頬面200aと第二右側頬面200b間の唇側面200c上に設置される第二中央接続部分408(たとえば、フック構造)を有する。また、少なくとも一つの弾性部材500を用いて、第二中央接続部分408、および、第二左側頬面200a、または、第二右側頬面200b上の第二接続部分406を結合し、その後、第二接続部分406、および、第一リテーナー100上の対応する(第二接続部分406に対して後方位)第一接続部分306を接続し、これにより、上顎骨10と下顎骨20の水平非対称を改善する。
【0026】
いくつかの実施態様において、第一、および、第二中央接続部分308と408の材料と組み立て方法は、第一と第二接続部分306と406と同じである。
【0027】
図3Aは、本発明の一実施態様による第一リテーナー100を、患者の上顎歯列弓に装着した状態を示す図である。図3Bは、本発明の一実施態様による第二リテーナー200を、患者の下顎歯列弓に装着した状態を示す図である。
【0028】
図3A図3Bに示されるように、理解すべきことは、第一リテーナー100と第二リテーナー200が、上顎歯列弓と下顎歯列弓に装着されるとき、それらは、上顎歯列弓と下顎歯列弓の歯冠全体を被覆することである。さらに特に、第一リテーナー100と第二リテーナー200は、上顎歯列弓と下顎歯列弓のアンダーカット構造にしたがって設計されるので、第一リテーナー100、および、第二リテーナー200は、上顎歯列弓と下顎歯列弓の歯冠全体を適合するように覆うことができ、上顎歯列弓と下顎歯列弓と結合される第一と第二リテーナー100と200の保持力を強化する。よって、正顎矯正期間中、第一リテーナー100、および、第二リテーナー200が、上顎歯列弓と下顎歯列弓から容易に脱離するのを防止することができる。
【0029】
図3Aを参照すると、肉厚部102、および、数個の肉厚部104が、第一リテーナー100の第一咬合面B1上に形成される。特に、肉厚部102の位置は、上顎歯列弓の二個の切歯12Aと二個の側切歯12Bに対応し(図2を参照)、および、肉厚部104の位置は、それぞれ、上顎歯列弓の(左側と右側)犬歯12C、第一小臼歯12Dと第二小臼歯12Eに対応する(図2を参照)。さらに、肉厚部102は、切歯12Aと12Bの頂部から、徐々に、顎側Tに向かって低くなるガイド表面を形成し、肉厚部104は、肉厚部104の最厚部分(犬歯12C、第一小臼歯12D、および、第二小臼歯12Eの中央に対応する)から、徐々に、肉厚部104の最薄部分(上述の歯の隣接箇所)に低くなるガイド表面を形成する。肉厚部102と肉厚部104のガイド表面は平面か、曲面である。
【0030】
同様に、図3Bを参照すると、数個の肉厚部204が、第二リテーナー200の第二咬合面B2上に形成される。特に、肉厚部204の位置は、それぞれ、下顎歯列弓の(左側と右側)第一小臼歯22A、および、第二小臼歯22Bに対応する(図2を参照)。肉厚部204の最厚部分は、第一小臼歯22と第二小臼歯22Bの中央に対応する。
【0031】
なお、本発明において使用される用語、たとえば、「肉厚部」は、肉厚部102と104に対応する第一咬合面B1の領域の厚さが、それぞれ、第一咬合面B1のその他の領域(肉厚部がない)より厚く、肉厚部204に対応する第二咬合面B2の領域の厚さが、それぞれ、第二咬合面B2のその他の領域より(肉厚部がない)厚いことを示すことである。
【0032】
いくつかの実施態様において、第一リテーナー100、および、肉厚部102と104は一体成型することができる。あるいは、肉厚部102と104は、合成樹脂、グラスアイオノマー、または、経口適用に適切なその他の耐摩耗材料で形成され、その後、第一リテーナー100の第一咬合面B1に接合することができる。同様に、第二リテーナー200と肉厚部204は一体成型することができる。あるいは、肉厚部204は、合成樹脂、グラスアイオノマー、または、経口適用に適切なその他の耐摩耗材料により形成され、その後、第二リテーナー200の第二咬合面B2に接合することができる。
【0033】
上述のように、患者が正顎矯正装置を装着し、第一リテーナー100の第一咬合面B1が第二リテーナー200の第二咬合面B2に接触するとき、下顎歯列弓の二個の切歯と二個の側切歯に対応する第二リテーナー200の数個のサブユニット202と202’(図2図3B)が、第一リテーナー100上の肉厚部102(図3A)に接触し、および、第二リテーナー200上の肉厚部204(図3B)が、第一リテーナー100上の肉厚部104(図3A)と接触する。
