(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パノラマ画像ブロックに、前記上位透光面の上方を覆い当該パノラマ画像ブロックの画角の上縁と一致した下面を有する光制御板が取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の光送受信装置。
【背景技術】
【0002】
近年開発が進んでいる車両の自律運転(無人自動運転)を実現するための技術として、自車両周辺の状況を感知するセンサー技術や、自車両と他の車両との間で情報を送受信する通信技術の開発が重要視されている。
【0003】
これらの技術の内、通信技術としては、一台あるいは複数の車両同士の通信である車車間通信(V2V:Vehicle to Vehicle)や、車両と道路状況との通信である車路間通信(V2R:Vehicle to Roadside)などのV2X(Vehicle to Any)の通信システムとして、GPS(Global Positioning System)や電波を用いた通信システムが提案されている。
【0004】
しかし、GPSは、様々な要因によって、通信状況が不安定になることが多いため、GPSによる通信のみを用いて自律運転を行うことには問題がある。
【0005】
また、電波による通信は、信号元の位置(方向)を明確に知ることが難しく送信の指向性も得難いため混信が生じやすく、また、電波法制限による出力限界や、周囲のノイズが多い、反射や干渉が生じるなどの特有の欠点を有しているため、車両同士の相対位置の確認が難しく、通信方向の特定についても高い精度が得られない。加えて、通信状況を傍受される危険性も高い。
【0006】
このため、近年では、GPSや電波を用いた通信システムに加えて、光信号による通信システム(光通信システム)を用いて通信手段を2重化させることも提案されている。
【0007】
このような光通信システムが提案されているのは、光通信システムには、以下の(1)〜(4)に示すような利点を有しているためである。
【0008】
(1)光通信に使用されるLEDランプやLEDヘッドライト、車載カメラは既に普及している技術であるため、運用する際のコストを低く押さえることができる。
【0009】
(2)光通信では、可視光を使用すれば目視でも送信源を確認できるため、信号元の位置(方向)を明確に特定することが容易である。
【0010】
(3)光通信の伝達媒体である光は指向性を有しているため、送信されている情報を受信するか否か、どの車両と通信するかということについて能動的に決定することができる。
【0011】
(4)光通信の受信装置は、光通信のためだけではなく、周囲の画像を取得するためのイメージセンサとして使用することもできるため、通信だけではなく、車間距離の検知や画像処理による事故防止などの安全運転支援にも活用することができる。
【0012】
このような利点を有する光通信システムであるが、適切にシステムを構築するためには、自律運転車を中心として全方位に一斉に光信号の送受信ができると共に、特定の車両に対して個別に送受信ができるような光送受信装置が必要である。このような光送受信装置としては、以下の特許文献1、2に示すような装置が提案されている。
【0013】
特許文献1には、光信号の送信手段および受信手段がそれぞれ回転対称をなすミラーを有しかつ各ミラーの回転対称軸を共通にした全方位光通信装置が記載されている。この装置では、筒状の透明容器の内部に受光部と発光部が垂直方向に並べて配置されており、水平方向から入射した光を垂直方向に反射させて受光部に向けて送り出す第1の双曲面ミラーと、発光部で垂直方向に向けて出射した光を水平方向に反射させて外部に向けて送り出す第2の双曲面ミラーが設けられている。
【0014】
また、特許文献2には光トランスポンダ方式による距離測定装置が記載されており、この距離測定装置は、周方向に配置された複数の発光ダイオードを有する光送信部と、変調光を受信可能な受光部とを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記した特許文献1および特許文献2に記載の光送受信装置は、自律運転車の光通信システムに適用するには未だ不十分な部分があり、自律運転車の光通信システムに適した光送受信装置の開発が求められていた。
【0017】
具体的には、特許文献1の装置では、送信元の方向を限定する点が考慮されていないため、不特定の車両に対する全方位的な送受信をすることはできるが、特定の車両との間で一対一の通信を構築することができない。そして、このような装置では、支柱や配線が存在するためそれらの影が発生する可能性があり、また、発光部と受光部とが垂直方向に並んで配置されているため、ある程度の高さを必要とし、これらのために光信号の送受信に際して死角が発生する恐れがある。
【0018】
一方、特許文献2の装置では、特定の車両との一対一の通信は可能となるものの、受光部に設けられた各々の光センサーの間の信号分離性能を光学的或いは信号処理的に高める必要があるため、装置コストが高くなる。そして、このような装置では、多数の発光素子や光センサーを必要とするため、構造が複雑で生産コストが高くなり、また、上記した特許文献1の装置と同様に、高さを低くすることができないため、光信号の送受信に際して死角が発生する恐れがある。
【0019】
そこで、本発明は、簡素な構造でありながらも、不特定の車両に対する全方位的な送受信だけでなく、複数の送信元の方向を精度高く個別に特定して特定の車両とそれぞれ一対一の通信も可能とし、光信号の送受信に際して死角を生じさせることがない自律運転車用の光通信技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に関連する第1の技術は、
車両に搭載されており、前記車両の自律運転制御に用いられる光信号を他の車両との間で送受信する光送受信装置であって、
他の車両へ向けて光信号を発信する一つまたは複数の発光素子が設けられた発光部と、
他の車両からの光信号を受信する一つまたは複数の受光素子が設けられた受光部と、
全方位型の光学部品とを備えており、
前記発光部から発信された光信号が前記全方位型の光学部品に入射する際の光軸と、前記他の車両から送信されて前記全方位型の光学部品に入射した光信号が前記全方位型の光学部品から出射する際の光軸とが同光軸になるように構成されており、
