特許第6247507号(P6247507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247507
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】建物の壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20171204BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20171204BHJP
   E04B 1/684 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   E04B1/64 C
   E04B1/68 A
   E04B1/684 B
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-235499(P2013-235499)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-94179(P2015-94179A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 智則
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−299302(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3183566(JP,U)
【文献】 特開2005−180056(JP,A)
【文献】 特開2012−122301(JP,A)
【文献】 特開2003−343023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64−1/684
E04B 2/56−2/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁部に複数の外壁材が並べて配置され、その複数の外壁材により、横目地とその横目地の端部から上方に延びる縦目地とが形成されており、
前記横目地の上方には上側の前記外壁材として上外壁材が設けられ、前記横目地を挟んで前記上外壁材の下方には下側の前記外壁材として下外壁材が設けられ、
前記各外壁材は上下方向に延びる中空部が形成された中空構造を有し、その中空部を通じて水の流下が可能となっている建物の壁構造であって、
前記横目地と前記縦目地とが交わる目地交わり部に、前記下外壁材の背面側への水の浸入を阻止する止水部材が設けられ、
前記縦目地には上下方向に延びる長尺状の縦目地止水部材が設けられており、
前記止水部材は、前記上外壁材において前記外壁部の背後の側となる背板部と、その背板部から前記上外壁材の下端面に沿って延びる下板部と、前記背板部及び前記下板部に一体的に設けられ前記上外壁材の下端隅部を囲うようにして前記縦目地に沿って延びる目地側板部と、を有しており、前記下板部には下方に垂れて延びる垂れ板部が設けられており、
さらに、前記止水部材は、前記目地側板部が、前記縦目地を挟んで対向する2つの外壁材の間において前記縦目地止水部材に押し付けられた状態で設けられるとともに、前記下板部よりも下方に、前記目地側板部に対して上下方向に直線状に並ぶようにして、前記下外壁材の縦目地側の側端面に当接する当接部を有していることを特徴とする建物の壁構造。
【請求項2】
前記止水部材において、前記背板部と前記下板部と前記目地側板部とはそれぞれが互いに交わっており、それら各板部の交わり部はその全域にわたって閉じられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の壁構造。
【請求項3】
前記止水部材は、前記垂れ板部が前記下外壁材の前記中空部に挿し入れられた状態で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の壁構造。
【請求項4】
前記下外壁材には、前記中空部を挟んで外壁面側となる部分と背面側となる部分とを繋ぐ繋ぎ部に、該下外壁材の上端面から延びるようにして切り込み溝が形成されており、
前記垂れ板部は、前記下外壁材の壁幅方向において前記下板部と同じ幅寸法を有する板部よりなり、前記切り込み溝に挿し入れられていることを特徴とする請求項3に記載の建物の壁構造。
【請求項5】
前記横目地には、前記目地交わり部に設けられる止水部材以外に、その止水部材の横隣りの位置に別の止水部材が設けられており、
前記別の止水部材は、前記上外壁材の背面側となる背板部と、その背板部から前記上外壁材の下端面に沿って延びる下板部と、その下板部から下方に垂れて延びる垂れ板部と、を有しており、
