【実施例1】
【0011】
<分析>
図12に示した従来の光コネクタ800では、係止突起825がアダプタの係合部まで挿入されなければならない。また、接続状態は、2本の指の先で後端822とスリーブ810とをつまむことで解除される。よって、接続状態でも、ラッチ片820の後端822はアダプタの外に位置している必要があり、指先でつまむ力程度で係止突起825を押し下げることができなければならない。このようなラッチ片の考え方は、電話線やLAN用のコネクタも同じである。特許文献1の場合は、ラッチ片820の構造は維持しているので、接続状態でもラッチ片820の後端822はアダプタの外に位置している。したがって、係止突起825よりも挿入方向後方に配置されたラッチ片820を押圧する機構で、係止突起825よりも挿入方向後方に位置し、接続状態でもアダプタの外に位置するラッチ片820の後端822を押圧すればよい。そこで、特許文献1のラッチ片を押圧する機構は、ラッチ片(
図13の番号14)の後端に被せるように配置したクリップ片(
図13の番号15)でラッチ片を押える機構となっている。
【0012】
多くの伝送装置などに使用されているアダプタの構造は変更できないことを前提とすると、係止突起の位置は変更できない。その前提で後端を係止突起の位置にする(係止突起よりも後端側を切除する)と、ラッチ片を押圧するための機構には、後端に位置するがアダプタ内に挿入しなければならない係止突起を露出させ、光コネクタのアダプタへの挿入の妨げとならず、接続状態のときにアダプタ内部に隠れてしまうラッチ片を押圧できることが求められる。特許文献1に示された機構は、これらの条件を満たさないので利用できない。また、ラッチ片を押圧する力の力点は、ラッチ片の前端(固定端であり支点に相当する)に近づかざるを得ないので、従来の後端822を押す力よりも強い力を加える必要がある。
【0013】
ところで、
図13に示したようなコネクタ内蔵プラグの場合、屋外の伝送設備との接続に用いられる。そして、コネクタよりも挿入方向後方側に配置された部材を手で握って、腕で引っ張る。つまり、指先でつまむよりも大きな力を容易に加えることができる。したがって、1つの動作でアダプタから取り外すことができるコネクタのように、力を加えやすいコネクタの場合には、係止突起が後端となるようにラッチ片を短くしても、力の問題は解決できる。本発明では、この点に着目し、ラッチ片の構造とラッチ片を押圧する力の伝え方を変更することで、1つの動作で取り外すことができ、コネクタ内蔵プラグの細径化に適したコネクタを実現している。
【0014】
<具体的な構造>
図1は光コネクタ100とアダプタ910を有するモジュール900を示す斜視図、
図2は光コネクタ100の外観を示す斜視図、
図3は光コネクタ100のスリーブ110とラッチ片120の外観を示す斜視図、
図4は光コネクタ100の押圧突起部160と連結部165の外観を示す斜視図、
図5は光コネクタ100の外観を示す平面図、
図6は光コネクタ100とモジュール900を示す平面図である。
図7は光コネクタ100の
図5のA−A線での断面図、
図8は光コネクタ100がアダプタ910と接続状態のときの
図6のB−B線での断面図、
図9はラッチ片120と押圧部920との関係を説明するための図である。
【0015】
モジュール900は伝送装置などに備えられる構成部品であり、例えば、
図1に示すように基板950上に配置され、アダプタ910を備える。アダプタ910は、押圧部920と係合部930を有する。
図1,6,8などに示しているアダプタは、IEC61754−20に規格化されたアダプタであるが、これに限定する必要はない。光コネクタ100は、スリーブ110、フェルール115、フェルール把持部116、フェルール付勢部112、ラッチ片120、ストッパ113、スライダ150、押圧突起部160、スライダ付勢部170を備える。スリーブ110内には光ファイバを収納するフェルール115とフェルール115を把持するためのフェルール把持部116が配置されている。
【0016】
ラッチ片120は、スリーブ110の一面である面111に形成され、アダプタ910への挿入方向前端121が固定端とされ、後端123が遊端とされ、後端123に幅方向両側に突出する係止突起125を有し、後端123から前端121に向かって形成された切欠き127を有する。
【0017】
ストッパ113は、スリーブ110の挿入方向後方に配置され、スリーブ110と連結固定されている。また、ストッパ113とフェルール把持部116との間にフェルール付勢部112が配置され、フェルール付勢部112によってフェルール115は、挿入方向後方に変位可能であり、かつ、挿入方向前方に押された状態となっている。より具体的には、光コネクタ100がアダプタ910に接続されていない状態では、フェルール115は変位可能な範囲の最も挿入方向側に位置している(
図7はフェルール115が最も挿入方向側に位置した状態の断面図である。)。光コネクタ100がアダプタ910と接続された状態のときには、
図8に示すように、フェルール115はモジュール900内の光学的基準面に突き当たるので、フェルールバック量分だけ挿入方向後方に移動した状態となる。これによってフェルール115とモジュール900との間に押し合う力が生まれるとともに、係止突起125と押圧部920との間にも押し合う力が生まれる。また、
図9に示すように、押圧位置122が面111の方向に押されるとラッチ片120は面111側に倒れるが、その際、倒れ込み変位分だけスリーブ110は挿入方向へ移動する。よって、接続状態のときに生じている係止突起125と押圧部920との間の押し合う力は強くなる。このように、ラッチ片120を倒す方向はフェルール付勢部112によって生じる力を大きくする方向なので、光コネクタ100とアダプタ910との接続状態は簡単には解除できなくなっている。なお、フェルール付勢部112は、
