特許第6247573号(P6247573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247573
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】液圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20171204BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   F15B11/08 C
   F15B11/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-56509(P2014-56509)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178860(P2015-178860A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】堀江 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴彦
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−002606(JP,U)
【文献】 国際公開第2014/017475(WO,A1)
【文献】 実開昭63−091704(JP,U)
【文献】 特開昭56−101405(JP,A)
【文献】 特開昭58−207503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンによって第1室と第2室とに仕切られ、作動液が前記第1室に供給されることで伸び、前記第2室に供給されることで縮むシリンダ装置と、前記作動液を送出するポンプ装置と、を備えた本体部と、
前記作動液を貯めるタンクと、
前記本体部の外部に設けられ、前記本体部と前記タンクとの間で前記作動液の流れを切り替える切替装置と、
前記ポンプ装置と前記シリンダ装置との間で、前記ポンプ装置と前記第1室とを結ぶ第1室側流路と、
前記ポンプ装置と前記シリンダ装置との間で、前記ポンプ装置と前記第2室とを結ぶ第2室側流路と、を有し、
前記切替装置は、前記第2室側流路から分岐し、前記本体部の外部を通過し、前記第2室側流路と前記タンクとを結ぶ第2室排出流路と、前記第2室排出流路上に設けられ、前記第2室から前記作動液を排出するときは前記第2室排出流路を開き前記ポンプ装置から前記第2室に前記作動液を供給するときは前記第2室排出流路を閉じる方向制御弁とを有し、
前記第2室に前記作動液を供給するときは前記第2室側流路を介して前記作動液を前記ポンプ装置から供給し、前記第2室から前記作動液を排出するときは前記第2室排出流路を介して前記作動液を前記タンクに排出し、
前記第1室に前記作動液を供給するときは前記第1室側流路を介して前記作動液を前記ポンプ装置から供給し、前記第1室から前記作動液を排出するときは前記第1室側流路を介して前記作動液を前記ポンプ装置に排出する、液圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記切替装置は、前記第2室側流路に設けられた、前記作動液の流れが前記ポンプ装置から前記第2室に向いた方向でのみ開く逆止弁をさらに備えた請求項に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2室排出流路に、前記方向制御弁と並列に、前記第2室排出流路の圧力に応じて前記第2室から前記タンクに前記作動液を逃がすリリーフ弁を備えた請求項1または2に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記タンクが前記本体部とは別体である請求項1からのうちいずれか1項に記載の液圧アクチュエータ。
【請求項5】
除雪機の走行部が設けられた除雪機の本体部と除雪作業部との間に配置される請求項1からのうちいずれか1項に記載の液圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
除雪機の除雪作業部を昇降させるチルト装置や、船舶に対して船舶推進機を傾けるトリム・チルト装置などの液圧アクチュエータは、オイル等の作動液の給排により伸縮するシリンダ装置と、シリンダ装置に作動液を送出するポンプと、作動液を貯めるタンクとを一体的に備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−97504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば除雪機に用いられる液圧アクチュエータは、本体部と可動する除雪作業部の間に配置されているが、除雪作業を行うときは、本体部に対して除雪作業部の昇降を頻繁に繰り返すため、シリンダ装置の伸縮動作が頻繁に繰り返される。このため、シリンダ装置に作動液を給排するポンプの発熱により作動液の温度が上昇する問題が生じる。
