(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247517
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】薄型コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/71 20110101AFI20171204BHJP
【FI】
H01R12/71
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-256095(P2013-256095)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-115177(P2015-115177A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】古本 哲也
【審査官】
山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−226977(JP,A)
【文献】
特開2008−233022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/71−12/75
H01R 12/89
H01R 13/11
H01R 13/193
H01R 13/24
H01R 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の第1コネクタと平板状の第2コネクタとを嵌合面上で互いに重ね合わせて嵌合させる薄型コネクタであって、
前記第1コネクタは、それぞれ平板状の第1金属部材からなり且つ前記第1金属部材の平面内に形成されたバネ部と前記第1金属部材の平面に対して垂直方向に突出するように前記バネ部に形成された突起部とを有すると共に前記突起部の側面に第1接点部が形成され、配列された複数の第1コンタクトを有し、
前記第2コネクタは、それぞれ平板状の第2金属部材からなり且つ前記第2金属部材の側面に第2接点部が形成されると共に前記複数の第1コンタクトと同一方向に配列された複数の第2コンタクトを有し、
前記第1コネクタおよび前記第2コネクタを前記嵌合面上で互いに重ね合わせて前記嵌合面内で前記複数の第1コンタクトおよび前記複数の第2コンタクトの配列方向に対して直交する方向に相対的にスライドさせることにより、前記第2コネクタのそれぞれの前記第2コンタクトが前記第1コネクタの対応する前記第1コンタクトの前記突起部に接触して前記バネ部を弾性変形させ、前記第2コネクタのそれぞれの前記第2コンタクトの前記第2接点部が前記第1コネクタの対応する前記第1コンタクトの前記第1接点部に接触して前記第1コネクタと前記第2コネクタとが互いに嵌合することを特徴とする薄型コネクタ。
【請求項2】
それぞれの前記第2コンタクトは、前記第2接点部に隣接して前記第2金属部材の側面に形成されたテーパ部と、前記第2接点部と前記テーパ部との境界に位置する前記第2金属部材の側面に形成された突起状の第2金属部材側突起とを有し、
前記第1コネクタおよび前記第2コネクタを相対的にスライドさせると、前記第2コンタクトの前記テーパ部が前記第1コンタクトの前記突起部に接触して前記バネ部を弾性変形させつつ移動した後、前記第2コンタクトの前記第2接点部が前記突起部の前記第1接点部に接触し、前記第1接点部と前記第2接点部との接触時に前記第2金属部材側突起を乗り越えることでクリック感が発生する請求項1に記載の薄型コネクタ。
【請求項3】
前記第1コンタクトの前記バネ部は、片持ち梁形状を有し、前記突起部は、前記バネ部の先端に形成される請求項1または2に記載の薄型コネクタ。
【請求項4】
前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトは、それぞれ、補強板、絶縁層および導電材が順次積層された積層体から形成され、前記第1金属部材および前記第2金属部材は、それぞれ、前記積層体の前記導電材からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄型コネクタ。
【請求項5】
前記第1コンタクトは、前記積層体にエッチング加工またはプレス抜き加工を施した後、前記バネ部にアディティブメッキで前記突起部を作製することにより形成され、
前記第2コンタクトは、前記積層体にエッチング加工またはプレス抜き加工を施すことにより形成される請求項4に記載の薄型コネクタ。
