【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理回路は、その用途によって多種多様な構成を有しているが、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタ、キャッシュメモリなど、各種の半導体記憶装置(以下、単に記憶装置とする)が設けられている。
【0007】
レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータを保持する役割を担っている。また、キャッシュメモリは、演算装置とメインメモリの間に介在し、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速化させることを目的として、CPUに設けられている。
【0008】
レジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置は、メインメモリよりも高速でデータの書き込みをおこなう必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップ回路が、キャッシュメモリとしてSRAMなどが用いられる。
【0009】
図2(A)に、レジスタを構成する記憶素子の一つを例示する。
図2(A)に示す記憶素子200は、インバータ201、インバータ202、スイッチング素子203、スイッチング素子204を有する。そして、インバータ201の入力端子への信号INの入力は、スイッチング素子203により制御されている。インバータ201の出力端子の電位は、信号OUTとして、後段の回路に与えられる。また、インバータ201の出力端子はインバータ202の入力端子にも接続されており、インバータ202の出力端子は、スイッチング素子204を介してインバータ201の入力端子に接続されている。
【0010】
スイッチング素子203を介して入力された信号INの電位は、スイッチング素子203がオフ、スイッチング素子204がオンになることで、記憶素子200内で保持される。
【0011】
図2(A)に示した記憶素子200の、より具体的な回路構成を、
図2(B)に示す。
図2(B)に示す記憶素子200は、インバータ201、インバータ202、スイッチング素子203、スイッチング素子204を有しており、これら回路素子の接続構成は
図2(A)と同じである。
【0012】
インバータ201は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ207と、nチャネル型トランジスタ208とを有している。そして、ハイレベルの電源電位VDDが与えられているノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられているノード間において、pチャネル型トランジスタ207と、nチャネル型トランジスタ208とは、直列に接続されている。
【0013】
また、同様に、インバータ202は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ209と、nチャネル型トランジスタ210とを有している。そして、ハイレベルの電源電位VDDが与えられているノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられているノード間において、pチャネル型トランジスタ209と、nチャネル型トランジスタ210とは、直列に接続されている。
【0014】
図2(B)に示すインバータ201は、pチャネル型トランジスタ207のゲート電極と、nチャネル型トランジスタ208のゲート電極に与えられる電位によって、一方がオフ、他方がオンとなるように動作する。よって、電源電位VDDが与えられているノードと、電源電位VSSが与えられているノードとの間の電流は、理想的には0になるはずである。
【0015】
しかし、実際には、オフのはずのトランジスタに僅かなオフ電流が流れているため、上記ノード間の電流は、完全に0にはならない。インバータ202についても同様の現象が生じるため、記憶素子200には、データを保持しているだけの状態でも、消費電力が発生する。
【0016】
例えば、トランジスタのサイズにもよるが、バルクのシリコンを用いて作製されたインバータの場合、室温、電源電圧が1Vの状態にて、0.1pA程度のオフ電流が生じる。
図2(A)および
図2(B)に示す記憶素子には、インバータ201とインバータ202の、2つのインバータが設けられているので、0.2pA程度のオフ電流が生じる。そして、記憶素子数が約10
7個程度であるCPUの場合、オフ電流はレジスタ全体で2μA程度となる。
【0017】
さらに、微細化の進展と共に、ゲート絶縁物も薄膜化しているため、ゲート絶縁物を介してゲートとチャネル間に流れるリーク電流(ゲートリーク電流)も無視できない大きさとなっている。
【0018】
加えて、近年では、電源電圧の低下による速度の低下を補うために、トランジスタのしきい値を低下させることがおこなわれているが、その結果、オフ電流は1つのインバータあたりさらに3桁程度増加することもある。
【0019】
これらの結果、レジスタの消費電力は回路線幅の縮小化に反して増大している。そして、電力の消費による発熱がICチップの温度の上昇を招き、さらに消費電力が増加するという悪循環に陥りつつある。
【0020】
SRAMも上記レジスタと同様に、インバータを用いた構成を有しており、トランジスタのオフ電流により電力が消費される。よって、SRAMを用いたキャッシュメモリも上記の記憶素子(レジスタ)の場合と同様に、データの書き込みがおこなわれていない状態でも、消費電力が嵩んでしまう。
【0021】
そこで、消費電力を抑えるため、データの入出力がおこなわれない期間において、記憶装置への電源電位の供給を一時的に停止するという一つの方法が提案されている。レジスタ、キャッシュメモリには、電源電位の供給が途絶えるとデータを消失してしまう揮発性の記憶装置が用いられているため、上記記憶装置の周辺に不揮発性の記憶装置を配置し、上記データをその不揮発性の記憶装置へ一時的に移している。しかし、これらの不揮発性の記憶装置は、主に磁気素子や強誘電体が用いられているため、作製工程が複雑である。
【0022】
また、CPUにおいて長時間の電源停止をおこなう際には、電源停止の前に、記憶装置内のデータをハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置に移すことで、データの消失を防ぐこともできる。しかし、それらの外部記憶装置からデータをレジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリに戻すのには時間を要する。よって、ハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置によるデータのバックアップは、消費電力の低減を目的とした短時間(例えば、100μ秒乃至1分)の電源停止には適さない。
【0023】
上述の課題に鑑み、本発明は、複雑な作製工程を必要とせず、消費電力を抑えることができる信号処理回路、当該信号処理回路の駆動方法の提供を目的の一つとする。特に、短時間の電源停止により消費電力を抑えることができる信号処理回路、当該信号処理回路の駆動方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
インバータまたはクロックドインバータなどの、入力された信号の位相を反転させて出力する論理素子(以下、位相反転素子と呼ぶ)を用いた記憶素子内に、データを保持するための容量素子と、当該容量素子における電荷の蓄積および放出を制御する容量用スイッチング素子とを設ける。
【0025】
そして、上記容量用スイッチング素子には、膜状で概略1つの平面に形成された、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン、あるいは酸化物半導体等の化合物半導体(好ましくはワイドバンドギャップ化合物半導体)をチャネル形成領域に含み、チャネル長が最小加工線幅の10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上、あるいは1μm以上であるトランジスタを用いる。このとき、トランジスタのチャネル長はチャネル幅の10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上でもよい。そして、上記記憶素子を、信号処理回路が有する、レジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリなどの記憶装置に用いる。
【0026】
なお、本明細書ではワイドバンドギャップ化合物半導体とは、2電子ボルト以上のバンドギャップを有する化合物半導体のことである。酸化物半導体以外のワイドバンドギャップ化合物半導体としては、硫化亜鉛等の硫化物や、窒化ガリウム等の窒化物が挙げられる。いずれにしても高純度化することで、ドナーやアクセプタの濃度を極めて低くすることが好ましい。
【0027】
容量用スイッチング素子は、位相反転素子の上方に重ねて形成されることが好ましく、容量用スイッチング素子に用いられる半導体層は、半導体層の上方から見て、曲がりくねった形状あるいは少なくとも1つの凹部を有する形状の領域を有し、(1つまたは複数の)位相反転素子上の領域の限られた面積に形成することで、上記のチャネル長を実現できる。
【0028】
なお、1つの容量用スイッチング素子は、複数の位相反転素子の上に重なるように形成されてもよく、1つの位相反転素子の上に、複数の容量用スイッチング素子が重なるように形成されてもよい。
【0029】
上記のレジスタあるいはSRAM等の回路は2つの位相反転素子(インバータ等)が組み合わされた回路(フリップフロップ回路等)を有するが、その回路の占有する面積は50F
2(Fは最小加工線幅)以上であり、通常は100F
2乃至150F
2である。例えば、2つのインバータが組み合わされた回路の占有する面積を50F
2とし、その半分の面積(25F
2)に容量用スイッチング素子を設ける場合、チャネル幅をFとすると、チャネル長は25Fとできる。
【0030】
また、容量素子も位相反転素子の上方に重ねて形成されることが好ましく、容量用スイッチング素子と同じ層に形成されてもよいし、異なる層に形成されてもよい。同じ層に形成すると容量用スイッチング素子のための領域と容量素子のための領域を設ける必要があるが、作製工程を簡略化できる。一方、異なる層に設けると、作製工程は余分に必要であるが、集積度を上げることや、容量素子のために使用される面積を大きくでき、容量素子の誘電体を容量用スイッチング素子のゲート絶縁物と異なるものとすることにより、より容量を高めることも可能である。
【0031】
スイッチング素子のオン抵抗と容量素子の容量は、必要とするスイッチング動作の速さに応じて決定すればよい。電源の停止と回復という目的であればスイッチングに要する時間は、100μ秒以下であれば十分である。用途によっては、100ミリ秒以上でもよい。また、スイッチング素子のオフ抵抗と容量素子の容量は、必要とするスイッチング動作の間隔に応じて決定すればよい。
【0032】
さらに、信号処理回路は、上記記憶装置に加え、記憶装置とデータのやり取りをおこなう演算回路などの各種論理回路を有する。そして、記憶装置へ電源電圧の供給を停止すると共に、当該記憶装置とデータのやり取りをおこなう演算回路への、電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。
【0033】
また、具体的に、記憶素子は、2つの位相反転素子と、容量素子と、当該容量素子における電荷の蓄積および放出を制御する容量用スイッチング素子とを少なくとも有する。記憶素子に入力されたデータを含む信号は、第1の位相反転素子の入力端子に与えられる。第1の位相反転素子の出力端子は、第2の位相反転素子の入力端子に接続されている。第2の位相反転素子の出力端子は、第1の位相反転素子の入力端子に接続されている。第1の位相反転素子の出力端子または第2の位相反転素子の入力端子の電位が、信号として後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。
【0034】
上記位相反転素子は、ゲート電極が互いに接続された少なくとも1つのpチャネル型トランジスタと、少なくとも1つのnチャネル型トランジスタとが、第1のノードと、第2のノードの間において、直列に接続された構成を有する。
【0035】
そして、容量素子は、記憶素子に入力された信号のデータを必要に応じて記憶できるように、上記容量用スイッチング素子を介して、上記信号の電位が与えられるノードに接続されている。
【0036】
第1のノードと、第2のノードの間に電源電圧が与えられている状態において、第1の位相反転素子の入力端子にデータを含む信号が入力されると、第1の位相反転素子および第2の位相反転素子によって、そのデータが保持される。第1のノードと第2のノード間への電源電圧の印加を停止する場合、電源電圧の印加を停止する前に、上記容量用スイッチング素子をオンにして、信号のデータを容量素子に記憶させる。上記構成により、位相反転素子への電源電圧の印加を停止しても、記憶素子にデータを保持させることが可能である。
【0037】
そして、上記容量用スイッチング素子に用いられるトランジスタのチャネル形成領域は、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン、あるいは化合物半導体、例えば、高純度化された酸化物半導体を含んでおり、かつ、チャネル長が十分に長いため、オフ電流が低いという特性を有している。
【0038】
一方、位相反転素子に用いられるトランジスタには、非晶質、微結晶、多結晶、または単結晶の、シリコン、ガリウム砒素、ガリウム燐、またはゲルマニウムなどの半導体を用いることができる。また、上記トランジスタは、薄膜の半導体を用いて作製されてもよいし、バルクの半導体(半導体ウェハ)を用いて作製されてもよい。
【0039】
酸化物半導体は、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物半導体、In−Sn−Zn系酸化物半導体、In−Al−Zn系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn系酸化物半導体、Al−Ga−Zn系酸化物半導体、Sn−Al−Zn系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系酸化物半導体、Sn−Zn系酸化物半導体、Al−Zn系酸化物半導体、Zn−Mg系酸化物半導体、Sn−Mg系酸化物半導体、In−Mg系酸化物半導体、In−Ga系酸化物半導体や、In系酸化物半導体、Sn系酸化物半導体、Zn系酸化物半導体などを用いることができる。
