特許第6247487号(P6247487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247487
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】穿刺具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   A61M25/06 500
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-198049(P2013-198049)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-62537(P2015-62537A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】田村 誠
(72)【発明者】
【氏名】玉野 壽美
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−519707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外針と、前記外針の基端部を保持する外針ハブと、前記外針に先端部が挿入される内針と、前記内針の基端部を保持する筒状の注射具とを具備し、
前記注射具は、前記内針の基端部を保持する内針ハブと、前記外針ハブを把持する把持手段を有すると共に、前記内針ハブの内部に進退自在に取付けられた筒状体と具備し、
前記筒状体は、前記内針ハブの内部に進退自在に取り付けられる外筒と、前記外筒の内部に進退自在に取付けられた、内針が挿通する貫通孔を有する内筒とを備え、
更に、前記内筒及び前記外筒は、前記貫通孔の連通状態を遮断する貫通孔遮断手段を備え、
前記貫通孔遮断手段は、内筒に形成された針止部と、前記針止部の外面を押圧する外筒に形成された押圧部とを備え、
前記針止部は、前記内筒の軸部に一端部が連結された基体部と、前記基体部の先端部から突出して形成され、後面部にテーパ面が形成された閉塞部とを備え、前記内筒の軸部に形成された孔部内に回動可能に設けられ、
前記基体部に押圧部からの力が加わらない状態において、前記閉塞部は貫通孔内に突出し、前記貫通孔を閉塞した状態にあり、前記閉塞部の後面部に形成されたテーパ面から内針が挿入されることにより、前記閉塞部は拡開し、
一方、前記内針が前記針止部を通過して引き抜かれると、前記針止部は内筒の軸部に形成された孔部内に回動し、かつ前記押圧部によって前記閉塞部の拡開が規制され、前記貫通孔が閉塞され内針が挿通しない状態になされることを特徴とする穿刺具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穿刺具に関し、特に外針(カテーテル)を血管に留置するための穿刺具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外針(カテーテル)を血管に留置するための穿刺具には、抜き取られた使用済みの内針が、術者や患者あるいは廃棄作業者等に誤って刺さり怪我を負わせ、更には内針が刺さったことにより肝炎、各種伝染性疾患等に感染する虞があり、使用済みの内針に対する安全対策が求められている。
【0003】
この安全対策として、例えば、特許文献1には、先端部に鋭利な針先を有する針体と、この針体の基端部に固定されたハブと、針体に対し相対的に移動可能に設置され、針体の針先を収納可能なプロテクタと、当接部材およびコイルバネ(移動手段)で構成されたシャッター作動手段と、このプロテクタの針体からの離脱を阻止するヒモ(離脱阻止手段)とを備えた穿刺具が提案されている。
この穿刺具は、圧縮されたコイルバネを開放することで、プロテクタ本体が摺動し、プロテクタ本体により、ハブに固定された針の先端を保護するようになされている。
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載された穿刺具にあたっては、針の先端を保護するには、使用者(術者)が圧縮されたコイルバネを動作させる操作を行う必要があり、その操作を忘れると、血液の付着した針が露出することになり、安全性を確保できないという課題があった。
【0005】
この課題を解決する穿刺具が、例えば、特許文献2、3において提案されている。
特許文献2、3に記載されている穿刺具は、外針と、外針を保持する外針ハブと、外針に先端部が挿入される内針と、内針の基端部を内部に保持する筒状の内針ハブとを備え、外針を血管に留置した後、内針を内針ハブ内部に収容し、収容した内針が内針ハブ内部から突出しないように構成されている。
具体的には、内針の内部通路を閉塞する弾性部材からなる針止部材が設けられ、内針が内針ハブ内部に収容された際、前記針止部材の復元力によって、内針の内部通路を閉塞し、内針ハブ内に収容された内針が、前記内針ハブから外部に突出しないようになされている。
