(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両走行中にタイヤが路面から衝撃を受けると、タイヤの内部空間で気柱共鳴が発生し、ロードノイズの原因となる。そのため、この気柱共鳴を低減し、ロードノイズを低減できるようにした車両用ホイールが開発されている。
以下、消音器としてヘルムホルツ共鳴器を用いたホイールを例にとって説明する。なお、ヘルムホルツ共鳴器は、気室と、この気室をタイヤ内部空間に連通させる連通孔とを備えている。
【0003】
特許文献1では、車両用ホイールのリムに5つの共鳴器が周方向に並んで形成され、各共鳴器の周方向中央に連通孔が形成されている。したがって、5つの連通孔は等しい角度間隔(すなわち72°の角度間隔)で配置されている。
【0004】
特許文献2では、車両用ホイールのリムに4つの共鳴器が周方向に並んで形成され、各共鳴器の一端近傍に連通孔が形成されている。これら4つの連通孔は等しい角度間隔(すなわち90°の角度間隔)で配置されている。
【0005】
特許文献3では、車両用ホイールのリムに、主として第1の共鳴周波数のエネルギーを吸収する第1共鳴器と、主として第2の共鳴周波数のエネルギーを吸収する第2共鳴器が周方向に交互に配置されている。しかしながら、特許文献3にはこれら共鳴器の連通孔の周方向位置について詳細な記載はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
気柱共鳴の消音効果は、タイヤの全周にわたって衝撃入力位置に関係なく均等であるのが理想であるが、現実には独立した共鳴器を周方向に複数配置する構成を採用するので、消音効果は不均等になる。そこで、できるだけ消音効果のばらつきを小さくすることが求められている。
【0008】
本発明者は、共鳴器の数が異なるホイールを用い、ホイールの全周にわたって衝撃を入力してその消音効果の試験を行った。その結果を詳述する。
先ず、特に明記されていない場合、前提として、共鳴器には1つの連通孔を設けている。また、該連通孔は、該共鳴器の中心の位置、すなわち、周方向からみて該共鳴器を2等分する位置に配置するようにした。
共鳴器が偶数個であって、かつ該共鳴器の位置が等間隔の場合は、共鳴器の数に対応した箇所で、消音効果が最大、最小となった。例えば共鳴器が4つの場合について説明すると、90°間隔で4つの角度位置において消音効果が最大となり、これら最大消音効果が得られる箇所から45°離れた4つの角度位置において消音効果が最小となった。
【0009】
これに対して、共鳴器が奇数個の場合(各共鳴器の周方向の幅は同じ)には、共鳴器の数の倍の箇所で消音効果が最大、最小となった。例えば、共鳴器が3つの場合について説明すると、60°間隔で6つの角度位置において消音効果が最大となり、これら角度位置から30°離れた6つの角度位置において消音効果が最小となった。
【0010】
上記のように、各々の共鳴器の周方向の幅が同じであり、さらに、共鳴器に1つ設けられた各連通孔が周方向からみて該共鳴器を2等分する位置に配置されている場合は、奇数個の共鳴器を装備したホイールでは、これより多い偶数個の共鳴器を装備したホイールに比べて、消音効果のばらつきが小さく、消音効果が最小の箇所でも良好な消音効果を発揮することができた。
【0011】
本発明者は上記試験結果を分析すべく、次の試験を行った。
図12に示すようにタイヤに衝撃を加えたとき、タイヤの全周にわたる気圧は正弦波となった。衝撃入力点A(
図12における0°の点)とこれと180°対向する対向点Bでは、
図13に実線と破線で示すように気圧が大きく変化し、正負が交互に入れ替わって振動となった。
【0012】
