(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247344
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】水蒸気改質プロセスに使用される触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/46 20060101AFI20171204BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20171204BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
B01J23/46 311M
B01J37/00 F
B01J37/16
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-117687(P2016-117687)
(22)【出願日】2016年6月14日
(62)【分割の表示】特願2013-553022(P2013-553022)の分割
【原出願日】2012年2月6日
(65)【公開番号】特開2017-13049(P2017-13049A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年7月8日
(31)【優先権主張番号】1102502.0
(32)【優先日】2011年2月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フィヴィオール, マーク ロバート
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−181399(JP,A)
【文献】
特開2011−143361(JP,A)
【文献】
米国特許第06177381(US,B1)
【文献】
国際公開第2010/035430(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0182792(US,A1)
【文献】
特開昭53−055492(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0248199(US,A1)
【文献】
特開平05−220397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンとタールを含む高級炭化水素とを水素と炭素酸化物を含むガス流に改質する、石炭又はバイオマスガス化器排水の水蒸気改質のための方法であって、
(i)Ni、Pt、Pd、Rh及びRuからなる群より選択される1または複数の触媒金属を含む微粒子触媒化合物含有スラリーを、パンコーター内で成形支持体表面に噴霧し、該触媒金属を表面層内に有する被覆成形支持材を形成する工程と、
(ii)該被覆成形支持材を乾燥させ、任意選択的に焼成する、触媒前駆体を形成する工程と、
(iii)任意選択的に該触媒前駆体の金属を低級酸化状態に還元し、触媒を形成する工程と
を含む方法により調製される触媒を用いる、方法。
【請求項2】
前記改質プロセスに酸素が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微粒子触媒化合物中の前記触媒金属が、Niを含み、任意選択的にPt、Pd、Rh及びRuの1又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微粒子触媒化合物中の前記触媒金属が、Ptを含み、任意選択的にPd、Rh及びRuの1又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微粒子触媒化合物中の前記触媒金属が、Pt及びRhを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微粒子触媒化合物中の前記触媒金属がRhからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記微粒子触媒化合物が、微粒子触媒支持材の表面上に分散される、Ni、Pt、Pd、Rh及びRuからなる群から選択される1又は複数の金属を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記微粒子触媒支持材が、アルミナ、チタニア、ジルコニア、亜鉛酸化物、ランタナ、マグネシア、セリア、金属−アルミネート及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記成形支持体が、アルミナ、セリア、マグネシア、チタニア、ジルコニア、カルシウムアルミネート、マグネシウムアルミネート及びそれらの混合物からなる群から選択される支持酸化物を含む耐熱酸化物である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
