特許第6247461号(P6247461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247461
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】部材の変形量の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/44 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   G01N33/44
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-126833(P2013-126833)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-1475(P2015-1475A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 真一
(72)【発明者】
【氏名】津▲崎▼ 豪俊
(72)【発明者】
【氏名】川端 宏志
(72)【発明者】
【氏名】笠間 健一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智昌
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−201563(JP,A)
【文献】 特開2000−043237(JP,A)
【文献】 特開2003−276853(JP,A)
【文献】 特開2009−120322(JP,A)
【文献】 実開平01−180748(JP,U)
【文献】 特開2010−173223(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01158290(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時変形特性を具えた部材の変形量を測定する方法であって、
前記部材と、この部材が置かれる支持台との間に、前記部材と前記支持台との間の摩擦係数を低下させる摩擦低下手段を配置して経時変形させる工程と
経時変形した部材の変形量を測定する工程とを含み、
前記摩擦低下手段は、前記部材の前記変形とともに回転する球体である
ことを特徴とする部材の変形量の測定方法。
【請求項2】
前記部材は、粘着性を有する請求項1に記載の部材の変形量の測定方法。
【請求項3】
前記部材は、未加硫のゴム部材である請求項1又は2に記載の部材の変形量の測定方法。
【請求項4】
前記部材は、シート状である請求項1乃至3のいずれかに記載の部材の変形量の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時変形特性を具えた部材の変形量を迅速かつ正確に測定しうる測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ゴム製品を作る場合、未加硫のゴム部材が準備される。ゴム部材は、圧延、プレス又は押し出し等により、予め定められた寸法に形成されている。ゴム部材は、そのまま又は目的とする形状等に二次加工された後、加硫される。これにより、目的とするゴム製品が製造される。
【0003】
ところで、上述の未加硫のゴム部材等は、時間の経過とともに形状が少しずつ変形するという経時変形特性を有している。例えば、一般的な未加硫のゴム部材は、時間の経過ととともに縮む傾向がある。従って、上述のような経時変形特性を有する部材は、寸法が安定しないので、それを用いた最終製品の仕上がり寸法や性能等にもばらつきが生じるという問題がある。
【0004】
上記問題を解決するために、部材の経時変形量を測定し、その変形量が小さくなるように、部材を製造する装置が調整乃至改善されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−173223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記部材の経時変形量を測定する際には、部材が支持台の上に置かれ、ある時間経過後、その寸法が測定されている。しかしながら、部材と支持台との接触面には、部材の変形時に摩擦が生じ、ひいては本来の経時変形が妨げられやすい。