(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被施療者が着座する座部と、被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に内蔵されて被施療者への施療を実行する施療機構とを少なくとも備える椅子式のマッサージ機において、
前記背もたれ部内を前後及び上下に移動可能として、背もたれ部内側に配設される検出子を少なくとも有し、施療実行に先立って被施療者の体における所定箇所の位置検出を行う位置検出部と、
少なくとも当該位置検出部による位置検出を制御する制御部とを備え、
前記位置検出部が、着座位置検出として、背もたれ部における、座部の座面より所定距離上方の、着座状態にある被施療者の臀部に対向する領域内の所定位置に、検出子を位置させつつ、当該検出子を前方へ移動させ、
前記制御部が、検出子の前方への移動可能範囲内で検出子が被施療者を押圧する状態となって、さらなる前方への移動を妨げられ停止した場合には、被施療者が適切な着座状態にあると判定し、前記停止した場合における停止位置までの検出子の前方への移動量を取得する一方、
検出子の前方への移動可能範囲限界位置まで検出子が被施療者を押圧することなく移動した場合には、被施療者が適切に着座していないエラー状態であると判定し、
制御部が、被施療者が適切な着座状態にあると判定したら、次の肩位置検出に移行するために、位置検出部の検出子を被施療者の体後面各部と接触することのない位置まで後方へ移動させ被施療者から一旦離した後、背もたれ部内で上方へ所定距離移動させ、位置検出部にさらに被施療者の肩位置検出を実行させ、得られた肩位置の情報、及び、あらかじめ設定された一般的な人の各施療対象箇所と肩との相対位置関係の情報に基づいて、被施療者の各施療対象箇所の上下位置を新たに算出し定義するとともに、前記停止位置までの検出子の前方への移動量の大小に基づき、被施療者の各施療対象箇所ごとにあらかじめ設定された、施療機構の変位に係る前後方向のオフセット量を新たに設定することを
特徴とするマッサージ機。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機を前記
図1ないし
図13に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機1は、着座した被施療者を支える椅子状のものであり、詳細には、床面上に載置されて椅子全体を安定的に支持する基台部11と、この基台部11の上方で被施療者の臀部を支える座部12と、この座部12の後側で被施療者の背中を支える背もたれ部13と、座部12の左右両側で被施療者の肘や前腕部を支える肘掛部14と、座部12の前側で被施療者の脚を支える脚支持部15と、マッサージ動作に係る各種操作入力を受付ける操作部30と、搭載されている複数の施療機構による施療に係る作動を操作入力や記録情報等の内容に基づいて制御する制御部40とを備える構成である。
【0024】
前記基台部11は、椅子各部をなす前記座部12、背もたれ部13、肘掛部14、及び脚支持部15を一体に取付けられてこれらを支持するものである。また、前記座部12は、基台部11に対し座面の傾斜角度を調整可能として取付けられ、座面にて被施療者の臀部や太腿部を支えつつ内蔵の施療機構でマッサージを実行するものである。この座部12の施療機構としては、空気の給排で動作する臀部用エアセル71、及び太腿用エアセル72を備える構成である。これらエアセルを空気の給排で動作させるエアポンプ70が座部12下側のスペースに配設される。さらに、この座部12と基台部11との間には、座部12を傾動させるためのアクチュエータ(図示を省略)が配設される。
【0025】
前記背もたれ部13は、人の背中形状に合せた表面形状とされて前記基台部11及び座部12に対し傾斜角度を調整可能として配設され、その内部に、マッサージを実行する施療機構を備える構成である。
【0026】
背もたれ部13内部には、左右一対の施療子51とこれを動作させる駆動機構部60が一体となったメカユニット50と、このメカユニット50を背もたれ部13上下方向に移動可能に支持しつつ、背もたれ部の各部を内部から支える枠状の背もたれ部フレーム13aと、前記エアポンプ70による空気の給排で動作する背中用エアセル73及び腰用エアセル74とがそれぞれ配設される構成である。このうちメカユニット50、背中用エアセル73、及び腰用エアセル74が、それぞれマッサージを実行する施療機構をなす。
【0027】
なお、この背もたれ部13の左右両側部には、被施療者に面する内面側にエアセル等の施療機構を設けた一対の側壁部を突出配設して、被施療者の上腕部等に対して側方からマッサージを行えるようにすることもできる。
【0028】
前記背もたれ部フレーム13aは、メカユニット50を背もたれ部13上下方向に移動可能とし且つ他方向への動きは拘束して支持する左右一対のガイドフレーム20間に、複数の横フレームを横方向に掛渡して一体に連結して、略梯子状のフレーム構造とされるものである。この背もたれ部フレーム13aと座部12又は基台部11との間に、背もたれ部13を傾動させるためのアクチュエータ(図示を省略)が配設される。
【0029】
前記メカユニット50は、揉み、叩き等の刺激を被施療者に与える左右一対の施療子51と、これら施療子51をそれぞれ突出状態で支持する左右一対の施療子支持アーム52と、この施療子支持アーム52を介して施療子51を揉み、叩き等のマッサージ動作に対応させて駆動する駆動機構部60と、背もたれ部上下方向に直交する軸線を中心として駆動機構部60を傾動可能に支持するベース部54とを備える構成である。
【0030】
前記駆動機構部60は、制御部40の制御に基づいて施療子51に揉み動作を行わせるための駆動力を発生させる揉みモータ62と、制御部40の制御に基づいて施療子51に叩き動作を行わせるための駆動力を発生させる叩きモータ64と、各モータからの運動を施療子支持アーム52を介して施療子51に伝達する揉み機構及び叩き機構(図示を省略)とを備える、公知のマッサージ機に用いられるものと同様の機構であり、詳細な説明を省略する。
【0031】
前記ベース部54は、駆動機構部60を傾動可能に支持するものであり、この他、制御部40の制御に基づいて、メカユニット昇降用の駆動力を発生させる昇降モータ57と、駆動機構部60を傾動させる駆動力を発生させる進退モータ58とを備える構成である。
【0032】
メカユニット50は、ベース部54の側端部を一対のガイドフレーム20にそれぞれ上下走行可能に支持されることで、ガイドフレーム20に挟まれる配置状態となり、メカユニット50全体としてガイドフレーム20に沿って移動可能とされる構成である。そして、制御部40による制御に基づき、昇降モータ57が作動してベース部54がガイドフレーム20を走行する状態となることで、ベース部54を含むメカユニット50全体が、ガイドフレーム20に沿って背もたれ部13の上下に移動することとなり、背もたれ部13における施療子51の位置を上下に変えられる仕組みである。
