(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247556
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】圧電振動ユニットおよび圧電スピーカ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20171204BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
H04R17/00
H01L41/09
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-21827(P2014-21827)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-149632(P2015-149632A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修
(72)【発明者】
【氏名】池沢 紀研
【審査官】
北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−078692(JP,A)
【文献】
特開平04−207697(JP,A)
【文献】
特開2007−300426(JP,A)
【文献】
特開2004−248203(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0206490(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
H01L 41/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の第1の導体板と、
前記第1の導体板の長手方向の両端部を支持する支持部と、
前記第1の導体板の少なくとも一方の主面に固定された平板状の圧電素子と、
前記第1の導体板の長手方向に平行な一方の側面の少なくとも一部に形成された第1の連結部と、
前記第1の導体板の長手方向に平行な他方の側面の少なくとも一部に形成された第2の連結部と、
前記第1の連結部と接続する第1の錘と、
前記第2の連結部と接続する第2の錘とを備えることを特徴とする圧電振動ユニット。
【請求項2】
前記第1の連結部と、前記第2の連結部は、前記第1の導体板の長手方向を軸とした線対称に配置していることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動ユニット。
【請求項3】
前記第1の導体板は、前記圧電素子の撓み振動により屈曲し、
前記第1の連結部および第2の連結部は、前記第1の導体板の振幅が最大となる位置に形成していることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動ユニット。
【請求項4】
矩形状の第2の導体板と、矩形状の第3の導体板とをさらに備え、
前記第2の導体板は、前記第1の連結部を介して前記第1の導体板と連結し、
前記第3の導体板は、前記第2の連結部を介して前記第1の導体板と連結し、
前記第1の錘は、前記第2の導体板の少なくとも一方の主面に固定され、
前記第2の錘は、前記第3の導体板の少なくとも一方の主面に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電振動ユニット。
【請求項5】
前記支持部は弾性体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電振動ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の圧電振動ユニットと、被振部とを備え、
前記支持部は前記被振部に固定していることを特徴とする圧電スピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り付けられた振動板や筐体等に振動を伝播させて、スピーカとして機能させるための圧電振動ユニットおよび圧電スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
音響装置などのスピーカとして、圧電振動子を用いて振動を伝達させた圧電スピーカが知られている。例えば、特許文献1には圧電振動板の両端部がベース部に支持された圧電振動発生装置が開示されている。
【0003】
図4は、従来技術による圧電スピーカを説明する断面図である。特許文献1に開示されている圧電振動発生装置である従来の圧電スピーカ30は、弾性板材31の両方の主面に圧電素子32をそれぞれ貼り付けた圧電バイモルフを備えている。また、弾性板材31の長手方向の両端に錘34が接続され、錘34と圧電素子32との間の弾性板材31にそれぞれ支持部33が配置されている。支持部33はベース部35に固定され、圧電素子32の中央部は連結部36を介して振動板37に接続されている。
【0004】
この構成により、従来の圧電スピーカ30は、所定の周波数で圧電素子32を振動させることによって錘34を加振し、錘34の共振振動によって発生する慣性力で連結部36を介して振動板37に振動を伝達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−300426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の構成では、圧電素子32を振動させることで、弾性板材31に振動が伝播し、弾性板材31の長手方向の端部に接続された錘34を加振する。そして、再び錘34から弾性板材31に振動が伝播し、圧電素子32の中央部に配置してある連結部36を介して振動板37に振動が伝達される。
【0007】