前記全方位型の光学部品を通じて、前記発光部から発信された光信号を外部の略水平方向の全方位に向けて送信すると共に、他の車両から送信された略水平方向の全方位からの光信号を前記受光部により受信することにより、不特定の車両に対する全方位的な送受信を行う一方、
前記全方位型の光学部品を通じて、一つの発光素子から送信された光信号を特定の他の車両に向けて送信すると共に、特定の他の車両から送信された光信号を一つまたは複数の受光素子において受光することにより、特定の他の車両との間で一対一通信を行うことができるように構成されていることを特徴とする光送受信装置である。
【0021】
本発明に関連する第2の技術は、
特定の場所に固定配置されて自律運転車との間で送受信する光送受信装置であって、
前記自律運転車へ向けて光信号を発信する一つまたは複数の発光素子が設けられた発光部と、
前記自律運転車からの光信号を受信する一つまたは複数の受光素子が設けられた受光部と、
全方位型の光学部品とを備えており、
前記発光部から発信された光信号が前記全方位型の光学部品に入射する際の光軸と、前記自律運転車から送信されて前記全方位型の光学部品に入射した光信号が前記全方位型の光学部品から出射する際の光軸とが同光軸になるように構成されており、
前記全方位型の光学部品を通じて、前記発光部から発信された光信号を外部の全方位に向けて送信すると共に、前記自律運転車から送信された全方位からの光信号を前記受光部により受信することにより、前記自律運転車に対する全方位的な送受信を行うことができるように構成されていることを特徴とする光送受信装置である。
【0022】
本発明に関連する第3の技術は、
前記特定の場所が、自律運転車用の駐車場であることを特徴とする
第2の技術に記載の光送受信装置である。
【0023】
本発明に関連する第4の技術は、
前記受光部が、複数の前記受光素子がマトリックス状に配列された撮像装置であることを特徴とする
第1の技術ないし
第3の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置である。
【0024】
本発明に関連する第5の技術は、
前記撮像装置が、全方位のパノラマ画像を撮像可能な撮像装置であることを特徴とする
第4の技術に記載の光送受信装置である。
【0025】
本発明に関連する第6の技術は、
前記受光部と前記全方位型の光学部品との間にハーフミラーが配置されており、
前記ハーフミラーが、前記発光部から発信された光信号を前記全方位型の光学部品に向けて反射させると共に、前記全方位型の光学部品から前記受光部へと向かう光信号を透過させるように構成されていることを特徴とする
第1の技術ないし
第5の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置である。
【0026】
本発明に関連する第7の技術は、
前記発光部として、画像を投影表示するプロジェクターが用いられ、
前記発光素子として、前記プロジェクターが投影する画像の画素が用いられていることを特徴とする
第1の技術ないし
第6の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置である。
【0027】
本発明に関連する第8の技術は、
前記受光部として、円形のカメラレンズが用いられ、
前記発光部の発光素子として、前記カメラレンズの外周の全周に亘って環状に配置された発光ダイオードが用いられていることを特徴とする
第1の技術ないし
第5の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置である。
【0028】
本発明に関連する第9の技術は、
前記全方位型の光学部品が、パノラマ画像ブロックであり、
前記パノラマ画像ブロックが、
上面中央の上位遮光面と、上面周縁部の上位透光面と、下面周縁部の下位遮光面と、下面中央部の下位透光面を具備した透明素材より成る回転体であって、
前記下位遮光面は、上位透光面からの入射光を当該回転体内を通過して上位遮光面へ集め得る反射鏡とされ、
前記上位遮光面は、下位遮光面からの反射光を当該回転体内を通過して下位透光面へ集め得る反射鏡とされていることを特徴とする
第1の技術ないし
第8の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置である。
【0029】
本発明に関連する第10の技術は、
前記パノラマ画像ブロックに、前記上位透光面の上方を覆い当該パノラマ画像ブロックの画角の上縁と一致した下面を有する光制御板が取り付けられていることを特徴とする
第9の技術に記載の光送受信装置である。
【0030】
本発明に関連する第11の技術は、
前記全方位型の光学部品が、湾曲面の中心が上方に向けて配置された魚眼レンズであることを特徴とする
第1の技術ないし
第8の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置である。
【0031】
本発明に関連する第12の技術は、
前記発光部から発信される光信号に、前記光信号の送信方向の情報が重畳されていることを特徴とする
第1の技術ないし
第11の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置である。
【0032】
本発明に関連する第13の技術は、
前記受光部に、CCD素子、MOSセンサー、CMOSセンサーのいずれかが用いられていることを特徴とする
第1の技術ないし
第12の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置である。
【0033】
本発明に関連する第14の技術は、
第1の技術および
第4の技術ないし
第13の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置を用いた自律運転車用の通信システムであって、
前記発光部から送信された光信号を略水平方向の全方位に向けて送信すると共に、他の車両から略水平方向の全方位に向けて送信された光信号を受信することにより、不特定の車両に対する全方位的な送受信を行う全方位通信システムと、
前記複数の発光素子の内の一つの発光素子から送信された特定の光信号と、前記複数の受光素子の内の一つまたは複数の受光素子において受信された特定の光信号とに基づいて、特定の他の車両との間で一対一の送受信を行う一対一通信システムと
