(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のヒータについて実施の形態の例について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1(a)は本発明のヒータの実施の形態の一例を示す縦断面図であり、
図1(b)は
図1(a)に示すX−X線における横断面図である。また、
図2は本発明のヒータの実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【0015】
本実施の形態のヒータ1は、絶縁基体9と、絶縁基体9に埋設された抵抗体3と、絶縁基体9に埋設され、先端側で抵抗体3に接続されたリード8を備えたヒータであって、抵抗体3とリード8とがリード8の軸方向に垂直な方向に重なる接続部2を有し、接続部2
を軸方向に垂直な断面で見たときに、抵抗体3とリード8との境界が曲線状である。
【0016】
本実施の形態のヒータ1における絶縁基体9は、例えば棒状に形成されたものである。この絶縁基体9は抵抗体3およびリード8を被覆しており、言い換えると、抵抗体3およびリード8が絶縁基体9に埋設されている。ここで、絶縁基体9はセラミックスからなることが好ましく、これにより、金属よりも高温まで耐えることができるようになるので、急速昇温時の信頼性がより向上したヒータ1を提供することが可能になる。具体的には、酸化物セラミックス,窒化物セラミックス,炭化物セラミックス等の電気的な絶縁性を有するセラミックスが挙げられる。特に、絶縁基体9は、窒化珪素質セラミックスからなることが好適である。窒化珪素質セラミックスは、主成分である窒化珪素が高強度、高靱性、高絶縁性および耐熱性の観点で優れているからである。この窒化珪素質セラミックスは、例えば、主成分の窒化珪素に対して、焼結助剤として3〜12質量%のY
2O
3,Yb
2O
3,Er
2O
3等の希土類元素酸化物、0.5〜3質量%のAl
2O
3、さらに焼結体に
含まれるSiO
2量として1.5〜5質量%となるようにSiO
2を混合し、所定の形状に
成形し、その後、例えば1650〜1780℃でホットプレス焼成することにより得ることができる。
【0017】
また、絶縁基体9として窒化珪素質セラミックスから成るものを用いる場合、MoSi
2,WSi
2等を混合し分散させることが好ましい。この場合、母材である窒化珪素質セラミックスの熱膨張率を抵抗体3の熱膨張率に近づけることができ、ヒータ1の耐久性を向上させることができる。
【0018】
抵抗体3は、特に発熱する領域である発熱部4を有しており、抵抗体3が
図1(a)に示すような直線形状である場合は、一部断面積を小さくした領域やらせん形状の領域を設けることで、この領域を発熱部4とすることができる。なお、
図1に示す実施形態は、抵抗体3が直線形状であり、抵抗体3の一端がリード8と電気的に接続されるとともに、抵抗体3の他端が絶縁基体9の表面を覆うように設けられた表面導体11と電気的に接続されている。
【0019】
また、抵抗体3が
図2に示すような折返し形状をなしている場合、抵抗体3のリード8間の領域が発熱部4となるが、折返しの中間点付近が最も発熱する発熱部4となる。
【0020】
この抵抗体3としては、W,Mo,Tiなどの炭化物、窒化物、珪化物などを主成分とするものを使用することができる。絶縁基体9が上述の材料の場合、絶縁基体9との熱膨張率の差が小さい点、高い耐熱性を有する点および比抵抗が小さい点で、上記の材料のなかでも炭化タングステン(WC)が抵抗体3の材料として優れている。さらに、絶縁基体9が窒化珪素質セラミックスからなる場合、抵抗体3は、無機導電体のWCを主成分とし、これに添加される窒化珪素の含有率が20質量%以上であるものが好ましい。例えば、窒化珪素質セラミックスから成る絶縁基体9中において、抵抗体3となる導体成分は窒化珪素と比較して熱膨張率が大きいため、通常は引張応力がかかった状態にある。これに対して、抵抗体3中に窒化珪素を添加することにより、抵抗体3の熱膨張率を絶縁基体9の熱膨張率に近づけて、ヒータ1の昇温時および降温時の熱膨張率の差による応力を緩和することができる。
【0021】