【0040】
なお、本明細書においては、例えば、In−Sn−Ga−Zn系酸化物半導体とは、インジウム(In)、錫(Sn)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する金属酸化物、という意味であり、その化学量論的組成比は特に問わない。また、上記酸化物半導体は、シリコンや硫黄、窒素等を含んでいてもよい。
【0041】
或いは、酸化物半導体は、化学式InMO
3(ZnO)
m(m>0)で表記できるものを用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一又は複数の金属元素を示す。
【0042】
酸化物半導体は比較的高い移動度(1cm
2/Vs以上、好ましくは10cm
2/Vs以上)の半導体特性を示す金属酸化物である。そして、電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物が低減されて高純度化された酸化物半導体は、I型(真性半導体、本明細書では、キャリヤ濃度が1×10
12/cm
3以下の半導体をI型という)又はI型に限りなく近い(実質的にI型)半導体である。
【0043】
具体的には、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定した酸化物半導体に含まれる水素濃度の値が、5×10
19/cm
3以下、好ましくは5×10
18/cm
3以下、より好ましくは5×10
17/cm
3以下、さらに好ましくは1×10
16/cm
3以下となるように、酸化物半導体に含まれる水分または水素などの不純物を除去する。
【0044】
上記構成により、ホール効果測定により測定できる酸化物半導体のキャリヤ密度を、1×10
14/cm
3未満、好ましくは1×10
12/cm
3未満、さらに好ましくは測定限界以下の1×10
11/cm
3未満とすることができる。即ち、酸化物半導体膜キャリヤ密度を、限りなくゼロに近づけることができる。
【0045】
また、用いる酸化物半導体のバンドギャップは2電子ボルト以上4電子ボルト以下、好ましくは2.5電子ボルト以上4電子ボルト以下、より好ましくは3電子ボルト以上4電子ボルト以下とする。このようにバンドギャップが広く、水分または水素などの不純物濃度が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体膜を用いることにより、トランジスタのオフ電流を下げることができる。
【0046】
ここで、酸化物半導体膜中および導電膜中の、水素濃度の分析について触れておく。酸化物半導体膜中および導電膜中の水素濃度測定は、SIMSでおこなう。SIMSは、その原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。
【0047】
そこで、膜中における水素濃度の厚さ方向の分布をSIMSで分析する場合、対象となる膜が存在する範囲において、値に極端な変動が無く、ほぼ一定の値が得られる領域における平均値を、水素濃度として採用する。
【0048】
また、測定の対象となる膜の厚さが小さい場合、隣接する膜内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ一定の値が得られる領域を見いだせない場合がある。この場合、当該膜が存在する領域における、水素濃度の極大値または極小値を、当該膜中の水素濃度として採用する。さらに、当該膜の存在する領域において、極大値を示す山型のピーク、極小値を示す谷型のピークが存在しない場合、変曲点の値を水素濃度として採用する。
【0049】
なお、スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物である水分または水素が多量に含まれていることが判明している。水分または水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。
【0050】
そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分または水素などの不純物を低減するために、酸化物半導体膜に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で加熱処理をおこなう。
【0051】
上記加熱処理は、300℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上750℃以下の温度範囲でおこなうのが望ましい。なお、この加熱処理は、用いる基板の耐熱温度を超えないものとする。水分または水素の加熱処理による脱離の効果については、TDS(Thermal Desorption Spectrometry;昇温脱離ガス分析法)により確認済みである。
【0052】
加熱処理は、炉での熱処理またはラピッドサーマルアニール法(RTA法)を用いる。RTA法は、ランプ光源を用いる方法と、加熱されたガス中に基板を移動させて短時間の熱処理をおこなう方法がある。RTA法を用いると熱処理に要する時間を0.1時間よりも短くすることもできる。
【0053】
具体的に、上述した加熱処理により高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタは、非常に低いオフ電流(非常に高いオフ抵抗)を示す。具体的には、例えば、チャネル幅(W)が1×10
6μm(チャネル長(L)は1μm)の素子であっても、ドレイン電圧(ソース電極とドレイン電極間の電圧)が1Vのときのオフ電流(ゲート電極とソース電極間の電圧を0V以下としたときのドレイン電流)を、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10
−13A以下とすることができる。
【0054】
この場合、オフ電流密度(チャネル幅1μmあたりのオフ電流)は、100zA/μm以下である。上述のような長チャネルかつ狭チャネルのトランジスタであれば、オフ電流は1zA以下となる。したがって、高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタは、オフ電流が結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく低い。
【0055】
上記構成を有するトランジスタを、容量素子に蓄積された電荷の放出を制御するための容量用スイッチング素子として用いることで、容量素子からの電荷のリークを防ぐことができるため、電源電圧の印加がない場合でも、データを消失させずに保持することが可能となる。
【0056】
そして、容量素子においてデータを保持している期間は、位相反転素子への電源電圧の供給をおこなわなくてもよいので、位相反転素子に用いられているトランジスタのオフ電流に起因する無駄な消費電力を削減することができ、記憶装置、ひいては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0057】
なお、容量用スイッチング素子のオフ電流は、容量素子の容量と、データを保持する時間とによって決定される。例えば、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタを容量用スイッチング素子とする場合には、上述のようにドレイン電圧1Vでオフ電流は1zA以下とできる。例えば、容量素子の容量を1fFとすれば、データは1日以上保持できる。
【0058】
一方、データの保持時間としてそれほど長時間が必要とされない場合もある。例えば、データを1秒だけ保持すればよいという場合であれば、容量素子の容量を1fFとすれば、オフ電流は0.1fA以下であればよい。
【0059】
例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン等では、高純度化された酸化物半導体のように1zA以下の低いオフ電流は実現できないが、長チャネルかつ狭チャネルとすることや、特許文献1に記載されているように、半導体層を薄くすることによりオフ電流を0.1fA以下とできる。
【0060】
なお、オフ電流は、半導体の移動度に比例するので、移動度が低いほどオフ電流が低くなる。したがって、ポリシリコンよりもアモルファスシリコンのほうがオフ電流は低くなる。一方、移動度が低い半導体を用いたトランジスタはスイッチング特性が劣るが、このことは本発明の一態様ではほとんど問題とならない。このことについては後述する。
【発明の効果】
【0061】
上記構成を有する記憶素子を、信号処理回路が有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。よって、信号処理回路全体、もしくは信号処理回路を構成する一または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止をおこなうことができるため、消費電力を抑えることができる信号処理回路、消費電力を抑えることができる当該信号処理回路の駆動方法を提供することができる。
【0062】
なお、容量用スイッチング素子のチャネル長を上記のものとすることが求められる理由はひとつには、よりオフ電流を低減させることであるが、その他に短チャネル効果を防ぐためでもある。例えば、上記のように、酸化物半導体を用いたトランジスタでは極めて小さなオフ電流が観察される。このような特性は酸化物半導体がシリコンの約3倍程度の大きなバンドギャップを有しているためである。
【0063】
バンドギャップが大きいということは、熱励起キャリヤが少ないことを意味する。例えば、室温において、シリコンでは、バンドギャップが1.1電子ボルトであるので、熱励起キャリヤは1×10
11/cm
3程度であるが、バンドギャップが3.2電子ボルトの半導体では、熱励起キャリヤは1×10
−7/cm
3程度と計算される。
【0064】
シリコンの場合、全く、不純物を含まないものを作っても、熱励起によるキャリヤが上記のように存在するため、室温での抵抗率は、1×10
5Ωcm以上にできないが、バンドギャップが3.2電子ボルトの半導体では、理論的には、1×10
30Ωcm以上の抵抗率が得られる。
【0065】
このような半導体でトランジスタを作製し、オフ状態(ゲート電極の電位がソース電極の電位と同じ状態)における高い抵抗率を用いれば、電荷を半永久的に閉じこめることも可能となる。しかしながら、この特性はチャネル長が十分に長い場合(500nm以上)においては観測されるが、チャネル長が100nm以下となると、不十分なものとなる。以下、その理由を説明する。
【0066】
酸化物半導体を用いてスイッチング素子(トランジスタ等)を作製する場合、特に亜鉛もしくはインジウムを有する酸化物半導体においては、これまで、P型の導電性を示すものはほとんど報告されていない。そのため、シリコンのトランジスタのようなPN接合を用いたものは報告されておらず、特許文献2にあるように、N型の酸化物半導体に導体電極等を接触させた導体半導体接合(学術書では、一般に金属半導体接合、Metal Insulator Junctionと言われるが、本明細書では、文言の解釈をより正確にするため、このように表現する)によって、ソース、ドレインを形成している。
【0067】
導体半導体接合によって、ソース、ドレインを形成したトランジスタでは、用いる半導体のキャリヤ濃度が大きいと、オフ状態でもソース電極とドレイン電極の間に電流(オフ電流)が流れてしまう。そこで、半導体中のキャリヤ濃度を低減させて、I型とすることにより、オフ電流を低減することができる。しかしながら、この方法だけでは、トランジスタのチャネル長を100nm以下に短くすると十分にオフ電流が低減できない。
【0068】
一般に、導体半導体接合においては、導体の仕事関数と半導体の電子親和力(あるいはフェルミ準位)の関係によって、オーミック接合になったり、ショットキーバリヤ型接合になったりする。例えば、電子親和力が4.3電子ボルトの半導体に、仕事関数3.9電子ボルトの導体を接触させ、理想的な(界面に何らトラップ準位や化合物が形成されない状態の)導体半導体接合を形成したとすると、導体から半導体へ電子が流入する。
【0069】
その場合、導体と半導体の接合界面に近いほど半導体中の電子の濃度が高くなる。接合界面から離れるにしたがって半導体中の電子濃度は低くなるものの、数μm離れた点でもI型と言えないような高い電子濃度となる。すなわち、半導体自体がI型であっても、導体との接触によって、キャリヤ濃度の高い領域ができてしまう。このようなキャリヤの多い領域が導体半導体接合界面近傍にできることにより、導体半導体接合はオーミック接合となる。
【0070】
一方、例えば、電子親和力が4.3電子ボルトの半導体に、仕事関数4.9電子ボルトの導体を接触させ、理想的な導体半導体接合を形成したとすると、半導体に存在する電子が導体へ移動する。電子がなくなった領域(空乏領域)では、当然のことながら、電子の濃度は極めて低くなる。空乏領域の幅は、半導体の電子濃度に依存し、例えば、もともとの半導体の電子濃度が1×10
18/cm
3であれば、数十nmである。
【0071】
そして、この部分の電子濃度が著しく低くなるため、バンド図においては、導体と半導体との接合界面において、バリヤができる。このようなバリヤを有する導体半導体接合をショットキーバリヤ型接合という。電子は、半導体から導体へは流れやすいが、導体から半導体へは、バリヤがあるため流れにくい。したがって、ショットキーバリヤ型接合では整流作用が観測される。
【0072】
上記のように半導体中に電子の濃度の高い領域ができたり空乏領域ができたりすることは、導体が直接、半導体に接していなくても起こる。例えば、半導体と導体との間に絶縁膜が存在する場合にも半導体の電子濃度は導体の影響を受ける。もちろん、その程度は、絶縁膜の厚さや誘電率により影響される。絶縁膜が厚くなるか、誘電率が低くなれば、導体の影響は小さくなる。
【0073】
ソース電極と半導体あるいはドレイン電極と半導体との接合は、電流が流れやすいことが好ましいので、特許文献2にあるようなトランジスタにおいては、オーミック接合となるように導体材料が選択される。例えば、チタンや窒化チタン等である。電極と半導体との接合がオーミック接合であると、得られるトランジスタの特性が安定し、良品率が高くなるというメリットもある。
【0074】
また、ゲート電極の材料としては、半導体の電子を排除する作用を有する材料が選択される。例えば、タングステンや白金、窒化インジウム等の仕事関数の大きな材料である。このような材料を用いて、チャネル長(典型的には、ソース電極とドレイン電極の間隔)Lと実効的なゲート絶縁物と半導体の厚さの和T(以下、典型的な厚さという)の比率L/Tが10以上であれば、ゲート電極とソース電極の電位を等しくしたときのオフ電流(以下、ゼロ電流という)が1×10