そのため、圧電素子の振動と、錘による振動とがお互い干渉し合う構造となっており、振動の対象物である振動板への振動の伝播効率が低下するという課題がある。
【0008】
そこで本発明は、優れた伝播効率を有する圧電振動ユニットおよび圧電スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の圧電振動ユニットは、矩形状の第1の導体板と、前記第1の導体板の長手方向の両端部を支持する支持部と、前記第1の導体板の少なくとも一方の主面に固定された平板状の圧電素子と、前記第1の導体板の長手方向に平行な一方の側面の少なくとも一部に形成された第1の連結部と、前記第1の導体板の長手方向に平行な他方の側面の少なくとも一部に形成された第2の連結部と、前記第1の連結部と接続する第1の錘と、前記第2の連結部と接続する第2の錘とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の圧電振動ユニットは、前記第1の連結部と、前記第2の連結部は、前記第1の導体板の長手方向を軸とした線対称に配置していることが望ましい。
【0011】
また、本発明の圧電振動ユニットの前記第1の導体板は、前記圧電素子の撓み振動により屈曲し、前記第1の連結部および第2の連結部は、前記第1の導体板の振幅が最大となる位置に形成していることが望ましい。
【0012】
また、本発明の圧電振動ユニットは、矩形状の第2の導体板と、矩形状の第3の導体板とをさらに備え、前記第2の導体板は、前記第1の連結部を介して前記第1の導体板と連結し、前記第3の導体板は、前記第2の連結部を介して前記第1の導体板と連結し、前記第1の錘は、前記第2の導体板の少なくとも一方の主面に固定され、前記第2の錘は、前記第3の導体板の少なくとも一方の主面に固定されていることが望ましい。
【0013】
また、本発明の圧電振動ユニットの前記支持部は弾性体であることが望ましい。
【0014】
本発明の圧電スピーカは、前記圧電振動ユニットと、被振部とを備え、前記支持部は前記被振部に固定していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた伝播効率を有する圧電振動ユニットおよび圧電スピーカが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の圧電振動ユニットに係る実施形態の一例を示す上面図である。
【
図2】
図1における圧電振動ユニットを用いた場合の圧電スピーカに係る実施形態の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の圧電振動ユニットに係る実施形態の他の一例であって、
図1におけるA−A線の断面図である。
【
図4】従来技術による圧電スピーカを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の圧電振動ユニットに係る実施形態の一例を示す上面図である。
図1に示すように、本発明の圧電振動ユニット10は、矩形状の第1の導体板1と、支持部2と、平板状の圧電素子3と、第1の連結部4と、第2の連結部5と、第1の錘6と、第2の錘7とを備えている。
【0019】
第1の導体板1の主面に圧電素子3を固定し、第1の導体板1の長手方向の両端部は支持部2によって支持している。さらに、第1の導体板1の長手方向に平行な2つの側面の中央部には、第1の連結部4と第2の連結部5をそれぞれ形成し、第1の連結部4には第1の錘6を接続し、第2の連結部5には第2の錘7が接続している。
【0020】
図2は、
図1における圧電振動ユニットを用いた場合の圧電スピーカに係る実施形態の一例を示す断面図である。この断面図は、
図1におけるB−B線の断面図を含んでいる。つまり、
図1における圧電振動ユニットの支持部2を、
図1では図示していない振動の対象物である被振部11に固定し、圧電スピーカ20を構成している。
【0021】
本実施形態での被振部11は筐体を用いているため、圧電振動ユニット10は筐体の収容空間に収容されている。
【0022】
圧電素子3に駆動電圧が印加されると、圧電素子3が伸縮して撓み、第1の導体板1と共に屈曲振動する力が働く。この屈曲振動の力が第1の連結部4および第2の連結部5を介して第1の錘6および第2の錘7に伝達し、第1の錘6および第2の錘7を振動させようとする。
【0023】
さらに、第1の錘6および第2の錘7の振動の慣性力によって、第1の連結部4および第2の連結部5が形成された第1の導体板1の中央部は固定されているように、振動が阻害される。そのため、第1の導体板1の振動は長手方向の両端部側に力を逃そうと働き、支持部2に固定されている両端部の振動が大きくなる。
【0024】
このような構成とすることで、圧電素子の伸縮によって発生した屈曲振動の力が、支持部において大きい振幅を有する力となるため、支持部が固定された被振部へ振動を効率よく伝達できる。
【0025】
また、第1の錘および第2の錘による振動と、圧電素子の振動とがお互い干渉し合うことはないため、振動の伝送効率が良い。
【0026】
また、従来技術の圧電スピーカでは、圧電素子から弾性板材、錘への接続部分、錘、錘への接続部分、弾性板材、連結部、振動板へと、圧電素子の振動が伝達されていた。しかし、本発明の圧電スピーカは、圧電素子の振動が支持部から直接、被振部へと伝達されるため、優れた振動の伝播効率を有する。
【0027】
また、落下等の外部からの衝撃を受けた際には、自由端である第1の錘および第2の錘に発生する振幅は大きいが、支持部2によって固定された第1の導体板は、第1の連結部および第2の連結部によって振動が緩和され、圧電素子が大きく撓むことはない。そのため、圧電素子への過度な応力を抑制でき、圧電素子の損傷を防止できる。つまり、このような構成とすることで、落下等の外部からの衝撃に対する強度を有する圧電振動ユニットが得られる。