それら隣合う止水部材には、両止水部材に跨るようにして、防水性を有するジョイントシートが貼り付けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の建物の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁部は複数の外壁材により構成されており、その外壁部には縦目地と横目地とが形成されている。また、外壁部において中空部を有する中空構造の外壁材を用いた構成が実用化されており、その中空構造の外壁材を用いた外壁部の止水構造として、特許文献1に記載の技術が知られている。かかる技術では、上下の押出成形セメント板の間で屋外側と屋内側とに延在する水平部と、水平部の屋内側で起立する垂直部と、水平部の屋外側で垂下する垂下部と、垂下部の下端に形成された狭窄部と、水平部の下面から垂下された水返部とからなる水切材を横目地に配設している。また、上側の押出成形セメント板を硬質パッキンを介して水平支持片に支持し、上側の押出成形セメント板の背面と垂直部とに横ガスケットを挟持させ、水平支持片の下面と下側の押出成形セメント板との間にパッキン材を挟持させるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−299345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建物外壁部においては当然ながら横目地以外に縦目地が存在しており、横目地と縦目地とが交わる部位も存在している。この場合、横目地と縦目地とが交わる部位では、横目地側から縦目地側に雨水等が浸入することが考えられ、さらに縦目地に浸入した雨水等が屋内側に漏れ出ることが考えられる。つまり、縦目地には縦目地用の止水部材(長尺ガスケット等)が設けられてはいるが、横目地に沿って雨水等が流れることで縦目地用の止水部の背後に雨水等が回り込み、結果として屋内側に雨水等が浸入してしまうことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外壁部の横目地及び縦目地が交わる部位における止水を適正に実施することができる建物の壁構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成の符号を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
第1の発明は、
外壁部(11)に複数の外壁材(12〜14)が並べて配置され、その複数の外壁材により、横目地(16)とその横目地の端部から上方に延びる縦目地(15)とが形成されており、
前記横目地の上方には上側の前記外壁材として上外壁材(13)が設けられ、前記横目地を挟んで前記上外壁材の下方には下側の前記外壁材として下外壁材(14)が設けられ、
前記各外壁材は上下方向に延びる中空部(21)が形成された中空構造を有し、その中空部を通じて水の流下が可能となっている建物の壁構造であって、
前記横目地と前記縦目地とが交わる目地交わり部に、前記下外壁材の背面側への水の浸入を阻止する止水部材(51)が設けられており、
前記止水部材は、前記上外壁材において前記外壁部の背後の側となる背板部(51a)と、その背板部から前記上外壁材の下端面に沿って延びる下板部(51b)と、前記背板部及び前記下板部に一体的に設けられ前記上外壁材の下端隅部を囲うようにして前記縦目地に沿って延びる目地側板部(51c)と、を有しており、前記下板部には下方に垂れて延びる垂れ板部(51d)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
建物の外壁部において横目地と縦目地とが交わる部位では、横目地側から縦目地側に雨水等が浸入することで、その縦目地から外壁部の背後の側(例えば外壁材の背面側)に雨水等の浸入が生じることが懸念される。特に中空構造の外壁材を用い、その中空部での水の流下を許容している構成ではこうした不都合の発生が大いに懸念される。この点に関し、横目地と縦目地とが交わる目地交わり部に止水部材を設け、その止水部材を、上外壁材において外壁部の背後の側となる背板部と、その背板部から上外壁材の下端面に沿って延びる下板部と、背板部及び下板部に一体的に設けられ上外壁材の下端隅部を囲うようにして縦目地に沿って延びる目地側板部と、を有するものとし、さらに下板部には下方に垂れて延びる垂れ板部を設けた。
【0009】
