(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高分子反射防止構造化表面と、この反射防止構造化表面の上のシリカナノ粒子の多孔質ネットワークを含む酸焼結体コーティングと、を有する透明高分子基材を含む物品であって、前記透明高分子基材の基材表面が前記高分子反射防止構造化表面であり、前記シリカナノ粒子が隣接するシリカナノ粒子に結合しており、前記透明高分子基材が、前記構造化表面が設けられている面とは反対の支持面に結合された水分バリア層と、を更に含む、物品。
前記反射防止構造化表面が頂部と谷部と、頂部から谷部までの平均高さと、を有し、ここで、前記酸焼結体コーティングが平均厚さを有し、前記酸焼結体コーティングの平均厚さが前記頂部から谷部までの平均高さの最大で半分である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
透明基材の反射防止構造化表面上のシリカナノ粒子の多孔質ネットワーク(典型的には三次元ネットワーク)の実施形態は、例えば、
シリカナノ粒子を含むコーティング組成物を透明基材の反射防止構造化表面上に適用してコーティングをもたらす工程であって、コーティング組成物が3未満のpHを有する工程と、
シリカナノ粒子を酸焼結させる工程と、により、提供することができる。
【0012】
透明基材の反射防止構造化表面上のシリカナノ粒子の多孔質ネットワーク(典型的には三次元ネットワーク)の実施形態は、例えば、
シリカナノ粒子を含むコーティング組成物を透明基材の反射防止構造化表面上に適用してコーティングをもたらす工程と、
コーティングを加熱する工程と、により、提供することができる。
【0013】
例示的な、反射防止構造化表面用の透明な基材としては、高分子物質(例えば、フィルム及びシート)及びガラスが挙げられる。典型的な高分子材料としては、アクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、環式オレフィンコポリマー、シリコーン及びフルオロポリマーが挙げられる。高分子フィルムとしては、多層光学フィルムが挙げられる。典型的な多層光学フィルムは、合計で少なくとも100、典型的には100〜2000の範囲、又はそれよりも多くの層を含む。
【0014】
高分子物質の更なる例としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、環式オレフィンコポリマー(COC)、フルオロポリマー(例えば、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、THV)、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、ポリアクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ホモエポキシポリマー、ポリジアミンによるエポキシ付加ポリマー、ポリジチオール、ポリエチレンコポリマー、フッ素化表面、セルロースエステル(例えば、アセテート及びブチラート)が挙げられる。一部の実施形態では、基材は可撓性であり、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、環式オレフィンコポリマー(COC)、ポリオレフィン(例えば、PP(ポリプロピレン)及びPE(ポリエチレン))及びPVC(ポリ塩化ビニル)から作製される。
【0015】
基材は、基材樹脂をフィルムに押し出し、所望により、押し出されたフィルムを一軸又は二軸配向するなどの、従来のフィルム作製技術を用いてフィルムに形成され得る。好適な市販のフィルムとしては、例えば、Rowland Industries(Wallingford,CT)から商品名「SOLATUF」で入手可能なポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、及び、3M Company(St.Paul,MN)から商品名「OPTICAL LIGHTING FILM 2301」で入手可能なポリカーボネート(PC)フィルムが挙げられる。
【0016】
他の有用な高分子基材としては、UV安定性ポリエチレンテレフタレート(PET)と、メチル(メタ)アクリレートとエチルアクリレート(CoPMMA)のコポリマーと、の交互層から、反射する光の波長の1/4の厚さで構成される多層光学フィルムなどのUV(すなわち、400nm未満の波長を有する紫外線)ミラーが挙げられる。このUVミラーは、可視光線を通過させながら、UV光を反射する範囲の厚さで交互ポリマー層を有する。これらのフィルムについてのその他の詳細は、参照により本明細書に組み込まれている、2009年11月18日に同時係属出願された米国特許出願第61/262,417号に見ることができる。
【0017】
他の有用な高分子基材としては当該技術分野において既知であるようなIRミラーが挙げられ、例えば、UV安定性ポリエチレンテレフタレート(PET)と、メチル(メタ)アクリレートとエチルアクリレート(CoPMMA)のコポリマーと、の交互層から反射する光の波長の1/4の厚さで構成される多層光学フィルムを含む、IRミラーが挙げられる。このIRミラーは、可視光線を通過させつつ、IR光は反射する厚さの範囲で、交互ポリマー層を有する。これらのフィルムについての更なる詳細は、米国特許第4,229,066号(Rancourtら)、同第5,233,465号(Wheatleyら)、同第5,449,413号(Beauchampら)、同第6,049,419号(Wheatleyら)、同第7,019,905号(Weber)、同第7,141,297号(Condo,et al.)及び同第7,215,473号(Fleming)を有する同時係属出願に見ることができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
一部の実施形態では、UV安定性基材は、多層光学フィルムであり、この多層光学フィルムは、複数の少なくとも第一光学層及び第二光学層、並びに、第三光学層を含み、第一光学層及び第二光学層は、主表面を有し、並びに、少なくとも300ナノメートル〜400ナノメートルの波長範囲の少なくとも30(一部の実施形態では、少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更には少なくとも100)ナノメートル波長範囲にわたる入射UV光の少なくとも50(一部の実施形態では、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、又は更には少なくとも98)パーセントを集合的に反射し、第三光学層は、第一主表面と、第一主表面とはほぼ反対側の第二主表面と、を有し、並びに、少なくとも300ナノメートル〜400ナノメートルの波長範囲の少なくとも30(一部の実施形態では、少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更には少なくとも100)ナノメートル波長範囲にわたる入射UV光の少なくとも50(一部の実施形態では、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、又は更には少なくとも95)パーセントを集合的に吸収し、ここで、第一光学層及び第二光学層の主表面は、第三光学層の第一主表面に近接しており(すなわち、1mm以内、一部の実施形態では、0.75mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.25mm以下、0.2mm以下、0.15mm以下、0.1mm以下、又は更には0.05mm以内、一部の実施形態では接触しており)、第二の複数の第一光学層及び第二光学層が存在し、第二の複数の第一光学層及び第二光学層は、主表面を有し、並びに、少なくとも300ナノメートル〜400ナノメートルの波長範囲の少なくとも30(一部の実施形態では、少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更には少なくとも100)ナノメートル波長範囲にわたる入射UV光の少なくとも50(一部の実施形態では、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、又は更には少なくとも98)パーセントを集合的に反射し、ここで、第二の複数の第一光学層及び第二光学層の主表面は、第三光学層の第二主表面に近接している(すなわち、1mm以内、一部の実施形態では、0.75mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.25mm以下、0.2mm以下、0.15mm以下、0.1mm以下、又は更には0.05mm以内、一部の実施形態では接触している)。任意の、第一及び/又は第二光学層の少なくとも一部(ある実施形態では第一及び/又は第二層の数で少なくとも50パーセント、ある実施形態では第一又は第二層のうち少なくとも1つの全部)はUV吸収剤を含む。
【0019】
例示的なUV安定基材は、UV安定性スキン層(例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)/UVA(紫外線吸収剤)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)/PVDF(ポリフッ化ビニリデン)/UVA(紫外線吸収剤))をUV安定性に劣るポリマー(例えば、ポリカルボネート及びポリエチレンテレフタレート)で共押出することにより、形成することができる。あるいは、UV安定性スキン層は、UV安定性に劣る層に積層する又は固着させることができる。コア層に対するUV安定性スキン層の厚さは、UV安定性、延性、強靭性、硬さ及び他の望ましい物理的特性などの特性を最適化するために変更され得る。
【0020】
一部の実施形態では、多層光学フィルムは、相対する第一及び第二主表面を有し、並びに、少なくとも300ナノメートル〜400ナノメートルの波長範囲において少なくとも30(一部の実施形態では、少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更に少なくとも100)ナノメートルの波長範囲にわたって合計で少なくとも50(一部の実施形態では、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、又は更に少なくとも98)パーセントの入射UV光を反射する、少なくとも複数の第一及び第二光学層と、主表面を有し、並びに、少なくとも300ナノメートル〜400ナノメートルの波長範囲において少なくとも30(一部の実施形態では、少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更に少なくとも100)ナノメートルの波長範囲にわたって少なくとも50(一部の実施形態では、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、又は更に少なくとも95)パーセントの入射UV光を吸収し、複数の少なくとも第一及び第二光学層の第一主表面に近接している(すなわち、1mm以内、一部の実施形態では、0.75mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.25mm以下、0.2mm以下、0.15mm以下、0.1mm以下、又は更に0.05mm以内、一部の実施形態では接触している)、第三光学層と、少なくとも300ナノメートル〜400ナノメートルの波長範囲において少なくとも30(一部の実施形態では、少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更に少なくとも100)ナノメートルの波長範囲にわたって少なくとも50(一部の実施形態では、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、又は更に少なくとも95)パーセントの入射UV光を吸収し、複数の少なくとも第一及び第二光学層の第二主表面に近接している(すなわち、1mm以内、一部の実施形態では、0.75mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.25mm以下、0.2mm以下、0.15mm以下、0.1mm以下、又は更に0.05mm以内、一部の実施形態では接触している)、第四光学層と、を含む。任意の、第一及び/又は第二光学層の少なくとも一部(ある実施形態では第一及び/又は第二層の数で少なくとも50パーセント、ある実施形態では第一又は第二層のうち少なくとも1つの全部)はUV吸収剤を含む。
【0021】
一部の実施形態では、多層光学フィルムの交互に重なる第一層と第二層は、典型的には、少なくとも0.04(一部の実施形態では、少なくとも0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275又は更には少なくとも0.3)の屈折率の差を有する一部の実施形態では、第一光学層は複屈折性であり、複屈折性ポリマーを含む。一部の実施形態では、第一光学層、第二光学層又は第三光学層(存在する場合)は、フルオロポリマー、シリコーンポリマー、ウレタンポリマー又はアクリレートポリマー(これらのブレンドを包含する)のうちの少なくとも1つであり、好ましくはUV安定性である。
【0022】
反射する光学層(例えば、第一及び第二光学層)を作製するための代表的な材料としては、ポリマー(例えば、コポリエステル及び変性コポリエステルを包含するポリエステル)が挙げられる。この文脈において、用語「ポリマー」は、例えば、共押出成形、又はエステル交換を含む反応によって、混和性混合物で形成され得るポリマー又はコポリマーと同様に、ホモポリマー及びコポリマーを含むと理解される。用語「ポリマー」及び「コポリマー」は、ランダム及びブロックコポリマーの両方を含む。本開示に従って構成される、いくつかの例示的多層光学フィルムにおいて使用するのに好適なポリエステルは、概して、ジカルボキシレートエステル及びグリコールサブユニットを含み、カルボキシレートモノマー分子をグリコールモノマー分子と反応させることによって生成することができる。各ジカルボキシレートエステルモノマー分子は、2つ以上のカルボン酸又はエステル官能基を有し、各グリコールモノマー分子は、2つ以上のヒドロキシ官能基を有する。ジカルボキシレートモノマー分子はすべて同じでもよいし、2つ以上の種類の異なる分子でもよい。グリコールモノマー分子についても同様である。また、用語「ポリエステル」には、グリコールモノマー分子とカルボン酸のエステルとの反応に由来するポリカーボネートが包含される。
【0023】
ポリエステル層のカルボキシレートサブユニットを形成する際に使用するのに好適なジカルボキシレートモノマー分子の例には、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びその異性体、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ−オクタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びその異性体、t−ブチルイソフタル酸、トリメリット酸、スルホン酸化イソフタル酸ナトリウム、4,4’−ビフェニルジカルボン酸及びその異性体、並びにメチル又はエチルエステルなどのこれらの酸の低級アルキルエステルが挙げられる。用語「低級アルキル」は、本文中ではC
1〜C
10の直鎖又は分岐アルキル基を表す。
【0024】
ポリエステル層のグリコールサブユニットを形成するのに用いられる適切なグリコールモノマー分子は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール及びその異性体、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリシクロデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びその異性体、ノルボルナンジオール、ビシクロ−オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−ベンゼンジメタノール及びその異性体、ビスフェノールA、1,8−ジヒドロキシビフェニル及びその異性体、及び1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを含む。
【0025】