乾燥させた材料中の触媒的に活性な金属を含む層の厚さが、5から250μmの範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、水蒸気改質(スチームリフォーミング)プロセスでの使用に適した支持触媒を調製する方法に関する。
【0002】
合成ガスとして知られる水素含有ガス混合物を生成するために、天然ガス又はナフサ又はメタノールなどの炭化水素原料を高温高圧で水蒸気と反応させる水蒸気改質が、十分に定着している。炭化水素を水蒸気改質するための触媒は、アルミン酸カルシウム若しくはアルミン酸マンガン又はアルファアルミナなどの耐火金属酸化物の成形支持体に直接支持された典型ベースのニッケル触媒である。例えば燃料電池の水素ガス混合物の生成やバイオマスからのバイオ合成ガス生成など小規模の水蒸気改質プロセスでは、RhやPt触媒などの貴金属触媒が使用されうる。メタノールの水蒸気改質には、CuやPd触媒が使用されうる。
【0003】
これらの触媒は典型的には含浸/焼成法により調製され、活性金属は、しばしば金属硝酸塩の水溶液として多孔質の支持体に適用され、次いで焼成により金属硝酸塩は対応する金属酸化物に転換される。使用に先立ち金属酸化物は典型的には水素含有ガスで還元され、活性触媒を生成する。含浸法は広く使用されるようになったが、製造コストを最低限にし、かつ硝酸塩ベースの触媒からのNOx排出を削減するために、触媒活性金属をより効率的に使用する必要性がある。
【0004】
我々は、従前の調製法の問題を克服する代替の方法を見出した。
【0005】
本発明は、水蒸気改質プロセスで使用される触媒を調製する方法を提供し、該方法は以下の工程を含む。
(i)Ni、Cu、Pt、Pd、Rh、Ru及びAuからなる群より選択される1または複数の触媒金属を含む微粒子触媒化合物含有スラリーを、パンコーター内で成形支持体の表面に噴霧し、被覆成形支持体を形成する工程
(ii)被覆成形支持材を乾燥させ任意で焼成し、表面層に触媒金属を有する触媒前駆体を形成する工程、及び
(iii)触媒前駆体の金属(単数又は複数)を任意で低級酸化状態まで還元し、触媒を形成する工程。
【0006】
本発明はさらに、上記方法により得られうる触媒及びこのような触媒の触媒的水蒸気改質反応への使用を提供する。
【0007】
本発明は、水蒸気改質反応などの孔分散制限反応に特に適した被覆触媒を生産する方法を提供する。
【0008】
成形支持体に適用されるコーティング中の微粒子触媒化合物は、Ni、Cu、Pt、Pd、Rh、Ru及びAuからなる群より選択される1または複数の触媒活性金属を含む。Ni、Pt及びRhの1または複数を含む触媒が好ましい。従って、ある実施態様では、微粒子触媒化合物中の触媒金属は、Niを、任意でPt、Pd、Rh、Ru及びAuの1又は複数と共に含む。他の実施態様では、触媒金属はRhからなる。別の実施態様では、微粒子触媒化合物中の触媒金属は、Ptを、任意でPd、Rh、Ru及びAuの1または複数と共に含み、好ましくはPtとRhを含み、ここでPt:Rhの重量比は、1:1から6:1の範囲であり、好ましくは2:1から4:1である。さらに他の実施態様では、微粒子触媒化合物中の触媒金属は、Cuを、任意でPt、Pd、Rh、Ru及びAuの1又は複数と共に含む。
【0009】
成形支持体に適用されるコーティング中の微粒子触媒化合物は、触媒活性金属の酸化物、水酸化物又は炭酸塩、例えばNiO、CuO又はPtOを含みうる。従って、微粒子触媒化合物は、例えば共沈により形成されうる混合酸化物、例えばCuO-ZnO-Al
2O
3、NiO-Al
2O
3、NiO-MgO-SiO
2、NiO-MgO-SiO
2-Al
2O
3又はNiO-MgO-SiO