かかる構成によれば、止水部材は、上外壁材において背面、下面、及び側面からなる頂点部分(又は外壁面、下面、及び側面からなる頂点部分)の付近を包むように配置され、その頂点部分の付近において外壁部の背後の側及び縦目地側への水の流れを阻止することができる。また、下板部から垂れ下がる垂れ板部によって、下外壁材の上面側における水の流れが遮断される。以上により、外壁部の背後の側(例えば外壁材の背面側)に雨水等が浸入することを防止できる。その結果、外壁部の横目地及び縦目地が交わる部位における止水を適正に実施することができる。
【0010】
第2の発明は、前記止水部材において、前記背板部と前記下板部と前記目地側板部とはそれぞれが互いに交わっており、それら各板部の交わり部はその全域にわたって閉じられていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、止水部材において背板部と下板部と目地側板部とにより袋状の部分(例えば三面による立体部分)を形成でき、その袋状の部分により、上外壁材において背面、下面、及び側面からなる頂点部分の付近を包むようにすることができる。したがって、上外壁材の中空部を通じて流下してきた雨水等について縦目地への浸入を防止できる構成を実現できる。
【0012】
第3の発明は、前記止水部材は、前記垂れ板部が前記下外壁材の前記中空部に挿し入れられた状態で設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、止水部材の垂れ板部が下外壁材の中空部に挿し入れられていることで、仮に雨水等が下外壁材の上面を伝って流れたとしても、その雨水等の流れが止水部材の垂れ板部で遮断され、さらに雨水等が下外壁材の中空部に案内される。これにより、横目地及び縦目地の交わり部において所望の止水性能を実現できる。
【0014】
第4の発明は、前記下外壁材には、前記中空部を挟んで外壁面側となる部分と背面側となる部分とを繋ぐ繋ぎ部(24)に、該下外壁材の上端面から延びるようにして切り込み溝(25)が形成されており、前記垂れ板部は、前記下外壁材の壁幅方向において前記下板部と同じ幅寸法を有する板部よりなり、前記切り込み溝に挿し入れられていることを特徴とする。
【0015】
下外壁材の上端部に切り込み溝が形成されている構成では、止水部材の垂れ板部を長尺状の板部で構成したとしても下外壁材の繋ぎ部との干渉が生じず、下外壁材の上面での水の流れを遮断する上では好適なものとなる。ただし、切り込み溝を通じて雨水等が縦目地内に浸入することが懸念される。この点、止水部材における上記構成によれば、縦目地への雨水等の流れ込みが生じにくいものとなっており、やはり所望の止水性能を実現できるものとなる。
【0016】
第5の発明は、前記縦目地には上下方向に延びる長尺状の縦目地止水部材(37)が設けられており、前記止水部材は、前記目地側板部が、前記縦目地を挟んで対向する2つの外壁材の間において前記縦目地止水部材に押し付けられた状態で設けられていることを特徴とする。
【0017】
縦目地に長尺状の縦目地止水部材が設けられている構成では、その縦目地止水部材よりも背面側に雨水等が流れないようにすることが望ましい。この点、目地側板部を、縦目地を挟んで対向する2つの外壁材の間において縦目地止水部材に押し付けた状態で設ける構成としたため、縦目地内において縦目地止水部材よりも背面側に雨水等が流れないようにすることができる。
【0018】
第6の発明は、前記止水部材は、前記下板部よりも下方に、前記目地側板部に対して上下方向に直線状に並ぶようにして、前記下外壁材の縦目地側の側端面に当接する当接部(51h)を有していることを特徴とする。
【0019】
目地交わり部に止水部材を設けた場合において、止水部材の目地側板部と縦目地止水部材とが離れていてそれら両者間に隙間ができていたり、目地側板部により縦目地止水部材が局部的に押し潰されることで目地側板部の上下部分に隙間が形成されたりすると、それらの隙間から縦目地内に水の浸入が生じると考えられる。この点、上記構成では、止水部材において、目地側板部とその下方の当接部とが上下方向に直線状に並べて設けられていることから、当接部を下外壁材の縦目地側の側端面に当接させれば、目地側板部が、下外壁材の側端面から真上に延びるように配置され、上外壁材の側端面に当接した状態で配置されることにもなる。つまり、壁幅方向における止水部材の位置決めが可能となる。この場合、縦目地止水部材との位置関係において止水部材を適正位置に配置でき、ひいては止水性能の向上を図ることができる。
【0020】
第7の発明は、前記横目地には、前記目地交わり部に設けられる止水部材以外に、その止水部材の横隣りの位置に別の止水部材(52)が設けられており、前記別の止水部材は、前記上外壁材の背面側となる背板部(52a)と、その背板部から前記上外壁材の下端面に沿って延びる下板部(52b)と、その下板部から下方に垂れて延びる垂れ板部(52c)と、を有しており、それら隣合う止水部材には、両止水部材に跨るようにして、防水性を有するジョイントシート(53)が貼り付けられていることを特徴とする。