反射層に有用な別の例示的な複屈折ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり、これは例えば、テレフタルジカルボン酸とエチレングリコールの反応により作製することができる。偏光面が伸長方向に対して平行である場合、550nm波長の偏光入射光についてのその屈折率は、約1.57から最高で約1.69に増加する。分子配向の増加によって、PETの複屈折は増加する。分子配向は、材料をより高い伸縮率まで伸縮させ、他の伸縮条件を保持することで増加する可能性がある。PETのコポリマー(CoPET)、例えば参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,744,561号(Condoら)及び米国特許第6,449,093号(Hebrinkら)で記述されているものなどは、その比較的低温(典型的には250℃未満)の加工性能によって、低熱安定性の第二ポリマーと共押出の適合性が良好であるので、特に有用である。複屈折ポリマーとして好適な他の半結晶性ポリエステルとしては、例えば、参照により本明細書に開示が組み込まれる米国特許第6,449,093(B2)号(Hebrinkら)又は米国特許出願公開第20060084780号(Hebrinkら)に記載されているものなどの、ポリブチレン−テレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びそれらのコポリマーが挙げられる。もう1つの有用な複屈折性ポリマーはシンジオタクチックポリスチレン(sPS)である。
【0026】
更に、例えば多層光学フィルムの第二(層)ポリマーは、第一層のものと互換性のあるガラス転移温度を有し、複屈折ポリマーの等方角性屈折率に類似する屈折率を有する、多様なポリマーから形成することができる。光学フィルムにおいて、特に、第二ポリマーにおいて使用するのに好適な他のポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、及びメタクリレートなどのモノマーから形成される、ビニルポリマー及びコポリマーが挙げられる。このようなポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のようなポリメタクリレート、及びアイソタクチック又はシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。他のポリマーとしては、ポリスルフォン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミック酸、及びポリイミドなどの縮合ポリマーが挙げられる。加えて、第2ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、フルオロポリマー、及びポリジメチルシロキサンのホモポリマー及びコポリマー、並びにそれらの混合物から形成することができる。
【0027】
存在する場合には第三(UV吸収性)光学層、及び存在する場合には第四(UV吸収性)の層は、ポリマー及びUV吸収剤を含み、好ましくはUV保護層としての役割をする。典型的には、このポリマーは熱可塑性ポリマーである。好適なポリマーの例には、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、フルオロポリマー、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)、シリコーンポリマー(例えば、熱可塑性シリコーンポリマー)、スチレンポリマー、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー(例えば、Topas Advanced Polymers(Florence,KY)から「TOPAS COC」として入手可能なエチレンとノルボルネンのコポリマー)、シリコーンコポリマー、フルオロポリマー、及びこれらの組み合わせ(例えば、ポリメチルメタクリレートとポリフッ化ビニリデンのブレンド)が挙げられる。
【0028】
特に第二層に使用するための光学層用の他の代表的なポリマーには、商品名「CP71」及び「CP80」としてIneos Acrylics,Inc.(Wilmington,DE)から入手可能なものなどのポリメチルメタクリレート(PMMA)のホモポリマー、並びにPMMAよりも低いガラス転移温度を有するポリエチルメタクリレート(PEMA)が挙げられる。追加の有用なポリマーとしては、75重量%のメチルメタクリレート(MMA)モノマー及び25重量%のエチルアクリレート(EA)モノマーから作られるCoPMMA(Ineos Acrylics,Inc.から商品名PERSPEX CP63で、又は、Arkema(Philadelphia,PA)から商品名「ATOGLAS 510」で、入手可能)、MMAコモノマー単位とn−ブチルメタクリレート(nBMA)コモノマー単位で形成されているCoPMMA、又は、PMMAとポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)のブレンドなどのPMMA(CoPMMA)のコポリマーが挙げられる。
【0029】
特に第二光学層で使用するための光学層用の追加の好適なポリマーには、ポリオレフィンコポリマー、例えば商品名「ENGAGE 8200」でDow Elastomers(Midland,MI)から入手可能なポリ(エチレン−コ−オクテン)(PE−PO)、商品名「Z9470」でAtofina Petrochemicals,Inc.(Houston,TX)から入手可能なポリ(プロピレン−コ−エチレン)(PPPE)、並びにアタクチックポリプロピレン(aPP)とアイソタクチックポリプロピレン(iPP)のコポリマーが挙げられる。例えば、第二ポリマー層中の多層光学フィルムは、例えば、商品名「BYNEL 4105」でE.I.duPont de Nemours&Co.,Inc.(Wilmington,DE)から入手可能なものなどの線状低密度ポリエチレン−グラフト−無水マレイン酸(LLDPE−g−MA)などの官能化ポリオレフィンを含むこともできる。
【0030】
少なくとも1つの複屈折ポリマーを有する交互層における第三及び/又は第二層に好ましいポリマー組成物には、PMMA、CoPMMA、ポリ(ジメチルシロキサンオキサミド)系セグメント化コポリマー(SPOX)、PVDFなどのホモポリマー及びテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びビニリデンフルオリド(THV)から誘導されるものなどのコポリマーを含むフルオロポリマー、PVDF/PMMAのブレンド、アクリレートコポリマー、スチレン、スチレンコポリマー、シリコーンコポリマー、ポリカーボネート、ポリカーボネートコポリマー、ポリカーボネートブレンド、ポリカーボネートとスチレン無水マレイン酸コポリマーのブレンド、並びに環状オレフィンコポリマーが挙げられる。
【0031】
UV光を反射する光学層(例えば、第一及び第二光学層)の作製に好ましい材料の組み合わせには、PMMA(例えば、第一層)/THV(例えば、第二層)、PC(ポリカーボネート)(例えば、第一層)/PMMA(例えば、第二層)、及びPET(例えば、第一層)/CoPMMA(例えば、第二層)、及びPET(例えば、第一層)/PVDF/PMMAブレンド(例えば、第二層)が挙げられる。
【0032】
UV光を吸収する光学層(例えば、第三光学層)を作製するための代表的な材料には、フルオロポリマー、ウレタンポリマー、アクリレートポリマー、PC、PMMA、CoPMMA、又はPMMAとPVDFのブレンド、及びUV吸収剤が挙げられる。
【0033】
本明細書で記載の多層光学フィルムは、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,783,349号(Neavinら)で記述されているものなどの一般的な加工方法を用いて作製可能である。
【0034】
制御されたスペクトルを持つ多層光学フィルムを得る望ましい方法は、例えば、米国特許第6,783,349号(Neavinら)で記述されているような共押し出しされたポリマー層の層厚値のアキシャルロッドヒーター制御;例えば原子間力顕微鏡(AFM)、透過電子顕微鏡、又は走査電子顕微鏡などの層厚測定ツールからの時宜を得た層厚プロフィールのフィードバック;所望の層厚プロフィールを得るための光学モデルの作成;及び測定される層プロフィールと所望の層プロフィールとの間の差に基づくアキシャルロッドヒーターの繰り返しの調整を実施することを含む。
【0035】
層厚プロファイルを制御する基本処理は、ターゲット層厚プロファイルと測定した層のプロファイルの差に基づく軸棒ゾーン出力設定の調整を含む。所定のフィードブロック領域における層厚値の調整に必要とされる軸棒出力の増加は、最初に、そのヒーター領域において生成される層に関し得られる厚さ変化の1ナノメートル当たりの入熱のワット数に関して、較正することができる。例えば、スペクトルの精密な制御は、275の層に対して24の軸ロッド域を使用して可能である。較正後に、所定のターゲットプロファイルと測定プロファイルの必要な電力調整を一度に計算することができる。この手順は、2つのプロファイルが収束するまで繰り返される。
【0036】
特定の波長範囲にわたって少なくとも50パーセントの入射UV光を反射する、本明細書で記載の多層光学フィルムの層厚プロフィール(層厚値)を、第1(最も薄い)の光学層が300nmの光に対して約1/4波長の光学厚さ(屈折率×物理的厚さ)を有し、400nmの光に対して約1/4波長の光学厚さとなるように調整した最も厚い層に進むように、ほぼ線形のプロフィールとなるように調整することができる。
【0037】
本明細書で記載の多層光学フィルムの一部の実施形態では、20ナノメートル未満(ある実施形態では、10ナノメートル未満)にわたって10〜90パーセント透過率の範囲でUV透過帯を有する。
【0038】
本明細書で記載の多層光学フィルムの代表的な厚さは、25マイクロメートル〜250マイクロメートルの範囲の厚さを有する。吸収する光学層(例えば、第三光学層)の代表的な厚さは、合計で10マイクロメートル〜200マイクロメートルの範囲である。
【0039】
他の有用な高分子基材としては、UV吸収剤、酸化防止剤及びヒンダードアミン光安定剤の添加並びに/又はポリマーの固有の耐候性のいずれかにより、少なくとも10年間にわたって太陽光及びその要素に屋外曝露している間にもその光学及び機械的特性を一般に維持するポリマーから作製されるフィルム又は部分のようなUV安定性基材が挙げられる(例えば、フルオロポリマー)。
【0040】
太陽光、特に280〜400nmの紫外線は、プラスチックの劣化を引き起こす可能性があり、その結果、変色し及び光学的及び機械的性質の低下の原因となる。光酸化劣化の抑制は、長期耐久性が必須の屋外用途にとって重要である。ポリエチレンテレフタレートによるUV光の吸収は、例えば、約360nmで開始し、320nm以下で著しく増加し、300nm以下で極めて顕著である。ポリエチレンナフタレートは、310〜370nmの範囲でUV光を強力に吸収し、約410nmまで拡大する吸収端を有し352nmと337nmで生じる吸収極大点を有する。酸素の存在下で鎖は開裂し、主な光酸化生成物として、一酸化炭素、二酸化炭素、及びカルボン酸が生じる。また、エステル基の直接光分解に加えて、酸化反応を考慮しなければならない。酸化反応は、同様に過酸化物ラジカルにより二酸化炭素を生成する。
【0041】
したがって、一部の実施形態では、UV光を反射すること、UV光を吸収すること、UV光を散乱させること又はこれらの組み合わせにより、基材(例えば、多層光学フィルム)を保護するために、UV吸収層を含むことが望ましいことであり得る。一般に、UV吸収層は、UV照射の反射、散乱、又は吸収のいずれかを行う一方で、長期間のUV照射に耐えることができる、任意のポリマー組成物を含み得る。そのようなポリマーの例として、PMMA、シリコーン熱可塑性樹脂、フルオロポリマー、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの混合物が挙げられる。代表的なUV吸収層は、PMMA/PVDF混合/UVAブレンドを含む。
【0042】
UV吸収性とせしめるためにさまざまな任意の添加物を光学層に組み込むことができる。このような添加物の例には紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、又はこれらの酸化防止剤の少なくとも1つが挙げられる。
【0043】
一部の実施形態では、特に望ましいUV安定剤は、少なくとも70%(ある実施形態では、少なくとも80%、特に好ましくは90%超)の180nm〜400nmの波長領域のUV光を吸収する、赤方偏移UV吸収剤(RUVA)である。通常、RUVAは、ポリマー中で高溶解性であり、高光吸収性であり、光持続性であり、保護層の形成のための押出工程の200℃〜300℃の温度範囲で熱安定性であるならば望ましいことである。RUVAはまた、それらが、紫外線硬化、γ線硬化、電子ビーム硬化、又は熱硬化過程によって、保護コーティング層を形成するように、モノマーとコポリマー化可能であり得る場合にも極めて好適であり得る。
【0044】
RUVAは、通常、長波UV領域側において増強されたスペクトル範囲を有し、ポリエステルの黄変を引き起こし得る長波長UV光の遮蔽を可能にする。典型的なUV保護層は、13マイクロメートル〜380マイクロメートル(0.5mil〜15mil)の範囲の厚さを有し、RUVA添加量レベルは2〜10重量%である。他の好ましいベンゾトリアゾールには、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−アルファ−クミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾチアゾール、5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−アルファ−クミル−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2Hベンゾトリアゾールが挙げられる。更に好ましいRUVAには、2(−4,6ジフェニル−1−3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキルオキシ−フェノールが挙げられる。他の例示的なUV吸収剤としては、Ciba Specialty Chemicals Corporation(Tarrytown,NY)から商品名「TINUVIN 1577」、「TINUVIN 900」及び「TINUVIN 777」で入手可能なものが挙げられる。好ましいUV吸収剤としては、Sukanoから商品名「PMMA(TA11−10 MB01)」、「PC(TA28−09 MB02)」及び「PET(TA07−07 MB01)」でマスターバッチ濃縮物として入手可能なビフェニルトリアジンが挙げられる。加えて、UV吸収剤は、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)及び酸化防止剤と組み合わせて、使用することができる。例示的なHALSとしては、Ciba Specialty Chemicals Corporationから商品名「CHIMASSORB 944」及び「TINUVIN 123」で入手可能なものが挙げられる。例示的な酸化防止剤としては、これもまたCiba Specialty Chemicals Corporationから入手可能な、商品名「IRGANOX 1010」及び「ULTRANOX 626」で入手されるものが挙げられる。
【0045】
一部の実施形態では、UVフィルター(保護)層は、約350〜約400nm(一部の実施形態では300nm〜400nm)の光波長を反射する多層光学フィルムである。これらの実施形態では、UV吸収層用のポリマーは、好ましくは300nm〜400nm範囲のUV光を吸収しない。このような実施形態に望ましい材料の例には、PMMA/THV、PET/SPOX、PMMA/SPOX、THVによる変性ポリオレフィンコポリマー(EVA)、TPU/THV、及びTPU/SPOXが挙げられる。1つの代表的な実施形態では、商品名「DYNEON THV 220 GRADE」及び「DYNEON THV 2030 GRADE」でDyneon LLC(Oakdale,MN)から入手可能なTHVが、300〜400nmを反射する多層UVミラーにPMMAと共に、又は350〜400nmを反射する多層UVミラーにPETと共に使用される。
【0046】
他の添加物がUV吸収層(例えば、UV保護層)に含まれ得る。小粒子の非色素性酸化亜鉛及び酸化チタンをUV吸収層においてブロック添加剤又は拡散添加剤として使用することもできる。例えば、ナノスケール粒子をポリマー又はコーティング基質中に分散させて、UV照射による劣化を最小限にすることができる。ナノスケール粒子は、可視光線に対して透過性であるが、有害なUV照射を拡散又は吸収するかのいずれかによって、熱可塑性樹脂が受ける損傷を低減する。米国特許第5,504,134号(Palmerら)は、直径約0.001マイクロメートル〜約0.2マイクロメートルの、より好ましくは直径約0.01〜約0.15マイクロメートルのサイズ範囲の金属酸化物粒子の使用による紫外線に起因するポリマー基材劣化の低減について述べている。米国特許第5,876,688号(Laundon)は、本発明での使用に充分適する塗料、コーティング、仕上げ材、プラスチック物品、及び化粧材などにUVブロック剤及び/又は散乱剤として組み入れられた場合に充分に透明であるような小粒子の微粉化酸化亜鉛を作製する方法を記載している。UV照射を減衰させることができる10〜100nmの範囲の粒径を有する酸化亜鉛及び酸化チタンなどのこれらの粉体は、例えばKobo Products,Inc.(South Plainfield,NJ)から入手可能である。難燃剤を添加剤としてUV保護層に組み込んでもよい。