【0033】
そして、メカユニット50は、設定されたマッサージの内容に応じて、制御部40による制御で、上記のように背もたれ部13の上下に移動し、施療子51の上下位置を調整されると共に、進退モータ58の作動による施療子51と駆動機構部60の傾動で、施療子51の被施療者側への突出量を調整されて、施療子51をマッサージの対象箇所に位置させる。施療子51の移動後、又はこうした施療子51の移動と並行して、制御部40が、マッサージの種類に応じて、メカユニット50における駆動機構部60の揉み、叩き用のモータを作動させ、施療子51に設定された揉みや叩き等のマッサージに対応した動きを行わせることとなる。
【0034】
このメカユニット50は、被施療者の体後面要部の位置を検出する位置検出部も兼ねており、施療子としての施療子51が検出子として作動する仕組みである。制御部40による制御で、メカユニット50全体が背もたれ部13の上下に移動することで、検出子である施療子51の位置を上下に変えることができ、また、進退モータ58の作動による施療子51と駆動機構部60の傾動で、施療子51の被施療者側への突出量を変化させる、すなわち施療子51を背もたれ部前後方向に移動させて、検出子の施療子51で被施療者の体後面所定箇所の検出が行える仕組みである。
【0035】
より詳細には、メカユニット50は、制御部40による制御の下、施療子51を、背もたれ部13における、座部12の座面より所定距離上方の、着座状態にある被施療者の臀部に対向する領域内の所定位置に位置させつつ、施療子51を前方へ移動させて着座位置検出を行う。また、この着座位置検出で被施療者が適切な着座状態にあると判定された場合、メカユニット50は、施療子51を後方へ移動させ被施療者から一旦離した後、背もたれ部13内で上方へ移動して、後述する肩位置検出範囲の下限位置である、背もたれ部13の上下方向中間位置又はより上側の所定箇所に、施療子51を位置させることとなる。
【0036】
さらにメカユニット50は、この肩位置検出範囲の下限位置から、施療子51を前方に移動させて被施療者の体後面部分に接近させ、前方へ移動を続けようとする施療子51で体後面部分を押しつつ、施療子51と共に上方へ移動し、上に移動する施療子51が体後面部分の上縁から外れて体の拘束を受けずに前方へ移動可能となった状態で、制御部40が施療子51の前方への移動に伴う所定の変化から肩位置を認定するまでの、一連の肩位置検出を行うこととなる。
【0037】
そして、進退モータ58は、制御部40で肩位置が認定された後、得られた肩位置の情報、及び、あらかじめ設定された被施療者の各施療対象箇所と肩との相対位置関係の情報に基づいて定義された、実際の被施療者の各施療対象箇所の上下位置と、こうした各施療対象箇所ごとにあらかじめ設定された、施療時の施療機構、すなわち施療子51の変位に係る前後方向のオフセット量といった情報に基づく制御部40の制御により、その駆動状態を変化させて駆動機構部60を傾動させ、施療子51を進退させて施療子51の被施療者に対する突出量を調整し、被施療者ごとに最適な施療を提供できるようにしている。
【0038】
前記肘掛部14は、座部12の両側に配設され、背もたれ部13がリクライニング角度を変化させたり、座部12が傾動した場合でも、被施療者の前腕を安定的に支持するよう形成される構成である。この肘掛部14にも、前記エアポンプ70による空気の給排で動作するエアセルを配設して、被施療者の前腕部に対しマッサージを行える構成としてかまわない。
【0039】
前記脚支持部15は、座部12の前側に位置し、座部12前端付近を中心として傾動可能に配設されるものである。この脚支持部15にも、前記エアポンプ70による空気の給排で動作する脚用エアセルや、上下に移動しつつ脚を押圧するローラ等の施療機構を配設するようにしてかまわない。脚支持部15と背もたれ部13又は基台部11との間には、脚支持部15を傾動させるためのアクチュエータ(図示を省略)が配設される。
【0040】
前記操作部30は、マッサージ機に関する各種情報等を画面として表示する表示部31と、マッサージ機に対する各種操作入力を受付ける複数のスイッチ32とを備え、マッサージ機1の側部におけるスタンド33に着脱自在に設置され、マッサージに係る操作入力を制御部40に送信する一方、必要に応じて制御部40から送られる表示情報を受信して表示部31に表示するものである。なお、操作部30の位置を被施療者にとって最適位置とするために、スタンド33の位置は調整可能となっている。
【0041】
この操作部30では、情報を被施療者に報知する報知手段としての表示部31が、マッサージ機に対する各種操作入力を受付けるスイッチを兼ねるものとされており、表示部31に表示された所定のスイッチ領域を触れることでスイッチ操作を行えるようにした、いわゆるタッチパネル式の画面スイッチ31a、・・・、31fを、状況に応じて使用可能に表示する仕組みである。こうして、操作部30には、入力手段として、表示部31とは独立した多数のスイッチ32と、表示部31で表示された画面スイッチ31a、・・・、31fとの二系統のスイッチが存在することとなる。
【0042】
前記スイッチ32は、操作部30をスタンドに設置した状態でも表面に露出して操作可能となる配置として操作部30に配設される構成である。多数のスイッチ32の中には、マッサージ機1の作動中に被施療者にとって危険な状況が生じた際に、マッサージ機1を速やかに停止させるための緊急停止スイッチ32aが含まれる。この緊急停止スイッチ32aは操作入力の有無を常に制御部40で検知される、すなわち、常時操作可能とされており、どのような状況でも、緊急停止スイッチ32aの操作でマッサージ機1を停止させられる。そして、被施療者の操作によらない、位置検出及びこれに先立つ座部等の傾動に係る各部の作動についても、緊急停止スイッチ32aを被施療者が操作することで、安全に停止させることができる。
【0043】
前記制御部40は、あらかじめ被施療者の体の一部の位置検出を実行し、得られた情報を踏まえて、施療機構やマッサージ機の他の各可動部分を被施療者に対応した状態に調整すると共に、施療機構や他の各可動部分に対し、操作部30からの操作やあらかじめ記録設定された施療内容、また前記位置検出結果の情報に基づいて、適切な施療の実行のための制御を行うものである。
【0044】
この制御部40は、そのハードウェア構成として、CPUやメモリ、入出力インターフェース等を備えるコンピュータとなっており、メモリ等に格納されるプログラムにより、コンピュータを制御部40として動作させる仕組みである。この制御部40をなすコンピュータは、CPUやメモリ、ROM等を一体的に形成されたマイクロコンピュータとしてもかまわない。