この発熱の問題は、上述した除雪機に用いられる液圧アクチュエータに限って起こり得るものではなく、シリンダ装置を頻繁に伸縮するものであれば、他に用いられる液圧アクチュエータであっても同様に起こり得る。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、シリンダ装置の伸縮に用いられる作動液の温度の上昇を抑制することができる液圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ピストンによって第1室と第2室とに仕切られ、作動液が前記第1室に供給されることで伸び、前記第2室に供給されることで縮むシリンダ装置と、前記作動液を送出するポンプ装置と備えた本体部と、前記作動液を貯めるタンクと、前記本体部の外部に設けられ、前記本体部と前記タンクとの間で前記作動液の流れを切り替える切替装置と、前記ポンプ装置と前記シリンダ装置との間で、前記ポンプ装置と前記第1室とを結ぶ第1室側流路と、前記ポンプ装置と前記シリンダ装置との間で、前記ポンプ装置と前記第2室とを結ぶ第2室側流路と、を有し、前記切替装置は、前記第2室側流路から分岐し、前記本体部の外部を通過し、前記第2室側流路と前記タンクとを結ぶ第2室排出流路と、前記第2室排出流路上に設けられ、前記第2室から前記作動液を排出するときは前記第2室排出流路を開き前記ポンプ装置から前記第2室に前記作動液を供給するときは前記第2室排出流路を閉じる方向制御弁とを有し、前記第2室に前記作動液を供給するときは前記第2室側流路を介して前記作動液を前記ポンプ装置から供給し、前記第2室から前記作動液を排出するときは前記第2室排出流路を介して前記作動液を前記タンクに排出し、前記第1室に前記作動液を供給するときは前記第1室側流路を介して前記作動液を前記ポンプ装置から供給し、前記第1室から前記作動液を排出するときは前記第1室側流路を介して前記作動液を前記ポンプ装置に排出する、液圧アクチュエータである。
の発明の液圧アクチュエータは、前記切替装置は、前記第2室側流路に設けられた、前記作動液の流れが前記ポンプ装置から前記第2室に向いた方向でのみ開く逆止弁をさらに備えてもよい。
この発明の液圧アクチュエータは、前記第2室排出流路に、前記方向制御弁と並列に、前記第2室排出流路の圧力に応じて前記第2室から前記タンクに前記作動液を逃がすリリーフ弁を備えてもよい。
この発明の液圧アクチュエータは、前記タンクが前記本体部とは別体であってもよい。
この発明の液圧アクチュエータは、除雪機の走行部が備えられた除雪機の本体部と除雪作業部との間に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る液圧アクチュエータによれば、シリンダ装置の伸縮に用いられる作動液の温度の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施の形態に係る昇降アクチュエータの外観を示す図である。
図2】シリンダ装置の要部断面図である。
図3】電動モータ及びポンプ装置の配置を示す要部断面図である。
図4】昇降アクチュエータが取り付けられる除雪機を示す図である。
図5】昇降アクチュエータの油圧回路を示す図である。
図6】ワンウェイバルブを本体部の一部とし、方向制御弁を本体部の外部に設けた油圧回路の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る昇降アクチュエータ100(液圧アクチュエータの一例)の外観を示す図である。
【0009】
<昇降アクチュエータ100の概略構成>
(本体部30、外部タンク81、切替装置85)
昇降アクチュエータ100は、図1に示すように、作動液の一例であるオイルによって伸縮するシリンダ装置10を含む本体部30と、オイルを貯め本体部30の外部に設けられた外部タンク81(タンクの一例)と、本体部30の外部に設けられ、本体部30と外部タンク81との間でオイルの流れを切り替える切替装置85とを備えている。
本体部30は、シリンダ装置10と、シリンダ装置10にオイルを送出するポンプ装置21と、ポンプ装置21を収容するハウジング28と、ハウジング28の上方に配置されてハウジング28に収容されたポンプ装置21を駆動する電動モータ40と、ポンプ装置21に供給されるオイルを貯めた内部タンク31とを備えている。
【0010】
(シリンダ装置10)