が構築されていることを特徴とする自律運転車用の通信システムである。
【0034】
本発明に関連する第15の技術は、
受信した他の車両からの光信号より得られた前記他の車両の情報を、第三の他の車両に向けて送信するアドホック通信により、複数の車両間で通信ネットワークが構成されていることを特徴とする
第14の技術に記載の自律運転車用の通信システムである。
【0035】
本発明に関連する第16の技術は、
第14の技術または
第15の技術に記載の自律運転車用の通信システムを用いて、自車両と他の車両との間で、光信号による送受信を行うことを特徴とする光送受信方法である。
【0036】
本発明に関連する第17の技術は、
第2の技術ないし
第13の技術のいずれか
1つの技術に記載の光送受信装置を用いた自律運転車用の通信システムであって、
前記特定の固定場所において、前記発光部から送信された光信号を全方位に向けて送信すると共に、前記自律運転車から全方位に向けて送信された光信号を受信することにより、前記自律運転車に対する全方位的な送受信を行い、前記特定の場所に対する前記自律運転車の位置情報を取得する全方位通信システムが構築されていることを特徴とする自律運転車用の通信システムである。
【0037】
本発明に関連する第18の技術は、
第3の技術に記載の光送受信装置が、入場してきた前記自律運転車から少なくとも2個以上認識できる間隔で複数配置されていると共に、
第17の技術に記載の自律運転車用の通信システムによって、前記自律運転車を所定の駐車位置まで誘導するように構成されていることを特徴とする自律運転車駐車場である。
【0038】
本発明は、上記した各技術に基づく発明であり、請求項1に記載の発明は、
特定の場所に固定配置されて自律運転車との間で送受信する光送受信装置であって、
前記自律運転車へ向けて光信号を発信する一つまたは複数の発光素子が設けられた発光部と、
前記自律運転車からの光信号を受信する一つまたは複数の受光素子が設けられた受光部と、
全方位型の光学部品とを備えており、
前記発光部から発信された光信号が前記全方位型の光学部品に入射する際の光軸と、前記自律運転車から送信されて前記全方位型の光学部品に入射した光信号が前記全方位型の光学部品から出射する際の光軸とが同光軸になるように構成されており、
前記全方位型の光学部品を通じて、前記発光部から発信された光信号を外部の全方位に向けて送信すると共に、前記自律運転車から送信された全方位からの光信号を前記受光部により受信することにより、前記自律運転車に対する全方位的な送受信を行うことができるように構成されていることを特徴とする光送受信装置である。
【0039】
請求項2に記載の発明は、
前記特定の場所が、自律運転車用の駐車場であることを特徴とする請求項1に記載の光送受信装置である。
【0040】
請求項3に記載の発明は、
前記受光部が、複数の前記受光素子がマトリックス状に配列された撮像装置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光送受信装置である。
【0041】
請求項4に記載の発明は、
前記撮像装置が、全方位のパノラマ画像を撮像可能な撮像装置であることを特徴とする請求項3に記載の光送受信装置である。
【0042】
請求項5に記載の発明は、
前記受光部と前記全方位型の光学部品との間にハーフミラーが配置されており、
前記ハーフミラーが、前記発光部から発信された光信号を前記全方位型の光学部品に向けて反射させると共に、前記全方位型の光学部品から前記受光部へと向かう光信号を透過させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光送受信装置である。
【0043】
請求項6に記載の発明は、
前記発光部として、画像を投影表示するプロジェクターが用いられ、
前記発光素子として、前記プロジェクターが投影する画像の画素が用いられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光送受信装置である。
【0044】
請求項7に記載の発明は、
前記受光部として、円形のカメラレンズが用いられ、
前記発光部の発光素子として、前記カメラレンズの外周の全周に亘って環状に配置された発光ダイオードが用いられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光送受信装置である。
【0045】
請求項8に記載の発明は、
前記全方位型の光学部品が、パノラマ画像ブロックであり、
前記パノラマ画像ブロックが、
上面中央の上位遮光面と、上面周縁部の上位透光面と、下面周縁部の下位遮光面と、下面中央部の下位透光面を具備した透明素材より成る回転体であって、
前記下位遮光面は、上位透光面からの入射光を当該回転体内を通過して上位遮光面へ集め得る反射鏡とされ、
前記上位遮光面は、下位遮光面からの反射光を当該回転体内を通過して下位透光面へ集め得る反射鏡とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光送受信装置である。
【0046】
請求項9に記載の発明は、
前記パノラマ画像ブロックに、前記上位透光面の上方を覆い当該パノラマ画像ブロックの画角の上縁と一致した下面を有する光制御板が取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の光送受信装置である。
【0047】
請求項10に記載の発明は、
前記全方位型の光学部品が、湾曲面の中心が上方に向けて配置された魚眼レンズであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光送受信装置である。
【0048】
請求項11に記載の発明は、
前記発光部から発信される光信号に、前記光信号の送信方向の情報が重畳されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の光送受信装置である。
【0049】
請求項12に記載の発明は、
前記受光部に、CCD素子、MOSセンサー、CMOSセンサーのいずれかが用いられていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の光送受信装置である。
【0050】