さらに、1つの共鳴器を装備したホイールで消音効果を試験したところ、共鳴器の連通孔が位置する箇所での気圧変化が大きければ大きいほど、それに比例して消音効果が大きいことが判明した。このことから、共鳴器の連通孔が上記入力点Aにある時のみならず、対向点Bにある時にも消音効果をほぼ最大限に発揮することができることが判明した。上述したように対向点Bは入力点Aと同様に気圧変化が大きいからである。上記衝撃波が正弦波であることから、共鳴器の消音効果は、その最大値を「1」としたとき、cosΘで表すことができる(Θは、その連通孔と衝撃入力点との間の角度である)。共鳴器の連通孔が入力点Aから90°離れた位置にある時には、ほとんど消音効果を発揮しない。
【0013】
上記試験結果から、本発明者は次のように分析した。
共鳴器が偶数個の場合(各共鳴器の周方向の幅は同じ)には、ホイールの回転中心を挟んで対をなす共鳴器の連通孔(各連通孔は周方向からみて該共鳴器を2等分する位置に配置されている)が互いに180°対向しているため、消音効果の角度分布を見ると、連通孔の数に相当する数の消音効果の山(最大)および谷(最小)が現れるだけである。
これに対して共鳴器が奇数個の場合(各共鳴器の周方向の幅は同じ)には、各共鳴器の連通孔(各連通孔は周方向からみて該共鳴器を2等分する位置に配置されている)は、他の共鳴器の連通孔とホイールの回転中心を挟んで180°対向した位置にはない。そのため、各共鳴器の連通孔が衝撃入力点Aと一致した時および対向点Bと一致した時に同等の消音効果を発揮することになり消音効果の角度分布を見ると、共鳴器の数の2倍の箇所で、消音効果の山(最大)および谷(最小)が現れるのである。
【0014】
上記のように、消音効果のばらつきを抑えるためには、共鳴器に設けられた連通孔は、ホイールの回転中心を挟んで180°対向した位置に配置しないことが重要であることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決したもので、偶数個の消音器が周方向に配置され、各消音器がタイヤ内部空間に開口する連通孔を有する車両用ホイールにおいて、
少なくとも1つの消音器の連通孔が、他の残りの消音器の連通孔と180°対向する位置から外れていることを特徴とする車両用ホイール。
この構成によれば、消音効果のばらつきを改善し、消音効果が最小となる箇所での消音効果の向上も図ることができる。
【0016】
好ましくは、全ての消音器が均一の周方向長さを有するとともに等間隔をなして配置され、180°対向する少なくとも一対の消音器の連通孔は、対応する消音器に対する時計回り方向または反時計回り方向の相対的位置が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
この構成によれば、ホイールの重量バランスを良好に維持しながら、消音効果の改善を行うことができる。
好ましくは、全ての消音器の連通孔の各々が、他の消音器の連通孔と180°対向する位置から外れている。
この構成によれば、消音器の数の2倍の箇所で消音効果の山(ピーク)と谷が現れるので、消音効果のばらつきをより一層改善できる。
【0017】
好ましくは、上記消音器の数をNとし、1番目からN番目までの消音器を周方向にこの順で配置したとき、隣接する1番目とN番目の消音器の連通孔は、(360/2N)°の角度間隔離れており、他の消音器がある場合には、これら他の消音器の半分の連通孔は、1番目の消音器の連通孔から上記消音器の配置順序方向に(360/N)°の間隔で配置されるとともに、他の消音器の残りの半分の連通孔は上記N番目の消音器の連通孔から上記消音器の配置順序方向とは反対の方向に(360/N)°の間隔で配置されている。
この構成によれば、消音効果の山が現れる箇所の間隔および谷が現れる箇所の間隔を均等にできるとともに、各箇所での消音効果の山をほぼ同等にすることができるとともに各箇所での消音効果の谷をほぼ同等にすることができる。
【0018】
本発明の他の態様では、第1の共鳴周波数のエネルギーを吸収する偶数個の第1の消音器と、第2の共鳴周波数のエネルギーを吸収する偶数個の第2の消音器とを備え、これら消音器が周方向に配置され、各消音器がタイヤ内部空間に開口する連通孔を有する車両用ホイールにおいて、少なくとも1つの第1消音器の連通孔が、他の残りの第1消音器の連通孔と180°対向する位置から外れており、少なくとも1つの第2消音器の連通孔が、他の残りの第2消音器の連通孔と180°対向する位置から外れている。
