(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の従来の煙感知器のように、暗箱を回路基板上にフックを穴に係止することにより取り付ける構造のものの場合、通常、回路基板の平面視の大きさは暗箱の平面視の大きさよりも大きく形成されており(特許文献1及び2参照)、回路基板の外縁が全長に亘って暗箱よりも外方に突出し、外力が回路基板の外縁に加わり易い構造のものとなっている。このため、組み立てに際し、暗箱を回路基板に取り付けた段階で回路基板の外縁に外力が加わると、その外力はフックと穴とからなる係止構造部分に大きく作用することになる。そして、フックと穴の数が少なかったり、それらの互いの接合部分に遊びがあったりすると、暗箱と回路基板との間に位置ずれが生じることがあるという問題があった。尚、暗箱と回路基板との間に位置ずれが生じるのを防ぐために、フックと穴の数を多く形成したり、互いの接合部分に遊びができないように形成したりすることが考えられる。しかしながら、そのようにした場合フックを穴に係止する作業が容易ではなくなる、また暗箱や回路基板の製造コストが高くなるという別の問題を生じさせることになる。
【0007】
又、前記の従来の煙感知器のように、煙感知器の内部から挿通され、外部に貫通するネジに嵌合金具を螺合させる構造のものの場合、煙感知器の筐体部分を構成する各部品を組み付けてからでは嵌合金具を取り付けることができない。そのため組品になっていない複数の部品を同時に押さえながら、且つ、小さな部品である嵌合金具も同時に押さえながら、ネジを締める作業が必要であり、嵌合金具の取り付け作業が煩雑であるという問題があった。
【0008】
この発明は、前記の事情に鑑み、組み立てに際し、暗箱と回路基板との間に位置ずれが生じるのを防ぐことができる煙感知器を提供することを目的とするものであり、又、嵌合金具の取り付けを容易に行うことができる煙感知器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、火災によって発生した煙を光学的に検出する煙検知手段を格納する暗箱を備えた煙感知器において、前記暗箱を構成する光学台
の裏面側に回路基板を収納する凹形状の回路基板収納部を設け
、前記回路基板収納部は、前記回路基板を支持する端面を有する台座部が前記光学台の裏面より延出するように設けられるとものとし、また、前記光学台に設けられる発光素子収納部と受光素子収納部における前記光学台の裏面より延出するように設けられる部分に、前記台座部の端面と同じ高さに位置して、前記台座部の端面と共に前記回路基板を支持する端面がそれぞれ設けられるものとしたことを特徴とする煙感知器である。
【0011】
又、この発明は、前記光学台
の裏面側にナットを収納する凹形状
で且つ平面視の形状がナットの平面視の形状に沿った形状に周壁によって画定されるナット収納部を更に設けたことを特徴とする煙感知器である。
【0013】
又、この発明は、
前記光学台の裏面側にナットを収納する凹形状のナット収納部を更に設け、前記ナット収納部は、前記台座部の端面と同じ高さに位置する端面が設けられるものとしたことを特徴とする煙感知器である。
【0014】
尚、前記ナットは、感知器ベースへの装着用の嵌合金具を取り付けるためのボルトと螺合するものとすることができ、前記ボルトは、感知器ベースへの装着側の外部から煙感知器内部に向けて挿通されて前記ナットに至るものとすることができ、更に、前記ボルトは、一方の端部側に嵌合金具が一体のものとして設けられたものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、暗箱を構成する光学台に設けた凹形状の回路基板収納部に回路基板を収納することができるので、組み立てに際し、回路基板の外縁部に外力が加わるのを回路基板収納部によって防ぐことができる。
【0016】
従って、この発明によれば、組み立てに際し、暗箱と回路基板との間で位置ずれが生じるのを防ぐことができる煙感知器を提供することができる。
【0017】