【請求項6】
前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトは、それぞれ、補強板および絶縁層が積層された積層体の前記絶縁層上に電解メッキを施すことにより形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄型コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄型コネクタに係り、特に、平板状の第1コネクタと平板状の第2コネクタとを嵌合面上で互いに重ね合わせて嵌合させる基板対基板コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとして、例えば、特許文献1には、
図18に示されるようなコネクタが開示されている。このコネクタは、第1基板1に実装されたレセプタクル2と第2基板3に実装されたプラグ4(図示せず)とからなり、レセプタクル2に、
図19に示されるような、バネ性を有する複数のレセプタクルコンタクト5が配列形成され、プラグ4に、
図20に示されるような、突起状のプラグコンタクト6が配列形成されている。
それぞれのレセプタクルコンタクト5は、
図21に示されるように、内側に開口部Sが形成されるように湾曲する主腕部5aと、主腕部5aに対向するように配置された補助腕部5bと、主腕部5aの先端および補助腕部5bの先端に近接して配置された突出部5cとを有している。開口部Sは、プラグコンタクト6を収容するためのものである。
【0003】
図22に示されるように、レセプタクル2にプラグ4を重ね合わせると、プラグ4の突起状のプラグコンタクト6が、対応するレセプタクルコンタクト5の開口部S内に挿入され、この状態で、
図23に示されるように、第1基板1に実装されたレセプタクル2に対して第2基板3に実装されたプラグ4を矢印C方向にスライドさせることで、プラグ4の突起状のプラグコンタクト6の側面が、主腕部5aの全長にわたって接触しながら移動し、主腕部5aの先端と補助腕部5bの先端と突出部5cの間に弾性的に挟まれる。これにより、レセプタクル2とプラグ4とが嵌合し、レセプタクルコンタクト5とプラグコンタクト6とが電気導通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−226977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラグ4の突起状のプラグコンタクト6をレセプタクル2のレセプタクルコンタクト5内に形成された開口部S内に挿入した状態で、レセプタクル2とプラグ4とを相対的にスライドさせることにより嵌合を行うので、レセプタクルコンタクト5は、突起状のプラグコンタクト6を収容する開口部Sの確保と、プラグコンタクト6の移動に応じて主腕部5aおよび補助腕部5bが弾性変形する際の変位量を吸収し得るスペースを確保する必要がある。このため、レセプタクルコンタクト5の小型化に限界があり、狭ピッチ化を図ることが困難であった。
【0006】
また、レセプタクルコンタクト5の内側に開口部Sを形成するには、加工寸法、レセプタクルコンタクト5の配列ピッチおよびコネクタ幅等の制約を受けるため、レセプタクルコンタクト5のバネ性を有する主腕部5aおよび補助腕部5bの設計の自由度は低いものとなる。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、狭ピッチ化を容易に図ることが可能な薄型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る薄型コネクタは、平板状の第1コネクタと平板状の第2コネクタとを嵌合面上で互いに重ね合わせて嵌合させる薄型コネクタであって、第1コネクタは、それぞれ平板状の第1金属部材からなり且つ第1金属部材の平面内に形成されたバネ部と第1金属部材の平面に対して垂直方向に突出するようにバネ部に形成された突起部とを有すると共に突起部の側面に第1接点部が形成され、配列された複数の第1コンタクトを有し、第2コネクタは、それぞれ平板状の第2金属部材からなり且つ第2金属部材の側面に第2接点部が形成されると共に複数の第1コンタクトと同一方向に配列された複数の第2コンタクトを有し、第1コネクタおよび第2コネクタを嵌合面上で互いに重ね合わせて嵌合面内で
複数の第1コンタクトおよび複数の第2コンタクトの配列方向に対して直交する方向に相対的にスライドさせることにより、
