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特許6247582建物の外壁構造及びこの外壁構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247582
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】建物の外壁構造及びこの外壁構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/66 20060101AFI20171204BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   E04B1/66 A
   E04B1/68 Z
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-68691(P2014-68691)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190211(P2015-190211A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】木和田 康聖
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−051547(JP,A)
【文献】 特開2014−047567(JP,A)
【文献】 特開2000−104355(JP,A)
【文献】 特開2010−255269(JP,A)
【文献】 特開2005−226371(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0055890(US,A1)
【文献】 特開平07−062831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/66、1/68
E04B 2/56−2/70
2/88−2/96
E04F 13/02−13/26
E04F 17/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁面材が複数設けられた外壁部を備え、
横並びに隣り合う前記外壁面材の間には、上下方向に延びた縦目地が形成された建物の外壁構造であって、
前記縦目地を跨いで前記隣り合う外壁面材に掛け渡された止水シートが、これら外壁面材から下方にはみ出した状態で、各外壁面材の屋内側面のそれぞれに対して固定されており、
前記止水シートにおいては、前記下方にはみ出したはみ出し部が、前記外壁面材から下方に離間した位置に設けられた支持部材の屋外側面に張り付けられることで該支持部材により支持されており、
前記はみ出し部には、屋外側に延出した状態で余っている余剰部分が前記縦目地の下方位置に形成されており、
前記止水シートの屋外側面に張り付けられていることで前記余剰部分の下端部を覆っている覆いシートが、少なくとも前記余剰部分の下方位置において前記支持部材の屋外側面にも張り付けられていることを特徴とする建物の外壁構造。
【請求項2】
前記覆いシートは、屋外側に向けて膨らんだ膨出部を有しており、該膨出部の内部に前記余剰部分を収納する位置に配置されており、
前記膨出部は、前記余剰部分の下端部を覆う底面を有していることを特徴とする請求項1に記載の建物の外壁構造。
【請求項3】
前記膨出部の内周面には、前記余剰部分の屋外側面が張り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の建物の外壁構造。
【請求項4】
前記覆いシートは、
前記膨出部を含んで当該覆いシートの屋内側面を形成している内側シート材と、
前記膨出部の周囲において前記内側シート材の屋外側面に張り付けられ、該内側シート材の変形を規制する外側シート材と、
を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の建物の外壁構造。
【請求項5】
前記止水シートの前記はみ出し部には、上方に向けて凹んだ凹部が前記余剰部分の下方位置に設けられており、
前記覆いシートは、前記余剰部分の下端部に加えて前記凹部を屋外側から覆う位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物の外壁構造。
【請求項6】
前記覆いシートの下端部は、前記はみ出し部の下端部と同じ高さ位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の建物の外壁構造。
【請求項7】
前記止水シートは、前記隣り合う外壁面材のそれぞれに対して設けられた外壁シート材が互いに接続されることで形成されており、これら外壁シート材の接続部分が前記余剰部分に含まれていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の建物の外壁構造。
【請求項8】
上階部と下階部とが上下に隣り合っている建物に適用され、
前記外壁面材は、前記外壁部において前記上階部の外壁面を形成する上階外壁面材であり、
前記支持部材は、前記外壁部において前記下階部の外壁面を形成する下階外壁面材であり、
前記上階部と前記下階部との境界部には、前記上階外壁面材と前記下階外壁面材との間の離間部分、前記はみ出し部及び前記覆いシートを屋外側から覆い隠す胴差が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の建物の外壁構造。
【請求項9】
外壁面材が複数設けられた外壁部を備え、
横並びに隣り合う前記外壁面材の間には、上下方向に延びた縦目地が形成された建物の外壁構造に適用され、
