特許第6247441号(P6247441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247441
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】受電装置及び非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20171204BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20171204BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20171204BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H02J50/10
   H02J50/80
   H02J7/00 301D
   H01F38/14
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-2251(P2013-2251)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-135836(P2014-135836A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優希
(72)【発明者】
【氏名】牧田 和政
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−291177(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/032309(WO,A1)
【文献】 特開2008−206296(JP,A)
【文献】 特開2010−226925(JP,A)
【文献】 特開2002−084686(JP,A)
【文献】 特開2013−005699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
38/18
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電コイルと、
インピーダンスを整合させる整合回路部と、
インピーダンス変換を行う変換回路部と、
負荷部を備え、
前記負荷部は電力制御部と整流回路部と二次電池を有し、
前記電力制御部は前記変換回路部と前記整流回路部を接続する常時閉のスイッチを備え、
前記変換回路部の入力インピーダンスは前記変換回路部の出力インピーダンスよりも高く、
前記受電コイルにより受電した電力は、前記整合回路部、及び前記変換回路部を介して前記負荷部へ送電され、
前記負荷部へ送電された電力は、前記電力制御部から前記整流回路部を介して前記二次電池へ送電され、
前記二次電池へ送電される電力が過大な場合、または前記整流回路部が過熱した場合に、前記スイッチを開いて送電を制限する受電装置と、
送電装置を備え、
前記受電装置における前記電力制御部が前記送電装置に対する負荷変調通信機能を有することを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記受電装置から前記送電装置に負荷変調通信を行うことにより、
前記送電装置から送電される電力を制御することを特徴とする請求項に記載の非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で電力を受電する受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電装置から受電装置へ電磁誘導により非接触で電力伝送を行う技術が提案されている。
【0003】
電磁誘導により電力伝送を行うためには、時間変化する磁場を発生させなければならないが、このような変動磁場の周波数が高い場合は、送電装置、受電装置内部での電力の反射損失が無視できなくなるため、例えば特許文献1のようなインピーダンス整合技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−110154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、インピーダンス整合により受電装置内部での反射損失が最小化されていたとしても、受電装置における受電コイルに対して不適切なインピーダンスが選択されていれば、電力伝送時に受電コイルに過電流が生じることで受電コイル自身が発熱し、劣化する可能性があるという課題がある。
【0006】
すなわち、本発明の目的は、受電装置内部で過剰な電流が発生することによる受電コイルの発熱劣化を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を、本発明は、受電コイルと、インピーダンスを整合させる整合回路部と、インピーダンス変換を行う変換回路部と、負荷部を備え、前記受電コイルにより受電した電力は、前記整合回路部、及び前記変換回路部を介して前記負荷部へ送電され、前記変換回路部の入力インピーダンスは、前記変換回路部の出力インピーダンスよりも高いことを特徴とする受電装置により、受電コイル及び整合回路のインピーダンスを高め、通電電流値を削減することで解決する。
【0008】
なお、前記負荷部が整流回路部と二次電池を有し、前記負荷部へ送電された電力が前記整流回路部を介して前記二次電池へ送電される構成では、特に二次電池の充電時に負荷部のインピーダンスが低くなるため、本発明による受電コイルの過電流に対する保護が必要となる。
【0009】
また、前記負荷部は電力制御部をさらに有し、前記負荷部へ送電された電力が前記電力制御部を介して前記整流回路部へ送電される構成とすることで、二次電池への送電電力が電力制御部により制御できると共に、整流回路部へ送電される電力を電力制御部により制御することになるため、電力制御による電力の時間変動を整流回路部により吸収させることができる。
【0010】