【0006】
このように、特許文献2、3に記載されている穿刺具にあっては、外針を血管に留置した後、使用者(術者)の外針からの内針の引抜き操作に関連して、内針を内針ハブ内部に収容し、収容した内針が内針ハブ内部から突出しないようなされるため、特許文献1に記載された穿刺具のように、使用者(術者)が操作を忘れたことによる針の露出を防止でき、安全性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−28236
【特許文献2】特開平11−57002
【特許文献3】特開2002−126080
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した特許文献2、3に記載された穿刺具において、内針が内針の内部通路にある状態では、針止部材の復元力(弾性力)によって、前記針止部材は内針の外周面に圧接している。そして、引抜き操作により、内針が針止部材の配置位置を通過すると、針止部材の復元力(弾性力)によって、前記針止部材は内部通路内に拡がり、内部通路を閉塞するように構成されている。
このように、前記針止部材が内針の外周面に圧接しているため、使用者(術者)の外針からの内針引抜き操作の際、針止部材の復元力(弾性力)が摺動抵抗となり、内針の引抜き操作を容易に行うことができないという課題があった。
一方、針止部材の復元力(弾性力)を小さくし、内針の引抜き操作の際の摺動抵抗を小さくすると、針止部材が内部通路全体に拡開せず、内部通路を完全に閉塞できないために、内針が外部に突出する虞があった。
【0009】
また、針止部材は、ポリエチレン等の合成樹脂あるいはステンレス鋼等の金属材料で形成される。この針止部材を、ステンレス鋼等の金属材料で形成した場合には、コストが嵩み好ましいものではなかった。
一方、針止部材を、ポリエチレン等の合成樹脂で形成した場合には、コスト的には好ましいが、内針の引抜き操作の際、内部通路を十分に閉塞できず、内針が外部に突出する虞があった。即ち、針止部材が内針の外周面に圧接している状態(外針からの内針の引抜き操作が行われる前)にあっては、針止部材は変形状態にある。そのため、穿刺具が長期間保管されていた等、未使用の期間が長い場合には、前記針止部材が塑性変形し、内針引抜き操作の際、針止部材が十分に拡開せず、内部通路を閉塞できず、内針が外部に突出する虞があった。
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため、内針の引抜き操作の際の摺動抵抗を極力小さくすると共に、コスト的に安価に製作でき、更には、長期間未使用の状態が続いても、内針が内針の引抜き操作によって内針ハブに収容された後は、内針の外部への突出を防止することができる穿刺具を鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、内針の引抜き操作によって、内針を内針ハブ等に収容することができ、さらに、内針が挿通する貫通孔を確実に遮断し、内針の外部への突出を防止できる穿刺具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかる穿刺具は、外針と、前記外針の基端部を保持する外針ハブと、前記外針に先端部が挿入される内針と、前記内針の基端部を保持する筒状の注射具とを具備し、前記注射具は、前記内針の基端部を保持する内針ハブと、前記外針ハブを把持する把持手段を有すると共に、前記内針ハブの内部に進退自在に取付けられた筒状体と具備し、前記筒状体は、前記内針ハブの内部に進退自在に取り付けられる外筒と、前記外筒の内部に進退自在に取付けられた、内針が挿通する貫通孔を有する内筒とを備え、更に、前記内筒及び前記外筒は、前記貫通孔の連通状態を遮断する貫通孔遮断手段を備え、前記貫通孔遮断手段は、内筒に形成された針止部と、前記針止部の外面を押圧する外筒に形成された押圧部とを備え、前記針止部は、前記内筒の軸部に一端部が連結された基体部と、前記基体部の先端部から突出して形成され、後面部にテーパ面が形成された閉塞部とを備え、前記内筒の軸部に形成された孔部内に回動可能に設けられ、前記基体部に押圧部からの力が加わらない状態において、前記閉塞部は貫通孔内に突出し、前記貫通孔を閉塞した状態にあり、前記閉塞部の後面部に形成されたテーパ面から内針が挿入されることにより、前記閉塞部は拡開し、一方、前記内針が前記針止部を通過して引き抜かれると、前記針止部は内筒の軸部に形成された孔部内に回動し、かつ前記押圧部によって前記閉塞部の拡開が規制され、前記貫通孔が閉塞され内針が挿通しない状態になされることを特徴としている。
【0013】