前記隣り合う外壁面材のそれぞれに対して設けられた外壁シート材を、前記外壁面材から前記縦目地側にはみ出した部分で互いに接続することで、前記縦目地を跨いで前記隣り合う外壁面材に掛け渡された止水シートを形成する工程と、
前記止水シートにおいて前記外壁面材から下方にはみ出したはみ出し部を、前記外壁面材から下方に離間した位置に設けられた支持部材の屋外側面に張り付ける工程と、
前記止水シートにおいて前記外壁シート材の接続部分を前記縦目地から屋内側に押し込み、且つ前記縦目地の下方位置において前記外壁シート材の接続部分を屋外側に延出させることで、前記はみ出し部に余剰部分を形成する工程と、
前記余剰部分の下端部を覆う覆いシートを、前記止水シートの前記はみ出し部と、前記余剰部分の下方位置における前記支持部材の屋外側面とに張り付ける工程と、
を備えている外壁構造の製造方法。
【請求項10】
前記外壁シート材の接続部分の下端部を切り取ることで、前記はみ出し部において上方に向けて凹んだ凹部を前記余剰部分の下方位置に形成する工程と、
前記覆いシートを、前記余剰部分の下端部に加えて前記凹部を屋外側から覆う位置に配置する工程と、
を備えている請求項9に記載の外壁構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁構造及びこの外壁構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、外壁部において、外壁面材の屋内側面に沿って延びた状態で防水シートが設けられていることがある。例えば、隣り合う外壁面材の各屋内側面のそれぞれに重ねられた防水シートが互いに接続されており、その接続部分が外壁面材の間の目地に入り込んだ状態になっている(例えば特許文献1参照)。この構成では、各防水シートが目地から屋外側に引き出されて互いに重ね合わされた状態で接続され、その重ね合わされた部分が巻かれた状態で目地の奥方に詰め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−253775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、防水シートが外壁面材よりも下方にはみ出した状態で設けられ、そのはみ出した部分が、外壁面材から下方に離間した位置に設けられた支持部材の屋外側面に張り付けられていることがある。
【0005】
例えば、二階建ての建物において、二階部分の防水シートが外壁面材より下方にはみ出した状態で、一階部分の外壁面材の屋外側面に張り付けられている場合、二階部分において雨水等の水が目地内や外壁面材の屋内側に浸入したとしても、その水が防水シートに沿って流れることで一階部分の外壁面材の屋外側に案内されるため、一階部分において外壁面材の屋内側への水の浸入を抑制できる。
【0006】
しかしながら、二階部分において、防水シートが巻かれた状態で目地に詰め込まれていると、防水シートにおいて巻かれた部分も、外壁面材から下方にはみ出た状態で一階部分の外壁面材の屋外側面に重ねられることになる。このため、巻かれた部分においては、防水シートと一階部分の外壁面材との間に隙間が生じやすく、外壁部に沿って吹き上げる風により雨水等の水が舞い上がった場合などには、水が隙間を通じて防水シートの屋内側に侵入することが懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外壁部の防水性を縦目地の下方位置において好適に確保することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0009】
第1の発明の建物の外壁構造は、外壁面材(二階外壁面材32)が複数設けられた外壁部(外壁部17)を備え、横並びに隣り合う前記外壁面材の間には、上下方向に延びた縦目地(二階縦目地36)が形成された建物(建物10)の外壁構造であって、前記縦目地を跨いで前記隣り合う外壁面材に掛け渡された止水シート(止水シート54)が、これら外壁面材から下方にはみ出した状態で、各外壁面材の屋内側面のそれぞれに対して固定されており、前記止水シートにおいては、前記下方にはみ出したはみ出し部(はみ出し部55)が、前記外壁面材から下方に離間した位置に設けられた支持部材(一階外壁面材31)の屋外側面に張り付けられることで該支持部材により支持されており、前記はみ出し部には、屋外側に延出した状態で余っている余剰部分(余剰部分59)が前記縦目地の下方位置に形成されており、前記止水シートの屋外側面に張り付けられていることで前記余剰部分の下端部を覆っている覆いシート(覆いシート61)が、少なくとも前記余剰部分の下方位置において前記支持部材の屋外側面にも張り付けられていることを特徴とする。
【0010】
第1の発明によれば、余剰部分の下端部が覆いシートにより屋外側から覆われているため、余剰部分に皺や重なりに伴う隙間が形成されていたとしても、その隙間の開放端(下端部)を覆いシートにより塞ぐことができる。このため、雨水等の水が風の吹き上げに伴って下方から止水シートに向けて吹き付けられたとしても、その水が止水シートの余剰部分の隙間を通じて屋内側に浸入することを抑制できる。したがって、外壁部の防水性を縦目地の下方位置において好適に確保することができる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、前記覆いシートは、屋外側に向けて膨らんだ膨出部(膨出部61b)を有しており、該膨出部の内部に前記余剰部分を収納する位置に配置されており、前記膨出部は、前記余剰部分の下端部を覆う底面を有している。
【0012】