−16A以下のトランジスタを作製できる。
【0075】
ここで、典型的な厚さTは、T=(ゲート絶縁物の厚さ×半導体の誘電率/ゲート絶縁物の誘電率)+半導体の厚さ、で算出される。例えば、In−Ga−Zn系酸化物半導体の誘電率は、酸化シリコンの約4倍であるので、In−Ga−Zn系酸化物半導体の厚さを5nm、酸化シリコンのゲート絶縁物の厚さを15nmとすると、T=65nmであり、L/T=10を満たすには、チャネル長Lは650nm以上であることが求められる。ゲート絶縁物の厚さを5nmとするとチャネル長Lは250nmでよい。
【0076】
すなわち、よりチャネルを長く、ゲート絶縁物を薄くすると、よりゼロ電流の低いトランジスタが得られる。一方で、比率L/Tが低下し、特に比率L/Tが4以下となると、ゼロ電流をシリコンを用いたトランジスタよりも低く保つことは不可能となる。
【0077】
その原因を
図3を用いて説明する。
図3(A)には導体半導体接合を有する典型的なトランジスタの構造を示す。すなわち、半導体層301の一方の面にソース電極302とドレイン電極303を有する。また、半導体層301の他方の面にはゲート絶縁物304とゲート電極305を有する。
【0078】
ソース電極302と半導体層301、およびドレイン電極303と半導体層301との接合はオーミック接合となるように、導体が選択されており、結果として、半導体層301に電子を注入しようとする作用が発生する。そこで、ゲート電極305には半導体の電子親和力より仕事関数の大きな材料を用いることにより、ソース電極302やドレイン電極303から流入する電子を排除するようにする。
【0079】
それぞれの作用は、ソース電極302やドレイン電極303やゲート電極305からの距離に依存すると考えられる。話を単純にするため、ソース電極302やドレイン電極303が半導体層301に電子を注入しようとする力と、ゲート電極305が半導体層301から電子を排除しようとする力を等しいものと考える。すなわち、半導体層301の中で双方から同じだけ離れた場所では、それぞれの力が拮抗して、電子濃度は、もともとあった値(I型の半導体であれば熱励起による電子濃度)と等しくなるとする。
【0080】
また、ソース電極302やドレイン電極303がゲート電極305より近い場所では、前者の作用が勝り、その地点では、電子濃度がより高くなる。逆に、前者より後者の方が近い場所では、後者の作用が勝り、その地点では、電子濃度がより低くなる。
【0081】
ここで、距離について注意しておく。この場合の距離とは、空間的な距離ではなく、電磁気的な距離であるので、空間的な距離に誘電率をかけた値で比較する必要がある。
【0082】
上記の前提に基づく、
図3(A)のトランジスタの半導体層301中の電子濃度の概念的な等高線を
図3(B)に示す。ここでは、話を簡単にするために、ゲート絶縁物304の誘電率は半導体層301の誘電率と等しいものとする。また、ソース電極302、ドレイン電極303とゲート電極305の電位は等しくしてある。
【0083】
ソース電極302やドレイン電極303と半導体層301との界面付近には電子濃度の高い領域301aが存在する。そして、その次には、それよりも1桁程度電子濃度の低い領域301b、さらに、その外側には、さらに1桁程度電子濃度の低い領域301cが存在し、さらに、その外側には、さらに1桁程度電子濃度の低い領域301dが存在し、その、外側には、電子濃度がそれ以下の領域301eが存在する。
【0084】
もし、ソース電極302とドレイン電極303の距離が典型的な厚さTに比べて小さければ、
図3(B)に示すように領域301dが半導体層301のゲート電極305との反対側の面でつながることがある。これは、その領域まではゲート電極305の力が及ばず、ソース電極302やドレイン電極303の力により電子が注入されたためである。
【0085】
図3(B)においては、比率L/Tは2弱である。ソース電極302とドレイン電極303の間の距離を120nmとすれば、半導体層301の厚さは50nmであり、領域301aと領域301bとの間の等高線は、概ね、電子濃度が1×10
20/cm
3であり、領域301dと領域301eとの間の等高線は、電子濃度が1×10
17/cm
3であることを示すと考えてよい。
【0086】
図3(B)に示すように、半導体層(301)の3分の1以上は、電子濃度が1×10
17/cm
3以上であるので、ソース電極302とドレイン電極303間の電位差を1Vとした場合ゼロ電流は0.1μAも流れる(ただし、チャネル長とチャネル幅を同じものとする)。
【0087】
つまり、ゼロ電流を小さくするには、このようなゲート電極の反対側の電子濃度が無視できない領域をなくすことが必要である。そのためには、ソース電極302とドレイン電極303の間隔を、半導体層301の厚さやゲート絶縁物304の厚さに比較して、十分に大きくし、半導体層301の下部にまで、ゲート電極305の影響が十分におよび、ソース電極302とドレイン電極303の影響が及ばない領域(そのような領域は電子濃度が極めて低く、抵抗率が非常に高くなる)を形成することが必要である。
【0088】
ソース電極302とドレイン電極303の間隔を十分に長くしてもゼロ電流が十分に低くなければ、ゲート電極305の電位をソース電極302の電位よりも低くすることにより、半導体層301内の電子を排除し、半導体層301の抵抗率を高めることも求められる。
【0089】
上記の議論からも示唆されるように、トランジスタのゲート電圧(V
G)とドレイン電流(I
D)の関係(I
D−V
G曲線)は、
図3(C)に示すようなチャネル長依存性を示すことが計算から明らかとなる。
図3(C)において、2つの曲線は、いずれも、チャネル長とチャネル幅が等しいトランジスタのI
D−V
G曲線である。なお、
図3(C)に示す曲線はトランジスタの特性の変動をわかりやすく説明するためのものである。
【0090】
チャネル長とチャネル幅が等しい理想的なトランジスタではオン電流が、チャネル長によって変化することはないが、しきい値やサブスレシュホールド特性値は変化することがある。このことは、通常のMOSトランジスタでも短チャネル効果として知られている。導体半導体接合を有するトランジスタでは、
図3(C)のように、チャネル長によるしきい値やサブスレシュホールド特性値(S値)が変化する。
【0091】
図3(C)において、long channelと表記されたトランジスタのチャネル長は、short channelと表記されたトランジスタのチャネル長の20倍程度のものである。このように、チャネル長が短くなるにしたがって、ゲート電極の電圧をソース電極と同じ0Vとしたときのドレイン電流(すなわち、ゼロ電流)が増加し、また、曲線の傾きが緩慢になる(S値が増加する)。したがって、本発明の容量用スイッチング素子として用いるには十分に長いチャネルを有するトランジスタであることが好ましい。
【0092】
なお、上記の議論は、チャネル形成領域の不純物濃度が著しく小さいシリコン等においても同様であり、この場合も、ソースやドレインからのキャリヤがチャネル形成領域に侵入してゼロ電流が無視できない大きさとなる。したがって、容量用スイッチング素子として、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン等を用いる場合で、かつ、チャネル形成領域の不純物濃度を著しく小さくする場合には、長チャネルとすると、十分に低いオフ電流が得られる。
【0093】
このような長チャネルかつ狭チャネルなトランジスタでは、オン抵抗が高く、十分なスイッチング性能が得られないことが懸念される。しかしながら、電源の停止と回復という操作は、論理回路のクロックに比較すると極めて遅い動きでもよい。すなわち、スイッチングに要する時間は100μ秒以下であれば十分であり、場合によっては、1m秒あるいはそれ以上でもよい。
【0094】
なぜなら、各記憶素子のフリップフロップ回路に保持されていたデータを容量素子に移す過程あるいはその逆の過程は全ての記憶素子で同時におこなうことができるからである。そのような低速動作であれば、長チャネルかつ狭チャネルなトランジスタでも十分である。また、半導体の移動度も1cm
2/Vs以上であればよい。
【0095】
一般に、トランジスタのオン電流I
onとオフ電流I
off、スイッチングに要する時間τ
onとデータを保持する時間τ
offとの間には、τ
off/τ
on〜I
on/I
off×1/100、という関係がある。したがって、オン電流I
onがオフ電流I
offの10
8倍であれば、τ
offはτ
onの10
6倍程度である。例えば、容量用スイッチング素子が容量素子に電荷を取り込むのに要する時間として1μ秒必要であれば、その容量素子と容量用スイッチング素子は1秒間データを保持できる。もし、データを保持する期間が1秒を超える場合には、保持したデータをフリップフロップ回路等に戻して、増幅し、その後、再び、容量素子に取り込む操作(リフレッシュ)を1秒ごとに繰り返せばよい。
【0096】
また、容量素子に関しても、容量が大きい方が、データをフリップフロップ回路に戻す際のエラーが発生しにくい。一方で、容量が大きいと、容量素子と容量用スイッチング素子とで構成される回路の応答速度が低下する。しかしながら、上述のように、電源の停止と回復という操作は、論理回路のクロック等に比較すると極めて遅い動きでもよいので、容量が1pF以下であれば何ら妨げとなるものではない。
【0097】
なお、DRAMに見られるように、一般に容量素子の容量を大きくする場合には、容量素子を形成することが困難となる。しかしながら、本発明の一態様では、面積が50F
2以上の位相反転素子の上に容量素子を形成すればよいので、面積が8F
2以下の領域に容量素子を形成するDRAMに比べると十分に容易であり、特殊な作製方法が要求されないプレーナ型の容量素子でもよい。
【0098】
さらに、容量用スイッチング素子として用いるトランジスタを長チャネルかつ狭チャネルとすることでトランジスタのオフ電流を小さくでき、また、配線の寄生容量の影響も小さいので、容量素子の容量はDRAMで使用されるもの(約30fF)より十分に小さくてもよい。
【0099】
なお、位相反転素子から容量素子に電荷を移す際に、電荷の移動が急激に起こると、位相反転素子の安定性が損なわれ、位相反転素子に保持されていたデータが破壊されてしまうことがある。この際には、容量素子には誤ったデータが保持されることとなる。
【0100】
このような問題点を避けるためには、容量用スイッチング素子のオン電流をある程度低くするとよい。上記のように長チャネルかつ狭チャネルなトランジスタ、あるいは、移動度が10cm
2/Vs以下のトランジスタはこの目的に適している。
【0101】
本発明の一態様によって、データを容量素子に退避させて保持でき、記憶素子の電源を停止できるので、記憶素子内の位相反転素子に用いるトランジスタのしきい値を低くしてもよい。すなわち、高速かつ省電力な記憶素子となる。
【発明を実施するための形態】
【0103】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0104】
また、本明細書において接続とは電気的な接続を意味しており、電流、電圧または電位が、供給可能、或いは伝送可能な状態に相当する。従って、接続している状態とは、直接接続している状態を必ずしも指すわけではなく、電流、電圧または電位が、供給可能、或いは伝送可能であるように、配線、抵抗などの回路素子を介して間接的に接続している状態も、その範疇に含む。
【0105】
また、回路図上は独立している構成要素どうしが接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っているだけの場合もある。本明細書において接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0106】
また、トランジスタが有するソース(あるいはソース電極)とドレイン(あるいはドレイン電極)は、トランジスタの極性および各電極に与えられる電位の高低差によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、nチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がソース(あるいはソース電極)と呼ばれ、高い電位が与えられる電極がドレイン(あるいはドレイン電極)と呼ばれる。また、pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がドレイン(あるいはドレイン電極)と呼ばれ、高い電位が与えられる電極がソース(あるいはソース電極)と呼ばれる。
【0107】
本明細書では、便宜上、ソース(あるいはソース電極)とドレイン(あるいはドレイン電極)とが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係に従ってソース(あるいはソース電極)とドレイン(あるいはドレイン電極)の呼び方が入れ替わる。したがって、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。そこで、本書類(明細書、特許請求の範囲又は図面など)においては、ソース及びドレインとして機能する領域を、ソースもしくはドレインと呼ばない場合がある。その場合、一例としては、それぞれを第1端子、第2端子と表記する場合がある。あるいは、それぞれを第1の電極、第2の電極と表記する場合がある。あるいは、それぞれを第1の領域、第2の領域と表記する場合がある。あるいは、ソース領域、ドレイン領域と表記する場合がある。
【0108】
なお、本明細書において、トランジスタが直列に接続されている状態とは、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方のみが、第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方のみに接続されている状態を意味する。また、トランジスタが並列に接続されている状態とは、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方が、第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方に接続され、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極の他方が第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極の他方に接続されている状態を意味する。
【0109】
なお、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロコントローラを含むLSI(Large Scale Integrated Circuit)などの集積回路が、本発明の信号処理回路の範疇に含まれるがこれらに限定されない。
