(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は、従来の補聴器の下部ケースと上部ケースとの接合部分の例を示す断面図である。
【0005】
補聴器において、下部ケースと上部ケースとを互いに接合する場合、下部ケースと上部ケースとが互いに横方向(補聴器の幅方向)にずれないようにするために、例えば、
図5(A)に示すように、下部ケース101および上部ケース102の一方に係止凸条111が設けられたり、
図5(B)に示すように、下部ケース121および上部ケース122の一方に凹条131が設けられ他方に凸条132が設けられたりする。
【0006】
このような接合部分を形成することで、横方向において下部ケース101,121と上部ケース102,122とが互いに固定される。
【0007】
しかしながら、
図5(A)および
図5(B)に示すように、係止凸条111や、凹条131および凸条132が、略長方形の断面を有する場合、下部ケース101,121および上部ケース102,122の一方に他方を組み付ける際に、係止凸条111が、他方のケースの先端に引っ掛りやすく、また、凸条132が凹条131に引っ掛かりやすいため、組み付け作業に手間と時間がかかってしまう。
【0008】
なお、
図5(A)に示すように係止凸条111を設ける場合、係止凸条111をよりケース内側に設けることで組み付け時の引っ掛かりが軽減されるが、組み付け後に上部ケースと下部ケースとの間でガタつきが生じたり、上部ケースの横方向で内側方向に力が加わるとずれや変形する可能性がある。また、
図5(B)に示すような凹条131を設ける場合、強度上、下部ケース121の肉厚を大きくする必要がある。
図5(A)や
図5(B)に示す補聴器を持つ際に横方向の側面を指で挟んで持つことが多いが、指で押されることにより継ぎ目に力が加わると、構造上隙間が生じる場合がある。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、組み付け作業を容易にしつつ、使用者等が指で押しても、ずれや変形しにくいケースの接合構造を有する補聴器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る補聴器は、補聴器の筐体を構成する第1ケースおよび第2ケースを有する。第1ケースおよび第2ケースは互いに接続する接合部分を有する。第1ケースおよび第2ケースの一方の接合部分は鋭角な凹条で第1傾斜側面を有し、第1ケースおよび第2ケースの他方の接合部分は鋭角な凸条で第2傾斜側面を有する。第1ケースおよび第2ケースは、第1傾斜側面および第2傾斜側面
が互いに接合されて組み付けられる。
そして、(a)第1ケースおよび第2ケースは、第1ケースの両端と第2ケースの両端がそれぞれ接続する2つの接合部分を有し、その2つの接合部分の一方における鋭角な凹条および鋭角な凸条、並びにその2つの接合部分の他方における鋭角な凹条および鋭角な凸条は、同一方向に接合されているか、(b)第1ケースおよび第2ケースのうちの一方の後端部に、上述の鋭角な凹条を形成する外界側の側面と連続する同一面を有する第1側面と、組み付け方向に対して平行で第1側面と対向する第2側面とを有する凹部を有し、第1ケースおよび第2ケースのうちの他方の後端部に、上述の鋭角な凸条を形成する外界側の側面と連続する同一面を有する第3側面と、組み付け方向に対して平行で第3側面と対向する第4側面とを有する凸部を有し、第2側面および第4側面は、第1ケースおよび第2ケースを互いに組み付ける際に互いに接合する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、組み付け作業を容易にしつつ、使用者等が指で押しても、ずれや変形しにくいケースの接合構造を有する補聴器が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る補聴器を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る補聴器を示す分解斜視図である。
【0015】
図1および
図2に示す補聴器は、耳かけ型の補聴器であり、下部ケース1(第1ケース)と、上部ケース2(第2ケース)と、マイクカバー3と、電池ホルダ4と、フック5と、スペーサ6と、本体ユニット7と、保持ピン8,9,10とを備える。
【0016】