第2の発明によれば、支持部材の屋外側において、止水シートの余剰部分が覆いシートの膨出部内に収納されているため、余剰部分の皺や重なりの周囲において覆いシートが支持部材や止水シートに密着しやすくなっている。したがって、余剰部分の隙間の開放端を覆いシートにより確実に塞ぐことができる。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、前記膨出部の内周面には、前記余剰部分の屋外側面が張り付けられている。
【0014】
第3の発明によれば、覆いシートの膨出部と止水シートの余剰部分との間に隙間が生じることが規制されているため、覆いシートの防水性を止水シートに対して確実に付与できる。また、膨出部と余剰部分とを、互いに重ねられた状態になっていることで同じ方向(例えば)に折り返すことができ、それによって、支持部材からの膨出部及び余剰部分の屋外側への突出寸法を極力小さくすることができる。これにより、余剰部分が外壁部の外観に影響を及ぼしにくい構成を実現できる。
【0015】
第4の発明では、第2又は第3の発明において、前記覆いシートは、前記膨出部を含んで当該覆いシートの屋内側面を形成している内側シート材(内側シート材62)と、前記膨出部の周囲において前記内側シート材の屋外側面に張り付けられ、該内側シート材の変形を規制する外側シート材(外側シート材63)と、を有している。
【0016】
第4の発明によれば、支持部材及び止水シートに対する内側シート材の張り付き状態を外側シートにより適正に保つことができる。また、膨出部が内側シート材により形成されているため、余剰部分を膨出部の内周面に重ねた状態でそれら余剰部分と膨出部とをまとめて折り返すことなどにより、支持部材からの膨出部及び余剰部分の突出寸法を低減する際に、膨出部の折り返しに伴って内側シート材が支持部材や止水シートから剥がれるということを外側シート材により抑制できる。
【0017】
なお、外側シート材は、内側シート材に比べて柔軟性が低いことが好ましい。
【0018】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記止水シートの前記はみ出し部には、上方に向けて凹んだ凹部(凹部58)が前記余剰部分の下方位置に設けられており、前記覆いシートは、前記余剰部分の下端部に加えて前記凹部を屋外側から覆う位置に設けられている。
【0019】
第5の発明によれば、止水シートにおいては、余剰部分の下端部がはみ出し部の下端部よりも高い位置に配置されているため、凹部が設けられていない構成に比べて、余剰部分の下方位置において覆いシートが支持部材に張り付いている面積を大きくすることができる。覆いシートの張り付け面積が大きいほど支持部材に対する覆いシートの張り付けが強固になるため、覆いシートにより確保された防水性が低下しにくい構成を実現できる。
【0020】
第6の発明では、第5の発明において、前記覆いシートの下端部は、前記はみ出し部の下端部と同じ高さ位置に配置されている。
【0021】
第6の発明によれば、覆いシートが止水シートより下方にはみ出さないようになっているため、外壁部の外観が覆いシートにより損なわれるということを抑制できる。
【0022】
第7の発明では、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記止水シートは、前記隣り合う外壁面材のそれぞれに対して設けられた外壁シート材(側端シート材52)が互いに接続されることで形成されており、これら外壁シート材の接続部分が前記余剰部分に含まれている。
【0023】
第7の発明によれば、止水シートに余剰部分を形成することが許容されている構成において、さらに、余剰部分に各外壁シート材の接続部分が含まれることが許容されているため、横並びの止水シートのそれぞれを外壁面材よりも屋外側に引き出し、それぞれの引き出した部分を互いに接続する、という作業を行うことが可能となる。これにより、外壁シート材の接続作業を容易化できる。
【0024】
ここで、止水シートの余剰部分が支持部材に重ねられた部分においては、各外壁シート材の接続部分がこれら外壁シート材の2枚分の厚みを有していることに起因して、余剰部分において皺や重なりに伴って隙間が形成されやすくなると考えられる。この場合でも、余剰部分の隙間が覆いシートにより覆われているため、この隙間からの水の浸入を好適に阻止できる。
【0025】
第8の発明では、第1乃至第7のいずれかの発明において、上階部(二階部分13)と下階部(一階部分12)とが上下に隣り合っている建物に適用され、前記外壁面材は、前記外壁部において前記上階部の外壁面を形成する上階外壁面材(二階外壁面材32)であり、前記支持部材は、前記外壁部において前記下階部の外壁面を形成する下階外壁面材(一階外壁面材31)であり、前記上階部と前記下階部との境界部には、前記上階外壁面材と前記下階外壁面材との間の離間部分、前記はみ出し部及び前記覆いシートを屋外側から覆い隠す胴差(胴差18)が設けられている。
【0026】
上下階の境界部においては、壁高さ方向において外壁部の中間位置に配置されていることに起因して、強風時などの風の吹き上げが強烈であると考えられる。このため、第8の発明のように、上階部の止水シートが下階外壁面材の屋外側面に張り付けられている構成では、下階外壁面材に重ねられた余剰部分の隙間に風の吹き上げに伴って水が浸入しやすいと考えられるが、余剰部分の下端部が覆いシートにより覆われているため、余剰部分からの水の浸入を確実に規制できる。しかも、外壁部においては、上階外壁面材と下階外壁面材との境界部が胴差により覆い隠されているため、外壁部の意匠性が覆いシートにより損なわれるということを回避できる。
【0027】