このため、従来の測定方法では、部材の経時変形量を迅速かつ正確に測定できないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、部材と、部材が置かれる支持台との間に、部材と支持台との間の摩擦係数を低下させる摩擦低下手段を配置することを基本として、経時的に変形する部材の変形量を迅速かつ正確に測定しうる測定方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る部材の変形量の測定方法は、経時変形特性を具えた部材の変形量を測定する方法であって、前記部材と、この部材が置かれる支持台との間に、前記部材と前記支持台との間の摩擦係数を低下させる摩擦低下手段を配置して経時変形させる工程と、経時変形した部材の変形量を測定する工程とを含み、前記摩擦低下手段は、前記部材が置かれる前記支持台の面に設けられ、シリコーン樹脂又はフッ素樹脂によって形成された表面加工層であることを特徴とする。
また、本発明に係る部材の変形量の測定方法は、経時変形特性を具えた部材の変形量を測定する方法であって、前記部材と、この部材が置かれる支持台との間に、前記部材と前記支持台との間の摩擦係数を低下させる摩擦低下手段を配置して経時変形させる工程と、経時変形した部材の変形量を測定する工程とを含み、前記摩擦低下手段は、前記部材の前記変形とともに回転するローラ又は球体であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る前記部材の変形量の測定方法は、前記部材は、粘着性を有するのが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記部材の変形量の測定方法は、前記部材は、未加硫のゴム部材であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記部材の変形量の測定方法は、前記部材は、シート状であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の部材の変形量の測定方法は、経時的に変形する部材と、部材が置かれる支持台との間に、部材と支持台との間の摩擦係数を低下させる摩擦低下手段を配置する工程を含んでいる。このような摩擦低下手段は、部材の変形が妨げられるのを抑制できるため、部材の変形量を迅速かつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】圧延装置の概念図である。
図2】ゴム部材及び支持台を示す斜視図である。
図3】本実施形態の測定方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4図3に示したゴム部材と支持台との部分断面図である。
図5】ゴム部材、支持台及び流体の部分断面図である。
図6】ゴム部材、支持台及び表面加工層の部分断面図である。
図7】ローラが設けられた支持台の斜視図である。
図8図7の部分断面図である。
図9】ゴム部材の変形量と測定時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本発明の部材の変形量の測定方法(以下、単に「測定方法」ということがある)は、経時変形特性を具えた部材の変形量を測定するための方法である。経時変形特性とは、時間の経過とともに形状が少しずつ変形する性質をいう。本実施形態では、経時変形特性を有する部材として、ゴム製品を作る際に準備される未加硫のゴム部材が例示される。この未加硫のゴム部材は、粘着性を有している。
【0021】
図1には、未加硫のゴム部材1Gを製造する装置(圧延装置)2が示される。本実施形態の圧延装置2は、カレンダー部3、クーリング部4及びワインダ部5を含んで構成されている。
【0022】
カレンダー部3は、例えば、上下方向で向き合って配置された一対のカレンダーロール3r、3rを含んで構成されている。一対のカレンダーロール3r、3rの隙間には、ゴム部材1Gが通過されることにより、該ゴム部材1Gをシート状に圧延することができる。
【0023】
クーリング部4は、上下に配列された複数のドラム4a、4bから構成されている。このようなクーリング部4は、シート状のゴム部材1Gを、上下のドラム4a、4b間をジグザグに移動させることにより、該ゴム部材1Gを効果的に冷却することができる。
【0024】
ワインダ部5は、冷却されたシート状のゴム部材1Gを搬送するコンベア5aと、予め定められた寸法に切断されたゴム部材1Gをロール状に巻き取る巻取手段5bとが設けられている。
【0025】
このような圧延装置2により、シート状のゴム部材1Gを形成することができる。また、ゴム部材1Gは、巻取手段5bから再び引き出されて、そのまま又は目的とする形状等に二次加工された後に加硫される。これにより、目的とするゴム製品が製造される。
