特許第6247400号(P6247400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247400身体再建及び身体成形における使用のための制御放出脂肪酸組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247400
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】身体再建及び身体成形における使用のための制御放出脂肪酸組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/18 20060101AFI20171204BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61L27/18
   A61L27/54
   A61K31/20
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-544546(P2016-544546)
(86)(22)【出願日】2014年12月30日
(65)【公表番号】特表2017-502972(P2017-502972A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】EP2014079448
(87)【国際公開番号】WO2015101625
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】13199866.8
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516195421
【氏名又は名称】ペベエベ・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・ユーリ・アホ
(72)【発明者】
【氏名】ラグナータン・サンディープ
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−543874(JP,A)
【文献】 特表平04−503163(JP,A)
【文献】 特表平11−507278(JP,A)
【文献】 特表平08−507713(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0291066(US,A1)
【文献】 特表2006−508127(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0073178(US,A1)
【文献】 特表2010−528039(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/125632(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/097281(WO,A2)
【文献】 特表2001−509480(JP,A)
【文献】 ROSE L I,PATHOPHYSIOLOGY OF SPIRONOLACTONE-INDUCED GYNECOMASTIA,ANNALS OF INTERNAL MEDICINE,米国,AMERICAN COLLEGE OF PHYSICIANS,1977年10月 1日,VOL:87, NR:4,,P1-2(PAGE(S):398 - 403),URL,http://dx.doi.org/10.7326/0003-4819-87-4-398
【文献】 Experimental Cell Research,2008年,Vol.314,p.3581-3592
【文献】 Plastic And Reconstructive Surgery,2000年 4月,Vol.105, No.5,p.1712-1720
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
A61L 15/00−33/18
A61F 2/00− 4/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容処置のための、
(i)生理的に許容される代謝性脂質と、
(ii)生理的に許容される制御放出(CR)化合物と
を含む組成物であって、
前記脂質が、無細胞であり、前記CR化合物が、生理的条件下で遅延期間にわたって前記代謝性脂質を放出し、
前記美容処置が、
(i)美容的脂肪組織拡大、
(ii)美容的脂肪組織増大、及び
(iii)美容的顔面増大
からなる群から選択され、
前記代謝性脂質が、脂肪酸を含む
組成物。
【請求項2】
前記CR化合物が、7日から12カ月の遅延期間にわたって前記代謝性脂質を放出する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、少なくとも1種の脂肪細胞成長エフェクターを更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも1種の腺成長エフェクターを更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記生理的に許容されるCR化合物が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポロキサマー、ポリエチレングリコール(PEG)-PLGA共重合体、PEGとPLGAの組合せ、PLAとPEGの組合せ、PLA-PEG-PLA、PLGAとポロキサマーの組合せ、PLGAとデキストランの組合せ、PLGAとアルギネートの組合せ、及びPLGAとポリメタクリレートの組合せからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、
(A)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(B)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(C)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、EGF-1、スピロノラクトン、エストラジオール、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(D)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、エストラジオール、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物
(E)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、オレイン酸、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(F)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、オレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(G)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、オレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、EGF-1、スピロノラクトン、エストラジオール、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、並びに
(H)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、オレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、エストラジオール、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物
から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
治療処置のための医薬を製造するための、
(i)生理的に許容される代謝性脂質と、
(ii)生理的に許容される制御放出(CR)化合物と
を含む組成物の使用であって、
前記脂質が、無細胞であり、前記CR化合物が、生理的条件下で遅延期間にわたって前記代謝性脂質を放出し、前記組成物が任意選択で生理的に許容される賦形剤及び希釈剤を更に含み、