図2に示すようにコイルバネとすればよい。
【0018】
スライダ150は、ストッパ113に対して挿入方向後方に所定量変位可能なように、スリーブ110の挿入方向後方に配置されている。後述するが、スライダ150を挿入方向後方に移動させると、押圧突起部160がラッチ片120を押す。そこで、上記の「所定量」は、係止突起125を押圧部920から外すために必要なスライダ150の変位量以上に設定すればよい。押圧突起部160は、ラッチ片120の切欠き127がある位置の面111の逆側(ラッチ片120の挿入方向側)に配置され、切欠き127を貫通する連結部165を介してスライダ150に連結固定されている。スライダ付勢部170は、ストッパ113に対してスライダ150を挿入方向へ押す。押圧突起部160が最も挿入方向側に位置している状態では、押圧突起部160はラッチ片120に押圧する力を付加していない。なお、スライダ付勢部170は、
図7に示すようにコイルバネとすればよいが、これに限定しなくてもよい。
【0019】
スライダ150を、ストッパ113に対して挿入方向後方に移動させると、押圧突起部160も挿入方向後方に移動し、ラッチ片120の押圧位置122を面111の方向に押す力が生じる。そして、この力が十分な大きさであれば、係止突起125とアダプタ910との係合が解除される。なお、
図9に示した前端121が支点、押圧位置122が力点、後端123が作用点に相当するので、従来のようにラッチ片が長かったときよりも大きい力で押圧位置122を押す必要がある。しかし、スライダ150であれば、指先でつまむのではなく指全体で持つことができるので、人にとって力を加えやすい。また、
図2よりもスライダ150を大きくする、または、特許文献1のように光コネクタ100をプラグ内に内蔵させ、プラグを握って引っ張るようにすれば、さらに力を加えやすい。具体的なスライダ150の大きさや形状は、必要な力と人にとっての力の出しやすさを考慮して適宜定めればよい。また、連結部165には、押圧突起部160が押圧する力に応じて面111から離れる方向に力が加わる。したがって、
図4に示すように、連結部165は、面111に平行で挿入方向に垂直な方向である幅方向よりも面111に垂直な方向である高さ方向の方を長くすればよい。
【0020】
図10に、光コネクタ100とアダプタ910を接続するときの様子を示す。この図のモジュール900は、
図6のB−B線での断面図である。
図10(A)〜(E)のように光コネクタ100をアダプタ910に挿入することで接続される。光コネクタ100をアダプタ910に近づけていくと、ラッチ片120はアダプタ910に設けられている押圧部920によって押圧されることにより押し下げられた状態となる(
図10(B)、(C),(D))。そして、係止突起125が押圧部920を通過することにより元の状態に復帰して係止突起125が押圧部920の奥側に形成されている係合部930に位置することによってアダプタ910に係止される(
図10(E))。
【0021】
図11に、光コネクタ100をアダプタ910から取り外すときの様子を示す。この図のモジュール900も、
図6のB−B線での断面図である。スライダ150を引っ張ることで、
図11(A)〜(C)、
図10(C)〜(A)の順番になるように、光コネクタ100はアダプタ910から取り外される。スライダ150をスライダ付勢部170の押す力に抗して挿入方向後方に変位させると、押圧突起部160によってラッチ片120が押し下げられる(
図11(A),(B))。そして、さらにスライダ150を変位させると、係止突起125とアダプタ910との係止が解除される(
図11(C))。係止が解除されると、スライダ付勢部170の力によって、ストッパ113とスリーブ110が挿入方向後方に変位し、
図10(C)に示した状態となる。さらに、スライダ150を挿入方向後方に変位させることで、光コネクタ100をアダプタ910から完全に取り外すことができる。
【0022】
光コネクタ100によれば、ラッチ片120は切欠き127を有し、切欠き127を貫通する連結部165によってラッチ片120の挿入方向前方(面111の逆側)に配置される押圧突起部160と挿入方向後方に配置されたスライダ150とが連結固定されている。よって、ラッチ片120を押圧するための機構(押圧突起部160,連結部165,スライダ150)から係止突起125は露出しており、ラッチ片120を押圧するための機構は光コネクタ100のアダプタ910への挿入の妨げとならない。そして、接続状態のときにアダプタ910内部に隠れてしまうラッチ片120を、スライダ150を挿入方向後方に変位させることで押し下げることができ、そのまま挿入方向後方に変位させ続ければ光コネクタ100を取り外すことができる。また、ラッチ片120は、後端123に係止突起125を有し、かつ切欠き127を有するので、係止突起125の位置よりも面111から離れた位置に配置しなければならない構成部がない。したがって、1つの動作で取り外すことができ、かつ、細径化に適したコネクタを提供できる。
【0023】
[変形例1]
実施例1では光コネクタを前提に説明したが、電話線やLAN用のコネクタのような電気用のコネクタのいくつかも、同様のラッチ片を備えている。そして、光コネクタ100のフェルール115を電気用に変更し、コネクタ全体の形状(寸法のバランスなど)を適宜変更すれば、電気用のコネクタも同様に実現でき、同様の効果が得られる。
【0024】
[変形例2]
実施例1では光コネクタ、変形例1では電気用のコネクタについて示したが、これらのコネクタを内蔵するコネクタ内蔵プラグを構成してもよい。この場合、
図2に示した光コネクタ100をプラグ内に配置し、プラグの外側を引っ張ればスライダも引っ張られる構造とすればよい。もしくは、プラグの外側の人が握る部分も含めてスライダとしてもよい。また、プラグは防水特性、防塵特性などを備えればよい。