【0047】
UV吸収剤、HALS、ナノスケール粒子、難燃剤、及び酸化防止剤をUV保護層に添加するのに加えて、UV吸収剤、HALS、ナノスケール粒子、難燃剤、及び酸化防止剤を多層光学層、並びに任意の耐性トップコート層に添加することができる。蛍光性分子及び蛍光増白剤もUV吸収層、多層光学層、任意のハードコート層、又はこれらの組み合わせに添加することができる。
【0048】
UV保護層の所望の厚みは、通常、ベールの法則によって計算されるような特定波長における光学密度目標に依存する。一部の実施形態では、UV保護層は、380nmにおいて3.5、3.8、又は4を超え、390nmにおいて1.7を超え、及び400nmにおいて0.5を超える光学密度を有する。当業者であれば、通常、意図される保護機能を提供するために、物品の長い耐用期間にわたって、光学密度を比較的一定に維持すべきであることを認識する。
【0049】
UV保護層、及びいずれかの任意の添加剤は、太陽光集光ミラーにおいて、UV保護、洗浄の容易さ、及び耐性などの所望の保護機能を達成するように選択され得る。当業者であれば、UV保護層の上記の目的を達成するための手段が複数存在することを認識する。例えば、特定のポリマー対して可溶性の高い添加剤を、組成物に添加することもできる。特に重要なことは、ポリマー中の添加剤の永続性である。添加剤は、劣化したり、又はポリマーの外に移行してはならない。加えて、所望の保護結果を達成するように、層の厚みは変更させてよい。例えば、UV保護層をより厚くすることで、UV吸収剤濃度をより低くしても同一のUV吸光度が得られるようになり、かつUV吸収剤の移行性が低くなることから、UV吸収剤の持続性が高くなる。物理的特徴における変化を検出する1つの機構は、開示が参照により本明細書に組み込まれるASTM G155−05a(2005年10月)に記載の耐候サイクル及び反射モードで操作されるD65光源の使用である。上記試験下で、UV保護層が物品に適用される場合、物品は、著しい亀裂、剥離、層間剥離又はかすみの発生前に、CIE L
*a
*b
*空間を使用して得られるb
*値が、5以下、4以下、3以下、又は2以下で増加する前に、340nmにおいて少なくとも18,700kJ/m
2の曝露に耐えなければならない。試験の1つの例示的バージョンでは、ASTM G155−05a(2005年10月)に従ってキセノンアークランプに3000時間にわたって曝露した物品は、分光光度計(Perkin−Elmer,Inc.(Waltham,MA)から商品名「LAMBDA 950」で入手可能)で測定すると、5単位未満でb
*が変化している。
【0050】
コーティング組成物がコーティングされる基材表面は、基材が作製される際に構造化表面を有してもよく、あるいは、基材の表面に添加され得る。一部の実施形態では、反射防止構造化表面は、マイクロ構造化表面である。構造化表面は、押出複製、エンボス加工及びキャスティング、必要であれば、それに続く硬化などの当該技術分野において既知の技術により、もたらすことができる。
【0051】
概して、押出複製手順は、ポリマー表面にネガ型構造を付与する成形型を利用する。この成形型は、さまざまな形状及び材料を有することができる。一般に、成形型の形状は、シート、ロール、ベルト又は表面構造化フィルムロールのいずれかである。成形型は、通常、金属又はポリマーの範疇のいずれかに分類される材料から構成されるが、潜在的にはセラミック又は他の好適な材料を含有させることもできる。金属成形型に関して、金属は、表面構造を形成するために、通常、ダイヤモンド機械加工、エンボス加工、刻み付、砂吹きなどにかけられる。構造化ポリマー表面は、標準的押出成形装置を用いてPMMAなどの熱可塑性樹脂が押し出され、ダイを通して、機械加工ロールとゴムロールを有するニップに送り込まれる押出成形複製により通常形成される。溶融ポリマーは、成形型表面と接触している間に急冷され、次に成形型ロールから剥離され、ロール上に巻き付けられる。
【0052】
構造化表面を作製するための別の手順は、UV硬化性アクリレート官能性樹脂を成形型に対してコーティングし、その後、成形型から架橋構造化フィルムを取り外すというものである。
【0053】
構造化表面を作製するための別の手順は、熱硬化性ウレタン官能性樹脂を成形型に対してコーティングし、その後、成形型から架橋構造化フィルムを取り外すというものである。このポリウレタン層は、ポリオール、ポリイソシアネート、及び触媒を含む反応混合物の縮合重合から調製可能である。この反応混合物は、縮合重合性でない追加の成分を含有することもあり、一般に少なくとも1つのUV安定剤を含有する。下記のように、縮合重合反応、又は硬化は、一般に、硬化表面中に構造化表面を生成させるために金型又は器具中で行われる。
【0054】
本開示で説明するポリウレタンポリマーはポリオールとポリイソシアネートとの縮合反応によって形成されるので、それらは少なくともポリウレタン結合を含有する。本明細書で形成されるポリウレタンポリマーは、ポリウレタン結合のみを含有してもよく、又はポリウレア結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、シリコーン結合、アクリル結合などの他の任意の結合を含有してもよい。下記のように、これらの他の任意の結合は、ポリウレタンポリマーの形成に使用されるポリオール又はポリイソシアネート材料中に存在するためにポリウレタンポリマー中に出現する可能性がある。典型的には、構造化ポリウレタン層は、所望の光学的な効果を作り出すのに十分な寸法を有する。このポリウレタン層は、概ね10ミリメートル以下の厚さであり、通常ずっと薄い。経済的な面から、構造化ポリウレタン層を使用することが一般に望ましい。構造中に含有されるポリウレタン材料の量を最大とすること、及び構造化ポリウレタン層の基部を形成するが、構造化されないポリウレタン材料の量を最少とすることが望ましいことがある。ある場合には、この基部部分は、隆起して山となっている大地に類似しているので、「ランド」と呼ばれることもある。
【0055】
多様なポリオールが使用され得る。用語ポリオールは、少なくとも2個の末端ヒドロキシル基を概ね含み、及びB基が脂肪族基、芳香族基、又は芳香族及び脂肪族基の組み合わせを含有する基であり、追加の末端ヒドロキシル基を含む、さまざまな結合又は官能基を含有し得る、構造HO−B−OHにより概ね記述され得る、ヒドロキシル官能性材料を含む。典型的には、HO−B−OHは、ジオール又はポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、シリコーン、アクリル、又はポリウレアプレポリマーなどのヒドロキシルキャップされたプレポリマーである。
【0056】
有用なポリオールの例にはポリエステルポリオール(例えば、ラクトンポリオール)、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール)、ポリアルキレンポリオール、これらの混合物、及びこれらのコポリマーが挙げられる。ポリエステルポリオールがとりわけ有用である。有用なポリエステルポリオールは直鎖及びそうでないポリエステルポリオールであり、例えば、ポリエチレンアジパート、コハク酸ポリブチレン、セバシン酸ポリヘキサメチレン、ポリヘキサメチレンドデカンジオアート、ポリネオペンチルアジパート、ポリプロピレンアジパート、ポリシクロヘキサンジメチルアジパート、及びポリε−カプロラクトンから作られるものが挙げられる。脂肪族ポリエステルポリオールは、例えば、King Industries(Norwalk,CT)から商品名「K−FLEX」(例えば、「K−FLEX 188」及び「K−FLEX A308」)で入手可能である。
【0057】
HO−B−OHがヒドロキシルキャップトプレポリマーである場合、種々さまざまな前駆体分子を用いて、所望のHO−B−OHプレポリマーを生成することができる。例えば、ポリオールを、理論量未満のジイソシアネートと反応させることによって、ヒドロキシルキャップトポリウレタンプレポリマーを生成することができる。好適なジイソシアネートの例には、芳香族ジイソシアネート(例えば、2,6−トルエンジイソシアネート、2,5−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o−クロロフェニルジイソシアネート)、メチレンジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ポリカルボジイミド−変性メチレンジフェニレンジイソシアネート、(4,4’−ジイソシアナト−3,3’,5,5’−テトラエチル)ビフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシビフェニル、5−クロロ−2,4−トルエンジイソシアネート、1−クロロメチル−2,4−ジイソシアナトベンゼン、芳香族−脂肪族ジイソシアネート(例えば、m−キシレンジイソシアネート及びテトラメチル−m−キシレンジイソシアネート))、脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,12−ジイソシアナトドデカン、2−メチル−1,5ジイソシアナトペンタン)、並びに、脂環式ジイソシアネート(例えば、メチレン−ジシクロヘキシレン−4,4’−ジイソシアネート及び3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート))が挙げられる。耐候性の面から、一般に脂肪族及び脂環式ジイソシアネートが使用される。
【0058】
HO−B−OHプレポリマーの合成の例は、以下の反応スキーム1(式中、(CO)は、カルボニル基C=Oを表す)に示される。
【0059】
2HO−R
1−OH+OCN−R
2−NCO→HO−R
1−O−[(CO)N−R
2−N(CO)O−R
1−O−]
nH
反応スキーム1
式中、nは1以上であり、ポリオール対ジイソシアネートの比によって決まり、例えば、その比が2:1である場合、nは1である。ポリオールとジカルボン酸又は二酸無水物との間の類似反応によって、エステル結合基を有するHO−B−OHプレポリマーを提供することができる。
【0060】
1分子当たり2個以上のヒドロキシル基を持つポリオールは、二官能性以上の官能性イソシアネートとの反応時に架橋樹脂を生じる。架橋は形成されたポリマーのクリープを防止し、所望の構造の維持を助ける。典型的には、このポリオールは、脂肪族ポリエステルポリオール(例えば、King Industries(Norwalk,CT)から商品名「K−FLEX」(例えば、「K−FLEX 188」及び「K−FLEX A308」)で入手可能)である。
【0061】
多様なポリイソシアネートが使用され得る。用語ポリイソシアネートは、Z基が脂肪族基、芳香族基、又は芳香族及び脂肪族基の組み合わせを含有する基であり得る、構造OCN−Z−NCOにより概ね記述され得るジイソシアネートなど、少なくとも2個の末端イソシアネート基を含むイソシアネート官能性材料を含む。好適なジイソシアネートの例には、芳香族ジイソシアネート(例えば、2,6−トルエンジイソシアネート、2,5−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o−クロロフェニルジイソシアネート)、メチレンジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ポリカルボジイミド−変性メチレンジフェニレンジイソシアネート、(4,4’−ジイソシアナト−3,3’,5,5’−テトラエチル)ビフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシビフェニル、5−クロロ−2,4−トルエンジイソシアネート及び1−クロロメチル−2,4−ジイソシアナトベンゼン)、芳香族−脂肪族ジイソシアネート(例えば、m−キシレンジイソシアネート及びテトラメチル−m−キシレンジイソシアネート)、脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,12−ジイソシアナトドデカン及び2−メチル−1,5ジイソシアナトペンタン)、並びに、脂環式ジイソシアネート(例えば、メチレン−ジシクロヘキシレン−4,4’−ジイソシアネート及び3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート))が挙げられる。耐候性の面から、一般に脂肪族及び脂環式ジイソシアネートが使用される。所望の構造化表面を維持するにあたり特定の架橋度が有用である。1つのアプローチは、2.0以上の官能度のポリイソシアネートを使用することである。1つの例示的な脂肪族ポリイソシアネートは、Bayer(Pittsburgh,PA)から商品名「DESMODUR N3300A」で入手可能である。
【0062】
構造化表面を作製するための別の手順は、高分子フィルムを加熱し、次にこれを所望の構造化表面を有するエンボス加工ロール又はベルトと接触させ、これにより表面パターンのネガ像を高分子フィルムに付与するものである。
【0063】
本明細書において開示される反射防止構造化フィルムを使用することで、反射されてしまって光エネルギー吸収デバイスの光吸収素子に到達しない光の量が、減少することが実証されている。例えば、このような反射防止構造化フィルムにより、従来の光起電ソーラーモジュールにおいて約3%〜約7%の範囲で平均出力を増加させることが可能となる。これらの反射防止構造化フィルムは、反射防止構造化フィルムの露出した表面の汚れ及び埃粒子の付着に対する耐性(すなわち、耐汚れ性)、並びに/又は耐摩耗性を向上させることにより、光エネルギー吸収デバイスの寿命の間に、このような反射防止構造化フィルムの光に対する透明性を維持する助けとなり得るものである。このように、このフィルムは、光エネルギー吸収デバイスへの光の透過を促進するのを助けることができる。詳細には、構造化面の構造化表面における高分子材料をより高度に架橋することにより、構造化面は、高度の架橋を行わない同じ高分子材料と比較して、更に他の高分子材料(例えば、ポリウレタン)で形成された同じ構造化面と比較して、向上した機械的耐久性(例えば、落下してくる砂に対する耐性)を示し得る。
【0064】
光エネルギー吸収装置、及び特に反射防止構造化フィルムの構造化面は、外部環境からのさまざまな有害な条件に曝され得る。例えば構造化面は、構造化面の構造化表面を損傷させ得る雨、風、雹、雪、氷、吹きつける砂などの環境的要素に曝され得る。更に、太陽からの熱及びUVに対する曝露などの他の環境条件に対する長期の曝露も構造化面の劣化を引き起こし得る。例えば多くのポリマー有機材料は、UV放射に繰り返し曝露されると分解しやすい。例えば太陽エネルギー変換装置などの光エネルギー吸収装置の耐候性は、材料が劣化したり又は性能が損なわれたりすることなく何年にもわたって機能しうることが望ましいため、一般的に年単位で測定される。材料は、光透過率又は機械的一体性が大幅に損なわれることなく20年程度の屋外曝露に耐え得ることが望ましい。一般的なポリマー有機材料は、20年といった長期に及んで光透過率又は機械的一体性が損なわれることなく屋外曝露に耐え得るものではない。少なくとも一部の実施形態において、構造化面は、少なくとも約5年〜少なくとも約20年の範囲、場合によっては更に長期(例えば、少なくとも約25年)の耐汚れ性及び/又は機械的耐久性を示すことが予想される。更に、構造化面はUV安定性高分子材料で形成されることから、少なくとも約15年、約20年、又は更には約25年の長期の紫外線安定性を示し得る。
【0065】
一部の実施形態では、構造化表面は、高分子材料(架橋されたポリマー材料を包含する)からなる。透明フィルムについては、一部の実施形態では、構造化表面は、フィルムの残部よりも高い架橋ポリマー密度を有する。例えば、透明フィルムについては、一部の実施形態では、構造化表面は、反射防止構造化フィルムの残部よりも高いポリマー架橋密度を有する。透明フィルムについては、例えば、一部の実施形態では、構造のそれぞれのコア部分は構造化表面よりも低いポリマー架橋密度を有する。透明フィルムについては、例えば、一部の実施形態では、フィルムは、構造がそこから伸びるベース部を更に含み、構造のそれぞれのポリマーエラストマー材料のすべては、構造化表面とほぼ同じポリマー架橋密度を有し、ベース部は構造のそれぞれよりも低いポリマー架橋密度を有する。
【0066】