前記治療処置が、身体変形、外傷後の瘢痕及び軟部組織陥没;先天性変形、漏斗胸変形、乳房の非対称、ポーランド症候群、半側症候群、CLOVE症候群、ロンベルグ症候群;プロテーゼ近くの変形、放射線照射後の大腿欠損の輪郭再形成、HIV脂肪異栄養症、軽度の口蓋帆咽頭不全、乳房切除後の乳房再建、並びに外傷後の顔面再建及び変形、ざ瘡瘢痕、HIV誘導性脂質異栄養症、瘢痕からなる群から選択される医学的適応症の処置であり、
前記代謝性脂質が、脂肪酸を含む、
使用。
【請求項8】
前記CR化合物が、7日から12カ月の遅延期間にわたって前記代謝性脂質を放出する、請求項7に記載の組成物の使用。
【請求項9】
前記組成物が、少なくとも1種の脂肪細胞成長エフェクターを更に含む、請求項7又は8に記載の組成物の使用。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも1種の腺成長エフェクターを更に含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
前記生理的に許容されるCR化合物が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポロキサマー、ポリエチレングリコール(PEG)-PLGA共重合体、PEGとPLGAの組合せ、PLAとPEGの組合せ、PLA-PEG-PLA、PLGAとポロキサマーの組合せ、PLGAとデキストランの組合せ、PLGAとアルギネートの組合せ、及びPLGAとポリメタクリレートの組合せからなる群から選択される、請求項7から10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
前記組成物が、
(A)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(B)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(C)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、EGF-1、スピロノラクトン、エストラジオール、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(D)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、エストラジオール、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物
(E)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、オレイン酸、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(F)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、オレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、
(G)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、オレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、EGF-1、スピロノラクトン、エストラジオール、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物、並びに
(H)生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、オレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、エストラジオール、及び任意選択でビタミンE又はCを含む組成物
から選択される、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理的に許容される代謝性脂質と、生理的に許容される、好ましくは生分解性の制御放出(CR)化合物とを含む組成物であって、脂質が、無細胞であり、CR化合物が、生理的条件下で遅延期間(delayed time period)にわたって代謝性脂質を放出する、組成物を対象とする。加えて、本発明は、化粧用又は治療用組成物を作製するための、好ましくは脂肪組織拡大又は脂肪組織修復のための、そのような組成物の使用に関連する。また、本発明は、哺乳動物の治療処置又は美容処置(cosmetic treatment)のための方法であって、本発明の組成物を投与する、好ましくは目的の組織領域が処置されるまで注射針を引き抜きながら組成物を注射する工程を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪組織は、エネルギーを貯蔵し、保温を行い、例えば哺乳動物の顔、乳房、臀部、又は他の任意の形態を画定する身体部分において、外部の構造特徴を画定する。美容的欲求の次に、脂肪組織工学及び再建、例えば、乳房切除後の乳房再建、HIV誘導性脂質異栄養症、及び外傷後の顔面再建のための治療用途もまた存在する。
【0003】
脂肪組織欠損の処置及び美容的組織増大のための従来の方法は、標的とする身体部分を置き換える又はボリュームを加える充填材を用いている。充填材は、自家フィラー及び非自家フィラーに分類される。
【0004】
自家脂肪移植、即ち、身体の一部分からの外科的脂肪細胞単離及び別の部分への再注入は、19世紀後半から実施されている。顔への自家脂肪細胞移植は、その永久性という利点を有し、自家脂肪ベースの注射は、若返らせた顔のより柔和で生き生きとした表情を生じさせる。他方で、主な欠点は、注射後の脂肪細胞の生存率が変動することに主として起因して、結果が予測不可能であることである。例えば、脂肪組織領域(例えば、顔又は乳房)に注射された脂肪細胞の場合、30〜70%が死滅し、その理由は主に、血管形成前状態で栄養素及び酸素が存在しないからである。別の課題は、単離中の脂肪細胞の生存である。この問題は、吸引針の使用及び単離された脂肪細胞の特殊な処理などのいくつかの技法によって改善されている。この技法の更なる欠点は、外科的介入及び多くの個体にとって利用可能ではない十分な量の自家脂肪細胞物質を必要とすることである。
【0005】
脂肪組織工学におけるより最近の方策は、新たな脂肪細胞の増殖を引き起こす脂肪由来幹細胞(ADSC)の注射である。しかしながら、このプロセスは、脂肪吸引、特殊な超遠心分離による脂肪細胞からのADSCの単離、及び任意選択で分化因子による単離されたADSCの処理、並びに分化細胞の所望の標的組織への再注入を含む、長期にわたる複雑で高額な手順を伴う。
【0006】
脂肪細胞の細胞生存の問題に起因して、様々な非細胞性フィラー材が想定された。コラーゲンは、2003年にヒアルロン酸が出現するまで、市場において最も広く使用されているフィラーであった。コラーゲンは、そのウシ供給源に起因して軽度の免疫原性反応を誘導し、この技術は、牛海綿状脳症(BSE)のリスクが認識されるようになったことにより終了となった。ヒアルロン酸(HA)は、かなり後の2003年にFDAに承認されたが、処方外の脂肪組織フィラーとして長年使用されている。これは、市場で最も優位なフィラーとなっている。最近の市販のHAは、半減期の延長のためにジビニルスルホン系化合物で高度に架橋されており、免疫の低減のために動物源ではなく組換えである。HAの主要な欠点は、注射後のその限られた寿命である。ほとんどのHAベースのフィラーは、3から12カ月間しか持続しない。シリコンベースのインプラントと同様に、豊胸のためのHAの使用は、マンモグラフィーに基づくがん検出の妨げとなりうる。HAに関連した他の潜在的問題は、肉芽腫発生、結節形成及び乳房痛、インプラントの触知可能性、被膜の収縮、表在性感染、並びに膿瘍発生の頻度及びリスクが高まることである。
【0007】
エストロゲンの局所及び全身投与もまた、脂肪組織生成のエストラジオール受容体誘導によって女性の乳房サイズを増加させることが知られている。スピロノラクトンは、その抗アンドロゲン特性に起因して、乳房発達及び女性化を誘導することが知られている。
【0008】