第2コネクタのそれぞれの第2コンタクトが第1コネクタの対応する第1コンタクトの突起部に接触してバネ部を弾性変形させ、第2コネクタのそれぞれの第2コンタクトの第2接点部が第1コネクタの対応する第1コンタクトの第1接点部に接触して第1コネクタと第2コネクタとが互いに嵌合するものである。
【0009】
それぞれの第2コンタクトは、第2接点部に隣接して第2金属部材の側面に形成されたテーパ部と、第2接点部とテーパ部との境界に位置する第2金属部材の側面に形成された第2金属部材側突起とを有し、第1コネクタおよび第2コネクタを相対的にスライドさせると、第2コンタクトのテーパ部が第1コンタクトの突起部に接触してバネ部を弾性変形させつつ移動した後、第2コンタクトの第2接点部が突起部の第1接点部に接触し、第1接点部と第2接点部との接触時に第2金属部材側突起を乗り越えることでクリック感が発生するように構成することができる。
【0010】
第1コンタクトのバネ部は、片持ち梁形状を有し、突起部は、バネ部の先端に形成されることが好ましい。
第1コンタクトおよび第2コンタクトは、それぞれ、補強板、絶縁層および導電材が順次積層された積層体から形成され、第1金属部材および第2金属部材は、それぞれ、積層体の導電材からなるように構成することができる。
好ましくは、第1コンタクトは、積層体にエッチング加工またはプレス抜き加工を施した後、バネ部にアディティブメッキで突起部を作製することにより形成され、第2コンタクトは、積層体にエッチング加工またはプレス抜き加工を施すことにより形成される。
あるいは、第1コンタクトおよび第2コンタクトは、それぞれ、補強板および絶縁層が積層された積層体の絶縁層上に電解メッキを施すことにより形成することもできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、第1コンタクトがバネ部と突起部とを有し、突起部の側面に形成された第1接点部が、平板状の第2金属部材からなる第2コンタクトの第2接点部に接触するので、互いに接続される一対のコンタクトのうち、バネ性を有するコンタクトに突起状の他方のコンタクトを収容する開口部を形成する必要がなく、狭ピッチ化を容易に図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態に係る薄型コネクタのレセプタクルとプラグを斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る薄型コネクタのレセプタクルとプラグを斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】レセプタクルを示し、(A)は斜め上方から見た斜視図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は底面図、(E)は側面図である。
【
図5】レセプタクルに用いられたレセプタクルコンタクトを示す平面図である。
【
図6】レセプタクルコンタクトを示す拡大斜視図である。
【
図7】プラグを示し、(A)は斜め下方から見た斜視図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は底面図、(E)は側面図である。
【
図9】プラグに用いられたプラグコンタクトを示す平面図である。
【
図10】実施の形態に係る薄型コネクタの嵌合前の状態を示す平面図である。
【
図11】嵌合前のレセプタクルコンタクトとプラグコンタクトの位置関係を示す平面図である。
【
図12】嵌合途中のレセプタクルコンタクトとプラグコンタクトの位置関係を示す平面図である。
【
図13】実施の形態に係る薄型コネクタの嵌合後の状態を示す平面図である。
【
図14】嵌合後のレセプタクルコンタクトとプラグコンタクトの位置関係を示す平面図である。
【
図15】他の実施の形態に係る薄型コネクタに用いられたレセプタクルコンタクトを示す平面図である。
【
図16】他の実施の形態に係る薄型コネクタに用いられたプラグコンタクトを示す平面図である。
【
図17】他の実施の形態に係る薄型コネクタにおける嵌合前のレセプタクルコンタクトとプラグコンタクトの位置関係を示す平面図である。
【
図18】従来のコネクタの構成を示す斜視図である。
【
図19】従来のコネクタに用いられたレセプタクルを示す部分平面図である。
【
図20】従来のコネクタに用いられたプラグを示す部分平面図である。
【
図21】従来のコネクタに用いられたレセプタクルコンタクトを示す拡大平面図である。