図2は、シリンダ装置10の要部断面図である。シリンダ装置10は、図2に示すように、図示下部が閉じ、上端が開口して上下方向に延びたシリンダブロック14と、シリンダブロック14の内部に嵌めこまれた円筒状のシリンダ11と、シリンダ11の内部に配置され、シリンダ11の軸方向に沿って摺動するピストン12と、ピストン12を一端に固定してピストン12と一体的に変位し、シリンダ11の軸方向に進退するピストンロッド13と、シリンダブロック14の上端の開口を、ピストンロッド13の進退を可能にしつつ閉じたロッドガイド15とを備えている。
シリンダブロック14は、ハウジング28(図1参照)と一体的に形成されている。
【0011】
シリンダ11の内部は、ピストン12によって内部が第1室Y1と第2室Y2とに区画されていて、第1室Y1にオイルが供給されると、ピストン12及びピストンロッド13が図示上昇してシリンダ装置10は伸びる。一方、伸びた状態から第2室Y2にオイルが供給されるとピストン12及びピストンロッド13が図示下降してシリンダ装置10は縮む。ここで、シリンダ装置10が伸びるときは第2室Y2からオイルが排出され、シリンダ装置10が縮むときは第1室Y1からオイルが排出される。
【0012】
また、シリンダブロック14の下端には、この昇降アクチュエータ100が取り付けられる相手である、後述の除雪機200の走行フレーム212(図4参照)に連結される第1連結部14aが形成されている。一方、ピストンロッド13の上端には、この昇降アクチュエータ100が取り付けられる除雪機200の車体フレーム213に連結される第2連結部13aが形成されている。そして、シリンダ装置10の伸縮により、走行フレーム212と車体フレーム213との間の距離を変化させる。
さらに、シリンダブロック14には、オイルを貯める内部タンク31が併設されている。内部タンク31には、外部タンク81のオイルを内部タンク31に戻す戻り流路76が接続されている。なお、内部タンク31には、オイルを後述するポンプ室24に戻す流路も接続されているが、図1ではその図示を省略している。
【0013】
(ポンプ装置21、電動モータ40)
図3は、電動モータ40及びポンプ装置21の配置を示す要部断面図である。
ポンプ装置21は、図3に示すように、ハウジング28の内部に形成されたポンプ室24の底部に固定されている。
ポンプ装置21は、後述する図5に示すポンプ本体25と切替弁51とを備えている。ポンプ本体25と切替弁51とは、ポンプ装置21として外形状一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0014】
電動モータ40は、外部からの給電を受けるハーネス42(図1参照)を備え、ハーネス42を通じて給電された電力により、出力軸41を回転させる。電動モータ40は、ポンプ室24のポンプ装置21に出力軸41を連結した状態で、ポンプ室24の上部の開口を塞ぐようにハウジング28の図示上部に載せて固定されている。
電動モータ40は、給電される電流の向きに応じて、出力軸41の回転方向が正回転又は逆回転に切り替えられる。したがって、出力軸41が連結されたポンプ装置21の回転方向も、出力軸41の回転方向にしたがって、正回転又は逆回転に切り替えられる。
ポンプ室24は、前述した内部タンク31から、図示を省略した流路を通じてオイルが流入して、オイルで満たされている。
【0015】
(外部タンク81)
外部タンク81は、図1に示すように、除雪機200(図4参照)に固定される取付部81a,81bが形成されている。なお、この実施の形態における外部タンク81は、内部タンク31よりも容量が大きく形成されている。
また、本発明において、外部タンク81は、空冷式又は水冷式等のオイルクーラーであってもよい。
【0016】
(切替装置85)
切替装置85は、図1に示すように、オイルの流れる2つの流路77,78によって本体部30と接続されるとともに、オイルの流れる1つの流路79によって外部タンク81と接続されている。
切替装置85は、シリンダ装置10の第2室Y2にオイルを供給するときは、ポンプ本体25から切替弁51(図5参照)を通じて供給し、第2室Y2からオイルを排出するときは、ポンプ装置21(切替弁51)を通らずに外部タンク81に直接排出するように、オイルの流れを切り替える。この切替装置85によるオイルの流れの切り替えは、後述する除雪機200のオーガハウジング操作レバー250(以下、操作レバー250という。)に対して入力された操作に連動して行われる。
切替装置85を含む昇降アクチュエータ100のオイルの流れ及び圧力を制御する油圧回路については後述する。
【0017】
<昇降アクチュエータ100が取り付けられる除雪機200>
図4は、昇降アクチュエータ100が取り付けられる相手である機械等の一例としての除雪機200を示す図である。
図4に示した除雪機200は、機体211を構成する走行フレーム212と車体フレーム213とを有している。車体フレーム213は、機体211の本体部を構成する走行フレーム212の前部に取り付けられていて、走行フレーム212に対して、図示面内で回転自在に取り付けられている。