【0026】
ところで、未加硫のゴム部材1Gは、時間の経過ととともに縮む傾向がある。このため、ゴム部材1Gは、巻取手段5bによってロール状に巻き取られた後も、時間の経過ととともに縮みやすい。このような収縮は、ゴム部材1Gの寸法を不安定にし、ゴム製品の仕上がり寸法や性能等にばらつきを生じさせやすい。このような問題を解決するために、ゴム部材1Gの製造においては、ゴム部材1Gの経時変形量を測定し、その変形量が小さくなるように、圧延装置2を予め調整乃至改善することが重要である。
【0027】
図2には、ゴム部材1Gの経時変形量の測定に用いられる支持台7が示されている。支持台7は、平面視略矩形に形成された板状体7Aを含んで構成されている。この板状体7Aは、例えば、金属や木材等から形成される。また、板状体7Aには、ゴム部材1Gが置かれる平滑な面7sが形成されている。
【0028】
図3には、本実施形態の測定方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の測定方法では、先ず、図1に示した圧延装置2を用いて、シート状のゴム部材1Gが製造される(工程S1)。
【0029】
次に、図2に示されるように、ゴム部材1Gが抽出される(工程S2)。本実施形態の工程S2では、巻取手段5b(図1に示す)で巻き取られる直前のゴム部材1Gの少なくとも一部が抽出される。ゴム部材1Gは、例えば、平面視略矩形のシート状に形成される。ゴム部材1Gは、例えば、長手方向の長さL1が100〜1500mm程度、短手方向の長さL2が100〜500mm程度、厚さW1が0.1〜10mm程度に設定されている。
【0030】
次に、ゴム部材1Gと、支持台7との間に、ゴム部材1Gと支持台7との間の摩擦係数を低下させる摩擦低下手段8を配置して、ゴム部材1Gを経時変形させる(工程S3)。工程S3では、先ず、支持台7の面7sに、摩擦低下手段8が配置される。次に、ゴム部材1Gが、摩擦低下手段8を介して、支持台7の上に置かれる。そして、ゴム部材1Gが変形しなくなるまで放置される。ゴム部材1Gが変形しなくなったか否かの判断は、例えば、ゴム部材1Gの長手方向の長さL1、又は短手方向の長さL2を一定時間(例えば、5〜20分)毎に測定して判断される。
【0031】
図4には、図3に示したゴム部材1Gと支持台7との部分断面図が示される。本実施形態の摩擦低下手段8は、粉体11である。粉体11は、ゴム部材1Gと支持台7との接触を抑制する。このため、粉体11は、ゴム部材1Gと支持台7との摩擦(ゴム部材1Gの粘着)により、ゴム部材1Gの変形が妨げられるのを防ぐことができる。従って、工程S3では、摩擦低下手段8(粉体11)が配置されなかった従来に比べて、ゴム部材1Gを早期に変形させることができる。
【0032】
粉体11としては、適宜選択することができるが、例えば、化学的に安定し、かつ高い潤滑性を有するタルク、シリカ、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、又は、ポリテトラフルオロエチレン等が望ましい。
【0033】
また、散布される粉体11の質量Ms(g)は、下記式(1)で定義されるのが望ましい。
Ms≧m×S/(πr2)…(1)
ここで、
m:粉体の一粒子の質量(g)
S:部材と支持台との接触面積(mm2
r:粉体の平均粒子半径(mm)
【0034】
上記式(1)において、πr2は、平面視において、粉体11の一粒子がゴム部材1Gの接触面12を専有する面積である。このため、ゴム部材1Gと支持台7との接触面積Sが、粉体11の一粒子が専有する面積πr2で除されることにより、ゴム部材1Gの接触面12に、粉体11を隙間なく配置させるのに必要な粒子数を求めることができる。
【0035】
そして、粉体11の粒子数S/πr2に、粉体11の一粒子の質量mが乗じられることにより、粉体11の質量Msを求めることができる。従って、工程S3では、質量Ms(g)以上の粉体11が用いられることにより、粉体11を接触面12に隙間なく配置することができ、ゴム部材1Gと支持台7との間の摩擦係数を確実に低下させることができる。
【0036】
本実施形態では、摩擦低下手段8として、粉体11であるものが例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、摩擦低下手段8としては、流体であってもよい。図5には、ゴム部材1G、支持台7及び流体13の部分断面図が示される。このような流体13も、ゴム部材1Gと支持台7との接触を抑制して、摩擦係数を低下させることができる。