第9の発明の外壁構造の製造方法は、外壁面材(二階外壁面材32)が複数設けられた外壁部(外壁部17)を備え、横並びに隣り合う前記外壁面材の間には、上下方向に延びた縦目地(二階縦目地36)が形成された建物(建物10)の外壁構造に適用され、前記隣り合う外壁面材のそれぞれに対して設けられた外壁シート材(側端シート材52)を、前記外壁面材から前記縦目地側にはみ出した部分で互いに接続することで、前記縦目地を跨いで前記隣り合う外壁面材に掛け渡された止水シート(止水シート54)を形成する工程と、前記止水シートにおいて前記外壁面材から下方にはみ出したはみ出し部(はみ出し部55)を、前記外壁面材から下方に離間した位置に設けられた支持部材(一階外壁面材31)の屋外側面に張り付ける工程と、前記止水シートにおいて前記外壁シート材の接続部分を前記縦目地から屋内側に押し込み、且つ前記縦目地の下方位置において前記外壁シート材の接続部分を屋外側に延出させることで、前記はみ出し部に余剰部分(余剰部分59)を形成する工程と、前記余剰部分の下端部を覆う覆いシート(覆いシート61)を、前記止水シートの前記はみ出し部と、前記余剰部分の下方位置における前記支持部材の屋外側面とに張り付ける工程と、を備えている。
【0028】
第9の発明によれば、工場においてあらかじめ外壁面材に外壁シート材を取り付けておき、外壁シート材付きの外壁面材を建築現場に運搬した後、その建築現場において2つの外壁面材を隣り合わせに設置し、これら外壁面材のそれぞれに取り付けられた外壁シート材を互いに接続することで、止水シートを形成することができる。この場合、縦目地を跨ぐように止水シートが配置される構成でも、止水シートを外壁面材に取り付ける作業を建築現場で行う必要がないため、止水シートの形成に際して建築現場での作業負担を低減できる。
【0029】
しかも、止水シートのはみ出し部に余剰部分を形成することで、止水シートの屋外側において縦目地の間に浸入した水が支持部材の屋外側に排出される構成を実現できる。その一方で、余剰部分の隙間から止水シートよりも屋内側に水が浸入することを覆いシートにより防止できる。
【0030】
第10の発明では、前記外壁シート材の接続部分の下端部を切り取ることで、前記はみ出し部において上方に向けて凹んだ凹部(凹部58)を前記余剰部分の下方位置に形成する工程と、前記覆いシートを、前記余剰部分の下端部に加えて前記凹部を屋外側から覆う位置に配置する工程と、を備えている。
【0031】
第10の発明によれば、各外壁シート材を互いに接続して止水シートを形成した後に、止水シートに凹部を形成するため、凹部の大きさや形状を止水シートの状態や覆いシートの大きさに合わせて適宜設定することができる。したがって、余剰部分の下方位置においては、支持部材の屋外側面に対する覆いシートの張り付け面積を十分に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】横目地周辺の外壁部の正面図。
図2】覆いシートの斜視図。
図3図1のA−A線断面図。
図4図1のB−B線断面図。
図5】(a)が図1のC−C線断面図、(b)がD−D線断面図、(c)がE−E線断面図。
図6】止水層の構築手順を示す図。
図7】建物の概略斜視図。
図8】建物ユニットの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の外壁構造を、鉄骨ラーメン構造を有する二階建てユニット式建物において具体化している。まず、ユニット式建物について、図7図8を参照しつつ説明する。図7は建物10の概略斜視図、図8は建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
【0034】
図7に示すように、住宅等の建物10は、基礎11の上に設けられた一階部分12と、一階部分12の上に設けられた二階部分13とを有している。一階部分12が下階部に相当し、二階部分13が上階部に相当し、これら一階部分12と二階部分13とは上下に隣り合っている。建物10の外壁部17は、一階部分12と二階部分13との境界部に沿って壁幅方向に延びている胴差18を有している。
【0035】
建物10は、複数の建物ユニット20が組み合わされることで構築されており、一階部分12及び二階部分13のそれぞれが複数の建物ユニット20を有している。建物ユニット20は、ユニット製造工場にて製造され、その後、トラック等により建築現場に搬送され、建築現場において設置されるものである。
【0036】
図8に示すように、建物ユニット20は、四隅に配置された柱21と、柱21の上端部(上仕口)に連結された天井大梁22と、柱21の下端部(下仕口)に連結された床大梁23とを有しており、これら柱21、天井大梁22、床大梁23により直方体状の骨格(ユニット躯体)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、溝部開放側を互いに向き合わせるようにユニット内側に向けて配置されている。
【0037】
建物ユニット20において長辺部(桁面)に沿って延び且つ相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく長辺部に沿って延び且つ相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔で且つ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23と平行に延びている。天井小梁25及び床小梁26はそれぞれリップ溝形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材28が支持され、床小梁26によって床面材29が支持されている。
【0038】
次に、外壁部17の構成について図1図6を参照しつつ説明する。
【0039】