【0110】
(実施の形態1)
本発明の一態様に係る記憶装置は、1ビットのデータを記憶することができる記憶素子を、1つまたは複数有する。
図1(A)に、本発明の記憶装置が有する記憶素子の、回路図の一例を示す。
図1(A)に示す記憶素子100は、入力された信号の位相を反転させて出力する第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102と、スイッチング素子103と、スイッチング素子104と、容量素子105と、容量用スイッチング素子106とを、少なくとも有する。
【0111】
記憶素子100に入力されたデータを含む信号INは、スイッチング素子103を介して第1の位相反転素子101の入力端子に与えられる。第1の位相反転素子101の出力端子は、第2の位相反転素子102の入力端子に接続されている。第2の位相反転素子102の出力端子は、スイッチング素子104を介して、第1の位相反転素子101の入力端子に接続されている。第1の位相反転素子101の出力端子または第2の位相反転素子102の入力端子の電位が、信号OUTとして後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。
【0112】
なお、
図1(A)では、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102としてインバータを用いる例を示しているが、第1の位相反転素子101または第2の位相反転素子102として、インバータの他に、クロックドインバータを用いることもできる。
【0113】
容量素子105は、記憶素子100に入力された信号INのデータを必要に応じて記憶できるように、スイッチング素子103および容量用スイッチング素子106を介して、記憶素子100の入力端子、すなわち信号INの電位が与えられるノードに接続されている。具体的に、容量素子105は、一対の電極間に誘電体を有するコンデンサであり、その一方の電極は、容量用スイッチング素子106を介して第1の位相反転素子101の入力端子に接続され、他方の電極は、ローレベルの電源電位VSS、接地電位などの固定電位が与えられているノードに接続されている。
【0114】
また、容量用スイッチング素子106には、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いている。
【0115】
なお、記憶素子100は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタ、キャパシタなどその他の回路素子を、さらに有していてもよい。
【0116】
次いで、
図1(A)で示した記憶素子の、より具体的な回路図の一例を、
図1(B)に示す。
図1(B)に示す記憶素子100は、第1の位相反転素子101と、第2の位相反転素子102と、スイッチング素子103と、スイッチング素子104と、容量素子105と、容量用スイッチング素子106とを有しており、これら回路素子の接続構成は
図1(A)と同じである。
【0117】
そして、
図1(B)において第1の位相反転素子101は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ107と、nチャネル型トランジスタ108とが、ハイレベルの電源電位VDDが与えられる第1のノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられる第2のノードの間において、直列に接続された構成を有する。
【0118】
具体的には、pチャネル型トランジスタ107のソース電極が、電源電位VDDの与えられる第1のノードに接続され、nチャネル型トランジスタ108のソース電極が、電源電位VSSの与えられる第2のノードに接続される。
【0119】
また、pチャネル型トランジスタ107のドレイン電極と、nチャネル型トランジスタ108のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第1の位相反転素子101の出力端子の電位とみなすことができる。
【0120】
また、pチャネル型トランジスタ107のゲート電極、およびnチャネル型トランジスタ108のゲート電極の電位は、第1の位相反転素子101の入力端子の電位とみなすことができる。
【0121】
また、
図1(B)において第2の位相反転素子102は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ109と、nチャネル型トランジスタ110とが、ハイレベルの電源電位VDDが与えられる第1のノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられる第2のノードの間において、直列に接続された構成を有する。
【0122】
具体的には、pチャネル型トランジスタ109のソース電極が、電源電位VDDの与えられる第1のノードに接続され、nチャネル型トランジスタ110のソース電極が、電源電位VSSの与えられる第2のノードに接続される。
【0123】
また、pチャネル型トランジスタ109のドレイン電極と、nチャネル型トランジスタ110のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第2の位相反転素子102の出力端子の電位とみなすことができる。
【0124】
また、pチャネル型トランジスタ109のゲート電極、およびnチャネル型トランジスタ110のゲート電極の電位は、第2の位相反転素子102の入力端子の電位とみなすことができる。
【0125】
また、
図1(B)では、スイッチング素子103として1つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig1によりスイッチングが制御される。また、スイッチング素子104として1つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig2によりスイッチングが制御される。
【0126】
なお、
図1(B)では、スイッチング素子103と、スイッチング素子104が、それぞれトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、スイッチング素子103またはスイッチング素子104が、トランジスタを複数有していてもよい。
【0127】
スイッチング素子103またはスイッチング素子104が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0128】
また、複数のトランジスタを並列に接続する場合、それらの極性を異なるものとしても良く、例えば、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタを並列に接続した、いわゆるトランスファーゲート構造としてもよい。
【0129】
また、
図1(B)では、容量用スイッチング素子106として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig3によりスイッチングが制御される。
【0130】
容量用スイッチング素子106に用いるトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有し、また、そのチャネル長は、最小加工線幅の10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上、あるいは1μm以上であるため、そのオフ電流は、上述したとおり著しく低い。
【0131】
図1(B)では、容量用スイッチング素子106がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、容量用スイッチング素子106が、トランジスタを複数有していてもよい。
【0132】
容量用スイッチング素子106が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0133】
また、実施の形態では、少なくとも、容量用スイッチング素子106においてスイッチング素子として用いられるトランジスタが、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有していればよい。
【0134】
第1の位相反転素子101、第2の位相反転素子102、スイッチング素子103、またはスイッチング素子104に用いられるトランジスタは、酸化物半導体以外の、非晶質、微結晶、多結晶、または単結晶の、シリコン、ゲルマニウム、砒化ガリウム、リン化ガリウム、リン化インジウムなどの半導体を用いることができる。また、これらのトランジスタは、薄膜を用いて作製されてもよいし、バルク(半導体ウェハ)を用いていて作製されてもよい。
【0135】
図7を用いて本実施の形態の記憶素子の回路配置例を説明する。
図7(A)には1つの記憶素子160のレイアウトを示す。記憶素子160は
図1の記憶素子100に相当する。記憶素子160の主要部分であるインバータ等は公知の半導体技術を用いて形成すればよい。すなわち、半導体ウェハ上に素子分離のためのShallow Trench Isolation(STI)領域、n型領域およびp型領域を形成し、その上にゲート層である第1層配線と、さらにその上に第2層配線を形成する。
【0136】
第1層配線の一部は、信号Sig1を供給するためのSig1配線162であり、また、一部は信号Sig2を供給するためのSig2配線163である。さらに、第2層配線の一部はVDDを供給するためのVDD配線161であり、また、一部は信号INを入力するためのIN配線164である。
図7(A)には上方に接続するためのコンタクトホールの位置も示す。なお、単結晶半導体ウェハを用いた回路では、VSSは半導体ウェハから供給するとよい。
【0137】
また、その上層には、
図7(B)に示すように、第3層配線が設けられ、その一部はコンタクトホールを介して第2層配線の一部と接続し、信号OUTを出力するためのOUT配線165となる。また、第3層配線の一部はスイッチング素子である酸化物半導体を用いたトランジスタのドレイン電極166およびソース電極167となる。ドレイン電極166は、コンタクトホールを介して第2層配線の一部と接続する。また、ソース電極167はその後、
図1の容量素子105に相当する素子の電極の一部となる。
【0138】
第3層配線の上には、酸化物半導体層(OS層)を形成する。
図7(C)に示すように酸化物半導体層の一部は、酸化物半導体層の上方から見て、少なくとも1つの凹部を有し、例えば、U字型の形状の酸化物半導体領域168とする。酸化物半導体領域168はその他にも、J字型、L字型、V字型、あるいはC字型の形状としてもよい。また、2つ以上の凹部を有する形状(例えば、M字型、N字型、S字型、W字型、Z字型その他)、あるいはその他の折り曲がった形状であってもよい。
【0139】
より一般的に定義すると、1つの記憶素子の典型的な長さを記憶素子の占有面積の平方根と定義するとき、酸化物半導体領域168の一端から他端までの長さが上記典型的な長さ以上、好ましくは典型的な長さの2倍以上、より好ましくは5倍以上であるとよい。あるいは、酸化物半導体領域168の外周の長さが典型的な長さの2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上であるとよい。
【0140】
あるいは、酸化物半導体領域168の面積をその周囲の長さで除した数値が典型的な長さの0.1倍以下であるとよい。
【0141】
このような形状とすることで、酸化物半導体領域168の一端から他端までの長さを記憶素子160の長辺よりも長くできる。例えば、最小加工線幅をFとするとき、一端から他端までの長さを10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上とできる。このような形状の酸化物半導体領域168を用いて形成されるトランジスタ(
図1の容量用スイッチング素子106に相当する)のチャネル長は10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上とできる。
図7(C)の場合は、酸化物半導体領域168の一端から他端までの長さは約28Fである。
【0142】
酸化物半導体層の上には、
図7(D)に示すように第4層配線が設けられる。第4層配線の一部は、ゲート配線169、容量配線170となる。ゲート配線169は酸化物半導体領域168の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上と重なるように形成するとよい。ゲート配線169の一部は、
図1の容量用スイッチング素子106のゲート電極となる。なお、ゲート配線169には信号Sig3が供給される。また、容量配線170はソース電極167の一部と重なって
図1の容量素子105の一部となる。
図7(D)の場合、容量素子の電極面積(2つの電極が重なっている部分の面積)は8F
2である。
【0143】
図8には、
図7の一点鎖線X−Yに沿った記憶素子160の断面構造を模式的に示す。なお、
図8のハッチングが
図7と同じ場合には、
図8においても同じものを指し示すものとする。
【0144】
図8(A)は、
図7(B)の段階での断面構造を示す。半導体ウェハ表面にSTI171、n型領域、p型領域さらには、第1層配線、第2層配線で回路が形成される。n型領域、p型領域、第1層配線と第2層配線との間には、層間絶縁物172が設けられ、それらの間に電気的な接続が必要な場合にはコンタクトプラグ173が設けられる。さらに上層には、第3層配線によってドレイン電極166とソース電極167が埋め込み絶縁物174に埋め込まれた状態で設けられる。
【0145】
図8(B)は、
図7(D)の段階での断面構造を示す。
図8(A)で説明した構造物の上に、さらに酸化物半導体層(酸化物半導体領域168等)とゲート絶縁物175、および第4層配線(ゲート配線169や容量配線170)を形成する。ここで、酸化物半導体層の厚さは1nm乃至30nm、好ましくは1nm乃至10nm、ゲート絶縁物175の厚さは2nm乃至30nm、好ましくは5nm乃至10nmとするとよい。
【0146】
また、特許文献3のように、酸化物半導体層に1つあるいは複数の仕事関数が大きな材料が接するように構成してもよい。このようにすると、酸化物半導体層を空乏化することができ、オフ抵抗を高める上で効果がある。
【0147】
本実施の形態においては酸化物半導体層の品質が重視されるので、高純度化された酸化物半導体(膜)を用いるとよい。そのような酸化物半導体(膜)の作製方法の詳細は実施の形態4で説明する。
【0148】
次いで、