【
図22】嵌合前の従来のコネクタを示す側面図である。
【
図23】従来のコネクタにおける嵌合動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に、この発明の実施の形態に係る薄型コネクタの構成を示す。薄型コネクタは、平板状のレセプタクル(第1コネクタ)11と平板状のプラグ(第2コネクタ)12とを備えており、これらレセプタクル11およびプラグ12を互いに重ね合わせた状態で嵌合が行われる。
図1および
図2では、レセプタクル11およびプラグ12が互いに平行で間隔を隔てて配置され、斜め上方から見た様子、および、斜め下方から見た様子がそれぞれ示されている。
【0014】
レセプタクル11は、2列に配列された複数のレセプタクルコンタクト(第1コンタクト)13を有し、プラグ12は、2列に配列された複数のプラグコンタクト(第2コンタクト)14を有している。
ここで、平板状のレセプタクル11およびプラグ12が延びる平面をXY面、複数のレセプタクルコンタクト13および複数のプラグコンタクト14の配列方向をY方向とし、プラグ12がレセプタクル11に対してZ方向に間隔を隔てて配置されているものとする。
【0015】
レセプタクル11は、
図3および
図4に示されるように、ステンレス等からなる補強板15、ポリイミド等からなる絶縁層16および銅等からなる導電材(第1金属部材)17が順次積層された3層構造の積層体18を用いて作製されており、さらに、積層体18の上面の周縁部に、絶縁層19と補強板20を積層して形成されたフレーム21が配置されている。
【0016】
フレーム21は、プラグ12をX方向にスライド可能に収容するもので、フレーム21の内周部は、Y方向には、プラグ12のY方向長さにほぼ対応する長さを有し、X方向には、プラグ12のX方向長さよりも大きな長さを有している。また、フレーム21の内周部の4隅には、突き当たり部21aおよび21bが形成されている。これらの突き当たり部21aおよび21bのうち、フレーム21の−X方向側で且つY方向の両端部に配置された一対の突き当たり部21aは+X方向に向けられ、フレーム21の+X方向側で且つY方向の両端部に配置された一対の突き当たり部21bは、突き当たり部21aに対向するように−X方向に向けられている。
【0017】
積層体18の補強板15および絶縁層16には、複数のレセプタクルコンタクト13にそれぞれ対応した複数の矩形状の開口部22が形成されており、それぞれの開口部22内に導電材17からなるバネ部23が形成されている。バネ部23は、
図5に示されるように、XY面内で概ね−X方向に延びる片持ち梁形状を有しており、バネ部23の先端に突起部24が形成されている。
図6に示されるように、突起部24は、XY面に対して垂直方向すなわち+Z方向に突出形成された円柱形状を有し、突起部24の側面(外周面)によりレセプタクル接点部(第1接点部)25が形成されている。このようなバネ部23と突起部24により、それぞれのレセプタクルコンタクト13が形成されている。
【0018】
レセプタクル11は、平板形状の積層体18の補強板15および絶縁層16にそれぞれエッチングにより複数の矩形状の開口部22を形成すると共に、導電材17をエッチングすることにより、それぞれの開口部22内に1つのバネ部23を形成した後、バネ部23の先端に、例えばアディティブメッキを施すことにより突起部24を形成し、さらに、積層体18の上面の周縁部に、絶縁層19と補強板20からなるフレーム21を貼り付けることで作製することができる。
【0019】
プラグ12は、
図7および
図8に示されるように、ステンレス等からなる補強板26、ポリイミド等からなる絶縁層27および銅等からなる導電材(第2金属部材)28が順次積層された3層構造の積層体29を用いて作製されている。
積層体29の補強板26および絶縁層27には、複数のプラグコンタクト14にそれぞれ対応した複数の矩形状の開口部30が形成されている。プラグコンタクト14は、
図9に示されるように、XY面内で導電材28をパターニングすることにより、それぞれ導電材28の側面に形成された、テーパ部31とプラグ側突起32(第2金属部材側突起)とプラグ接点部33(第2接点部)とを有している。テーパ部31は、上方から見たときに、XY面内で−X方向に向かうほど+Y方向に位置が変化するようにX方向に対して斜めに形成されており、プラグ接点部33は、X方向に延びるように形成されている。プラグ側突起32は、テーパ部31とプラグ接点部33との境界において+Y方向に突出するように形成されている。