透明反射防止構造化フィルムは、例えば、上記に述べたような透明構造化フィルム基材を与え、次いで、構造化表面が、構造化フィルム基材の残りの部分よりも高い高分子架橋密度を有するように構造化表面を処理することによって作製することができる。構造化フィルム基材の構造化表面は、例えば、架橋高分子材料の更なる架橋を生じる処理(例えば、電子線照射処理)に曝露することによって処理することができる。既に架橋されている高分子材料を更に架橋させるために用いられる処理(例えば、従来の電子線照射技術)の設定条件(例えば、強度、電圧、及び/又は時間の長さ)によっては、より高い高分子架橋密度を呈さない構造化フィルム基材の部分が残る場合がある。低電圧(150kV未満)の電子線照射によって、架橋ポリマーの表面付近に高い架橋密度が生じる。例えば、処理の設定条件は、反射防止構造の高分子架橋密度が構造化表面と概ね同じ高さとなるように選択することもできる(すなわち、構造化表面のものと概ね同じ高分子架橋密度を有するように反射防止構造を処理する)。あるいは、処理の設定条件は、それぞれの反射防止構造のコア部分が、構造化表面と概ね同じ高さの高分子架橋密度を有さないように選択することもできる。
【0067】
一部の実施形態では、構造化フィルム基材は、フィルム基材の厚さ全体にわたって架橋密度が変化する。例えば、架橋密度が構造化フィルム基材の構造化表面において最も高く、構造化表面の反対側の表面において最も低くなるように、構造化フィルム基材の厚さに沿った架橋密度の勾配を形成してもよい。約70kV〜約150kVの範囲などの比較的低電圧の電子線照射を用いて、構造化フィルム基材の表面の架橋密度を高めることが可能である。
【0068】
一部の実施形態では、表面構造はプリズムを含む。一部の実施形態では、プリズムはそれぞれ、15°〜75°の範囲のプリズム尖端角度と、10マイクロメートル〜250マイクロメートルの範囲のピッチを備える。一部の実施形態では、プリズムはそれぞれ、15°〜75°の範囲の平均傾斜角度と、10マイクロメートル〜250マイクロメートルの範囲のピッチを備える。一部の実施形態では、プリズムは、約10マイクロメートル〜250マイクロメートルの、溝から頂部の高さを有する。プリズムは、上記マイクロ複製技術に記載のものなどの当該技術分野において既知の技術により供給することができる。
【0069】
一部の実施形態では、透明なフィルムは機械方向を有し、表面構造はフィルムの機械方向に平行な直線の溝を有するプリズムを含む。このようなフィルムは、当該技術分野において既知の技術により(例えば、平行及び直線の溝がその周りにもたらされる成形型を利用することにより)、作製することができる。
【0070】
更に、反射防止構造は、プリズム状、角錐状、円錐状、半球状、放物線状、円筒状、及び柱状構造の少なくとも1つ又は組み合わせで構成され得る。プリズムを含む反射防止構造は、90°未満、約60°以下、約30°以下、又は約10°〜最大で約90°の範囲のプリズム尖端角度を有し得る。このような反射防止プリズム構造はまた、約2マイクロメートル〜約2cmの溝から溝の又は頂部から頂部のピッチを呈し得る。プリズムを含む反射防止構造はまた、約15°〜約75°の範囲のプリズム尖端角度を有し得る。プリズムを含む反射防止構造はまた、約10マイクロメートル〜約250マイクロメートルの範囲のピッチを有し得る。
【0071】
一部の実施形態では、表面構造は頂部と谷部と、頂部から谷部までの平均高さと、を有し、ここで、焼結コーティングは平均厚さを有し、焼結コーティングの平均厚さは頂部から谷部までの平均高さの最大で半分(一部の実施形態では25%未満)である。
【0072】
一部の実施形態では、シリカナノ粒子の多孔質ネットワークを含む焼結コーティングは、シリカナノ粒子を含むコーティング組成物を、透明基材の反射防止構造化表面上に適用してコーティングをもたらし、その後、コーティングを加熱して物品を製造することにより、生成することができる。
【0073】
一部の実施形態では、シリカナノ粒子の多孔質ネットワークを含む焼結コーティングは、シリカナノ粒子を含むコーティング組成物(ここでコーティング組成物は3未満のpHを有する)を、透明基材の反射防止構造化表面上に適用してコーティングをもたらし、その後、シリカナノ粒子を酸焼結させて物品を製造することにより、生成することができる。
【0074】
一部の実施形態では、シリカナノ粒子の多孔質ネットワークを含む焼結コーティングは、コア−シェルシリカナノ粒子を含むコーティング組成物を、透明な基材の反射防止構造化表面上に適用してコーティングをもたらし、その後、コーティングを加熱して物品を製造することにより、生成することができる(ここで各コア−シェル粒子はポリマーコア上に配置された無孔の球状シリカ粒子のシェルにより包囲されたポリマーコアを含み、無孔の球状シリカ粒子は60ナノメートル以下(一部の実施形態では50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、30ナノメートル以下、20ナノメートル以下又は更には10ナノメートル以下)の体積平均粒子直径を有する)。
【0075】
代表的なコーティング組成物としては、シリカナノ粒子の水性分散液及び有機溶媒分散液が挙げられる。一部の実施形態では、ナノ粒子含有コーティング組成物は、最大40ナノメートル(好ましくは20ナノメートル未満)の平均粒子直径を有するシリカナノ粒子と、3.5以下(好ましくは2.5未満、最も好ましくは1未満)のpK
aを有する酸と、を含む、5未満のpHを有する水性分散液を含む。好ましいナノ粒子含有コーティングは、最大で40ナノメートルの平均粒子直径を有するシリカナノ粒子の凝集体を含み、この凝集体はシリカナノ粒子の多孔質ネットワーク(典型的には三次元多孔質ネットワーク)を含み、このシリカナノ粒子は隣接するシリカナノ粒子に結合している。
【0076】
これらの酸性化水性シリカナノ粒子コーティング組成物は、有機溶媒又は界面活性剤のいずれも用いずに、疎水性有機及び無機基材上に直接コーティングすることができる。疎水性表面(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリカーボネート(PC))上でのこれらの無機ナノ粒子水性分散物の湿潤特性は、分散物のpHと酸のpK
aとの関数である。コーティング組成物は、HClでpH=2〜3に、更には一部の実施形態ではpH=4又は5に酸性化されると、疎水性有機基材上にコーティング可能である。対照的に、中性又は塩基性pHでは、コーティング組成物は有機基材上でビーズ状になる。
【0077】
これらのコーティング組成物で用いられるシリカナノ粒子は典型的には、水性有機溶媒中又は水/有機溶媒混合液中のサブミクロンサイズのシリカナノ粒子の分散液である。一般に、シリカナノ粒子は、最大で40ナノメートル、好ましくは20ナノメートル未満、より好ましくは10ナノメートル未満の平均一次粒子直径を有する。平均粒径は、透過電子顕微鏡を用いて測定することができる。本開示に記載のナノシリカは、球状であってもよく又は非球状であってもよい。シリカナノ粒子は、表面改質されていないことが好ましい。
【0078】
水性媒質中の無機シリカゾルは、当該技術分野において周知であり、市販されている。水中又は水−アルコール溶液中のシリカゾルは、例えば、E.I.duPont de Nemours and Co.,Inc.(Wilmington,DE)から商品名「LUDOX」で、Nyacol Co.(Ashland,MA)から商品名「NYACOL」で、及びOndea Nalco Chemical Co.(Oak Brook,IL)から「NALCO」で入手可能である。有用なシリカゾルの1つとして、平均粒径が5nm、pH 10.5、及び固形分が15重量%のシリカゾルとして販売されるNALCO 2326がある。他の市販のシリカナノ粒子としては、NALCO Chemical Co.から市販の「NALCO 1115」及び「NALCO 1130」、Remet Corp.(Utica,NY)から市販の「REMASOL SP30」、並びに、E.I.Du Pont de Nemours Co.,Inc.から市販の「LUDOX SM」が挙げられる。
【0079】
一部の実施形態では、コーティング組成物は、5未満、4.5、4、3.5、3又は更には3未満、あるいは、1〜3の範囲のpHを有する。このような水性コーティング組成物は、例えば、少なくともシリカナノ粒子を含む分散液と、分散液よりも低いpHを有する酸(例えば、3.5未満のpK
aを有する酸)と、を組み合わせることにより、調製することができる。代表的な酸としては、シュウ酸、クエン酸、H
3PO
4、HCl、HBr、HI、HBrO
3、HNO
3、HClO
4、H
2SO
4、CH
3SO
3H、CF
3SO
3H、CF
3CO
2H又はCH
3SO
2OHのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0080】
一部の実施形態では、シリカナノ粒子の多孔質ネットワークは、水が蒸発し、酸濃度が増加するにつれて、シリカナノ粒子の酸焼結が進むことにより、得られる。あるいは、一部の実施形態では、シリカナノ粒子は熱処理(例えば、火炎処理)で焼結することができる。熱処理は、例えば、典型的には約1〜3秒又は基材が基材を溶融する条件にさらされないのであれば更に長きにわたって、構造化基材に火炎(バーナー)下を通過させることにより、実行することができる。他の加熱技術としては、例えば、赤外線ヒーター及び熱風機を挙げてもよい。コーティングされた表面に対向する表面は、例えば、冷却された金属ロールにより、あるいは液体適用を介して冷却して、火炎下での耐久性をより長時間なものにすることができる。
【0081】
一部の実施形態では、本開示は、水性連続液相と、水性連続液相中に分散したコア−シェル粒子と、を含む組成物を提供し、ここで、各コア−シェル粒子は、ポリマーコア上に配置された無孔の球状シリカ粒子のシェルにより包囲されたポリマーコアを含み、無孔の球状シリカ粒子は、60ナノメートル(一部の実施形態では50ナノメートル未満、40ナノメートル、30ナノメートル、20ナノメートル、又は更には10ナノメートル未満、一部の実施形態では5ナノメートル〜60ナノメートル)の体積平均粒子直径を有する。一部の実施形態では、組成物中のポリマーの合計量に対する、組成物中の無孔の球状シリカ粒子の合計量の重量比は、85:15〜95:5の範囲である。一部の実施形態では、組成物は界面活性剤を更に含む。一部の実施形態では、ポリマーコアは、ポリウレタン断片を含み得るフィルム形成熱可塑性ポリマーを含む。
【0082】
シェル形成の実施のために、無孔の球状シリカ粒子は典型的にはポリマーコアよりも小さくあるべきであるが、これは必須ではない。例えば、ポリマー粒子の体積平均粒子直径(D50)は、球状シリカ粒子の体積平均粒子直径(D50)の、およそ少なくとも3倍大きくてもよい。より典型的には、ポリマー粒子の体積平均粒子直径は、典型的には、球状シリカ粒子の体積平均粒子直径の少なくとも5倍、少なくとも10倍、又は更には少なくとも50倍大きくあるべきである。典型的なポリマー粒径について、無孔の球状シリカ粒子の、1つ以上のポリマー粒子に対する重量比は、30:70〜97:3、好ましくは80:20〜95:5、より好ましくは85:15〜95:5の範囲である。
【0083】
一部の実施形態では、コーティング組成物は5未満のpH値を有する。一部の実施形態では、コーティング組成物は、針状シリカ粒子を含まない。
【0084】
一部の実施形態では、コーティング組成物は、オルガノシラン結合剤(例えば、テトラアルコキシシラン)、界面活性剤及び/又は湿潤剤を更に含む。
【0085】
代表的な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が挙げられる。有用なアニオン性界面活性剤としては、(1)C
6〜C
20のアルキル、アルキルアリール、及び/若しくはアルケニル基などの少なくとも1つの疎水性部分、(2)サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ポリオキシエチレンサルフェート、ポリオキシエチレンスルホネート、ポリオキシエチレンホスフェート及びこれらに類するものなどの少なくとも1つのアニオン性基、並びに/又は(3)このようなアニオン性基の塩であって、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、三級アミノ塩及びこれらに類するものが挙げられる塩、を含む分子構造を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。有用なアニオン性界面活性剤の代表的な市販例としては、ラウリル硫酸ナトリウム(例えば、Henkel Inc.(Wilmington,DE)から商品名「TEXAPON L−100」で、及び、Stepan Chemical Co(Northfield,IL)から「POLYSTEP B−3」で入手可能)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(例えば、Stepan Chemical Co.(Northfield,IL)から商品名「POLYSTEP B−12」で入手可能)、ラウリル硫酸アンモニウム(Henkel Inc.(Wilmington,DE)から商品名「STANDAPOL A」で入手可能)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Rhone−Poulenc,Inc.(Cranberry,NJ)から商品名「SIPONATE DS−10」で入手可能)が挙げられる。シリカナノ粒子の典型的な濃度では(例えば、総コーティング組成物に対して0.2〜15重量パーセント)、大部分の界面活性剤は、コーティング組成物の0.1重量パーセント未満、好ましくは0.003〜0.05重量パーセントで含まれる。
【0086】
代表的な湿潤剤としては、ポリエトキシレート化アルキルアルコール(例えば、ICI Americas,Inc.から商品名「BRIJ 30」及び「BRIJ 35」、並びに、Union Carbide Chemical and Plastics Co.から商品名「TERGITOL TMN−6」SPECIALTY SURFACTANTで入手可能)、ポリエトキシレート化アルキルフェノール(例えば、Union Carbide Chemical and Plastics Co.から商品名「TRITON X−100」、BASF Corp.(Florham Park,NJ)から商品名「ICONOL NP−70」で入手可能)、及びポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(例えば、BASF Corp.から商品名「TETRONIC 1502 BLOCK COPOLYMER SURFACTANT」、「TETRONIC 908 BLOCK COPOLYMER SURFACTANT」及び「PLURONIC F38 BLOCK COPOLYMER SURFACTANT」で入手可能)が挙げられる。シリカナノ粒子の量によるが、一般的に湿潤剤はコーティング組成物の0.1重量パーセント未満、好ましくはコーティング組成物の0.003〜0.05重量パーセントの量で用いられる。コーティングされた物品を水ですすぐ又は水中に浸漬することが、過剰な界面活性剤又は湿潤剤を除去するために望ましい場合がある。
【0087】
一部の実施形態では、物品用並びにコーティング組成物用のナノ粒子は、最大で500ナノメートル、400ナノメートル、300ナノメートル、200ナノメートル、150ナノメートル、100ナノメートル、75ナノメートル、50ナノメートル、40ナノメートル、30ナノメートル、又は更には最大で20ナノメートルの平均粒子直径を有する。
【0088】
一部の実施形態では、物品用並びにコーティング組成物用のナノ粒子は、二峰性分布を有する。一部の実施形態では、ナノ粒子の二峰性分布は、2ナノメートル〜15ナノメートルの範囲の第一分布と20ナノメートル〜500ナノメートルの範囲の第二分布、2ナノメートル〜20ナノメートルの範囲の第一分布と30ナノメートル〜500ナノメートルの範囲の第二分布、又は更に5ナノメートル〜15ナノメートルの範囲の第一分布と20ナノメートル〜100ナノメートルの範囲の第二分布を有する。別の態様では、一部の実施形態において、第一分布のナノ粒子と第二分布のナノ粒子の重量比は、1:99〜99:1、10:90〜90:10、20:80〜80:20、又は更に30:70〜70:30の範囲内である。
【0089】
コーティング組成物を適用するための技術としては、ローリングコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング及びエアーナイフの使用が挙げられる。
【0090】