【0021】
ジョイントシートを用いる構成にすれば、各止水部材が互いに分割されて設けられる構成において、各止水部材の境界部の止水を好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】外壁部における外壁材の配置を示す正面図。
図2】外壁材の中空構造を説明するための斜視図。
図3図1のA−A線断面図。
図4図1のB−B線断面図。
図5】上外壁材を取り付ける前の壁構造を示す斜視図。
図6】上外壁材を取り付ける前の壁構造を示す斜視図。
図7】各止水役物の構成を示す斜視図。
図8】上外壁材を取り付ける前の壁構造を示す斜視図。
図9】外壁材の配置について別の構成を示す正面図。
図10図9のC−C線断面図。
図11】外壁材の配置について別の構成を示す斜視図。
図12】止水役物の構成を示す斜視図。
図13】外壁部において止水役物を外壁材の凹部に取り付けた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、鉄骨軸組工法により構築される建物において、その外壁部の構造について詳しく説明する。
【0024】
図1は、建物の外壁部11を屋外側から見た正面図であり、その外壁部11には3枚の外壁材12,13,14が示されている。図示の構成では、外壁材12に横隣りとなる位置に上下に並べて外壁材13,14が配置されている。この場合、外壁材12と外壁材13,14との間に縦目地15が形成されるとともに、上下の外壁材13,14の間に横目地16が形成されている。これら各目地15,16は横向きのT字状をなすように設けられ、横目地16の端部が縦目地15に連続するものとなっている。本実施形態では、外壁材13を「上外壁材13」、外壁材14を「下外壁材14」とも言うこととする。
【0025】
図2に示すように、各外壁材12〜14は、いずれもコンクリート押出成形材からなり、上下方向に延びる中空部21が形成された中空構造の壁面材である。各外壁材12〜14は、中空部21を挟んで外壁面側が外側壁肉部22、背面側が内側壁肉部23となっている。外側壁肉部22の表面は、上下、左右方向に凹凸(彫り)が付された凹凸部となっている。周知構成のため詳しい説明は略すが、建物の躯体(梁や柱等の構造体)に対する各外壁材12〜14の取り付けは、中空部21内に取り付けられる取付金具等を用いて行われるようになっている。
【0026】
中空部21は、外側壁肉部22と内側壁肉部23とを繋ぐ中間繋ぎ部24で分断される複数の空間部により構成されている。そして、各外壁材12〜14の上端部において各中間繋ぎ部24には、所定深さの切り込み溝25が直線状に並ぶようにしてそれぞれ形成されている。なお、切り込み溝25は全ての外壁材12〜14に設けられていなくてもよく、少なくとも横目地16の下方となる下外壁材14に設けられていればよい。
【0027】
次に、外壁部11の止水構造について概要を説明する。図3図1のA−A線断面図であり、これは横目地16における止水構造を示す縦断面図である。また、図4図1のB−B線断面図であり、これは縦目地15における止水構造を示す横断面図である。なお、図4では便宜上、横目地用の止水材の図示を省略している。
【0028】
図3において、上下に並ぶ外壁材13,14の間の横目地16には、湿式の止水部材よりなる一次止水材31(コーキング材による不定形シール)と、例えば合成樹脂製の薄板により立体成形されてなる二次止水材32と、これら両止水材31,32の間に位置する一次バッカー33とが設けられている。この場合、各外壁材13,14の中空部21は雨水等を流下させる流下経路を形成するものとなっており、二次止水材32は、上外壁材13の中空部21内を流下する雨水等が、上下の外壁材13,14における内側壁肉部23の間を通じて外壁材13,14の背面側に浸入することを防止する役目を有する。また、一次バッカー33は、二次止水材32に当接する当接面側に凹凸が形成されて波形状となっており(図示は略す)、その凹み部を通じて、上外壁材13の中空部21内を流下する雨水等を下外壁材14の中空部21内に案内する役目を有するものである。
【0029】
二次止水材32は、上外壁材13とその上外壁材13を支持するための壁支持部材34との間に設けられており、その下端部(後述する垂れ板部51d)が、下外壁材14の中空部21に挿し入れられた状態で取り付けられている。壁支持部材34はL形のアングル材よりなり、鉛直部を上外壁材13の背面側、水平部を上外壁材13の下面側に配置させ、その状態で、図示しない取付金具やボルト等により壁支持部材34に上外壁材13が固定されるようになっている。なお、二次止水材32の詳細については後述する。