請求項13に記載の発明は、
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の光送受信装置を用いた自律運転車用の通信システムであって、
前記特定の固定場所において、前記発光部から送信された光信号を全方位に向けて送信すると共に、前記自律運転車から全方位に向けて送信された光信号を受信することにより、前記自律運転車に対する全方位的な送受信を行い、前記特定の場所に対する前記自律運転車の位置情報を取得する全方位通信システムが構築されていることを特徴とする自律運転車用の通信システムである。
【0051】
請求項14に記載の発明は、
請求項2に記載の光送受信装置が、入場してきた前記自律運転車から少なくとも2個以上認識できる間隔で複数配置されていると共に、
請求項13に記載の自律運転車用の通信システムによって、前記自律運転車を所定の駐車位置まで誘導するように構成されていることを特徴とする自律運転車駐車場である。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、簡素な構造でありながらも、不特定の車両に対する全方位的な送受信だけでなく、送信元の方向を精度高く特定して特定の車両との一対一の通信も可能とし、光信号の送受信に際して死角を生じさせることがない自律運転車用の光通信技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
1.本発明の概要
本発明者は、上記した問題を解決するために、自律運転車の光通信システムに適した光送受信装置ついて種々の検討を行い本発明に思い至った。
【0055】
即ち、本発明の光送受信装置は、他の車両へ向けて光信号を発信する一つまたは複数の発光素子が設けられた発光部と、他の車両からの光信号を受信する一つまたは複数の受光素子が設けられた受光部と、全方位型の光学部品とを備えており、発光部から発信された光信号が全方位型の光学部品に入射する際の光軸と、他の車両から送信されて全方位型の光学部品に入射した光信号が全方位型の光学部品から出射する際の光軸とが同光軸になるように構成されている。
【0056】
そして、本発明の光送受信装置は、全方位型の光学部品を通じて、発光部から発信された光信号を外部の略水平方向の全方位に向けて送信すると共に、他の車両から送信された略水平方向の全方位からの光信号を受光部により受信し、不特定の車両に対する全方位的な送受信を行うように構成されている。
【0057】
一方で、本発明の光送受信装置は、全方位型の光学部品を通じて、一つの発光素子から送信された光信号を特定の他の車両に向けて送信すると共に、特定の他の車両から送信された光信号を受信することにより、特定の他の車両との間で一対一通信を行うことができるように構成されている。
【0058】
この一対一通信を行う際には、通信相手となる車両を正しく特定する必要があり、送信されてきた光信号が一つの受光素子だけで受信されている場合には、この受光素子が受信した方向に向けて一つの発光素子から光信号を送信することにより、そのまま一対一通信を行うことができる。
【0059】
一方、車両同士の位置関係によっては、通信相手となる車両からの光信号が隣接する受光素子で同時に受信されることがある。この場合、受信方向はその中間と推測することにより通信相手となる車両を正しく特定することができ、特定された方向に向けて一つの発光素子から光信号を送信することにより、一対一通信を行うことができる。
【0060】
このように、複数の受光素子が同じ相手車両からの光信号を受信した場合には、受信方向はその中間と推測することができるため、受信方向を特定可能な方向の数は受光素子の数の2倍となり、受光素子数を増やすことにより、受信方向をより大幅に精度高く特定して一対一通信を行うことができる。なお、このとき、発光素子は特定可能な受信方向の数に合わせて、受光素子の2倍の数を配置する。これにより、中間方向へ向けても光信号を容易に発信することが可能となる。
【0061】
これにより、不特定の車両に対する全方位通信だけでなく、特定の車両との一対一通信も容易に行うことができるため、このような光送受信装置を適用することにより、適切な自律運転の光通信システムとすることができる。
【0062】
そして、本発明の光送受信装置は、発光部から発信された光信号が全方位型の光学部品に入射する際の光軸と、他の車両から送信されて全方位型の光学部品に入射した光信号が全方位型の光学部品から出射する際の光軸とが同光軸になっているため、簡素な構造でコンパクト化を図ることができ、背を高くする必要がない。このため、光送受信装置における死角の発生がなく、コストの上昇を防止することもできる。
【0063】
また、同じように構成された光送受信装置、即ち、自律運転車へ向けて光信号を発信する一つまたは複数の発光素子が設けられた発光部と、自律運転車からの光信号を受信する一つまたは複数の受光素子が設けられた受光部と、全方位型の光学部品とを備えており、発光部から発信された光信号が全方位型の光学部品に入射する際の光軸と、自律運転車から送信されて全方位型の光学部品に入射した光信号が全方位型の光学部品から出射する際の光軸とが同光軸になるように構成されている光送受信装置を駐車場などの特定の場所に複数、固定配置した場合には、この固定配置された光送受信装置と自律運転車との間で送受信することにより、自律運転車の位置情報を精度高く個別に把握することできる。そして、特定の場所が駐車場の場合には、把握された自律運転車の位置情報に基づいて、駐車場内を誘導することができるため、自律運転車を対象とした全自動駐車場とすることができる。
【0064】
具体的には、GPS電波が届かない屋内駐車場の天井面や壁面などに、例えば、光ビーコンのように、予め位置情報が明確になっている状態で上記光送受信装置を配置する。このとき、屋内駐車場に入場してきた自律運転車から少なくとも2個以上認識できる間隔で複数、固定配置する。
【0065】
これにより、自律運転車が入場してきた場合、発光部から送信された光信号を全方位に向けて送信すると共に、入場してきた自律運転車から全方位に向けて送信された光信号を受信して、自律運転車に対する全方位的な送受信を行うことにより(全方位通信システム)、容易に自律運転車の位置情報を取得することができる。そして、この位置情報を順次取得することにより、自律運転車を所定の駐車位置まで容易、かつ確実に誘導することができ、無人の自動誘導駐車場を実現することができる。なお、誘導のコントロールは、特開2011−054116に示されているように自律運転車側で行ってもよく、駐車場側からの遠隔操作によって行ってもよい。