この構成によれば、第1の共鳴周波数に対する第1共鳴器の消音効果のばらつきを改善できるとともに、第2の共鳴周波数に対する第2共鳴器の消音効果のばらつきを改善することができる。
【0019】
好ましくは、全ての第1消音器の連通孔の各々が、他の第1消音器の連通孔と180°対向する位置から外れており、全ての第2消音器の連通孔の各々が、他の第2消音器の連通孔と180°対向する位置から外れている。
この構成によれば、第1消音器の数の2倍の箇所で、第1の共鳴周波数に対する消音効果の山と谷が現れ、第2消音器の数の2倍の箇所で、第2の共鳴周波数に対する消音効果の山と谷が現れるので、第1、第2の共鳴周波数に対する消音効果のばらつきをより一層改善できる。
【0020】
好ましくは、上記第1、第2消音器が同数のN個ずつ装備され、
1番目からN番目までの第1消音器を周方向にこの順で配置したとき、隣接する1番目とN番目の第1消音器の連通孔は、(360/2N)°の角度間隔離れており、他の第1消音器がある場合には、これら他の第1消音器の半分の連通孔は、1番目の第1消音器の連通孔から上記第1消音器の配置順序方向に(360/N)°の間隔で配置され、他の第1消音器の残りの半分の連通孔は上記N番目の第1消音器の連通孔から上記第1消音器の配置順序方向とは反対の方向に(360/N)°の間隔で配置され、
上記N個の第2消音器の連通孔も、上記第1消音器の連通孔と同様に配置され、上記1番目とN番目の第1消音器はホイールの第1領域に配置され、上記1番目とN番目の第2消音器は、この第1領域とホイール中心軸線を挟んで対向する第2領域に配置されている。
この構成によれば、第1共鳴周波数に対する消音効果の山が現れる箇所の間隔および谷が現れる箇所の間隔を均等にできるとともに、各箇所での山および谷をほぼ同等にすることができる。また、第2共鳴周波数に対する消音効果の山が現れる箇所の間隔および谷が現れる箇所の間隔を均等にできるとともに、各箇所での山および谷をほぼ同等にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、消音器が偶数個であっても、消音効果のばらつきを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態に係わる車両用ホイールについて、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
ホイール1は例えばアルミ鋳造品からなり、ディスク10とリム20とを備え、このリム20の外周にタイヤ2を装着するようになっている。
【0024】
上記ディスク10は、一般的なホイールと同様に、中央のハブ取付部11と、このハブ取付部11と同軸をなす環状の周縁部12と、これらハブ取付部11と周縁部12とを連ねるようにして放射状に延びる複数のスポーク13とを有している。
ハブ取付部11には、ハブ穴11aと複数のボルト穴11bが形成され、スポーク13間が飾り穴14となっている。
【0025】
上記リム20は、ほぼ円筒形状をなし、その一端がディスク10の周縁部12に連なっている。リム20は、ウエル部21と、その両端に位置してタイヤ2のビード部2aを支持する一対のビードシート部22と、このビード部2aを保持するための一対のフランジ部23とを有している。
タイヤ2が装着された状態で、リム20とタイヤ2との間には、密閉された内部空間3が形成される。
【0026】
上記ディスク10とリム20の接合部には、消音器として4つ(偶数個)のヘルムホルツ共鳴器31〜34(以下、単に共鳴器と称する)が周方向例えば時計回り方向に順に並んで形成されている。以下、その構造を詳述する。
【0027】