【0020】
プラグ12は、平板形状の積層体29の補強板26および絶縁層27にそれぞれエッチングにより複数の矩形状の開口部30を形成すると共に、導電材28をエッチングすることにより、それぞれの開口部30内にテーパ部31とプラグ側突起32とプラグ接点部33を形成することで作製することができる。
この実施の形態に係る薄型コネクタは、例えば、Y方向の長さ4〜5mm、X方向の幅2〜3mm、Z方向の高さ0.3〜0.5mm程度の小型のコネクタであり、それぞれのレセプタクルコンタクト13に対応した開口部22およびそれぞれのプラグコンタクト14に対応した開口部30は、例えば、Y方向の長さ0.3mm、X方向の長さ0.6mm程度の小さなサイズに形成されている。
【0021】
次に、この実施の形態に係る薄型コネクタの嵌合時の動作について説明する。まず、レセプタクル11のフレーム21で囲まれた導電材17の上にプラグ12が導電材28を下方に向けられて重ね合わされる。このとき、レセプタクル11の導電材17の上面およびプラグ12の導電材28の下面により薄型コネクタの嵌合面が形成され、プラグ12は、嵌合面内でレセプタクル11に対して相対的にX方向にスライド可能にレセプタクル11のフレーム21内に配置される。
【0022】
図10に示されるように、プラグ12がレセプタクル11のフレーム21の−X方向側の突き当たり部21aに接触する位置にあるときは、
図11に示されるように、プラグ12の複数のプラグコンタクト14は、それぞれXY面内において、レセプタクル11の対応するレセプタクルコンタクト13の突起部24から離れており、レセプタクルコンタクト13のレセプタクル接点部25とプラグコンタクト14のプラグ接点部33は、互いに離間した状態にある。
【0023】
ここで、プラグ12をレセプタクル11に対して相対的に+X方向にスライドさせると、
図12に示されるように、それぞれのプラグコンタクト14のテーパ部31がレセプタクルコンタクト13の突起部24の側面に形成されているレセプタクル接点部25に接触した後、テーパ部31によりレセプタクルコンタクト13のバネ部23を+Y方向に弾性変形しつつプラグ12が+X方向にスライドする。
【0024】
そして、
図13に示されるように、プラグ12がレセプタクル11のフレーム21の+X方向側の突き当たり部21bに接触するまで、プラグ12をレセプタクル11に対して相対的に+X方向にスライドさせてレセプタクル11とプラグ12とを嵌合させると、
図14に示されるように、レセプタクルコンタクト13のレセプタクル接点部25とプラグコンタクト14のプラグ接点部33とがバネ部23の弾性力により互いに所定の接触力をもって接触する。これにより、プラグ12の複数のプラグコンタクト14は、それぞれレセプタクル11の対応するレセプタクルコンタクト13に対して電気導通状態となり、レセプタクル11とプラグ12とが互いに嵌合する。
プラグコンタクト14には、テーパ部31とプラグ接点部33との境界において+Y方向に突出するようにプラグ側突起32が形成されているため、レセプタクル接点部25とプラグ接点部33の接触時にプラグ側突起32を乗り越えることでクリック感が発生する。
【0025】
このようにして、レセプタクル11とプラグ12との嵌合により、プラグ12の複数のプラグコンタクト14が、同時に、レセプタクル11の対応するレセプタクルコンタクト13に電気導通されることとなる。
この実施の形態に係る薄型コネクタにおいては、レセプタクルコンタクト13がバネ部23を有すると共にレセプタクル接点部25を形成する突起部24がバネ部23の先端に形成されているので、上述した特許文献1のように、レセプタクルコンタクトにプラグ側の突起を挿入するための空間を確保する必要がなく、バネ部23の設計の自由度が上がり、狭ピッチ化を容易に図ることが可能となる。
なお、プラグ12にレセプタクルコンタクト13の突起部24を挿入する空間を形成する必要はあるが、プラグ12には、バネ部が存在しないため、狭ピッチ化を妨げることはない。
【0026】
レセプタクルコンタクト13にプラグ側の突起を挿入するための空間が不要となるので、バネ部23のバネ幅を変化させることにより、容易にレセプタクル接点部25とプラグ接点部33の接触力を調整することも可能となる。
