【実施例】
【0015】
以下の実施例は本発明の特定の態様を証明するために提示されるものであり、本発明の実行可能性は特許請求の範囲に記載された数値の範囲内で十分に実証されている。当業者であれば、実施例において開示された組成と技術は本発明を実施するために十分に機能するものであることが発明者によって見いだされた組成と技術を示していることを理解するべきであるが、しかるに、当業者であれば、本明細書の開示に照らして、開示された特定の態様において多くの変更を行うことができて、それでもなお、本発明の範囲から逸脱することなく、同様の結果または類似する結果が得られることを理解するべきである。
【0016】
比較例1
10cm×10cmの大きさのチタンメッシュのサンプルにコランダムを吹き付け、残った部分に圧縮空気を噴射して洗浄した。次いで、このサンプルについて、超音波浴中でアセトンを用いて約10分にわたって脱脂を行った。乾燥した後、サンプルを250g/lのNaOHと50g/lのKNO
3を含む水溶液の中に約100℃で1時間にわたって浸漬した。このアルカリ処理を行った後、サンプルを脱イオン水の中で60℃で3回すすぎ洗いし、このとき一回毎に水を替えた。最後のすすぎ洗いは、少量のHCl(溶液1リットル当り約1ml)を加えて行った。空気による乾燥を行い、TiO
xの薄膜が成長したことによる褐色の色合いの形成が観察された。次いで、HClで酸性化した水と2-プロパノールの混合物中にRuCl
3・3H
2O、H
2IrCl
6・6H
2O、TiCl
3を含み、金属について36%Ru、20%Ir、44%Tiのモル組成を有する水性アルコール溶液を100ml調製した。
【0017】
溶液を5回の被覆としてはけ塗りすることによって、チタンメッシュのサンプルに塗布し、それぞれの被覆を施した後、100〜110℃で約10分間の乾燥を行い、その後、450℃で15分間の熱処理を行った。後続の被覆を塗布する前に、そのたびにサンプルを空気中で冷却した。
【0018】
全ての手順の最後に、金属についてのRuおよびIrの合計として表して、9g/m
2の貴金属の総含有量が得られた。
【0019】
このようにして得られた電極を、サンプル番号1と定めた。
【0020】
比較例2
10cm×10cmの大きさのチタンメッシュのサンプルにコランダムを吹き付け、残った部分に圧縮空気を噴射して洗浄した。次いで、このサンプルについて、超音波浴中でアセトンを用いて約10分にわたって脱脂を行った。乾燥した後、サンプルを250g/lのNaOHと50g/lのKNO
3を含む水溶液の中に約100℃で1時間にわたって浸漬した。このアルカリ処理を行った後、サンプルを脱イオン水の中で60℃で3回すすぎ洗いし、このとき一回毎に水を替えた。最後のすすぎ洗いは、少量のHCl(溶液1リットル当り約1ml)を加えて行った。空気による乾燥を行い、TiO
xの薄膜が成長したことによる褐色の色合いの形成が観察された。
【0021】
次いで、このメッシュのサンプルを反応性スパッタリング装置の真空チャンバの中に入れた。
【0022】
20%アルゴンとの酸素の混合物を供給して動的真空度が約50
−4ミリバールに達したとき、スパッタリングターゲットを次の出力で分極させた:ルテニウム35W、イリジウム24W、チタン250W。ターゲットと電極基板の間隙は約10センチメートルであった。
【0023】
220分の総継続時間にわたって、チタンのメッシュの両面について交互に同じ条件で堆積の工程を実施した。このようにして得られた電極において、約1ミクロンの触媒被覆が形成され、貴金属の総含有量は、金属についてのRuおよびIrの合計として表して、約9g/m
2であった。
【0024】
このようにして得られた電極を、サンプル番号2と定めた。
【0025】
実施例1
10cm×10cmの大きさのチタンメッシュのサンプルにコランダムを吹き付け、残った部分に圧縮空気を噴射して洗浄した。次いで、このサンプルについて、超音波浴中でアセトンを用いて約10分にわたって脱脂を行った。乾燥した後、サンプルを250g/lのNaOHと50g/lのKNO
3を含む水溶液の中に約100℃で1時間にわたって浸漬した。このアルカリ処理を行った後、サンプルを脱イオン水の中で60℃で3回すすぎ洗いし、このとき一回毎に水を替えた。最後のすすぎ洗いは、少量のHCl(溶液1リットル当り約1ml)を加えて行った。空気による乾燥を行い、TiO
xの薄膜が成長したことによる褐色の色合いの形成が観察された。
【0026】
次いで、HClで酸性化した水と2-プロパノールの混合物中にRuCl
3・3H
2O、H
2IrCl
6・6H
2O、TiCl
3を含む水性アルコール溶液を100ml調製した。この溶液は、金属について36%Ru、20%Ir、44%Tiのモル組成を有する。
【0027】
溶液を5回の被覆としてはけ塗りすることによって、チタンメッシュのサンプルに塗布し、それぞれの被覆を施した後、100〜110℃で約10分間の乾燥を行い、その後、450℃で15分間の熱処理を行った。後続の被覆を塗布する前に、そのたびにサンプルを空気中で冷却した。
【0028】