上記ディスク10とリム20の接合部には、ディスク10側のビードシート部22の径方向内側において、ホイール1と共通の中心軸線Lxを有する環状の空洞30が形成されている。この空洞30は、周方向に等間隔離れた4つの隔壁30xにより4つの気室31a〜34aに分割されている。
【0028】
上記リム20において、ディスク10側のビードシート部22とウエル部21とを連ねるやや傾斜した起立壁24には、気室31a〜34aをそれぞれタイヤ内部空間3に連ねる連通孔31b〜34bが形成されている。気室31a〜34aと連通孔31b〜34bにより、4つの独立した共鳴器31〜34が構成される。
【0029】
上記共鳴器31〜34の共鳴周波数fは、気室31a〜34aの体積、連通孔31b〜34bの断面積、連通孔31b〜34bの長さにより決定されるが、この共鳴周波数fがタイヤ内部空間3での気柱共鳴の減衰させたい周波数帯にほぼ対応するように、上記共鳴器31〜34が設計されている。本実施形態では、気室31a〜34aおよび連通孔31b〜34bの寸法が等しいので、共鳴器31〜34の共鳴周波数fは互いに等しいが、許容される範囲で異なっていてもよい。
【0030】
次に、本発明の特徴部について説明する。4つの共鳴器31〜34の連通孔31b〜34bの開口端は、周方向に等間隔(すなわち90°間隔)で配置されておらず、各連通孔31b〜34bは他の連通孔との180°対向配置を回避されている。
本実施形態では質量バランスを考慮し、共鳴器31〜34を周方向に同一長さにするとともに等間隔に配置し(すなわち隔壁30xを等間隔に配置し)、連通孔31b〜34bの位置だけを不等間隔にする。連通孔31b〜34bを明けることによる質量変化は微々たるものであり、質量バランスにほとんど影響を及ぼさない。
【0031】
上記連通孔31b〜34bの配置について、より具体的に説明する。なお、この配置を一般化して表現するため、共鳴器の個数をNとし、周方向(時計回り方向)に1番目からN番目までの共鳴器が順に配置されているものとする。本実施形態に対応させると、共鳴器31が1番目の共鳴器となり、共鳴器34がN番目の共鳴器となる。
【0032】
選択された1つの隔壁30xを挟んで隔壁30xから等しい角度間隔(22.5°)離れた位置に、共鳴器31、34(1番目とN番目の共鳴器)の連通孔31b,34bが配置されている。したがって、これら連通孔31b、34bは45°、すなわち(360/2N)°離れている。なお、連通孔31b,34bの隔壁30xからの角度間隔は等しくなくてもよい。
【0033】
他の共鳴器32,33のうちの半分、すなわち2番目の共鳴器32の連通孔32bは、1番目の共鳴器31の連通孔31bから時計回り方向に90°、すなわち(360/N)°離れた位置に配置されている。
残りの半分、すなわち3番目の共鳴器33の連通孔33bは、4番目(N番目)の共鳴器34の連通孔34bから反時計回り方向に90°、すなわち(360/N)°離れた位置に配置されている。
【0034】
図3に示すように、各連通孔31b〜34bと、ホイール中心軸線Lxとを通る直線L1〜L4を描くと、これら直線L1〜L4は、等角度45°、すなわち(360/2N)°離れている。
【0035】
上記構成において、車両走行中にタイヤ2が路面の凹凸に起因した衝撃を受けた時、特定の周波数帯においてタイヤ2の内部空間3で気柱共鳴が発生する。この際、この特定の周波数帯で共鳴する複数の共鳴器31〜34により、共鳴エネルギーを吸収することができ、ロードノイズを低減できる。
【0036】
上記共鳴エネルギーの吸収は、衝撃を受けた時のタイヤ2の接地箇所(衝撃入力箇所)が連通孔31b〜34bに最も近い時に最小となるとともに、接地箇所が連通孔31b〜34bと180°対向する時にも最小となる。すなわち直線L1〜L4上の8つの箇所(45°毎に)において衝撃が入力された時に消音効果が最小となる。
他方、上記直線L1〜L4から最も離れた点(22.5°離れた点)に衝撃が入力されたときに消音効果が最大となる。
その結果、衝撃入力箇所に対応する消音効果の分布は