【0037】
流体13としては、適宜選択できるが、ゴム部材1G及び支持台7に対する接触角が90度以下の液体13rが望ましい。このような液体13rは、ゴム部材1Gと支持台7との間で親水性を発揮でき、ゴム部材1Gと支持台7との接触を効果的に防ぐことができる。
【0038】
なお、液体13rの接触角が90度を超えると、ゴム部材1Gと支持台7との間で親水性を十分に発揮できないおそれがある。このため、接触角は、より好ましくは60度以下が望ましく、さらに好ましくは、30度以下が望ましい。
【0039】
液体13rとしては、上記接触角を発揮しうるものであれば、適宜選択することができる。例えば、ゴム部材1G及び支持台7の劣化を防ぎつつ、親水性に優れる水、又は、パラフィン系化合物を含んだ工業用潤滑油等が望ましい。
【0040】
また、摩擦低下手段8としては、支持台7の面7sに設けられた表面加工層であってもよい。図6には、ゴム部材1G、支持台7及び表面加工層14の部分断面図が示されている。表面加工層14としては、部材1が変形したときに、部材1に滑りを生じさせるものが選択される。このような表面加工層14は、ゴム部材1Gと支持台7との間の摩擦係数を低下させることができる。
【0041】
表面加工層14としては、適宜選択することができるが、例えば、シリコーン樹脂、又は、フッ素樹脂等によって形成されるのが望ましい。また、表面加工層14の厚さW2は、1〜10mm程度が望ましい。
【0042】
また、摩擦低下手段8は、部材1の変形とともに回転するローラであってもよい。図7及び図8には、摩擦低下手段8としてローラ15が設けられた支持台7が示されている。本実施形態のローラ15は、支持台7に設けられた孔部7Hに、複数本配置される。ローラ15は、円柱状に形成され、その中心軸15cがゴム部材1Gの短手方向にのびている。このようなローラ15は、ゴム部材1Gの長手方向の変形に対して、回転可能に枢支される。
【0043】
ローラ15の長さL3は、ゴム部材1Gの短手方向の長さL2(図2に示す)よりも大に設定される。さらに、ローラ15は、ゴム部材1Gの長手方向の長さL1(図2に示す)よりも大きい領域T1に複数個配置される。また、ローラ15は、支持台7の面7sよりも、上方に突出(例えば、1〜20mm)している。
【0044】
このようなローラ15は、ゴム部材1Gと支持台7の面7sとの間に摩擦を発生させることなく、ゴム部材1Gを支持することができる。さらに、ローラ15は、ゴム部材1Gの長手方向の変形とともに回転できるため、ゴム部材1Gの変形を妨げることもない。従って、ローラ15は、摩擦低下手段8が配置されなかった従来に比べて、ゴム部材1Gを早期に変形させることができる。
【0045】
なお、ローラ15の直径D1が大きいと、ゴム部材1Gとローラ15との接触面積が大きくなり、ゴム部材1Gの変形が妨げられるおそれがある。このような観点より、直径D1は、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。
【0046】
さらに、ローラ15の表面には、ゴム部材1Gに滑りを生じさせる表面加工層(図示省略)が設けられてもよい。このような表面加工層は、ゴム部材1Gとローラ15との間の摩擦係数を低下させることができ、ゴム部材1Gを効果的に変形させることができる。
【0047】
また、摩擦低下手段8は、ローラ15に代えて、任意の方向に回転可能な球体(図示省略)であってもよい。この場合、球体は、ゴム部材1Gの長手方向、及び短手方向の双方に、複数個配置されるのが望ましい。これにより、球体は、ゴム部材1Gの変形に追従して回転できるため、ゴム部材1Gの変形が妨げられるのを、効果的に防ぐことができる。
【0048】
また、未加硫のゴム部材1Gは、室内の温度を高くするほど、その変形が促進される傾向がある。このため、工程S3では、ゴム部材1Gを経時変形させる際に、室内の温度が常温(20〜30℃)よりも高いのが望ましい。なお、室内の温度は、例えば、40〜70℃に設定されるのが望ましい。
【0049】
次に、変形したゴム部材1Gの変形量が測定される(工程S4)。本実施形態では、工程S3において、ゴム部材1Gを従来に比べて早期に変形させることができるため、ゴム部材1Gの変形量の測定を、迅速に開始することができる。また、ゴム部材1Gは、ゴム部材1Gの変形が妨げられないため、ゴム部材1Gの変形量を正確に測定することができる。
【0050】