新規脂肪組織生成のための別の手法は、PLGA/PEGマイクロスフェアによるインスリン及びインスリン様成長因子-1(IGF-1)及び塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の長期局所送達であり、これは、インビボラットモデルにおいて試験されており(Yuksel等、Plastic & Reconstructive surgery、第105巻(5)、2000年4月、1712〜1720頁)、そこでは、インスリン及びIGF-1を含有するマイクロスフェアをラットの腹壁の深筋膜に直接投与して、非脂肪細胞の細胞プールからの脂肪生成分化による新規脂肪組織生成のためのその潜在性を評価した。マイクロスフェアは、投与部位における脂肪組織の新規生成を誘導するタンパク質の長期局所送達をもたらす制御放出(CR)化合物として機能する。
【0009】
要約すると、脂肪組織欠損の処置及び美容的脂肪組織増大のための先行技術の技法は、脂肪細胞又は脂肪由来幹細胞(ADSC)の自家移植、非細胞性の非永久的フィラーの局所投与、或いは脂肪細胞分化及び成長因子の局所投与のいずれかを必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yuksel等、Plastic & Reconstructive surgery、第105巻(5)、2000年4月、1712〜1720頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、作製及び投与が技術的に容易であり、最小限の外科的介入を必要とし、且つ安全でコスト効率の高い、脂肪組織欠損の処置及び美容的脂肪組織増大のための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明の根底にある課題は、(i)生理的に許容される代謝性脂質と、(ii)生理的に許容される、好ましくは生分解性の制御放出(CR)化合物とを含む組成物であって、代謝性脂質が、無細胞であり、CR化合物が、生理的条件下で遅延期間にわたって代謝性脂質を放出する、組成物を提供することによって解決される。
【0013】
本明細書で使用される制御放出(CR)という用語は、活性化合物の利用可能性を制御するための活性化合物の配合技術、例えば、徐放、例えば持続(長期)放出、パルス放出、遅延放出等及びそれらの組合せなどを指す。典型的なCR用途は、肥料、化粧品、及び医薬品である。本発明における使用のためのCR化合物は、生理的環境、好ましくは顔、乳房、臀部等などのヒトの身体組織部分に投与した場合、CR化合物が存在しない場合と比較して前記脂質及び活性化合物の放出を遅延させる、前記脂質及び任意選択で他の生理的に活性な化合物とともに配合された化合物である。
【0014】
本発明における使用のためのCR化合物及び代謝性脂質は、生理的に許容される、即ち、処置される組織に対して実質的に非毒性であるべきである。本発明のCR化合物は、実質的に生分解性である、即ち、時間とともに投与部位から除去される、好ましくは代謝されることが更に好ましい。
【0015】
CR化合物は、生理的条件下で遅延期間にわたって代謝性脂質及び任意選択で他の活性化合物を放出する。本発明に関連して本明細書に記述される生理的条件とは、投与組織部位におけるインビボ条件、例えば脂肪組織条件である。
【0016】
CR化合物の代謝性脂質及び任意選択で他の活性化合物についての放出プロファイルは、限定されず、組成物の配合、並びに標的組織、及び投与の方式及び頻度に左右される。一般的に、初期バースト放出とそれに続く定常放出により、所望の代謝性脂質及び任意選択の活性化合物の生理的に有効なレベルを維持しながら、脂肪細胞の成長及び/又は増殖が開始される。
【0017】
好ましい実施形態では、CR化合物は、7日から12カ月、好ましくは30から90日、より好ましくは50から70日の遅延期間にわたって、最も好ましくは約60日にわたって代謝性脂質及び任意選択で他の活性化合物を放出する。
【0018】
本発明の組成物における使用のための代謝性脂質は、無細胞である、つまり、生細胞又は死細胞の一部を形成せず、細胞成分、例えば膜、核、核酸等を本質的に含まない。無細胞の代謝性脂質は、低免疫原性であり、薬理学的に安全であり、細胞、例えば標的組織中の細胞によって吸収されやすいという利点を有する。
【0019】
親油性とは、脂肪、油、脂質、及び非極性溶媒、例えばヘキサン又はトルエンに溶解する化合物の能力を指す。本明細書で使用される代謝性脂質という用語は、親油性であり、且つ細胞によって、好ましくは脂肪組織中の細胞によって、より好ましくは脂肪細胞によって細胞エネルギー、例えばATPを生成するために摂取、貯蔵、及び代謝されうる、任意の化合物として定義される。
【0020】
本発明の組成物は、脂肪組織欠損の処置及び美容的脂肪組織増大のために、例えば組織への注射、好ましくは複数の均等に分布した注射によって、局所投与することができる。
【0021】
放出された代謝性脂質は、処置される組織に対していくつかの有利な効果を有する。単離された細胞、例えば、脂肪細胞及びADSCとは反対に、代謝性脂質は、低免疫原性であり、ウシ由来コラーゲン(BSE)などの有害な構成要素を含まず、標的細胞によって直接且つ急速に摂取されうる。標的組織中の脂肪細胞及び他の細胞に対する本発明の組成物の直接的且つ有利な効果は、これらの細胞が連続的に「過剰栄養補給(superfed)」されて、体積の増加をもたらすことである。
【0022】
標的組織の成長を更に助けるため、本発明の組成物は、更なる活性化合物、好ましくは脂肪細胞のサイズ及び数を増加させる、即ち、脂肪細胞成長及び脂肪生成、即ち、前脂肪細胞から脂肪細胞への細胞分化及び脂肪細胞の体積成長を刺激する脂肪細胞成長エフェクター化合物を含むことができる。
【0023】
より好ましい実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1種の脂肪細胞成長エフェクター、好ましくは
a.インスリン、インスリン成長因子結合タンパク質1から7(IGFBP1〜7)、インスリン成長因子1(IGF-1)、及びインスリン成長因子2(IGF-2)、好ましくはインスリン、インスリン成長因子1(IGF-1)、及びインスリン成長因子2(IGF-2)、より好ましくはインスリン及びインスリン成長因子1(IGF-1)、最も好ましくはヒトインスリン、
b.線維芽細胞成長因子(FGF)、好ましくはFGF-1、FGF-2、FGF-10、及びFGF-21、より好ましくはFGF-1及びFGF-2、最も好ましくはFGF-1、
c.グルココルチコイド、好ましくはコルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、及びベタメタゾン、好ましくはデキサメタゾン及びベタメタゾンからなる群から選択されるもの、
d.環状アデノシン一リン酸(cAMP)活性化因子、好ましくはアミノフィリン、ペントキシフィリン、テオフィリン、イソブチル-メチルキサンチン(IBMX)、フォルスコリン、及びデヒドロアビエチン酸(DAA)、好ましくはアミノフィリン、ペントキシフィリン、及びテオフィリンからなる群から選択されるもの、
e.ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ-2(PPARγ2)アゴニスト、好ましくはチアゾリジンジオンクラスの化合物、より好ましくはピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、及びインドメタシン、好ましくはトログリタゾン及びロシグリタゾンからなる群から選択されるもの、
f.骨形成タンパク質(BMP)、好ましくはBMP-2、BMP-4、BMP-7、及びBMP-9、好ましくはBMP-2及びBMP-4
からなる群から選択される脂肪細胞成長エフェクターを含む。
【0024】
一部の標的組織は、腺組織を含むか、又は腺組織に隣接して、特に女性の乳房に位置する。標的組織に隣接した又はそれを取り囲む腺組織は、脂肪組織とともに成長して、全体としての結果がより均等で自然で審美的に美しいことが好ましい。
【0025】
より好ましい実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1種の腺成長エフェクター、好ましくは乳腺成長エフェクター、より好ましくは
a.エストラジオール及びエストラジオール誘導体、好ましくは安息香酸エストラジオール、エストラジオール半水和物、酢酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、吉草酸エストラジオール、エチニルエストラジオール、及び17β-エストラジオール、より好ましくはエストラジオール及びシピオン酸エストラジオール、最も好ましくは17β-エストラジオールからなる群から選択されるもの、