図1(A)に示す記憶素子の動作の一例について説明する。なお、以下の説明以外の方法で記憶素子を動作させることもできる。
【0149】
まず、データの書き込み時において、スイッチング素子103はオン、スイッチング素子104はオフ、容量用スイッチング素子106はオフとする。そして、第1のノードに電源電位VDDを与え、第2のノードに電源電位VSSを与える。
【0150】
記憶素子100に与えられる信号INの電位は、スイッチング素子103を介して第1の位相反転素子101の入力端子に与えられるので、第1の位相反転素子101の出力端子は、信号INの電位の位相が反転した電位になる。そして、スイッチング素子104をオンにし、第1の位相反転素子101の入力端子と第2の位相反転素子102の出力端子とを接続することで、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102にデータが書き込まれる。
【0151】
次いで、入力されたデータの保持を、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によっておこなう場合、スイッチング素子104をオン、容量用スイッチング素子106をオフの状態にしたままで、スイッチング素子103をオフにする。
【0152】
スイッチング素子103をオフにすることで、入力されたデータは、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によって保持される。このとき、第1のノードに電源電位VDDを与え、第2のノードに電源電位VSSを与えることで、第1のノードと第2のノード間に電源電圧が印加されている状態を維持する。
【0153】
そして、第1の位相反転素子101の出力端子の電位には、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によって保持されているデータが反映されている。よって、上記電位を読み取ることで、データを記憶素子100から読み出すことができる。
【0154】
なお、データの保持時における消費電力を削減するために、入力されたデータの保持を、容量素子105においておこなう場合には、まず、スイッチング素子103はオフ、スイッチング素子104はオンとしたまま、容量用スイッチング素子106をオンとする。そして、容量用スイッチング素子106を介して、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によって保持されているデータの値に見合った量の電荷が容量素子105に蓄積されることで、容量素子105へのデータの書き込みがおこなわれる。
【0155】
容量素子105にデータが記憶された後、容量用スイッチング素子106をオフにすることで、容量素子105に記憶されたデータは保持される。容量用スイッチング素子106をオフにした後は、第1のノードと第2のノードとを共に、例えば電源電位VSSの等電位とする。なお、容量素子105にデータが記憶された後は、スイッチング素子104をオフにしてもよい。
【0156】
このように、入力されたデータの保持を容量素子105においておこなう場合は、第1のノードと第2のノード間に電源電圧を印加する必要がないので、第1の位相反転素子101が有するpチャネル型トランジスタ107およびnチャネル型トランジスタ108、或いは、第2の位相反転素子102が有するpチャネル型トランジスタ109およびnチャネル型トランジスタ110を介して、第1のノードと第2のノードの間に流れるオフ電流を限りなく0にすることができる。
【0157】
したがって、データの保持時における記憶素子のオフ電流に起因する消費電力を大幅に削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0158】
また、容量用スイッチング素子106に用いられているトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に用いているので、そのオフ電流密度を、100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下にすることができる。
【0159】
長チャネルかつ狭チャネルのトランジスタであれば、オフ電流は1zA以下となる。その結果、上記トランジスタを用いた容量用スイッチング素子106がオフである時、容量素子105に蓄積された電荷は殆ど放電しないため、データは保持される。
【0160】
また、容量素子105に記憶されているデータを読み出す場合は、スイッチング素子103をオフとする。そして、再び、第1のノードに電源電位VDDを与え、第2のノードに電源電位VSSを与えることで、第1のノードと第2のノード間に電源電圧を印加する。そして、容量用スイッチング素子106をオンにすることで、データが反映された電位を有する信号OUTを、記憶素子100から読み出すことができる。
【0161】
以上では、容量用スイッチング素子106として、高純度化された酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを使用する例を示したが、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン等を用いた薄膜トランジスタを用いてもよい。
【0162】
その場合は、オフ電流が、高純度化された酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタより大きくなるので、データを保持する時間は短くなる。しかしながら、定期的にデータを第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102に出力し、その後、データを容量素子105に戻す操作を繰り返すこと(リフレッシュ)により、データを保持し続けることができる。
【0163】
なお、この場合のリフレッシュは、DRAMの場合のリフレッシュとは異なり、リフレッシュが必要とされる全ての記憶素子において同時におこなうことができる。そのため、全体の記憶素子がリフレッシュに要する時間はDRAMの場合に比較して極めて短い。もちろん、必要とするブロックの記憶素子ごとに順次、リフレッシュしてもよい。
【0164】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の記憶装置が有する記憶素子の、別の一例について説明する。
図4(A)に、本実施の形態の記憶素子の回路図を、一例として示す。
【0165】
図4(A)に示す記憶素子120は、入力された信号の位相を反転させて出力する第1の位相反転素子121、第2の位相反転素子122および第3の位相反転素子127と、スイッチング素子123と、スイッチング素子124と、スイッチング素子128と、スイッチング素子129と、容量素子125と、容量用スイッチング素子126とを、少なくとも有する。なお、スイッチング素子128は設けなくてもよい。
【0166】
記憶素子120に入力されたデータを含む信号INは、スイッチング素子123を介して第1の位相反転素子121の入力端子に与えられる。第1の位相反転素子121の出力端子は、第2の位相反転素子122の入力端子に接続されている。第2の位相反転素子122の出力端子は、スイッチング素子124を介して、第1の位相反転素子121の入力端子に接続されている。第1の位相反転素子121の出力端子または第2の位相反転素子122の入力端子の電位は、スイッチング素子128を介して、信号OUTとして後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。
【0167】
容量素子125は、記憶素子120に入力された信号INのデータを必要に応じて記憶できるように、容量用スイッチング素子126を介して、記憶素子120の入力端子、すなわち信号INの電位が与えられるノードに接続されている。具体的に、容量素子125は、一対の電極間に誘電体を有するコンデンサであり、その一方の電極は、容量用スイッチング素子126を介して信号INの電位が与えられるノードに接続され、他方の電極は、ローレベルの電源電位VSS、接地電位などの固定電位が与えられているノードに接続されている。
【0168】
また、容量素子125の上記一方の電極は、第3の位相反転素子127の入力端子に接続される。第3の位相反転素子127の出力端子の電位は、スイッチング素子129を介して、信号OUTとして後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。
【0169】
なお、
図4(A)では、第1の位相反転素子121、第2の位相反転素子122および第3の位相反転素子127としてインバータを用いる例を示しているが、第1の位相反転素子121、第2の位相反転素子122または第3の位相反転素子127として、インバータの他に、クロックドインバータを用いることもできる。
【0170】
また、容量用スイッチング素子126は、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いる。容量用スイッチング素子126は、実施の形態1の容量用スイッチング素子106と同様に、第1の位相反転素子121、第2の位相反転素子122および第3の位相反転素子127の上方に酸化物半導体を用いて形成し、そのチャネル長を10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上とするとよい。
【0171】
なお、記憶素子120は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタ、キャパシタなどのその他の回路素子を、さらに有していてもよい。
【0172】
次いで、
図4(A)で示した記憶素子の、より具体的な回路図の一例を、
図5に示す。
図5に示す記憶素子120は、第1の位相反転素子121、第2の位相反転素子122、第3の位相反転素子127、スイッチング素子123、スイッチング素子124、スイッチング素子128、スイッチング素子129、容量素子125、容量用スイッチング素子126を少なくとも有しており、これら回路素子の接続構成は
図4(A)と同じである。なお、スイッチング素子123は信号Sig.1で、スイッチング素子124は信号Sig.2で、スイッチング素子128は信号Sig.5で、スイッチング素子129は信号Sig.4、容量用スイッチング素子126は信号Sig.3で制御される。
【0173】
そして、
図5において第1の位相反転素子121は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ130と、nチャネル型トランジスタ131とが、ハイレベルの電源電位VDDが与えられる第1のノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられる第2のノードの間において、直列に接続された構成を有する。
【0174】
具体的には、pチャネル型トランジスタ130のソース電極が、電源電位VDDの与えられる第1のノードに接続され、nチャネル型トランジスタ131のソース電極が、電源電位VSSの与えられる第2のノードに接続される。
【0175】
また、pチャネル型トランジスタ130のドレイン電極と、nチャネル型トランジスタ131のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第1の位相反転素子121の出力端子の電位とみなすことができる。
【0176】
また、pチャネル型トランジスタ130のゲート電極、およびnチャネル型トランジスタ131のゲート電極の電位は、第1の位相反転素子121の入力端子の電位とみなすことができる。
【0177】
また、
図5において第2の位相反転素子122は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ132と、nチャネル型トランジスタ133とが、ハイレベルの電源電位VDDが与えられる第1のノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられる第2のノードの間において、直列に接続された構成を有する。
【0178】
具体的には、pチャネル型トランジスタ132のソース電極が、電源電位VDDの与えられる第1のノードに接続され、nチャネル型トランジスタ133のソース電極が、電源電位VSSの与えられる第2のノードに接続される。
【0179】
また、pチャネル型トランジスタ132のドレイン電極と、nチャネル型トランジスタ133のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第2の位相反転素子122の出力端子の電位とみなすことができる。
【0180】
また、pチャネル型トランジスタ132のゲート電極、およびnチャネル型トランジスタ133のゲート電極の電位は、第2の位相反転素子122の入力端子の電位とみなすことができる。
【0181】
また、
図5において第3の位相反転素子127は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ134と、nチャネル型トランジスタ135とが、ハイレベルの電源電位VDDが与えられる第3のノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられる第4のノードの間において、直列に接続された構成を有する。
【0182】
具体的には、pチャネル型トランジスタ134のソース電極が、電源電位VDDの与えられる第3のノードに接続され、nチャネル型トランジスタ135のソース電極が、電源電位VSSの与えられる第4のノードに接続される。
【0183】
また、pチャネル型トランジスタ134のドレイン電極と、nチャネル型トランジスタ135のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第3の位相反転素子127の出力端子の電位とみなすことができる。
【0184】
また、pチャネル型トランジスタ134のゲート電極、およびnチャネル型トランジスタ135のゲート電極の電位は、第3の位相反転素子127の入力端子の電位とみなすことができる。
【0185】
なお、上記第1のノードと第3のノードは、電気的に接続された一つのノードであってもよい。また、上記第2のノードと第4のノードも、電気的に接続された一つのノードであってもよい。
【0186】
図5では、スイッチング素子123として一つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig1によりスイッチングが制御される。また、
図5では、スイッチング素子124として一つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig2によりスイッチングが制御される。また、