一部の実施形態では、当該技術分野において既知の技術を用いて基材にコロナ又は火炎処理を行って、表面エネルギーを変更して、コーティング組成物でコーティングされることになる表面の濡れ性を向上させることが望ましいものであり得る。
【0091】
一部の実施形態では、焼結コーティングは、透明基材の反射防止構造化表面に対するコンフォーマルコーティングである。コーティング組成物でコーティングされることになる表面のコロナ又は火炎処理は、コンフォーマルコーティングを得る助けとなり得る。
【0092】
一部の実施形態では、焼結コーティングは、表面構造それ自体よりも、広い範囲の入射光角度にわたって高い光透過率を有する。理論に束縛されるものではないが、
多孔性のナノシリカは、勾配屈折率(多孔性は表面においてより高い)により更なる反射防止をもたらすと考えられる。更に、プリズム傾斜の臨界角を超える入射光角度
においても、
勾配のある屈折率を
有する多孔質ナノシリカコーティングによりもたらされる屈折の減少
により、光透過
が増加
すると考えられている。
【0093】
シリカナノ粒子を含む本明細書に記載の反射防止構造化表面上に集積する汚れ及び埃粒子は、比較的洗浄するのが容易である。
【0094】
図4を参照すると、代表的な透明な構造化表面フィルム40は、プリズム状外側突起41の形状の構造化表面を有する主構造化面42を有する構造化フィルム基材43を含む。構造化表面41は、それぞれ、90°よりも小さい尖端角度αを有する。フィルム40はまた、そこから構造化表面41が伸びるベース部45も有する。ベース部45は、図示されるように構造41の一体形成部分、又は、点線48により示されるように別個の層であることができる。構造化面44は、加えて、表面44上にシリカナノ粒子46でコーティングされ、これは焼結することができる。支持裏材45は、例えば、高分子材料、ガラス、又は他の透明セラミック材料であり得る。代表的高分子材料は、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)フィルム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、プライマー処理PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドスキンを有する三層ポリカーボネートフィルム、架橋済みポリウレタンフィルム、アクリレートフィルム、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)フィルム又はUVミラーフィルムのうちの少なくとも1つ又は組み合わせを含んでもよい。任意の接着剤層49は、構造化表面の面44の反対側に位置する。
【0095】
図5を参照すると、代表的な透明な構造化表面フィルム50は、プリズム状外側突起53の形状の構造化表面を有する主構造化面52を有する構造化フィルム基材55を有する。構造化表面53は、それぞれ、90°よりも小さい尖端角度βを有する。フィルム50は、そこから構造化表面53が伸びるベース部54を更に含む。ベース部55は、図示されるように構造53の一体形成部分、又は、点線58により示されるように別個の層であることができる。構造化面53は、各構造化面53が構造化フィルム基材54のコア又はそうでなければ残部54よりも高いポリマー架橋密度を有するように、追加の架橋処置(例えば、電子線照射又は熱エネルギー)に曝露される。架橋密度の高さの程度は、例えば、更なる架橋処理への曝露強度及び/又は架橋処理の長さによって決まる。構造化表面53の架橋密度が高くなるほど、結果として、汚れ及び埃粒子の付着への耐性が高くなる。フィルム50又は本明細書に記載の任意の他の構造化表面フィルムが、表面53上に多孔質シリカナノ粒子51のコーティングを含むことが望ましく、このコーティングは焼結することができる。支持裏材55は、例えば、高分子材料、又はガラス、又は他の透明セラミック材料で形成することができる。代表的高分子材料は、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)フィルム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、プライマー処理PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドスキンを有する三層ポリカーボネートフィルム、架橋済みポリウレタンフィルム、アクリレートフィルム、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)フィルム又はUVミラーフィルムのうちの少なくとも1つ又は組み合わせを含んでもよい。任意の接着剤層59は、構造化表面の面53の反対側に位置する。
【0096】
図6を参照すると、代表的な透明な構造化表面フィルム60は、プリズム状外側突起61の形状の構造化表面を有する主構造化面62を有する構造化フィルム基材63を有する。構造化表面61は、それぞれ、90°よりも小さい尖端角度θを有する。フィルム60はまた、そこから構造化表面61が伸びるベース部63も有する。構造化面61は、加えて、表面61上に多孔質シリカナノ粒子64でコーティングされ、このコーティングは焼結することができる。支持裏材63は、例えば、高分子材料、又はガラス、又は他の透明セラミック材料で形成することができる。代表的高分子材料は、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)フィルム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、プライマー処理PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドスキンを有する三層ポリカーボネートフィルム、架橋済みポリウレタンフィルム、アクリレートフィルム、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)フィルム又はUVミラーフィルムのうちの少なくとも1つ又は組み合わせを含んでもよい。
【0097】
図7を参照すると、代表的な透明な構造化表面フィルム70は、プリズム状外側突起71の形状の構造化表面を有する主構造化面72を有する構造化フィルム基材75を有する。構造化表面71は、それぞれ、90°よりも小さい尖端角度γを有する。フィルム70はまた、そこから構造化表面71が伸びるベース部75も有する。ベース部75は、図示されるように構造71の一体形成部分、又は、点線78により示されるように別個の層であることができる。構造化面71は、各構造化面71が構造化フィルム基材74のコア又はそうでなければ残部74よりも高いポリマー架橋密度を有するように、追加の架橋処置(例えば、電子線照射又は熱エネルギー)に曝露される。高い架橋密度の深さDは、更なる架橋処理への曝露強度及び/又は架橋処理の長さによって決まる。構造化表面71の架橋密度が高いほど、汚れ及び塵粒子付着に対する耐性の増加、並びに、磨耗耐性の増加をもたらすという結果が観察された。フィルム70又は本明細書に記載の任意の他の構造化表面フィルムは、表面71上に多孔質シリカナノ粒子79のコーティングを有し、このコーティングは焼結することができる。支持裏材75は、例えば、高分子材料、又はガラス、又は他の透明セラミック材料で形成することができる。代表的高分子材料は、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)フィルム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、プライマー処理PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドスキンを有する三層ポリカーボネートフィルム、架橋済みポリウレタンフィルム、アクリレートフィルム、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)フィルム又はUVミラーフィルムのうちの少なくとも1つ又は組み合わせを含んでもよい。任意の接着剤層76は、構造化表面の面71の反対側に位置する。
【0098】
図8は、例示的な、反射防止表面構造上にコーティングされた酸焼結済みシリカナノ粒子の断面のデジタルカメラ画像である。透明な構造化表面フィルム基材83は、90°未満の尖端角度φを有する構造化表面プリズム82を有する。各プリズムの面は、多孔質シリカの層81でコーティングされる。支持裏材83及び構造化表面82は、例えば、PMMAを含み得る。
【0099】
図9は、砂を吹き込むことにより汚れ構築及び摩耗に対する耐性を増加させた、例示的な丸みを帯びた外側突起のプリズム表面構造形状を示す。各構造化表面は、90°未満の頂角91を有する。構造化表面は、典型的には、1mm以下で離間しているピッチ92を有する。頂部から谷部までの高さ93は、典型的には、1mm以下である。頂部及び/又は谷部の半径94は、典型的には、少なくとも1マイクロメートルである。
【0100】
本明細書に記載の物品の一部の実施形態は屋外用途で使用されるため、耐候が物品の望ましい特徴である。加速耐候試験は、物品の性能を評価するための1つのオプションである。加速耐候試験は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるASTM G−155−05a(2005年10月)「Standard practice for exposing non−metallic materials in accelerated test devices that use laboratory light sources」に記載のものと同様な技術を用いて、フィルムに対して行うことができる。
【0101】
一部の実施形態では、フィルムは、構造化表面が以下の汚れ付着試験にかけられた後、試験光透過率において8%未満の変化を呈する。
【0102】
汚れ付着試験
コーティング汚れ耐性は、95mm正方形プラスチックペトリ皿(Becton Dickinson Labware(Franklin Lakes,NJ)から商品名「FALCON 35112」で入手可能)から構成される装置(5cm孔がペトリ皿の下半分にドリルにより貫通されている)を用いて、試験される。5cm×8cmのコーティングされたサンプルを、サンプルのコーティングされた表面がペトリ皿の内側を向き、試験汚れに直接曝露されるように、接着テープで5cm孔を覆ってペトリ皿の外側上に取り付ける。50グラムのアリゾナ試験用ダスト(0〜600マイクロメートル分布、Powder Technology Incorporated(Burnsville,MN)から入手可能)を、コーティングされたサンプル上のペトリ皿の下半分の中に配置する。ペトリ皿の二等分部分二つをしっかりと組み合わせて、汚れがサンプルの表面にわたって前後に転回するように、左右方向のサイクルで軽く振る。サンプルを手により秒当たり1サイクルの速度にて60サイクルにわたって左右方向に振る。次に、サンプルを試験装置から取り出し、軽くたたいて、汚れを除去してその付着をゆるやかにする。コーティングされたサンプルの透過性を、透過率計(BYK−Gardner(Columbia,MD)から商品名「HAZE GARD PLUS」で入手可能)を用いて、汚れ試験の前後で測定する。汚れ試験後、サンプルを軽く水ですすいで、汚れを除去し、乾燥させ、透過性を再測定して清浄性の尺度とする。
【0103】
一部の実施形態では、フィルムは、構造化表面が以下の落砂試験にかけられた後に、試験光透過率において8%未満の変化を呈する。
【0104】
落砂試験
コーティング摩耗耐性は、落砂摩耗試験機(Humboldt MFG.Co.(Norridge,IL)から商品名「HP−1160」で入手可能)を用いて、試験される。5cm×8cmのコーティングされたサンプルは、落砂チューブの出口の下に中心を置いた試験プラットフォームに接着テープで取り付けられる。1000グラムのASTM C778シリカ砂(U.S.Silica Company(Ottawa,IL)から入手可能)は、落砂チューブに供給するホッパーの中に装填される。ゲートを開くと、砂が落砂チューブを通して100cmの距離を落下し始め、コーティングされたサンプルの表面上にあたる。コーティングされたサンプルの透過性は、透過率計(「HAZE GARD PLUS」)を用いて落砂試験前後で測定する。落砂試験後、このサンプルも軽く水ですすいで、細片を除去し、乾燥させ、透過性を再び測定する。
【0105】
本明細書に記載の物品の一部の実施形態は、主要面を有する透明な支持裏材と組み合わせることができ、ここで、透明な支持裏材は静電気を消散させ、構造化基材は、強化された反射防止構造化物品を形成するように、支持裏材の主要面に結合させた裏材を更に含む。透明な支持裏材もまた、静電気を消散させるように選択することもできる(例えば、支持裏材は、支持裏材に静電気を消散させることを可能にする高分子材料を含むことができる)。例えば、透明な支持裏材もまた、ポリウレタン(例えば、Lubrizol Corp.(Wickliffe,OH)から商品名「STATRITE X5091」で入手可能)、ポリメチルメタクリレート(例えば、Lubrizol Corp.から商品名「STATRITE M809」で入手可能)又はPMMA(例えば、RTP(Winona,MN)から商品名「PERMASTAT」で入手可能)などの固有の静電気消散性ポリマー、並びに、透明な支持裏材(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF))を作製するために使用されるポリマーの中にブレンドされる静電気消散性塩(例えば、3M Company(St.Paul,MN)から商品名「FC4400」で入手可能)を含み得る。これに加えるか又はこれに代えて、構造化フィルム基材は、こうした静電気消散性の塩を含んでもよい。
【0106】
支持裏材に代えるか又は支持裏材に加えて、フィルム又は本明細書に記載の任意の他の透明反射防止構造化フィルムが、場合により用いられる水分バリア層と組み合わせて使用されることが望ましい場合もある。このような実施形態では、水分バリア層は、例えば、水分バリア層を1つ以上の中間層(例えば、支持裏材層)を介して間接的に、又は構造化フィルム基材の主裏打ち面上に直接的に積層、コーティング、又は別の方法で結合することによって形成することができる。また、水分バリア層は、フィルムの組成を水分バリア性を示すように(例えば、水分の吸収、浸透を阻止するように)配合することによって形成することもできる。
【0107】
水分バリアは、例えば、それらの開示が本明細書に組み込まれる米国特許第7,486,019号(Padiyathら)及び同第7,215,473号(Fleming)、並びに米国特許出願公開第2006/0062937(A1)号、並びに、国際特許出願第PCT/US2009/062944号に開示されるバリアアセンブリ、バリア層であり得る。シリコーンは高い水蒸気透過率を有し、光起電力電池は一般的に水分の影響を受けやすいことから、水分バリアは有用であり得る。したがって、水分バリアで支持することにより、本発明の透明反射防止構造化フィルムは、水分感受性光起電電池(例えば、銅/インジウム/ガリウム/セレン、すなわち、CIGS光起電電池)上に直接使用することができる。
【0108】
本開示の実施に有用なバリアフィルムは、さまざまな構成体から選択可能である。バリアフィルムは、典型的には、用途により要求される特定のレベルの酸素及び水透過度を有するよう選択される。一部の実施形態では、バリアフィルムは、38℃及び100%相対湿度にて約0.005g/m
2/日未満、一部の実施形態では38℃及び100%相対湿度にて約0.0005g/m
2/日未満、一部の実施形態では38℃及び100%相対湿度にて0.00005g/m
2/日未満の水蒸気透過率(WVTR)を有する。一部の実施形態では、可撓性バリアフィルムは、50℃及び100%相対湿度で約0.05、0.005、0.0005又は0.00005g/m
2/日未満、又は更に85℃及び100%相対湿度でも約0.005、0.0005、0.00005g/m
2/日未満のWVTRを有する。一部の実施形態では、バリアフィルムは、23℃及び90%相対湿度で約0.005g/m
2/日未満、一部の実施形態では23℃及び相対湿度90%で約0.0005g/m
2/日未満、一部の実施形態では23℃及び相対湿度90%で0.00005g/m
2/日未満の酸素透過率を有する。
【0109】
代表的な、有用なバリアフィルムとしては、例えば原子層堆積、熱蒸着、スパッタリング、化学蒸着により調製された無機フィルムが挙げられる。有用なバリアフィルムは、典型的には、可撓性及び透明である。
【0110】
一部の実施形態では、有用なバリアフィルムは、無機/有機多層を含む。無機/有機多層を含む可撓性超バリアフィルムは、例えば、米国特許第7,018,713号(Padiyathら)で記述されている。このような可撓性超バリアフィルムは、少なくとも1つの第二ポリマー層により隔てられた2つ以上の無機バリア層によりオーバーコートされたポリマーフィルム基材上に配設された第一ポリマー層を有してもよい。一部の実施形態では、バリアフィルムは、ポリマーフィルム基材上に配設された第一ポリマー層と第二ポリマー層との間に介在された無機バリア層を1つ含む。