b.上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)-A、血管内皮成長因子(VEGF)-C、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、エピレグリン(EPR)、エピジェン、ベータセルリン(BTC)、全てのニューレグリン-1(NRG1)アイソフォーム、ヘレグリン(HRG)、アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA)成長因子、グリア成長因子(GGF)、ニューレグリン-2(NRG2)、ニューレグリン-3(NRG3)、ニューレグリン-4(NRG4)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、及びアンフィレグリン(AR)、好ましくは上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、ニューレグリン-4(NRG4)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、及びアンフィレグリン(AR)、より好ましくはヒト上皮成長因子(EGF)、
c.抗アンドロゲン、好ましくはビカルタミド、ニルタミド、スピロノラクトン、及びフルタミド、より好ましくはスピロノラクトン及びフルタミドからなる群から選択されるもの
からなる群から選択される腺成長因子を更に含む、乳房標的組織の成長のために特別に配合された組成物である。
【0026】
更なる好ましい実施形態では、本発明における使用のための代謝性脂質は、脂肪酸、好ましくはブタン酸及びより長鎖の脂肪酸からなる群から選択される脂肪酸、より好ましくはペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、ヘントリアコンタン酸(henatriacontanoic acid)、ドトリアコンタン酸、トリトリアコンタン酸、テトラトリアコンタン酸、ペンタトリアコンタン酸、ヘキサトリアコンタン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、好ましくはα-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸(docosahexanoic acid)、ステアリドン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、及びドコサヘキサエン酸からなる群から選択される脂肪酸、より好ましくはオクタデカン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、及びオレイン酸、最も好ましくはヘキサデカン酸、オクタデカン酸、及びオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸を含む。
【0027】
更なる好ましい実施形態では、本発明における使用のための生理的に許容される、好ましくは生分解性のCR化合物は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポロキサマー、ポリエチレングリコール(PEG)-PLGA共重合体、PEGとPLGAの組合せ、PLAとPEGの組合せ、好ましくはPLA-PEG-PLA、PLGAとポロキサマーの組合せ、デキストラン、アルギネート、及びポリメタクリレート、好ましくはPLA、PLGA、及びPEG-PLGA組合せ、より好ましくはPLGA及びPLA、最も好ましくはPLGAからなる群から選択される。
【0028】
以下では、本発明の組成物の最も好ましいが非限定的な実施形態を記載する。
【0029】
最も好ましい実施形態では、本発明は、好ましくは脂肪細胞成長エフェクター又は腺成長エフェクターを含まない組成物であって、生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸及び/又はオレイン酸、並びに任意選択でビタミンC及び/又はEを含む、好ましくは
(i)分子量が21,000Daであり、乳酸とグリコール酸の比が約1:1であるPLGA、
(ii)好ましくはアルブミンと会合した、ヘキサデカン酸及び/又はオレイン酸、並びに
(iii)ビタミンC及び/又はE
を含む、組成物を教示する。
【0030】
更なる最も好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1種の脂肪細胞成長エフェクターを含む組成物であって、生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸及び/又はオレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、並びに任意選択でビタミンC及び/又はEを含む、好ましくは
(i)分子量が21,000Daであり、乳酸とグリコール酸の比が約1:1であるPLGA、
(ii)好ましくはアルブミンと会合した、オレイン酸及び/又はヘキサデカン酸、
(iii)ヒト組換えインスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、並びにビタミンC及び/又はE
を含む、組成物を教示する。
【0031】
更なる最も好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1種の脂肪細胞成長エフェクター及び少なくとも1種の腺成長因子を含む、好ましくは乳房の処置のための組成物であって、生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸及び/又はオレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、EGF-1、スピロノラクトン、エストラジオール、並びに任意選択でビタミンC及び/又はEを含む、好ましくは
(i)分子量が21,000Daであり、乳酸とグリコール酸の比が約1:1であるPLGA、
(ii)好ましくはアルブミンと会合した、ヘキサデカン酸及び/又はオレイン酸、
(iii)ヒト組換えインスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、EGF-1、スピロノラクトン、エストラジオール、並びにビタミンC及び/又はE
を含む、組成物を教示する。
【0032】
更なる最も好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1種の脂肪細胞成長エフェクター及び少なくとも1種のエストロゲン性成長因子を含む、好ましくは顔の処置のための組成物であって、生分解性ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、ヘキサデカン酸及び/又はオレイン酸、インスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、エストラジオール、並びに任意選択でビタミンC及び/又はEを含む、好ましくは
(i)分子量が21,000Daであり、乳酸とグリコール酸の比が約1:1であるPLGA、
(ii)好ましくはアルブミンと会合した、オレイン酸及び/又はヘキサデカン酸、
(iii)ヒト組換えインスリン、FGF-1、ロシグリタゾン、ベタメタゾン、エストラジオール、並びにビタミンC及び/又はE
を含む、組成物を教示する。
【0033】
本発明の組成物は、治療処置又は美容処置における使用のための組成物であり、任意選択で生理的に許容される賦形剤及び希釈剤を更に含みうる。
【0034】
従って、また更なる態様では、本発明は、化粧用又は治療用組成物を作製するための、好ましくは脂肪組織拡大又は脂肪組織修復のための、本発明の組成物の使用に関する。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、脂肪組織拡大、好ましくは脂肪組織体積拡大、より好ましくは顔、臀部、及び/又は乳房の組織の脂肪組織拡大における使用のための組成物である。
【0036】
より好ましい実施形態では、本発明の組成物は、
(i)身体変形、好ましくは外傷後の瘢痕、乳房再建、及び軟部組織陥没;先天性変形、好ましくは漏斗胸変形、乳房の非対称(例えば、ポーランド症候群)、半側症候群(例えば、CLOVE症候群、ロンベルグ症候群);プロテーゼ近くの変形、放射線照射後の大腿欠損の輪郭再形成(recontouring)、HIV脂肪異栄養症、軽度の口蓋帆咽頭不全からなる群から選択される医学的適応症、並びに