2-CaO-Al
2O
3を含みうる。こうした従来の改質触媒の配合物は、粉末として調製され成形支持体にコーティングとして適用されうる。しかし、好ましくは、微粒子触媒化合物は、微粒子触媒支持材の表面に分散される、Ni、Cu、Pt、Pd、Rh、Ru及びAuからなる群より選択される1または複数の金属を含む。従って、スラリーは、1または複数の触媒活性金属を担持する微粒子触媒支持体から形成されうる。適切な微粒子触媒支持材は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ランタナ、マグネシア、セリアなどの酸化物、好ましくはランタナ、イットリア又はセリアで安定化されたジルコニア;アルミン酸カルシウム及びアルミン酸マグネシウムなどの金属−アルミン酸塩;及びこれらの混合物である。銅又はパラジウム触媒には酸化亜鉛が特にアルミナと共に使用されうる。特に好ましい微粒子触媒支持材は、アルミナ及び/又は安定化ジルコニア、例えばランタナ安定化アルミナ、セリア-ジルコニア-アルミナ、セリア-チタニア-アルミナ及びセリア-マグネシア-アルミナ材料を含む。微粒子触媒支持体の微粒子の平均粒径の範囲は、1〜80μm、好ましくは1〜50μmである。微粒子触媒支持材表面に分散した金属は好ましくは触媒金属又は触媒金属酸化物の晶子であり、平均晶子粒径の範囲はXRDで5〜50nmとされる。スラリー形成に用いられる支持組成物中の金属の含有量は、0.1〜50重量%の範囲である。活性が異なるので、好ましくはPt、Pd、Rh、Ru及びAuなどの貴金属は0.1〜5重量%の範囲の量で存在し、Ni又はCuは、10〜75重量%の範囲で存在する。
【0010】
触媒金属(単数又は複数)は、可溶触媒金属化合物を微粒子触媒支持体に一般的な方法で含浸させ、乾燥・焼成し触媒金属化合物(単数又は複数)をそれぞれの酸化物に転換することにより、微粒子触媒支持材表面に分散されうる。あるいは、触媒金属(単数又は複数)は、金属ゾルを用いる沈殿により、又は加熱すると溶液から微粒子触媒支持体に不溶金属化合物を堆積させる金属アンミン塩を用いる堆積-沈殿法により、微粒子触媒支持材表面に分散されうる。
【0011】
微粒子触媒支持体表面に分散される触媒金属を用いると、高温で焼成される従来の含浸耐火酸化物支持触媒よりも表面積と活性が増大した触媒を生産することができる。スラリーを形成するために、微粒子触媒化合物は、好ましくは水性の液体溶剤中に分散される。スラリーの固体含有量は適宜10〜60%wtの範囲でありうる。スラリーは、触媒ウォッシュコートの調製に使用される粉砕法を用いて適宜形成されうる。アルミナ又は水化アルミナゾルなどのバインダー材料が層に含まれてもよく、また、支持体をコーティングする前に分散物の粉砕や混合など他の一般的なウォッシュコート調製法を使用して所望の粒径を得てもよい。好ましい実施態様では、Kollicoat
TMなどのポリエチレングラフトコポリマーがスラリーに含まれる。薬学的錠剤コーティングに使用されているこれらの材料は、ウォッシュコートの表面張力を低下させ、噴霧において濡れと液滴形成を増強し、コーティングにある程度の塑性を与えてコーティング処理自体の間生じうる摩損に耐えられるようにする。
【0012】
成形支持体は、成形品、ペレット又は顆粒などの成形ユニットの形態をとり、粉末の支持材から調製されてよく、潤滑剤又はバインダーも含みうる。成形品及びペレットが成形支持体として好ましい。成形品、ペレット又は顆粒は、市販品でもよく、又は当業者には既知の方法で適切な粉末から容易に調製される。
【0013】
成形支持体は、その製造に使用される鋳型又はダイにより、様々な形と粒径をとりうる。例えば、ユニットは、球、円筒、環又は多穴ユニット(例えば2〜10個の貫通穴)の形態でよく、例えばクローバーの葉の断面状に複数の裂片があってもよく溝があってもよい。いわゆる「馬車の車輪」も使用できる。成形品又はペレットは円筒形、すなわち円形断面でもよいが、好ましくは裂片状か溝付きであって、ユニットで形成した層を通じて圧低下を増加させることなく幾何学的表面積を増加させる。これは、十分な幾何学的表面積を維持しながらも触媒を通じての圧低下が軽減される、という利点がある。成形ユニットは、幾何学的大面積と低圧力損失を組合せて高い衝撃強度を与えるために選択されうる。この点で、4穴四つ葉状及び5穴五つ葉状の溝付き形状のユニットが好ましい。いわゆる馬車の車輪状のより大きい内部容積を有する形状は、摩損による触媒コーティングの損失を低減しうるので、特に有用でありうる。