【0045】
この制御部40をなすコンピュータのユニットは、座部12直下等のマッサージ機1内部の所定のスペースに配設され、操作部30と通信可能な状態とされると共に、メカユニット50の各種モータや、座部12や背もたれ部13、脚支持部15を傾動させる各アクチュエータ、エアポンプ70とそれぞれ電気的に接続され、被施療者の体の所定箇所の位置検出の際にはあらかじめ設定された位置検出用プログラムに基づく制御信号出力により、また、マッサージ実行の際には設定されたマッサージのデータに基づく制御信号出力により、これらの駆動機構の作動を制御する。
【0046】
加えて、制御部40は、メカユニット50や各アクチュエータの変位量を出力するエンコーダ等の信号出力手段とも電気的に接続されており、メカユニット50の状態や、座部12、背もたれ部13、及び脚支持部15の傾斜等の状態を把握しつつ、モータやアクチュエータ等の駆動手段の作動制御を行うこととなる。特に、制御部40は、被施療者が着座し、マッサージ機起動後、位置検出に移行する前に、座部12の水平面に対する傾斜角度を取得し、傾斜角度が最小角度としての10ないし15°の角度未満である場合には、座部用のアクチュエータを作動させて座部12を傾動させ(
図3参照)、傾斜角度を前記最小角度以上の所定角度としてから、位置検出に移行する仕組みである。
【0047】
さらに、制御部40は、被施療者の体における所定箇所の位置検出のために、位置検出部を兼ねるメカユニット50を制御し、メカユニット50を背もたれ部13内でガイドフレーム20に沿って上下移動させ、施療子51を上下方向に移動可能とすると共に、施療子51と駆動機構部60の傾動で施療子51を背もたれ部前後方向に移動可能として、検出子でもある施療子51を被施療者に対し適切に動かせるようにしている。
【0048】
そして、制御部40は、施療に先立ち、体の所定箇所の位置検出、より詳細には、着座位置検出及び肩位置検出として、施療子51に位置検出の対象に応じた移動を行わせ、被施療者側へ移動させた施療子51が被施療者を押圧する状態となってさらなる移動を妨げられ停止した場合や、拘束を受けていた施療子51が拘束を受けない状態となって新たな移動を生じた場合などの、検出対象の位置における施療子51の移動に係る変化を、各モータの回転数等の変化や、エンコーダ出力の変化量又は変化割合から識別する公知の手法を用いることで、この施療子51の移動に係る変化が生じた位置を検出、把握することとなる。
【0049】
詳細には、制御部40は、着座位置検出として、背もたれ部13における、座部12の座面より所定距離上方の、着座状態にある被施療者の臀部に対向する領域内の所定位置、より具体的には、背もたれ部13における座面上方の約5cmの範囲内の所定位置、好ましくは座面から約2cm上方の位置、に検出子である施療子51をメカユニット50ごと移動させて位置させつつ、この施療子51を前方へ移動させ、施療子51の前方への移動可能範囲内で施療子51が被施療者を押圧する状態となって、さらなる前方への移動を妨げられ停止した場合(
図7(B)参照)に、この施療子51の移動停止を、例えば、エンコーダ出力が所定時間以上ほとんど変化しない状況から識別して、この施療子の停止位置を被施療者の着座位置として検出し、この位置までの施療子51の前方への移動量を取得する。なお、検出子である施療子51の停止の識別には、エンコーダ出力の他に、進退モータ58の減速、停止等の検知結果を用いることもできる。
【0050】
ここで、上記のように施療子51の前方への移動可能範囲内で施療子51が停止して着座位置検出がなされた場合には、制御部40は、被施療者が適切な着座状態にあると判定し、次の肩位置検出に移行することとなる。一方、施療子51の前方への移動可能範囲限界位置まで、施療子51が被施療者を押圧することなく移動した場合には、被施療者が適切に着座していないエラー状態であると判定し、報知手段としての操作部30の表示部31に、着座位置検出に係るエラーを通知すると共に被施療者に適切な着座を促す所定の表示を行わせる(
図8参照)。
【0051】
また、制御部40は、着座位置検出で被施療者が適切な着座状態にあると判定したら、施療子51を後方へ移動させて被施療者から一旦離した後、メカユニット50を背もたれ部13内で上方へ所定距離移動させ、背もたれ部13の上下方向中間より若干上側の、肩位置検出範囲の下限位置に施療子51が位置するようにする(
図9参照)。続いて、制御部40は、肩位置検出として、施療子51を前方に移動させて被施療者の体後面部分に接近させ、前方へ移動を続けようとする施療子51で体後面部分を押しつつ、施療子51をメカユニット50ごと上方へ移動させ、施療子51が体後面部分に沿って上昇する状態(
図10参照)とする。そして、制御部40は、上へ移動している施療子51が体後面部分の上縁、すなわち肩上部から外れて体の拘束を受けずに前方へ移動可能となった状態で、例えば、施療子51の前方への移動に伴う位置変化を表すエンコーダ出力のカウント数変化量が所定値に達した場合に、施療子51のさらなる移動を識別して、この際の施療子51の上下方向位置を検出し、上下方向における被施療者の肩位置として設定する。
【0052】
なお、検出子である施療子51の前記拘束状態から前方へさらに移動する状態へ移行する変化の識別には、エンコーダ出力のカウント数変化量そのものを利用する他、カウント数変化割合の増大やカウント数変化が所定時間継続する状態を用いることができ、また、進退モータ58の回転数増大等の検知結果を用いることもできる。
【0053】
制御部40は、肩位置が一旦定まると、メカユニット50や施療子51を一時停止状態として、肩位置が定まった時点の施療子51位置を所定時間そのまま維持して、定まった肩位置を施療子51の現在位置で示すようにする一方で、報知手段としての操作部30の表示部31で、肩位置検出の終了表示と共に、入力手段としての、施療の開始指示用、及び、肩位置再設定指示用の各画面スイッチ31b、31cを被施療者に対し表示する(
図11参照)。
【0054】
この表示部31での表示による報知を受けて、施療子51の位置を定まった肩位置として認識した被施療者が、施療子51位置が適切な肩位置としてそのまま受け入れて、表示部31の施療開始指示用のスイッチへの操作を行うと、制御部40は、定まった肩位置とあらかじめ記録されている一般的な人の体型データに基づく人の体後面の各施療対象箇所(例えば、首、背中、腰など)と肩との相対位置関係情報(例えば、座面から肩位置までを100とすると、腰位置は30、首位置は110、など)に基づいて、各施療対象箇所の上下方向位置を算出して定義し、さらに、同じく一般的な人の体型データに基づいて人の各施療対象箇所ごとにあらかじめ設定された、施療時の施療子51の変位に係る前後方向の各オフセット量をそのまま適用するようにして、マッサージ機で施療の実行が可能な状態に移行する。