ゴム部材1Gの変形量は、例えば、図2に示されるように、ゴム部材1Gが矩形状(長方形状)に形成される場合、短手方向に比べて変形量(長さ)が大きい長手方向において、測定されるのが望ましい。また、ゴム部材1Gの変形量は、工程S3で変形させる前に、ゴム部材1Gの表面に予め記入された一対の平行線17、17(図2に示す)に基づいて測定されるのが望ましい。これにより、ゴム部材1Gが変形して、各平行線17、17に歪が生じてしまう場合でも、例えば、平行線17、17間の最短距離を測定することにより、ゴム部材1Gの変形量を定量的に測定することができる。
【0051】
次に、ゴム部材1Gの変形量が許容範囲内か否かが判断される(工程S5)。この工程S5では、ゴム部材1Gの変形量が許容範囲内と判断された場合、現在の圧延装置2の設定のまま、ゴム部材1Gが継続して製造される。一方、ゴム部材1Gの変形量が許容範囲外と判断された場合は、ゴム部材1Gの変形量が小さくなるように、圧延装置2の調整乃至改善が行われ(工程S6)、工程S1〜S5が再度実施される。これにより、本実施形態では、ゴム部材1Gの変形量を許容範囲内に維持することができる。なお、圧延装置2の調整乃至改善は、例えば、従来の方法に従って、クーリング部4及びワインダ部5でのゴム部材1Gの移動速度を調整すること等によって実施される。
【0052】
本実施形態では、測定対象の部材1として、シート状に形成された未加硫のゴム部材1Gが例示されたが、例えば、ブロック状に形成されるものでもよい。さらに、部材1としては、粘着性を有する未加硫のゴム部材1Gに限定されるわけではなく、例えば、ゲル又は樹脂でもよい。本発明の測定方法では、上記のような部材1と支持台7との間に、摩擦係数を低下させる摩擦低下手段8が配置されるため、部材1の変形量を迅速かつ正確に測定することができる。
【0053】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0054】
図3に示した処理手順に従って、未加硫のゴム部材と、このゴム部材が置かれる支持台との間に、摩擦係数を低下させる摩擦低下手段(粉体)を配置して、ゴム部材を経時変形させた。そして、変形開始から120分経過するまでの間、ゴム部材の変形量が、複数回測定された(実施例)。変形量は、ゴム部材の長手方向の長さを基準として測定されている。
【0055】
また、比較のために、摩擦低下手段(粉体)を配置せずに、ゴム部材を経時変形させた。そして、変形開始から120分経過するまでの間、ゴム部材の変形量が、複数回測定された(比較例)。そして、実施例及び比較例において、ゴム部材の変形量が比較された。なお、共通仕様は、次のとおりである。
ゴム部材:
天然ゴム(NR):RSS#3(60質量部)
スチレンブタジエンゴム(SBR):住友化学(株)製のSBR1502(40質量部)
カーボンブラック:昭和キャボット社製のカーボンブラックN326(50質量部)
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPS32(4質量部)
老化防止剤6C:住友化学工業(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)(2質量部)
ステアリン酸:日本油脂(株)製の椿(2.5質量部)
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種(3.5質量部)
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄(2質量部)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)(2質量部)
長手方向の長さL1:1000mm
短手方向の長さL2:400mm
厚さW1:5mm程度
部材と支持台との接触面積S:400000mm2
摩擦低下手段(粉体):白石カルシウム(株)社製のソフトン2200
平均粒子半径r:0.0005mm
一粒子の質量m:1×10−9
散布された粉体の質量:700g( ≧ m×S/(πr2):509g)
室内の温度:30℃
【0056】
図9には、実施例及び比較例の変形量と、測定時間との関係を示すグラフが示される。テストの結果、比較例では、変形量が3%に達するのに要した時間が120分であった。一方、実施例では、変形量が3%に達するのに要した時間が15分程度であった。従って、実施例は、比較例よりも、ゴム部材を早期に変形させることができ、ゴム部材の変形量を迅速かつ正確に測定できることを確認できた。
【符号の説明】
【0057】
1 部材
7 支持台
8 摩擦低下手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9