図5では、スイッチング素子129として一つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig4によりスイッチングが制御される。
【0187】
なお、
図5では、スイッチング素子123、スイッチング素子124、スイッチング素子129が、それぞれトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、スイッチング素子123、スイッチング素子124、またはスイッチング素子129が、トランジスタを複数有していてもよい。
【0188】
スイッチング素子123、スイッチング素子124、またはスイッチング素子129が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0189】
また、
図5では、容量用スイッチング素子126として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig3によりスイッチングが制御される。
【0190】
容量用スイッチング素子126に用いるトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有し、かつ、チャネル長が十分に長いため、そのオフ電流は、上述したとおり著しく低い。
【0191】
そして、
図5では、容量用スイッチング素子126がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、容量用スイッチング素子126が、トランジスタを複数有していてもよい。
【0192】
容量用スイッチング素子126が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0193】
また、本実施の形態では、少なくとも、容量用スイッチング素子126においてスイッチング素子として用いられるトランジスタが、化合物半導体、例えば、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有する。
【0194】
一方、第1の位相反転素子121、第2の位相反転素子122、第3の位相反転素子127、スイッチング素子123、スイッチング素子124、スイッチング素子128、スイッチング素子129に用いられるトランジスタは、非晶質、微結晶、多結晶、または単結晶の、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体を用いることができる。また、これらのトランジスタは、薄膜の半導体を用いて作製されてもよいし、バルクの半導体を用いて作製されてもよい。
【0195】
次いで、
図4(A)に示す記憶素子の動作の一例について説明する。なお、以下の説明以外の方法で記憶素子を動作させることもできる。
【0196】
まず、データの書き込み時において、スイッチング素子123はオン、スイッチング素子124はオフ、スイッチング素子128はオフ、スイッチング素子129はオフ、容量用スイッチング素子126はオンとする。そして、第1のノードに電源電位VDDを与え、第2のノードに電源電位VSSを与えることで、第1のノードと第2のノード間に電源電圧が印加される。
【0197】
記憶素子120に与えられる信号INの電位は、スイッチング素子123を介して第1の位相反転素子121の入力端子に与えられるので、第1の位相反転素子121の出力端子は、信号INの電位の位相が反転した電位になる。そして、スイッチング素子124をオンにし、第1の位相反転素子121の入力端子と第2の位相反転素子122の出力端子とを接続することで、第1の位相反転素子121および第2の位相反転素子122にデータが書き込まれる。
【0198】
また、データの書き込み時では、容量用スイッチング素子126を介して、信号INのデータの値に見合った量の電荷が容量素子125に蓄積されることで、容量素子125にもデータが書き込まれる。
【0199】
なお、データの書き込み時において、第3のノードと第4のノード間に電源電圧を印加する必要はない。よって、例えば、第3のノードと第4のノードとに、例えば電源電位VSSを与えて等電位とする。
【0200】
次いで、入力されたデータの保持を、第1の位相反転素子121および第2の位相反転素子122によっておこなう場合、スイッチング素子124をオン、スイッチング素子128をオフ、スイッチング素子129をオフにした状態で、スイッチング素子123をオフ、容量用スイッチング素子126をオフにする。
【0201】
スイッチング素子123をオフにすることで、入力されたデータは、第1の位相反転素子121および第2の位相反転素子122によって保持される。このとき、第1のノードに電源電位VDDを与え、第2のノードに電源電位VSSを与えることで、第1のノードと第2のノード間に電源電圧が印加されている状態を維持する。
【0202】
また、容量用スイッチング素子126をオフにすることで、容量素子125に書き込まれたデータも、保持される。
【0203】
そして、第1の位相反転素子121の出力端子の電位には、第1の位相反転素子121および第2の位相反転素子122によって保持されているデータが反映されている。よって、スイッチング素子128をオンにして上記電位を読み取ることで、データを記憶素子120から読み出すことができる。
【0204】
なお、データの保持時における消費電力を削減するために、入力されたデータの保持を、容量素子125のみにおいておこなう場合は、第1のノードと第2のノードとに、例えば電源電位VSSを与えて等電位とすることで、第1のノードと第2のノード間の電源電圧の印加を停止する。第1のノードと第2のノード間の電源電圧の印加を停止すると、第1の位相反転素子121および第2の位相反転素子122において保持されているデータは消えるが、容量素子125に書き込まれたデータは、そのまま保持される。
【0205】
このように、入力されたデータの保持を容量素子125においておこなう場合は、第1のノードと第2のノード間に電源電圧を印加する必要がないので、第1の位相反転素子121が有するpチャネル型トランジスタ130およびnチャネル型トランジスタ131、或いは、第2の位相反転素子122が有するpチャネル型トランジスタ132およびnチャネル型トランジスタ133を介して、第1のノードと第2のノードの間に流れるオフ電流を、限りなく0にすることができる。
【0206】
したがって、保持時における記憶素子のオフ電流に起因する消費電力を大幅に削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0207】
また、入力されたデータの保持を容量素子125においておこなう場合、第3のノードと第4のノード間に電源電圧を印加する必要がない。よって、第3の位相反転素子127が有するpチャネル型トランジスタ134およびnチャネル型トランジスタ135を介して、第3のノードと第4のノードの間に流れるオフ電流を限りなく0にすることができる。
【0208】
したがって、保持時における記憶素子のオフ電流に起因する消費電力を大幅に削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0209】
また、容量用スイッチング素子126に用いられているトランジスタは、例えば、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に用いているので、そのオフ電流密度を、100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下にすることができる。
【0210】
よって、高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタは、オフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく低い。その結果、上記トランジスタを用いた容量用スイッチング素子126がオフである時、容量素子125に蓄積された電荷は殆ど放電しないため、データは保持される。
【0211】
なお、容量素子125に記憶されているデータを読み出す場合は、第3のノードに電源電位VDDを与え、第4のノードに電源電位VSSを与えることで、第3のノードと第4のノード間に電源電圧を印加する。第3のノードと第4のノード間に電源電圧が与えられると、第3の位相反転素子127の出力端子には、入力端子の電位の位相が反転した電位が与えられる。
【0212】
なお、第3の位相反転素子127の入力端子には、容量素子125に蓄積されている電荷量に見合った高さの電位が与えられるので、その出力端子の電位にはデータが反映される。よって、スイッチング素子129をオンにすることで、データが反映された電位を有する信号OUTを、記憶素子120から読み出すことができる。
【0213】
また、本実施の形態は以上の構成に限定されない。
図1(A)で示した記憶素子100と同様に、容量用スイッチング素子126を、スイッチング素子123を介して、記憶素子120の入力端子、すなわち信号INの電位が与えられるノードに接続させることも可能である。このとき、第1の位相反転素子121、第2の位相反転素子122および第3の位相反転素子127と、スイッチング素子123と、スイッチング素子124と、スイッチング素子128と、スイッチング素子129と、容量素子125との接続関係は、
図4(A)と同様である。
【0214】
なお、データの保持時における消費電力を削減するために、第1の位相反転素子121と第2の位相反転素子122に入力されたデータの保持を、容量素子125においておこなう場合には、まず、スイッチング素子123はオフ、スイッチング素子124はオンとしたまま、スイッチング素子128はオフ、スイッチング素子129はオフとし、容量用スイッチング素子126をオンとする。そして、容量用スイッチング素子126を介して、第1の位相反転素子121および第2の位相反転素子122によって保持されているデータの値に見合った量の電荷が容量素子125に蓄積されることで、容量素子125へのデータの書き込みがおこなわれる。
【0215】
容量素子125にデータが記憶された後、容量用スイッチング素子126をオフにすることで、容量素子125に記憶されたデータは保持される。容量用スイッチング素子126をオフにした後は、第1のノードと第2のノードとを共に、例えば電源電位VSSの等電位とする。なお、容量素子125にデータが記憶された後は、スイッチング素子124をオフにしてもよい。
【0216】
このように、入力されたデータの保持を容量素子125においておこなう場合は、第1のノードと第2のノード間に電源電圧を印加する必要がないので、第1の位相反転素子121が有するpチャネル型トランジスタ130およびnチャネル型トランジスタ131、或いは、第2の位相反転素子122が有するpチャネル型トランジスタ132およびnチャネル型トランジスタ133を介して、第1のノードと第2のノードの間に流れるオフ電流を限りなく0にすることができる。
【0217】
したがって、データの保持時における記憶素子のオフ電流に起因する消費電力を大幅に削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0218】
本実施の形態で開示された事項は、他の実施の形態で開示された事項と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0219】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の記憶装置が有する記憶素子の、別の一例について説明する。
図4(B)に、本実施の形態の記憶素子の回路図を、一例として示す。
【0220】
図4(B)に示す記憶素子140は、入力された信号の位相を反転させて出力する第1の位相反転素子141および第2の位相反転素子142と、スイッチング素子143と、スイッチング素子144と、容量素子145と、容量用スイッチング素子146と、容量素子147と、容量用スイッチング素子148とを、少なくとも有する。
【0221】
記憶素子140に入力されたデータを含む信号INは、スイッチング素子143を介して第1の位相反転素子141の入力端子に与えられる。第1の位相反転素子141の出力端子は、第2の位相反転素子142の入力端子に接続されている。第2の位相反転素子142の出力端子は、スイッチング素子144を介して、第1の位相反転素子141の入力端子に接続されている。第1の位相反転素子141の出力端子または第2の位相反転素子142の入力端子の電位は、信号OUTとして後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。
【0222】
容量素子145は、記憶素子140に入力された信号INのデータを必要に応じて記憶できるように、スイッチング素子143および容量用スイッチング素子146を介して、記憶素子140の入力端子、すなわち信号INの電位が与えられるノードに接続されている。具体的に、容量素子145は、一対の電極間に誘電体を有するコンデンサであり、その一方の電極は、容量用スイッチング素子146を介して第1の位相反転素子141の入力端子に接続され、他方の電極は、ローレベルの電源電位VSS、接地電位などの固定電位が与えられているノードに接続されている。
【0223】
容量素子147は、容量素子145と同様に、記憶素子140に入力された信号INのデータを必要に応じて記憶できるように、スイッチング素子143、第1の位相反転素子141および容量用スイッチング素子148を介して、記憶素子140の出力端子、すなわち信号OUTの電位が与えられるノードに接続されている。
【0224】
具体的に、容量素子147は、一対の電極間に誘電体を有するコンデンサであり、その一方の電極は、容量用スイッチング素子148を介して第1の位相反転素子141の出力端子に接続され、他方の電極は、ローレベルの電源電位VSS、接地電位などの固定電位が与えられているノードに接続されている。
【0225】
なお、
図4(B)では、第1の位相反転素子141、第2の位相反転素子142としてインバータを用いる例を示しているが、第1の位相反転素子141または第2の位相反転素子142として、インバータの他に、クロックドインバータを用いることもできる。
【0226】
また、容量用スイッチング素子146および容量用スイッチング素子148は、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いている。容量用スイッチング素子146および容量用スイッチング素子148は、実施の形態1の容量用スイッチング素子106と同様に、第1の位相反転素子141および第2の位相反転素子142の上方に酸化物半導体を用いて形成し、そのチャネル長を10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上とするとよい。