【0066】
また、撮像によって上記手段を行う場合でも、画像処理することなくその状態で演算することができるため、この場合には、演算負荷を抑えて高速で処理することができる。
【0067】
2.本実施の形態に係る光送受信装置
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
【0068】
(1)第1の実施の形態
本実施の形態では、全方位型の光学部品として、特許第1962784号や特許第3562963号に示すようなパノラマ画像ブロックを用いた光送受信装置について説明する。
【0069】
図1は本実施の形態に係る光送受信装置を模式的に示す図である。
【0070】
本実施の形態に係る光送受信装置は、
図1に示すように、複数の受光素子(図示せず)を有する受光部20と、複数の発光素子(図示せず)を有する発光部30とを備えており、全方位型の光学部品として上記したパノラマ画像ブロック10が用いられている。
【0071】
本実施の形態の受光部20には、複数の受光素子がマトリックス状に配列された撮像装置22が設けられている。この撮像装置22を構成する各々の受光素子は、受信した光信号から対応する位置情報を知ることができるようになっている。このような撮像装置22としては、例えば、CCD素子、MOSセンサー、CMOSセンサーなどが挙げられる。
【0072】
また、発光部30には、複数の発光素子を配して発光部としてもよいが、画像を投影表示するプロジェクター32を用いてもよい。この場合、プロジェクターが投影する画像の各画素を個別に発光素子として用いることができるため、各画素に対応した異なった光信号を容易に発信することができる。
【0073】
そして、本実施の形態に係る光送受信装置では、発光部30から発信されてパノラマ画像ブロック10の下位透光面に入射する光信号の光軸と、外部からパノラマ画像ブロック10に入射してパノラマ画像ブロック10の下位透光面から出射する光信号の光軸とが同光軸になるように構成されており、これらの光信号の光軸上にハーフミラー40(ビームスプリッター)が配置されている。
【0074】
具体的には、ハーフミラー40は、光信号の光軸に対して約45°傾けられている。これにより、発光部30から発信された光信号はハーフミラー40により反射されて、パノラマ画像ブロック10に入射される。一方、外部からパノラマ画像ブロック10に入射した光信号は、ハーフミラー40を透過して受光部20で受信される。
【0075】
図2は
図1に示す光送受信装置の光信号の送受信を説明する図である。なお、
図2においては、パノラマ画像ブロック10内における光信号の光線について理解が容易となるように、発光部と発光部から発信された光信号については記載していない。
【0076】
図2に示すように、このパノラマ画像ブロック10は、上面中央の上位遮光面1と、上面周縁部の上位透光面2と、下面周縁部の下位遮光面3と、下面中央部の下位透光面4を具備した透明素材より成る回転体である。そして、下位遮光面3は上位透光面2からの入射光を当該回転体内を通過して上位遮光面1へ集め得る反射鏡とされ、上位遮光面1は下位遮光面3からの反射光を当該回転体内を通過して下位透光面4へ集め得る反射鏡とされるべく、それぞれ適性な湾曲面又は平面として構成されている。
【0077】
本実施の形態に係る光送受信装置では、パノラマ画像ブロック10の軸、レンズ21の軸、および受光部20の中心が同じ軸線R上に位置するように配置されている。
【0078】
このため、本実施の形態に係る光送受信装置においては、自車の周囲の全方位からの光信号が、上位透光面2からパノラマ画像ブロック10の内部に入射し、下位遮光面3によって上位遮光面1に向けて反射される。そして、反射された光は、上位遮光面1によって下方に向けて反射された後、下位透光面4を通過してパノラマ画像ブロック10の下方に送られる。そして、パノラマ画像ブロック10を通過した光は、ハーフミラー40(
図1参照)を透過して、レンズ21で集光された後に受光部20の撮像装置22に照射される。
【0079】
そして、受光部20の撮像装置22では、撮像装置22を構成する各々の受光素子が受信した光信号に基づいて、全方位のパノラマ画像である環状の画像Pが形成される。このとき、環状の画像Pには、他の車両から自車に向けて送信された光信号P1も含まれているため、受光素子を特定してその光信号を取り出すことにより、この光信号を発信した車両の方向を精度高く特定することができる。
【0080】
例えば、
図2に示す場合には、撮像装置22により自車の周囲の風景が環状の画像Pとして撮像されているため、この周囲の風景の画像から特定の光信号P1が検出された位置を調べることにより、周囲に位置する他の車両の内から特定の車両を知ることができる。
【0081】
なお、上記においては、光信号の受信を取り上げて説明したが、光信号の発信に際しても同様に考えることができる。即ち、本実施の形態においては、発光部30(
図1参照)から発信された光信号は、前記したように、ハーフミラー40により反射される。これにより、発信された光信号の光軸がパノラマ画像ブロック10に向けて変更されて、下位透光面4からパノラマ画像ブロック10の内部に入射する。その後、パノラマ画像ブロック10の内部において、上記した受光の際と逆方向の光路を経た光信号が自車の外部へ略水平方向の全方位に向けて送信される。
【0082】
なお、ここでの「略水平方向」とは、
図2中の画角で示されるように、水平方向に対して上下に一定の角度を含むものであり、この画角は俯角20°程度〜仰角60°程度である。
【0083】
このとき、本実施の形態においては、発光部30として、画素毎に異なった光信号を発信できるプロジェクター32を用いているため、各々の画素を制御して1台の車両に向けて特定の信号を発信することにより、特定された車両との間で一対一通信を行うことができる。
【0084】
以上のように、本実施の形態によれば、自車の周囲の全方位を対象として光信号の送受信を行う全方位通信だけでなく、特定の車両との間で光信号の送受信を行う一対一通信も並行して行うことができる。
【0085】