また、抵抗体3に含まれる窒化珪素の含有量が40質量%以下であるときには、抵抗体3の抵抗値を比較的小さくして安定させることができる。従って、抵抗体3に含まれる窒化珪素の含有量は20質量%〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは、窒化珪素の含有量は25質量%〜35質量%がよい。また、抵抗体3への同様の添加物として、窒化珪素の代わりに窒化硼素を4質量%〜12質量%添加することもできる。
【0022】
また、抵抗体3の厚み(
図1(b)および
図3(b)に示す上下方向の厚み)は、0.5
mm〜1.5mmがよく、抵抗体3の幅(
図3(b)に示す水平方向の幅)は、0.3mm〜1.3mmがよい。この範囲内とすることにより、抵抗体3の抵抗が小さくなって効率良く発熱するものとなり、また、絶縁基体9が例えば半割りの成型体を積層して形成してなる積層構造の場合において、積層構造の絶縁基体9の積層界面の密着性を保持することができる。
【0023】
抵抗体3の端部に先端側が接続されたリード8は、W,Mo,Tiなどの炭化物、窒化物、珪化物などを主成分とする抵抗体3と同様の材料を使用することができる。特に、WCが、絶縁基体9との熱膨張率の差が小さい点、高い耐熱性を有する点および比抵抗が小さい点で、リード8の材料として好適である。また、絶縁基体9が窒化珪素質セラミックスからなる場合、リード8は、無機導電体であるWCを主成分とし、これに窒化珪素を含有量が15質量%以上となるように添加することが好ましい。窒化珪素の含有量が増すにつれてリード8の熱膨張率を絶縁基体9の熱膨張率に近づけることができる。また、窒化珪素の含有量が40質量%以下であるときには、リード8の抵抗値が小さくなるとともに安定する。従って、窒化珪素の含有量は15質量%〜40質量%が好ましい。より好ましくは、窒化珪素の含有量は20質量%〜35質量%とするのがよい。なお、リード8は、絶縁基体9の形成材料の含有量を抵抗体3よりも少なくすることによって抵抗体3よりも単位長さ当たりの抵抗値が低くなっていてもよく、抵抗体3よりも断面積を大きくすることによって抵抗体3よりも単位長さ当たりの抵抗値が低くなっていてもよい。
【0024】
そして、抵抗体3とリード8とがリード8の軸方向に垂直な方向に重なるように接続部2が設けられている。なお、ここでいう接続部2とは、リード8の軸方向に平行な断面で視たとき、抵抗体3とリード8との界面が存在する領域のことをいう。例えば、
図1および
図2に示すように、抵抗体3の端面とリード8の端面との接合面積を大きくするために、リード8の軸方向に平行な縦断面で見て、抵抗体3の端面とリード8の端面との境界線がリード8の軸方向に対して傾斜しているように接続部2が設けられる。なお、軸方向に対する境界線の傾斜角としては、例えば10〜80度である。
【0025】
さらに、接続部2を軸方向に垂直な断面で見たときに、抵抗体3とリード8との境界が曲線状になっている。換言すれば、抵抗体3とリード8との境界面が曲面になっている。
【0026】
このような構成とすることにより、リード8の表面に沿って伝播してきた高周波成分は、リード8と抵抗体3との接続部2でインピーダンスの整合が取れない一部が反射し散乱して、ジュール熱として散逸して、接続部2が局所的に発熱する。このとき、抵抗体3とリード8との境界が曲線状に接続されていると、リード8の熱膨張率と抵抗体3の熱膨張率とが異なることに起因した境界面内における応力の向きをそろわないようにすることができる。したがって、パルス駆動、DC駆動にかかわらず、電力突入の立ち上がりが急峻になっても、リード8と抵抗体3との接続部2にマイクロクラックが発生するのを抑制するとともに、リード8と抵抗体3との境界面に発生した亀裂が一気に進展するのを抑制し、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0027】
すなわち、ECUからの制御信号がパルス化した駆動方法であっても、リード8と抵抗体3との接続部2にマイクロクラックが発生するのを抑制し、リード8と抵抗体3との境界面で亀裂が一気に進展せず、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0028】