図1図3図5に示すように、外壁部17は、建物10の外周面に沿って並べられた複数の外壁面材31,32を有している。外壁面材31,32は、サイディングボード等の外装材により矩形板状に形成されている。外壁面材31,32の屋外側面は、凹凸等が形成された意匠面とされており、外壁部17の外壁面を形成している。
【0040】
外壁面材31,32の屋内側には、この外壁面材31,32を支持する外壁下地としての外壁フレーム33が設けられている。外壁フレーム33は、ユニット躯体に取り付けられており、外壁面材31,32の周縁部に沿って延びている。外壁フレーム33は、矩形枠状とされており、その外周面は外壁面材31,32の外周面に面一に配置されている。外壁フレーム33は、外壁面材31,32の側端面に沿って延びた縦フレーム材と、外壁面材31,32の上端面や下端面に沿った延びた横フレーム材とを有している。
【0041】
なお、外壁面材31,32及び外壁フレーム33は、一体化されることで外壁パネルを構成している。
【0042】
建物10においては、一階部分12に一階外壁面材31が配置され、二階部分13に二階外壁面材32が配置されている。外壁面材31,32は、いずれも横並びに複数設けられており、各一階外壁面材31の間には一階縦目地35が形成され、各二階外壁面材32の間には二階縦目地36が形成されている。一階外壁面材31と二階外壁面材32とは、一階部分12の建物ユニット20と二階部分13の建物ユニット20との境界部(スタッキングラインSL)を跨いで上下に配置されており、この境界部には、壁幅方向に延びる横目地37が形成されている。なお、一階外壁面材31が下階外壁面材に相当し、二階外壁面材32が上階外壁面材に相当する。
【0043】
一階外壁面材31の屋外側面には、意匠面とされていない平坦面38が形成されている。平坦面38は、非意匠面とされており、意匠性を確保するための凹凸が設けられていない。平坦面38は、一階外壁面材31の上端部に沿って延びており、胴差18の屋内側に配置されている。なお、図1図5においては、胴差18の図示を省略している。
【0044】
二階外壁面材32の屋内側面には、屋内側に雨水等の水が浸入することを規制する止水層41が重ねられている。止水層41は、二階縦目地36を壁幅方向に跨いだ状態で隣り合う二階外壁面材32に掛け渡されているとともに、横目地37(スタッキングラインSL)を壁高さ方向に跨いだ状態で一階外壁面材31と二階外壁面材32とに掛け渡されている。止水層41は、一階外壁面材31の屋外側に配置されており、その一階外壁面材31の平坦面38に重ねられている。
【0045】
二階縦目地36には、一次防水部材としてシーリング材43が設けられており、二階縦目地36の屋内側(奥側)には、二次防水部材としてのガスケット44が設けられている。シーリング材43及びガスケット44は、いずれもEPDMゴム等により形成された定形のシーリング材であり、壁厚み方向に並べて配置されている。シーリング材43は、隣り合う二階外壁面材32の間に押し込まれた状態になっており、ガスケット44は、隣り合う外壁フレーム33の間に押し込まれた状態になっている。
【0046】
止水層41は、二階縦目地36の奥側において、各外壁フレーム33の間に入り込んだ状態で膨らんだ形状になっており、その膨らんだ部分が、水を下方に案内する水案内通路46を形成している。隣り合う外壁フレーム33の間において、ガスケット44の下端部は、止水層41により屋内側から覆われた状態になっていることで、水案内通路46に配置されている(図5(a)参照)。水案内通路46は、二階縦目地36の下方位置にて屋外側に開放された通路口46aを有しており、ガスケット44の下端部から流れ落ちた水が水案内通路46を通じて通路口46aから屋外に流れ出るようになっている。なお、ガスケット44の下端部は、二階縦目地36の下端部より高い位置に配置されている。
【0047】
水案内通路46においては、隣り合う外壁フレーム33の間において、屋内側への入り込み寸法が下方に向かうにつれて徐々に小さくされており、それによって、通路口46aが側方に向けて開放されている。この場合、水案内通路46の内周面において、屋外側を向いている面を水の流れる流れ面とすれば、その流れ面が下方に向かうにつれて徐々に屋外側に近付いており、通路口46aの下側部分に流れ面が含まれていることになる。
【0048】
止水層41は、二階外壁面材32から下方にはみ出している下端シート材51と、二階外壁面材32から側方にはみ出している側端シート材52とを有しており、いずれも二階外壁面材32に固定されている。これらシート51,52は、防水性を有する防水シートとされており、いずれも二階外壁面材32と外壁フレーム33との間に挟まった状態で、二階外壁面材32の屋内側面に張り付けられている。
【0049】
側端シート材52は、二階外壁面材32の下角部から側方及び下方の両方にはみ出している。側端シート材52は、L字状に形成されており、下側の二階外壁面材32の下端部及び側端部の両方に沿って延びている。下端シート材51は、二階外壁面材32から側方にははみ出しておらず、壁幅方向においてその端部が側端シート材52の屋内側面に張り付けられている。側端シート材52の下端部は、下端シート材51の下端部と同じ高さ位置に配置されている。
【0050】
下端シート材51及び側端シート材52において、二階外壁面材32から下方にはみ出した部分は、一階外壁面材31の平坦面38に接着剤等により張り付けられている。この場合、二階外壁面材32から下方への下端シート材51及び側端シート材52のはみ出し寸法は、横目地37の高さ寸法(一階外壁面材31と二階外壁面材32との離間距離)より大きくされている。
【0051】