このように、本発明にあっては、内筒に形成された針止部が、外筒に形成された押圧部によって拡開が規制され、前記針止部が貫通孔の連通状態を確実に遮断し、内針が挿通しない状態になすことに特徴がある。
即ち、従来の針止部材のように復元力を用いて、貫通孔を閉塞し、内針が挿通しない状態なすものでないため、穿刺具が長期間保管されていた等、未使用の期間が長い場合においても、前記内筒の貫通孔の連通状態を確実に遮断することができる。
また、本発明にあっては、基体部に押圧部からの力が加わらない状態において、前記閉塞部は貫通孔内に突出し、前記貫通孔を閉塞した状態にあり、前記閉塞部の後面部に形成されたテーパ面から内針が挿入されることにより、前記閉塞部は拡開することに特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内針の引抜き操作によって、内針を内針ハブ等に収容することができ、さらに、内針が挿通する貫通孔を確実に遮断し、内針の外部への突出を防止できる穿刺具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる穿刺具の外観を示す斜視図である。
図2図2は、図1における穿刺具のプロテクタを取り外した状態を示す斜視図である。
図3図3は、図1にかかる穿刺具のプロテクタを除く、分解斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態の穿刺具を示す縦断面図であって、(a)は縦断面図、(b)は(a)の縦断面図と90度方向の異なる縦断面図である。
図5図5は、図4に示した外筒を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は縦断面図、(c)は(b)の縦断面図と90度方向の異なる縦断面図である。
図6図6は、図4に示した内筒を示す斜視図である。
図7図7は、図6に示した内筒を展開した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)の背面図である。
図8図8は、図4に示された穿刺具を使用する手順を説明するための内針ハブの伸長が終了した状態を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は(a)の縦断面図と90度方向の異なる縦断面図である。
図9図9は、図4に示された穿刺具を使用する手順を説明するための外針が解放(解除)された状態を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は(a)の縦断面図と90度方向の異なる縦断面図である。
図10図10は、図4に示した内筒の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態にかかる穿刺具について、図1乃至図9に基づいて説明する。
穿刺具1は、図1および図2に示すように、外針21と、前記外針21に先端部(紙面左端部)が挿入される内針3と、前記内針3の一端部(基端部)を保持する筒状の注射具4と、前記外針21および前記内針3を覆うプロテクタ5とを備えている。また、前記穿刺具1において、前記内針3を除く全ての部品は樹脂製である。尚、図1では、前記外針21および前記内針3は、前記プロテクタ5に覆われて見ることができない。
また、前記カテーテル2は、図2、3に示すように可撓性を有する中空の管からなる外針21と、外針21の基端部を保持する外針ハブ22とを有する。
【0020】
前記注射具4は、図2図4に示すように、筒状の内針ハブ41と、前記内針ハブ41の基端(紙面右端)に圧入によって取り付けられると共に、前記内針3の基端部が保持される略円筒状の針保持部42aを有する尾栓42とを備えている。
【0021】
また、前記注射具4は、前記内針ハブ41の内部に進退自在に取り付けられた外筒6と、前記外針ハブ22を把持する4つのアーム71Aを有し、前記外筒6の内部に進退自在に取付けられた内筒7とを備えている。
尚、本実施形態では、前記内筒7に、前記4つのアーム71Aが形成された場合を示しているが、2つ以上のアームで外針ハブ22を保持できれば良い。
【0022】
前記外筒6は、図5に示すように、前記外筒6の軸部64の軸線に沿って形成された(内筒7の進退方向に沿って形成された)溝部61と、前記4つのアーム71Aを収容するアーム開閉部62とを備え、全体として筒状に形成されている。
尚、前記4つのアーム71Aは、前記アーム開閉部62の内面の両側部に形成されたガイド溝部62Aに、案内されながら進退可能に形成されている。
【0023】
前記溝部61は、図4(a)、図5(c)に示すように、前記外筒6の周面における上部および下部の2箇所に対称となるように形成されている。
また、前記アーム開閉部62は、図4に示すように、前記外筒6に前記内筒7が収容されている場合には、前記4つのアーム71Aは閉じられ前記外針ハブ22を把持する。