下部ケース1および上部ケース2は、それぞれ、例えば略半筒状の形状を有する部材であって、下部ケース1の2つの端辺部11,12と上部ケース2の2つの端辺部21,22とは、隙間なく接合可能な形状で形成されている。つまり、下部ケース1の端辺部11,12と上部ケース2の端辺部21,22とが接合することで、下部ケース1と上部ケース2とが一体のケースとなり、その中空の内部空間に本体ユニット7が配置される。
【0017】
このような下部ケース1と上部ケース2との接合部分は、ケース側面側に位置し、上部ケース2の上面側に位置しないため、汗などの異物が接合部分を介してケース内部に入りにくい。また、下部ケース1と上部ケース2との境界が補聴器の側面に位置するため、例えば、下部ケース1と上部ケース2とを互いに異なる色としやすく、デザインの自由度が高い。
【0018】
また、下部ケース1の電池ホルダ側となる後端部の上端には、凹部13,14が形成されており、下部ケース1の先端部には、挿通孔15および保持ピン孔16が形成されている。また、下部ケース1の側面には、保持ピン孔17,18,19,20が形成されている。なお、保持ピン孔17,18が形成された下部ケース1内側の開口部には、
図2に示すように、上部ケース2の突起部28,29に合わせた形状の凹部が形成されているが、凹部を形成しない構造にしてもよい。
【0019】
また、上部ケース2の電池ホルダ側となる後端部の下端には、凸部23,24が形成されており、上部ケース2の先端部には、保持ピン孔25が形成されている。さらに、上部ケース2の上面には、集音口26および挿通孔27が形成されている。上部ケース2の端辺部21,22には、板状の突起部28,29がそれぞれ形成されており、突起部28,29には、保持ピン孔30,31がそれぞれ形成されている。
【0020】
マイクカバー3は、上部ケース2上で露出する操作部(操作ボタンなど)および集音口26の少なくとも一方(ここでは、両方)を覆う部材である。マイクカバー3は、上部ケース2の上面形状に合わせた形状をしている。また、マイクカバー3には、保持ピン孔41が形成されている。
【0021】
電池ホルダ4は、下部ケース1および上部ケース2の後端部に配置され、本体ユニット7の電子回路に電源電力を供給する電池を収容可能となっている。電池ホルダ4には、保持ピン孔51が形成されている。具体的には、電池ホルダ4は、下部ケース1に組み付けられた後、保持ピン孔51を支点にして回動することにより開閉自在であって、外装面を除き、下部ケース1および上部ケース2の後端部の内部空間に収容可能となっている。
【0022】
フック5は、耳かけ型補聴器用のフックであり、両端を連通して音道となる貫通孔を備える部材である。フック5の突起部61は、組み付け後の下部ケース1および上部ケース2の先端部に挿入される。突起部61には、保持ピン溝62が形成されている。
【0023】
スペーサ6は、リング状の形状を有し、下部ケース1および上部ケース2の先端部の合わせ部材である。そして、下部ケース1の挿通孔15にフック5の突起部61が挿通される。
【0024】
本体ユニット7は、下部ケース1および上部ケース2との内部空間に内蔵され、補聴器使用者に合わせて補聴処理を行う電子回路を含み、補聴器機能を実現するための部分である。本体ユニット7は、フレーム71、イヤホンジョイント72、イヤホンモジュール73、図示せぬマイクロホンの音口74、操作ボタン75、および保持ピン孔76を備える。
【0025】
保持ピン8は、下部ケース1、上部ケース2、マイクカバー3、およびフック5を互いに固定するピンである。保持ピン8は、下部ケース1の保持ピン孔16、上部ケース2の保持ピン孔25、フック5の保持ピン溝62、およびマイクカバー3の保持ピン孔41に挿入される。
【0026】
保持ピン9は、下部ケース1、上部ケース2、および本体ユニット7を互いに固定する保持ピンである。保持ピン9は、下部ケース1の保持ピン孔17,18、本体ユニット7の保持ピン孔76、および上部ケース2の保持ピン孔30,31に挿入される。
【0027】
保持ピン10は、下部ケース1および電池ホルダ4を互いに固定する保持ピンである。保持ピン10は、下部ケース1の保持ピン孔19,20および電池ホルダ4の保持ピン孔51に挿入される。
【0028】
例えば、下部ケース1、上部ケース2、マイクカバー3、電池ホルダ4、フック5、スペーサ6、本体ユニット7のフレーム71、および保持ピン8,9,10は、ABS樹脂などからなる樹脂製の部材または金属製の部材とされる。
【0029】
図3は、
図1および
図2における下部ケース1と上部ケース2との接合部分の一例を示す断面図である。
【0030】