(ii)美容的脂肪組織増大、好ましくは乳房、臀部、顔、生殖器、手及び脚の脂肪組織増大、及び医原性変形、好ましくはプロテーゼ周囲の不整、脂肪吸引による変形、及びインプラントによる変形からなる群から選択される非医学的適応症
からなる群から選択される状態の治療処置又は美容処置における使用のための組成物である。
【0037】
最も好ましい実施形態では、本発明の組成物は、乳房切除後の乳房再建の医学的適応症、又は乳房若しくは臀部の増大の治療処置又は美容処置における使用のための組成物である。
【0038】
更なる最も好ましい実施形態では、本発明の組成物は、(I)外傷後の顔面再建及び変形、好ましくはざ瘡瘢痕、HIV誘導性脂肪異栄養症、瘢痕からなる群から選択される医学的適応症、並びに(II)美容的顔面増大(cosmetic facial augmentation)、好ましくは頬、眉毛、額、眉間、唇、マリオネットライン、鼻唇溝、鼻、眼周囲のしわへの組織増大及び眼瞼陥凹変形からなる群から選択される非医学的適応症からなる群から選択される状態の治療処置又は美容処置における使用のための組成物である。
【0039】
本発明の更なる態様は、哺乳動物、好ましくはヒトの治療処置又は美容処置、より好ましくは上記に列挙した美容的及び治療的状態のうちの1つの美容処置又は治療処置のための方法であって、
(i)本発明の組成物を用意する工程、
(ii)任意選択で、処置すべき組織に局所的に麻酔を投与する工程、
(iii)組成物を注射投与する、好ましくは注射針を引き抜きながら組成物を注射する工程、
(iv)任意選択で、組織全体が処置されるまで工程(iii)を繰り返す工程
を含む、方法を対象とする。
【0040】
以下では、本発明を具体的な実施形態によって更に例示するが、それらはいずれも、添付の特許請求の範囲の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1Aは、針を連続的に引き抜きながら本発明による液体組成物の少量のアリコートが放出されることを示す、乳房への鈍端カニューレ挿入の側方視点の略図である。図1Bは、乳輪縁の2点のうちの1点又は乳房下溝線の2点のうちの1点のいずれかから種々の方向及び面に針を挿入して、拡散した均等な分布を達成する、乳房の上方視点の略図である。
図2】CR化合物がともに配合された脂肪酸の放出を制御する、本発明によるいくつかの異なる脂肪酸-CR化合物組成物とともにインキュベートした際の、3T3-L1細胞(P9)によって取り込まれたトリグリセリドの濃度を示すグラフである。アスタリスクは、対照に対する統計的有意性を表す。詳細な手順は実施例11に従った。オレイン酸-PLGA(50:50)、オレイン酸-PLGA(65:35)、オレイン酸-PLA(PLA:分子量=50,000)、ヘプタデカン酸-PLGA(50:50)、ヘキサデカン酸-PLGA(50:50)、デカン酸-PLGA(50:50)、及びドコサン酸-PLGA(50:50)と示した組成物は、実施例4に従って作製した。対照は、実施例5に従って調製された空のマイクロスフェアからなっていた。
図3】未分化の3T3-L1細胞をPLGA-インスリン+PLGA-デキサメタゾン+PLGA-オレイン酸で処理し、細胞培養培地+空のPLGAマイクロスフェアで処理した細胞(対照)に対して比較した、3T3-L1細胞(P9)中のトリグリセリドの濃度を示すグラフである。これを2日間導入した後に、各々の群をインスリン及びオレイン酸を封入した培地で処理した。詳細な手順は実施例12に従う。マイクロスフェアと示した組成物は、実施例4、6、及び8に従って作製した。対照と示した組成物は、実施例5に従って作製した。
図4】処置の15日後の、処置していない(無処置、対照)、鼠径部脂肪体にCMC担体を注射した(対照)、実施例5による空のマイクロスフェアを注射した(空、対照)、並びに実施例4によるオレイン酸を含むマイクロスフェア及び担体を注射した(オレイン酸)、Balb-cヌードマウスの鼠径部脂肪体の体積を割り当てたグラフである。*#$は、対照と比較した統計的有意性を表す。
図5】処置の30日後の、処置していない(無処置、対照)、鼠径部脂肪体にCMC担体を注射した(対照)、実施例5による空のマイクロスフェアを注射した(空、対照)、並びに実施例4によるオレイン酸を含むマイクロスフェア及び担体を注射した(オレイン酸)、Balb-cヌードマウスの鼠径部脂肪体の体積を割り当てたグラフである。*#$は、対照と比較した統計的有意性を表す。
図6図6Aは、オレイン酸を含まないPLGAマイクロスフェアによる処置の15日後の、実施例13によるPLGAマイクロスフェアで処置した鼠径部脂肪体のCTスキャン写真を示す図である。図6Bは、オレイン酸を含むPLGAマイクロスフェアによる処置の15日後の、実施例13によるPLGAマイクロスフェアで処置した鼠径部脂肪体のCTスキャン写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0042】
本発明の組成物
下記の組成物の各構成要素について列挙した範囲は、1人の患者において1つの組織領域を処置するための組成物中の各化合物の量及び活性単位に関連し、この量及び活性単位は、患者、特定の標的組織、組織の表面積及び体積、処置すべき状態、得るべき効果等によって変動することが理解される。
【0043】
組成物A
(i)分子量が21,000Daであり、乳酸とグリコール酸の比が約1:1である生分解性PLGAマイクロスフェア100〜200g、
(ii)アルブミンと会合した、オレイン酸及び/又はヘキサデカン酸100〜500g、並びに
(iii)ビタミンC及び/又はE 2〜20mg。
【0044】
組成物Aは、一時的な脂肪組織増大に特に適しており、その理由は、脂肪細胞成長エフェクターを含まず、増大結果がある期間、例えば、数週間から数カ月を経過した後に、過剰栄養補給され体積が増大した細胞が代謝性脂質を使い果たすか又は他の細胞に供給する可能性が高いからである。ビタミンEの効果は、とりわけ配合物中の脂質ベースの成分のための保存剤及び抗酸化剤として働くことである。
【0045】
組成物B
(i)分子量が21,000Daであり、乳酸とグリコール酸の比が約1:1である生分解性PLGAマイクロスフェア100〜200g、
(ii)アルブミンと会合した、オレイン酸及び/又はヘキサデカン酸100〜500g、
(iii)ヒト組換えインスリン50〜100IU、
(iv)FGF-1 200〜400μg、
(v)ロシグリタゾン2〜10mg、
(vi)ベタメタゾン1000〜2000μg、並びに
(vii)ビタミンC及び/又はE 2〜20mg。
【0046】
組成物Bは、永久的な脂肪組織増大に特に適しており、その理由は、脂肪生成、即ち、前脂肪細胞から脂肪細胞への細胞分化及び脂肪細胞の増殖を刺激する脂肪細胞成長因子(iii)から(vi)を含むからである。
【0047】
組成物C
(i)分子量が21,000Daであり、乳酸とグリコール酸の比が約1:1である生分解性PLGAマイクロスフェア100〜200g、
(ii)アルブミンと会合した、オレイン酸及び/又はヘキサデカン酸100〜500g、
(iii)ヒト組換えインスリン50〜100IU、
(iv)FGF-1 200〜400μg、
(v)ロシグリタゾン2〜10mg、
(vi)ベタメタゾン1000〜2000μg、
(vii)EGF-1 200〜400μg、
(viii)スピロノラクトン50〜200mg、
(ix)17γ-エストラジオール2〜4mg、並びに
(x)ビタミンC及び/又はE 2〜20mg。
【0048】
組成物Cは、乳房の脂肪組織増大に特に適しており、その理由は、脂肪生成を刺激する脂肪細胞成長因子(iii)から(vi)に加えて、乳腺の成長を促進する腺成長エフェクター(vii)から(ix)を含むからである。
【0049】
組成物D
(i)分子量が21,000Daであり、乳酸とグリコール酸の比が約1:1である生分解性PLGAマイクロスフェア100〜200g、
(ii)アルブミンと会合した、オレイン酸及び/又はヘキサデカン酸100〜500g、
(iii)ヒト組換えインスリン1〜2IU、
(iv)FGF-1 4〜8μg、
(v)ロシグリタゾン40〜200mg、
(vi)ベタメタゾン20〜140μg、
(vii)17γ-エストラジオール0〜4mg(男性の場合0mg、閉経前女性の場合0〜1mg、閉経後女性の場合2〜4mg)、