【0030】
また、図4において、左右に並ぶ外壁材12,14の間(外壁材12,13の間も同様)の縦目地15には、横目地16の一次止水材31と同じ構成の一次止水材36と、硬質ゴム製の長尺材よりなる縦目地ガスケット37とが設けられている。縦目地ガスケット37は、平面視において切り込み溝25と横並びとなる位置に設けられている。縦目地ガスケット37は、弾性変形可能な複数のヒレ状の突部を有する縦目地止水部材であり、切り込み溝25から横目地16内に雨水等が流れ出た場合には、縦目地ガスケット37のヒレ間の隙間を通じて雨水等が下方に流下するものとなっている。
【0031】
なお、縦目地15において外壁材12,13の背面付近には、ロックウール等よりなる長尺状の防火材38が設けられている。
【0032】
本実施形態では横目地16に設けられた二次止水材32を要部構成としており、その詳細な構成を、図5図8を用いて以下に説明する。
【0033】
図5は、外壁材12の横に下外壁材14を並べて配置した状態を示す斜視図である。図5では、下外壁材14の上方に、上外壁材13を支持するための壁支持部材34が取り付けられている。図示は略すが、この壁支持部材34は、建物の躯体(梁や柱等の構造体)に対して固定されている。
【0034】
そして、図6(a)、(b)に示すように、壁支持部材34に対して、横目地用の二次止水材32が取り付けられる。図示の構成では、二次止水材32として、2つに分割した止水役物51,52を用いることとしており、これら各止水役物51,52が壁支持部材34に個別に取り付けられる。止水役物51,52のうち第1止水役物51は、横目地16において縦目地15との交わり部に取り付けられるものであり、第2止水役物52は、第1止水役物51に横並びに取り付けられるものである。これら各止水役物51,52は、例えば比較的薄肉であって弾性を有するポリプロピレン等の樹脂板、又はアルミや鉄等の金属板にて一体成形されている。
【0035】
各止水役物51,52の構成を図7に個別に示す。図7(a)に示すように、第1止水役物51は、上外壁材13の背面側(外壁部の背後の側に相当)となる背板部51aと、その背板部51aから上外壁材13の下端面に沿って延びる下板部51bと、背板部51a及び下板部51bに一体的に設けられ上外壁材13の下端隅部を囲うようにして縦目地15に沿って延びる目地側板部51cと、を有している。また、下板部51bには下方に垂れて延びる垂れ板部51dが設けられている。なお、背板部51a、目地側板部51c、垂れ板部51dはいずれも、壁側(壁支持部材34)への取り付け状態で鉛直方向に延びる鉛直板部であり、下板部51bは、壁側(壁支持部材34)への取り付け状態で水平方向に延びる水平板部である。
【0036】
背板部51aは、壁支持部材34の鉛直部に当接される鉛直当たり部であり、下板部51bは、壁支持部材34の水平部に当接される水平当たり部であり、目地側板部51cは、縦目地ガスケット37に押し付けられる縦目地側押し付け部である。また、垂れ板部51dは、下外壁材14の中空部21(切り込み溝25を含む)に挿し入れられる挿し入れ部である。垂れ板部51dは、下外壁材14の壁幅方向において下板部51bと同じ幅寸法を有しており、言うなれば壁幅方向に長尺な板部となっている。
【0037】
この場合特に、第1止水役物51において、背板部51aと下板部51bと目地側板部51cとはそれぞれが互いに直交するように交わっており、それら各板部51a〜51cが相互に交わる交わり部はその全域にわたって閉じられている。つまり、目地側板部51cは、その直交する二辺(鉛直、水平の各辺)が背板部51aと下板部51bとにそれぞれ連続するようにして形成されている。これにより、第1止水役物51において背板部51aと下板部51bと目地側板部51cとにより袋状の部分(三面による立体部分)を形成でき、その袋状の部分により、上外壁材13において背面、下面、及び側面からなる頂点部分の付近が包まれるようになっている。
【0038】
また、第1止水役物51において、背板部51aの下端部(下板部51bとの繋ぎ部分)には斜め方向に延び、隅部の面取りがなされた面取り部51eが設けられている。また、背板部51a及び目地側板部51cのそれぞれの上端部には、上外壁材13の取り付け時において、その上外壁材13を所定位置に配置しやすくするための案内部51f,51gが設けられている。案内部51f,51gは、下板部51bとは反対側に斜めに折り曲げられて構成されており、上外壁材13の取り付け時において上外壁材13の下端部が第1止水役物51の上端縁に当たりにくくなっている。この意味からすれば、案内部51f,51gは当たり回避部であるとも言える。また、上外壁材13の取り付け時にその上外壁材13が第1止水役物51に当たった場合には、案内部51f,51gの傾斜により上外壁材13が第1止水役物51の内側に向けて案内されるようになっている。