また、パルス駆動を採用せずに、DC駆動を採用した場合でも、同様の効果が得られる。すなわち、急速昇温を目的として、エンジン動作開始時に抵抗体に大電流を流すと、パルスの矩形波のように、電力突入の立ち上がりが急峻になり、高周波成分を含んだ高電力がヒータに突入してくるが、高周波成分を含んだ高電力がヒータに突入してきても、リード8と抵抗体3との接続部2にマイクロクラックが発生するのを抑制し、リード8と抵抗体3との境界面で亀裂が一気に進展せず、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0029】
また、
図3に示したヒータ1は、抵抗体3が折返し形状をなしていて、抵抗体3とリード8との接続部2を強固に嵌合できるように、境界面にステップ状の段差を設けて軸方向に対して傾斜するようにしたものである。なお、このステップ状の段差は、軸方向に平行な縦断面で見たときにあらわれるものである。
【0030】
このように、ステップ状に段差を設けながらも接続部2を軸方向に垂直な断面で見たときに、抵抗体3とリード8との境界が曲線状に接合されている構成によれば、ステップの段差ごとに90°の遮蔽板を設けた構造になるので、クラックはさらに抑止することができる。
【0031】
さらに、
図4に示したヒータ1は、抵抗体3が折返し形状をなしていて、軸方向に垂直な断面で見た抵抗体3とリード8との境界が、対をなしてリード8側に凸の曲線状であるものである。このような構成とすることで、高周波成分が反射したとき、抵抗体3との境界のリード側にジュール熱が発生しやすくなることを利用して、熱をヒータ1の中心側が熱くなるように熱を分布させることで、絶縁基体9から圧縮応力が加わるようにして、亀裂の形成を抑止でき、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0032】
特に、急速昇温を目的として、エンジン動作開始時に抵抗体3に直流の大電流を流した場合、パルスの矩形波のように電力突入の立ち上がりが急峻になり、高周波成分を含んだ高電力がヒータに突入してくるが、接続部2の後端側をこのような構造(リード8側に凸の曲線状)とすることで、高周波成分を含んだ高電力がヒータに突入してきても、リード8と抵抗体3との接続部2にマイクロクラックが発生するのを抑制し、リード8と抵抗体3との境界面で亀裂が一気に進展せず、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0033】
さらに、ヒータ1の陰極側を接地して、急速昇温を目的としてエンジン動作開始時に抵抗体3に直流の大電流を流した場合、陽極側と陰極側とに急激に電位差が生じ、接地された陰極側から電子が瞬間的に急激に流入するため、陽極側よりも先に温度が上昇する。このことから、陽極側の接続部2だけでなく、陰極側の接続部2もこのような構造(リード8側に凸の曲線状)にすることで、熱をヒータの中心に伝播させて中心側が熱くなるように熱を分布させることで絶縁体から圧縮応力が加わるようにして、リード8と抵抗体3との境界面に沿って亀裂が発生せず、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0034】
なお、ECUからの制御信号がパルス化した駆動方法であっても、同様の効果が得られる。
【0035】
一方、
図5のように、接続部2の少なくとも先端側における軸方向に垂直な断面で見た抵抗体3とリード8との境界が抵抗体3側に凸の曲線状であってもよい。この構成によれば、リード8の表面に沿って伝播してきた高周波成分がリード8と抵抗体3の接続部でインピーダンスの不一致によって反射して局所的に発熱しても、熱膨張差に起因した応力の方向が境界面内で曲げられて、マイクロクラックの発生を抑制するとともに、境界面で発生した亀裂が一気に進展することは無くなるとの効果に加えて、以下の効果も有する。
【0036】
通電開始後しばらく経過して、ヒータ1先端側の発熱領域から接続部2よりも高温となる発熱が開始し、抵抗体3がリード8より先に高温になる。ここで、接続部2の少なくとも先端側における軸方向に垂直な断面で見た抵抗体3とリード8との境界が、抵抗体3側に凸の曲線状であることで、抵抗体3の熱がリード8側へ伝播するとき、抵抗体3がリー
ド8を包み込むような熱の伝わり方をするので、界面部分に引張りではなく圧縮する応力を加えることになり、界面の亀裂を抑止することができる。
【0037】
特に、接続部2の後端側(リード8側)においては軸方向に垂直な断面で見た抵抗体3とリード8との境界がリード8側に凸の曲線状となり、接続部2の先端側(抵抗体3側)においては抵抗体3とリード8との境界が抵抗体3側に凸の曲線状となることで、以下の効果を有する。