また、上記受電装置と、送電装置を備え、前記受電装置における前記電力制御部が前記送電装置に対する負荷変調通信機能を有すること非接触電力伝送システムとすることで、新たに負荷変調回路を設けずとも、電力制御部だけで負荷変調通信と電力制御を行うことができる。
【0011】
また、前記受電装置から前記送電装置に負荷変調通信を行うことにより、前記送電装置から送電される電力を制御することで、送電装置からの電力そのものも制御できるようになるため、望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、インピーダンス変換回路部によって主に受電コイルのインピーダンスを高く設定することにより、受電コイル及びその周辺への過電流通電を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明における実施形態1の送電装置、及び受電装置を示す回路ブロック図である。
図2】本発明における実施形態1の受電装置の回路図であり、図1における受電装置の具体例を図2(a)〜図2(d)に示している。
図3】本発明における実施形態2の送電装置、及び受電装置を示す回路ブロック図である。
図4】本発明における実施形態2の受電装置の回路図であり、図3における受電装置の具体例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明における実施形態1の送電装置、及び受電装置を示す回路ブロック図である。
【0015】
送電装置1は、交流電力を発生させる発振回路部11、交流電力を増幅させる増幅回路部12、インピーダンス整合を行う整合回路部13、電磁誘導により電力の送電を行う送電コイル部14を備えている。
【0016】
受電装置2は、電磁誘導により電力の受電を行う受電コイル部21、インピーダンス整合を行う整合回路部22、インピーダンス変換を行う変換回路部23、負荷部24を備えている。さらに負荷部24は、交流電力より直流電力への変換を行う整流回路部241、送電電力を受けて充電する二次電池242により構成されている。
【0017】
送電装置1から受電装置2への電磁誘導による非接触電力伝送は、以下の経路で行われる。
【0018】
まず発振回路部11の交流電力を増幅回路部12で増幅し、整合回路部13によりインピーダンス整合を行うことで電力の反射損失を防ぎ、送電コイル部14と受電コイル部21の間の磁気結合により送電装置1より受電装置2へ電力伝送を行う。
【0019】
次に、整合回路部22によりインピーダンス整合を行うことで電力の反射損失を防ぎ、変換回路部23によりインピーダンス変換を行い、整流回路部241により直流電力に変換し、直流電力を二次電池242に供給する。
【0020】
なお、整合回路部13、22に高周波ノイズを除去するためのローパスフィルタ、直流信号を除去するためのハイパスフィルタ、両方を兼ねたバンドパスフィルタを設けても良い。
【0021】
なお、二次電池242を直流電力で駆動する電子回路や電子機器等に置き換えてもよい。
【0022】
また、送電コイル部14及び受電コイル部21は、例えば導体線を渦巻状またはらせん状に巻いたループコイルや、導体箔を渦巻状またはらせん状にパターン形成したプリント基板等により構成してもよい。
【0023】
また、電力伝送時は送電コイル部14と受電コイル部21が互いに平行となるよう対向させることで確実に磁気結合をさせることができる。
【0024】
ここで、インピーダンス整合を行う上では、整合回路部22があるために、変換回路部23は一見すると不要であるように思える。
【0025】
しかし、受電装置2における変換回路部23により、変換回路部23の入力インピーダンスを、変換回路部23の出力インピーダンスより高くするよう設定し、受電コイル部21及び整合回路部22の電圧振幅を耐圧の許容範囲を限度として高めることで電流振幅が抑えられるため、受電コイル部21のジュール熱等により過熱劣化することを防ぐことができ、整合回路部22への過電流通電を防ぐことにも繋がる。
【0026】
なお、変換回路部23としては、例えばトランスのようなインピーダンスの大きさを変換することを目的とする回路を用いることができる。また、整合回路部22としては、主にインダクタとコンデンサを組み合わせた整合回路が用いることができ、主にインピーダンスのリアクタンス成分を整合させることを目的とする回路が用いられる。
【0027】
図2は、本発明における実施形態1の受電装置の回路図であり、図1における受電装置の具体例を図2(a)〜図2(d)に示している。
【0028】
図2(a)における受電装置は、整合回路部22が並列コンデンサと直列コンデンサによって構成され、変換回路部23がトランスによって構成され、整流回路部241がダイオードブリッジによる全波整流回路と平滑コンデンサによって構成されている。なお、変換回路部23はトランスであるため、巻き数比により任意のインピーダンス比を設定することができる。
【0029】
図2(b)における受電装置は、変換回路部23を、整合回路部22からの入力に対してインダクタL、Lを直列接続したものを接続し、そのうちのインダクタLの両端部を整流回路部241に接続する構成としている点が図2(a)と異なる。図2(b)の場合、変換回路部23のインピーダンス比は(L+L:Lとなる。
【0030】
図2(c)における受電装置は、変換回路部23を直列インダクタと並列コンデンサにより構成している点が図2(a)と異なる。インダクタとコンデンサの定数により任意のインピーダンス比を設定することができる。なお、図2(d)における受電装置のように、変換回路部23を直列コンデンサと並列インダクタにより構成してもよい。
【0031】
すなわち本発明は、受電コイル部21と、インピーダンスを整合させる整合回路部22と、インピーダンス変換を行う変換回路部23と、負荷部25を備え、受電コイル部21は、整合回路部22、及び変換回路部23を介して負荷部24へ接続され、変換回路部23の入力インピーダンスは、変換回路部23の出力インピーダンスよりも高い受電装置2の実施形態を取り得る。
【0032】