下部ケース1は、上部ケース2との接合部分(端辺部11,12)に凹条11a,12aを有する。上部ケース2は、下部ケース1との接合部分(端辺部21,22)に凸条21a,22aを有する。凹条11a,12aおよび凸条21a,22aの断面は、略三角形の形状を有する。なお、凹条11a,12aは、下部ケース1の先端部から後端部まで延びているようにしてもよいし、先端部から後端部までの一部に形成されていてもよい。同様に、凸条21a,22aは、上部ケース2の先端部から後端部まで延びているようにしてもよいし、先端部から後端部までの一部に形成されていてもよい。
【0031】
凹条11a,12aは、傾斜側面11b,12bを有する。凸条21a,22aは、傾斜側面21b,22bを有する。傾斜側面11b,12b,21b,22bは、下部ケース1と上部ケース2との組み付け方向(つまり上下方向)に対して所定の傾斜角(つまり、0度より大きくかつ90度より小さい鋭角で、例えば45度程度である)で傾斜している。下部ケース1および上部ケース2を互いに組み付ける際には、傾斜側面11bおよび傾斜側面21bが互いに接合し、傾斜側面12bおよび傾斜側面22bが互いに接合する。凹条11a,12aの内側(つまり、下部ケース1の内部空間側)の側面は、傾斜側面11b,12bとなっており、凹条11a,12aの外側(つまり、下部ケース1の内部空間とは反対の外界側)の側面は、垂直側面11c,12c(つまり、上述の組み付け方向に対して平行な面)となっている。
【0032】
そして、凹条11aにより形成される端辺部11の2つの頂辺部11d,11eのうち、内側の頂辺部11dは、外側の頂辺部11eより低くなっている。同様に、凹条12aにより形成される端辺部12の2つの頂辺部12d,12eのうち、内側の頂辺部12dは、外側の頂辺部12eより低くなっている。
【0033】
凸条21a,22aの内側の側面は、傾斜側面21b,22bとなっており、凸条21a,22aの外側の側面は、垂直側面21c,22c(つまり、上述の組み付け方向に対して平行な面)となっている。
【0034】
垂直側面11c,12cから傾斜側面11b,12bへの傾斜角は、垂直側面21c,22cから傾斜側面21b,22bへの傾斜角と略同一である。
【0035】
これにより、下部ケース1と上部ケース2との組み付け時に、下部ケース1の垂直側面11c,12cと上部ケース2の垂直側面21c,22cとが接触しつつガイドとなり、下部ケース1の傾斜側面11b,12bと上部ケース2の傾斜側面21b,22bとが接触して下部ケース1と上部ケース2とが互いに固定された状態になるため、組み付けが容易となるとともに、組み付け後に下部ケース1と上部ケース2との間のガタつきが生じにくい。
【0036】
なお、この実施の形態では、下部ケース1が凹条11a,12aを有し上部ケース2が凸条21a,22aを有しているが、上部ケース2が、凸条21a,22aの代わりに凹条11a,12aを有し、下部ケース1が、凹条11a,12aの代わりに凸条21a,22aを有していてもよい。
【0037】
図4は、
図1および
図2における下部ケース1の後端部および上部ケース2の後端部を示す側面図である。
【0038】
下部ケース1において、凹条11a,12aの延長上の後端部に凹部13,14が形成されている。凹部13,14は、垂直側面13a,14a(つまり、上述の組み付け方向に対して平行な面)を有する。また、上部ケース2において、凸条21a,22aの延長上の後端部に凸部23,24が形成されている。凸部23,24は、垂直側面23a,24a(つまり、上述の組み付け方向に対して平行な面)を有する。そして、凹部13,14の外側の垂直側面はそれぞれ凹条11a,12aの外側の垂直側面11c,12cと連続する同一面で形成されており、凸部23,24の外側の垂直側面は、それぞれ凸条21a,22aの外側の垂直側面21c,22cと連続する同一面で形成されている。なお、これら凹凸部の長さ(つまり、
図4で紙面の奥行方向の長さ)は1mm程度であり、補聴器の先端から後端までの長手方向の長さに対して十分に短い長さである。
【0039】
垂直側面13aおよび垂直側面23aは、下部ケース1および上部ケース2を互いに組み付ける際に互いに接合し、垂直側面14aおよび垂直側面24aは、下部ケース1および上部ケース2を互いに組み付ける際に互いに接合する。
【0040】