【0039】
なお本実施形態では、上外壁材13が取り付けられた後に縦目地15に縦目地ガスケット37が装着された状態では、その縦目地ガスケット37により案内部51gが押され、それにより、案内部51gが目地側板部51cと面一になるよう変形するものとなっている。
【0040】
さらに、第1止水役物51は、下板部51bよりも下方に、目地側板部51cに対して上下方向に直線状に(すなわち面一で)並ぶようにして、下外壁材14の縦目地15側の側端面に当接する当接板部51hを有している。当接板部51hは、下板部51bと垂れ板部51dとにそれぞれ連続するようにして形成されている。
【0041】
また、図7(b)に示すように、第2止水役物52は、上外壁材13の背面側となる背板部52aと、その背板部52aから上外壁材13の下端面に沿って延びる下板部52bと、その下板部52bから下方に垂れて延びる垂れ板部52cと、を有している。なお、背板部52aは、壁支持部材34の鉛直部に当接される鉛直当たり部であり、下板部52bは、壁支持部材34の水平部に当接される水平当たり部である。また、垂れ板部52cは、下外壁材14の中空部21(切り込み溝25を含む)に挿し入れられる挿し入れ部である。
【0042】
また、第2止水役物52において、背板部52aの下端部(下板部52bとの繋ぎ部分)には斜め方向に延び、隅部の面取りがなされた面取り部52dが設けられている(第1止水役物51の面取り部51eと同様)。また、背板部52aの上端部には、上外壁材13の取り付け時において、その上外壁材13を所定位置に配置しやすくするための案内部52eが設けられている(第1止水役物51の案内部51fと同様)。
【0043】
そして、こうした構成の止水役物51,52が、図6(a)、(b)に示すように取り付けられている。このとき、第1止水役物51は、当接板部51hが下外壁材14の縦目地15側の側端面に当接するようにして取り付けられている。また、下外壁材14の中空部21(切り込み溝25を含む)に垂れ板部51d,52cが挿し入れられている。各止水役物51,52は、互いに重ね合わせられないようにして(すなわち互いに離間させて)配置される。また、各止水役物51,52は、接着剤や接着テープを用いて壁支持部材34に対して適宜貼り付けられているとよい。
【0044】
さらに、各止水役物51,52が取り付けられた状態で、図8に示すように、止水役物同士の境界部分にジョイントシート53が貼り付けられる。ジョイントシート53は、片面接着タイプの帯状の防水粘着シートであり、止水役物51,52の境界部に貼着される。つまり、ジョイントシート53は、隣り合う各止水役物51,52に跨るようにして貼り付けられている。このとき、各止水役物51,52に面取り部51e,52dが設けられていることから、各止水役物51,52の入隅部分にジョイントシート53を貼り付ける際においてその入隅部分にピンホールが生じにくくなっている。
【0045】
そして、下外壁材14の上に上外壁材13が取り付けられる。このとき、上外壁材13の背面を各止水役物51,52に当接させた状態で、図示しない取付金具とボルト等の固定具とを用いて、壁支持部材34に対して上外壁材13が固定される。上外壁材13の取り付けにより、各止水役物51,52が上外壁材13の背面から下方又は側方に延出する状態となり、さらに一次バッカー33や一次止水材31の施工が行われる(図3参照)。その後、縦目地15において縦目地ガスケット37や一次止水材36の施工が行われる(図4参照)。
【0046】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0047】
横目地16と縦目地15とが交わる目地交わり部に第1止水役物51を設け、その第1止水役物51を、上外壁材13の背面側となる背板部51aと、その背板部51aから上外壁材13の下端面に沿って延びる下板部51bと、背板部51a及び下板部51bに一体的に設けられ上外壁材13の下端隅部を囲うようにして縦目地15に沿って延びる目地側板部51cと、を有するものとし、さらに下板部51bには下方に垂れて延びる垂れ板部51dを設けた。
【0048】
かかる構成によれば、第1止水役物51は、上外壁材13において背面、下面、及び側面からなる頂点部分の付近を包むように配置され、その頂点部分の付近において外壁部11の背後の側及び縦目地15側への水の流れを阻止することができる。また、下板部51bから垂れ下がる垂れ板部51dによって、下外壁材14の上面側における水の流れが遮断される。以上により、外壁部11の背後の側に雨水等が浸入することを防止できる。その結果、外壁部11の横目地16及び縦目地15が交わる部位における止水を適正に実施することができる。