又、この発明によれば、暗箱を構成する光学台に設けたナット収納部にナットを収納することができるので、そのナットを感知器ベースへの装着用の嵌合金具を取り付けるためのボルトと螺合するものとすることができる。又、そのボルトを感知器ベースへの装着側の外部から煙感知器内部に向けて挿通されて前記ナットに至るものとすることができ、又、そのボルトを一方の端部側に嵌合金具が一体のものとして設けられたものとすることができる。つまり、暗箱を構成する光学台に設けたナット収納部にナットを収納することができることで、ボルトを煙感知器の外部から内部に挿通してナットと螺合させることにより嵌合金具の取り付けが可能な煙感知器を構成することができる。即ち、煙感知器の筐体部分を構成する各部品を組み付けた後でも嵌合金具の取り付けが可能な煙感知器を構成することができ、嵌合金具を取り付ける際に煙感知器の筐体部分を構成する複数の部品を同時に押さえることが不要な煙感知器を構成することができる。更に、ボルトを一方の端部側に嵌合金具が一体のものとして設けられたものとすれば、嵌合金具を取り付ける際に嵌合金具を同時に押さえることが不要な煙感知器を構成することができる。
【0018】
従って、この発明によれば、組み立てに際し、嵌合金具の取り付けを容易に行うことができる煙感知器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施形態を
図1乃至
図9に基いて説明する。尚、以下の説明において、「上」、「下」等の位置又は方向を示す語を用いるが、何れも、図面上の位置又は方向に対応して相対的に用いたものであり、それらの位置又は方向は煙感知器の向きに応じて変わるものである。例えば、
図1乃至
図9は感知器カバー側を上に示し、感知器本体側を下に示しているが、煙感知器を天井面に設置する場合はその上下は逆に変わることになる。
【0021】
先ず、この発明の煙感知器の実施形態の一例である煙感知器1全体の基本構成について説明する。尚、煙感知器1は、所謂露出型のものであり(この発明は所謂埋め込み型の煙感知器にも適用可能である。)、感知器ベース(取付ベースとも称される)を介して天井面や壁面等に取り付けられるものであるが、その感知器ベースの図示は省略してある。
【0022】
煙感知器1は、火災発生時の煙を光学的に検知するタイプのものであり、感知器本体2と、各種電気部品が実装される回路基板3と、煙を光学的に検出するための検煙部を包囲し、上部に光学台カバー4aが装着されて暗箱を構成するラビリンス部4bが表面側に設けられた光学台4と、ラビリンス部4bの周囲に装着される防虫網5と、検煙部への煙の流入口を有しつつ、上方から光学台4等を全体的に覆う感知器カバー6とからなる。尚、詳細は後記で説明するが、
図8中、7は頭部に感知器ベースへの装着用の嵌合金具7aが一体のものとして設けられたボルトであり、8はボルト7と螺合するナットである(
図1及び
図2参照)。
【0023】
そして、煙感知器1は、光学台4に発光素子を収納する発光素子収納部4cと受光素子を収納する受光素子収納部4dとが設けられており(
図3及び
図4参照)、発光素子収納部4c内の発光素子の光が検煙部内に流入する煙によって散乱することにより生じる散乱光を受光素子収納部4d内の受光素子で検知することで煙を検知することができるようになっている。
【0024】
次に、煙感知器1における回路基板3の光学台4への取り付け構造の詳細について説明する。
【0025】
光学台4の裏面側(暗箱を構成するラビリンス部4bが設けられている側とは反対側)には、回路基板3を収納する凹形状の回路基板収納部4eが設けられている(
図3、
図7及び
図8参照)。
【0026】
ここで、煙感知器1は、光学台4に回路基板3を収納する回路基板収納部4eを備えていることで、暗箱が表面側に構成される光学台4に設けた凹形状の回路基板収納部4eに回路基板3を収納することができるようになっており、組み立てに際し、回路基板3の外縁部に外力が加わるのを回路基板収納部4eによって防ぐことができるようになっている。
【0027】
つまり、煙感知器1は、光学台4に回路基板3を収納する回路基板収納部4eを備えていることで、組み立てに際し、光学台4の表面側に構成される暗箱と回路基板3との間で位置ずれが生じるのを防ぐことができるようになっている。
【0028】
更に、煙感知器1における回路基板3の光学台4への取り付け構造について説明する。
【0029】
回路基板収納部4eは、光学台4の裏面の下端周縁より下方に延出するように設けられた側壁4fを備えており、その側壁4fによって回路基板収納部4eの形状が全体として凹形状で且つ平面視の形状が回路基板3の平面視の形状に沿った形状に画定されている(
図3乃至
図5参照)。
【0030】
ここで、回路基板収納部4eは、前記の通り、回路基板3を収納して回路基板3の外縁部に外力が加わるのを防ぐことのできるものとなっているが、具体的には側壁4fによってそのようにできるものとなっている。
【0031】
更に、回路基板収納部4eは、下端に平坦面を有する台座部4gを備えている。この台座部4gを備えていることにより、回路基板収納部4eは、回路基板3を台座部4gによって水平状態に支持しつつ収納することができるようになっている。尚、本実施形態において、台座部4gは、側壁4fの内側に沿って平面視で略環状をなすように配されたものとなっている(
