【実施例】
【0059】
以下、本発明を適用する(メタ)アリルシラン化合物、そのシランカップリング剤、及びそれを用いた機能材料の実施例と、本発明を適用外の比較例とを、実例に沿って説明する。
【0060】
(実施例1)
(1.1) 窒素雰囲気下で、1,4−ジブロモベンゼン(1)(15g,15.9mmol)に、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)(90ml)を加え、食塩氷で−10℃付近まで冷却し、2Mのイソプロピルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン(THF)溶液(
iPrMgCl溶液)の(0.35当量,11.2ml)と1.67Mのノルマル−ブチルリチウムのヘキサン溶液(
nBuLi溶液)(0.7当量,26.8ml)をそれぞれ滴下した。それを−10℃付近で2時間攪拌した後に、臭化アリル(1.1当量,6.8ml)を加え、室温で14時間攪拌した。反応混合物にジエチルエーテルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液で中和した。水層をジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮したところ、下記化学反応式に示すように、1−アリル−4−ブロモベンゼン(2)の粗生成物が得られた(収量:13.0g,暫定収率:103%)。
【化1】
この粗生成物について
1H−核磁気共鳴スペクトル法(
1H NMR)による理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.41 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.06 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.88-5.96 (m, 1H), 5.05-5.09 (m, 2H), 3.33 (d, J = 6.8 Hz, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(2)の化学構造を支持する。
【0061】
(1.2) 窒素雰囲気下で、1−アリル−4−ブロモベンゼン(2)(13.2g,55.1mmol)と(Bu
4N)
2[PtCl
6](50.0mg,0.1mol%)に、蒸留した塩化メチレン(25ml)と蒸留したジエチルエーテル(25ml)とを加え、0℃に冷却し、トリクロロシラン(2当量,11.1ml)を加え、室温で12時間攪拌した。その後、減圧下で濃縮し、窒素雰囲気下で0℃に冷却した後に、1Mのアリルマグネシウムブロマイドのジエチルエーテル溶液(CH
2=CH−CH
2−MgBr溶液)(4当量,220.4ml)を滴下し、室温で15時間攪拌した。反応混合物にジエチルエーテルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液で中和した。水層をジメチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ノルマルヘキサン)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}フェニルブロミド(3)が得られた(収量:16.3g,収率:87%)。
【化2】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.81 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.70-5.82 (m, 3H), 4.84-4.89 (m, 6H), 2.70 (t, J = 3.4 Hz, 2H), 1.62-1.66 (m, 2H), 1.58 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 0.58-0.63 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(3)の化学構造を支持する。
【0062】
(1.3) 窒素雰囲気下で、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}フェニルブロミド(3)(14.2g,40.6mmol)に、THF(50ml)を加え、食塩氷で−10℃付近まで冷却し、2Mの
iPrMgCl溶液(0.70当量,14.2ml)と1.67Mの
nBuLi溶液(1.4当量,34.0ml)をそれぞれ滴下した。それを−10℃付近で2時間攪拌した後に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(2当量,6.3ml)を加え室温で14時間攪拌した。反応混合物にジエチルエーテルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液で中和した。水層をジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンズアルデヒド(4)が得られた(収量:11.0g,収率:89%)。