一方、前記外筒6から前記内筒7が引抜かれた(進出した)場合には、図9に示すように、ガイド溝部62A(アーム開閉部62)による規制がなくなるため、アーム71A自体の弾発力により、前記4つのアーム71Aは開き、前記外針ハブ22を解放する。
【0024】
このように、前記4つのアーム71Aと、前記アーム開閉部62とによって、前記外針ハブ22を把持する把持手段が構成され、前記4つのアーム71Aがアーム開閉部62内に後退している状態にあっては、図4に示すように、外針ハブ22を把持する状態となり、前記4つのアーム71Aがアーム開閉部62から進出している状態にあっては、図9に示すように、外針ハブ22を解放する状態となる。
【0025】
また、前記外筒6の軸部64の一端部は、アーム開閉部62の内部まで延設され、後に述べる内筒7の針止部72Bを押圧する、円筒状の押圧部65が形成されている。
前記押圧部65の内周面は、針止部72Bの外周面(外面)に接するように形成されているため、拡開している針止部材72Bは、この押圧部65によって規制され、閉じられる。その結果、穿刺後、閉じられた針止部材72Bによって、外筒6の内部に収容された内針3の飛び出しが防止される。
尚、この押圧部65の形成位置、長さ寸法は、後述べる貫通孔73の遮断と外針ハブ22の解放が同時(略同時を含む)になされるように設定するのが好ましい。
【0026】
また、前記外筒6の軸部64の他端部(後端部)には、軸部64の外周面から突出して形成された係止部63が設けられている。この係止部63は、内針ハブ41から前記外筒6が伸長した際、内針ハブ41から外筒6が脱落しないために設けられている。
【0027】
前記内筒7は、図4図6に示すように、前記4つのアーム71Aを備えた首部71と、前記首部71よりも縮径した軸部72と、前記首部71および前記軸部72の中心を貫通し、前記内針3を挿通させる貫通孔73とを有し、全体として筒状に成形されている。
尚、前記貫通孔73の径は、内針3の径よりも僅かに大きく形成され、内針3の引抜き操作の際の摺動抵抗を小さくように構成されている。
【0028】
前記軸部72は、前記外筒6の軸部64内に移動可能に収容され、また前記4つのアーム71Aを備えた首部71は、前記外筒6のアーム開閉部63内に移動可能に収容されている。そして、前記4つのアーム71Aは、アーム開閉部63のガイド溝62Aに案内されながら移動し、アーム開閉部63よりも前方に突出した際、アーム71A自体の復元力(弾性力)によって、アーム71Aは拡開するように構成されている。
【0029】
また、前記内筒7には、前記外筒6の溝部61内に収容され移動可能に形成された、突出部72Aと針止部72Bとを備えている。
この針止部72Bは、前記軸部72に一端部が連結された基体部72B1と、前記基体部72B1の先端部から軸部72の貫通孔73方向に突出して形成された閉塞部72B2とを備えている。
即ち、前記針止部72Bは、内筒7の軸部72に形成された孔部72a内に設けられ、前記基体部72B1の外面に力を受けると、基体部72B1の一端部を中心に、前記閉塞部72B2が軸部72の径方向(貫通孔73方向)に回動可能に形成されている。
【0030】
更に、具体的に説明すれば、前記閉塞部72B2は、針止部72B(基体部72B1)に外力が加わらない自然状態では、閉塞部72B2は拡開しており、閉塞部72B2は貫通孔73内には、位置していない。
一方、図9に示すように、針止部72B(基体部72B1)に外力が加わると、孔部72a内を軸部72の径方向(貫通孔73方向)に回動し、閉塞部72B2が貫通孔73内に突出し、前記貫通孔73を閉塞するように構成されている。
【0031】
即ち、前記針止部72Bが外筒6の押圧部65内に収容されると、前記押圧部65は基体部72B1の外周面に接し、前記閉塞部72B2は前記貫通孔73を遮断する方向に回動し、前記貫通孔73を遮断する。
このように、前記押圧部65によって、前記閉塞部72B2は前記貫通孔73を遮断する方向に回動し、前記貫通孔73を遮断するため、例えば、穿刺具が長期間保管されていた等、未使用の期間が長い場合において、前記貫通孔73を確実に遮断することができる。
【0032】
また、前記閉塞部72B2には、図4に示すように、凸部72B21と、凹部72B22が設けられている。詳しく述べれば、上側に位置する閉塞部72B2の先端部には、凸部72B21が設けられ、続いて凹部72B22が設けられている。一方、下側に位置する閉塞部72B2の先端部には、凹部72B22が設けられ、続いて凸部72B21が設けられている。しかも、閉塞部72B2が貫通孔73内に突出した際、前記凸部72B21は、貫通孔73を横断するように構成されている。
【0033】