下部ケース1の後端部には開閉自在の電池ホルダ4が設けられており、装用者などが電池交換のために電池ホルダ4を開いたときに、開口状態の下部ケース1の後端部に触れて、下部ケース1の後端部を外側へ押し広げようとする力が掛かる可能性がある。これに対し、上述の構成により、下部ケース1と上部ケース2との組み付け後、下部ケース1の垂直側面13a,14aが、上部ケース2の垂直側面23a,24aに当接するため、下部ケース1の後端部が横方向(つまり、上述の組み付け方向に対して垂直方向となる補聴器の幅方向)に押し広げられにくくなる。したがって、下部ケース1の後端部が横方向に押し広げられることによる下部ケース1と上部ケース2との接合部分の破損や変形の発生を抑制できる。
【0041】
次に、本実施の形態に係る補聴器の組み立てについて説明する。
【0042】
図2に示す各部材が用意され、下部ケース1の内側空間に本体ユニット7が配置される。
【0043】
次に、上部ケース2が下部ケース1に組み付けられる。その際、
図3に示すように、下部ケース1の端辺部11,12に凹条11a,12aが形成され、上部ケース2の端辺部21,22に凸条21a,22aが形成されているので、例えば下部ケース1に対して、上部ケース2の先端側や後端側の位置を合わせることで、容易に組み付けることができる。なお、上部ケース2の後端側において、
図4に示すように、上部ケース2の凸部23,24が下部ケース1の凹部13,14が形成されている場合においても、作業上において確認し易く、それらの長さは上述したように短いので、容易に組み付けることができる。
【0044】
また、下部ケース1および上部ケース2の先端部分にはスペーサ6、フック5の順に配置され、下部ケース1および上部ケース2の後端部分には電池ホルダ4が配置され、上部ケース2の上面にはマイクカバー3が配置される。
【0045】
そして、保持ピン8が、保持ピン孔41,25,16および保持ピン溝62に挿入される。これにより、保持ピン8によって、下部ケース1、上部ケース2、マイクカバー3、およびフック5が互いに固定され、スペーサ6は、フック5と下部ケース1および上部ケース2との間に挟まれて固定される。また、保持ピン9が、保持ピン孔18,31,76,30,17に挿入される。これにより、保持ピン9によって、下部ケース1、上部ケース2、および本体ユニット7が互いに固定される。さらに、保持ピン10が、保持ピン孔20,51,19に挿入される。これにより、保持ピン10によって、下部ケース1および電池ホルダ4が互いに固定される。
【0046】
このようにして、
図2に示すような分解状態から、
図1に示す状態へ、本実施の形態に係る補聴器が組み立てられる。
【0047】
以上のように、上記実施の形態に係る補聴器は、下部ケース1と、上部ケース2とを備える。下部ケース1は、上部ケース2の他方との接合部分に凹条11a,12aを有し、上部ケース2は、下部ケース1との接合部分に凸条21a,22aを有する。凹条11a,12aは、傾斜側面11b,12bを有し、凸条21a,22aは、傾斜側面21b,22bを有する。そして、傾斜側面11b,12bおよび傾斜側面21b,22bは、下部ケース1および上部ケース2を互いに組み付ける際に互いに接合する。
【0048】
これにより、組み付け作業が簡単な下部ケース1および上部ケース2を有する補聴器が得られる。つまり、傾斜側面11b,12bと傾斜側面21b,22bとが接合することでガタつきが生じにくいため、下部ケース1および上部ケース2の端辺部11,12,21,22を、ガタつきが生じにくくかつ組み付け作業が簡単になるように形成することができる。補聴器を持つ際に横方向の側面を指で挟んで持った際、継ぎ目に力が加わっても、構造上隙間が生じにくい。さらに、下部ケース1および上部ケース2の後端部にそれぞれ凹部13,14および凸部23,24が形成されることで、電池ホルダが開状態であっても、横方向に押し広げられることによる下部ケース1と上部ケース2との接合部分の破損や変形の発生を抑制できる。
【0049】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0050】
例えば、上記実施の形態に係る補聴器は、耳かけ型補聴器であるが、下部ケース1および上部ケース2を有する耳あな型補聴器でもよい。
【解決手段】下部ケース1および上部ケース2は互いに接続する接合部分を有する。下部ケース1および上部ケース2の一方の接合部分は鋭角な凹条で第1傾斜側面11b,12bを有し、下部ケース1および上部ケース2の他方の接合部分は鋭角な凸条で第2傾斜側面21b,22bを有する。下部ケース1および上部ケース2は、第1傾斜側面11b,12bおよび第2傾斜側面21b,22bを互いに接合されて組み付けられる。