【0018】
走行フレーム212には、図示を略したエンジンによって駆動される走行部221が備えられ、機体211は走行部221により、図示左方へ前進し、又は図示右方へ後退する。走行フレーム212には、後上方に延びた操作ハンドル260を備えている。操作ハンドル260の先端部には、使用者が手で握るためのグリップ261が設けられている。
【0019】
また、グリップ261の近くには、後述の除雪作業部230を昇降させる指示を入力する操作レバー250が設けられている。操作レバー250を前方(図示の左方)に倒すと、電動モータ40を正回転させるよう、バッテリからハーネス42を通じて電動モータ40に給電される。これにより、昇降アクチュエータ100が伸びて、オーガハウジング231が上昇する。
一方、操作レバー250を後方(図示の右方)に倒すと、電動モータ40を逆回転させるよう、バッテリからハーネス42を通じて電動モータ40に給電される。これにより、昇降アクチュエータ100が縮んで、上昇していたオーガハウジング231が下降する。
【0020】
車体フレーム213の前部には、除雪作業部230が備えられている。除雪作業部230は、オーガハウジング231内に、雪をかき集めるオーガ232を収容している。また、車体フレーム213には、発電機やバッテリ、昇降アクチュエータ100のハーネス42が接続される電気系等が搭載されているが、図示及び説明は省略する。
除雪機200の車体フレーム213と走行フレーム212との間には、上述した実施の形態の昇降アクチュエータ100の本体部30が配置されている。具体的には、シリンダ装置10の第1連結部14aが走行フレーム212に連結され、第2連結部13aが車体フレーム213に連結されている。
【0021】
そして、昇降アクチュエータ100のシリンダ装置10が伸縮することにより、走行フレーム212に対して車体フレーム213を回転させて、除雪作業部230を昇降させる。
一方、除雪機200における、本体部30よりも高い位置には、外部タンク81が、取付部81a,81bにより固定される。これにより、外部タンク81の内部に貯められたオイルを、自重により、戻り流路76を通じて内部タンク31に戻すことができる。
外部タンク81が固定される部位は、外部環境に暴露されていて降雪を受ける場所である。なお、切替装置85は外部タンク81の近くに取り付けられる。
【0022】
<昇降アクチュエータ100の油圧回路>
(本体部30の油圧回路)
図5は、昇降アクチュエータ100の油圧回路を示す図である。
ポンプ本体25とシリンダ装置10との間には、第1室Y1に通じた第1室側流路71と第2室Y2に通じた第2室側流路72とが形成されている。第1室側流路71及び第2室側流路72には、これら第1室側流路71と第2室側流路72とに跨がるように、切替弁51が配置されている。
【0023】
切替弁51は、ポンプ本体25の回転方向に応じて、オイルの流れの向きを第1室Y1又は第2室Y2に切り替える。切替弁51は、弁室52内を摺動するスプール53と、スプール53の摺動方向の各端部側であって、第1室側流路71上に設けられた第1逆止弁54と、第2室側流路72上に設けられた第2逆止弁55とを備えている。
弁室52は、スプール53によって第1逆止弁54に隣接する第1油室52aと、第2逆止弁55に隣接する第2油室52bとに仕切られている。第1油室52aは、第1室側流路71を通じてポンプ本体25に接続され、第1逆止弁54を介して第1室Y1に接続されている。第2油室52bは、第2室側流路72を通じてポンプ本体25に接続され、第2逆止弁55を介して第2室Y2に接続されている。
【0024】
第1室側流路71のうち、ポンプ本体25から切替弁51までの流路をポンプ側第1室側流路71Bといい、切替弁51からシリンダ装置10の第1室Y1までの流路をシリンダ側第1室側流路71Aという。同様に、第2室側流路72のうち、ポンプ本体25から切替弁51までの流路をポンプ側第2室側流路72Bといい、切替弁51からシリンダ装置10の第2室Y2までの流路をシリンダ側第2室側流路72A(第2室供給流路)という。
ポンプ側第1室側流路71B及びポンプ側第2室側流路72Bには、通常閉じていて、内部タンク31からオイルを吸い上げるときに開くチェックバルブ65,66がそれぞれ設けられている。
【0025】
スプール53には、通常閉じていて、ポンプ側第1室側流路71Bの圧力が予め設定された圧力以上になったときに開き、第1油室52a(ポンプ側第1室側流路71B)のオイルを、第2油室52bに逃がすアップブローバルブ61が設けられている。