なお、本実施の形態に係る光送受信装置において、上記した全方位通信と、特定の車両と一対一通信の両方を行う際には、一対一通信における通信出力或いは感度を上げ、または全方位通信の通信出力或いは感度を下げることが好ましい。これによって一対一通信の信頼性を向上させることができる。
【0086】
また、本実施の形態においては、
図1に示すように、パノラマ画像ブロック10に入射する光信号の光軸と、外部からパノラマ画像ブロックに入射してパノラマ画像ブロックから出射する光信号の光軸とが同光軸になるように構成されているため、1つのパノラマ画像ブロック10で発光部30からの光信号の発信と、周囲の全方位からの光信号の受信の両方を行うことができる。この結果、発光部と受光部の各々に双曲面ミラーを設けるなど、複雑な構造の光送受信装置とする必要がない。また、装置も背を高くする必要がないため、死角が生じにくい。さらに、受光部や発光部の構造を簡素化することができるため、生産コストを低減することができる。
【0087】
なお、
図1に示すような光送受信装置においては、受光部20に、反射光を遮断する偏光フィルターを設けることが好ましい。例えば、
図3に示すように、車両Yから送信された光信号が車両Xの光沢面(たとえばガラス)で反射されることがあり、この反射光を車両Zが受信してしまうと、車両Zにおいて、車両Yからの信号が多重に検出されて受信方向が定まらなくなる恐れがある。これに対して、受光部20に偏光フィルターを設けることにより、反射光を遮断して反射光を受光部20が受信しないようにすることができる。
【0088】
また、上記した反射光による誤認識を防止する他の方法としては、発光部30から発光させる光信号に送信方向の情報を付与するという方法が挙げられる。例えば、全方位に向けて光信号を送信するに際して、
図1中のプロジェクター32の複数の画素から送信される各々の光信号に送信方向の情報を付与することにより、受信した光信号が反射光であるか否かを他の車両が判断することができる。
【0089】
例えば、
図3に示すように、車両Yが周囲の全方位に光信号を送信した結果、光信号L1が前方の車両Xのリアガラスで反射して、この反射光L2を後続の車両Zが受信してしまった場合に、車両Yからの光信号L1に北東に向かう信号であるという情報が付与されていれば、車両Zが反射光L2を受信する際に、光信号に付与された送信方向の情報と、車両Zが受信した方向(この場合は南西)が一致しなくなるため、車両Zは受信した光信号が反射光であると判断することができる。
【0090】
また、欧州の路上ではラウンドアバウトと呼ばれる環状交差点が多く見られ、このラウンドアバウトは近年日本でも導入されてきており、このような環状交差点で自律運転を行う際には、通常の道路を運転させる際とは異なる自律運転制御を行うことが求められる。このため、ラウンドアバウトに能動的或いは受動的な識別手段を設置し、本実施の形態に係る送受信装置がその識別手段を検出することによって、ラウンドアバウド専用の自律運転制御に切り替える制御を行い、同様な手段でラウンドアバウドを通り抜けた際に通常の運転モードに切り替えるという制御を行うことが好ましい。
【0091】
また、
図2に示すように、パノラマ画像ブロック10には、撮像装置22において明瞭な画像を得られる入射角度の範囲である画角が存在しているが、この画角よりも上方からパノラマ画像ブロック10の上位透光面2に光が入射されると、この上方からの光を撮像装置22が受信して、環状の画像Pを形成する際にノイズとなる恐れがある。このため、上方からの光がパノラマ画像ブロック10に入射されないように、
図4に示すように、パノラマ画像ブロック10の上位遮光面1に、上位透光面2の上方を一様に覆い、パノラマ画像ブロック10の画角の上縁と一致した下面5を有する光制御板6を設けることが好ましい。これにより、画像Pを形成する際にノイズとなる画角よりも上方からの光を遮光してパノラマ画像ブロック10内に入射されないようにすることができる。
【0092】
(2)第2の実施の形態
本実施の形態では、カメラレンズの外周の全周に亘って複数の発光ダイオードが発光素子として配置された受光部を有する光送受信装置について説明する。
【0093】
上記した第1の実施の形態に係る光送受信装置では、
図1に示すように、発光素子として画像の画素が用いられているプロジェクター32を発光部30に設けると共に、プロジェクター32からの光信号がパノラマ画像ブロック10に入射されるようにハーフミラー40を配置しているが、これに限定されない。
【0094】
図5は本実施の形態に係る光送受信装置を説明する図である。
図5に示すように、第2の実施の形態に係る光送受信装置は、受光部としてのカメラレンズ24の外周の全周に亘って発光素子である複数の発光ダイオード34が環状に配置されている。このような構造を採用することにより、カメラレンズ24によって光信号を受信できる共に、各々の発光ダイオード34で複数の光信号を個別に発信することができる。
【0095】
そして、本実施の形態では、第1の実施の形態のようにハーフミラーを設ける必要がないため、装置を更に小型化できる。
【0096】
なお、本実施の形態においては、複数の発光ダイオード34の各々から光信号を個別に発信することができるが、第1の実施の形態では、プロジェクター32(
図1参照)を使用して投影された画像の画素を複数の発光素子とすることにより、本実施の形態の発光ダイオード34よりも大幅に多い種類の光信号を個別に発信することができる。このため、受光部で得られた画像と、発光部から発信させる光信号を対応させて一対一通信を行うという観点からは、第1の実施の形態を使用する方が好ましい。
【0097】
(3)第3の実施の形態
本実施の形態においては、上記したパノラマ画像ブロックに替わる全方位型の光学部品について説明する。
【0098】
上記した第1および第2の実施の形態では、全方位型の光学部品としてパノラマ画像ブロックを用いている。しかし、全方位型の光学部品としては、パノラマ画像ブロック以外の光学部品を用いてもよい。
【0099】
具体的な一例として、魚眼レンズを用いることができる。この魚眼レンズの湾曲面の中心を上方に向けて車両の上部に配置することにより、魚眼レンズを通じて、発光部から発信された光信号を外部の略水平方向の全方位に向けて送信すると共に、他の車両から送信された略水平方向の全方位からの光信号を受光部により受信することができる。