【0111】
第一及び第二ポリマー層は、モノマー又はオリゴマーの層を塗布し、例えば放射線架橋可能なモノマーをフラッシュ蒸発及び蒸着し、続いて例えば、電子ビーム装置、UV光源、放電装置、又はその他の好適な装置を使用して層を架橋することよって系内でポリマーを形成することによって形成することができる。第一ポリマー層はポリマーフィルム基材に塗布され、第二ポリマー層は典型的には無機バリア層に塗布される。第一及び第二ポリマー層の形成に有用な材料及び方法は、同一であるか、又は異なるように独立に選択され得る。フラッシュ蒸発及び蒸気堆積とそれに続く系内での架橋に有用な方法は、例えば、米国特許第4,696,719号(Bischoff)、同第4,722,515号(Ham)、同第4,842,893号(Yializisら)、同第4,954,371号(Yializis)、同第5,018,048号(Shawら)、同第5,032,461号(Shawら)、同第5,097,800号(Shawら)、同第5,125,138号(Shawら)、同第5,440,446号(Shawら)、同第5,547,908号(Furuzawaら)、同第6,045,864号(Lyonsら)、同第6,231,939号(Shawら)、及び同第6,214,422号(Yializis);公開されているPCT出願第WO 00/26973号(Delta V Technologies,Inc.);D.G.Shaw及びM.G.Langlois,「A New Vapor Deposition Process for Coating Paper and Polymer Webs」(6th International Vacuum Coating Conference(1992));D.G.Shaw及びM.G.Langlois,「A New High Speed Process for Vapor Depositing Acrylate Thin Films:An Update」(Society of Vacuum Coaters 36th Annual Technical Conference Proceedings(1993));D.G.Shaw及びM.G.Langlois,「Use of Vapor Deposited Acrylate Coatings to Improve the Barrier Properties of Metallized Film」(Society of Vacuum Coaters 37th Annual Technical Conference Proceedings(1994));D.G.Shaw、M.Roehrig、M.G.Langlois及びC.Sheehan,「Use of Evaporated Acrylate Coatings to Smooth the Surface of Polyester and Polypropylene Film Substrates」(RadTech(1996));J.Affinito、P.Martin、M.Gross、C.Coronado及びE.Greenwell,「Vacuum deposited polymer/metal multilayer films for optical application」(Thin Solid Films 270,43〜48(1995));並びにJ.D.Affinito、M.E.Gross、C.A.Coronado、G.L.Graff、E.N.Greenwell及びP.M.Martin,「Polymer−Oxide Transparent Barrier Layers」(Society of Vacuum Coaters 39th Annual Technical Conference Proceedings(1996))に見出すことができる。一部の実施形態では、ポリマー層及び無機バリア層は、1回通しの真空コーティング操作でコーティング工程を中断せずに順次堆積される。
【0112】
例えば、ポリマーフィルム基材を冷却することにより、第一ポリマー層の被覆効率を改善することができる。第二ポリマー層の被覆効率の改善に、類似の方法を使用することもできる。第一及び/又は第二ポリマー層を形成するのに有用なモノマー及びオリゴマーは、ロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)又はスプレーコーティング(例えば、静電スプレーコーティング)などの従来コーティング方法を用いて、適用することもできる。オリゴマー又はポリマーを溶剤中に含有する層を塗布し、次いで慣用の方法(例えば、熱又は真空の少なくとも一方)を用いて溶剤を除去することにより、第一及び/第二ポリマー層を形成することもできる。プラズマ重合を使用してもよい。
【0113】
第一及び第二ポリマー層の形成に揮発性アクリレート及びメタクリレートモノマーが有用である。ある実施形態では、揮発性アクリレートが使用される。揮発性アクリレート及びメタクリレートモノマーは、モル当たり約150〜約600グラム、又は、一部の実施形態ではモル当たり約200〜約400グラムの範囲の分子量を有し得る。一部の実施形態では、揮発性アクリレート及びメタクリレートモノマーは、分子量と分子当たりの(メタ)アクリレート官能基の数の比率の値が、約150〜約600g/モル/(メタ)アクリレート基、一部の実施形態では約200〜約400g/モル/(メタ)アクリレート基である。フッ素化アクリレート及びメタクリレートは、より高い分子量又は比率、例えば、約400〜約3000の分子量、又は約400〜約3000g/モル/(メタ)アクリレート基の比率で使用することができる。代表的な有用な揮発性アクリレート及びメタクリレートとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シアノエチル(モノ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジニトリルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ニトロフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリル酸、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、ナフトロキシエチルアクリレート、環状ジアクリレート(Cytec Industries Inc.から商品名「EB−130」で入手可能)、及び、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Sartomer Co.(Exton,PA)から商品名「SR833S」で入手可能)、エポキシアクリレート(Cytec Industries Inc.から商品名「RDX80095」で入手可能)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0114】
第一及び第二ポリマー層を形成するのに有用なモノマーはさまざまな商業源から提供可能であり、例えば、ウレタンアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「CN−968」及び「CN−983」で入手可能)、イソボルニルアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−506」で入手可能)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−399」で入手可能)、スチレンとブレンドされたエポキシアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「CN−120S80」で入手可能)、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−355」で入手可能)、ジエチレングリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−230」で入手可能)、1,3−ブチレングリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−212」で入手可能)、ペンタアクリレートエステル(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−9041」で入手可能)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−295」で入手可能)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−444」で入手可能)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−454」で入手可能)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−454HP」で入手可能)、アルコキシル化三官能アクリレートエステル(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−9008」で入手可能)、ジプロピレングリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−508」で入手可能)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−247」で入手可能)、エトキシル化(4)ビスフェノールAジメタクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「CD−450」で入手可能)、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートエステル(例えば、Sartomer Co.から商品名「CD−406」で入手可能)、イソボルニルメタクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−423」で入手可能)、環式ジアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「IRR−214」で入手可能)及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(例えば、Sartomer Co.から商品名「SR−368」で入手可能)、以上のメタクリレートのアクリレート、並びに、以上のアクリレートのメタクリレートが挙げられる。
【0115】
第一及び/又は第二ポリマー層を形成するのに有用である他のモノマーとしては、ビニルエーテル、ビニルナフチレン、アクリロニトリル及びこれらの混合物が挙げられる。
【0116】
第一ポリマー層の所望の化学組成及び厚さは、部分的にはポリマーフィルム基材の性質及び表面トポグラフィーに依存するであろう。第一及び/又は第二ポリマー層の厚さは、典型的には、続いて無機バリア層を塗布できる、平滑で、欠損のない表面を形成するに充分なものである。例えば、第一のポリマー層は、数nm(例えば、2又は3nm)〜約5マイクロメートル以上の厚さを有してもよい。第二ポリマー層の厚さもこの範囲にあってもよく、ある実施形態では、第一ポリマー層よりも薄くてもよい。
【0117】
可視光透過性無機バリア層はさまざまな材料から形成可能である。有用な材料には金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物、金属酸化ホウ化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な金属酸化物にはシリカなどのケイ素酸化物、アルミナなどのアルミニウム酸化物、チタニアなどのチタン酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、タンタル酸化物、ジルコニウム酸化物、ヒオブ酸化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。他の代表的な材料にはホウ素炭化物、タングステン炭化物、ケイ素炭化物、アルミニウム窒化物、ケイ素窒化物、ホウ素窒化物、アルミニウム酸化窒化物、ケイ素酸化窒化物、ホウ素酸化窒化物、ジルコニウム酸化ホウ化物、チタニウム酸化ホウ化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、可視光透過性無機バリア層は、ITO、ケイ素酸化物、又はアルミニウム酸化物の少なくとも1つを含む。ある実施形態では、それぞれの元素成分の相対的な比率の適切な選択によって、ITOを電気伝導性にすることができる。無機バリア層は、スパッタリング(例えば、カソード若しくは平板マグネトロンスパッタリング、二重AC平板マグネトロンスパッタリング又は二重AC回転マグネトロンスパッタリング)、蒸発(例えば、抵抗又は電子ビーム蒸発、及びイオンビーム及びプラズマ支援蒸着を含む、抵抗又は電子ビーム蒸発のエネルギー増強類似技術)、化学蒸着、プラズマ増強化学蒸着、及びめっき等の、フィルム金属化法で使用される技術を使用して形成可能である。一部の実施形態では、無機バリア層は、スパッタリング(例えば、反応性スパッタリング)を使用して形成される。従来の蒸着プロセスなどの低エネルギー法と比較して、スパッタリングなどの高エネルギー蒸着法によって無機層が形成される場合バリア特性の向上が観察され得る。理論に束縛されるものではないが、特性の向上は、基材に適用した化学種をより大きな運動エネルギーで凝縮することによるものであり、圧縮の結果としてより低い空隙率につながると考えられる。
【0118】
各無機バリア層の所望の化学組成及び厚さは、下に横たわる層の性質及び表面トポグラフィーと、バリアフィルムの所望の光学特性とに部分的に依存する。無機バリア層は、典型的には、連続性であるのに十分に厚く、本明細書に開示されているバリアフィルムと組み立て体が、所望の程度の可視光透過度及び可撓性を有するようにするのに十分薄い。それぞれの無機バリア層の物理的な厚さ(光学厚さに対して)は、例えば、約3nm〜約150nm(ある実施形態では、約4nm〜約75nm)であり得る。用語「可視光透過性」は、本明細書において無機バリア層の記述に使用されるとき、垂直軸に沿って測定してスペクトルの可視部分にわたって少なくとも約75%(一部の実施形態では、少なくとも約80、85、90、92、95、97、又は98%)の平均透過率を有することを意味することができる。一部の実施形態では、無機バリア層は、400nm〜800nmの範囲にわたって少なくとも約75%(一部の実施形態では少なくとも約80、85、90、92、95、97又は98%)の平均透過率を有する。可視光透過性無機バリア層は、例えば、光起電力電池による可視光の吸収を妨害しないものである。
【0119】
所望される場合、無機バリア層及びポリマー層を追加することができる。1つ以上の無機バリア層が存在する実施形態では、無機バリア層が同一であるか、又は同一の厚さを有する必要はない。1つ以上の無機バリア層が存在する場合には、無機バリア層は、それぞれ「第一無機バリア層」及び「第二無機バリア層」と呼ぶことができる。「ポリマー層」を追加の無機バリア層の間に追加してもよい。例えば、バリアフィルムは、複数の交互に存在する無機バリア層とポリマー層を有し得る。ポリマー層と組み合わせた無機バリア層の各単位は、ダイアドとして示され、バリアフィルムは任意の数のダイアドを備えることができる。ダイアド間に、さまざまな種類の任意の層を含ませることもできる。
【0120】
例えば表面処理層又は結合層を、ポリマー層又は無機バリア層のいずれかの間に塗布して、平滑性又は接着性を改善することができる。有用な表面処理としては、好適な反応性又は非反応性雰囲気の存在下での放電(例えば、プラズマ、グロー放電、コロナ放電、誘電体バリア放電又は大気圧放電)、化学的前処理又はフレーム前処理が挙げられる。別個の接着促進層もまた、高分子フィルム基材の主表面とバリアフィルムとの間に形成され得る。接着促進層は、例えば別個のポリマー層、又は金属、金属酸化物、金属窒化物又は金属オキシナイトライドの層などの金属含有層であってもよい。接着促進層は、数ナノメートル(nm)(例えば、1又は2nm)〜約50nm以上の厚さを有してもよい。
【0121】