【0034】
図4は、本発明の一実施態様による正顎矯正装置の動作原理を示す図である。上述のような構造設計により、第一リテーナー100の第一咬合面B1が、第二リテーナー200の第二咬合面B2に接触するとき、第一咬合面B1上の肉厚部102と104は、ガイドブロックとして用いられ、サブユニット202、202’、および、第二咬合面B2上の肉厚部204が、ガイドブロック102と104のガイド表面と接触する(図を簡潔にするため、一つのガイド表面と一つの接触点だけが、図4に示される)。このとき、弾性部材500(図2)によりもたらされる弾性力は、第二リテーナー200を、第一リテーナー100に対して、ガイド表面に沿ってスライドさせ(図4の矢印で示される)、これにより、第二リテーナー200に接続される下顎骨20を、第一リテーナー100に接続される上顎骨10に対し移動させるとともに、顎関節30を、適切な位置に戻して、正顎矯正の目的を達成する。
【0035】
弾性部材500の弾性力が、第二リテーナー200を、第一リテーナー100に対し、後方と上方(Y軸 とZ軸間の方向に沿って)に移動させるとき、図1Aに示されるように、患者の下顎骨20が、上顎骨10に対し突顎する状況を改善する。反対に、弾性部材500の弾性力が、第二リテーナー200を、第一リテーナー100に対し、前方と下方(−Y軸と−Z軸間の方向に沿って)に移動させるとき、患者の下顎骨20が、図1Bに示されるように、上顎骨10に対し陥没する状況を改善することができる。
【0036】
上述の実施態様において、ガイドブロックとガイド表面は、第一リテーナー100の第一咬合面B1上に形成されているが、それらは、第二リテーナー200の第二咬合面B2上に形成されてもよい。
【0037】
第一リテーナー100の肉厚部102、104、および、第二リテーナー200の肉厚部204の位置と数量は、図3A図3Bの実施態様に限定されず、異なる患者の異なる状況に応じて調整できる。
【0038】
このほか、患者の下顎骨20が、上顎骨10に対して突顎する状況において、上顎歯列弓12に設置される第一リテーナー100に結合されるとき、上顎歯列弓12の第二臼歯12Fは、往々にして、下顎歯列弓22の第二臼歯12C(図1A)を妨げるので、下顎歯列弓22に設置される第二リテーナー200が動けなくなり、正顎矯正期間中、下顎骨20は、上顎骨10に対し、後方と上方(Y軸とZ軸間の方向に沿って)に円滑に移動できなくなる。
【0039】
よって、図3A図3Bを参照すると、第一リテーナー100の第一咬合面B1は、さらに、その上に形成される二個の開口106を有し、上顎歯列弓12の左側と右側の第二臼歯12Fを露出し、且つ、第二リテーナー200の第二咬合面B2は、さらに、それぞれ、第一リテーナー100の開口106に対応する二個のスペーサー206を形成する。なお、第一リテーナー100の第一咬合面B1が、第二リテーナー200の第二咬合面B2に接触するとき、スペーサー206は、開口106により、第二臼歯12Fに当接して、第一リテーナー100と第二リテーナー200の間の空間を増加し、よって、第二リテーナー200が、第一リテーナー100に対し動けなくなるのを防止する。よって、この実施態様の正顎装置は、円滑に、第二リテーナー200に接続される下顎骨20と第一リテーナー100に接続される上顎骨10間の相対位置を調整し、正顎矯正を達成する。理解すべきことは、この実施態様の正顎装置は、さらに、下顎骨20を回転させることである。
【0040】
この実施態様において、スペーサー206を肉厚部とみなすことができ、且つ、その製造方法は肉厚部204と同じである。このほか、いくつかの実施態様において、スペーサー206と開口106の位置と数量は調整可能である。いくつかの実施態様において、第一咬合面B1、または、第二咬合面B2上の開口は、省略することができる。
【0041】