シリンダ側第1室側流路71Aには、第1室Y1にオイルを供給するとき(シリンダ装置10を伸ばすとき)は流路面積を絞らずにそのままオイルを流し、第1室Y1から切替弁51にオイルを戻すときは流路面積を絞ってシリンダ装置10の縮む速度を緩和させる制御弁64が設けられている。制御弁64は、図5に示すように逆止弁64aとオリフィス64bとの組み合わせによって構成されている。
【0026】
また、シリンダ側第1室側流路71Aには、通常閉じていて、シリンダ側第1室側流路71Aの圧力が予め設定された圧力(アップブローバルブ61が開放される圧力よりも高い圧力)以上になったときに開き、シリンダ側第1室側流路71Aのオイルを、内部タンク31に逃がすリリーフ弁63が接続されている。
一方、シリンダ側第2室側流路72Aには、通常閉じていて、シリンダ側第2室側流路72Aの圧力が予め設定された圧力以上になったときに開き、シリンダ側第2室側流路72Aのオイルを、内部タンク31に逃がすダウンブローバルブ62が接続されている。
なお、アップブローバルブ61を含む切替弁51はポンプ本体25と一体的に構成されているが、ダウンブローバルブ62、リリーフ弁63及びチェックバルブ65,66は、ポンプ本体25と一体であってもよいし、ハウジング28に設けられていてもよい。
【0027】
(切替装置85の油圧回路)
シリンダ側第2室側流路72Aには、切替装置85が接続されている。本体部30と切替装置85とを接続する2つの流路77,78は、図5に示すようにシリンダ側第2室側流路72Aの一部を構成している。
切替装置85は、ワンウェイバルブ82(逆止弁)、方向制御弁83及び第2室排出流路リリーフ弁84を備えている。ワンウェイバルブ82は、シリンダ側第2室側流路72A上に設けられていて、オイルが切替弁51からシリンダ装置10の第2室Y2に向かう方向で開き、オイルが第2室Y2から切替弁51に向かう方向では閉じる。
【0028】
切替装置85には、シリンダ側第2室側流路72Aのうち、ワンウェイバルブ82と第2室Y2との間の部分から、外部タンク81に通じる流路79に接続される第2室排出流路73が備えられている。そして、方向制御弁83は、第2室排出流路73上に設けられていて、除雪機200の操作レバー250に入力された操作に対応して、すなわち電動モータ40の回転方向の切り替えに対応して、第2室排出流路73の開閉を切り替える。
具体的には、操作レバー250を前方に倒して電動モータ40を正回転させると、ポンプ本体25から第1室側流路71にオイルが送出されるとともに、方向制御弁83は開く。一方、操作レバー250を後方に倒して電動モータ40を逆回転させると、ポンプ本体25から第2室側流路72にオイルが送出されるとともに、方向制御弁83は閉じる。
第2室排出流路リリーフ弁84は、第2室排出流路73に、方向制御弁83と並列に設けられていて、第2室排出流路73の圧力に応じて第2室Y2から流路79を通じて外部タンク81にオイルを逃がす。
【0029】
(油圧回路の動作)
次に、昇降アクチュエータ100の油圧回路の動作について説明する。操作レバー250を前方に倒して電動モータ40を正回転することでポンプ本体25が正回転し、オイルがポンプ側第1室側流路71Bに送出される。このとき、方向制御弁83は開いている。
ポンプ側第1室側流路71Bに送出されたオイルは第1油室52aに流入する。第1油室52aのオイルは、スプール53を第2油室52bの側に押すとともに、第1油室52aに隣接する第1逆止弁54を開かせる。これにより、ポンプ側第1室側流路71Bとシリンダ側第1室側流路71Aとが通じ、第1油室52aのオイルは、シリンダ側第1室側流路71Aを通ってシリンダ装置10の第1室Y1に供給される。
【0030】
このとき、第2室Y2のオイルは、シリンダ側第2室側流路72Aに排出され、本体部30の外部となる流路77を通って切替装置85に到達する。切替装置85のワンウェイバルブ82は閉じているため、オイルは、方向制御弁83によって開かれている第2室排出流路73に流れ、流路79を通って外部タンク81に排出される。このとき、方向制御弁83が閉じられたままとなった場合は、第2室排出流路リリーフ弁84が開いて、第2室排出流路73のオイルを外部タンク81に逃がす。
外部タンク81は、図4に示したように、本体部30より高い位置に配置されているため、外部タンク81に排出されたオイルは、自重により、戻り流路76(図1参照)を通じて本体部30の内部タンク31に戻される。
第1室Y1にオイルが供給され、第2室Y2からオイルが排出されることにより、シリンダ装置10は伸び、除雪作業部230は上昇する。
【0031】
一方、操作レバー250を後方に倒して電動モータ40を逆回転することでポンプ本体25が逆回転し、オイルがポンプ側第2室側流路72Bに送出される。このとき、方向制御弁83は閉じている。