一部の実施形態では、有用なバリアフィルムは、米国特許出願公開第2007−0020451号(Padiyathら)に開示されているものなどのプラズマ蒸着ポリマー層(例えば、ダイヤモンド様ガラス)を含む。例えば、可撓性の可視光透過性基材上に第一ポリマー層を、及び第一ポリマー層上にオーバーコートされたプラズマ堆積ポリマー層をオーバーコートすることにより、バリアフィルムを作製することができる。第一ポリマー層は、第一ポリマー層に関する上記の実施形態のいずれかで記述されているようなものであってもよい。プラズマ堆積ポリマー層は、例えば、ダイヤモンド様の炭素層又はダイヤモンド様のガラスであってもよい。バリアフィルムの基材又は他の要素に対する層の位置を記載するための「オーバーコートされた」という用語は、層が基材又は他の要素の上部にあることを指すが、基材又は他の要素のいずれかと隣接する必要はない。用語「ダイヤモンド様ガラス」(DLG)は、炭素及びケイ素を含み、任意に、水素、窒素、酸素、フッ素、硫黄、チタン及び銅を含む群から選択される追加の成分を1つ以上含む、実質的に又は完全に非晶質のガラスを指す。ある実施形態において、その他の元素が存在してもよい。非晶質ダイヤモンド様ガラスフィルムは、短距離秩序を付与するために原子のクラスタを含んでもよいが、180nm〜800nmの波長を有する放射線を不利に散乱させる可能性のあるミクロ又はマクロ結晶性につながる中距離及び長距離秩序を本質的に含まない。用語「ダイヤモンド様炭素」(DLC)は、原子の約50〜90パーセントの炭素と、原子の約10〜50パーセントの水素とを含む非晶質フィルム又はコーティングを指し、1立方センチメートル当たり約0.20〜約0.28グラム原子のグラム原子密度を有し、約50%〜約90%の四面体結合から構成されている。
【0122】
一部の実施形態では、バリアフィルムは、交互するDLG又はDLC層及び可撓性の可視光透過性基材上にオーバーコートされたポリマー層(例えば、第一及び第二ポリマー層)から作製された多層を有することができる。ポリマー層とDLG又はDLC層の組み合わせを含むそれぞれの単位はダイアドと呼ばれ、組み立てて体は任意の数のダイアドを含むことができる。ダイアド間に、さまざまな種類の任意の層を含ませることもできる。バリアフィルム内により多くの層を加えると、酸素、水分又は他の汚染物質に対するバリアフィルムの不浸透性が増し得、また、層内の欠損を被覆又は封入する助けとなり得る。
【0123】
ある実施形態では、ダイヤモンド様ガラスは、水素を入れない基準で、少なくとも30%の炭素、実質的な量のケイ素(典型的には少なくとも25%)及び45%以下の酸素を含む。かなり大量のケイ素と、有意な量の酸素及び相当量の炭素との独自の組み合わせによって、これら膜は透明となり、高可撓性となる。ダイヤモンド様ガラス薄フィルムは、さまざまな光透過特性を有することがある。組成物によるが、薄フィルムは、さまざまな周波数で透過性特性を向上できる可能性がある。しかしながら、一部の実施形態では、この薄膜(厚さがおよそ1マイクロメートル)は、約250nm〜約800nm(例えば、約400nm〜約800nm)の実質的にすべての波長の放射線に対して少なくとも70%の透過性を有する。厚さ1マイクロメートルの膜に関し、70%の透過率は、400nm〜800nmの可視波長領域における消光係数(k)が0.02未満であることに相当する。
【0124】
ダイヤモンド様ガラスフィルムの作製において、さまざまな追加の成分を組み込んで、ダイヤモンド様ガラスフィルムが基材に付与する性質(例えば、バリア及び表面の性質)を変化及び増強することができる。追加の構成要素は、水素、窒素、フッ素、イオウ、チタン、又は銅の1つ以上を含んでもよい。また、その他の追加成分も有益であり得る。水素の追加は、四面体結合の形成を促進する。フッ素の添加は、非相溶性マトリックスへの分散能を含めて、ダイヤモンド様ガラスフィルムのバリア及び表面特性を高め得る。フッ素の供給源としては、四フッ化炭素(CF
4)、六フッ化硫黄(SF
6)、C
2F
6、C
3F
8、及びC
4F
10などの化合物が挙げられる。耐酸化性を強化し、導電率を向上させるために窒素が追加されてもよい。窒素の供給源としては窒素ガス(N
2)、アンモニア(NH
3)及びヒドラジン(N
2H
6)が挙げられる。硫黄を追加することによって、接着性を強化することができる。チタンの添加は、接着及び拡散及びバリア特性を強化する傾向がある。
【0125】
DLCフィルムに対しさまざまな添加物を使用することができる。ダイヤモンド様ガラスに対し上述の理由により添加され得る窒素又はフッ素に加えて、酸素及びケイ素を添加してもよい。DLCコーティングに対するケイ素及び酸素の添加は、コーティングの光学的透明度と、熱安定性とを改善する傾向がある。酸素の供給源としては、酸素ガス(O
2)、水蒸気、エタノール及び過酸化水素が挙げられる。ケイ素の供給源としては、好ましくはSiH
4、Si
2H
6及びヘキサメチルジシロキサンなどのシランが挙げられる。
【0126】
上述のDLG又はDLC膜への添加物をダイヤモンド様マトリックスに組み込んでもよいし、又は表面原子層に結合させてもよい。添加物がダイヤモンド様マトリックス内に組み込まれる場合、添加物は密度及び/又は構造にゆらぎを生じる場合があるが、得られる材料は、基本的にダイヤモンド様炭素の特徴(例えば、化学的不活性、硬さ及びバリア特性)を有する密に充填されたネットワークである。添加物濃度が大き過ぎる(例えば、炭素濃度に対して50原子パーセントを超える)場合には、密度は影響を受け、ダイヤモンド様炭素ネットワークの有益な特性は失われるであろう。添加剤が表面原子層に取り付けられる場合、添加剤は表面の構造及び特性のみを変更するであろう。ダイヤモンド様炭素ネットワークのバルク特性は、保存されるであろう。
【0127】
前駆体モノマーを気相中低温で使用することにより、ダイヤモンド様ガラス及びダイヤモンド様炭素などのプラズマ堆積ポリマーをプラズマから合成することができる。前駆体分子は、プラズマ内に存在するエネルギー電子によって破壊され、フリーラジカル種を生成する。これらのフリーラジカル種は、基材表面で反応し、ポリマー薄フィルムの成長をもたらす。気相及び基材の両方における反応プロセスの非特異性により、結果として生じるポリマーフィルムの性質は、通常極めて架橋型かつ非晶質である。プラズマ堆積ポリマーに関する追加の情報は、例えば、H.Yasuda、「Plasma Polymerization」(Academic PressInc.,New York(1985));R.d’Agostino(編)、「Plasma Deposition,Treatment&Etching of Polymers」(Academic Press,New York(1990));及びH.Biederman及びY.Osada、「Plasma Polymerization Processes」(Elsever,New York(1992))を参照のこと。
【0128】
典型的には、本明細書で記載のプラズマ堆積ポリマー層は、炭化水素及びCH
3、CH
2、CH、Si−C、Si−CH
3、Al−C、Si−O−CH
3などの炭素系官能基の存在により有機の性状を有する。プラズマ堆積ポリマー層において無機成分は実質的に下位化学量論的であり、この層は実質的に炭素リッチである。例えばケイ素を含むフィルムでは、例えば、酸素:ケイ素の比率は、好ましくは1.8未満(二酸化ケイ素の比率は2.0である)、DLGの場合、より好ましくは1.5未満であり、炭素含有量は、少なくとも約10%である。ある実施形態では、炭素含有量は少なくとも約20%又は25%である。
【0129】
例えば、米国特許出願公開第2008−0196664号(Davidら)に記載されているように、シリコーン油及び任意のシラン源を用いてプラズマを形成するイオン増強プラズマ化学蒸着(PECVD)により形成された非晶質ダイヤモンド様フィルムもバリアフィルムにおいて有用であり得る。「シリコーン」、「シリコーン油」、又は「シロキサン」は、互換的に使用され、Rが水素、(C
1〜C
8)アルキル、(C
5〜C
18)アリール、(C
6〜C
26)アリールアルキル、又は(C
6〜C
26)アルキルアリールから独立して選択される、構造単位R
2SiOを有するオリゴマー及び高分子量の分子を指している。これらは、また、ポリオルガノシロキサンとも呼ばれることがあり、ケイ素原子と酸素原子とが交互に並ぶ鎖(−O−Si−O−Si−O−)を含んでおり、通常はR基に結合しているケイ素原子の遊離原子価が、第二の鎖の酸素原子及びケイ素原子にもまた結合(架橋)して、拡張したネットワーク構造(高MW)を形成していることもある。ある実施形態では、気化シリコーンオイルなどのシロキサン源を、得られる形成プラズマコーティングが可撓性であり、かつ高光学透過率を有する量で導入する。プラズマの維持を助け、非晶質ダイヤモンド状フィルム層又はコーティングの特性を変化させるために、例えば酸素、窒素及び/又はアンモニアなどの任意の有用な追加のプロセスガスを、シロキサン及び任意のシランと共に使用することができる。
【0130】
ある実施形態では、2つ以上の異なるプラズマ堆積ポリマーの組み合わせを使用することができる。例えば、ポリマー層の堆積のためにプラズマを形成する工程ガスを変化又は脈動させることにより、異なるプラズマ堆積ポリマー層を形成する。別の例では、第一非晶質ダイヤモンド状フィルムの第一層、次いで、第一層の上の第二非晶質ダイヤモンド状フィルムの第二層であって、第一層が第二層とは異なる組成を有するものを形成することができる。一部の実施形態では、第一の非晶質ダイヤモンド様フィルム層は、シリコーン油プラズマから形成され、次いで、第二の非晶質ダイヤモンド様フィルム層が、シリコーン油及びシランプラズマから形成される。他の実施形態では、交互に並ぶ組成の2つ以上の非晶質ダイヤモンド様フィルムの層が形成されて、非晶質ダイヤモンド様フィルムを作り出す。
【0131】
ダイヤモンド様ガラス及びダイヤモンド様炭素などのプラズマ堆積ポリマーは任意の有用な厚さであることができる。一部の実施形態では、プラズマ蒸着ポリマーは、少なくとも500オングストローム又は少なくとも1,000オングストロームの厚さを有することができる。一部の実施形態ではプラズマ蒸着ポリマーは、1,000〜50,000オングストローム、1,000〜25,000オングストローム、又は、1,000〜10,000オングストロームの範囲の厚さを有することができる。
【0132】
炭素リッチのフィルム、ケイ素含有フィルム、又はこれらの組み合わせなどの有用なバリアフィルム120を調製するための他のプラズマ堆積法は、例えば、米国特許第6,348,237号(Kohlerら)で開示されている。炭素リッチのコーティングは、少なくとも50原子パーセントの炭素、典型的には約70〜95原子パーセントの炭素、0.1〜20原子パーセントの窒素、0.1〜15原子パーセントの酸素及び0.1〜40原子パーセントの水素を含む。このような炭素リッチのフィルムは、その物理的及び化学的性質に依存して、「非晶質」、「水素化非晶質」、「グラファイト質」、「炭素同位体」、又は「ダイヤモンド様」と分類可能である。ケイ素含有フィルムは、通常、ポリマー製であり、ケイ素、炭素、水素、酸素及び窒素をランダムな組成で含有する。
【0133】
炭素リッチのフィルム及びケイ素含有フィルムは、常温及び常圧で通常液体である気化された有機材料とのプラズマ相互作用により形成可能である。気化した有機材料は、典型的には、約1トール(130Pa)未満の真空で凝縮することができる。蒸気を、プラズマポリマー堆積のために真空中で(例えば、慣用の真空チャンバ中で)上述の負に帯電した電極において可撓性の可視光透過性基材に向ける。プラズマ(例えば、米国特許第5,464,667号(Kohlerら)に記載されているようなアルゴンプラズマ又は炭素リッチプラズマ)と少なくとも1種の気化した有機材料とを、フィルム形成時に相互作用させる。プラズマは、気化した有機材料を活性化できるものである。したがって、プラズマと気化した有機材料とを、基材の表面上で、又は基材の表面と接触する前に相互作用させることができる。いずれにしても、気化した有機材料とプラズマとの相互作用は、有機材料の反応性形態(例えば、シリコーンからのメチル基の損失)をもたらし、例えば重合及び/又は架橋の結果として、フィルムの形成時に材料を緻密化することができる。重要なこととして、これらの膜は、溶媒を必要とせずに作製される。
【0134】
形成される膜は、均一な多成分膜(例えば、多数の出発物質から生成された単層のコーティング)、均一な一成分膜、及び/又は多層膜(例えば、炭素リッチの材料とシリコーン材料との交互層)であることができる。例えば、第一供給源からの1つの流れの中の炭素リッチのプラズマと、第二供給源からの別の流れの中のジメチルシロキサンなどの気化された高分子量の有機液体とを使用して、1回通しの蒸着手順により、フィルムの多層構造が生じる(例えば、炭素リッチの材料の層、少なくとも部分的に重合したジメチルシロキサンの層、及び炭素/ジメチルシロキサン複合材料の中間層又は界面層)。系の配置を変えることにより、所望により特性及び組成の漸次的な変化、又は突然の変化をともなう均一な多成分膜又は層状膜が制御形成される。アルゴンなどのキャリアガスプラズマ、及びジメチルシロキサン油などの気化した高分子量有機液体から、1成分の均一なコーティングも形成し得る。
【0135】
他の有用な可撓性バリアフィルムは、米国特許第7,015,640号(Schaepkensら)に記載されているものなどの傾斜組成のバリアコーティングを有するフィルムを含む。傾斜組成のバリアコーティングを有するフィルムは、高分子フィルム基材上に反応種の反応生成物又は再結合生成物を堆積させることにより作製可能である。相対的な供給度を変更し、又は反応種の固有性を変化させることにより、その厚さにわたって傾斜組成を有するコーティングが生成される。好適なコーティング組成物は有機、無機、又はセラミック材料である。これらの材料は、典型的にはプラズマ種の反応生成物又は再結合生成物であり、基材表面上に堆積される。有機コーティング材料は、典型的には、反応物の種類に応じて、炭素、水素、酸素、並びに硫黄、窒素及びケイ素などの他の微量元素を、任意に含む。コーティング中で有機組成物を生じる好適な反応物は、15個迄の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルカン、アルケン、アルキン、アルコール、アルデヒド、エーテル、酸化アルキレン、芳香族などである。無機及びセラミックコーティング材料は、典型的には、酸化物;窒化物;炭化物;ホウ化物;又はIIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、IB及びIIB属の元素のそれらの組み合わせ;IIIB、IVB及びVB属の金属;並びに希土類金属を含む。例えば、シラン(SiH
4)と、メタン又はキシレンなどの有機材料とから生成されたプラズマの再結合により、炭化ケイ素を基材上に堆積させてもよい。シリコンオキシカーバイドはシラン、メタン及び酸素、又はシラン及び酸化プロピレンから生成されたプラズマから堆積されてもよい。シリコンオキシカーバイドはまた、テトラエトキシシラン(TEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)又はオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)などの有機シリコーン前駆体から生成されたプラズマから堆積されてもよい。窒化ケイ素は、シラン及びアンモニアから生成されたプラズマから堆積されてもよい。アルミニウムオキシカルボナイトライドは、酒石酸アルミニウムとアンモニアとの混合物から生成されたプラズマから堆積されてもよい。反応物の他の組み合わせを選択して、所望のコーティング組成物を得ることができる。特定の反応物の選択は、当業者の技能の範疇である。コーティングの傾斜組成は、反応生成物の堆積中に、反応器チャンバ内に供給される反応物の組成を変更してコーティングを形成することにより、又は例えばウェブプロセスにおいて重なり合う堆積ゾーンを使用することにより得ることができる。コーティングは、プラズマ増強化学蒸着(PECVD)、高周波プラズマ増強化学蒸着(RFPECVD)、膨張性熱プラズマ化学蒸着(ETPCVD)、反応性スパッタリングを含むスパッタリング、電子サイクロトロン共鳴プラズマ増強化学蒸着(ECRPECVD)、誘導結合プラズマ増強化学蒸着(ICPECVD)、又はそれらの組み合わせなどの、多数の蒸着技術のうちの1つにより形成されてもよい。コーティング厚さは、典型的には約10nm〜約10000nm、好ましくは約10nm〜約1000nm、より好ましくは約10nm〜約200nmの範囲内にある。バリアフィルムは、垂直軸に沿って測定すると、スペクトルの可視部分にわたって少なくとも約75%(一部の実施形態では、少なくとも約80、85、90、92、95、97又は98%)の平均透過率を有することができる。一部の実施形態では、バリアフィルムは、400nm〜800nmの範囲にわたって少なくとも約75%(一部の実施形態では少なくとも約80、85、90、92、95、97又は98%)の平均透過率を有する。
【0136】
他の好適なバリアフィルムとしては、ポリマーフィルム上に積層された薄く可撓性であるガラス、並びに、ポリマーフィルム上に堆積したガラスが挙げられる。