【0049】
第1止水役物51において背板部51aと下板部51bと目地側板部51cとにより袋状の部分を形成し、その袋状の部分により、上外壁材13において背面、下面、及び側面からなる頂点部分の付近を包むようにした。したがって、上外壁材13の中空部21を通じて流下してきた雨水等について縦目地15への浸入を防止できる構成を実現できる。
【0050】
第1止水役物51の垂れ板部51dが下外壁材14の切り込み溝25に挿し入れられる構成としたため、仮に雨水等が下外壁材14の上面を伝って流れたとしても、その雨水等の流れが第1止水役物51の垂れ板部51dで遮断され、さらに下外壁材14の中空部21に案内される。これにより、横目地16及び縦目地15の交わり部において所望の止水性能を実現できる。
【0051】
縦目地15に長尺状の縦目地ガスケット37が設けられている構成では、その縦目地ガスケット37よりも背面側に雨水等が流れないようにすることが望ましい。この点、第1止水役物51の目地側板部51cを、縦目地15を挟んで対向する2つの外壁材12,13の間において縦目地ガスケット37に押し付けた状態で設ける構成としたため、縦目地15内において縦目地ガスケット37よりも背面側に雨水等が流れないようにすることができる。
【0052】
目地交わり部に第1止水役物51を設けた場合において、目地側板部51cと縦目地ガスケット37とが離れていてそれら両者間に隙間ができていたり、目地側板部51cにより縦目地ガスケット37が局部的に押し潰されることで目地側板部51cの上下部分に隙間が形成されたりすると、それらの隙間から縦目地15内に水の浸入が生じると考えられる。この点、上記構成では、第1止水役物51において、目地側板部51cとその下方の当接板部51hとが上下方向に直線状に並べて設けられていることから、当接板部51hを下外壁材14の縦目地15側の側端面に当接させれば、目地側板部51cが、下外壁材14の側端面から真上に延びるように配置され、上外壁材13の側端面に当接した状態で配置されることにもなる。この場合、縦目地ガスケット37との位置関係において第1止水役物51を適正位置に配置でき、ひいては止水性能の向上を図ることができる。
【0053】
隣合う止水役物51,52に跨るようにして防水性のジョイントシート53を貼り付ける構成としたため、各止水役物51,52が互いに分割されて設けられる構成において、各止水役物51,52の境界部の止水を好適に実施できる。
【0054】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0055】
・外壁部11において各外壁材の配置は変更可能であり、例えば図9に示すように外壁材61,62を配置する構成であってもよい。図9では、L字状の外壁材61と、その外壁材61の切欠部61a(凹所)に配置される外壁材62とを有する構成であり、これらの外壁材61,62により縦目地63と横目地64とが形成されている。本実施形態では、これら各目地63,64はL字状をなすように設けられている。外壁材62が「上外壁材」、外壁材61において切欠部61aよりも下方の部分61bが「下外壁材」に相当する。
【0056】
図10図9のC−C線断面図であり、これは横目地64に沿う切断線において縦目地63の止水構造を示す横断面図である。なお、図10では、既述の図4と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略している。また便宜上、横目地用の止水材の図示を省略するが、二次止水材32としての第1止水役物51を破線にて示している。
【0057】
図10の構成では、既述の実施形態と比べて、各目地63,64が交わる目地交わり部に第1止水役物51が設けられることは同様であるが、縦目地ガスケット37と第1止水役物51との位置関係が相違している。つまり、既述の構成では、上外壁材13の側端面と縦目地ガスケット37との間に第1止水役物51の目地側板部51cを配置していたのに対し、図10の構成では、上外壁材62の側端面に縦目地ガスケット37を直接当て、その横隣りの外壁材61の側端面と縦目地ガスケット37との間に第1止水役物51の目地側板部51cを配置している。この場合、縦目地ガスケット37は、背板部51aと下板部51bと目地側板部51cとにより袋状に形成された部分の内側に配置される。なお、図10の構成を採用する場合には、第1止水役物51において目地側板部51cの上下に各々設けられる案内部51g、当接板部51hを省略した構成であってもよい。