【0055】
一方、表示部31での表示を受けて、施療子51の位置を定まった肩位置として認識した被施療者が、施療子51位置が適切な肩位置でないと感じて、この施療子51の位置を肩位置とみなしての施療実行を望まない意図から、表示部31における肩位置再設定指示用の画面スイッチ31cに対し、肩位置の再設定指示の操作を行った場合、制御部40は、施療子51を後方に移動させて被施療者から離隔させた後、メカユニット50を上方に移動させて背もたれ部13の上限位置まで施療子51を移動させ、続いて、施療子51を前方に所定距離移動させて、被施療者の体後面より前方に突出させた状態とする(
図12参照)。合わせて、制御部40は、あらためて表示部31に施療子の上下各方向移動指示用、及び新たな肩位置決定用の各画面スイッチ31d、31e、31fを表示する(
図13参照)。
【0056】
そして、制御部40は、被施療者による施療子移動指示用のスイッチの操作に基づいて、施療子51をメカユニット50ごと上下移動させる一方、移動した後の施療子51の新たな位置について、この施療子で示される位置を肩位置に決定するために被施療者により肩位置決定用のスイッチの操作がなされたら、このスイッチ操作がなされた時点の施療子51の位置を検出し、新たな肩位置に設定する。この新たな肩位置の設定後は、前記表示部31の施療開始指示用のスイッチを被施療者が操作した場合と同様に、制御部40は、被施療者の各施療対象箇所の上下方向位置を定義すると共に、各施療対象箇所ごとの施療子51の変位に対する前後方向の各オフセット量を適用して、施療の実行が可能な状態に移行する。
【0057】
こうして、被施療者の入力により指定された施療子51の位置を、新たに定められた肩位置として設定すれば、被施療者にとって適切な肩位置としてより納得しやすい位置が肩位置となり、肩位置設定に対しての被施療者の不満を解消して被施療者の満足度を高め、施療による被施療者のリラックス状態への移行をより確実化することとなる。
【0058】
なお、肩位置検出の際、制御部40は、施療子51が被施療者の体後面を押圧しつつ体後面部分に沿って上方へ移動するようにした上で、施療子51が体後面部分の上縁部から外れて体の拘束を受けずに前方へ移動可能となった状態で、施療子51の前方への移動に伴う位置変化をエンコーダ出力等から識別して、この際の施療子51の上下方向位置を検出し、被施療者の肩位置として設定するようにしているが、仮に被施療者の体格が大きく、施療子51が背もたれ部13の上側移動限界に達しても被施療者の体後面部分の上縁部を越えず、体による施療子51への拘束が維持されて、施療子51の肩到達に伴う前方移動を検知できない場合には、制御部40は、施療子51の背もたれ部13における上側移動限界位置を被施療者の肩位置として設定する。
【0059】
次に、本実施形態に係るマッサージ機における被施療者の一部位置検出に基づいて各施療対象箇所を設定する制御について説明する。はじめに、マッサージ機の起動から着座位置検出までの制御処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。前提として、マッサージ機1に対し、一般的な体格の被施療者が、座部12に臀部及び太腿部の一部を載せて着座し、背中を背もたれ部13にもたれさせ、脚支持部15に脚を沿わせた状態とし、さらに、前腕部を肘掛部14に載せているものとする。
【0060】
この状態で、マッサージ機1の主電源スイッチが入とされて、マッサージ機1が電源投入状態となると(ステップS001)、まず制御部40は、座部12の傾斜角度が最小角度未満、例えば、15°未満、であるか否かを判定する(ステップS002)。
【0061】
座部12の傾斜角度が15°未満である場合、制御部40はアクチュエータを作動させて、座部12の傾斜角度が最小角度以上、例えば、15°となるまで座部12を傾動させる(ステップS003)。なお、座部12と、背もたれ部13及び/又は脚支持部15とが連動する機構を有して、座部12の傾動に連動して背もたれ部13及び/又は脚支持部15も同じ向きに傾動可能である場合には、座部12の傾動の際に背もたれ部13及び/又は脚支持部15をそのまま連動させて傾動させる(
図3参照)。一方、座部12と、背もたれ部13及び/又は脚支持部15とが連動しない場合には、連動しない背もたれ部13及び/又は脚支持部15をアクチュエータの作動により座部12と同時に所定角度分傾動させ、例えば、背もたれ部13及び/又は脚支持部15の座部12に対する傾斜角度が座部12の傾動後も維持されるようにするのが好ましい。
【0062】
制御部40が、座部用のアクチュエータを作動させて座部12を傾動させ、座部12の傾斜角度を最小角度未満から最小角度以上とした場合、座部12に着座している被施療者の重心は、着座当初より背もたれ部13寄りにシフトし、この重心のシフトに伴って被施療者の背中が背もたれ部13により強く密着した状態となる。この状態で着座位置検出を実行することで、被施療者のずれを招くことなく安定して着座位置検出を行える。加えて、被施療者の腰の付け根部分が、座部12と背もたれ部13間のくぼみ部分に落ち込む状態となって座部12と背もたれ部13により密着し、被施療者の体格や、被施療者の当初の着座姿勢によらず、腰の付け根部分及び背中をマッサージ機側へ密着させられ、十分なマッサージ効果を被施療者が得やすい、より望ましい着座姿勢とすることができる。
【0063】
座部12の傾動が終了した後、制御部40は操作部30の表示部31に、施療に係る位置検出を実行している旨が表された画面(
図6参照)を表示する(ステップS004)。
前記ステップS002で、座部の傾斜角度が15°未満でない、すなわち15°以上であると判定されたら、そのまま前記ステップS004へ移行する。
【0064】
こうして、電源投入直後、座部12の傾斜角度が最小角度未満の場合は、制御部40がメカユニット50を作動させて着座位置検出を実行する状態に至る前に、座部12の傾斜角度を最小角度以上とする角度調整が実行されるようになっており、着座しやすさを重視して、起動前は座部12の傾斜が浅くなっている場合でも、座部12の傾斜角度が最小角度未満のままで着座位置検出が実行される状態とはならない、すなわち、座部12の傾斜が浅く、着座した被施療者がマッサージ機に対しずれかねないような状況では、着座位置検出を実行しないことで、被施療者の体のずれに伴って誤った着座位置検出がなされる事態を避けられる。
【0065】
表示部31の表示に続いて、制御部40は、着座位置検出として、まず、背もたれ部13最下部の初期位置にあるメカユニット50において、昇降モータ57を作動させ、ガイドフレーム20に対しメカユニット50全体を上に動かし、検出子である施療子51を上方へ移動させる。そして、施療子51を、背もたれ部13における、座部12の座面から約2cm上方の位置に到達させる(