【化3】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 9.98 (s, 1H), 7.78 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 5.70-5.81 (m, 3H), 4.84-4.89 (m, 6H), 2.68 (t, J = 3.6 Hz, 2H), 1.66-1.70 (m, 2H), 1.58 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 0.61-0.65 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(4)の化学構造を支持する。
【0063】
(1.4) 窒素雰囲気下で、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンズアルデヒド(4)(11.0g,36.9mmol)にTHF(25ml)、メタノール(MeOH)(25ml)を加えて氷で0℃付近まで冷却し、NaBH
4(2.8g,73.8mmol)を加え、3時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。水層をジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ノルマルヘキサン/酢酸エチル=5/1)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンジルアルコール(5)が得られた(収量:9.2g,収率:84%)。
【化4】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.29 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.16 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.72-5.80 (m, 3H), 4.84-4.89 (m, 6H), 4.67 (d, J = 4.4 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.60-1.68 (m, 2H), 1.58 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 0.62-0.66 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(5)の化学構造を支持する。
【0064】
(1.5) 窒素雰囲気下で、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンジルアルコール(5)(3.0g,10.0mmol)とトリフェニルホスフィン(PPh
3)(3.93g,15.0mmol)に、塩化メチレンの5mlと、CBr
4(4.97g,15.0mmol)とをゆっくりと加え、1時間攪拌した。反応混合物に冷却した蒸留水を加えた。水層を塩化メチレンで抽出し、集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ノルマルヘキサン/酢酸エチル=20:1)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンジルブロミド(6)が得られた(収量:2.80g,収率:77%)。
【化5】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.31 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 7.13 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 5.75 (m, 3H), 4.86 (m, 6H), 4.45 (s, 2H), 2.61 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.61-1.67 (m, 2H), 1.57 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 0.61-0.65 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(6)の化学構造を支持する。
【0065】
(1.6) 窒素雰囲気下で、(+)−α−メチル−D−グルコース(7)(500mg,2.58mmol)と、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(412mg,2.71mmol)と、p−トルエンスルホン酸一水和物(491mg,2.58mmol)とにDMFの5mlを加えて、超音波処理を7分間行った。反応混合物にトリエチルアミンを加え、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、(+)−(4,6−O−ベンジリデン)メチル−α−D−グルコピラノシド(8)が得られた(収量:248mg,収率:34%)。