上述の実施態様において、正顎矯正装置は、第一リテーナー100と第二リテーナー200を有するが、いくつかの実施態様において、正顎矯正装置は、取り外し可能な方式で、上顎歯列弓、または、下顎歯列弓に装着される単一のリテーナー(第一リテーナー100、または、第二リテーナー200)を有する。これらの状況において、リテーナーがない別の歯列弓の左側頬面と右側頬面上も、それぞれ、少なくとも二つの接続部分(つまり、左側と右側の接続部分)を有するとともに(たとえば、リテーナーが上顎歯列弓に装着される場合、少なくとも二つの接続部分が、下顎歯列弓の左側右側頬面に固定される。反対に、リテーナーが下顎歯列弓に装着される場合、少なくとも二つの接続部分が、上顎歯列弓の左側右側頬面に固定される)、リテーナーがないこの歯列弓の咬合面は、さらに、その上に肉厚部(ガイドブロック)を形成する。よって、弾性部材を用いて、リテーナー上の接続部分、および、リテーナーがない歯列弓上の接続部分を結合して、下顎骨を、上顎骨に対し移動させ、正顎矯正の目的が達成される。このほか、リテーナーがない歯列弓は、左側右側頬面間のその唇側面上に、中央接続部分を有し、中央接続部分が、隣接する左側、または、右側頬面上の接続部分に結合され、その後、弾性部材により、別の歯列弓上に装着されるリテーナーの対応する左側、または、右側頬面上の接続部分に結合されて、上述のように、上顎骨10と下顎骨20間の水平非対称を改善する。
【0042】
上述の実施態様において(図2を参照)、第一リテーナー100の第一歯収容部R1は、上顎歯列弓12の全部(上顎歯)を包み込み、第二リテーナー200の第二歯収容部R2は、下顎歯列弓22の全部(下顎歯)を包み込むようにしたが、第一歯収容部R1は、一部の上顎歯列弓12(上顎歯の一部)を包み込み、且つ、第二歯収容部R2は、一部の下顎歯列弓22(下顎歯の一部)を包み込むように設計してもよい。
【0043】
このほか、図5A図5Bを参照すると、図5Aは、本発明の別の実施態様による第一リテーナー100’を患者の上顎歯列弓に装着する状態を示す図、および、図5Bは、本発明の別の実施態様による第二リテーナー200’を患者の下顎歯列弓に装着する状態を示す図である。図5A図5Bに示されるように、第一リテーナー100’は、図3Aの実施態様のようにほぼ完全に被覆するのではなく、上顎歯列弓12の咬合面O1を露出してもよく、第二リテーナー200’は、図3Bの実施態様のようにほぼ完全に被覆するのではなく、下顎歯列弓22の咬合面O2を露出してもよい。当然のことながら、上述の数個の弾性部材500(図2を参照)を用いて、第一リテーナー100’の頬面上の第一接続部分306を、第二リテーナー200’の頬面上の第二接続部分406に結合しても、正顎矯正が達成される。
【0044】
図5A図5Bに示されるように、第一リテーナー100’の舌表面上に固定される少なくとも一つの第一舌接続部分306’があってもよく、また、第二リテーナー200’の舌表面上に固定される少なくとも一つの第二舌接続部分406’があってもよい。第一および第二舌接続部分306’と406’は、図2の実施態様の第一および第二接続部分306と406と同じ材料を有する。この実施態様において(図5A図5B)、第一リテーナー100’、第一接続部分306、および、第一舌接続部分306’は一体成型することができ(たとえば、金属モールドにより)、および、第二リテーナー200’、第二接続部分406、および、第二舌接続部分406’は一体成型することができる(たとえば、金属モールドにより)が、本発明は、これに限定されない。
【0045】
発明の好ましい実施例と利点を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。たとえば、当業者なら、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で、記述される多くの特徴、機能、プロセス、および、材料を変化させることができる。このほか、本発明の範囲は、明細書内の特定の実施態様で記述されるプロセス、機械、製造、組成、装置、方法、および、ステップに限定されず、当業者なら、本発明の開示から、現行の、または、未来で発展するプロセス、機械、製造、組成、装置、方法、および、ステップが、ここで記述される対応する実施態様とほぼ同じ機能を実行できる、あるいは、ほぼ同じ結果を達成することができればよいことが理解できる。したがって、本発明の範囲は、上述のプロセス、機械、製造、組成、装置、方法、および、ステップを含む。このほか、各請求項は、個別の実施例を構成し、且つ、各種請求項の組み合わせは、本発明の範囲に含まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B