図5に実線で示すように、8つの山と8つの谷を有する。なお、
図5の「0°」は、
図3における最上部に対応する。
【0037】
上記消音効果についてより具体的に説明する。なお、各共鳴器31〜34の消音効果の最大値を「1」として説明する。
図3において、直線L1〜L4上の位置に衝撃が入力した時、例えば共鳴器31の連通孔31bの位置に衝撃が入力した時には、共鳴器31の消音効果はcos0°=1であるが、共鳴器32の消音効果がcos90°=0となり、共鳴器33の消音効果がcos135°=0.71、共鳴器34の消音効果がcos45°=0.71となり、合計2.42で最小となる。
図3において直線L1〜L4から最も離れた位置、例えば「0°」の位置に衝撃が入力した時には、共鳴器31,34の消音効果はcos22.5°=0.92であり、共鳴器32,33の消音効果はcos112.5°=0.38であり、合計すると2.60で最大となる。
【0038】
図4は、上記第1実施形態と比較すべき従来構造を示す。この従来構造では、4つの共鳴器31’〜34’の気室31a’〜34a’は、上記第1実施形態同様であるが、連通孔31b’〜34b’が対応する気室31a’〜34a’の周方向中央に位置している点で第1実施形態と異なる。そのため、連通孔31b’〜34b’は、90°間隔で配置されており、連通孔31b’,33b’が180°対向して、ホイール中心軸線Lxを通る直線L1’上に配置され、連通孔32b’,34b’が180°対向して、ホイール中心軸線Lxを通る直線L2’上に配置されている。
【0039】
上記従来構造では、直線L1’、L2’上の4つの点において衝撃が入力された時に消音効果が最小となり、これら直線L1’、L2’から最も離れた点(45°離れた点)に衝撃が入力されたときに消音効果が最大となる。
その結果、消音効果の衝撃入力箇所による分布は
図5に破線で示すように、4つの山と4つの谷を有する。
図5の「0°」は、
図4における最上部に対応する。
【0040】
上記従来構造の消音効果についてより具体的に説明する。なお、各共鳴器31‘〜34’の消音効果の最大値を「1」として説明する。
図4において、直線L1’、L2’上の位置に衝撃が入力した時、例えば共鳴器31の連通孔31bの位置に衝撃が入力した時には、共鳴器31の消音効果はcos0°=1、共鳴器33の消音効果はcos180°=1であるが、共鳴器32の消音効果がcos90°=0、共鳴器33の消音効果がcos180°=0となり、合計2で最小となる。
図4において直線L1’、L2’から最も離れた位置、例えば「0°」の位置に衝撃が入力した時には、共鳴器31,34の消音効果はcos45°=0.71であり、共鳴器32,33の消音効果はcos135°=0.71であり、合計すると2.84で最大となる。
【0041】
図5の実線と破線の比較から明らかなように、本発明構造では、従来構造に比べて消音効果の最大値と最小値を小さくすることができる。また、本発明構造によれば、消音効果の最大値が現れる箇所(山)と最小値が現れる箇所(谷)の数が従来構造に比べて倍増する。その結果、消音効果のばらつきを小さくすることができる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態について図を参照しながら説明する。これら図において、第1実施形態に対応する構成については同番号を付してその詳細な説明を省略する。
図6に示す第2実施形態のホイールは、2つの共鳴器31,32を備えている。すなわち、環状の空洞30は180°離れた2つの隔壁30xで2つの気室31a,32aに分割されている。共鳴器31,32の連通孔31b、32bは、1つの隔壁30xから45°離れ(共鳴器31の中央から45°離れ)、互いに90°離れている。なお、連通孔31b、32bの隔壁30xからの角度間隔は異なっていてもよい。
連通孔31bとホイール中心軸線Lxを通る直線L1と、連通孔32bとホイール中心軸線Lxを通る直線L2は90°離れている。