図7(A)参照、ステップS005)。
【0066】
また、制御部40は進退モータ58も作動させ、メカユニット50のベース部54に対する施療子51と駆動機構部70の傾動状態を調整して、施療子51を被施療者に向かう前方へ移動させる(ステップS006)。この後、制御部40は、施療子51の前方への移動が停止したか否かを判定する(ステップS007)。施療子51の移動が停止していない場合は、前記ステップS006に戻って施療子51の移動を継続させる。
【0067】
前記ステップS007で、施療子51の移動が停止した場合、移動停止の検出が、施療子51が前方への移動限界に達する前に、移動していた施療子51が被施療者を押圧する状態となって、さらなる前方への移動を妨げられ停止した場合(
図7(B)参照)に対応する、例えば、エンコーダ出力のほとんど変化しない状況が所定時間以上継続する事象を受けてのものであるか否かを判定する(ステップS008)。
【0068】
ここで、施療子51の移動停止が、前方移動限界に達する前の検出で得られたものである場合、制御部40は、施療子51の停止位置を被施療者の着座位置として検出し、この位置までの施療子51の前方への移動量を取得する(ステップS009)と共に、被施療者が適切な着座状態にあると判定し、次の肩位置検出に移行するために、進退モータ58を施療子51と駆動機構部60が被施療者から離れる向きに傾動するよう作動させ、メカユニット50の移動にあたり施療子51が被施療者の体後面各部と接触することのない位置まで施療子51を後方へ移動させ(
図9(A)参照、ステップS010)、その後、メカユニット50を背もたれ部13内で上方へ所定距離移動させ、背もたれ部13の上下方向中間より若干上側の肩位置検出範囲の下限位置に施療子51が位置するようにして(
図9(B)参照、ステップS011)、肩位置検出前の処理を終える。
【0069】
一方、前記ステップS008で、施療子51の移動停止が、前方移動限界に達する前の検出で得られたものでなく、移動限界に達したことによる施療子51の自動停止に基づいて検出されたものである場合、制御部40は、被施療者が適切に着座していないエラー状態であると判定し、報知手段としての操作部30の表示部31に、着座位置検出に係るエラーを通知すると共に被施療者に適切な着座を促す、所定の表示(
図8参照)を行わせる(ステップS012)。同時に、位置検出を再度行うために一旦待機状態に移行する指示の操作を受ける画面スイッチ31aを表示部31に表示し(ステップS013)、この画面スイッチ31aで被施療者からの操作入力を受け付けると(ステップS014)、制御部40は、施療子51を後方へ移動させて被施療者から一旦離し(ステップS015)、その後、表示部31に待機状態を示す表示を行った上で待機状態となって、一旦処理を終えることとなる。
【0070】
続いて、被施療者の肩位置検出から体後面の各施療対象箇所の設定までの制御処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。前提として、マッサージ機1に着座した被施療者に対し上記の着座位置検出がなされて、被施療者が適切な着座状態にあると判定され、肩位置検出に移行するために、既に施療子51が肩位置検出範囲の下限位置としての、背もたれ部13の上下方向中間より若干上側の位置(
図9(B)参照)に到達しているものとする。
【0071】
肩位置検出として、制御部40は、まず進退モータ58を作動させ、メカユニット50のベース部54に対する施療子51と駆動機構部70の傾動状態を調整して、施療子51を被施療者に向かう前方へ移動させる(ステップS101)。移動する施療子51を被施療者の体後面部分に接近させ、さらに前方へ移動を続けようとする施療子51で体後面部分を押した状態を維持しつつ、制御部40は、昇降モータ57を作動させ、ガイドフレーム20に対しメカユニット50を上に動かし、施療子51をメカユニット50ごと上方へ移動させ(
図10(A)参照、ステップS102)、施療子51が体後面部分に沿って上昇する状態とする。
【0072】
そして、制御部40は、前方へ移動しようとして体後面部分を押しながら上方への移動を続ける施療子51が、体後面部分の上縁、すなわち肩上部から外れて、体による拘束を受けずに前方へ移動可能となった状態で、施療子51の新たな前方への移動に伴う位置変化(
図10(B)参照)が生じた場合に、施療子51の移動変位を、エンコーダ出力のカウント数変化量が所定値に達することから識別して、この前方への移動を生じた施療子51の位置を肩位置として検出し(ステップS103)、施療子51の背もたれ部上下方向の位置に係る情報から肩位置の上下方向座標を設定する。
【0073】
以上の肩位置検出により一旦肩位置が定まったら、制御部40はメカユニット50の昇降モータ57や進退モータ58を停止させ、施療子51を肩位置が定まった時の位置にそのまま所定時間保持する(ステップS104)。また、制御部40は、操作部30の表示部31で肩位置検出の終了を示す所定の表示を行うと共に、表示部31に施療の開始指示用、及び、肩位置再設定指示用の各画面スイッチ31b、31cを、被施療者の選択操作可能な状態で表示する(
図11参照、ステップS105)。
【0074】
こうして、被施療者に肩位置が検出、設定されたことを報知して、保持された施療子51位置で表される、自動設定された肩位置を被施療者に認識させ、被施療者がこの設定された肩位置を受け入れる場合はそのまま施療の開始を指示させるようにし、また、設定された肩位置を被施療者が受け入れない、すなわち、被施療者が、施療子51位置が適切な肩位置でないと感じて、この施療子51の位置を肩位置に設定した上での施療実行を望まない場合には、肩位置の再設定を指示させるようにしている。
【0075】
表示後、制御部40は、施療の開始指示用の画面スイッチ31bに被施療者の入力操作がなされたか否かを判定し(ステップS106)、施療への移行を指示するスイッチへの入力操作がなされた場合、制御部40は、昇降モータ57を作動させ、メカユニット50と共に施療子51を上昇させて、施療子51を肩から離隔させる(ステップS107)。また、進退モータ58を、施療子51と駆動機構部60が被施療者から離れる向きに傾動するよう作動させ、メカユニット50の上下動にあたり施療子51が被施療者の体後面部分と接触することのない位置まで後退させて(ステップS108)、肩位置検出に係る各機構の作動を停止状態とする。
【0076】
その後、制御部40は、肩位置検出で得られた肩位置の情報、及び、あらかじめ設定された一般的な人の体後面における各施療対象箇所(例えば、首、背中、腰など)と肩との相対位置関係の情報に基づいて、被施療者の各施療対象箇所の上下位置を新たに算出し定義する(ステップS109)。このようにして被施療者の各施療対象箇所の位置を定義し、これらに対する施療子51他での施療を開始可能な状態としたら、一連の処理は完了となる。