【化6】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.48 (dd, J = 3.6 Hz, J = 3.0 Hz, 2H), 7.35-7.39 (m, 3H), 5.49 (s, 1H), 4.71 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 4.26 (dd, J = 5.6 Hz, J = 4.2 Hz, 1H), 3.89 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 3.69-3.80 (m, 2H), 3.56 (dd, J = 5.2 Hz, J = 3.8 Hz, 1H), 3.44 (t, J = 9.4 Hz, 1H), 3.40 (s, 3H)
この理化学分析結果は、化学式(8)の化学構造を支持する。
【0066】
(1.7) 窒素雰囲気下で、NaH(10当量,72.3mg,1.77mmol)を3回ノルマルヘキサンで洗浄し、そこにTHFの5mlに溶かしたテトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)(6.54mg,10mol%)と、(+)−(4,6−O−ベンジリデン)メチル−α−D−グルコピラノシド(8)(1当量,50mg,0.177mmol)を加え30分間撹拌してから、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンジルブロミド(6)(371.1mg,1.06mol)を加えて15時間撹拌した。その後、メタノールを加え30分間撹拌したのち、氷/ジエチルエーテル中にゆっくりと加えた。反応混合物に、1N希塩酸を加えて中和し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。水層をジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ノルマルヘキサン/酢酸エチル=20/1から2/1へ段階的に変化)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、本発明を適用するアリルシラン化合物(9)が得られた(収量:27mg,収率:41%)。
【化7】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.48 (dd, J = 4.8 Hz, J = 2.0 Hz, 2H), 7.35-7.39 (m, 3H), 7.30 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.16 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 5.71-5.81 (m, 3H), 5.52 (s, 1H), 4.84-4.90 (m, 6H), 4.71 (q, J = 16 Hz, J = 12.2 Hz, 2H), 4.61 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.26 (dd, J = 5.6 Hz, J = 4.6 Hz, 1H), 4.14 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 3.78-3.84 (m, 1H), 3.70 (t, J = 10.0 Hz, 2H), 3.44-3.52 (m, 1H), 3.38 (s, 1H), 2.61 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.62-1.74 (m, 2H), 1.57 (d, J = 8.4 Hz, 6H), 0.61-0.65 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(9)の化学構造を支持する。
【0067】
(1.8) 化学式(9)のアリルシラン化合物は、ガラスに付して防曇材にして、または、シリカゲルや樹脂粉末等のクロマトグラフィー担体用基材に付して不斉識別可能なカラムクロマトグラフィー担体にして、機能材料として、用いられる。
【0068】
(実施例2)
(2.1) 窒素雰囲気下で、NaH(1.2当量,157mg,3.92mmol)を3回ヘキサンで洗浄し、そこにTHFの20mlに溶かしたテトラブチルアンモニウムアイオダイド(120mg,10mol%)と、1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−α−D−グルコフラノース(10)(1当量,850mg,3.27mmol)を加え30分間撹拌してから、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンジルブロミド(6)(1.2当量,1.42g,3.92mmol)を加えて15時間撹拌した。その後、メタノールを加え30分間撹拌したのち、氷/ジエチルエーテル中にゆっくりと加えた。反応混合物に、1N希塩酸を加えて中和し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。水層をジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ノルマルヘキサン/酢酸エチル=5/1)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、本発明を適用するアリルシラン化合物(11)が得られた(収量:1250mg,収率:71%)。