【0227】
なお、記憶素子140は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタ、キャパシタなどその他の回路素子を、さらに有していてもよい。
【0228】
次いで、
図4(B)で示した記憶素子の、より具体的な回路図の一例を、
図6に示す。
図6に示す記憶素子140は、第1の位相反転素子141、第2の位相反転素子142、スイッチング素子143、スイッチング素子144、容量素子145、容量用スイッチング素子146、容量素子147、容量用スイッチング素子148を少なくとも有しており、これら回路素子の接続構成は
図4(B)と同じである。
【0229】
そして、
図6において第1の位相反転素子141は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ149と、nチャネル型トランジスタ150とが、ハイレベルの電源電位VDDが与えられる第1のノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられる第2のノードの間において、直列に接続された構成を有する。
【0230】
具体的に、pチャネル型トランジスタ149のソース電極が、電源電位VDDの与えられる第1のノードに接続され、nチャネル型トランジスタ150のソース電極が、電源電位VSSの与えられる第2のノードに接続される。
【0231】
また、pチャネル型トランジスタ149のドレイン電極と、nチャネル型トランジスタ150のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第1の位相反転素子141の出力端子の電位とみなすことができる。
【0232】
また、pチャネル型トランジスタ149のゲート電極、およびnチャネル型トランジスタ150のゲート電極の電位は、第1の位相反転素子141の入力端子の電位とみなすことができる。
【0233】
また、
図6において第2の位相反転素子142は、ゲート電極が互いに接続されたpチャネル型トランジスタ151と、nチャネル型トランジスタ152とが、ハイレベルの電源電位VDDが与えられる第1のノードと、ローレベルの電源電位VSSが与えられる第2のノードの間において、直列に接続された構成を有する。
【0234】
具体的に、pチャネル型トランジスタ151のソース電極が、電源電位VDDの与えられる第1のノードに接続され、nチャネル型トランジスタ152のソース電極が、電源電位VSSの与えられる第2のノードに接続される。
【0235】
また、pチャネル型トランジスタ151のドレイン電極と、nチャネル型トランジスタ152のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第2の位相反転素子142の出力端子の電位とみなすことができる。
【0236】
また、pチャネル型トランジスタ151のゲート電極、およびnチャネル型トランジスタ152のゲート電極の電位は、第2の位相反転素子142の入力端子の電位とみなすことができる。
【0237】
また、
図6では、スイッチング素子143としてトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig1によりスイッチングが制御される。また、スイッチング素子144としてトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig2によりスイッチングが制御される。
【0238】
なお、
図6では、スイッチング素子143、スイッチング素子144が、それぞれトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、スイッチング素子143またはスイッチング素子144が、トランジスタを複数有していてもよい。
【0239】
スイッチング素子143またはスイッチング素子144が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0240】
また、
図6では、容量用スイッチング素子146として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig3によりスイッチングが制御される。容量用スイッチング素子146に用いるトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有し、かつ、チャネル長が十分に長いため、そのオフ電流は、上述したとおり著しく低い。
【0241】
また、
図6では、容量用スイッチング素子148として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig4によりスイッチングが制御される。容量用スイッチング素子148に用いるトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有し、かつ、チャネル長が十分に長いため、そのオフ電流は、上述したとおり著しく低い。
【0242】
そして、
図6では、容量用スイッチング素子146または容量用スイッチング素子148がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、容量用スイッチング素子146または容量用スイッチング素子148が、トランジスタを複数有していてもよい。
【0243】
容量用スイッチング素子146または容量用スイッチング素子148が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0244】
また、本実施の形態では、少なくとも、容量用スイッチング素子146または容量用スイッチング素子148において、スイッチング素子として用いられるトランジスタが、化合物半導体、例えば、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有する。
【0245】
一方、第1の位相反転素子141、第2の位相反転素子142、スイッチング素子143、スイッチング素子144に用いられるトランジスタは、酸化物半導体以外の、非晶質、微結晶、多結晶、または単結晶の、シリコンまたはゲルマニウムなどの半導体を用いることができる。また、上記トランジスタは、薄膜の半導体を用いていてもよいし、バルクの半導体を用いて作製されてもよい。
【0246】
次いで、
図4(B)または
図6に示す記憶素子の動作の一例について説明する。なお、以下の説明以外の方法で記憶素子を動作させることもできる。
【0247】
まず、データの書き込み時において、スイッチング素子143はオン、スイッチング素子144はオフ、容量用スイッチング素子146はオフ、容量用スイッチング素子148はオフとする。そして、第1のノードに電源電位VDDを与え、第2のノードに電源電位VSSを与えることで、第1のノードと第2のノード間に電源電圧が印加される。
【0248】
記憶素子140に与えられる信号INの電位は、スイッチング素子143を介して第1の位相反転素子141の入力端子に与えられるので、第1の位相反転素子141の出力端子は、信号INの電位の位相が反転した電位になる。そして、スイッチング素子144をオンにし、第1の位相反転素子141の入力端子と第2の位相反転素子142の出力端子とを接続することで、第1の位相反転素子141および第2の位相反転素子142にデータが書き込まれる。
【0249】
次いで、入力されたデータの保持を、第1の位相反転素子141および第2の位相反転素子142によっておこなう場合、スイッチング素子144をオン、容量用スイッチング素子146をオフ、容量用スイッチング素子148をオフの状態にしたままで、スイッチング素子143をオフにする。スイッチング素子143をオフにすることで、入力されたデータは、第1の位相反転素子141および第2の位相反転素子142によって保持される。
【0250】
このとき、第1のノードに電源電位VDDを与え、第2のノードに電源電位VSSを与えることで、第1のノードと第2のノード間に電源電圧が印加されている状態を維持する。
【0251】
そして、第1の位相反転素子141の出力端子の電位には、第1の位相反転素子141および第2の位相反転素子142によって保持されているデータが反映されている。よって、上記電位を読み取ることで、データを記憶素子140から読み出すことができる。
【0252】
なお、データの保持時における消費電力を削減するために、入力されたデータの保持を、容量素子145、容量素子147においておこなう場合は、スイッチング素子143をオフ、スイッチング素子144をオン、容量用スイッチング素子146をオン、容量用スイッチング素子148をオンとする。
【0253】
そして、容量用スイッチング素子146を介して、第1の位相反転素子141および第2の位相反転素子142に保持されているデータの値に見合った量の電荷が、容量素子145に蓄積されることで、容量素子145へのデータの書き込みがおこなわれる。
【0254】
また、容量用スイッチング素子148を介して、第1の位相反転素子141および第2の位相反転素子142に保持されているデータの値に見合った量の電荷が、容量素子147に蓄積されることで、容量素子147へのデータの書き込みがおこなわれる。なお、容量素子145が有する一対の電極間の電圧と、容量素子147が有する一対の電極間の電圧は、その極性が逆になる。
【0255】
容量素子145にデータが記憶された後、容量用スイッチング素子146をオフにすることで、容量素子145に記憶されたデータは保持される。また、容量素子147にデータが記憶された後、容量用スイッチング素子148をオフにすることで、容量素子147に記憶されたデータは保持される。
【0256】
容量用スイッチング素子146、容量用スイッチング素子148をオフにした後は、第1のノードと第2のノードとに、例えば電源電位VSSを与えて等電位とすることで、第1のノードと第2のノード間の電源電圧の印加を停止する。
【0257】
このように、入力されたデータの保持を容量素子145および容量素子147においておこなう場合は、第1のノードと第2のノード間に電源電圧を印加する必要がないので、第1の位相反転素子141が有するpチャネル型トランジスタ149およびnチャネル型トランジスタ150、或いは、第2の位相反転素子142が有するpチャネル型トランジスタ151およびnチャネル型トランジスタ152を介して、第1のノードと第2のノードの間に流れるオフ電流を、限りなく0にすることができる。
【0258】
したがって、保持時における記憶素子のオフ電流に起因する消費電力を大幅に削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0259】
また、容量用スイッチング素子146および容量用スイッチング素子148に用いられているトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に用いているので、そのオフ電流密度を、100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下にすることができる。
【0260】
その結果、上記トランジスタを用いた容量用スイッチング素子146がオフである時、容量素子145に蓄積された電荷は殆ど放電しないため、データは保持される。また、上記トランジスタを用いた容量用スイッチング素子148がオフである時、容量素子147に蓄積された電荷は殆ど放電しないため、データは保持される。
【0261】
なお、容量素子145および容量素子147に記憶されているデータを読み出す場合は、第1のノードに電源電位VDDを与え、第2のノードに電源電位VSSを与えることで、第1のノードと第2のノード間に電源電圧を印加する。
【0262】
この状態で、容量用スイッチング素子146をオンとする。第1のノードと第2のノード間に電源電圧が与えられると、第1の位相反転素子141の出力端子には、入力端子の電位の位相が反転した電位が与えられる。なお、第1の位相反転素子141の入力端子には、容量素子145に蓄積されている電荷量に見合った高さの電位が与えられるので、その出力端子の電位にはデータが反映される。
【0263】
また、容量用スイッチング素子148をオンにすることで、容量素子147に蓄積されている電荷量に見合った高さの電位が、第1の位相反転素子141の出力端子に与えられる。よって、データが反映された電位を有する信号OUTを、記憶素子140から読み出すことができる。
【0264】
本実施の形態で開示された事項は、他の実施の形態で開示された事項と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0265】
(実施の形態4)
本実施の形態では、酸化物半導体膜の形成方法について、
図8を参照して説明する。埋め込み絶縁物174上に、必要な厚さの酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)および酸素混合雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。酸化物半導体膜には、上述したような酸化物半導体を用いることができる。
【0266】
なお、酸化物半導体膜をスパッタ法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタをおこない、埋め込み絶縁物174の表面に付着している塵埃を除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。また、アルゴン雰囲気に酸素、亜酸化窒素などを加えた雰囲気でおこなってもよい。また、アルゴン雰囲気に塩素、四フッ化炭素などを加えた雰囲気でおこなってもよい。
【0267】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、およびZn(亜鉛)を含む金属酸化物ターゲットを用いたスパッタ法により得られる膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物非単結晶膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記ターゲットとして、例えば、各金属の原子の組成比がIn:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、またはIn:Ga:Zn=1:1:2である金属酸化物ターゲットを用いることができる。
【0268】