【0043】
上記構成によれば、直線L1上の2点と、直線L2上の2点の計4点に衝撃が入力した時に、消音効果が最小になり、これら直線L1,L2から45°離れた4点に衝撃が入力した時に、消音効果が最大になる。
その結果、衝撃入力箇所に対応する消音効果は
図8に実線で示すように、4つの山と4つの谷を有する。
図8の「0°」は、
図6における最上部に対応する。
【0044】
上記消音効果についてより具体的に説明する。なお、各共鳴器31、32の消音効果の最大値を「1」として説明する。
図6において、直線L1,L2上の位置、例えば共鳴器31の連通孔31bの位置に衝撃が入力した時には、共鳴器31の消音効果はcos0°=1であるが、共鳴器32の消音効果がcos90°=0となり、合計すると1.0で最小となる。
図6において、直線L1,L2から最も離れた位置、例えば「0°」の位置に衝撃が入力した時には、共鳴器31,32の消音効果はそれぞれcos45°=0.71であり、合計すると1.42で最大となる。
【0045】
図7は、上記第2実施形態と比較すべき従来構造を示す。この従来構造では、2つの共鳴器31’32’の気室31a’,32a’は、上記第2実施形態同様であるが、連通孔31b’,32b’が対応する気室31a’,32a’の周方向中央に位置している点で第2実施形態と異なる。そのため、連通孔31b’,32b’は、180°対向して配置され、ホイール中心軸線Lxを通る直線L1’上に配置されている。
【0046】
上記従来構造では、直線L1’上の2つの点において衝撃が入力された時に消音効果が最小となり、これら直線L1’から最も離れた点(90°離れた点)に衝撃が入力されたときに消音効果が最大となる。
その結果、消音効果の衝撃入力箇所による分布は
図8に破線で示すように、2つの山と2つの谷を有する。
図8の「0°」は、
図7における最上部に対応する。
【0047】
上記消音効果についてより具体的に説明する。なお、各共鳴器31’,32’の消音効果の最大値を「1」として説明する。
図7において、直線L1’から最も離れた位置例えば「0°」の位置に衝撃が入力した時、共鳴器31',32’の消音効果はcos90°=0であり、合計0で最小となる。
これに対して、
図7において、直線L1’上の位置、例えば共鳴器31'の連通孔31b’の位置に衝撃が入力した時には、共鳴器31’の消音効果はcos0°=1、共鳴器32’の消音効果はcos180°=1であり、合計2で最大となる。
【0048】
図8の実線と破線の比較から明らかなように、共鳴器が2つの場合でも、本発明によれば従来構造に比べて消音効果のばらつきが小さくなり、消音効果の最小値を上げることができる。
【0049】
図9に示す第3実施形態のホイールは、6つの共鳴器31〜36を備えている。環状の空洞30は60°離れた6つの隔壁30xで6つの気室31a〜36aに分割されている。1番目の共鳴器31と6番目(N番目)の共鳴器36の連通孔31b、36bは、1つの隔壁30xから15°離れ、互いに30°すなわち(360/2N)°離れている。なお、連通孔31b、36bの隔壁30xからの角度間隔は異なっていてもよい。
【0050】
他の共鳴器のうちの右半分の共鳴器、すなわち共鳴器32、33の連通孔32b、33bは、1番目の共鳴器31の連通孔31bから時計回り方向に60°、すなわち(360/N)°ずつ離れて配置されている。同様にして左半分の共鳴器、すなわち共鳴器35、34の連通孔35b、34bも、6番目(N番目)の共鳴器36の連通孔36bから反時計回り方向に60°、すなわち(360/N)°ずつ離れて配置されている。
【0051】
上記構成によれば、各連通孔31b〜36bは、他の連通孔と180°対向した位置になく、連通孔31b〜36bとホイール中心軸線Lxを通る直線L1〜L6は互いに30°離れている。
【0052】
第3実施形態では、30°毎にすなわち直線L1〜L6上の12の点において衝撃が入力された時に消音効果が最小となり、これら直線L1〜L6から最も離れた点(15°離れた点)に衝撃が入力された時に消音効果が最大となる。