【化8】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.26 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.89 (s, 1H), 5.71-5.81 (m, 3H), 4.83-4.89 (m, 6H), 4.58-4.67 (m, 3H), 4.38 (q, J = 6.0 Hz, J = 7.6 Hz, 1H), 4.10-4.16 (m, 2H), 3.99-4.02 (m, 2H), 3.78-3.84 (m, 1H), 2.61 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.61-1.67 (m, 2H), 1.58 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 1.41 (d, J = 20.4 Hz, 6H), 1.40 (d, J = 73.2 Hz, 6H), 0.62-0.66 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(11)の化学構造を支持する。
【0069】
(2.2) 基材である平均粒径5μmのシリカゲル粒子であるワコーシル5SIL−120(和光純薬工業株式会社製;商品名;商品番号233-00991)を真空中、140℃で5時間乾燥させた。その後、シリカゲル粒子を室温まで冷却し、窒素雰囲気下で、アリルシラン化合物(11)(3g,5.52mmol)からなるシランカップリング剤を溶かしたトルエン60mlを加えて、160℃で13時間還流し、シリカゲル粒子表面に露出した水酸基にシランカップリング剤を、ゾルゲル法でシランカップリング反応させた。その水酸基を介してエーテル結合させるシランカップリング反応の終了後、室温まで冷却し、粗生成物を、ベンゼンで3回、メタノールで2回、さらにベンゼンで2回洗浄し、下記化学反応式に示すように、本発明を適用する粉末状の機能材料を、保護された表面修飾シリカゲル粒子として得た。
【化9】
(2.3) このような化学式(11)のアリルシラン化合物は、ガラスに付して防曇材にして、または、シリカゲルや樹脂粉末等のクロマトグラフィー担体用基材に付して不斉識別可能なカラムクロマトグラフィー担体にして、必要に応じ更に脱保護したり別な官能基を導入したりして、機能材料として、用いられる。例えば、次のようにして、脱保護し、ジメチルフェニルイソシアネート(DMP)と反応して、DMP化した機能材料とした。
【0070】
(2.4) 先ず、以下のようにして脱保護した。前記(2.2)で得た保護された表面修飾シリカゲル粒子の1.5gを秤取し、イソプロパノール(IPA)の7.0mlと、水の3.0mlと、トリフルオロ酢酸(TFA)の0.13mlとの混合溶液中に分散し、7時間、撹拌しながら50〜52℃に保って加熱した。放冷後、一夜放置し、翌日、グラスフィルターにてろ別し、IPAの25mlで4回、メタノールの20mlで1回、IPAの20mlで1回、ヘキサンの20mlで2回、順次洗浄した後、風乾し、さらに5時間、65℃にて真空乾燥して、下記化学反応式に示すように、脱保護された表面修飾シリカゲル粒子を、得た。
【化10】
【0071】
(2.5) 次に、以下のようにしてDMP化した。前記(2.4)で得た脱保護された表面修飾シリカゲル粒子の52.7mgを秤取し、窒素気流中、ピリジンの1.0mlと、3,5−ジメチルフェニルイソシアナートの150μlとを加え、撹拌しながら75℃で8時間保った。放冷後、IPAの10mlを加え、一夜放置後、メタノールの5mlとアセトンの5mlとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の10mlとの混合溶媒により、結晶性生成物を溶解させてから、グラスフィルターに移液し、更に容器の内壁を、DMFの10mlで洗い込み、DMP化された表面修飾シリカゲル粒子の粗生成物を、ろ別した。さらに、DMFの20mlで3回、エタノールの20mlで4回、ヘキサンの10mlで2回洗浄後、風乾し、さらに5時間、65℃にて真空乾燥したところ、下記化学反応式に示すように、DMP化された表面修飾シリカゲル粒子を、得た。
【化11】
得られた、DMP化された表面修飾シリカゲル粒子の元素分析を行ったところ、測定値はC;12.15%、H;1.69%、N;0.67%であり、ほぼ理論値通りであった。また、このDMP化された表面修飾シリカゲル粒子を、赤外線吸収スペクトル測定したところ、1716cm
−1にC=O伸縮振動、1618cm
−1にNH変角振動が観測された。
この理化学分析結果は、DMP化された表面修飾シリカゲル粒子の化学構造を支持する。
【0072】
(実施例3)
(3.1) 窒素雰囲気下で、3−ブロモプロピルトリクロロシラン(12)(1当量,5g,19.5mmol)を0℃に冷却し、1Mのアリルマグネシウムブロマイド溶液(3.3当量,64.5ml)を加え室温で3時間攪拌した。反応混合物にジエチルエーテルを加え、クエン酸水溶液で中和した。水層をジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ノルマルヘキサン)により、分離させて精製し、3−ブロモプロピルトリアリルシラン(13)を得た(収量:5.2g,収率:98%)。