【0077】
前記ステップS106で、施療の開始指示用の画面スイッチ31bに被施療者の入力操作がなされていない場合、続いて、制御部40は、表示部31の肩位置再設定指示用の画面スイッチ31cに被施療者の入力操作がなされた否かを判定し(ステップS110)、被施療者の入力操作がなされた場合、進退モータ58を施療子51と駆動機構部60が被施療者から離れる向きに傾動するよう作動させ、施療子51を後方に移動させて(
図12(A)参照、ステップS111)被施療者から離隔させた後、メカユニット50を背もたれ部13の上限位置まで移動させ(
図12(B)参照、ステップS112)、続いて、施療子51を前方に所定距離移動させて、被施療者の体後面より前方に突出させた状態とする(
図12(C)参照、ステップS113)。合わせて、表示部31に、被施療者のスイッチ操作により肩位置の再設定を行う旨を表示すると共に、施療子51の上下各方向移動指示用及び肩位置決定指示用の各画面スイッチ31d、31e、31fを操作可能な状態で新たに表示する(
図13参照、ステップS114)。
【0078】
そして、制御部40は、施療子51の下方向への移動指示用の画面スイッチ31eに被施療者の入力操作がなされたか否かを判定し(ステップS115)、被施療者の入力操作がなされた場合、制御部40は、操作に対応して、昇降モータ57を作動させてメカユニット50ごと施療子51を下方へ移動させる(ステップS116)。この後、肩位置決定指示用の画面スイッチ31fに被施療者の入力操作がなされたか否かを判定し(ステップS117)、被施療者の入力操作がなされた場合、制御部40は、移動後の施療子51位置を被施療者が肩位置として受け入れたと認定して、肩位置決定指示用のスイッチ操作時点の施療子51位置を、新たな肩位置に設定する(ステップS118)。この新たな肩位置の設定後は、前記ステップ107へ移行し、それ以降の処理を繰り返す。
【0079】
前記ステップS117で肩位置決定指示用の画面スイッチ31fに被施療者の入力操作がなされていない場合、前記ステップS115に戻って、以降の処理を繰り返す。また前記ステップS115で下方向への移動指示用の画面スイッチ31eに被施療者の入力操作がなされていない場合には、制御部40は、施療子51の上方向への移動指示用の画面スイッチ31dに被施療者の入力操作がなされたか否かを判定し(ステップS119)、被施療者の入力操作がなされた場合、制御部40は、操作に対応して、昇降モータ57を作動させてメカユニット50ごと施療子51を上方へ移動させる(ステップS120)。この後は、前記ステップS117へ移行する。そして、前記ステップS119で上方向への移動指示用の画面スイッチ31dに被施療者の入力操作がなされていない場合には、そのまま前記ステップS117へ移行する。
前記ステップS110で肩位置再設定指示用の画面スイッチ31cに被施療者の入力操作がなされていない場合、前記ステップS106に戻って、以降の処理を繰り返す。
【0080】
こうして簡略な位置検出を経て各施療対象箇所の上下方向位置を効率よく定義し、各施療対象箇所ごとの施療子51の前後オフセット量の情報も利用可能として、施療開始可能な状態としたら、被施療者によりマッサージコース等の具体的施療内容指示が操作部30のスイッチ等を通じて入力され、制御部40が入力を受けて、各施療機構による施療が開始することとなる。
【0081】
施療子51によるマッサージの場合、設定されたマッサージの内容に応じて、制御部40は、メカユニット50をその昇降モータ57の作動によりガイドフレーム20に対し上下に移動させ、施療子51の上下位置を首や肩、背中、腰等の各施療対象箇所に合わせるように調整すると共に、進退モータ58を作動させて施療子51と駆動機構部60を傾動させ、各施療対象箇所ごとの施療子51の変位に係る前後方向の各オフセット量を適用しつつ、施療子51の被施療者側への突出量を調整して、施療子51を施療対象箇所に位置させる。この後、又はこうした施療子51の移動と並行して、制御部40は、マッサージの種類に応じて、メカユニット50の揉みモータ72及び/又は叩きモータ74を作動させ、メカユニット50の施療子51に、設定された揉みや叩き等のマッサージに対応した動きを行わせることとなる。
【0082】
こうした施療がなされる中、被施療者による操作部30からのリクライニング等の指示操作や、マッサージコースでの設定に基づいて、制御部40が、座部12、背もたれ部13、及び/又は脚支持部15を傾動させた場合、被施療者の着座姿勢が変化して、背もたれ部13と被施療者の各施療対象箇所の位置関係も変わることがある。これを考慮して、座部12、背もたれ部13、及び/又は脚支持部15の傾斜角度変化量に応じて、各施療対象箇所の上下方向位置を調整したり、各施療対象箇所ごとの施療子51の変位に係る前後方向のオフセット量を既定値から変更して、被施療者の新たな着座姿勢に基づく体後面位置に施療子51の作動を対応させる制御を制御部40に実行させた上で、次の施療を行うようにすることもできる。
【0083】
このように、本実施形態に係るマッサージ機は、着座した被施療者の座面近傍の体後面部分に対し検出子である施療子51を前方に移動させて着座位置検出を行い、移動させた施療子51が被施療者を押圧したら、制御部40で適切な着座状態と判定して肩位置検出に移行し、得られた肩位置に基づいて被施療者の体後面における各施療対象箇所の上下位置を求めて、施療の制御に用いることから、背もたれ部13が座部12に対し傾動可能な一般的な椅子構造の場合に、被施療者が背もたれ部13にもたれつつ正しく着座した状態で、被施療者の座面近傍における体後面部分と背もたれ部13との間に隙間が生じていても、前後移動する施療子51で被施療者の体後面部分を押圧可能な適切な範囲内であれば、被施療者が適切な着座状態にあるとして、その後の肩位置検出等の処理を滞りなく実行でき、問題なく確実に着座姿勢を把握できる。
【0084】
また、着座位置検出以降の施療子51を用いた位置検出が、肩位置検出として、着座位置検出位置から間隔を空けた上方の、上下方向中間位置より上側でなされて、体後面部分に沿って連続する施療子等検出子の上方移動を伴わない分、被施療者への検出子の接近、押圧による体型検出作業時間を省略できることとなり、施療に必要な被施療者の各施療対象箇所の位置定義をより短時間で完了して施療までの待ち時間を少なくでき、施療による被施療者のリラックス状態への移行を妨げないようにすると共に、検出した肩位置に基づいて被施療者の着座姿勢に対応した体後面部分の各施療対象箇所を適切に設定でき、各被施療者に対し施療を正しく実行できる。
【0085】
なお、前記実施形態に係るマッサージ機においては、施療のための施療子51が位置検出用の検出子を兼ねる構成としているが、これに限らず、施療子とは別に位置検出専用の検出子を設ける構成とすることもできる。