止水層41においては、隣り合う二階外壁面材32の側端シート材52の各側端部が接続されることで、これら側端シート材52により止水シート54が形成されている。この場合、側端シート材52が外壁シート材に相当する。止水シート54においては、各側端シート材52が二階外壁面材32から下方にはみ出した部分がはみ出し部55とされている。はみ出し部55の下端部は、一階外壁面材31の平坦面38に張り付けられている。この場合、一階外壁面材31がはみ出し部55を支持する支持部材に相当する。また、側端シート材52は、止水性を有するシート材に相当する。なお、図3図5においては、止水シート54について下端シート材51及び側端シート材52の図示を省略している。
【0052】
止水層41の形成手順について説明する。まず、止水シート54を形成する工程を行う。この工程では、図6(a)に示すように、隣り合う二階外壁面材32のそれぞれに下端シート材51及び側端シート材52を取り付ける。ここでは、各二階外壁面材32のそれぞれに外壁フレーム33を取り付ける前に、各外壁フレーム33のそれぞれに下端シート材51及び側端シート材52を接着剤等で接着し、これらシート材51,52を挟み込むようにして各外壁フレーム33を各二階外壁面材32の屋内側面にビス等により固定する。これにより、隣り合う二階外壁面材32の間に二階縦目地36を形成することになる。なお、二階外壁面材32のそれぞれについては、下端シート材51と側端シート材52とを側端部同士で重ねた状態にしておき、これら側端部を両面テープ等により接着する。
【0053】
そして、二階外壁面材32のそれぞれに対して取り付けた各側端シート材52を二階縦目地36から屋外側に引き出し、その状態で、一方の側端シート材52の屋外側面に他方の側端シート材52の屋内側面を張り付けて接続する。ここで、一方の側端シート材52は、他方の側端シート材52に重ねられた状態で接着剤等により接合されることで、張り付けられている。止水シート54においては、各側端シート材52が互いに接続された接続部分56が二階縦目地36よりも屋外側に配置されており、この接続部分56は上下方向に直線的に延びている。また、止水シート54においては、二階外壁面材32の屋内側面に重なっている部分から延出部分57が二階縦目地36を通じて屋外側にむけて延びており、この延出部分57には接続部分56が含まれている。
【0054】
そして、図6(b)に示すように、接続部分56の下端部を含んで止水シート54の一部を切断することで、上方に向けて凹んだ矩形状の凹部58を止水シート54のはみ出し部55に形成する。この工程により形成した凹部58は、壁幅方向において止水シート54の中間部分において、二階外壁面材32から下方に離間した位置に配置されている。止水シート54においては、はみ出し部55に延出部分57が形成されており、延出部分57は二階縦目地36よりも低い位置に存在している。凹部58の上端部は、一階外壁面材31より高い位置に配置されており、二階縦目地36の下方位置においては、延出部分57が一階外壁面材31から上方に離間している。
【0055】
その後、止水シート54により水案内通路46を形成する工程を行う。この構成では、図6(c)に示すように、止水シート54の延出部分57を接続部分56ごと二階縦目地36の奥側(隣り合う外壁フレーム33の間)に押し込み、その押し込んだ部分が屋内側に向けて膨らんだ形状になるように形を整えることで、水案内通路46を形成する。そして、各外壁フレーム33の間において水案内通路46(延出部分57の内側)にガスケット44の下端部を押し込む。延出部分57においては、通路口46aの上流側の部分が通路形成部として水案内通路46を形成している一方で、通路口46aよりも下流側の部分、すなわち一階外壁面材31に重なる高さの部分は、隣り合う外壁フレーム33の間に押し込むことができないため、水案内通路46を形成しておらずに余った余剰部分59になっており、この余剰部分59は、屋外側に向けて延出している。このため、水案内通路46を形成する工程では、余剰部分59を形成することにもなる。
【0056】
図1図3図5の説明に戻り、止水シート54のはみ出し部55には、余剰部分59の下端部を屋外側から覆う覆いシート61が張り付けられている。覆いシート61は、余剰部分59の下端部に加えて凹部58を屋外側から覆っており、凹部58内においては、一階外壁面材31の平坦面38に張り付けられている。また、覆いシート61は、凹部58内において止水シート54と一階外壁面材31とが上下に離間した部分を、屋外側から塞いだ状態になっている。覆いシート61は、矩形状に形成されており、その下端部は止水シート54の下端部と同じ高さ位置に配置されている。なお、覆いシート61は、止水シート54と共に止水層41を構成している。
【0057】
覆いシート61は、一階外壁面材31の平坦面38と止水シート54とに掛け渡された状態で張り付けられたベース部61aと、そのベース部61aから屋外側に向けて膨らんだ膨出部61bとを有している。ベース部61aの屋内側面は平坦面とされており、膨出部61bの内周面は湾曲面とされている。膨出部61bは、ベース部61aの両側端及び下端から離間した位置に配置されており、この内部空間は、屋内側に加えて上方に向けて開放されている。膨出部61bの内部には、余剰部分59が上方及び屋内側から入り込んだ状態で収納されている。この場合、膨出部61bは、側面及び底面を有している一方で、天井面を有しておらず、底面が余剰部分59の下端部を下方から覆った状態になっている。
【0058】