【0014】
本発明は、通常は使用に適さないと考えられうる高い空隙率、高い幾何学的表面積、低い圧力損失形を可能にする。これは、成形支持体を例えば>900℃の高温まで焼成又は燃焼させて、多孔性や触媒金属晶子の表面積を損することなく、含浸触媒の場合と同様の必要な衝撃強度を獲得することが可能だからである。必要な多孔性と触媒表面積は、次いで適用される、乾燥し任意で低温焼成されるコーティングに金属を含むことにより提供される。このように、該方法は、強度と触媒活性の両方を最大限化することを可能にする。
【0015】
成形ユニットは、好ましくは1mmから50mmの範囲の最小ユニット寸法であることが望ましい。最小寸法とは、幅、例えば径又は長さ、例えば高さでありうる。成形ユニットは、1mmから50mmの長さ、好ましくは1.2mmから25mmの長さでありうる。成形ユニットの断面の幅又は径は、1mmから約25mm、好ましくは1.2mmから10mm、特に好ましくは1.2mmから5mmでありうる。アスペクト比、すなわち最小寸法で最大寸法を割ったもの、例えば長さ/断面は、好ましくは10未満、より好ましくは5未満、最も好ましくは≦2である。
【0016】
好ましくは、成形支持体はアルミナ、マグネシア、セリア、チタニア若しくはジルコニア、アルミン酸カルシウム若しくはアルミン酸マグネシウムなどの耐火酸化物、及びこれらの混合物であり、層構造も含まれ、ここで成形支持体は層配列中2つ以上の支持酸化物を含む。アルファアルミナ及びアルミン酸カルシウム又はアルミン酸マグネシウムの成形支持体が特に好ましい。
【0017】
触媒金属は成形支持体表面の層内に存在する。該層は、パンコーター内で加熱され転動される成形支持ユニットにスラリーを噴霧することにより、微粒子成形ユニットに適用されうる。パンコーターは、コーティング錠剤を調製するのに製薬又は食品業界で使用されるタイプでよい。このような装置は市販されている。複数のスプレーを噴霧の合間に乾燥させながら適用してよい。スラリーは支持体に30℃〜60℃、好ましくは30℃〜50℃の温度範囲で好ましくは適用される。こうすれば支持体は濡れすぎることがなく、スラリーの噴霧乾燥の可能性も回避される。
【0018】
得られた被覆成形支持材を次いで乾燥させる。乾燥工程は20〜150℃で、好ましくは20〜120℃で、より好ましくは95〜110℃で、空気中か若しくは窒素などの不活性ガスの存在下又は真空オーブン内で、24時間までの必要な時間だけ実施されうる。
【0019】
乾燥材料中の触媒活性金属の含有層の厚みは、好ましくは5から250μm(マイクロメートル)の範囲であるが、より好ましくは50〜250マイクロメートルの範囲、最も好ましくは10〜200マイクロメートルである。層が薄いほど塗布された金属は有効利用される。触媒金属含有層の厚みは、光学顕微法や電気マイクロプローブ解析など当業者に既知の方法で決定されうる。
【0020】
本発明の一実施態様では、多層が成形支持体に適用される。特に、1または複数の中間層が表面触媒層と成形支持体の間に配置されうる。このような中間層は触媒作用を受けなくてもよく、好ましくは、成形支持体と触媒被覆層の各熱膨張係数の中間の熱膨張係数を有する材料を含む。こうすれば、熱ショックや摩損による成形支持体からの触媒層の欠損が低減されうる。あるいは、特に高温の用途には、触媒にバリア層を適用して化学的両立性を改善してもよい。
【0021】
所望ならば、乾燥触媒前駆体を空気中か又は窒素などの不活性ガス中で焼成、すなわち250℃より高温、例えば250〜900℃で加熱し、成形支持体表面の任意の非酸化金属化合物をその酸化物に転換し、スラリー中に存在しうるKollicoatなどの任意の有機成分をバーンアウトさせてよい。
【0022】
前駆体表面層の触媒金属は、混合酸化物又はペロブスカイト、パイロクロール、ハイドロタルサイト又は層状二重ヒドロキシド構造を有するコーティングを含みうる。
【0023】
乾燥又は焼成触媒前駆体は次いで水蒸気改質器に供給されうる。還元可能な金属が存在する場合は、触媒前駆体は好ましくは還元されてインサイツで活性な還元触媒を生成する。あるいは、触媒は好ましくは「事前に還元された」形態で供給されてもよく、乾燥又は焼成触媒前駆体は還元工程に供され、少なくとも還元可能な金属の一部が元素の「ゼロ価」状態に転換される。