また、プラグコンタクト14のテーパ部31とプラグ側突起32は、単純な平面形状を有しているので、テーパ部31のテーパ角度を変更するだけで、レセプタクルコンタクト13のバネ部23を弾性変形させてレセプタクル11とプラグ12を嵌合する際に必要な操作力を容易に調整することができる。すなわち、レセプタクル11においても、プラグ12においても、設計の自由度が高くなる。
さらに、レセプタクルコンタクト13のバネ部23の全長にわたってプラグコンタクト14に接触するのではなく、バネ部23の先端に形成された突起部24のみがプラグコンタクト14のテーパ部31に接触しながらプラグ接点部33に至るので、バネ部23のバネ性が安定するという効果も得られる。
【0027】
上記の実施の形態では、レセプタクル11のそれぞれのレセプタクルコンタクト13に対応して積層体18の補強板15および絶縁層16に1つの矩形状の開口部22が形成され、この開口部22内に導電材17からなる1つのバネ部23が形成されていたが、これに限るものではなく、例えば
図15に示されるように、互いに隣接する一対のレセプタクルコンタクト41に対して補強板15および絶縁層16に1つの開口部42を形成し、この開口部42内にそれぞれのレセプタクルコンタクト41に対応する一対のバネ部43を形成することもできる。これら一対のバネ部43は、互いに左右対称の形状を有し、それぞれ、先端に突起部44を有している。
【0028】
この場合、
図16に示されるように、プラグ側においても、積層体29の補強板26および絶縁層27に互いに隣接する一対のプラグコンタクト45に対して1つの開口部46を形成し、この開口部46内にそれぞれのプラグコンタクト45に対応する一対のテーパ部47、一対のプラグ側突起48および一対のプラグ接点部49が形成される。これら一対のテーパ部47、一対のプラグ側突起48および一対のプラグ接点部49は、互いに対向するように左右対称の形状を有している。
【0029】
レセプタクルとプラグとの嵌合時には、
図17に示されるように、互いに重ねられた開口部42および46内において、一対のプラグコンタクト45のそれぞれのテーパ部47、プラグ側突起48およびプラグ接点部49が、対応するレセプタクルコンタクト41の突起部44に接触することとなる。
このような構成としても、上記の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
また、上記の実施の形態では、レセプタクル11が、2列に配列された複数のレセプタクルコンタクト13を有し、プラグ12も、2列に配列された複数のプラグコンタクト14を有していたが、複数のレセプタクルコンタクトおよび複数のプラグコンタクトは、1列に配列してもよく、あるいは、3列以上に配列してもよい。
【0031】
また、上記の実施の形態では、レセプタクルコンタクト13およびプラグコンタクト14を、それぞれ積層体18、29の導電材17、28をエッチングすることで形成したが、これに限るものではなく、導電材17および28をそれぞれプレス抜き加工することにより形成することもできる。例えば、積層体18の補強板15および絶縁層16にそれぞれエッチングにより複数の開口部22を形成した後、導電材17および28のバネ部以外もエッチングし、それぞれの開口部22内において導電材17にプレス抜き加工を施してバネ部23を形成することができる。プラグコンタクト14についても同様である。
一般に、プレス抜き加工により導電材を打ち抜くと、エッチングで形成するよりも高精度にコンタクト形状を製造することができるため、接点部分のみをプレス抜き加工により形成し、その他のコンタクト部分をエッチングで形成することもできる。
さらに、3層の積層体18および29を用いずに、補強板および絶縁層からなる2層の積層体の絶縁層の表面上に電解メッキを施してレセプタクルコンタクトまたはプラグコンタクトを形成することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 第1基板、2 レセプタクル、3 第2基板、4 プラグ、5 レセプタクルコンタクト、5a 主腕部、5b 補助腕部、5c 突出部、6 プラグコンタクト、11 レセプタクル、12 プラグ、13,41 レセプタクルコンタクト、14,45 プラグコンタクト、15,20,26 補強板、16,19,27 絶縁層、17,28 導電材、18,29 積層体、21 フレーム、21a,21b 突き当たり部、22,30,42,46 開口部、23,43 バネ部、24,44 突起部、25 レセプタクル接点部、31,47 テーパ部、32,48 プラグ側突起、33,49 プラグ接点部、S 開口部、C スライド方向。