【化12】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 5.73-5.81 (m, 3H), 4.88-4.93 (m, 6H), 3.37 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.86-1.90 (m, 2H), 1.61 (d, J = 8.4 Hz, 6H), 0.69-0.74 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(13)の化学構造を支持する。
【0073】
(3.2) ヨウ素により活性化させたマグネシウム粒(934mg,38.4mmol)にジエチルエーテルを5ml加え、20mlのジエチルエーテルに溶解した3−ブロモプロピルトリアリルシラン(13)(7.0g,25.2mmol)をゆっくり滴下し、室温で13時間攪拌し、下記化学反応式に示すように、3−(トリアリルシリル)プロピルマグネシウムブロミド(14)のジエチルエーテル溶液を得た。
【化13】
その後、酸塩基滴定によりその溶液の濃度を測定したところ0.78Mであった。次いで、窒素雰囲気下で、ポリオール誘導体として糖誘導体である2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−α−D−マンノフラノース(15)(1g,3.84mmol)にTHFを20ml加えて0℃に冷却し、3−(トリアリルシリル)プロピルマグネシウムブロミド(14)のジエチルエーテル溶液(4.0当量,19.7ml)を加え、室温で5時間攪拌した。反応混合物にジエチルエーテルを加え、クエン酸水溶液で中和した。水層をジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、ヘキサンとメタノールの混合溶媒に溶かし、メタノール層のみを取り分けてから、減圧下で濃縮したところ、下記化学反応式に示すように、本発明を適用するアリルシラン化合物(16)が得られた(収量:5.2g,収率:68%)。
【化14】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 5.73-5.82 (m, 3H), 4.84-4.91 (m, 6H), 4.30-4.42(m,1H), 4.04-4.15(m, 4H), 3.98-3.99 (m, 1H), 3.80-3.90 (m, 1H), 3.57-3.63 (m, 1H), 1.67-1.80 (m, 2H), 1.69 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 1.51 (d, J = 21.6 Hz, 3H), 1.41 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 1.37 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.57-0.69 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(16)の化学構造を支持する。
【0074】
(3.3) 厚さ0.12〜0.17mmで1.8cm四方のガラス板を、濃硝酸10mlに浸して15分間、超音波処理した後、水で洗浄し、次いで、濃硫酸7mlに浸し、30%過酸化水素水3mlを滴下した後、12時間放置した後、水で洗浄し、150℃で5時間乾燥して、表面活性化ガラス板を調製した。
【0075】
(3.4) アリルシラン化合物(16)(100mg,0.220mmol)に、THFの2gと2N希塩酸の500μlとを加え、60℃で17時間攪拌し、糖誘導体(15)であるポリオール誘導体に由来しその保護基から脱保護反応によって生成した遊離水酸基及びシラノール基を有するシランカップリング剤が、含まれた混合組成物を調製した。その後、機能材料形成のためにその混合組成物を、表面活性化ガラス板の一表面に、スピンコーターを用いて1500rpmで、スピンコーティングしたところ、アリルシラン化合物(16)に由来しその保護基が脱保護反応によって遊離水酸基が生成しているシランカップリング剤のアリルシラン化合物のトリアリルシリル基が、表面活性化ガラス板上の表面に露出した水酸基に、ゾルゲル法でシランカップリング反応することによって、プロペンが脱離して、本発明を適用するもので、糖であるポリオール誘導体に由来した遊離水酸基が露出している板状の機能材料が、得られた。
【0076】
(3.5) これを防曇材として物性評価する理化学分析を行った結果を以下に示す。先ず、試験管に水を入れて湯浴で加熱し、その試験管中の水を沸騰させ、試験管の口に、得られた板状の機能材料を、載置した。3分間経過後まで、試験管内空を覆っている機能材料の部位を、観察するという防曇性試験を行ったところ、機能材料は、曇りを生じておらず、防曇性を示していた。
【0077】
(実施例4)