【0024】
従って、還元工程は、水素、合成ガス又は水素と窒素の混合物などの水素含有ガス又は他の不活性ガスを、乾燥又は焼成触媒前駆体上を高温で通過させることにより、例えば水素含有ガスを200〜600℃の温度範囲で、好ましくは1時間から24時間の間の時間、大気圧又は約25バールまでのより高い圧力で組成物上を通過させることにより、実施されうる。
【0025】
金属を元素の又はゼロ価の状態で含む触媒は、自動的に空気中の酸素と反応しうるので、望ましくない自己加熱と活性損失につながりうるため、扱いにくいことがある。従って、水蒸気改質プロセスに適した還元ニッケル及び銅触媒は、好ましくは酸化物の薄層で還元金属の表面を不動態化することにより保護される。これは、還元触媒を希釈空気/窒素、希釈酸素/窒素又はCO
2ガスの混合物で既知の技法を用いて処理することにより生じうる。
【0026】
本発明に従い調製された触媒は、一次水蒸気改質、二次改質ガス混合物の二次改質、オートサーマル改質及びプレ改質などの改質プロセスで使用されうる。触媒はまた、単独又は水蒸気改質との組合せで、触媒部分的酸化による改質にも使用されうる。触媒はまた、メタン化反応及び水素生成反応にも使用されうる。
【0027】
改質では、炭化水素、典型的には天然ガス又はナフサ、又はメタノール、エタノールディーゼル、ガソリン又は液化石油ガス(LPG)などの液体燃料などのメタン含有ガスが水蒸気及び/又は、適宜、二酸化炭素と触媒活性材料上で反応させて、水素及び一酸化炭素含有ガスを生成する。水素生成反応は:
CH
4+H
2O⇔CO+3H
2
"CH
2"+H
2O→CO+2H
2
("CH
2"はメタンより高級の炭化水素、例えば200℃までの温度で沸騰する通常は気体の炭化水素及び通常は液体の炭化水素を表す。)一酸化炭素を用いた類似の反応が別途又は水蒸気反応と共に行われうる。
CH
4+CO
2→2CO+2H
2
"CH
2"+CO
2→2CO+H
2
メタノールは以下の式に従い水蒸気と反応する。
CH
3OH+H
2O→CO
2+3H
2
【0028】
水蒸気改質反応は吸熱性が高いので、この処理は管型(tubular)水蒸気改質のように外部加熱を用いて実施される場合特に適している。あるいは、反応物を加熱し、断熱床で又は酸素が反応物でもあるハイブリッド処理で触媒上に水蒸気を通過させて熱を供給し、酸化で発生した熱が吸熱水蒸気改質反応により吸収される。ハイブリッド処理は、「二次改質」の管型又は断熱処理の生成物か、又は新鮮な原料に適用されうる(「触媒的部分酸化」又は「オートサーマル改質」)。オートサーマル改質では、酸素と水蒸気は改質触媒上で同時に水素と反応しうるか、又は改質触媒は非触媒部分的燃焼工程の下流に配置されうる。
【0029】
触媒はまた、石炭又はバイオマスガス化器排水の改質にも使用でき、メタンやタールを含む高級炭化水素を水素と一酸化炭素を含むガス流に改質する。
【0030】
ニッケル又は貴金属触媒を用いて天然ガス又はナフサから水素含有合成ガスを生成する場合、出口温度は好ましくは少なくとも500℃である。アンモニア又はメタノール生成のため合成ガスを作るのにNi触媒を用いた場合の温度は通常750〜900℃の範囲であり、冶金還元ガスの生成には1100℃と高く、又は都市ガスの生成には700℃と低い。酸素を使用するハイブリッド処理では、温度は触媒床の最高温部で1300℃にもなりうる。銅やパラジウム触媒上でのメタノール改質は、好ましくは低温、例えば200〜250℃の範囲で実施される。
【0031】
水蒸気改質プロセスにおける圧力は、典型的には1〜50バール(絶対圧)の範囲であるが、120バール(絶対圧)までの圧力が推薦される。通常は、出発炭化水素中、炭素のグラム原子当たり特に1.5から6、例えば2.5から5モルの範囲の過剰な水蒸気及び/又は二酸化炭素が使用される。
【0032】