【0086】
また、前記実施形態に係るマッサージ機においては、座部12を基台部11上に傾動可能に配設し、着座位置検出に先立って座部12の傾斜角度を調整し、着座姿勢の定りにくい最小角度未満の傾斜角度では着座位置検出を行わないようにして、被施療者の姿勢のずれが生じ得る状態での着座位置検出を回避する構成としているが、これに限らず、マッサージ機の椅子形状が、着座当初から被施療者の着座姿勢を適切に維持できるものである場合には、被施療者の着座後、座部を傾動させることなく着座位置検出を実行するようにしてもかまわない。
【0087】
また、前記実施形態に係るマッサージ機においては、着座位置検出に先立って、必要に応じて座部12の傾斜角度を調整し、着座姿勢の安定する最小角度以上で着座位置検出を行うようにしているが、この他、着座位置検出の前に、座部12の傾動と共に、あるいは、座部12を傾動させずに、背もたれ部13を傾動させて座部12と背もたれ部13とのなす角度を変えたり、脚支持部15を座部12に対し傾動させて座部12と脚支持部15とのなす角度を変えるようにすることもできる。
【0088】
このうち、背もたれ部13を傾動させて座部12と背もたれ部13とのなす角度を大きくした場合、着座状態の被施療者の重心が背もたれ部13寄りにシフトし、この重心のシフトに伴って被施療者の体後面部分が背もたれ部13により強く密着して、着座位置検出の際における被施療者のずれを防ぐことができる。また、脚支持部15を座部12に対しより上方へ傾動させた場合、被施療者の膝下部分の重みも腰の付け根部分に集中することとなり、腰の付け根部分が施療子51の押圧に対し動きにくくなることで、着座位置検出を適切に実行できる。
【0089】
さらに、前記実施形態に係るマッサージ機において、肩位置の再設定指示の操作を受け付けた制御部40は、背もたれ部13の上限位置まで移動させた施療子51を前方への突出状態とした後、被施療者による施療子移動指示用のスイッチの操作に基づいて、施療子51を上下移動させ、移動後の施療子51の新たな位置について、被施療者により肩位置決定用のスイッチの操作がなされた場合に、スイッチ操作時点の施療子51の位置を新たな肩位置に設定する制御を行うようにしているが、この他、制御部40は、別の肩位置再設定の手法として、背もたれ部13の上限位置まで移動させると共に前方へ突出状態とした施療子51を、被施療者の操作によらず自動的に下方へ移動させ、この移動する施療子51が被施療者の肩を上から押圧してさらに下へは移動しなくなった状態を識別して、この施療子位置を新たな肩位置に設定するように制御することもできる。
【0090】
具体的には、背もたれ部13の上限位置で前方へ突出状態(
図14(A)参照)とした施療子51に対し、制御部40は、昇降モータ57を作動させ、施療子51を含むメカユニット50全体をガイドフレーム20に対し下に移動させ、施療子51を背もたれ部13の最上部から下降させる。この後、施療子51が肩上側に近接すると、施療子51が被施療者の肩位置で下方への移動を阻止され(
図14(B)参照)、それ以上下方へ進めないので、施療子51の下降速度が著しく低下するのに伴い、昇降モータ57の回転数も急減することとなる。制御部40はこの昇降モータ57の回転状態を監視し、昇降モータ57の回転数が所定値まで低下した場合、制御部40は、その時点の施療子51の上下方向位置を取得し、この施療子位置を新たな肩位置として認定する。
【0091】
こうした肩位置再設定の場合も、下方に移動している施療子について、被施療者が肩位置決定操作用の画面スイッチ31aを操作すると、制御部40が、このスイッチ操作がなされた時点の施療子51の位置を検出し、新たな肩位置に設定するようにしてもよい。
【0092】
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係るマッサージ機において、肩位置検出で肩位置が一旦定まった後、被施療者が操作部30の表示部31における施療開始指示用の画面スイッチ31aを操作した場合や、制御部40で肩位置再設定の過程を経て新たな肩位置を設定した場合に、制御部40は、被施療者の各施療対象箇所の上下方向位置を定義する他、一般的な人の体型データに基づいて人の各施療対象箇所ごとにあらかじめ設定された、施療時の施療子51の変位に係る前後方向の各オフセット量を初期値のまま適用して、マッサージ機で施療実行可能な状態に移行するようにしているが、これに限らず、この各施療対象箇所ごとにあらかじめ設定された、施療時の施療子51の変位に係る前後方向のオフセット量のうち、一部の施療対象箇所のオフセット量について、制御部40は、着座位置検出時に取得した施療子51の前方への移動量の大きさに基づき、前後方向に位置調整して、被施療者の着座状態に応じたオフセット量を新たに設定するようにすることもできる。
【0093】
すなわち、背もたれ部13が座部12に対し傾動可能な一般的な椅子構造のマッサージ機において、被施療者が背もたれ部13にもたれつつ着座した状態で、被施療者の座面近傍における体後面部分と背もたれ部13との間に生じる隙間の大きさは、被施療者の体格や着座姿勢により変化し(
図15、
図16参照)、被施療者の体格が大きいか、着座姿勢が前寄りであるほど、座面近傍における体後面部分と背もたれ部13との間隔が大きくなるなど、体格や着座姿勢で決る被施療者の体後面各部位の前後方向位置と前記隙間の大きさとは対応関係にあることを利用して、着座位置検出の際における施療子51の前方への移動量を取得して、これに基づき前記オフセット量を初期値から前後方向に位置調整すれば、調整後は、被施療者の体格や着座姿勢に基づいた体後面位置に対応したオフセット量となり、この新たなオフセット量を用いた制御で、着座状態の被施療者に合った最適な施療を実行でき、より効率よく被施療者のリラックス状態が得られることとなる。
【0094】
具体的な例としては、
図15(A)に示すように、標準的な体格の被施療者の場合、一般的な人の体型データに基づいてあらかじめ設定された前記オフセット量をそのまま適用するのに対し、体格が大きく、座面近傍における体後面部分と背もたれ部13との間に生じる隙間も大きくなる被施療者については、着座位置検出時における施療子51の前方への移動量が、座面近傍の体後面部分と背もたれ部13との間隔に応じて大きくなるのに基づいて、制御部40が臀部や腰部を中心とした一部施療対象箇所における施療子51の変位に係る前後方向のオフセット量を前側に位置調整する、すなわち、大きくする(
図15(B)参照)ことで、被施療者の体格に基づく体後面位置に対応して施療子51を動かして施療を実行でき、確実に被施療者に合った施療が行える。
【0095】
また、