(viii)ビタミンC及び/又はE 2〜20mg。
【0050】
組成物Dは、顔の脂肪組織増大に特に適しており、その理由は、脂肪生成を刺激する脂肪細胞成長因子(iii)から(vi)に加えて、皮膚常在線維芽細胞中のエストロゲン受容体と相互作用し、コラーゲン形成を刺激するエストラジオールを含むからである。
【実施例2】
【0051】
本発明の方法
以下では、本発明を実施するための2つの方法を記載する。
【0052】
方法A
(i)本発明の組成物、特に組成物AからDのうちの1種を用意する工程、
(ii)標的組織領域、特に顔、乳房、又は臀部に局所麻酔を適用する工程、
(iii)交差し重なり合った分布面のために標的領域に一定の間隔で1mmサイズの切開を施す工程、
(iv)15〜30ゲージのフォーム先端針又は鋭利なV先端カニューレを装着したシリンジで、引き抜きながら組成物の複数の均等に分布した注射を施し、それによって注射路(injection canal)に沿って垂直な堆積物を生成する工程、
(v)標的領域全体が均等にカバーされるまで工程(iv)を繰り返す工程。
【0053】
方法B
(i)本発明の組成物、特に組成物AからDのうちの1種を用意する工程、
(ii)標的組織領域、特に顔、乳房、又は臀部に、神経ブロックを含む表面又は区域麻酔を適用する工程、
(iii)組成物を含むシリンジの15〜30ゲージの鈍端針を、第1の注射点で適切な組織深さまで挿入する工程、
(iv)針を引き抜きつつ、針が皮膚から完全に外れるまで組成物をゆっくりと連続的に送達する、或いは針の方向を放射状に継続的に変更し、標的領域の全てがカバーされるまで引き抜かずに新たなラインに注射する工程、
(v)第1の注射点に垂直な第2の点で一連のスレッドに注射して、より大きな標的領域をより十分にカバーする工程、
(vi)工程(ii)から(v)を、複数の標的領域で、特に顔の標的領域で繰り返してもよい。
【実施例3】
【0054】
本発明の注射法
本発明の組成物を投与するための好ましい注射法は、外科医によって使用される自家脂肪移植法に類似しており、図1(A)及び図1(B)を参照して説明される。
【0055】
図1(A)及び図1(B)の上記の注射法の背後にある基本原理は、ともに配合されたCR化合物によってその放出が制御される、複数の均等に分布した代謝性脂質堆積物を形成して、標的領域全体にわたる代謝性脂質及び任意選択のエフェクター化合物の均一な拡散を確実にするために、本発明の組成物を標的組織全体に均等に分布させることである。好ましい生分解性マイクロスフェアは、形状及びサイズが脂肪細胞に類似している。
【0056】
好ましい注射体積は、0.1mLから500mLの間で変動してよく、その理由は、これらは注射部位、患者、及び外科医の選択に左右されるためである。注射期間中、少量を一定の間隔で放出して、3D成形を可能にし、嚢胞形成を防止する。注射標的領域を好ましくはマッサージして、均等な分布を確実にし、また嚢胞形成を防止する。
【実施例4】
【0057】
PLGA-脂肪酸マイクロスフェアの合成
1.ポリ(乳酸-co-グリコール酸)50:50(30,000〜60,000)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)65:35(40,000〜75,000)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)85:15(50,000〜75,000)を、Sigma Aldrich社から入手した。重合体200mgを秤量し、HPLCグレードのジクロロメタンに溶解した。この混合物を500RPMで撹拌した。
2.重合体が完全に溶解した後、目的の脂肪酸(デカン酸、ヘプタデカン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、ドコサン酸)100μLを、ジクロロメタン溶液にスピニングしながら添加した。
3.ポリビニルアルコール(PVA)(Mw89,000〜98,000、99%以上加水分解)の4%溶液95mLを200mLビーカーに導入し、S25N-10G分散部材を装着したIKA T25デジタルultra turrax装置を使用して均質化した。
4.均質化速度を6000RPMに設定し、溶液を均質化しながら、混合物を含むジクロロメタン溶液をPVA溶液に滴下して添加した。
5.この混合物を5分間均質化させた。
6.この均質化した溶液を、700RPMで撹拌されている0.5%PVA 300mLに添加した。
7.溶媒を4時間蒸発させることにより、マイクロスフェアの形成及びその硬化が生じた。
8.マイクロスフェアを含有するPVA溶液を8000RPMで遠心分離し、再蒸留水で3回連続して洗浄した。
9.分析のために最初の洗浄の前に上清を収集した。
10.ペレット中に存在するマイクロスフェアを再蒸留水3mLに再懸濁した。
11.これらの再懸濁したマイクロスフェアを12時間凍結乾燥にかけた。
12.顕微鏡法又は/及びコールターカウンターを使用して、10〜50ミクロンの間であるマイクロスフェアのサイズを決定した。
13.収集した上清を使用して、封入された脂肪酸の総量を得た。封入効率は、10〜90%の間であった。
14.マイクロスフェア粉末をカルボキシルメチルセルロース(Mw90,000、Sigma Aldrich社)の2%溶液に再懸濁し、激しくボルテックスした。溶液をボルテックスした後に、マウスに注射又は細胞培養物に導入した。
【実施例5】
【0058】
PLGAマイクロスフェア(空)の合成
1.ポリ(乳酸-co-グリコール酸)50:50(30,000〜60,000)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)65:35(40,000〜75,000)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)85:15(50,000〜75,000)を、Sigma Aldrich社から入手した。重合体200mgを秤量し、HPLCグレードのジクロロメタンに溶解した。この混合物を500RPMで撹拌した。
2.ポリビニルアルコール(PVA)(Mw89,000〜98,000、99%以上加水分解)の4%溶液95mLを200mLビーカーに導入し、S25N-10G分散部材を装着したIKA T25デジタルultra turrax装置を使用して均質化した。
3.均質化速度を6000RPMに設定し、溶液を均質化しながら、混合物を含むジクロロメタン溶液をPVA溶液に滴下して添加した。
4.この混合物を5分間均質化させた。
5.この均質化した溶液を、700RPMで撹拌されている0.5%PVA 300mLに添加した。
6.溶媒を4時間蒸発させることにより、マイクロスフェアの形成及びその硬化が生じた。
7.マイクロスフェアを含有するPVA溶液を8000RPMで遠心分離し、再蒸留水で3回連続して洗浄した。
8.ペレット中に存在するマイクロスフェアを再蒸留水3mLに再懸濁した。
9.これらの再懸濁したマイクロスフェアを12時間凍結乾燥にかけた。
10.顕微鏡法又は/及びコールターカウンターを使用して、10〜50ミクロンの間であるマイクロスフェアのサイズを決定した。
11.マイクロスフェア粉末をカルボキシルメチルセルロース(Mw90,000、Sigma Aldrich社)の2%溶液に再懸濁し、激しくボルテックスした。溶液をボルテックスした後に、マウスに注射した。
【実施例6】
【0059】
PLGA-デキサメタゾンマイクロスフェアの合成
1.ポリ(乳酸-co-グリコール酸)50:50(30,000〜60,000)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)65:35(40,000〜75,000)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)85:15(50,000〜75,000)を、Sigma Aldrich社から入手した。重合体200mgを秤量し、HPLCグレードのジクロロメタンに溶解した。この混合物を500RPMで撹拌した。
2.重合体が完全に溶解した後、デキサメタゾン(Sigma Aldrich社)100mgを添加し、完全に溶解した。
3.ポリビニルアルコール(PVA)(Mw89,000〜98,000、99%以上加水分解)の4%溶液95mLを200mLビーカーに導入し、S25N-10G分散部材を装着したIKA T25デジタルultra turrax装置を使用して均質化した。