【0028】
これらの効果を得るために、第1の連結部および第2の連結部は、弾性を有しているものから形成する。この弾性とは、すなわち、第1の導体板の小さな振動を第1の錘および第2の錘へ効率的に伝達する程度の弾性と、外部からの衝撃を受けた際に圧電素子が損傷しない程度の弾性を意味する。
【0029】
また、本発明の圧電振動ユニットの構成は、第1の導体板1の長手方向に平行な一方の側面には、第1の連結部4が設けられており、第1の連結部4には第1の錘6が接続されている。さらに、第1の導体板1の長手方向に平行な他方の側面には、第2の連結部5が設けられており、第2の連結部5には第2の錘7が接続されている。第1の導体板1に固定された圧電素子3と、第1の錘6および第2の錘7は、第1の連結部4および第2の連結部5を介して同じ平面上に配置されている。そのため、低背の圧電振動ユニットが得られる。
【0030】
本実施形態においては被振部11に筐体を用い、圧電振動ユニットを筐体の収容空間に収容した構成を用いたが、これに限らない。つまり、本発明の圧電振動ユニットは、支持部が固定された被振部自体を振動させ、被振部自体が振動板となるため、振動させたい対象物を被振部として支持部に固定し、振動が伝達されれば何を用いても構わない。
【0031】
また、本実施形態のように、密閉された筐体を被振部として用い、筐体が優れた防水性を有していれば、外部の水分が筐体内部に入り込むのを防止できるため、優れた防水性を有する圧電スピーカが得られる。
【0032】
また、本実施形態においては、第1の導体板1の一方の主面の中央に、平板状の圧電素子3を固定して圧電ユニモルフを構成しているが、これに限らず、圧電バイモルフの構成であってもよい。つまり、第1の導体板1の両方の主面のそれぞれに圧電素子3を固定しても構わない。
【0033】
支持部2は、シリコーン樹脂等の弾性体とすることが望ましい。支持部2を弾性体とすることで、圧電素子3の駆動時における振動のQ値が下がるため、圧電振動ユニット10内の圧電素子3が共振することを防ぎ、圧電素子3への駆動信号を停止した後に、圧電素子3が停止するまでの応答時間を短縮することができる。
【0034】
圧電素子や錘とからなる振動軸にばらつきが生じると、音質が低下する可能性がある。本発明の圧電振動ユニットは、第1の錘および第2の錘を第1の導体板の長手方向に平行な両方の側面にそれぞれ配置することによって、第1の錘および第2の錘の振動のバランスをとる事が可能となり、安定した振動が得られる。そのため、音質の低下を防止し、低音域においても優れた音圧を得られる。
【0035】
第1の連結部および第2の連結部は、それぞれに接続された第1の錘および第2の錘の振動による振幅が互いに打ち消しあわないよう配置されていれば良いが、第1の錘および第2の錘の振動のバランスがとりやすくなるため、第1の連結部と第2の連結部は、第1の導体板の長手方向を軸とした線対称に配置していることが望ましい。
【0036】
また、第1の導体板の振幅が最大となる箇所に配置するのが望ましく、効率よく第1の錘および第2の錘に振動が伝播する位置に第1の連結部および第2の連結部を配置することが望ましい。
【0037】
また、連結部は、第1の導体板のそれぞれの側面に複数形成されていてもよい。複数の連結部を構成する場合、それぞれの連結部の形成位置は、振動の伝播効率や振動バランスを考慮して適宜決定すればよい。
【0038】
また、第1の連結部4および第2の連結部5は第1の導体板1と同一材質で一体成形されているのが望ましい。
【0039】
図3は、本発明の圧電振動ユニットに係る実施形態の他の一例であって、
図1におけるA−A線の断面図である。
図3の示すように、矩形状の第2の導体板8と第3の導体板9をさらに備え、第1の連結部4と第2の導体板8を接続し、第2の連結部5と第3の導体板9とを接続する。第2の導体板8の主面に第1の錘6を固定し、第3の導体板9の主面に第2の錘7を固定した構成とすることもできる。
【0040】
本実施形態の構成とする場合、第2の導体板および第3の導体板は、第1の導体板と別材質によって形成され、第1の導体板に連結されていても良いが、第1の導体板1と、第2の導体板8と、第3の導体板9と、第1の連結部4と、第2の連結部5とは、同一材質で一体成形されていてもよい。
【0041】
第1の導体板、第2の導体板、第3の導体板、第1の連結部、第2の連結部の材質は、強度や圧電素子との熱膨張係数の差、ヤング率等を考慮して適宜選定すればよい。
【0042】
また、第1の導体板、第2の導体板、第3の導体板、圧電素子の長さや厚みは、強度や振幅の大きさ等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0043】
また、第1の錘と第2の錘の材質や長さ等は、支持部における振幅が大きくなるように設計すればよく、仕様に応じて適宜選定すればよい。 さらに、支持部への振動の伝達効率が向上できるため、質量は重い方が望ましい。
【0044】
以上より、振動の対象物への優れた伝播効率を有する圧電振動ユニットおよび圧電スピーカが得られる。
【0045】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の変更や修正が可能である。すなわち、当業者であれば成し得るであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 第1の導体板
2、33 支持部
3、32 圧電素子
4 第1の連結部
5 第2の連結部
6 第1の錘
7 第2の錘
8 第2の導体板
9 第3の導体板
10 圧電振動ユニット
11 被振部
20、30 圧電スピーカ
31 弾性板材
34 錘
35 ベース部
36 連結部
37 振動板