膨出部61bの内周面には、余剰部分59の外周面が接着剤等により接合されることで張り付けられている。余剰部分59は、膨出部61bと同様に屋外側に膨らんだ状態とされることで膨出部61bの内周面に重ねられ、その状態で膨出部61bに対する余剰部分59の張り付け作業が行われる(図6(d)参照)。膨出部61bは、左右から潰された状態(余剰部分59の屋内側面同士を左右から重ね合わせた状態)で側方に折り返されてベース部61aに重ねられており、この状態でベース部61aの屋外側面に接着剤等により接合されている。この場合、膨出部61bが余剰部分59ごと折り返されることで、一階外壁面材31や止水シート54からの膨出部61bの突出寸法が極力小さくされているとともに、余剰部分59の屋内側面同士の間の隙間が生じにくくなっており、仮に隙間が生じていたとしても、その隙間を膨出部61bが塞いだ状態になっている。
【0059】
覆いシート61の膨出部61bが折り返された部分のうち、膨出部61bに余剰部分59が張り付けられた部分においては、図5(b)に示すように、余剰部分59の屋内側面同士が重ねられた状態になっており、膨出部61bに余剰部分59が張り付けられていない部分(余剰部分59の下方部分)においては、図5(c)に示すように、膨出部61bの屋内側面同士が重ねられた状態になっている。
【0060】
図2(a),(b)に示すように、覆いシート61は、ベース部61a及び膨出部61bの各屋内側面を形成する内側シート材62と、ベース部61aの屋外側面を形成する外側シート材63とを有しており、外側シート材63は、内側シート材62の屋外側面に張り付けられている。覆いシート61においては、内側シート材62の一部が屋外側に向けて膨らんでおり、その膨らんだ部分が膨出部61bとされている。外側シート材63は、下方に向けて凹んだ形状とされており、その凹んだ部分を通じて内側シート材62の膨出部61bが屋外側に向けて突出している。
【0061】
内側シート材62及び外側シート材63は、いずれも柔軟性を有しているが、外側シート材63の柔軟性が内側シート材62の柔軟性に比べて低くされている。この場合、覆いシート61の膨出部61bは、柔軟性の高い内側シート材62の一部であるため、その内周面に余剰部分59が張り付けられた状態でも変形させることが容易になっている。
【0062】
その一方で、ベース部61aにおいては、内側シート材62の変形が外側シート材63により規制されているため、内側シート材62に皺や重なりが生じてその内側シート材62と止水シート54や一階外壁面材31との間に隙間が形成されてしまうということを抑制できる。したがって、外側シート材63の柔軟性が低く設定されていることで、覆いシート61の取り付け作業を容易化できる。
【0063】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0064】
止水シート54の余剰部分59の下端部が覆いシート61により覆われているため、余剰部分59において屋内側面同士の重なり部分に隙間が形成されていたとしても、その隙間の下端を覆いシート61により塞ぐことができる。余剰部分59の隙間は、余剰部分59同士の重なり部分や、余剰部分59と一階外壁面材31との間において、止水シート54の屋内側の空間と屋外とを連通する隙間通路(ピンホール)になっていることがあり、この場合には、ピンホールを通じて雨水等の水が止水シート54の屋内側に浸入することが懸念されるが、その浸入を覆いシート61により規制することができる。しかも、外壁部17において上下階の境界部という中間位置では、風が外壁面に沿って強烈に吹き上げることが生じやすいため、覆いシート61により外壁部17の防水性を高めることが特に好ましい。
【0065】
覆いシート61の膨出部61b内に余剰部分59が収納されているため、例えば覆いシート61のベース部61aにより余剰部分59が覆われている構成に比べて、余剰部分59の周囲において、覆いシート61のベース部61aと止水シート54や一階外壁面材31とが密着しやすくなる。したがって、ベース部61aが止水シート54や一階外壁面材31から意図せずに剥がれるということを抑制できる。
【0066】
覆いシート61が一階外壁面材31の平坦面38に張り付けられているため、例えば覆いシート61が一階外壁面材31の意匠面に張り付けられた場合に比べて、覆いシート61を一階外壁面材31の屋外側面に密着しやすくなる。つまり、一階外壁面材31に対する覆いシート61の張り付け状態を強固にできる。
【0067】
覆いシート61の膨出部61bの内周面に余剰部分59が張り付けられているため、余剰部分59の屋内側面同士の間の空間を膨出部61bにより直接的に塞ぐことができる。しかも、膨出部61bは余剰部分59ごと左右から潰された状態でベース部61aに重ねられているため、止水シート54や一階外壁面材31からの膨出部61bの突出寸法を極力小さくできる。これにより、覆いシート61が胴差18の屋内側面に接触することや、覆いシート61が支障になって胴差18の設置状態が不適正になることを回避できる。
【0068】
止水シート54に凹部58が形成されているため、覆いシート61を止水シート54から下方に突出した位置に張り付けなくても、その覆いシート61により余剰部分59の下端部を覆うことができる。したがって、横目地37が胴差18により覆われている構成において、覆いシート61が胴差18から下方にはみ出るということを回避できる。また、覆いシート61の存在に合わせて胴差18の仕様を設定するという必要もない。
【0069】
上記実施形態では、止水シート54において、余剰部分59を形成すること、及びその余剰部分59に接続部分56が配置されることが許容されているため、各側端シート材52の接続作業をこれら側端シート材52を二階縦目地36から屋外側に引き出した状態で行うことができる。このため、側端シート材52の接続作業を容易化することができる。しかも、余剰部分59に接続部分56が配置された場合には、接続部分56の厚み寸法が他の部分に比べて大きくなることに起因して、余剰部分59に隙間通路が形成されやすくなってしまうが、この場合でも、覆いシート61により余剰部分59についての防水性を高めることができる。