4.均質化速度を6000RPMに設定し、溶液を均質化しながら、混合物を含むジクロロメタン溶液をPVA溶液に滴下して添加した。
5.この混合物を5分間均質化させた。
6.この均質化した溶液を、700RPMで撹拌されている0.5%PVA 300mLに添加した。
7.溶媒を4時間蒸発させることにより、マイクロスフェアの形成及びその硬化が生じた。
8.マイクロスフェアを含有するPVA溶液を8000RPMで遠心分離し、再蒸留水で3回連続して洗浄した。
9.ペレット中に存在するマイクロスフェアを再蒸留水3mLに再懸濁した。
10.これらの再懸濁したマイクロスフェアを12時間凍結乾燥にかけた。
11.顕微鏡法又は/及びコールターカウンターを使用して、10〜50ミクロンの間であるマイクロスフェアのサイズを決定した。
12.マイクロスフェアのサンプルを希アルカリ溶液で分解し、241nmでUV透過プレートを使用して上清を分析し、適切に構築された標準曲線と比較した。封入効率は、約2〜10%であった。
13.マイクロスフェア粉末をカルボキシルメチルセルロース(Mw90,000、Sigma Aldrich社)の2%溶液に再懸濁し、激しくボルテックスした。溶液をボルテックスした後に、マウスに注射した。
【実施例7】
【0060】
PLA-脂肪酸マイクロスフェアの合成
1.ポリ(L-ラクチド)(PLA)、平均Mn50,000を、Sigma Aldrich社から入手した。重合体200mgを秤量し、HPLCグレードのジクロロメタンに溶解した。この混合物を500RPMで撹拌した。
2.重合体が完全に溶解した後、目的の脂肪酸(デカン酸、ヘプタデカン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、ドコサン酸)100μLを、ジクロロメタン溶液にスピニングしながら添加した。
3.ポリビニルアルコール(PVA)(Mw89,000〜98,000、99%以上加水分解)の4%溶液95mLを200mLビーカーに導入し、S25N-10G分散部材を装着したIKA T25デジタルultra turrax装置を使用して均質化した。
4.均質化速度を6000RPMに設定し、溶液を均質化しながら、混合物を含むジクロロメタン溶液をPVA溶液に滴下して添加して、WOWエマルションを形成した。
5.この混合物を5分間均質化させた。
6.この均質化した溶液を、700RPMで撹拌されている0.5%PVA 300mLに添加した。
7.溶媒を4時間蒸発させることにより、マイクロスフェアの形成及びその硬化が生じた。
8.マイクロスフェアを含有するPVA溶液を8000RPMで遠心分離し、再蒸留水で3回連続して洗浄した。
9.分析のために最初の洗浄の前に上清を収集した。
10.ペレット中に存在するマイクロスフェアを再蒸留水3mLに再懸濁した。
11.これらの再懸濁したマイクロスフェアを12時間凍結乾燥にかけた。
12.顕微鏡法又は/及びコールターカウンターを使用して、10〜50ミクロンの間であるマイクロスフェアのサイズを決定した。
13.収集した上清を使用して、封入された脂肪酸の総量を得た。封入効率は、10〜90%の間であり、平均は約45%であった。
14.マイクロスフェア粉末をカルボキシルメチルセルロース(Mw90,000、Sigma Aldrich社)の2%溶液に再懸濁し、激しくボルテックスした。溶液をボルテックスした後に、マウスに注射又は細胞培養物に導入した。
【実施例8】
【0061】
インスリンを封入したPLGAマイクロスフェアの合成
1.ポリ(乳酸-co-グリコール酸)50:50(30,000〜60,000)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)65:35(40,000〜75,000)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)85:15(50,000〜75,000)を、Sigma Aldrich社から入手した。
2.重合体200mgを秤量し、HPLCグレードのジクロロメタンに溶解した。この混合物を500RPMで撹拌した。
3.組換えヒトインスリン(Sigma Aldrich社)を、pH2の0.1M希HCl溶液に溶解した。
4.重合体が完全に溶解した後、溶液をUltra turrax機(S25N-10G分散部材を装着したIKA T25デジタルultra turrax装置)に導入した。50mgに相当するインスリン溶液を滴下添加して、油中水型(WO)エマルションを得た。
5.ポリビニルアルコール(PVA)(Mw89,000〜98,000、99%以上加水分解)の4%溶液95mLを200mLビーカーに導入し、S25N-10G分散部材を装着したIKA T25デジタルultra turrax装置を使用して均質化した。
6.均質化速度を6000RPMに設定し、溶液を均質化しながら、混合物を含むジクロロメタン溶液をPVA溶液に滴下して添加した。
7.この混合物を5分間均質化させた。
8.この均質化した溶液を、700RPMで撹拌されている0.5%PVA 300mLに添加した。
9.溶媒を4時間蒸発させることにより、マイクロスフェアの形成及びその硬化が生じた。
10.マイクロスフェアを含有するPVA溶液を8000RPMで遠心分離し、再蒸留水で3回連続して洗浄した。
11.分析のために最初の洗浄の前に上清を収集した。
12.ペレット中に存在するマイクロスフェアを再蒸留水3mLに再懸濁した。
13.これらの再懸濁したマイクロスフェアを12時間凍結乾燥にかけた。
14.顕微鏡法又は/及びコールターカウンターを使用して、10〜50ミクロンの間であるマイクロスフェアのサイズを決定した。
15.マイクロスフェアの一部を希アルカリを使用して終夜分解し、上清を使用して、封入されたインスリンの量をBCAアッセイ(ビシンコニン酸アッセイ)を使用して定量した。
16.マイクロスフェア粉末をカルボキシメチルセルロース(Mw90,000、Sigma Aldrich社)の2%溶液に再懸濁し、激しくボルテックスした。溶液をボルテックスした後に、マウスに注射又は細胞培養物に導入した。
【実施例9】
【0062】
PEG-PLGA-脂肪酸マイクロスフェアの合成
1.ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル-block-ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、PEG平均Mn5,000、PLGA Mn55,000を、Sigma Aldrich社から入手した。重合体200mgを秤量し、HPLCグレードのジクロロメタンに溶解した。この混合物を500RPMで撹拌した。
2.重合体が完全に溶解した後、目的の脂肪酸(デカン酸、ヘプタデカン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、ドコサン酸)100μLを、ジクロロメタン溶液にスピニングしながら添加した。
3.ポリビニルアルコール(PVA)(Mw89,000〜98,000、99%以上加水分解)の4%溶液95mLを200mLビーカーに導入し、S25N-10G分散部材を装着したIKA T25デジタルultra turrax装置を使用して均質化した。
4.均質化速度を6000RPMに設定し、溶液を均質化しながら、混合物を含むジクロロメタン溶液をPVA溶液に滴下して添加した。
5.この混合物を5分間均質化させた。
6.この均質化した溶液を、700RPMで撹拌されている0.5%PVA 300mLに添加した。
7.溶媒を4時間蒸発させることにより、マイクロスフェアの形成及びその硬化が生じた。
8.マイクロスフェアを含有するPVA溶液を8000RPMで遠心分離し、再蒸留水で3回連続して洗浄した。
9.分析のために最初の洗浄の前に上清を収集した。
10.ペレット中に存在するマイクロスフェアを再蒸留水3mLに再懸濁した。
11.これらの再懸濁したマイクロスフェアを12時間凍結乾燥にかけた。
12.顕微鏡法又は/及びコールターカウンターを使用して、10〜50ミクロンの間であるマイクロスフェアのサイズを決定した。
13.収集した上清を使用して、封入された脂肪酸の総量を得た。封入効率は、10〜90%の間であった。
14.マイクロスフェア粉末をカルボキシルメチルセルロース(Mw90,000、Sigma-Aldrich社)の2%溶液に再懸濁し、激しくボルテックスした。溶液をボルテックスした後に、マウスに注射又は細胞培養物に導入した。