【0038】
急速昇温を目的としてエンジン動作開始時に抵抗体3に直流の大電流を流した場合の初期段階では、パルスの矩形波のように電力突入の立ち上がりが急峻になり、高周波成分を含んだ高電力がヒータ1に突入してくるが、高周波成分を含んだ高電力がヒータ1に突入してきても、リード8と抵抗体3との接続部2にマイクロクラックが発生するのを抑制し、リード8と抵抗体3との境界面で亀裂が一気に進展しない。また、通電開始後しばらく経過して、ヒータ1先端側の発熱領域から接続部2よりも高温となる発熱が開始すると、抵抗体3がリード8より先に高温になるので、応力を緩和することができる。
【0039】
このように、接続部2にマイクロクラックの発生を抑止できるから、境界面に沿って亀裂が進展せず、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0040】
また、
図6のように、接続部2における軸方向に垂直な断面で見た抵抗体3とリード8との境界が、抵抗体3の一部をリード8が取り囲むような曲線状であることで、電流の反射を分散させジュール熱の発生を分散させるとともに、応力の方向を曲げる効果が大きく抵抗体3が膨張しても応力を閉じ込めるようになるので、亀裂の進展が生じない。このように、接続部2にマイクロクラックの形成を抑止でき、リード8と抵抗体3との境界面に沿って亀裂が進展しないことから、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0041】
特に、
図7のように、接続部2における軸方向に垂直な断面で見た抵抗体3とリード8との境界が、抵抗体3の全てをリード8が取り囲むような曲線状であることで、抵抗体3が熱膨張しても応力を完全に閉じ込めることができる。さらに、リード8の表面に沿って伝播してきた高周波成分は、抵抗体3との接続部2でインピーダンスの整合が取れない一部が反射し、ジュール熱として散逸し、接続部2が局所的に加熱するが、このとき、接続部2の後端側において抵抗体3がリード8に包みこまれるようになっていると、接続部2で反射した電流が放射状に散乱して、ジュール熱の散逸効果を高めることができる。結果的に、リード8と抵抗体3との接続部2にマイクロクラックが発生しにくくなり、境界面に沿って亀裂が一気に進展することを抑止し、長期間にわたってヒータ1の抵抗値が安定する。
【0042】
また、本実施の形態のヒータ1は、
図8に示すように、当該ヒータ1と、リード8の端子部(図示せず)に電気的に接続されるとともにヒータ1を保持する金属製保持部材7とを備えたグロープラグとして使用することが好ましい。具体的には、ヒータ1は、棒状の絶縁基体9の内部に、折返し形状をなした抵抗体3が埋設されているとともに一対のリード8が抵抗体3の両端部にそれぞれ電気的に接続されて埋設されていて、一方のリード8に電気的に接続された金属製保持部材7(シース金具)と、他方のリード8に電気的に接続されたワイヤとを備えたグロープラグとして使用することが好ましい。
【0043】
なお、金属製保持部材7(シース金具)は、ヒータ1を保持する金属製の筒状体であり、セラミック基体9の側面に引き出された一方のリード8にロウ材などで接合される。また、ワイヤは、他方のセラミック基体9の後端に引き出された他方のリード8にロウ材などで接合される。これにより、高温のエンジン中でON/OFFが繰り返されながら長期使用しても、ヒータ1の抵抗が変化しないので、どんなときでも着火性に優れたグロープラグを提供できる。
【0044】
次に、本実施の形態のヒータ1の製造方法について説明する。
【0045】
本実施の形態のヒータ1は、例えば、抵抗体3、リード8および絶縁基体9の形状の金型を用いた射出成形法等によって形成することができる。
【0046】
まず、導電性セラミック粉末,樹脂バインダー等を含む、抵抗体3およびリード8となる導電性ペーストを作製するとともに、絶縁性セラミック粉末,樹脂バインダー等を含む絶縁基体9となるセラミックペーストを作製する。
【0047】
次に、導電性ペーストを用いて射出成形法等によって抵抗体3となる所定パターンの導電性ペーストの成形体(成形体a)を形成する。そして、成形体aを金型内に保持した状態で、導電性ペーストを金型内に充填してリード8となる所定パターンの導電性ペーストの成形体(成形体b)を形成する。これにより、成形体aと、この成形体aに接続された成形体bとが、金型内に保持された状態となる。