【0137】
図10を参照すると、代表的な透明な構造化表面フィルム100は、プリズム状外側突起の形状の構造化表面を有する主構造化面を有する構造化フィルム基材102を含む。構造化表面は、それぞれ、90°よりも小さい尖端角度κを有する。フィルム100はまた、そこから構造化表面102が伸びるベース部103も有する。102の構造化面は、加えて、多孔質シリカナノ粒子の層101でコーティングされ、これは焼結することができる。支持裏材103は、例えば、透明な高分子材料であり得る。代表的高分子材料は、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂(PMMA)フィルム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、プライマー処理PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドスキンを有する三層ポリカーボネートフィルム、架橋済みポリウレタンフィルム、アクリレートフィルム、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)フィルム又はUVミラーフィルムのうちの少なくとも1つ又は組み合わせを含んでもよい。光学的に明瞭な接着剤層104は、構造化表面の面102の反対側にあり、オキシドバリアコーティング106でコーティングされた寸法安定性フィルム105に構造化表面フィルムを接着するために使用される。代表的な寸法安定性フィルムは、熱安定性PET及びUVミラーを含む。
【0138】
図11を参照すると、代表的な可撓性光起電モジュール110は、プリズム状外側突起の形状の構造化表面を有する主構造化面を有する構造化フィルム基材112を含む。構造化表面は、それぞれ、90°よりも小さい尖端角度σを有する。フィルム110はまた、そこから構造化表面112が伸びるベース部113も有する。112の構造化面は、加えて、多孔質シリカナノ粒子の層111でコーティングされ、これは焼結することができる。支持裏材113は、例えば、透明な高分子材料であり得る。代表的高分子材料は、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂(PMMA)フィルム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、プライマー処理PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、PMMA/PVDF/UVAブレンドスキンを有する三層ポリカーボネートフィルム、架橋済みポリウレタンフィルム、アクリレートフィルム、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP)フィルム又はUVミラーフィルムのうちの少なくとも1つ又は組み合わせを含んでもよい。光学的に明瞭な接着剤層114は、構造化表面の面112の反対側にあり、オキシドバリアコーティング116でコーティングされた寸法安定性フィルム105に構造化表面フィルムを接着するために使用される。代表的な寸法安定性フィルムは、熱安定性PET及びUVミラーを含む。代表的な構造化表面フィルムは、カプセル材料117を用いてCIGS光起電力電池118に積層される。構造化表面フィルムの反対側は、可撓性光起電モジュールの裏側上の金属箔又はオキシドバリアをコーティングしたフィルムであり得る追加のバリア層119である。
【0139】
本明細書に記載の物品の一部の実施形態は、水分バリア層と組み合わせることができ、ここで、構造化基材は、裏面を更に含み、水分バリア層は構造化基材の裏面に例えば、光学的に明澄な接着剤(例えば、3M Company(St.Paul,MN)から商品名「OCA8172」で入手可能)で結合される。構造化表面反射防止フィルムは、外側の層にUVA(例えば、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY)から商品名「TINUVIN 1577」で入手可能)を添加して改質することができる。UV吸収剤を有する表面構造化反射防止フィルムは、その表面のうちの一つの上にケイ素酸化アルミニウム及びアクリレートポリマーの交互の層でコーティングされた可撓性PETフィルム(例えば、Dupont Teijin Films(Wilmington,DE)から商品名「ST−505」で入手可能)の反対表面に積層することができる。
【0140】
代表的な可撓性太陽電池又は太陽モジュールは、例えば、構造化表面反射防止前側バリアフィルムを用いて、作製することができる。シリカナノ粒子でコーティングされた表面構造反射防止フィルム構成体は、可撓性太陽電池又は可撓性電池ストリングと一緒に積層して、反射性能が向上し、かつ水蒸気透過率が極度に低い(50℃にて0.005g/m
2日未満)可撓性電池/モジュールを作製することができる。追加の誘電層が上面に結合されたアルミホイル第一層は、真空層化器具上に平らに置くことができる。カプセル材料の層は、アルミホイルの表面の頂部にて、特定の温度に加熱すると、融解し、流れだすことから、そのようにして広げることができる。可撓性太陽電池又は可撓性太陽電池ストリングは、カプセル及びアルミホイル層の頂部に広げることができる。カプセルの別の層は、太陽電池/電池ストリングの頂部に広げることができる。最後に、シリカナノ粒子構造化表面反射防止フィルムは、最後のカプセル層の頂部に広がることができる。これらの層はすべて、真空積層装置を閉じ、所定の時間にわたって大気を加熱し、積層装置から大気を出すことにより、可撓性太陽電池又はモジュールの中に積層することができる。得られるものは、可撓性太陽電池又は太陽モジュールである。
【0141】
太陽光起電モジュールは当該技術分野において既知であり、剛性光起電モジュール(例えば、結晶質ケイ素モジュール)の場合、一般に、ガラス前側表面を有する。薄膜技術を利用する可撓性光起電モジュールについては、前側表面基材は、一般に、UV安定ポリマーフィルム(例えば、エチレンテトラフルオロエチレン)である。本明細書に記載の物品の一部の実施形態は、光エネルギー又は太陽熱吸収デバイスにおいて使用することができる。例えば、光エネルギー吸収デバイスは、光エネルギーを受容する面を有する光吸収剤と、光エネルギーの供給源と光エネルギーを受容する面との間にあるように配置された本明細書に記載の物品と、を含むことができ、この間にわたって供給源からの光エネルギーは光吸収剤により吸収される。代表的な光吸収デバイスとしては、電池亀裂又は電池ストリングの電気ショートなどの損傷を受けずに少なくとも1つのロールの中に巻くことができるか又は折り畳むことができる光起電力電池を含む光起電デバイス、並びに、剛性光起電デバイスが挙げられる。代表的な太陽熱加熱デバイスは、第一主表面を有する熱吸収剤と、この熱吸収剤の第一主表面の上に位置する本明細書に記載の物品と、熱吸収剤の内側か又は熱吸収剤の第一主表面と物品の間かのうちの少なくとも一方に位置する液体又はガスと、を含む。太陽熱吸収剤材料は、太陽エネルギーを効率的に吸収するように選択され、多くの場合、熱エネルギーを再放射しないように低い放射率のコーティングを有する。
【0142】
太陽熱モジュールは当該技術分野において既知であり、太陽エネルギーを集めて流体を加熱することにより、熱エネルギーを捕捉する。太陽熱モジュールは、光起電モジュールと、これらが概ね剛性であり、少なくとも1つの表面反射を有するガラス前側表面を有し、汚れを回収する傾向を有する点で、同様である。本明細書に記載の構造化表面反射防止フィルムは、表面反射を特に高い入射光角度で最小化することにより、より多くのエネルギーの捕捉を促進することができる。本明細書に記載の構造化表面反射防止フィルム上のシリカナノ粒子コーティングは、汚れの誘引を最小化することによってより多くのエネルギーを捕捉し、太陽熱吸収剤に入る光の透過合計量を増加させ、それゆえにその効率を改善することができる。
【0143】
一部の実施形態では、シリカナノ粒子コーティングは、野外で作動している光起電モジュール又は太陽熱パネルにおいて、反射防止構造化表面に対して適用することができる。一部の実施形態では、この方法は、野外で作動している光起電モジュール又は太陽熱パネルの前側表面に、シリカナノ粒子をコーティングされた反射防止構造化表面フィルムを適用することを含む。シリカナノ粒子コーティングが、作動中に損耗(例えば、磨耗)に起因して有効性を失ってしまう場合には、野外で構造化表面上にシリカナノ粒子コーティングを適用すれば、例えば、防汚性は元に戻る。
【0144】
本開示における実施形態の物品の更なる詳細は、米国特許仮出願第61/390,524号(10月6日出願、1010)を有する出願において見出すことができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0145】
例示的実施形態
1.反射防止構造化表面と、反射防止構造化表面の上にシリカナノ粒子の多孔質ネットワークを含む焼結コーティングと、を有する透明基材を含む物品であって、シリカナノ粒子が隣接するシリカナノ粒子に結合しており、構造化基材が、支持面と、構造化基材の支持面に結合された水分バリア層と、を更に含む、物品。
【0146】
2.シリカナノ粒子の多孔質ネットワークが三次元ネットワークである、実施形態1の物品。
【0147】
3.焼結コーティングが、透明基材の反射防止構造化表面に対するコンフォーマルコーティングである、実施形態1又は2のいずれかの物品。
【0148】
4.ナノ粒子が二峰性サイズ分布を有する、実施形態1〜3のいずれかの物品。
【0149】
5.ナノ粒子が最大で400ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜4のいずれかの物品。
【0150】
6.ナノ粒子が最大で300ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜5のいずれかの物品。
【0151】
7.ナノ粒子が最大で200ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜6のいずれかの物品。
【0152】
8.ナノ粒子が最大で150ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜7のいずれかの物品。
【0153】
9.ナノ粒子が最大で100ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜8のいずれかの物品。
【0154】
10.ナノ粒子が最大で75ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜9のいずれかの物品。
【0155】
11.ナノ粒子が最大で50ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜10のいずれかの物品。
【0156】
12.ナノ粒子が最大で40ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜11のいずれかの物品。
【0157】
13.ナノ粒子が最大で30ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜12のいずれかの物品。
【0158】
14.ナノ粒子が最大で20ナノメートルの平均粒子直径を有する、実施形態1〜13のいずれかの物品。
【0159】
15.ナノ粒子が二峰性分布を有する、実施形態1〜14のいずれかの物品。
【0160】
16.ナノ粒子の二峰性分布が、2ナノメートル〜15ナノメートルの範囲の第一分布と、20ナノメートル〜500ナノメートルの範囲の第二分布と、を有する、実施形態15の物品。
【0161】
17.ナノ粒子の二峰性分布が、2ナノメートル〜20ナノメートルの範囲の第一分布と、30ナノメートル〜500ナノメートルの範囲の第二分布と、を有する、実施形態15の物品。
【0162】
18.ナノ粒子の二峰性分布が、5ナノメートル〜15ナノメートルの範囲の第一分布と、20ナノメートル〜100ナノメートルの範囲の第二分布と、を有する、実施形態15の物品。
【0163】
19.第一分布のナノ粒子と第二分布のナノ粒子の重量比が1:99〜99:1の範囲である、実施形態16〜18のいずれかの物品。
【0164】
20.第一分布のナノ粒子と第二分布のナノ粒子の重量比が10:90〜90:10の範囲である、実施形態16〜18のいずれかの物品。
【0165】
21.第一分布のナノ粒子と第二分布のナノ粒子の重量比が20:80〜80:20の範囲である、実施形態16〜18のいずれかの物品。
【0166】
22.第一分布のナノ粒子と第二分布のナノ粒子の重量比が30:70〜70:30の範囲である、実施形態16〜18のいずれかの物品。
【0167】
23.構造化表面がマイクロ構造化表面である、実施形態1〜22のいずれかの物品。
【0168】
24.表面構造がプリズムを含む、実施形態1〜23のいずれかの物品。
【0169】
25.プリズムがそれぞれ、15°〜75°の範囲のプリズム尖端角度と、10マイクロメートル〜250マイクロメートルの範囲のピッチを備える、実施形態24の物品。
【0170】
26.プリズムがそれぞれ、15°〜75°の範囲の平均傾斜角度と、10マイクロメートル〜250マイクロメートルの範囲のピッチを備える、実施形態24の物品。
【0171】
27.プリズムが、10マイクロメートル〜250マイクロメートルの範囲の溝から頂部の高さを有する、実施形態24〜26のいずれかの物品。
【0172】
28.表面構造が頂部と谷部と、頂部から谷部までの平均高さと、を有し、ここで、焼結コーティングが平均厚さを有し、焼結コーティングの平均厚さが頂部から谷部までの平均高さの最大で半分である、実施形態1〜27のいずれかの物品。
【0173】
29.表面構造が頂部と谷部と、頂部から谷部までの平均高さと、を有し、ここで、焼結コーティングが平均厚さを有し、焼結コーティングの平均厚さが頂部から谷部までの平均高さの25%未満である、実施形態1〜27のいずれかの物品。
【0174】
30.焼結コーティングが、透明基材の反射防止構造化表面に対するコンフォーマルコーティングである、実施形態1〜29のいずれかの物品。
【0175】
31.焼結コーティングが、表面構造それ自体よりも、広い範囲の入射光角度にわたって高い光透過率を有する、実施形態1〜30のいずれかの物品。
【0176】
32.透明基材がフィルムである、実施形態1〜31のいずれかの物品。
【0177】
33.フィルムが機械方向を有し、表面構造が、透明フィルムの機械方向に平行な直線の溝を有するプリズムを含む、実施形態32の物品。
【0178】
34.透明フィルムの反射防止構造化表面が、光に対して反射防止する構造化面を有し、少なくとも反射防止構造がポリマー材料を含む、実施形態32又は33の物品。
【0179】
35.透明フィルムの反射防止構造化表面が、光に対して反射防止する構造化面を有し、少なくとも反射防止構造が架橋ポリマー材料を含む、実施形態32又は33の物品。
【0180】
36.透明フィルムの反射防止構造化表面が、光に対して反射防止する構造化面を有し、少なくとも反射防止構造が架橋ポリマー材料を含み、構造化表面が、フィルムの残部よりも高い架橋ポリマー密度を有する、実施形態32又は33の物品。
【0181】
37.構造化表面が、上記反射防止構造化フィルムの残部よりも高いポリマー架橋密度を有する、実施形態36の物品。
【0182】
38.構造のそれぞれのコア部分が、構造化表面よりも低いポリマー架橋密度を有する、実施形態36又は37のいずれかの物品。
【0183】
39.フィルムが、構造がそこから伸びるベース部を更に含み、構造のそれぞれのポリマーエラストマー材料のすべては、構造化表面とほぼ同じポリマー架橋密度を有し、ベース部は構造のそれぞれよりも低いポリマー架橋密度を有する、実施形態36〜38のいずれかの物品。
【0184】
40.構造化表面が汚れ付着試験にかけられた後、フィルムが、試験光透過率において8%未満の変化を呈する、実施形態32〜39のいずれかの物品。
【0185】
41.上記構造化表面が落砂試験にかけられた後、フィルムが、試験光透過率において8%未満の変化を呈する、実施形態32〜40のいずれかの物品。
【0186】
42.光吸収デバイスが、損傷を受けずに少なくとも1つのロールの中に巻くことができるか又は折り畳むことができる光起電電池を含む光起電デバイスである、実施形態32〜41のいずれかのデバイス。
【0187】
43.光吸収デバイスがセレン化銅インジウム光起電電池である、実施形態42のデバイス。
【0188】
本開示の範囲及び趣旨から外れることなく、本発明の予測可能な修正及び変更が当業者には自明であろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される各実施形態に限定されるべきものではない。