このように構成されているため、上下に配置された一対の閉塞部72B2が貫通孔73内に突出した際、上側に位置する閉塞部72B2の凸部72B21と、下側に位置する閉塞部72B2の凹部72B22が噛合し、また上側に位置する閉塞部72B2の凹部72B22と、下側に位置する閉塞部72B2の凸部72B21が噛合し、前記貫通孔73を確実に閉塞する。
しかも、上側に位置する閉塞部72B2の先端部の凸部72B21が、貫通孔73を横断し、前記貫通孔73を閉塞する。
そのため、穿刺後、外筒6内部に収容された内針3が、貫通孔73を挿通する際、前記上側に位置する閉塞部72B2の先端部の凸部72B21に当たるため、内筒7からの内針3の飛び出しを、より確実に防止することができる。
【0034】
また、前記突出部72Aは、前記溝部61のそれぞれに対応するように、前記軸部72の上面および下面の2箇所に対称となるように形成されている(図4参照)。そして、前記溝部61と前記突出部72Aとによって、前記外筒6に対する前記内筒7の進退方向(内筒7に対する前記外筒6の進退方向)を規制している。
尚、前記内筒7を前記外筒6に対して進出させた際、前記外筒6および内筒7は互いに分離することのないように、溝部61の端部に前記突出部72Aが係止されるように構成されている。
【0035】
ここで、前記内筒7は、図7に示すように、下部7A(紙面左側)と、中心線lを挟んで反対側に形成された上部7B(紙面右側)とを一体として形成された部品であり、前記上部7Aおよび前記下部7Bを折曲げ線(中心線l)を中心に折り畳むことによって形成される。
また、前記下部7Aおよび前記上部7Bの中央には、前記内筒7の軸線方向に沿って断面半円状の溝部73A,73Bがそれぞれ形成されている。これらの溝部73A,73Bは、前記下部7Aおよび前記上部7Bを折り畳むことによって、一つの貫通孔73が形成される。
【0036】
尚、図示しないが、前記内針ハブ41と外筒6との間に、外筒6を延伸する中継筒を設けても良い。例えば、柔軟な合成樹脂で形成すること等により、柔軟性を付与した中継筒8を設けることにより、内針ハブ41の引抜き動作方向が、斜め方向(内針3の延長線上ではない方向)になされ、中継筒8に曲げ力が加わった場合にも、中継筒8が座屈する等の破損を防止することができる。
【0037】
次に、このような穿刺具1を使用する場合について説明する。
まず、図1に示す穿刺具1からプロテクタ5を外し、図2図4に示すようにカテーテル2および内針3を露出させる。そして、前記外針21および前記内針3を血管(患者の身体100)に穿刺する。
【0038】
その後、前記外針21を留め置きするために、図4の矢印方向に、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記外針21から離間する方向に移動させる(引抜動作を行う)。この内針ハブ41の引抜き動作により、前記注射具4は伸長する。
具体的には、前記外針21を留置した状態において、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記外針21から離間させると、前記内針ハブ41が軸方向に沿って移動し、前記注射具4は全体として伸長することになる。このとき、外針ハブ22は内筒7によって保持され、内筒7と外筒6はアーム71Aがアーム開閉部62の内壁に圧接しているため、一体化している。
【0039】
したがって、内針3の後端部(基端部)を保持する内針ハブ41を軸方向に沿って移動すると、内針3も同様に軸方向に沿って移動する。そして、外針21内から引出されることで、引抜き出された内針3が内筒7、外筒6、内針ハブ41内に覆われる(図8参照)。
【0040】
そして、図8に示すように、外筒6の係止部63が内針ハブ41に係止された後、更に内針ハブ41を軸方向(図中の矢印方向)に沿って移動すると、前記内針ハブ41の移動に伴って、前記外筒6が軸方向に沿って移動する。その結果、前記内筒7の突出部72Aは前記溝部61によって案内されながら、前記内筒7は外筒6から引抜き出される方向に移動する。
【0041】
このとき、開いていた針止部72Bが前記押圧部65の内部に収容され、前記押圧部65の内周面と接し、力を受けると貫通孔73方向(軸部72の径方向)へ回動し、貫通孔73を閉塞する。これにより、前記貫通孔73の連通状態は遮断される(図9参照)。
したがって、針止部72Bによって、貫通孔73が遮断された後は、内針ハブ41をカテーテル2側に移動させる力が作用しても、内針3は、前記針止部72Bによって移動が規制され、再び外針21内に戻ることはない。
【0042】
そして更に、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記外針21から離間させ、前記外筒6を移動させ、前記外筒6から前記内筒7が抜出されると、図9に示すように、前記4つのアーム71Aを開いて、前記4つのアーム71Aによる外針ハブ22の保持状態を解放する。