全ての手順の最後に、金属についてのRuおよびIrの合計として表して、7g/m
2の貴金属の総含有量が得られた。
【0029】
次いで、この半完成品としての電極を反応性スパッタリング装置の真空チャンバの中に入れた。
【0030】
20%アルゴンとの酸素の混合物を供給して動的真空度が約100
−4ミリバールに達したとき、スパッタリングターゲットを次の出力で分極させた:ルテニウム30W、イリジウム35W。ターゲットと電極基板の間隙は約10センチメートルであった。得られる被覆に最適な特性を付与するために、基板に対してさらに約150Vの残りの分極化を行った。
【0031】
40分の総継続時間にわたって、電極の両面について交互に同じ条件で堆積の工程を実施した。このようにして得られた電極は約0.1μmの厚さの外側の触媒被覆を有し、貴金属の総含有量は、金属についてのRuおよびIrの合計として表して、約9g/m
2であった。
【0032】
このようにして得られた電極を、サンプル番号3と定めた。
【0033】
以上の実施例のサンプルを、200g/lの濃度の塩化ナトリウムのブラインを入れた実験室用電解槽の中でpHを3に厳密に制御しながら塩素を発生させるためのアノードとして、特徴づけした。4kA/m
2の電流密度で測定した塩素の過電圧と生成した塩素中の酸素の体積パーセントを、表1に報告する。
【0034】
【表1】
【0035】
同様に、以上の実施例のサンプルについて耐久試験を行った。この耐久試験は、電解液の濃度と温度についての工業上の電解条件の下での独立した電解槽におけるシミュレーションを行うものであるが、ただし、実験上の反応性を促進するために、電流密度を標準の値よりも2〜3倍高い値まで適宜増大させた。
【0036】
単位電流当りに減少した貴金属の量を、表2に報告する。
【0037】
【表2】
【0038】
以上の説明は本発明を限定することを意図しておらず、本発明はその範囲から逸脱することなく様々な態様に従って用いることができ、本発明の範囲は添付する特許請求の範囲によって一義的に確定される。
【0039】
本出願の明細書と特許請求の範囲の全体を通して、「含む」という用語は、他の要素または付加物の存在を排除することを意図していない。
【0040】
文献中の検討事項、法令、資料、デバイス、記事、その他同種類のものは、単に本発明のための背景を提供するという目的のために本明細書に含まれる。これらの事項の何らかのもの、あるいはそれらの全てが先行技術の基礎の部分を形成していたか、あるいは、それらが、本出願の各々の請求項の優先日の前に、本発明に関連する分野において一般的な共通認識になっていた、ということは示唆されないし、表明されてもいない。
[発明の態様]
[1]
電気化学セルにおいて気体状の生成物を発生させるための電極であって、この電極は少なくとも一つの第一の触媒組成物と外側の触媒組成物で被覆されたバルブ金属の支持体からなり、前記少なくとも一つの第一の触媒組成物は、バルブ金属またはスズまたはこれらの酸化物と白金族金属から選択される貴金属またはその単独か混合での酸化物との混合物を含み、前記少なくとも一つの第一の触媒組成物は先駆物質の熱分解によって得られ、前記外側の触媒組成物は化学的または物理的蒸着法によって堆積され、前記少なくとも一つの第一の触媒組成物における貴金属の量は5g/m2よりも多く、そして前記外側の触媒組成物における貴金属の量は0.1〜3.0g/m2の範囲である、前記電極。
[2]
前記少なくとも一つの第一の触媒組成物はチタン、イリジウムおよびルテニウムを含む、[1]に記載の電極。
[3]
前記外側の触媒組成物はルテニウムおよび/またはイリジウムを含む、[1]に記載の電極。
[4]
前記少なくとも一つの第一の触媒組成物における貴金属の比使用量は6〜8g/m2であり、そして前記外側の触媒組成物における貴金属の比使用量は1.5〜2.5g/m2である、[1]から[3]のいずれかに記載の電極。
[5]
前記外側の触媒組成物を化学的または物理的蒸着法によって堆積することを含む、[1]から[4]のいずれかに記載の電極を製造するための方法。
[6]
前記外側の触媒組成物を、白金属の群から選択される貴金属の反応性スパッタリングによって酸化物の混合物として堆積することを含む、[1]から[4]のいずれかに記載の電極を製造するための方法。
[7]
金属の支持体と消耗した触媒被覆からなる消耗した電極を再活性化するための方法であって、前記消耗した触媒被覆の上にイリジウムとルテニウムの反応性スパッタリングによって外側の触媒組成物を酸化物の混合物として堆積することを含む、前記方法。
[8]
白金属の群から選択される貴金属またはその単独か混合での酸化物を含む外側の触媒組成物を化学的または物理的蒸着法によって堆積することを含む、[7]に記載の消耗した電極を再活性化するための方法。
[9]
隔膜またはダイヤフラムによって分離されたカソードを含むカソード区画とアノードを含むアノード区画を有する電解槽であって、前記アノード区画にアルカリ塩化物のブラインが供給され、前記アノード区画の前記アノードは[1]から[4]のいずれかに記載の電極である、前記電解槽。