メタン及びタールを含む高級炭化水素を含有するガス化器排水の触媒的改質では、水蒸気を含むガス化器排水が本発明の触媒を用いる1または複数の工程で処理されうる。例えば、支持Rh触媒又は支持Pt/Rh触媒が単独で又は支持Ni改質触媒の下流で使用され、ガス化器排水中のタールとメタンの両方を改質しうる。好ましくは、例えばサイクロン、フィルター、スクラバー又はデフレクターなどの物理的分離法により、ダスト及び/又は炭素含有固体を改質工程の前にガスから分離する。触媒は高温に対し安定なので、ガス化直後にガス化器排水を冷却することなく使用できるが、高活性であるので、排水をある程度冷却した後に使用してもよい。ガス化器排水改質は、好ましくはガス化器排水圧で、500〜1000℃の温度範囲で実施される。
【0033】
本発明を、以下の実施例と
図1及び2を参照してさらに記述する。
図1は、実施例1の方法により調整された触媒前駆体の光学顕微鏡写真である。
図2は、
図1の触媒と比較方法の触媒のメタン転換率対温度の図である。
【0034】
Profile Automation Pilot XTベンチ頂部側通気パンコーターを用いてペレットのコーティングを行った。コーティングは、シリコーン管(内径5mm)を通じてパンコーターにウォッシュコートを供給する蠕動式ポンプ(Watson Marlow 101U/R)により供給されるスプレーノズルで適用した。
【0035】
スラリーを、Eiger Torrenceミニモーターミル250で、粉砕媒体として1mmのYSZビーズを用いて事前に粉砕した。粒径分布はMalvern Mastersizerレーザー解析粒径アナライザーを用いて測定した。
【0036】
Jenway370pHメーターを用いてスラリーのpHを測定し、Sartorius MA45固体含量計を用いてスラリー固体含有量を測定した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】成形アルファアルミナの芯部に触媒外層を含む触媒を有する触媒前駆体を表す。
【
図2】Rh−硝酸塩溶液を用いて一般的な初期湿式含浸法で調製した0.2%Rh/CaAl
2O
4触媒と上記のパンコート触媒(2Rh/CZA)を比較している。初期湿式触媒ではRhが支持体の表面全体に500マイクロメートルまでの深さで分散しているが、パンコーターで調製された被覆触媒はRh含有外層を有する。Rhローディング0.15%のパンコート触媒は、メタン転換において、Rh含有量が比較含浸触媒よりも有意に低かったにもかかわらず、調査した温度範囲全域で比較含浸触媒よりも優れていた。
【実施例】
【0038】
実施例1:触媒の調製
2%Rh/30%Ce
0.75Zr
0.25O
2−70%Al
2O
3の粉末(470g)をミネラル除去水に分散させて45%の固体スラリーを作った。これを350rpmで8分間粉砕し、2.2ミクロンのD50を得た。酢酸を加えて478gのウォッシュコートのpHを6.7(天然)から4.0に調節し、Dipseral P3アルミナ(Sasol)を加え(21.5g)、次いでSilverson(約3000rpmで20分)のハイシアヘッドで混合した。 ミネラル除去水(150ml)に溶解させてあったKollicoat IR(17.6g(8%wrt触媒)を加えると、ウォッシュコートの最終重量は705gであった。このウォッシュコート388gをパンコーター内で1L(1180g)のアルファアルミナのクローバーの葉形の錠剤に適用した。コーティングのパラメーターは以下のとおりであった。T入り口(50℃)、パン回転数(20rpm)、ポンプ回転数(18rpm)、パン減圧(−30Pa)。コーティングには29分かかった。生成物を500℃で2時間焼成した。得られた触媒層の厚みは100〜150ミクロンであった。
図1は、成形アルファアルミナの芯部に触媒外層を含む触媒を有する触媒前駆体を表す。
【0039】
実施例2:試験
実施例1の被覆ペレットのメタン水蒸気改質活性を試験した。ペレット24個と非被覆ペレット24個を1”径×2.2”長の反応管に配置した。水蒸気−メタン改質を1大気圧で水蒸気:炭素比3.25で実施した。
図2は、Rh−硝酸塩溶液を用いて一般的な初期湿式含浸法で調製した0.2%Rh/CaAl
2O
4触媒と上記のパンコート触媒(2Rh/CZA)を比較している。初期湿式触媒ではRhが支持体の表面全体に500マイクロメートルまでの深さで分散しているが、パンコーターで調製された被覆触媒はRh含有外層を有する。Rhローディング0.15%のパンコート触媒は、メタン転換において、Rh含有量が比較含浸触媒よりも有意に低かったにもかかわらず、調査した温度範囲全域で比較含浸触媒よりも優れていた。