ポンプ側第2室側流路72Bに送出されたオイルは第2油室52bに流入する。第2油室52bのオイルは、スプール53を第1油室52aの側に押すとともに、第2油室52bに隣接する第2逆止弁55を開かせる。このとき、第1油室52aの側に押されたスプール53は第1逆止弁54を押して開かせ、これにより、ポンプ側第1室側流路71Bとシリンダ側第1室側流路71Aとが通じる。
【0032】
また、第2逆止弁55が開いたことで、ポンプ側第2室側流路72Bとシリンダ側第2室側流路72Aとが通じ、第2油室52bのオイルは、シリンダ側第2室側流路72Aに流れ、本体部30の外部である流路78を通ってワンウェイバルブ82に達し、ワンウェイバルブ82を開く。ここで、方向制御弁83によって第2室排出流路73が閉じられているため、ワンウェイバルブ82を通過したオイルは、流路77を通って本体部30に戻り、第2室Y2に供給される。
このとき、第1室Y1のオイルは、シリンダ側第1室側流路71Aに排出され、シリンダ側第1室側流路71A上のオリフィス64bを通って、切替弁51の第1油室52aに達し、ポンプ側第1室側流路71Bを通過してポンプ本体25に戻される。
第2室Y2にオイルが供給され、第1室Y1からオイルが排出されることにより、シリンダ装置10は縮み、除雪作業部230は下降する。
【0033】
<昇降アクチュエータ100の効果>
以上のように構成された昇降アクチュエータ100によれば、第2室Y2にオイルを供給するときは、ポンプ本体25から切替弁51を通って第2室Y2に供給される。一方、第2室Y2からオイルを排出するときは、第2室Y2からシリンダ側第2室側流路72Aに排出されたオイルが切替弁51を通らない第2室排出流路73を通って外部タンク81に直接排出される。
つまり、この昇降アクチュエータ100は、第2室Y2から切替弁51を通ってポンプ本体25に戻される従来の液圧アクチュエータに比べて、第2室Y2から排出されたオイルが、切替弁51(ポンプ装置21)の熱に晒されることがない。これにより、油圧回路を流通するオイルの温度の上昇を抑制することができる。したがって、この昇降アクチュエータ100は、本体部30の内部タンク31の容量を大きくしたり、専用の冷却装置を用いることなく、油圧回路のオイルの温度上昇を抑制することができる。
【0034】
本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、第2室Y2から排出されたオイルがポンプ本体25に戻るまでの流路が、従来の液圧アクチュエータよりも長く形成されているため、オイルと外部媒体(空気等)との間での熱交換の機会が増え、これによりオイルの温度を低くすることができる。
オイルの温度が低くなることで、オイルに浸漬されるポンプの温度の上昇を抑えることもできる。
【0035】
また、本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、除雪作業部230の重量がシリンダ装置10を縮める方向に常に作用しているため、シリンダ装置10が縮むときに第1室Y1から排出されるオイルの圧力よりも、シリンダ装置10が伸びるときに第2室Y2から排出されるオイルの圧力は低い。
一般に、シリンダ装置10から排出されるオイルを流す流路を本体部30の外部に設ける場合、流路に作用する圧力が低くなるにしたがって、オイル漏れ対策(耐圧性)や流路の剛性等を設定するときのコストを下げることができる。
本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、本体部30の外部に設けられたオイルの排出流路が、第1室Y1から排出されるオイルの流路よりも圧力の低い第2室Y2から排出されるオイルの流路(流路77、第2室排出流路73)であるため、オイル漏れ対策や流路の剛性等の設定に要するコストを相対的に低くすることができる。
【0036】
さらに、本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、外部タンク81が本体部30とは別体に形成されているため、本体部30の設置位置に拘わらず、外部タンク81の設置位置の自由度が高い。したがって、外部タンク81は、内部のオイルを冷却するのに有利な場所に設置することが可能であり、本実施の形態における外部タンク81のように、雪に直接接触し得る外部環境に暴露された場所に設置されることで、内部のオイルを効果的に冷却することができる。この観点においても、本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、除雪機200に用いられたときの適性が高い。
【0037】
また、本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、ポンプ装置21から第2室Y2にオイルを供給する向きでオイルが通過するシリンダ側第2室側流路72Aの一部(流路77,78)が、本体部30の外部に設けられているため、第2室Y2にオイルを供給するときも、オイルを冷却することができる。
