(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247466
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】換気装置および換気構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
E04B1/70 D
E04B1/70 E
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-143834(P2013-143834)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-17380(P2015-17380A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】柴山 哲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 沙帆
(72)【発明者】
【氏名】松原 悟志
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−032649(JP,A)
【文献】
特開2013−057213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板部に通気孔が形成されており、上記通気孔の上方となる上記板部の部位は水切りが装着される第1装着部とされ、上記通気孔の下方となる上記板部の部位は樋が装着される第2装着部とされ、上記板部の裏面には上記通気孔から浸入した雨水を返す換気水返しが設けられており、上記換気水返しの背面側に防火ダンパーが設けられていることを特徴とする換気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の換気装置が上端部に固定された外壁パネルが建物に装着されてなる換気構造。
【請求項3】
請求項2に記載の換気構造において、上記第1装着部が締結部材によって上記建物に留め付けられることを特徴とする換気構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の換気構造において、上記建物はフラット屋根を有する住宅であることを特徴とする換気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外気を建物内に取り込む換気装置および換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フラット屋根を有する住宅においては、換気のために外壁面に貫通孔を形成して換気口フードを設けることが行われている。
【0003】
また、特許文献1には、建物本体の軒先に取付けられ、軒樋を後付け可能な軒先ユニットに関し、鼻隠し部材と、軒先ユニットを建物躯体に固定するための複数の軒先ユニット取付部材と、軒樋を支持可能な複数の樋受け部材と、鼻隠し部材の建物屋外側の面の対面を上方側から被覆する水切材とを少なくとも備え、鼻隠し部材の屋外側の面には、少なくとも一つの通気孔が形成されるとともに、通気孔の屋外側を被覆するように形成されたリブ片を備え、鼻隠し部材の建物本体屋外側の面とリブ片との間には換気開口部を形成し、水切材の側面被覆部及び上面被覆部は、通気孔を上方側から被覆する位置に配設した換気構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−32652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記換気口フードを設ける構造では現場での作業負担が大きく、また、上記換気口フードの配置間隔次第で意匠性が損なわれるおそれがある。また、特許文献1に記載の構造では、通気孔から入った雨水に対する水返しが十分でない。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、通気孔から入った雨水に対する水返しが適切に行え、また、換気口フードを設けることなく換気構造を構築することが容易である換気装置および換気構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の換気装置は、上記の課題を解決するために、板部に通気孔が形成されており、上記通気孔の上方となる上記板部の部位は水切りが装着される第1装着部とされ、上記通気孔の下方となる上記板部の部位は樋が装着される第2装着部とされ、上記板部の裏面には上記通気孔から浸入した雨水を返す換気水返しが設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、上記板部の裏面には上記通気孔から浸入した雨水を返す換気水返しが設けられているので、通気孔から入った雨水に対する水返しが適切に行える。
【0009】
上記換気水返しの背面側に防火ダンパーが設けられていてもよい。これによれば、万が一の火災時に建物内への熱の流入を遮断することができる。
【0010】
また、この発明の換気構造は、上記換気装置が上端部に取り付けられている外壁パネルが建物に装着されてなることを特徴とする。
【0011】
上記の構成であれば、換気口フードを設けることなく換気構造を容易に構築することができる。
【0012】