【0048】
次に、金型内に成形体aおよび成形体bを保持した状態で、金型の一部を絶縁基体9の成形用のものに取り替えた後、金型内に絶縁基体9となるセラミックペーストを充填する。これにより、成形体aおよび成形体bがセラミックペーストの成形体(成形体c)で覆われたヒータ1の成形体(成形体d)が得られる。
【0049】
次に、得られた成形体dを例えば1650℃〜1800℃の温度、30MPa〜50MPaの圧力で焼成することにより、ヒータ1を作製することができる。なお、焼成は水素ガス等の非酸化性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。
【実施例】
【0050】
本発明の実施例のヒータを以下のようにして作製した。
【0051】
まず、炭化タングステン(WC)粉末を50質量%、窒化珪素(Si
3N
4)粉末を35質量%、樹脂バインダーを15質量%含む導電性ペーストを、金型内に射出成形して抵抗体となる成形体aを作製した。
【0052】
次に、この成形体aを金型内に保持した状態で、リードとなる上記の導電性ペーストを金型内に充填することにより、成形体aと接続させてリードとなる成形体bを形成した。このとき、表1および表2に示すように、種々の形状を有する金型を用いて、6種の形状の抵抗体とリードとの接合部を形成した。
【0053】
次に、成形体aおよび成形体bを金型内に保持した状態で、窒化珪素(Si
3N
4)粉末を85質量%、焼結助剤としてのイッテリビウム(Yb)の酸化物(Yb
2O
3)を10質量%、抵抗体およびリードに熱膨張率を近づけるための炭化タングステン(WC)を5質量%含むセラミックペーストを、金型内に射出成形した。これにより、絶縁基体となる成形体c中に成形体aおよび成形体bが埋設された構成の成形体dを形成した。
【0054】
次に、得られた成形体dを円筒状の炭素製の型に入れた後、窒素ガスから成る非酸化性ガス雰囲気中で、1700℃、35MPaの圧力でホットプレスを行ない焼結してヒータを作製した。得られた焼結体の表面に露出したリード端部(端子部)に筒状の金属製保持部材(シース金具)をロウ付けしてグロープラグを作製した。
【0055】
このグロープラグの電極にパルスパターンジェネレータを接続し、印加電圧7V、パル
ス幅10μs、パルス間隔1μsの矩形パルスを連続通電した。1000時間経過後、通電前後の抵抗値の変化率((通電後の抵抗値−通電前の抵抗値)/通電前の抵抗値)を測定した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、試料番号1は、最も発熱した箇所がリードと抵抗体との接続部であった。そして、通電状態を確認するために、オシロスコープを用いて試料番号1のヒータに流れるパルス波形を確認したところ、入力波形と異なり、パルスの立ち上がりが急峻にならず、7Vに到達するまで1μs要し、オーバーシュートしながら波打っていた。
【0058】
これは、試料番号1のヒータでは、パルスの立ち上がり部分に含まれる高周波成分が、リードと抵抗体との境界面でインピーダンスの整合が取れないことから反射したものと考えられる。また、ヒータの最も発熱した箇所が、リードと抵抗体との接続部となっていることについても、高周波成分の反射に起因して、リードと抵抗体との接続部での局所的な発熱が生じたものと考えられる。
【0059】
さらに、試料番号1の通電前後の抵抗変化は55%と非常に大きくなったため、パルス通電後、走査型電子顕微鏡で試料番号1のリードと抵抗体との接続部を観察したところ、境界面に外周方向から内側に向けて、マイクロクラックが生じていることを確認した。
【0060】
一方、試料番号2〜4については、最も発熱した箇所はヒータ先端の抵抗体発熱部であった。そして、通電状態を確認するために、オシロスコープを用いてヒータに流れるパルス波形を確認したところ、入力波形とほぼ同じ波形であった。
【0061】
これは、リードと抵抗体との接続部で異常加熱せずに通電できたことを示している。
【0062】
また、試料番号2〜4の通電前後の抵抗変化は5%以下と小さく、パルス通電後、走査型電子顕微鏡でこれらの試料番号のリードと抵抗体との接続部を観察したところ、マイクロクラックは無かった。