【0038】
本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、除雪機200の除雪作業部230を昇降させる液圧アクチュエータとして用いられているが、除雪機200は除雪作業部230の昇降を連続して行うことにより、一般に、液圧アクチュエータのオイルの温度が上昇しやすい。本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、上述したように、オイルの温度の上昇が抑えられているため、このようにオイルの温度が上昇し易い除雪機200に用いられたときの適性が高い。
【0039】
<変形例1>
本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、本体部30に内部タンク31を備えたものであるが、本発明は内部タンク31を備えなくてもよい。この場合、内部タンク31に接続されていた外部タンク81等は、内部タンク31に接続するのに代えてポンプ室24に接続した構成とすればよい。本体部30が内部タンク31を備えない昇降アクチュエータ100によれば、本体部30を小型化することができる。
【0040】
<変形例2>
本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、内部タンク31を備えない構成とした場合、外部タンク81を本体部30と一体的に構成してもよい。上述した実施の形態の昇降アクチュエータ100において内部タンク31を外部タンク81に置き換えた変形例2の場合であっても、第2室Y2からシリンダ側第2室側流路72Aに排出されたオイルは、切替装置85によって、切替弁51を通らずに外部タンク81に排出される。
したがって、従来の液圧アクチュータにおける内部タンクを外部タンクに単に置き換えたものとは異なり、油圧回路のオイルの温度上昇を抑制するという本発明の効果を発揮することができる。なお、本体部30と一体の内部タンク31を外部タンク81に置き換える構成を採用する場合は、その外部タンク81を内部タンク31と同等の大きさにして、本体部30が大きくならないようにするのが好ましい。
【0041】
<変形例3>
本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、切替装置85を、外部タンク81と一体化してもよいし、本体部30と一体化してもよい。
【0042】
<変形例4>
また、本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、切替装置85が、ワンウェイバルブ82と方向制御弁83と第2室排出流路リリーフ弁84とを一体に形成しない構成としてもよい。
図6は、ワンウェイバルブ82を本体部30と一体化し、方向制御弁83及び第2室排出流路リリーフ弁84を本体部30の外部に設けた油圧回路を示す図である。図6に示すように、切替装置85のうちワンウェイバルブ82を方向制御弁83及び第2室排出流路リリーフ弁84と別体に構成した実施の形態の昇降アクチュエータ100であっても、油圧回路のオイルの温度上昇を抑制するという本発明の効果を発揮することができる。
【0043】
<変形例5>
本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、切替装置85が第2室排出流路リリーフ弁84を備えない構成であってもよい。
【0044】
<変形例6>
また、本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、切替装置85がワンウェイバルブ82と方向制御弁83とを組み合わせた構成に限定されるものではなく、第2室Y2にオイルを供給するときはポンプ装置21(ポンプ本体25及び切替弁51)から供給し、第2室Y2からオイルを排出するときはポンプ装置21(ポンプ本体25及び切替弁51)を通さずにオイルを外部タンク81に直接排出するように、オイルの流れを切り替える機能を発揮するものであればよい。
【0045】
<変形例7>
本実施の形態の昇降アクチュエータ100は、昇降に用いられる液圧アクチュエータであるが、本発明の液圧アクチュエータは昇降用に限定されるものではなく、除雪機の除雪作業部を左右に傾ける傾動アクチュエータをはじめとして、種々の液圧アクチュエータに適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…シリンダ装置、12…ピストン、21…ポンプ装置、25…ポンプ本体、51…切替弁、81…外部タンク(タンク)、85…切替装置、100…昇降アクチュエータ(液圧アクチュエータ)、Y1…第1室、Y2…第2室
図1
図2
図3
図4
図5
図6