図16(A)に示すように、同じ被施療者でも、望ましい着座位置より浅く腰掛けるなどして着座姿勢が前寄りとなった場合には、着座位置検出時における施療子51の前方への移動量が、座面近傍の体後面部分と背もたれ部13との間隔に応じて大きくなるのに基づいて、制御部40が臀部や腰部を中心とした一部施療対象箇所における施療子51の変位に係る前後方向のオフセット量を前側に位置調整する、すなわち、大きくする(
図16(B)参照)ことで、被施療者の着座姿勢に基づく体後面位置に対応して施療子51を動かして施療を実行でき、着座姿勢の影響を受けず確実に被施療者に合った施療が行える。
【0096】
なお、上記とは逆に、被施療者の体格が小さく、座面近傍における体後面部分と背もたれ部13との間に生じる隙間も小さくなる場合や、座部や背もたれ部の傾斜角度が大きくなるなどして、被施療者の座部や背もたれ部への密着度合いが高まって着座姿勢が後方にずれた場合には、着座位置検出時における施療子51の前方への移動量が、座面近傍の体後面部分と背もたれ部13との間隔に応じてより小さくなるのに基づいて、制御部40は、一部施療対象箇所における施療子51の変位に係る前後方向のオフセット量を後側に位置調整する、すなわち、小さくすることで、被施療者の体後面位置に適切に対応して施療子51による施療が行える。
【0097】
(本発明の第3の実施形態)
前記第1の実施形態に係るマッサージ機においては、位置検出に先立って座部を傾動させ、座部の傾斜角度を所定の最小角度以上とするようにしているが、この他、マッサージ機の代表的な施療形態(ポジション)、すなわち、座部12、背もたれ部13、及び脚支持部15の施療時における各傾斜角度の所定の組合せ、があらかじめ複数通り用意され、施療前にこれらを被施療者の操作で選択可能とされている場合、マッサージ機の起動後、まず被施療者にポジションを選択させ、制御部が選択されたポジションをなすように各部を傾動させてから、位置検出を実行する構成とすることもできる。
【0098】
この場合、制御部40は、マッサージ機の代表的な施療形態(ポジション)を具体的に規定する、座部12、背もたれ部13、及び脚支持部15の調整目標となる各傾斜角度の組合せを、あらかじめ複数通り記録されている。そして、制御部40は、これら複数通りの組合せを、それらが規定する各ポジションに置換えた形で被施療者に提示し、被施療者にスイッチ操作によるポジション選択を行わせる。制御部40は、被施療者の選択した所定の組合せにおける目標の各傾斜角度に、各部を角度調整して、マッサージ機を被施療者の望むポジションに移行させることとなる。ただし、ポジションを規定する目標の傾斜角度の組合せにおける、座部の傾斜角度は、いずれも前記最小角度としての10ないし15°の角度以上とされる。
【0099】
ポジションとしては、例えば、座面の水平面に対する傾斜角度が15°、座部12と背もたれ部13とのなす角度が121°、座部12と脚支持部15とのなす角度が135°、であり、座部12と背もたれ部13のなす角度を、椅子として座った時に楽な姿勢を生じさせると一般的に考えられている約120°とした第1ポジション(
図17(B)参照)、そこからさらに座部12の傾斜を大きくし且つ背もたれ部13を倒すと共に、座部12と脚支持部15とのなす角度も大きくした、座面の水平面に対する傾斜角度が37°、座部12と背もたれ部13とのなす角度が121°、座部12と脚支持部15とのなす角度が143°、であり、身体への負担が少ない施療姿勢を得られ、且つ、被施療者が背もたれ部13により密着して体のずれが生じにくい第2ポジション(
図18(B)参照)、といった複数のポジションが設定され、これらが画面スイッチ31a等のスイッチで被施療者に選択可能とされる。
【0100】
マッサージ機の起動後、複数のポジションにそれぞれ対応したスイッチのうち、被施療者の操作を受けて一つが選択されると、制御部40は、選択されたポジションを規定する各部の目標傾斜角度の組合せを指示入力され、傾斜角度の組合せの内容に応じてアクチュエータを作動させ、座部12、背もたれ部13、及び/又は脚支持部15を傾動させ、それぞれ傾斜角度を、指示入力された組合せで与えられる目標の各傾斜角度とする。すなわち、マッサージ機を起動時の初期状態(
図17(A)、
図18(A)参照)から被施療者の操作で選択されたポジション(
図17(B)、
図18(B)参照)に移行させる。そしてこの後、制御部40は位置検出に係る各処理を実行する。
【0101】
具体例として、マッサージ機が起動直後の初期状態(
図17(A)参照)にある場合に、被施療者のスイッチ操作で前記第1ポジションが選択されると、制御部40は、必要に応じて各アクチュエータを作動させて、座部12の角度が15°、座部12と背もたれ部13とのなす角度が121°、座部12と脚支持部15とのなす角度が135°となるようにする(
図17(B)参照)。その後、制御部40はマッサージ機各部が第1ポジションにあると認定して、各アクチュエータの作動を完全に停止状態とすると共に、操作部30の表示部31にマッサージ機が第1ポジションである旨を示す画面を表示する。そして、必要に応じて表示部31に位置検出を実行する旨の画面を表示した後、前記第1の実施形態同様の着座位置検出と肩位置検出からなる位置検出が行われることとなる。
【0102】
こうして、位置検出の準備として被施療者をずれにくい安定した姿勢に移行させるための座部12の傾動と、実際の施療に係るポジションを実現するマッサージ機各部の傾動とを、分けることなくまとめて実行することで、初期の座部傾動を実行し、位置検出を行った後、実際の施療に移行して、施療に対応した傾斜角度に座部等を本格的に傾動させる場合のように、位置検出後の傾動で被施療者の着座姿勢が位置検出時から変化して位置検出の結果を施療に適切に反映させられなくなる危険性を排除し、被施療者が施療を受ける姿勢で確実に位置検出が行え、施療に即した着座位置検出と肩位置検出を実行でき、施療時の被施療者の各施療対象箇所に対応したより正確な施療を実現できる。
【0103】
また、前記第2の実施形態の場合のように、被施療者の一部の施療対象箇所における、施療時の施療子51の変位に係る前後方向のオフセット量について、着座位置検出時に取得した施療子51の前方への移動量の大きさに基づいて初期値から調整して、新たなオフセット量を設定する際も、被施療者が施療を受ける姿勢で着座位置検出を行って、施療子の移動量を得ることで、施療時の被施療者の着座姿勢に基づく体後面位置に対応してオフセット量を設定し、これを用いて施療子51を動かすことができ、被施療者に対応した施療をより適切に行える。
【0104】
この他、前記複数のポジションを生じさせる代表的な傾斜角度以外に、被施療者が任意の傾斜角度をスイッチで操作指示するのに対応し、制御部40が、座部12、背もたれ部13、及び脚支持部15の傾斜角度をそれぞれ調整可能な構成とされるのに合わせて、前記同様、マッサージ機の起動後はまず被施療者に傾斜角度をスイッチ操作で指示させ、制御部40がマッサージ機各部を傾動させてから、位置検出を実行する構成とすることもできる。