上記第1装着部が締結部材によって上記建物に留め付けられていてもよい。また、上記建物はフラット屋根を有する住宅であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、通気孔から入った雨水に対する水返しが適切に行える。また、換気口フードを設けることなく換気構造を構築することが容易であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態にかかる換気装置が設けられた建物のフラット屋根部の断面図である。
【
図3】
図1の換気装置の水返しを示した図であって、同図(A)は平面図、同図(B)は縦断面図、同図(C)は正面図、同図(D)は斜視図である。
【
図4】
図1の換気装置の防火ダンパーを示した図であって、同図(B)、同図(D)、同図(F)は異なる向きから見た図であり、それぞれの縦断面図が同図(A)、同図(C)、同図(E)によって示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の換気構造100は、例えば、フラット屋根を有する住宅の樋配置部に設けられる。上記フラット屋根は例えばコンクリート床版により葺かれているが、これに限らない。また、上記換気構造100は住宅の全周に配置してもよいが、この実施形態では、例えば、5P(例えば、P=910mm)毎に配置している。
【0016】
上記換気構造100を構成している外壁パネル1は、フレーム11の前面側に下地板12および外壁板13が設けられ、上記フレーム11内に断熱材14が配置された構造を有する。この外壁パネル1は例えば、上記フレーム11が連結板15を介して桁部16に固定される。
【0017】
上記外壁パネル1の上端部にこの実施形態の換気装置2がビス61によって取り付けられている。さらに述べれば、上記外壁パネル1の上端部に換気スリットとなる部分が存在しており、この換気スリットとなる部分に上記換気装置2がセットされた状態の上記外壁パネル1が住宅の外部開口に嵌め込まれることで上記換気構造100が構築される。
【0018】
上記換気装置2は、屋外側に露呈される板部(換気見切り)21を備える。上記板部21には、
図2にも示すように、通気孔21aが形成されており、上記通気孔21aの上方となる上記板部21の部位は水切り3が装着される第1装着部22とされる。また、上記通気孔21aの下方となる上記板部21の部位は樋4のブラケット41が装着される第2装着部23とされる。そして、上記板部21の裏面には上記通気孔21aから浸入した雨水を返す換気水返し24が設けられている。上記換気水返し24の両端は側板25に固定されており、上記両側板25間の部分が上記換気スリットとなる部分に嵌め込まれている。なお、上記側板25を設けない構造も採用できる。さらに、この実施形態では、上記換気装置2は、上記換気水返し24の背面側に防火ダンパー5を備えている。
【0019】
上記板部21は、
図3にも示すように、上記通気孔21aを横方向に多数有しており、この通気孔21aの形成領域の幅が770mm程度とされ、全横幅が850mm程度とされている。また、上記換気水返し24の背面側には上記防火ダンパー5との間で空気路を形成する受け板部24aが設けられている。
【0020】
上記防火ダンパー5は、
図4にも示すように、通気孔51を有しており、この通気孔51を上記受け板部24aによる空気路に面するように設けられる。また、上記通気孔51を塞ぐことが可能な位置に蓋部52が回動可能に且つばねに付勢されて設けられている。上記蓋部52は温度ヒューズ53によって通常は上記通気孔51の閉鎖が阻止されているが、火災時の熱によって上記温度ヒューズ53が動作すると、上記付勢力が解放され上記蓋部52が回動して上記通気孔51が塞がれる。
【0021】
また、
図1に示したが、上記外壁パネル1を上記住宅に固定するときに、上記板部21の第1装着部22がビス(締結部材)62によって留め付けられる。そして、上記ビス62を覆い隠すように上記第1装着部22に上記水切り3が装着される。上記水切り3は上記通気孔21aの前面側で下り傾斜状に設けられ、当該水切り3を伝った雨水は樋4へと導かれる。また、上記水切り3の上部水平板部はフラット屋根側に位置し、ビス63によって留め付けられている。上記水切り3の裏面側には防水シートが設けられ、上記水切り3の隙間から建物内へ雨水が浸入するのを防止するようにしている。また、上記換気装置2および上記防火ダンパー5は、上記受け板部24aの奥側垂下片に上記防火ダンパー5の奥側垂下片を重ねた状態で上記フレーム11にビス64によって留め付けられている。さらに、上記ブラケット41は、上記第2装着部23の前面側においてビス65によって留め付けられている。
【0022】
上記の構成であれば、上記板部21の裏面には上記通気孔21aから浸入した雨水を返す換気水返し24が設けられているので、通気孔21aから入った雨水に対する水返しが適切に行える。そして、上記換気装置2が上端部に取り付けられている外壁パネル1が上記住宅に装着されたことで、換気口フードを設けることなく換気構造を容易に構築することができる。また、この実施形態では、上記外壁パネル1の工場出荷段階において上記外壁パネル1に上記換気装置2および上記防火ダンパー5が取り付けられており、施工現場においては上記外壁パネル1を上記住宅に嵌め込むだけで、当該住宅において上記換気構造100が構築されることになる。また、上記換気水返し24の背面側に防火ダンパー5が設けられていると、万が一の火災時に建物内への熱の流入を遮断することができる。
【0023】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 外壁パネル
2 換気装置
21 板部
21a 通気孔
22 第1装着部
23 第2装着部
24 換気水返し
3 水切り
4 樋
41 ブラケット
5 防火ダンパー
100 換気構造