(4.1) 実施例3のようにして調製したアリルシラン化合物(16)(100mg,0.220mmol)に、THFの2gと2N希硫酸の250μlとを加え、60℃で5時間攪拌し、糖であるポリオール誘導体に由来しその保護基が脱保護反応によって遊離水酸基を、生成させた。その後、テトラアルコキシシランの一種であるテトラエトキシシラン(TEOS)の50mol%を加えて60℃で12時間、反応させた後、濃硫酸26.7μlを加えて60℃で2時間、反応させて官能基変換し、糖であるポリオール誘導体に由来しその保護基から脱保護反応によって生成した遊離水酸基及びシラノール基を有するシランカップリング剤が、含まれた混合組成物を調製した。機能材料形成のためにその混合組成物を、実施例3のようにして調製した表面活性化ガラス板の一表面に、スピンコーターを用いて1500rpmで、スピンコーティングしたところ、アリルシラン化合物(16)に由来しその保護基の脱保護反応によって遊離水酸基及びシラノール基が生成しているシランカップリング剤のシラノール基や一部残存するアリル基が、表面活性化ガラス板上の表面に露出した水酸基に、縮合又は重縮合してシランカップリング反応することによって、プロペンが脱離して、本発明を適用するもので糖であるポリオール誘導体に由来した遊離水酸基が露出している板状の機能材料が、得られた。
【0078】
(4.2) 未処理のガラス板と、この処理して得られた機能材料とについて、接触角を測定したところ、未処理では接触角が53°であったが、処理して得られた機能材料では5°であった。
【0079】
(4.3) 得られた機能材料を防曇材として実施例3(3.5)と同様にして物性評価する理化学分析を行った結果を以下に示す。3分間経過後まで、試験管内空を覆っている機能材料の部位を、観察するという防曇性試験を行ったところ、機能材料は、曇りを生じておらず、防曇性を示していた。さらに得られた防曇材を水で洗浄してから、同様に防曇性試験を行ったところ、防曇性に影響はなかった。
【0080】
(比較例1)
一方、比較のため、未処理のカバーガラスであるガラス板に対して、実施例3(3.5)と同様に防曇性試験を行ったところ、僅か10秒間経過後に、曇りを生じてしまい、防曇性を示さなかった。
【0081】
(実施例5〜7)
実施例4のテトラエトキシシラン(TEOS)を、10mmol%、25mmol%、100mmol%に、夫々変えたこと以外は、実施例4と同様にして、本発明を適用する板状の機能材料が、得られた。これらを実施例4と同様な理化学分析を行ったところ、実施例4と同様な結果を示した。
【0082】
(実施例8)
(8.1) 実施例3のようにして調製したアリルシラン化合物(16)(100mg,0.220mmol)に、オキサリルジクロリドの1当量と、トリエチルアミンの2当量と無水トルエン1mlと無水ジクロロエタン0.5mlとを加え、40℃で5時間攪拌してから、セライトで濾過したところ、糖であるポリオール誘導体をエステル化及び/又はオリゴマー化したシランカップリング剤が、含まれた濾液である混合組成物を、調製した。機能材料形成のためにその混合組成物を、実施例3のようにして調製した表面活性化ガラス板の一表面に、ティップコーティングし100℃で2日間加熱したところ、シランカップリング剤のアリルシラン化合物(16)に由来するアリル基が、表面活性化ガラス板上の表面に露出した水酸基に、シランカップリング反応することによって、プロペンが脱離して、ポリオール誘導体を有する板状の機能材料前駆体が得られた。これを、室温で3日間、酢酸−水(体積比で7:3)混合液に浸すと、糖の保護基が脱保護されて、本発明を適用するもので糖であるポリオール誘導体に由来した遊離水酸基が露出している板状の機能材料が、防曇材として、得られた。
【0083】
(8.2) これを防曇材として物性評価する理化学分析を行った結果を以下に示す。先ず、得られた板状の機能材料に、息を吹きかけ、その部位を、観察するという防曇性試験を行ったところ、機能材料は、曇りを生じておらず、防曇性を示していた。なお、未処理のガラス板に息を吹きかけ、その部位を、観察したところ、曇りを生じ、防曇性を示さなかった。
【0084】
(実施例9)
(9.1) 実施例8のティップコーティングに際し、100℃で2日間加熱する代わりに100℃で1日間加熱したこと以外は、実施例8と同様にして、板状の機能材料を、得た。
【0085】
(9.2) これを防曇材として実施例8と同様に防曇性試験を行ったところ、実施例8と同様に防曇性を示した。
【0086】
(実施例10)
(10.1) 実施例1と同様にして調製した(4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンジルブロミド(6)と、α−シクロデキストリン(17)とから、下記化学反応式に示すように、アリルシラン化合物(18)を得た。
【化15】
これの
1H NMRによる理化学分析結果は、化学式(18)の化学構造を支持する。
【0087】
(10.2) このような化学式(18)のアリルシラン化合物は、ガラスに付して防曇材にして、または、シリカゲルや樹脂粉末等のクロマトグラフィー担体用基材に付して不斉識別可能なカラムクロマトグラフィー担体にして、機能材料として、用いられる。
【0088】
(実施例11)
(11.1) セルロース粉末(MP Biomedicals,LLC社製、商品番号191499)の60mgと、塩化リチウム600mgとを、7mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に加え、90℃で24時間撹拌した。その後、60%の水素化ナトリウムを含む粉末120mgを3mLのDMSOに溶かした溶液を、加え、60℃で1時間撹拌した後、3−ブロモプロピルトリアリルシラン(13)891mgを加えて、70℃で16時間撹拌し続けた。その後、水を加えて、ろ過し、さらにチオ硫酸ナトリウム水溶液、水、メタノール、石油エーテルで洗浄し、乾燥したところ、黄色粉末が得られた。