図4及び
図7参照)。又、側壁4fは、台座部4gの下端面から回路基板3の厚さだけ突出している。そのため、回路基板収納部4eに回路基板3を収納したとき、側壁4fの下端面と回路基板3とは面一になる。
【0032】
回路基板3には、穴3aが設けられており、又、光学台4には、その裏面に下方に延在するフック4hが設けられており、フック4hを穴3aに挿通して係止させることにより、回路基板3を所定位置に位置させつつ、回路基板収納部4eに収納した状態で光学台4に取り付けることができるようになっている(
図3、
図5、
図7及び
図8参照)。尚、本実施形態においては、穴3a及びフック4hの数を2つとしているが、回路基板3に外力が加わるのを防ぐことができるので1つでも十分である。
【0033】
光学台4の裏面には、発光素子収納部4cの下方部分と受光素子収納部4dの下方部分とが裏面から下方に延出するように設けられており、且つ、それら下方部分のそれぞれの下端に台座部4gと同じ高さに位置する平坦な下端面が設けられている(
図3、
図4、
図7及び
図8参照)。即ち、発光素子収納部4cの下端面と受光素子収納部4dの下端面とが台座部4gの下端面と共に回路基板3を支持することができるようになっており、回路基板3を安定して水平状態に支持することができるようになっている。又、本実施形態では、側壁4fを環状に形成しているが、そのうちの一部に直線状の回転止め4jを形成しているため、回路基板3にも回転止め4jに対応する位置を直線状とすることで回路基板3が正しい位置に支持される。
【0034】
尚、本実施形態においては、後記で詳細に説明するが、光学台4の裏面にナット8を収納する凹形状のナット収納部9が設けられており、そのナット収納部9の周壁9aの下端面も平坦、且つ台座部4gの下端面と同じ高さに位置するものとなっている(
図3、
図4及び
図8参照)。即ち、台座部4gの下端面と、発光素子収納部4cの下端面と、受光素子収納部4dの下端面に加えて、ナット収納部9の周壁9aの下端面によっても回路基板3を支持することができるようになっている。
【0035】
又、本実施形態においては、回路基板収納部4eには、側壁4eを部分的に切り欠くように形成された切欠き部4iが設けられており、回路基板3には、外縁部に回路基板収納部4eの切欠き部4iよりその外方に露出するように形成された突出部3bが設けられている(
図3乃至
図5参照)。これにより、回路基板収納部4eに回路基板3を収納する際に、フック4hと穴3aとの位置関係だけでなく、切欠き部4iと突出部3bとの位置関係によっても、回路基板収納部4eと回路基板3との位置合わせをすることができるようになっている。尚、これら切欠き部4i及び突出部3bは、ナット収納部9に対応した数及び配置で設けられており、数の具体例としてはナット収納部9が4つ設けられている本実施形態においては4つずつ設けられている。
【0036】
尚、本実施形態においては、前記の通り、回路基板収納部4eには切欠き部4iが形成され、切欠き部4iよりその外方に回路基板3の突出部3bが露出するものとなっており、回路基板3の突出部3bに外力が加わり得るものとなっているが、回路基板3の突出部3iはナット収納部9に対応して僅かな範囲で設けられたものであるに過ぎず、回路基板3の外縁のほとんどの部分は回路基板収納部4eの側壁4fによって保護されており、十分に回路基板3の外縁に外力が加わるのを防ぐことができるようになっている。
【0037】
次に、煙感知器1における感知器ベースへの装着用の嵌合金具7aの取り付け構造について説明する。
【0038】
光学台4の裏面には、前記の通り、ナット8を収納する凹形状のナット収納部9が設けられている(
図3、
図4及び
図8参照)。
【0039】
ここで、煙感知器1は、ナット収納部9を備えていることで、嵌合金具7aを容易に取り付けることができようにすることが可能なものとなっている。
【0040】
即ち、煙感知器1は、ナット収納部9を備えていることで、ナット収納部9に収納されるナット8と螺合するボルトとして、本実施形態のボルト7のように、感知器ベースに装着される感知器本体2の裏面側の外部から内部に挿通されて回路基板3の穴3cを貫通してナットに至るものを用いることができるようになっており、又、感知器本体2の裏面側に嵌合金具7aを取り付けるためのものを用いることができるようになっており、又、一方の端部側の一例である頭部に嵌合金具7aを一体のものとして設けたものを用いることができるようになっている(