【0058】
その他、外壁部11としては、上下及び左右に配置される4枚の外壁材により十字状をなす縦目地及び横目地が形成される構成であってもよい。この場合には、縦目地を挟んで両側に第1止水役物51が配設されるとよい。
【0059】
・外壁部において複数の外壁材を互いに交差する方向に並べた構成について説明する。図11は、外壁材71,72の配置を示す図であり、本構成はキャンチバルコニーの外装構造をなすものである。
【0060】
外壁材71は略矩形の切欠部71aを有し、その切欠部71aにおける入隅部分には凹部71bが形成されている。凹部71bの幅は、外壁材の厚み寸法よりも大きく、その凹部71bは、当該外壁材71に直交する向きで外壁材72を挿入配置するための挿入部となっている。外壁材71,72はいずれも図の手前側が外壁面である。この場合、外壁材72の外壁面の側に縦目地が形成され、外壁材72の下方に横目地が形成されている。本構成では、外壁材72が「上外壁材」、外壁材71において凹部71bの下方部分が「下外壁材」に相当する。そして、凹部71bに目地止水のための止水役物74が設けられている。
【0061】
図12は、止水役物74の構成を示す斜視図であり、図13(a)、(b)は、外壁部において止水役物74を外壁材71の凹部71bに取り付けた状態を示す斜視図である。図12に示すように、止水役物74は、上外壁材72において側端面の奥側(外壁部の背後の側に相当)となる背板部74aと、その背板部74aから上外壁材72の下端面に沿って延びる下板部74bと、背板部74a及び下板部74bに一体的に設けられ上外壁材72の下端隅部を囲うようにして縦目地に沿って延びる目地側板部74cと、を有している。また、下板部74bには下方に垂れて延びる垂れ板部74dが設けられている。
【0062】
背板部74aは、上外壁材72の側端面と背面とに対向する二面よりなり、それらはいずれも鉛直方向に延びかつ互いに直交するものとなっている。また、下板部74bは、中間部分に垂れ板部74dが設けられることで段差状となり、背板部74a及び目地側板部74cに連続するものとなっている。
【0063】
この場合特に、止水役物74において、背板部74aと下板部74bと目地側板部74cとはそれぞれが互いに交わっており、それら各板部74a〜74cが相互に交わる交わり部はその全域にわたって閉じられている。これにより、止水役物74において背板部74aと下板部74bと目地側板部74cとにより袋状の部分を形成でき、その袋状の部分により、上外壁材72において外壁面、下面、及び側面からなる頂点部分の付近と、背面、下面、及び側面からなる頂点部分の付近とが包まれるようになっている。その他、面取り部や案内部の構成は既述のとおりであるため、説明は省略する。
【0064】
そして、図13(a)、(b)に示すように、止水役物74が外壁材71の凹部71bに取り付けられている。この場合、上外壁材72の下方となる位置には、バルコニー外装部の構成としてキャンチ下部用の水切部材76や見切り部材77が設けられており、そのうち水切部材76と止水役物74とには両者に跨るようにして防水ジョイントシート78が貼り付けられている。
【0065】
・上記実施形態では、外壁材12等の上端部に、各中空部21に通じるように切り込み溝25を形成したが(図2参照)、これを変更し、切り込み溝25を形成しない構成であってもよい。この場合、第1止水役物51の垂れ板部51dには中間繋ぎ部24に干渉しないように、干渉回避用の切欠が形成されているとよい。
【0066】
・上記実施形態では、各止水役物51,52を樹脂や金属により一体成形する構成としたが、これに代えて、複数に分割された部片の接合により各止水役物51,52を構成することも可能である。この場合、部片相互の接合部は密接状態であることが要求される。
【0067】
・上記実施形態では、鉄骨軸組工法により構築される建物について説明したが、これに限定されず、他の工法の建物にも適用できる。例えば、鉄骨ラーメン工法で構築されたユニット式建物にも適用できる。
【符号の説明】
【0068】
11…外壁部、12〜14…外壁材、15…縦目地、16…横目地、21…中空部、24…中間繋ぎ部、25…切り込み溝、37…縦目地ガスケット(縦目地止水部材)、51…第1止水役物(止水部材)、51a…背板部、51b…下板部、51c…目地側板部、51d…垂れ板部、51h…当接板部(当接部)、52…第2止水役物(別の止水部材)、53…ジョイントシート、61,62…外壁材、71,72…外壁材、74…止水役物。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図13