即ち、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記外針21から離間させて前記注射具4を伸長させることによって、前記カテーテル2から抜出された前記内針3が前記外筒6、内針ハブ41の内部に収容されると、前記4つのアーム71Aとアーム開閉部62による外針ハブ22の保持状態から、外針ハブ22を解放する。
【0043】
尚、上記説明では、貫通孔73の遮断と外針ハブ22の解放に時間差があるように説明したが、貫通孔73の遮断と外針ハブ22の解放が略同時になされることが好ましい。
【0044】
また、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記外針21から離間させると、内筒72の突出片72Aが溝部61の端部に係止され、内筒7の外筒6からの脱落が防止される。
【0045】
このように、前記カテーテル2(外針21)を血管に留置しつつ、前記内針3を前記外針21から引抜き出して前記内針ハブ4の内部に収容するとともに、前記外針ハブ22は前記注射具4から取り外される。
そのため、前記穿刺具1は、前記内針3を前記外針21から引抜き動作のみによって、前記内針3を前記内針ハブ4等の内部に収容することができ、しかも前記外針ハブ22を前記内針ハブ41等から取り外すことができる。
【0046】
尚、上記使用方法の説明おいては、針止部72Bが内針に接していない場合を例にとって説明したが、内針3の引抜き操作の際の摺動抵抗を過度に大きくしない範囲で、針止部72Bが内針3に接していても良い。
【0047】
次に、内筒7に形成された針止部の変形例について、図10に基づいて説明する。
上記した実施形態にあっては、針止部72Bは、針止部72B(基体部72B1)に外力が加わらない自然状態では拡開し、閉塞部72B2が貫通孔73内に位置していない場合について説明した。
この変形例では、針止部72B(基体部72B1)に外力が加わらない自然状態において、閉塞部72B2が貫通孔73内に位置する針止部である点に特徴がある。即ち、前記閉塞部72B2は、針止部72B(基体部72B1)に外力が加わらない自然状態では、閉塞部72B2は閉じ、閉塞部72B2が貫通孔73内に位置するように構成されている。
【0048】
また、この針止部72Bは、上記実施形態と同様に、前記閉塞部72B2には、凸部72B21と、凹部72B22が設けられている。即ち、図10に示すように、上側に位置する閉塞部72B2の先端部には、凸部72B21が設けられ、続いて凹部72B22が設けられている。一方、下側に位置する閉塞部72B2の先端部には、凹部72B22が設けられ、続いて凸部72B21が設けられている。
【0049】
更に、この針止部72Bにあっては、上下の一対の閉塞部72B2に形成された凸部72B21の後面部(突出片72A側)に、テーパ面部73B3が形成されている。このテーパ面部73B3は、針止部72Bの後部から前部に向かって、貫通孔73の中心に向かうテーパ面として形成されている。そして、貫通孔73内に収容された内針3の先端が、前記テーパ面部73B3に当接する位置に形成されている。
【0050】
このような針止部72Bにあっては、針止部72Bが溝部61に位置する場合には、内針3を内筒7の後方から貫通孔に挿入すると、内針3が上側の針止部72Bのテーパ面部72B3に接し、針止部72Bを拡開する。
一方、針止部72Bが押圧部に位置する場合には、針止部72Bの外面が押圧部65によって、閉塞部72B2の拡開が規制されるため、閉塞部72B2は貫通孔内に位置し、貫通孔を閉塞する。
その結果、内針3は、前記針止部72Bによって移動が規制され、再び外針21内に戻ることを、より確実に防止することができる。
【0051】
このように、針止部72B(基体部72B1)に外力が加わらない自然状態において、閉塞部72B2が貫通孔73内に位置する針止部となすことによって、図7に示すような展開した状態で成形し、成形後に組み立てる必要はなく、一つの部品として一体成型することができる。
尚、この場合において、内針3の引抜き操作の際の摺動抵抗を過度に大きくしないことを考慮して、基体部の形状寸法を設定すると良い。
【符号の説明】
【0052】
1, 穿刺具
2 カテーテル
21 外針
22 外針ハブ
3 内針
4 注射具
5 プロテクタ
6 外筒(筒状体)
7 内筒(筒状体)
7A 上部
7B 下部
41 内針ハブ
42 尾栓
61 溝部
62 アーム開閉部(把持手段)
65 押圧部
71 首部
71A アーム(把持手段)
72 軸部
72A 突出部
72B 針止部
72B1 基体部
72B2 閉塞部
72B21 凸部
72B22 凹部
72B3 テーパ面
73 貫通孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10