図2、
図3、
図7及び
図8参照)。
【0041】
そして、煙感知器1は、ナット収納部9に収納されるナット8と螺合するものとしてボルト7を用いていることで、感知器本体2の裏面側の外部から内部に挿通してナット8と螺合させることで嵌合金具7aを感知器本体2の裏面側に取り付けることができるようになっている。それにより、感知器本体2、回路基板3、光学台4、光学台カバー4a、防虫網5及び感知器カバー6等を組み付けて煙感知器1の筐体部分を構成する各部品を組品にした後でも嵌合金具7aを取り付けることができるようになっている。そのため、筐体部分を構成する各部品を組品にした後に嵌合金具7aを取り付けるようにすれば、嵌合金具7aを感知器本体2に取り付ける際に筐体部分を構成する複数の部品を同時に押さえるのを不要にすることができる。加えて、ボルト7を一方の端部側に嵌合金具7aを一体のものとして設けたものとしていることで、嵌合金具7aを感知器本体2に取り付ける際に嵌合金具7a同時に押さえるのを不要にすることができるようになっており、ボルト7をナット8と螺合させるだけで嵌合金具を7を取り付けることができるようになっている。
【0042】
つまり、煙感知器1は、ナット収納部9を備えていることで、組み立てに際し、ナット8を手で押さえなくとも、嵌合金具7aを容易に取り付けることができようになっている。
【0043】
尚、本実施形態においては、ボルト7と嵌合金具7aとを一体のものとしているが、両者は別体のものとしてもよい。
【0044】
更に、煙感知器1における嵌合金具7aの取り付け構造について説明する。
【0045】
ナット収納部9は、前記の通り、光学台4の裏面に設けられているが、具体的には、収納されるナット8が回路基板収納部4eに収納される回路基板3によって覆われる位置に設けられている(
図3乃至
図5参照)。又、ナット収納部9は、周壁9aを備え、その周壁9aによって全体として凹形状で且つ平面視の形状がナット8の平面視の形状(六角形)に沿った形状に画定されている(
図3及び
図4参照)。又、ナット収納部9は、収納されるナット8の下端面が周壁9aの下端面と面一になるような深さを有するものとなっており、即ち、収納されるナット8を回路基板収納部4eに収納される回路基板3と共に上下から挟持することができるような深さを有するものとなっている(
図8参照)。
【0046】
つまり、ナット収納部9は、回路基板収納部4eに収納される回路基板3と協働して、ナット8を一定位置に保持することができるようになっており、ボルト7とナット8とを螺合させる際にボルト7を締め込むだけでボルト7とナット8とを螺合させることができるようになっている。
【0047】
本実施形態において、ナット収納部9は、回路基板収納部4e内の側壁4fに近接した位置に複数、具体的には4つ設けられているが(
図4参照)、その数及び配置は適宜変更することができる。
【0048】
尚、ナット収納部9において、9bはボルト7の先端部が進入することができるように形成された受け穴であり、ナット8とボルト7とを螺合させる際にボルト7の先端部が受け穴9b内に進入することにより、ナット8とボルト7とを確実に螺合させることができるようになっている。
【0049】
[その他の実施形態]
以上、この発明の実施形態の一例を説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変更等が可能である。
【0050】
例えば、回路基板収納部4eに切欠き部4iを設けるのに代えて、回路基板収納部4eに切欠き部4iを設けずに回路基板3の外縁を全長に亘って側壁4fによって保護するようにしてもよい(
図9参照)。そのようにした場合、回路基板3の外縁に外力が加わるのをより防ぐことができるようになるだけでなく、回路基板収納部4e内において光学台4の裏面と回路基板3の表面との間に形成される空間を閉鎖するように構成することができるようになり、回路基板3の表面上に実装される各種部品の腐食を防ぐように構成することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:煙感知器 2:感知器本体 3:回路基板 3a:穴(フック用)
3b:突出部 3c:穴(ボルト用) 4:光学台 4a:光学台カバー
4b:ラビリンス部 4c:発光素子収納部 4d:受光素子収納部
4e:回路基板収納部 4f:側壁 4g:台座部 4h:フック
4i:切欠き部 4j:回転止め 5:防虫網 6:感知器カバー
7:ボルト 7a:嵌合金具 8:ナット 9:ナット収納部 9a:周壁
9b:受け穴