本実施の形態では、後に加熱処理をおこない意図的に結晶化させるため、結晶化が生じやすい金属酸化物ターゲットを用いることが好ましい。また、In、Ga、およびZnを含む金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、形成される酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減することができ、電気特性または信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0269】
減圧状態の処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素および水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして絶縁表面上に酸化物半導体膜を成膜する。成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としてもよい。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減し、また、結晶性を高めることができる。さらには、スパッタリングによる損傷が軽減される。
【0270】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(H
2O)など水素原子を含む化合物(好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0271】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を170mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下とした条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生するパーティクルと呼ばれる塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは1nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0272】
なお、酸化物半導体膜に水素、水酸基および水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で基板を予備加熱し、基板に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。
【0273】
次いで、加熱処理をおこない、酸化物半導体膜の表面から結晶を成長させることで、少なくとも一部が結晶化された、或いは単結晶となった、酸化物半導体膜を得る。加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。結晶層は、表面から内部に向かって結晶成長し、2nm以上10nm以下の平均厚さを有する板状結晶である。また、表面に形成される結晶層は、その表面にa−b面を有し、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている。本実施の形態では、加熱処理によって酸化物半導体膜全体を結晶化(CG(Co−growing)結晶とも呼ぶ)させてもよい。
【0274】
なお、加熱処理においては、窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。また、H
2Oが20ppm以下の乾燥空気雰囲気下で加熱処理をおこなってもよい。本実施の形態では、乾燥空気雰囲気下で700℃、1時間の加熱処理をおこなう。
【0275】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理をおこなう装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0276】
例えば、加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAをおこなってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0277】
次いで、フォトリソグラフィ法を用いて酸化物半導体膜の形状を実施の形態1で説明した形状に加工することで、酸化物半導体領域168をそれぞれ形成する。なお、このレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0278】
本実施の形態で開示された事項は、他の実施の形態で開示された事項と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0279】
(実施の形態5)
図9(A)に、上記実施の形態で説明した記憶素子を記憶装置として用いた、本発明の一態様に係る信号処理回路の一例を示す。本発明の一態様に係る信号処理回路は、一または複数の演算装置と、一または複数の記憶装置とを少なくとも有する。具体的に、
図9(A)に示す信号処理回路400は、演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406、電源制御回路407を有する。
【0280】
演算回路401、演算回路402は、単純な論理演算をおこなう論理回路をはじめ、加算器、乗算器、さらには各種演算装置などを含む。そして、記憶装置403は、演算回路401における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。記憶装置404は、演算回路402における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。
【0281】
また、記憶装置405はメインメモリとして用いることができ、制御装置406が実行するプログラムをデータとして記憶する、或いは演算回路401、演算回路402からのデータを記憶することができる。
【0282】
制御装置406は、信号処理回路400が有する演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405の動作を統括的に制御する回路である。なお、
図9(A)では、制御装置406が信号処理回路400の一部である構成を示しているが、制御装置406は信号処理回路400の外部に設けられていてもよい。
【0283】
上記実施の形態で説明した記憶素子を記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405の少なくとも1つに用いることで、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405への電源電圧の供給の一部もしくは全部を停止しても、データを保持することができる。よって、信号処理回路400全体への電源電圧の供給の一部もしくは全部を停止し、消費電力を抑えることができる。
【0284】
例えば、記憶装置403、記憶装置404、または記憶装置405のいずれか一つまたは複数への電源電圧の供給を停止し、消費電力を抑えることができる。あるいは、例えば、
図1に示される記憶素子100へのVDDおよびVSSの供給を停止し、Sig3は何らかの人為的な電位(特に接地電位よりも0.5V乃至1.5V低い電位)とすることも消費電力を低減する上では有効である。
【0285】
Sig3を上記の電位とする際には、容量用スイッチング素子106のゲート電極と酸化物半導体領域の間を流れると考えられるが、実際にはその値を測定できないほど微小であるため、電力の消費にはつながらない。これに対し、記憶素子100へVDDとVSSを供給すると、インバータの貫通電流が生じ、相当量の電力を消費することとなる。したがって、VDDおよびVSSの供給を停止することによる消費電力削減の効果は絶大である。
【0286】
なお、記憶装置への電源電圧の供給が停止されるのに合わせて、当該記憶装置とデータのやり取りをおこなう演算回路または制御回路への、電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。例えば、演算回路401と記憶装置403において、動作がおこなわれない場合、演算回路401および記憶装置403への電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。
【0287】
また、電源制御回路407は、信号処理回路400が有する演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406へ供給する電源電圧の大きさを制御する。電源制御回路は、上記のように、必要に応じて、VDD、VSSおよびSig3の電位を制御し、最も効果的に電力を削減することができる。
【0288】
電源電圧の供給を停止する場合、電源制御回路407において供給の停止をおこなってもよいし、演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406のそれぞれにおいて供給の停止をおこなってもよい。
【0289】
すなわち、電源電圧の供給を停止するためのスイッチング素子は、電源制御回路407に設けられていてもよいし、演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406のそれぞれに設けられていてもよい。後者の場合、電源制御回路407は、必ずしも本発明の信号処理回路に設ける必要はない。
【0290】
なお、メインメモリである記憶装置405と、演算回路401、演算回路402、制御装置406の間に、キャッシュメモリとして機能する記憶装置を設けてもよい。キャッシュメモリを設けることで、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理などの信号処理を高速化させることができる。キャッシュメモリとして機能する記憶装置にも、上述した記憶素子を用いることで、信号処理回路400の消費電力を抑えることができる。
【0291】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る信号処理回路の一つである、CPUの構成について説明する。
【0292】
図9(B)に、本実施の形態のCPUの構成を示す。
図9(B)に示すCPUは、基板410上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)411、演算回路コントローラ(ALU Controller)412、命令デコーダー(Instruction Decoder)413、割り込みコントローラ(Interrupt Controller)414、タイミングコントローラ(Timing Controller)415、レジスタ(Register)416、レジスタコントローラ(Register Controller)417、バスインターフェース(Bus I/F)418、書き換え可能なROM419、ROMインターフェース(ROM I/F)420を主に有している。
【0293】
ROM419およびROMインターフェース420は、別チップに設けてもよい。勿論、
図9(B)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0294】
バスインターフェース418を介してCPUに入力された命令は、命令デコーダー413に入力され、デコードされた後、演算回路コントローラ412、割り込みコントローラ414、レジスタコントローラ417、タイミングコントローラ415に入力される。
【0295】
演算回路コントローラ412、割り込みコントローラ414、レジスタコントローラ417、タイミングコントローラ415は、デコードされた命令に基づき、各種制御をおこなう。具体的に演算回路コントローラ412は、演算回路411の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込みコントローラ414は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ417は、レジスタ416のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ416の読み出しや書き込みをおこなう。
【0296】
またタイミングコントローラ415は、演算回路411、演算回路コントローラ412、命令デコーダー413、割り込みコントローラ414、レジスタコントローラ417の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ415は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0297】
本実施の形態のCPUでは、レジスタ416に、上記実施の形態で示した構成を有する記憶素子を設けるとよい。レジスタコントローラ417は、演算回路411からの指示に従い、レジスタ416における保持動作の選択をおこなう。すなわち、レジスタ416が有する記憶素子において、位相反転素子によるデータの保持をおこなうか、容量素子によるデータの保持をおこなうかを、選択する。
【0298】
位相反転素子によるデータの保持が選択されている場合、レジスタ416内の記憶素子への、電源電圧の供給がおこなわれる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えがおこなわれ、レジスタ416内の記憶素子への電源電圧の供給を停止することができる。
【0299】
この様にして、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減をおこなうことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUを停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0300】
本実施の形態では、CPUを例に挙げて説明したが、本発明の信号処理回路はCPUに限定されず、DSP、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。また、本発明に示す信号処理回路を用いることで、信頼性が高い電子機器、消費電力の低い電子機器を提供することが可能である。
【0301】
特に外部より電力の供給を常時受けることが困難な携帯用の電子機器の場合、本発明の一態様に係る消費電力の低い信号処理回路をその構成要素に追加することにより、連続使用時間を長くできるといったメリットが得られる。
【0302】
本発明の一態様に係る信号処理回路は、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。
【0303】
その他に、本発明の一態様に係る信号処理回路を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。