【0100】
なお、このような魚眼レンズを上方に向けて配置した場合、受光部が太陽光を受信してしまい画像形成の際のノイズになりやすいという問題や、水平近くの画像の分解能が悪いという問題を有している。これらの問題を考慮すると、全方位型の光学部品としては、第1および第2の実施の形態で用いたパノラマ画像ブロックを使用する方が好ましい。
【0101】
(4)第4の実施の形態
本実施の形態においては、特定の他の車両との間で一対一通信を行う際、相手車両からの光信号を複数の受光素子で受光している場合について説明する。
【0102】
複数の受光素子が同じ光信号を相手車両から受信した場合、そのままでは相手車両の方向を正しく特定できず、一対一通信が行えない。そこで、本実施の形態においては、前記したように、複数の受光素子が同じ相手車両からの光信号を受信した場合には、受信方向はその中間と推測して、相手車両の方向を特定することにより、一対一通信を行う。このように複数の受光素子の中間も相手車両の方向として特定することにより、受光素子の倍の数の方向で相手車両を特定することができる。
【0103】
このとき、配置された受光素子で相手車両からの光信号をそのまま受けて、上記のように受信方向を特定してもよいが、相手車両からの光信号を波長の異なる2つの光信号に分けて、それぞれの光信号を交互に受信するように受光素子を配置して相手車両の方向を特定することもできる。以下では、このように波長の異なる2つの光信号の各々を交互に受信するように配置された受光素子による方向の特定について説明する。
【0104】
図6は、本実施の形態に係る光送受信装置の光信号送受信部を模式的に示す図である。本実施の形態においては、
図6に示すように、内側に8個の受光素子20aが全方向(360°)を等分するように配置されていると共に、外側には、8個の受光素子20aと同じ位置に8個、各受光素子20aの中間の位置に8個と計16個の発光素子20bが配置されている。
【0105】
なお、各受光素子20aには単一の波長のみを受信するように、フィルターなどが取り付けられている。具体的には、相手車両からの光信号の内から、波長(λ)がaの光信号のみを受信する4個の受光素子20a(a1〜a4の方向に対応)と、波長bの光信号のみを受信する4個の受光素子20a(b1〜b4の方向に対応)とが、それぞれ交互に配置されている。
【0106】
図6において、波長aの光信号の受信方向がa1方向で一定していると仮定すると、波長bの光信号の受信状況を知ることにより相手車両の方向を特定することができる。
【0107】
具体的には、同じ波長bの光信号がb1方向、b4方向の2方向で同時に受信された場合には、アナログ的に波長bの光信号からのデータ復調がエラーとなってしまうため、波長bの光信号の受信方向は、b1とb4の間の方向、即ち、a1方向と判断する。このa1方向は、波長aの光信号の受信方向と一致しているため、最終的に、全ての光信号はa1方向から受信されていることになり、相手車両の方向をa1方向と特定することができる。そして、a1方向に向けて光信号を発信するように配置された発光素子20bから光信号を発信することにより、特定された相手車両との間で一対一通信を行うことができる。
【0108】
一方、波長bの光信号がb1方向のみで受信された場合には、波長bの光信号の受信方向はb1方向と判断することができる。この場合、波長aの光信号の受信方向a1方向とは異なっているため、相手車両の方向はa1とb1の間の方向、即ち、c方向と特定することができる。そして、c方向に向けて光信号を発信するように配置された発光素子20bから光信号を発信することにより、特定された相手車両との間で一対一通信を行うことができる。
【0109】
そして、撮像装置(カメラ)を用いたICS:イメージセンサ通信では、撮像装置内にマトリクス状に複数の受光素子が配置されているため、上記の方法を適用することにより、相手車両の方向を精度高く特定することができる。
【0110】
3.光送受信装置を用いた車車間通信
次に、本発明の光送受信器を車両に取り付けて車車間通信を行う場合について説明する。なお、以下の説明では、光送受信器として
図1に示す第1の実施の形態に係る光送受信器を用いた場合について説明する。
【0111】
図7は第1の実施の形態に係る光送受信装置が取り付けられた自律運転車の概略説明図である。
図6に示すように、光送受信装置50は車両の屋根に取り付けられており、ゲートウェイ52を介して、エンジン制御手段53、ステアリング制御手段54、ブレーキ制御手段55の各々の制御手段に接続されている。
【0112】
これらの制御手段53〜55は、光送受信装置50が受信した光信号に付与されている情報に基づいて、自車と他車との車間距離を維持する制御、路面に存在する障害物との衝突を回避する制御、他車との間で隊列を形成するための制御、走行車線の保持する制御などの種々の制御を総合的に行うことにより自律運転を行う。
【0113】
具体的には、この車両は、光送受信装置50が受信した光信号を、ゲートウェイ52を通じて各々の制御手段53〜55に送信する。そして、各々の制御手段53〜55によって車両のエンジンやブレーキの動作を制御することにより走行速度を調整すると共に、ステアリングの動作を制御することにより車両の走行方向を調整する。
【0114】
図8は第1の実施の形態に係る光送受信装置を用いた全方位通信を説明する図であり、
図9は第1の実施の形態に係る光送受信装置を用いた一対一通信を説明する図である。
【0115】
図8に示すように、走行中の各車両X〜Zの光送受信装置50は、
図1中のパノラマ画像ブロック10のような全方位型の光学部品を有しているため、自車から全方位に向けて自車の識別ID(ナンバープレート等)や、走行状況(進行方向や速度等)や車両状況(各種センサーや通信装置の正常稼働の可否を含む)等の情報を光通信データとしてビーコン信号(ブロードキャスト信号)を絶えず送信することができる。
【0116】
そして、各車両X〜Zの光送受信装置50は、他の車両から送信された光信号を受信すると、光信号の送信元の車両を特定し、その車両との間で一対一の個別通信を行う。具体的には、
図9に示すように、各車両の光送受信装置50は、他の車両を認識すると、上記した全方位への信号に加えて、特定の車両に向けての個別信号を送信する。
【0117】