さらに本発明は、負荷部24は整流回路部241と二次電池242を有し、負荷部24へ送電された電力は、整流回路部241を介して二次電池242へ送電される受電装置2の実施形態を取り得る。
【0033】
(実施形態2)
図3は、本発明における実施形態2の送電装置、及び受電装置を示す回路ブロック図である。
【0034】
図3は、実施形態1の図1における変換回路部23と整流回路部241の間に、電力制御部243を追加した構成となっている。
【0035】
電力制御部243は、変換回路部23から整流回路部241へ送電される電力を半導体スイッチ等の開閉により制御することができる。ここで、電力制御部243は変換回路部23の出力側に接続されているためインピーダンスが低くなり、電力制御部243へ加わる電圧振幅が小さいために、内部を構成する半導体スイッチ等として耐圧が低いものも用いることができるようになる。
【0036】
図4は、本発明における実施形態2の受電装置の回路図であり、図3における受電装置の具体例を示している。
【0037】
図4は、実施形態1の図2(c)における整流回路部241と二次電池242の間に、電力制御部243を追加した構成となっている。
【0038】
ここで、電力制御部243のスイッチSWを常時閉、スイッチSWを常時開としておく。
【0039】
二次電池242への供給電力が過大であったり、整流回路部241の回路部品が過熱したりするような場合は、電力制御部243のスイッチSWを開くことで送電を制限し、電力制御部243より先に接続される整流回路部241や二次電池242などを保護することができる。
【0040】
なお、電力制御部243のスイッチSW、SWは半導体スイッチとすることが望ましく、この場合には周期的にスイッチSWを開閉することで変調された電力が、整流回路部241における平滑コンデンサで平滑化され、二次電池242に安定した直流電力を送電することができる。
【0041】
また、電力制御部243のスイッチSWを開閉することで送電装置への負荷変調通信を行うこともできる。
【0042】
二次電池242が二次電池で、既に満充電である場合には負荷変調の信号レベルが低下してしまうが、スイッチSWを閉じて抵抗Rを擬似負荷とすることで負荷変調の信号レベルを確保することができる。
【0043】
また、電力制御部243のスイッチSWの開閉により送電装置への負荷変調通信を行うことで送電コイルからの送電電力を制御し、受電装置内部の過熱や過電圧を防いでもよい。
【0044】
すなわち本発明は、実施形態1に加え、受電装置2と、送電装置1を備え、受電装置2における電力制御部243が送電装置1に対して負荷変調通信機能を有する非接触電力伝送システムの実施形態を取り得る。
【0045】
さらに本発明は、受電装置2から送電装置1に負荷変調通信を行うことにより、送電装置1から送電される電力を制御する非接触電力伝送システムの実施形態を取り得る。
【0046】
本発明の範囲は上記実施形態に限らず、上記実施形態を組み合わせた構成を含み、さらに技術常識により拡張された範囲までをも含むものである。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
実施例1は、受電装置として図2(c)の構成を用いた。
【0048】
二次電池242は電圧値が5V、電流値が1Aで充電される二次電池であり、入力インピーダンスは5Ωとなる。
【0049】
整流回路部241は二次電池242と等価なインピーダンスとみなせるため、入力インピーダンスは同様に5Ωとなる。
【0050】
ここで、送電装置からの変動磁場の周波数を13.56MHzとする。
【0051】
これにより変換回路部23は、コンデンサを1015pF、2つのインダクタを51nHとすることで、出力インピーダンスに対する入力インピーダンスを4倍に変換するよう設定する。
【0052】
一方、受電コイル部21の抵抗値は1Ω、インダクタンスは586nHであるため、整合回路部22の並列コンデンサを182pF、2つの直列コンデンサを105pFとすることで、整合回路部22の出力インピーダンスを変換回路部23の入力インピーダンスである20Ωと整合させる。
【0053】
ここで、送電装置と受電装置による非接触電力伝送システム全体の電力伝送効率が50%で、各回路での電力損失が無視できるほど小さい場合、図示されない送電コイル部と受電コイル部21の結合係数は0.5となる。
【0054】
送電コイル部から10Wの電力を送電した場合には、受電コイル部21は5Wの電力を受電し、変換回路部23までのインピーダンスが20Ωであることから、電力=インピーダンス×電流値より、5W=20Ω×0.5A×0.5Aの関係が成立し、受電コイル部21に流れる電流値は0.5Aとなる。
【0055】
受電コイル部21の抵抗値が1Ωであることより、受電コイル部21で発生するジュール熱は、1Ω×0.5A×0.5A=0.25Wに通電時間を掛けたものとなる。
【0056】
(比較例1)
実施例1における変換回路部23を設けず、整合回路部22と整流回路部241を直接接続する。
【0057】
また、整合回路部22で、受電コイル部21と整流回路部241の入力インピーダンス5Ωと整合するようコンデンサの定数を設定する。
【0058】
他は実施例1と同様の条件とすると、受電コイル部21は5Wの電力を受電し、整流回路部241までのインピーダンスが5Ωであることから、電力=インピーダンス×電流値より、5W=5Ω×1A×1Aの関係が成立し、受電コイル部21に流れる電流値は1Aとなる。
【0059】
受電コイル部21の抵抗値が1Ωであることより、受電コイル部21で発生するジュール熱は、1Ω×1A×1A=1Wに通電時間を掛けたものとなる。
【0060】
(結果比較)
受電コイル部21で発生するジュール熱は、実施例1の方が比較例1よりも小さく、4分の1にまで改善されている。
【符号の説明】
【0061】
1 送電装置
2 受電装置
11 発振回路部
12 増幅回路部
13、22 整合回路部
14 送電コイル部
21 受電コイル部
23 変換回路部
24 負荷部
241 整流回路部
242 二次電池
243 電力制御部
、L インダクタ
SW、SW スイッチ
R 抵抗
図1
図2
図3
図4