【0070】
下端シート材51や側端シート材52は、柔軟性を有している上に薄い部材であるため、工場においてあらかじめ二階外壁面材32に取り付けておいても、二階外壁面材32や建物ユニット20を建築現場に運搬する際に支障が生じにくい。したがって、止水層41を構築する際の建築現場での作業負担や、建物ユニット20や二階外壁面材32を運搬する際の作業負担を低減できる。
【0071】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0072】
(1)上記実施形態では、覆いシート61の膨出部61bの内周面に止水シート54の余剰部分59の屋外側面が張り付けられていたが、張り付けられていなくてもよい。例えば、余剰部分59だけが左右から潰された状態で側方に折り返され、止水シート54の非余剰部分に重ねられ、この状態の余剰部分59を屋外側から覆うように覆いシート61が止水シート54に張り付けられた構成とする。この構成でも、余剰部分59の下端部が下方から覆いシート61により覆われていることになる。また、覆いシート61は、ベース部61aが余剰部分59を覆う位置に配置されていてもよい。
【0073】
(2)上記実施形態では、覆いシート61の膨出部61bが、内側に余剰部分59を収納した状態でベース部61aに重ねられていたが、膨出部61bは、ベース部61aに重ねられずに、屋外側に向けて膨出した状態のままとされていてもよい。
【0074】
(3)上記実施形態では、覆いシート61の下端部が止水シート54の凹部58の下端部と同じ高さ位置に配置されていたが、覆いシート61は、余剰部分59を覆ってさえいれば、止水シート54より下方に突出していてもよく、凹部58の下端部を覆っていなくてもよい。
【0075】
(4)上記実施形態では、止水シート54に凹部58が形成されていることで、二階縦目地36の下方位置においては、はみ出し部55が一階外壁面材31から上方に離間していたが、はみ出し部55は一階外壁面材31から上方に離間していなくてもよい。つまり、凹部58の高さ寸法が、はみ出し部55において一階外壁面材31に重なっている部分の高さ寸法より小さくされていてもよい。この場合、覆いシート61が、止水シート54及び一階外壁面材31の少なくとも一方に重なっているため、覆いシート61の設置部分において止水層41の強度が低下するということを回避できる。
【0076】
(5)上記実施形態では、止水シート54において、2つの側端シート材52のうち一方の屋外側面と他方の屋内側面とが重ねられていたが、それぞれの屋外側面が互いに重ねられていてもよく、それぞれの屋内側面が互いに重ねられていてもよい。特に、それぞれの屋外側面が互いに重ねられた構成では、各側端シート材52が接続部分56で折り返された状態になることで、余剰部分59に隙間が形成されやすくなると考えられる。このため、覆いシート61により余剰部分59の下端部を覆うことが、外壁部17の防水性を高める上で更に効果的なものになる。
【0077】
(6)上記実施形態では、2つの側端シート材52が接続されることで止水シート54が形成されていたが、止水シート54は、一枚のシート材により形成されていてもよい。
【0078】
(7)二階縦目地36は、横並びに隣り合う建物ユニット20の境界線(ドッキングライン)を跨ぐ位置に配置されていてもよい。この構成では、止水シート54の延出部分57は、二階縦目地36の屋内側において、各建物ユニット20の柱21の間に入り込んだ状態にされている。この場合、各建物ユニット20の各側端シート材52を建築現場で接続せざるを得ないため、余剰部分59に対する防水処理も建築現場で行わざるを得ない。したがって、覆いシート61を止水シート54に張り付けるという容易な作業により、余剰部分59に対して防水処理を実施できることは、建築現場での作業負担を低減する上で効果的である。
【0079】
(8)上記実施形態では、上下階の境界部に対して覆いシート61が設置されていたが、覆いシート61は、止水シート54の余剰部分59を覆っているのであれば、上下階の境界部に配置されていなくてもよい。例えば、外壁部17の中間位置から庇部が側方に張り出した建物においては、止水シート54の余剰部分59を支持する支持部材が、一階外壁面材31ではなく、野地板等の屋根下地材や鋼板等の屋根仕上材とされ、止水シート54のはみ出し部55が屋根下地材や屋根仕上材の上面(屋外側面)に張り付けられることになる。この場合、覆いシート61は、止水シート54及び屋根下地材の両方に張り付けられる。
【0080】
また、外壁部17の中間位置からバルコニー等の張出部が張り出した建物においては、余剰部分59を支持する支持部材が、張出部の床下地材や床仕上材とされ、止水シート54のはみ出し部55が床下地材や床仕上材に張り付けられることになる。この場合、覆いシート61は、止水シート54及び床下地材の両方に張り付けられる。
【符号の説明】
【0081】
10…建物、12…下階部としての一階部分、13…上階部としての二階部分、17…外壁部、18…胴差、31…支持部材及び下階外壁面材としての一階外壁面材、32…外壁面材及び上階外壁面材としての二階外壁面材、36…縦目地としての二階縦目地、52…外壁シート材としての下端シート材、54…止水シート、55…はみ出し部、58…凹部、59…余剰部分、61…覆いシート、61b…膨出部、62…内側シート材、63…外側シート材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8