【化16】
これの
1H NMRによる理化学分析を行ったところ、この理化学分析結果は、化学式(20)の化学構造を支持する。
【0089】
(11.2) このような化学式(20)のアリルシラン化合物は、ガラスに付して防曇材にして、または、シリカゲルや樹脂粉末等のクロマトグラフィー担体用基材に付して不斉識別可能なカラムクロマトグラフィー担体にして、機能材料として、用いられる。
【0090】
(実施例12)
(12.1) 窒素雰囲気下で、NaH(45.3mg,1.11mmol)を3回ヘキサンで洗浄し、そこにTHFの2mlに溶かしたテトラブチルアンモニウムアイオダイド(34.2mg,10mol%)と、ベンジルアルコール(21)(100μl,0.93mmol)を加え、30分間撹拌した後、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンジルブロミド(6)(388mg,1.11mmol)を加えて、13時間撹拌した。その後、メタノールを加え30分間撹拌したのち、氷/ジエチルエーテル中にゆっくりと加えた。反応混合物に、1N希塩酸を加えて中和し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。水層をジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、分取用薄層クロマトグラフィー(PLC)(展開溶媒:ノルマルヘキサン/酢酸エチル=20/1)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、本発明を適用するアリルシラン化合物(22)が得られた(収量:151.8mg,収率:42%)。
【化17】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.29 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.16 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.07-7.12 (m, 5H), 5.73-5.80 (m, 3H), 4.84-4.89 (m, 6H), 4.67 (s, 2H), 4.50 (s, 2H), 2.56-2.63 (m, 2H), 1.60-1.68 (m, 2H), 1.58 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 0.62-0.66 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(22)の化学構造を支持する。
【0091】
(12.2) このような化学式(22)のアリルシラン化合物は、ガラスに付して防曇材にして、または、シリカゲルや樹脂粉末等のクロマトグラフィー担体用基材に付してカラムクロマトグラフィー担体にして、機能材料として、用いられる。
【0092】
(実施例13)
(13.1) 窒素雰囲気下で、NaH(40.75mg,1.00mmol)を3回ヘキサンで洗浄し、そこにTHFの2mlに溶かしたテトラブチルアンモニウムアイオダイド(30.7mg,10mol%)と、イソプロパノール(23)(64.0μl,0.83mmol)を加え、30分間撹拌した後、4−{3−(トリアリルシリル)プロピル}ベンジルブロミド(6)(388mg,1.11mmol)を加えて、13時間撹拌した。その後、メタノールを加え、30分間撹拌したのち、氷/ジエチルエーテル中にゆっくりと加えた。反応混合物に、1N希塩酸を加えて中和し、飽和炭酸水素ナトリウムを加えた。水層を、ジエチルエーテルで抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、PLC(展開溶媒:ノルマルヘキサン/酢酸エチル=20/1)により、分離させて精製したところ、下記化学反応式に示すように、本発明を適用するアリルシラン化合物(24)が得られた(収量:51mg,収率:18%)。
【化18】
これの
1H NMRによる理化学分析を行った結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl
3) δ = 7.29 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.16 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.73-5.80 (m, 3H), 4.84-4.89 (m, 6H), 4.48 (s, 2H), 3.65-3.70 (m, 1H), 2.57-2.63 (m, 2H), 1.60-1.68 (m, 2H), 1.57 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 1.21 (d, J = 6.4 Hz, 6H), 0.61-0.67 (m, 2H)
この理化学分析結果は、化学式(24)の化学構造を支持する。
【0093】
(13.2) このような化学式(24)のアリルシラン化合物は、ガラスに付して防曇材にして、または、シリカゲルや樹脂粉末等のクロマトグラフィー担体用基材に付してカラムクロマトグラフィー担体にして、機能材料として、用いられる。