【実施例10】
【0063】
PEG-PLGA-PEG脂肪酸マイクロスフェアの合成
1.ポリ(ラクチド-co-グリコリド)-block-ポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(ラクチド-co-グリコリド)平均Mn(1100-1000-1100)を、Sigma Aldrich社から入手した。重合体200mgを秤量し、HPLCグレードのジクロロメタンに溶解した。この混合物を500RPMで撹拌した。
2.重合体が完全に溶解した後、目的の脂肪酸(デカン酸、ヘプタデカン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、ドコサン酸)100μLを、ジクロロメタン溶液にスピニングしながら添加した。
3.ポリビニルアルコール(PVA)(Mw89,000〜98,000、99%以上加水分解)の4%溶液95mLを200mLビーカーに導入し、S25N-10G分散部材を装着したIKA T25デジタルultra turrax装置を使用して均質化した。
4.均質化速度を6000RPMに設定し、溶液を均質化しながら、混合物を含むジクロロメタン溶液をPVA溶液に滴下して添加した。
5.この混合物を5分間均質化させた。
6.この均質化した溶液を、700RPMで撹拌されている0.5%PVA 300mLに添加した。
7.溶媒を4時間蒸発させることにより、マイクロスフェアの形成及びその硬化が生じた。
8.マイクロスフェアを含有するPVA溶液を8000RPMで遠心分離し、再蒸留水で3回連続して洗浄した。
9.分析のために最初の洗浄の前に上清を収集した。
10.ペレット中に存在するマイクロスフェアを再蒸留水3mLに再懸濁した。
11.これらの再懸濁したマイクロスフェアを12時間凍結乾燥にかけた。
12.顕微鏡法又は/及びコールターカウンターを使用して、10〜50ミクロンの間であるマイクロスフェアのサイズを決定した。
13.収集した上清を使用して、封入された脂肪酸の総量を得た。封入効率は、10〜90%の間である。
14.マイクロスフェア粉末をカルボキシルメチルセルロース(Mw90,000、Sigma-Aldrich社)の2%溶液に再懸濁し、激しくボルテックスした。溶液をボルテックスした後に、マウスに注射又は細胞培養物に導入した。
【実施例11】
【0064】
異なるCR化合物/脂肪酸組成物のインビトロ取り込み
3T3-L1は、脂肪組織に関する生物学的研究においてよく使用されている、(マウス)3T3細胞に由来する細胞株である。この細胞株は、脂肪細胞研究のための予測可能な細胞モデルとして一般的に認められている。3T3-L1細胞(P9)(ATCC、ドイツ)を、96ウェルプレートに1ウェル当たり細胞25000個で播種した。これらの細胞を2日間かけてコンフルエンスに到達させた。培地を、DMEM[10%血清+ストレプトマイシン(100U)+ペニシリン(0.1mg/ml)](全てGibco社、スイスから供給)から、DMEM[10%血清+インスリン+デキサメタゾン ストレプトマイシン(100U)+ペニシリン(0.1mg/ml)]に交換した。2日後に、この培地をDMEM[10%血清+インスリン ストレプトマイシン(100U)+ペニシリン(0.1mg/ml)+X]に交換し、ここで、Xは、実施例4に従って、オレイン酸、ヘプタデカン酸、ヘキサデカン酸、デカン酸、及びドコサン酸のいずれかを表す。オレイン酸-PLA組成物を実施例7に従って作製した。脂肪酸は20μMの濃度で各ウェルに添加した。対照の場合、空のマイクロスフェアを、同じ概算重合体濃度(5mg/ウェル)で添加した、実施例5。全ての場合において、マイクロスフェアのサイズ範囲を10ミクロン超に維持した。培地をそれぞれのマイクロスフェアの新鮮な補充物と3日ごとに交換した。1%Triton X-100を使用して細胞を溶解し、トリグリセリドレベルをアッセイによって測定した。一元配置ANOVAとTukeyの事後検定を使用して、統計を実施した。
【0065】
図2によって表される得られた結果は、本発明による組成物、即ち、異なるタイプの代謝性脂肪酸並びに異なるタイプのCR化合物を含み、CR化合物が脂肪酸の放出を制御する組成物が、脂肪モデル細胞中のトリグリセリドの有意な増加をもたらすことを実証し、従ってCR組成物から細胞トリグリセリドへの脂肪酸の制御された取り込み及び組み込みが証明される。トリグリセリドレベルのこの拡大は、CR化合物の組成及びタイプ、並びに生理的に適切な脂肪酸のタイプ、炭素鎖長、及び飽和度とは無関係である。
【実施例12】
【0066】
トリグリセリド濃度に対するCR制御されたインスリン及びデキサメタゾンのインビトロでの影響
3T3-L1細胞(P9)を、96ウェルプレートに1ウェル当たり細胞25000個で播種した。これらの細胞を2日間かけてコンフルエンスに到達させた。培地を、DMEM(10%血清)から、DMEM[10%血清+インスリン+デキサメタゾン+オレイン酸+ストレプトマイシン(100U)+ペニシリン(0.1mg/ml)]に交換した。インスリン、デキサメタゾン、及びオレイン酸は、実施例4、6、及び8に従って、50:50組成のPLGAマイクロスフェアに封入した。2日後に、この培地をDMEM[10%血清+インスリン+オレイン酸+ストレプトマイシン(100U)+ペニシリン(0.1mg/ml)]に交換し、オレイン酸及びインスリンはいずれも、実施例4及び8に従って、別個のマイクロスフェアに入れた。対照の場合、空のマイクロスフェアを、同じ概算重合体濃度(5mg/ウェル)で添加した。全ての場合において、マイクロスフェアのサイズ範囲を10ミクロン超に維持した。全ての場合において、培地をオレイン酸及びインスリンのいずれかを含むマイクロスフェアの新鮮な補充物と3日ごとに交換した。8日目にTriton X-100を使用して細胞を溶解し、トリグリセリドレベルをアッセイによって測定した。一元配置ANOVAとTukeyの事後検定を使用して、統計を実施した。
【0067】
この実験は、デキサメタゾン及びインスリンを別個に含有する本発明のマイクロスフェアが、オレイン酸マイクロスフェアとともに、3T3-L1細胞の分化及び後続のトリグリセリド貯蔵を誘導するのに対し、対照では分化がほとんどなく、従ってトリグリセリド貯蔵がないことを示した。この実験は、別個の微粒子中のインスリン及びデキサメタゾンとCR化合物との本発明の組合せが、未分化脂肪細胞の分化及びその後続の体積増加を誘導しうることを実証する。
【実施例13】
【0068】
インビボ動物試験
実施例4に従って調製された凍結乾燥マイクロスフェア(重合体およそ25mg/マウス及びオレイン酸22.5mg/マウス)を、重合度400及び置換度0.65〜0.9の90KDaカルボキシメチルセルロースナトリウムの2%H2O溶液、50〜200cP(以後CMCと称される)に終夜再懸濁し、使用前に激しくボルテックスした。オレイン酸の封入効率は、およそ45%であった(オレイン酸-マイクロスフェア組成物100mg当たりオレイン酸45mg)。50:50の比(30,000〜60,000)のポリ乳酸-グリコール酸重合体を使用して、直径10〜50ミクロンのマイクロスフェアを得た。2カ月齢のBalb-cヌードマウスを実験に使用し、各群は、Charles River labs社、イタリアから供給された5匹のマウスを有していた。これらのマウスを動物施設に30日間馴化させて、ストレスに起因する二次的作用を回避した。滅菌された細胞培養グレードのオレイン酸を使用した。
【0069】
注射の15及び30日後に、CTスキャンを使用して左の鼠径部脂肪体の体積を定量した。対応するマイクロスフェア組成物50mgを、脂肪体当たり100μlの総体積に相当する担体としてのCMCとともに各鼠径部脂肪体に注射した。22G針を注射に使用した。3%イソフルランを使用してマウスを麻酔した。腹側面から鼠径部脂肪体にアクセスした。脂肪体内に注射内容物が均等に分布するように、針をゆっくりと引き抜きながらマイクロスフェアを注射した。
【0070】
オレイン酸を充填したマイクロスフェアは、CTスキャンによって判定して、ヌードマウスへの注射の15日後に、鼠径部脂肪体の体積を明らかに増加させる。この動物実験は、本発明によるCR化合物/代謝性脂質組成物が、代謝性脂質の制御された持続的な取り込みを生じさせて、これらの組成物の近傍の脂肪細胞組織を有意に且つ均質に拡大することを明らかに実証する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6