この個別信号は、例えば、上記したように発光部のプロジェクターが投影した画像の画素の内、特定の車両に向かう光信号に対応した画素を制御することにより送信することができる。これにより、本実施の形態に係る光送受信装置50は、
図9中の車両Yと車両Zのように各々の車両間での一対一通信を形成し、車両Yと車両Zの走行を連動させることができるようになる。
【0118】
例えば、左車線を走行する車両Yが右車線へ車線変更を行おうとした場合、車両Yは、他車からの全方位信号に基づいて要注意車を判断する。車両Yが右車線へ車線変更する際に要注意車となるのは、車両Yの右後方を走行する車両Zであるため、車両Yは車両Zに向けて車線変更をする旨の信号を送信する。この信号を受信した車両Zは、車線変更する車両Yに追突しないように自車の速度を低下させる。
【0119】
また、本実施の形態に係る光送受信装置50を用いると、複数の個別信号を同時に送受信することができるため、各々の車両同士の個別通信をリレーのように繋ぐアドホック通信を行うことができ、また、そのアドホック通信をバケツリレー方式でつないでいくことによりマルチホップ通信を行うことができる。例えば、上記したように、車両Yの車線変更の情報を受信した車両Zは、自車の走行速度を低下させる際に後続車に追突されないように、車両Yの車線変更の情報を後続車に送信して、後続車に対して減速を促すことができる。また、前方の車両Xが例えば信号機の状態あるいは信号機からの情報を検知した際には、この信号機の状態あるいは信号機からの情報を後続車に伝達していくことによって、信号機を直接視認できない車両を適切な判断の下で制御することができる。
【0120】
このように、本実施の形態に係る光送受信装置は、自車を中心とした全方位通信と、特定の車両との間の一対一通信を同時に行うことができるため、自律運転車用の光通信システムを容易に構築することができる。
【0121】
そして、上記した通り、本実施の形態に係る光送受信装置は、従来の光送受信装置に比べて低コストで作成することができるため、近年開発が進んでいる自律運転の実現に大きく貢献することができる。
【0122】
なお、上記の説明は、本発明の光送受信装置を一般的な乗用車に取り付ける場合に関するものであり、
図6に示すように、光送受信装置50を車両の上面の中央、即ち、屋根に取り付けている。
【0123】
しかし、貨物車両のように車高が高く、屋根が広い、または屋根が車両の中央にないような車両の場合には、1個の光送受信装置を取り付けるのみでは、水平方向よりも下側の角度である俯角側の死角に前方の車両が含まれてしまうため、前方の車両との間で光送受信ができなくなる。
【0124】
そこで、上記したような貨物車両の場合には、死角となる範囲を減らすために、本発明の装置を複数個用い、各々の装置を適切な位置と角度で取り付けることが好ましい。
【0125】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【0126】
なお、本発明に係る光送受信装置は、単体で自律運転に必要な通信機能を達成することができるが、さらに、受像カメラとして、先行車のブレーキランプやウィンカー、前方の信号機の状態等を画像処理することができるため、両者を併用することにより、通信システムとしての機能をより充実させることができる。また、電波通信を併用することにより、通信システムとしての機能を一層充実させることができる。
【0127】
4.光送受信装置を用いた駐車場
以下では、天井面や壁面に複数配置された光送受信装置と自律運転車との間で送受信することにより、入場してきた自律運転車を所定の駐車位置まで誘導することができる駐車場について説明する。
【0128】
図10は、本実施の形態に係る光送受信装置が設置された駐車場の模式図であり、駐車場の天井面には、入場してきた1台の自律運転車から少なくとも2個以上認識できる間隔で複数配置されている。
【0129】
このとき、自律運転車に設けられている光送受信装置Bと天井面に設置された複数の光送受信装置Aとの間で送受信を行うことにより、自律運転車の位置情報を、随時、リアルタイムで正確に把握することができる。
【0130】
この位置情報を絶えず更新していくことにより、所定の駐車位置まで自律運転車を誘導することができる。なお、この自律運転車の誘導操作は、駐車場内の監視カメラと位置情報とに基づいて、駐車場側から遠隔操作することができるため、駐車場内を完全無人化することも可能となる。この際、車両の誘導は小回りの利く後輪操舵(=バック)でコントロールすることが好ましく、また、機動性や他の有人車両との区別を行うために駐車場内はバックで走行することが好ましい。
【0131】
このように、本実施の形態によれば、車両を誘導する係員を車両近くに配置する必要がなくなる。また、入場してきた自律運転車を「全自動運転モード」に切り替えることにより、駐車場待ちから運転者を開放して運転者が駐車場内に入る必要もなくなるため、自律運転車を対象として完全に無人化された全自動駐車場とすることが可能となる。
【0132】
そして、降車スペースが不要となることにより、車両の収容能力をアップさせるだけでなく、駐車場内における人身事故や、盗難などの発生を皆無にすることができる。
【0133】
さらに、入場を待つ自律運転車が複数ある場合には、上記した通信ネットワークを隊列走行における電子連結技術として併用することにより、駐車待ち状態から駐車の完了までの全てを無人で行うことができ、自律運転車の利便性がさらに向上する。
【課題】簡素な構造でありながらも、不特定の車両に対する全方位的な送受信だけでなく、送信元の方向を精度高く特定して特定の車両との一対一の通信も可能とし、光信号の送受信に際して死角を生じさせることがない自律運転車用の光通信技術を提供する。
【解決手段】一つまたは複数の発光素子が設けられた発光部と、一つまたは複数の受光素子が設けられた受光部と、全方位型の光学部品とを備えており、発光部から発信された光信号が全方位型の光学部品に入射する際の光軸と、他の車両から送信されて前記全方位型の光学部品に入射した光信号が前記全方位型の光学部品から出射する際の光軸とが同光軸になるように構成されており、全方位型の光学部品を通じて不特定の車両に対する全方位的な送受信を行う一方、全方位型の光学部品を通じて特定の他の車両との間で一対一通信を行うことができるように構成されている光送受信装置。