第3実施形態によれば、第1、第2実施形態より消音効果のばらつきを小さくすることができることは勿論のこと、同数の共鳴器を有しその連通孔が等しい間隔をなす車両用ホイールに比べても消音効果のばらつきを小さくすることができる。
【0053】
図10に示す第4実施形態では、2つの共鳴周波数のエネルギーを吸収できるホイールを示す。詳述すると、このホイールは、第1の共鳴周波数f
Aのエネルギーを吸収する2つ(偶数個)の第1共鳴器31A、32Aと、第2の共鳴周波数f
Bのエネルギーを吸収する2つ(偶数個)の第2共鳴器31B,32Bとを備えている。2つの第1共鳴器31A、32Aは180°対向しておらず、周方向に隣接している。そのため、これら第1共鳴器31A、32Aの連通孔31b、32bは、第1共鳴器31A、32Aの周方向中央に形成されているが180°対向しておらず、90°の角度間隔だけ離れている。この配置は
図6の第2実施形態と似ている。2つの第2共鳴器31B、32B同士も周方向に隣接しており、その周方向中央に形成された連通孔31b、32bは180°対向しておらず、90°の角度間隔だけ離れている。
【0054】
上記第4実施形態では、第1の共鳴周波数f
Aに関して、2つの第1共鳴器31A,32Aにより、
図8の実線で示す消音効果を奏することができ、第2の共鳴周波数f
Bに関しても、2つの第1共鳴器31B,32Bにより、
図8の実線で示す消音効果を奏することができる。
なお、本実施形態では第1共鳴器31Aの連通孔31bと,第2共鳴器31Bの連通孔31bが180°対向して直線L1上に配置され、第1共鳴器32Aの連通孔32bと、第2共鳴器32Bの連通孔32bが180°対向して直線L2上に配置されているが、互いに180°対向位置から外れていてもよい。連通孔は各共鳴器の周方向中央からはずれていてもよい。
【0055】
図11に示す第5実施形態は、第1の共鳴周波数f
Aのエネルギーを吸収する4つ(偶数個)の第1共鳴器31A、32A、33A、34Aと、第2の共鳴周波数f
Bのエネルギーを吸収する4つの第2共鳴器31B,32B、33B、34Bと、を備えている。4つの第1共鳴器31A、32A、33A、34Aの連通孔31b〜34bの配置は、
図3に示す第1実施形態と同様であり、第1共鳴周波数f
Aに関して、
図5の実線で示す消音効果を発揮することができる。また、4つの第2共鳴器31B、32B、33B、34Bの連通孔31b〜34bの配置も、
図3に示す第1実施形態と同様であり、第2共鳴周波数f
Bに関して、
図5の実線で示す消音効果を発揮することができる。
【0056】
上記第5実施形態において、1番目と4番目の第1共鳴器31A,34Aが、その中心が45°離れて隣接し、2番目と3番目の第1共鳴器32A,33Aの中心が、1番目と4番目の第1共鳴器31A、34Aの中心から90°離間するとともに、互いに135°離間している。そして、上記第1共鳴器31A〜34A間に、これら第1共鳴器31A〜34Aと線対称をなすようにして第2共鳴器31B〜34Bが配置されている。第2共鳴器において最も狭い角度間隔で配置された1番目の共鳴器31Bと4番目の共鳴器34Bが、第1共鳴器において最も広い角度間隔で配置された2番目の共鳴器32Aと3番目の共鳴器33Aの間に配置されている。
なお、第1共鳴器と第2共鳴器とをホイール中心軸線Lxを通る直線上に180°対向して配置したが、180°対向位置から外れていてもよい。連通孔は共鳴器の周方向中央から外れていてもよい。
【0057】
本発明は、上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用することができる。
消音器は、ヘルムホルツ共鳴器に限らず、他の消音器、例えば、伝播通路とこの伝播通路をタイヤ内部空間に連ねる連通孔とを有するサイドブランチ型消音器やクインケ管型消音器であってもよい。